「ハセガワ」カテゴリーアーカイブ

「アオシマグラチャンのマドンナ」はハセガワのプラモデルにいた話/ハセガワ 80’s ガールズフィギュア

▲私を振り向かせてみなさい……

 日本のカスタムカー文化をプラモで追体験できる、アオシマのグラチャンシリーズ。1970年代に誕生したこの「街道レーサー」とも呼ばれるカスタムに、ピッタリのフィギュアプラモを見つけたのでご紹介します。それがハセガワの「80’sガールズフィギュア」です。アオシマのプラモのベストパートナーはハセガワにいたんですね。

▲松田聖子、中森明菜的な雰囲気の2人がプラモになっています

 グラチャンのプラモを買った時にあまりにも知らない世界だったので、インスタで「#グラチャン」と検索しました。するとガンプラ改造例もびっくりな羽根や竹ヤリみたいなマフラー、超ど派手なカラーを纏った車が多数目に飛び込んできました。「いや〜、アオシマのグラチャンはセンスがいいものをしっかりとピックアップしてプラモにしているんですね……」とインスタの画像とプラモのラインナップを見比べて思うのでした。

 そういった写真の中には車のオーナーやヤンチャなアニキたちの他に、彼らのマドンナ的存在の人も一緒に写っていました。当時の最先端の格好で、ギラギラしている車の前に立ったり、ボンネットに乗ったりしているその景色が、僕には最も印象に残ったのです。

▲トリッキーな分割も無いので、接着剤でパーツを貼ればすぐに完成します

 そしてそんな景色を可能とさせてくれるプラモが、既にこの世にありました。ハセガワの「1/24 80’sガールズフィギュア」は、聖子ちゃんカットと呼ばれて当時一世を風靡した巻き髪スタイルが特徴です。こういう女性が当時の写真にバンバン写っていました。

▲特にこのカーディンガンを肩からかけている方のフィギュアのような女性は、ほぼそのまま当時写真にいたりします
▲みんなが憧れた聖子ちゃんカットの巻き髪を綺麗に表現するために、別パーツで成型されています
▲このフィギュアのツンとした雰囲気は、中森明菜を彷彿とさせますね

 グラチャンのケンメリ4Drのキットと並べてみたら、ちょっとだけ尖った香りがする景色が出来ました。街道レーサーのマドンナは、ハセガワにいたんですね。ギラっとしたあなただけの改造車を完成させたら、ぜひ彼女に猛アピールしに行きましょう!! それでは。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

メカトロチューブかく語りき/プラモデルの設計哲学を読む!

▲ウィーゴより「後から発売されたお兄ちゃん」鉄腕アトムに対するコバルト兄さんのようでちょっと違う。

 メカトロウィーゴといえば今やハセガワの看板娘ならぬ看板ロボプラモになってしまった感もあるのだけれど、実はこのウィーゴには「お兄さん」がいる。ハセガワ製のプラモデルとして登場したのは後からだけど、原作者である小林アニキが自作のレジン製組み立てキットとしてウィーゴより先に発表していたのがこの「メカトロチューブ」だ。

 プラモデルとしての基本構成は同社のメカトロウィーゴに倣い「スナップフィット仕様のロボットに要接着仕様の搭乗者フィギュアをセット」したもの。ひと箱の中にツートン配色の色違いがまるまる2セット入っている点も同じ。同じフォーマットのデザインの違うロボットの種類が増えて良かったね!めでたしめでたし……ではすまないのがこの「ウィーゴに対するチューブ」の面白いところ。

 並べてみるとわかるのだけれど、メカトロチューブはメカ味が濃いのだ。全身に配された手すりやカウルからの露出が多いむき出しの関節等、チョクに「メカ」を演出するパーツが目立つ。レトロフューチャーな設定と相まって、ウィーゴとは趣を異にする油にまみれた機械の武骨な味わいのロボットに仕上がっている。

 スネの上下端に配されたロールバーの部品。「え、コレ……お好みで接着しても良いオマケ部品じゃなくてデフォルトで組み立てに含まれる部品なの!?」と、指先で摘まむのも難しいほどに細かい部品が当然のように存在する。そしてこの部品は左右で挟み込む構成なのだけど、片方だけでは仮組みも利かない程度の渋みなのでポロッと落ちる。こういうプラモデルを組むのに慣れていないとそこそこ苦労する。しかもスネ上下端ふたつのロールバーを同時に挟み込まなくてはならない。スナップフィットでありながら器用さを試してくるんだな。

 運転席周りはまた精密な部品のオンパレード。レバーにしてもサドルにしても突き出したウィンカーやバックミラーにしても同社のスケールモデルと同じくらいの繊細さで作られている。

 そんなこのキットの「繊細な極小部品のスナップフィット化」に対する処理で面白いのは「脱落の防止」に対する気遣いだったりする。脚の組み立てで触れた左右挟み込みのロールバーはまさにその代表で、組みあがってしまえば動かして遊んでもポロポロ外れるようなことはない。もしこれが左右分割の部品を閉じた後にさして渋みの期待できない小さな勘合で差し込んでいたらこうはならなかっただろう。

 股間のナンバープレートもサドルも背もたれも同じように「不用意に脱落してしまわないように」設計されている。「脱落しないコト」とのトレードオフで少々組み立てが難しくなるのに気づかないなんてことはないハズで、その辺のバランスにはかなり自覚的に設計しているんじゃないかと思う。こういうのを”設計哲学”って言うんだろう。

 じゃあその哲学のもとになんでもかんでも「挟み込みで脱落防止」で片づけているかというと、そんなことはなくて、肩やモモの手すりは「必要十分な勘合がとれる」という判断で素直に差し込む方式。ここは角穴に丸軸を差し込む事で必要最低限の保持力が発揮されるよう調整してあって、差し込む時の力で部品がつぶれてしまうのを防いでいる。手段は違っても繊細な部品をどうスナップフィットに落とし込むかという哲学自体は一貫しているんだよ、ここの処理も。

 そしてフィギュアはあくまでも接着して組み立てるというメカトロウィーゴ由来のフォーマット。結局ここで接着剤を使うのだからロボット側の細かいディティールなんかも接着させてもいいと思うのだけれど「ロボット部分は接着剤不要で組みあがる」のをメカトロシリーズとして固持すべきフォーマットであると考えているのだろう……これも哲学だな。


 接着剤不要!スナップフィット!と言ったら「要はガンプラに寄せたんでしょう?」と言いたくなるくらいにスナップフィットという概念はガンプラが浸透させたものなのだけれど、それを採用したプラモデルがひたすら「ガンプラ的」になるかというとそんなことはない。接着剤不要や成形色で色分けを再現する仕様が被っていてもメーカーによって目指すところが変わってくる。繊細さも、組み味も全部違う。メカトロチューブかく語りき。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

初公開のハセガワ最新作、クァドラン・ローの設計にシビレた話。

 ハセガワからクァドラン・ローが発売されます。しかも1/72スケールです。唯一発売されていたプラモデルは1/144スケールなので、その倍の大きさ……と言ってもプラモデルは体積で見るもんですから、実際どれくらい大きいのかわからない。ただいま開催中の全日本模型ホビーショーでサンプルを見てきました。

 デカい!前高259mm。しかも人間のカタチとは大きく違うフォルムのロボットなのでやたらとボリューム感があります。これがスナップフィットで色分け済みのプラモデルだというのだからビビります。
 で、この上手い造形ですよ。組んでないから組み心地についてはまだわかりませんが、どっしりとしたフォルム、なめらかな曲面はとてもいい感じに捉えられています。

 3D造形には大まかに2種類あり、輪郭線と断面形で物体を描いていく方法と、粘土を盛り削りするように作り上げていく方法があります。こういう曲面だらけの物体は輪郭が良くても断面形の変化を直感的に把握しづらいので、粘土を盛り削りするように作るのに向いています。しかし、ハセガワのスタッフによれば「飛行機と同じように、いきなりCAD(=輪郭と断面形でカタチを描く方法)で作りました」とのこと(仰天)。線と線を繋ぐとどんな面が出てくるのかを想像しながらこれを作るのはめちゃくちゃ難しそうですが、案の定「このパーツはなかなかイメージ通りのカタチにならなくて、8回作り直しました」「これは6回くらい作ったかな……」と苦労の連続だった模様。

 おもしろかったのは、「ハセガワが最近手掛けたザブングルやアイアン・ギアーとは全く違って、クァドラン・ローにはこれまで作ってきた実在のステルス戦闘機の設計と共通する感触があった」という設計スタッフの発言です。現代のステルス戦闘機はうねうねした曲面の連続で、そのプラモデルを設計するには複雑に変化する断面形を正確に推測しながらキレイに繋いでいくスキルが必要。これはもう経験とカンによるところが大きいのですが、このうねうねしたクァドラン・ローにそれが応用できたというのが「イイ話」だと感じました。

 これだけ大きなプラモデルだとふたつ合わせにした外皮がワギワギする(微妙に歪んでカチッとした感じにならないことを指す)のが心配ですが、腕や脚の内部には黒い板状のパーツを挟み込んで桁がわりとし、完成後の剛性感を増す工夫がされています。さらによく見ると、上の辺には等間隔に小さな丸い凹みが設けられていますが、これは……?

 外装パーツの端面に設けられた小さな丸い突起と噛み合うことで、グッと力を入れてはめ込んでも外装のフチがグラグラ動かないようにする工夫なんだとか!外装同士が接触する端面には凹凸の細長い彫刻を入れることで、これもお互いが噛み合って突き合わせた部分がズレないよう工夫されています。キャラクターモデルではあまり見ない処理なので、これがどれくらい機能するかを体感するのが楽しみ!

 かわいいミリアも入って出撃準備中のハセガワ製クァドラン・ロー。同社のキャラクターモデルは変化と進化の連続ですが、フォルム、組みやすさ、大きさに負けない完成後のガッシリ感も含めて期待大のアイテムです。発売は12月アタマですので、いまのうちにポチッと予約しちゃいましょう。そんじゃまた!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。30年間定番商品として飛び続ける傑作飛行機模型「ハセガワ 1/48 川崎 三式戦闘機 飛燕」

▲この美しいパッケージをゲットして、素敵な週末を過ごしましょう

 週末の模型ライフが楽しくなるプラモを、フミテシの独断と偏見でご紹介する「花金プラモ」。今週はハセガワの1/48スケールの人気キット「日本陸軍 川崎 三式戦闘機 飛燕 I型丁 飛行第244戦隊」をご紹介します。nippperでは手のひらサイズの「1/72スケール」を以前ご紹介しましたが、1/48スケールも週末でサクッと組めるすごく良い飛行機模型なので、ぜひゲットしてください。

 飛燕の最新キットと言えば「タミヤ」のキットがあります。タミヤのキットが発売される2016年までは、このハセガワの飛燕が1/48スケールキットの最前線におりました(ハセガワの飛燕は1993年に発売)。まさにひと時代前のキットなのですが、キットの完成度はとても素晴らしいです。飛燕はハセガワ製もタミヤ製も良好な出来という、プラモに恵まれた飛行機なのです。ハセガワのキットは、パーツ数が非常に抑えられており、箱を開けた瞬間に「これは花金で楽しめるぞ!」って思えます。

▲箱を開けると、箱のサイズに比べてだいぶゆとりがあります
▲胴体、主翼などがランナーにドーンとセットされています。各部でパーツがバラバラになっているような模型では無いので、非常に組み立てやすいです
▲キャノピーも1パーツ。開閉選択はできませんが、コクピット部分にポンと置くだけで良いという手軽さがあります

 僕が初めて飛燕のプラモを作ったのは2016年に発売した「タミヤの飛燕」でした。そのため、ハセガワの飛燕は古いもの、どこかで勝手に役目を終えたものというひどい見方をしていました。実際に手に取って見ると、小池繁夫氏による非常に美しいイラスト、箱を開けた時の優しくモデラーを迎えてくれる圧の無さ、今見ても美しいパーツ形状と素晴らしいプラモでした。そして何より、1時間半ほどで非常にスタイルの良い飛行機が机の上に爆誕して、めちゃくちゃ嬉しい気持ちになりました。

▲コクピット内の計器盤やスイッチのディテール。計器盤のディテールがちょっとデフォルメ感があって可愛いです
▲機首から垂直尾翼までドーンと1パーツで成型された胴体。表面の凹モールドが非常に繊細
▲胴体内側には、コクピット側壁面のパネルパーツを貼ります。これによって密度感が出ます
▲こちら断面。飛燕の特徴であるお腹のラジエーターダクトも表現されていて、飛燕の特徴的内部構造も楽しめます。エンジンは付属しません
▲胴体を貼り合わせて、上から覗き込むとこんな感じ。十分な密度感を味わえます

 飛燕最大の特徴である液冷エンジン「ハ40」のパーツはありませんが、その分非常に早く飛行機の形になります。液冷エンジンのおかげで、機首がこのように鋭いシルエットになっています。零戦のように機首が大きく口を開けたようになっているのが空冷エンジンです。このハ40というエンジンは、ドイツ軍のメッサーシュミット Bf109に採用されていたダイムラー・ベンツ DB601エンジンをライセンス生産したものでしたが、当時の日本の技術や資源不足によって度々問題を起こしてしまいました。そのことにより、のちに五式戦闘機という飛行機が生まれますが、それはまた別の機会にご紹介します。

▲このプラモの一番気持ちよかった箇所が、胴体と主翼の接着。隙間なくピタ〜っと合わさるので、胴体と翼のラインが綺麗につながります
▲キャノピーは1パーツなので、乗せれば完成です!
▲キャノピーのフィット感も問題無し!! 和製メッサーとも呼ばれる鋭いシルエットを堪能できます。
▲ハセガワの1/48スケールには、他の日本陸軍機もラインナップ! 右は二式単座戦闘機 鍾馗(しょうき)

 2016年に、川崎重工創立120周年記念事業として行われた「飛燕再生プロジェクト」。それによって、一気に脚光を浴びた飛燕は現在、岐阜県の各務原にある「岐阜かがみがはら航空宇宙博物館」に展示されています。お近くの方は週末にぜひ見に行ってみてください。いけない人も、最高のプラモがありますので、プラモでかっこいい飛燕を堪能しようじゃないですか!! それでは〜〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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プラモを買うことで僕達は名画をお家にお迎えできる。ハセガワの美しい鍾馗がやってきた話。

▲小池繁夫さん、最高すぎるよ……。こんなかっこいい絵を見たら買っちゃうよね

 パッケージアートの力に導かれて「ハセガワ 1/48 日本陸軍 中島 二式単座戦闘機 II型丙 鍾馗(しょうき)」のプラモを購入した。太平洋戦争のクライマックスである本土防空戦において、飛来するB-29に対して奮戦する鍾馗が描かれている。不気味な夜空は群青を纏い、爆撃による炎が空を燃やす。その光が鍾馗を照らし、銀色の機体が鈍く輝いている……。これだけ素晴らしい絵が「1/48スケール」という、ガンプラで言えば「1/100スケール」のようなプラモの箱に描かれているのだ。美術館で名画を見て、最後の売店でハガキやクリアファイルを買うように、僕らは大好きなプラモを買うことで素晴らしい絵も手にしているのだ。当たり前のことだけど、それがいかに素晴らしいことかってことを、ハセガワの飛行機模型はいつの時代も教えてくれる。

 パッケージアートは演出の世界。元々好きなものがカッコよく描かれていたらより好きになるし、知らないものでも「え? なにこれ? めちゃくちゃかっこいいじゃん」と惹き込まれて、新たな出会いを産んでくれる。中のプラモが持っている背景やストーリーの入り口も見せてくれるのだ。中にはバラバラになったプラスチックのパーツが入っているだけなのに、ここまで素敵な装いがなされている。僕達が大好きで、めちゃくちゃ楽しんでいるプラモデルは、世の中でもそうそう無い素敵なメディアなのだ。

▲鍾馗は直径の大きい「ハ-41」というエンジンが搭載されているので、機首の迫力が凄い! そこから絞り込まれた胴体のシルエットが、他の日本機には無い独特の姿を生み出している

 飛行機模型を楽しんでいる人なら日本陸軍の飛行機たちは当たり前の存在。でも、飛行機模型をあまり作らない人にとっては「零戦」以外の日本機というと……。そういう状況でも、このような素敵な絵が、箱に描かれていれば、低い確率かもしれないけれど興味を持って手に取ってくれる人が現れると思うんだ。

▲鍾馗は主翼がとっても小さい。そして主翼後縁には独特の形状をした蝶型フラップを採用している
▲パーツで見ても、胴体はカウル付近がとってもマッチョ。胴体後ろの水平尾翼が垂直尾翼よりもかなり前に装着されているのも特徴。この構造は後の四式戦闘機にも引き継がれている
▲1/48スケールだが、細かなパーツはほんとんど無し。コクピットのパーツ、足回りのパーツがシンプルなので、サクサク組める
▲メリハリある味濃いめの計器盤。1/48スケールは、飛行機の各部ディテールを楽しむのにもちょうど良いサイズ
▲胴体はピターっとパーツが合う。各部の組み立てはストレスフリー
▲20分で空へ〜〜
▲初めて飛行機模型を組む人でも、1日あればすんなり形になる。ボリュームがしっかりとあるにも関わらず、とても作りやすい定番プラモだ

 最近1/72スケールの飛行機模型ばかり作っていたので、ちょっと大きめのサイズが作りたいなと思いお店でプラモを見ていた。ゆっくり1/48スケールの日本機プラモを見ているとハセガワの地力というものを体感せずにはいられなかった。日本海軍機、日本陸軍機、どのパッケージアートも美しいのだ。確かにプラモは中身が主役だ。しかし、その中身ばかりに関心が行き(特にネットで検索しているとね)、こうやってプラモの箱を眺めながらワクワクすることに距離ができていた。それはコロナ禍も一つの理由であったかもしれない。普通を取り戻してきた今、実店舗で名画を見るようにしてプラモが買える。その体験って、僕達プラモが大好きな人に許された最高の幸せだと思うのだ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

その流線型が私を完成に誘う/ハセガワのいすゞ 117クーペ 後期型

 だいぶヒィヒィ言いながら、四つのタイヤにボディが乗っかって車になるところまでハセガワ 1/24 いすゞ 117クーペ 後期型(☆☆XE) を組み立てて、床に寝っ転がってました。いや本当に、車のプラモデルは独特の疲労感がクセになります。

 スマホを触り飽きて、ふと棚の上のそいつに目をやると、とてもボディの曲線が綺麗なことに気づきました。光をヌルりと反射する姿は完成させるためには十分な燃料です。とにかくこのプラモデル、ボディをシャーシにはめ込んでからが本番という感じ。それまでの作業と同じかそれ以上に気をつけながらジリジリと完成まで進めていったほうがよさそう。

 ボディだけが細かいのかというとそういうわけではありません。結構な数のパーツがあります。だからこそと言いたくなるような精密な足回りはカチッと出来上がりで、複雑なユニットを手で掴んではにっこりしたくなる。

 他にもスピーカーを取り付けたり、シフトレバーとペダルをマニュアルとオートマで選べたりと「そこまでやるのか」という工程がいくつもあります。大変だけどやりがいがある作業で、バッチリ組み上がっていくのは結構嬉しい。というか、よく考えると、いままでクルマにスピーカーをつけたこともシフトレバーを選んだこともないので、初めてだから楽しいみたいな部分があります。

 細かな作業が時々現れたと思ったら、ズバーンとシートがくっついたりするので意外と作業の緩急があって飽きないです。細かなパーツを切ったり貼ったりするので、集中力を使いはしますが、最後の綱登りのためにSASUKEの第三ステージがひたすらに腕をいじめるように、ずっと同じ作業をし続けるというのは最後の最後までありません。

 ただ、最後の最後、ボディに細かいパーツをつける工程が勝負です。無くしたらと思うとゾッとするくらい小さなパーツを落としそうになったときの脚を閉じるスピード。「プラモってこんなに全身使う遊びだっけ」と思いながら集中して最後まで進めて行きます。

 とはいうものの、変に期待を裏切られる部分はなく、頑張った分だけ良い景色が見られる素敵なプラモデルだなと思いました。出来上がった姿は実車の評判がデザイナーの名前とともに私の耳まで届くのも納得の見た目。プラスチックの色がシルバーなのでウェルドラインというウネウネした線が走りますが、これが吹き抜ける風のようでかっこいいんですよね。ボディの様子を最初に見たときに「これは無塗装で作ろう」と思った理由はまさにこれでした。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

気軽に添えたいアニキたち。戦闘機パイロットのお得な詰め合わせプラモで楽しい景色を見よう!

▲例えばニキがいるだけで。飛行機ってよくなるんよね。カモ〜ン。人がいるっていいね!!

 先日、タミヤの1/72スケールスピットファイアを楽しく筆塗りしました。完成して「うれしいな〜」なんて眺めていると、やっぱり「アニキが欲しい……人を添えたい」という欲求が高まってきました。模型って人を添えるだけで、景色ができるから、僕は人の模型を隣に置くのが好きなのです。

▲現在ハイクオリティなアニキたちがバンバン模型で出ています。そろそろ、1/72スケールというコレクションサイズの飛行機模型でもかっこいいアニキたちが欲しいね!!

 そんな気持ちで秋葉原ラジオ会館のボークスを歩いていると、懐かしいプラモに出会いました。「ハセガワ 1/72 W.W.II パイロットフィギュアセット(日本・ドイツ・アメリカ/イギリス)」です。1998年に発売されたプラモになります。

▲第二次世界大戦の空でバトルを繰り広げた国同士が一箱に収まっています

 コクピットに座っているフィギュアではなく、飛行機の傍に添えるプラモというのも良いです。座っている状態で人馬一体な雰囲気も良いですが、人の姿がはっきり見えるとより「情景」になります。そのため、いつもとはちょっと違った景色が簡単に飛行機模型で作り出せます。

▲一箱に2セット。これは嬉しいです。1/72スケールのドイツ・日本・イギリス・アメリカの大戦機を買った時に一緒に買ってストックしたくなります
▲左から日本、日本、ドイツ! フレンズだね!!
▲左から、ドイツ、イギリス、アメリカ。ファイッ!!!

 1/72スケールの人ですから、とても小さいです。でも造形の雰囲気は良いし、むしろこういったサイズはそれなりの仕上がりのもので良いのですよ。添えられることの大事さ、役者が居てくれることの大事さってのがあるんですよね。

▲イギリスアニキをスピットファイアに添えて。最高です。しかもシタデルカラーやファレホなどの筆塗りしやすい水性塗料なら15分くらいで雰囲気良く塗れます

 みんながみんなパイロットが欲しいなんてことはないと思いますが、僕はやっぱり欲しい。別に地面を作って情景を作るなんてことはしなくても、木のベースに飛行機と一緒にポンと添えるだけでも全く違って見えるはずです。ハセガワの「 1/72 W.W.II パイロットフィギュアセット(日本・ドイツ・アメリカ/イギリス)」、ぜひ模型店で見つけたら飛行機模型と一緒に買ってきて、お隣に添えてください。いつもより飛行機模型が輝いて見えると思います。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデルで知るひとつの物語。「ハセガワ 九九式双発軽爆撃機」と「不死身の特攻兵」

 ハセガワ製「川崎 キ48 九九式双発軽爆撃機II型’特別装備機’」。特別装備と書かれていますが、特攻機です。 パッケージイラストでもわかるのですが、九九双軽は本来4人で乗るものです。それが、後部ががらんどうで、コクピットにたった一人のパイロットが見えるだけです。そして前部で伸びているのが起爆信管です。これが的に当たった瞬間に、腹に抱えた800kg爆弾を爆発させます。飛行機もろとも。

▲箱絵には様々なストーリーが描かれます。じっくり見て、模型作りの参考にしたり、絵に込められたストーリーを調べてみるというのもまたプラモ作りの愉しみと言えます

 これが、とてもいいキットなんですよ。過不足ないスジ彫りと、羽布張りの部分で表面をそれっぽく仕立ててあって、1/72らしいちょうどよいディテール感。これを特攻機にするのは、忍びないなあ……。

 信管は真鍮線を切って自分で再現することになります。初期の3本信管と、実戦段階で改めて1本に整理したバージョンを選択して作ることもできます。しかし、調べてみるとこの機体、とてつもない来歴を持っていたことがわかります。万朶(ばんだ)隊という陸軍航空隊初の特攻隊で運用され、実際に特攻で何機も消えていったのですが……。そのなかにたった一人、何度も”特攻”を命じられ再出撃しながら、生還を果たした特攻兵がいたというではありませんか。

 『不死身の特攻兵』。この万朶隊にて九九双軽を駆って、最後まで生き残った佐々木友次伍長の話は、この本にまとまっています。帯にも見覚えのある航空機が居ますね。佐々木伍長は21歳という若さで、こうした特攻と向き合うことになったという凄まじい運命を持っています。しかし生き残った。

 九九双軽は結果的に他の特攻隊員によって使われ、万朶隊の機体はすべて失われました。特攻という自らの身を賭さねばならない状況で、その運命を受け入れた人、そして運命と戦った人……。飛行機としてそこにあった九九双軽のキットにこれほどまでに背景があるとは……。

 この趣味は模型を通じて様々な資料に触れることも多く、そのたびに考えさせられるものが多くあります。九九双軽に限らず、人類の傷としての記録がプラモデルには時として残っているのです。これがミリタリーモデルのひとつの側面であり、興味深く、ひとつのキットを作るだけでたくさんの物語を知り、そして考えることになります。

 だからこそ、まとまった結論など出るはずもなく、常に考えることが大事なのだとを意識しています。また立場が変われば意見が変わるということも当たり前のことで、兵器だって片方から見れば悪魔のような存在であり、片方から見れば自らの命を助けた存在でもあるのです。

 佐々木友次さんは、航空機を飛ばすことがとても好きだったように見えます。九九双軽は運動性能がよく、その心に答えてくれたのではないでしょうか。書籍のなか、2015年のインタビューにあった会話の中に、この機体を評した話があります

 ”なんせ私達は双発のあんまり評判のよくない双軽に乗ってあちこち行きましたけど、乗ってみたら乗りやすいいい飛行機なんですよね。それで、これに乗って自爆したくないっていう気持ちがありますからね”
 –−『不死身の特攻兵』,鴻上尚史,2017,講談社現代新書

 最高の褒め言葉でしょう。

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

デビューした瞬間からオレンジ!/刺し身で美味しいハセガワ ベレGのプラモデル

 ハセガワの「いすゞ ベレット 1600GTR 前期型(1969)」が完成しました。突然完成したのはボディがオレンジ色のプラスチックだったからです。これまでハセガワのカーモデルって「完全新規金型の新製品はボディが白かグレー」「バリエーション展開するときはボディのプラスチックに色がついている(こともある)」というのが当たり前でした(つまり色がついたボディが欲しい人はバリエーションキットの発売を待つ必要があったのじゃ)。今回は完全新規金型の新製品だけどいきなりボディがオレンジ色なので「ほぼ塗らんでもハコに近いイメージになるじゃん!」というのがうれしポイントです。

 車のボディ、自分の好きな色に塗りたいなら白とかグレーみたいな無彩色のほうがイイ、という意見もありましょうし、箱にオレンジ色の車が描いてあるんだからオレンジ色のものを入れておいてほしいなという意見もありましょう。どっちにも一理あると思います。俺も「塗りたい日」と「そのまま貼りたい日」があるので、なんならいつでもどっちか選べるようにしてくれるとみんなハッピーでしょうが、まあそれは贅沢というもの。今回はオレンジ色のプラスチックが皿に乗って出てきたので、そのまま食べることにいたしましょう。うれしいな。

 ハセガワのカーモデルはメッキパーツが繊細。ゆえに完成品が端正な佇まいになるとも言えるし、扱いにちょっと神経質な部分があって難しいとも言えます。カットは慎重に、接着には表面のメッキを剥がさなくても貼れるセメダインの「ハイグレード模型用」を使うのがおすすめです。

▲どうせほとんど黒で塗りますよね〜っていう室内のパーツも最初から黒!

 黒とオレンジのパーツが組み合わさると、塗っていない状態でもメカニカルな駆動系や排気系が浮き立って見えるので、下回りの組み立ても気分がアガります。実際はもっと細かな塗り分けがあるようですが、裏返して見るのでなければ「俺はあそこにあのパーツをくっつけたことを知っているぞ」という記憶が残ればオーケー。カーモデルはこのへんをスキップするとあとはボディに全集中すればいいから案外気楽に楽しめますね。

 ゴムとメッキモールがサンドイッチ状態になった窓枠はめちゃんこ塗装が難しそうですが、はっきりした彫刻と付属のカット済みマスキングシート、そしてハセガワが「ミニ クーパー 1.3i (1997)」の発売時に紹介した塗装法を取り入れることで比較的カンタン確実にクリアできるようになっています。ビビらずにやってみよう!

▲黒く塗ったほうがいいのはボンネットくらいのもの。丸っこくてパワフルなベレGのシルエットがGOOD!

 日本で始めて「GT」を名乗ったいすゞのベレG。ハセガワの繊細なカーモデルの組み味を、「色付きのボディと室内パーツの組み合わせ」でサクッと味わえる新時代のアイテムです。ゴージャスな塗装環境がなくてもイメージ通りカラーが楽しめるという意味ではより多くの人に開かれたオレンジのボディ。ホイールのツートンカラーも相まって、じゅうぶんに実感のある仕上がりだと感じました!みなさんも、ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

加藤単駆郎さんのイラストに導かれて。良い箱絵を纏ったプラモを手に取る喜びとハセガワの試み。

 模型店で箱絵に一目惚れして購入。迷彩のぼかしが、筆塗りで塗装したらめちゃくちゃ楽しそうな雰囲気に仕上がっていました。

 現在ハセガワの箱絵を多数手掛けるイラストレーター・加藤単駆郎氏。昨今は新商品だけでなく、新規デカールや一部パーツを追加したバリエーションキットの箱にも彼のイラストが採用されています。僕は加藤氏のイラストの「プラモをこんな感じで塗ったら重厚感が出そう!」って雰囲気がすごく好きです。特に今回購入した「ハセガワ 1/48 フォッケウルフ Fw190A-4 ノヴォトニー」は完全なジャケ買い。プラモの箱に描かれたイラストというのは、中の商品と同じくらい力を持っているのです!

▲この迷彩のボケ味や、擦れ具合、戦場で応急迷彩をしたかのようなベタ塗りな雰囲気と、全てが最高

 良い箱絵の中には良いキットが入っているというのはよくあること。この関係って不思議です。でも実際良いイラストを纏っているプラモってのは一味違うのです。箱を開けてみましょう。

▲ハセガワの1/48 Fw190は、2005年に全パーツがハセガワ製のキットとして送り出されます。それまでは他社のパーツとハセガワのパーツを組み合わせたキットでした

 ドイツ軍の超メジャー戦闘機のキット。かつては中国のメーカー・ドラゴンのパーツとハセガワのパーツで構成されていました。その後、他社パーツ部分をハセガワが新規で作り起こし、完全純正なハセガワプラモとして、2005年に登場しました。

▲脚庫の内部ディテール。配線などがかっこいいですね!
▲メーターパネルやスイッチの細かなディテール。コクピットの密度感を上げてくれる素敵なディテールです
▲本キットの主役である新規デカール

 2000年以降に発売されたプラモですから、各部の成型はすごくシャープ。ディテールなどはスッキリ目なので、ここから手を加えたい人はバンバン入れられます。良い箱絵の中身は、やっぱり素敵なプラモでした。

 そしてハセガワは箱絵に関してもう一つ新しい動きを試みています。自社のラインナップから新たに定番商品として格上げした商品(直近では1/72スケール ドラケン、1/72スケール 空技廠 P1Y1 陸上爆撃機 銀河 11型)の箱絵を、加藤単駆郎氏よる新規イラストにして、新商品として送り出す試みです。

 新たな定番として自信を持って送り出す商品に、新規で最高のイラストを纏わせる。僕はすごく素敵な試みだと思います。新規イラストによる「箱のリニューアル」というのは、もちろんしっかりとコストがかかります。それをやってでも、良いパッケージングでプラモを送り届けたいという気持ちが籠った商品って、ストックに積んだ時もかっこいいですよね。そんな商品がこれからさらに増えて、僕たちが箱とイラストの力にどんどん惹き寄せられて、プラモを手に取る。そういう出会いが繰り返されたらプラモってもっともっと楽しくなりそうですね!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ハセガワのバイク模型に変化アリ!/刺し身でも煮付けでもイケるHONDA VT250Fの話。

 5月に開催された静岡ホビーショー、ハセガワブースで思わず叫んだ。いままで頑なに「塗装が前提なんだから、実車の色とプラスチックの色は関係ないでしょ?」とでも言わんばかりのストイックな構成だったハセガワのバイク模型。新作のホンダVT250Fは5色のプラスチックでプラモデル化されると書いてある。オレは世代的にこのVT250Fというバイクとなんの接点もないのだけど、一気に興味が湧いてきた。

 これまでグレーと黒(に、カウルの1色)が標準で、さらに「実車では黒いところがグレーのパーツ」「実車では銀のところが黒いパーツ」みたいなことも散見されたハセガワのバイク模型。塗装すればもちろんプラスチックの色に意味はないのだけれど、だったらいっそのこと全部グレーでも問題ないはずだ。素材に色が付けられるプラスチックの特性を活かすなら、塗装しない日にも雰囲気を味わえる配置のほうがバリューは高いだろし、塗装するときにも「だいたいそこが何色か」が直感的にわかったほうが楽しい。

 「プラモデルは最初から完璧に塗らなくてもいいように色分けしてあるのが偉い」と言うなら、ガンプラが最強ということで話は終わりになってしまう。でも世の中のものごとにはグラデーションがあり、僕らのモチベーションやスキルにだってムラがある。よく「とことんやる人/パチ組みで終わらせる人」を分けて語られるプラモデルだけど、「全部できる/できない/全部やりたい/ちょっとしか手を入れたくない」は同居していいし、その日の気分で変わっていいはずだ。

 タミヤのバイク模型がそうであるように、ハセガワのVT250Fも「そのままでもかなりそれっぽいし、さらに手を入れたらもっとよくなる道筋が見える」というのがすごくいい。特徴的なホイールのパーツ分割はマスキングと塗装前提の設計思想ならまず出てこなかっただろうし、エンジンとフレームの佇まいもプラスチックのままでそれなりに実感がある。それでも実車でシルバーのところをあくまで灰色のままにしてあるのがハセガワらしく、ちょっと遠いところから「頑張って塗ってみようぜ」と声をかけてくれるようにも感じられる。

 プラスチックパーツをただ切って貼るだけ。ハセガワ流の小さなパーツがたくさんある「実車を組んでいるような緻密な再現」は少々組みごたえがあるが、あえての「刺し身」で組んでこのルックだ。なによりも、1パーツだけ用意されたブルーのパーツがこのバイクのシートを鮮やかに彩ってくれる。ここからさらにデカールを貼ったら、プラモデルを知らない人だって「これ、キミが作ったの?かっこいいじゃん」と驚いてくれるはずだ。色が付いているアドバンテージというのはそれくらい大きいし、「さらに手を入れる」というモチベーションにも繋がる。ハセガワのバイク模型の歴史がちょっと動いた日、みんなもぜひ体感してほしい。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

素敵なプレゼントで2度完成を楽しめるプラモデル。「ハセガワ スバル360 デラックス w/ルーフキャリア」

▲ハセガワの車模型シリーズの中でもとってもかわいいアイコンとして大人気!「スバル360」

 1997年にハセガワから発売された「1/24 スバル 360」。多数のバリエーションが発売されていて、ハセガワの車模型を代表する人気キットです。バリエーションごとにボディはさまざまな成型色を纏っていたりして、塗らなくてもとってもかわいい車模型が完成します。そんなプラモに、素敵なプレゼントパーツがセットされた新たな仲間が加わりました。「ハセガワ スバル360 デラックス w/ルーフキャリア」です。

▲エッチング製のルーフキャリア! 金属パーツならではのシルバー感を活かして、塗らずに組んでセットするのも良いですね

 てんとう虫の愛称で親しまれている本車の丸みあるデザインに合わせた「ルーフキャリア」が新規パーツとしてセットされました。このパーツの良いところは2つ。金属製ならではのシルバーを活かして、塗らなくてもかっこいいルーフキャリアになる。もう一つは、いつでも好きな時に取り付けられるパーツであることです。

 ルーフキャリアを付けない状態でまず組んで、スバル360のすっぴんの姿を楽しむ。「よし、エッチングパーツにチャレンジしてみよう!!」ってなってからルーフキャリアをつけたカスタムも楽しめるという、ひとつの箱で2度完成を楽しめるプラモなのです。

▲車内などは黒成型。ボディやシャーシはメインカラー。そして各部のメッキパーツと、組むだけで目が喜べる仕様になっています

 ルーフ部分と後部ガラスが1体になったクリアーパーツがユニーク。これ、そのままクリアーの状態で中身が見えるモデルとして作っても楽しそうです。

▲後ろ姿もとってもキュート。組み立ても難しいところは本当に無くて、1時間半くらいで車になります

 バリエーションキットの目玉パーツを取り付けなくてもきちんと形になるので、「エッチングパーツ難しそうだな〜」って人でもこのキットは安心です。しかもこのナイスなアイボリーの成型色によって、組むだけでもとっても楽しい体験があなたをお待ちしております。思う存分すっぴんの可愛さを楽しんだら、ぜひルーフキャリアでドレスアップしてみてください。そういう楽しみをしていい自由度が、このプラモには詰まっています。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「プラモの刺身の盛り合わせ」と「方丈記」が教えてくれた、これからのプラモの楽しみ方。

▲一切塗ってない、組んだだけのプラモたち。プラスチックの質感は美しいから、ただ作って並べる、それだけで最高にプラモは楽しいんだぜ。いつも他所行きな気分だと疲れちゃうよね

 ここにあるプラモたちは皆すっぴん。「プラモの刺身」である。こう並ぶとまさに盛り合わせだ。どうだい? 盛り合わせになるとめちゃくちゃ豊かに見えるだろう。そう、プラモってのはこれがいいんだ。プラスチックの色とプラの質感ってのは、逆に塗装したプラモにはない魅力がある。だから素敵な色を纏ったプラモを見たり、作ったりすると、また別な満足感が得られるのだ。これもまたプラモの楽しさである。

▲刺身も赤身、白身、青魚、甲殻類などが並ぶと一気に色が増えてワクワクする。目からの刺激で既に酒がうまい

 そして今日も良い色のプラモが俺の家にやってきた。「1/24 ハセガワ ヒストリックカーシリーズ 三菱 コルト ギャラン GTO-MR」だ。このプラモ、箱を開けると鮮やかなオレンジのパーツが目に飛び込んでくる。良い色を纏ったプラモはこの「箱を開けた瞬間」がたまらなく楽しい。イメージ通り、もしくはそれを超えた色のパーツなんかが出てくると嬉しくてつい「出来てる!!」と叫んでしまうほどだ。

▲車模型と言ったらボディだ。この光沢感と見事なオレンジ。まさに「出来てる」の一言
▲航空機の操縦席を思わせるラウンドタイプの計器盤が最高にかっこいい。内側のパーツが黒で成型されているので、組むだけでボディと色が異なり、より室内らしさが出る
▲パーツをカットして、接着剤で貼っただけ。各部のイメージが大まかに色分けされていること、メッキパーツによるゴージャスな質感で、ここまでカッコ良くなる

 箱を開けた瞬間「出来てる」と思ったプラモに、素直に応えた。こうやってまた一つ、自分のコレクションが軽やかに増えていく。既に棚にいる仲間たちの中に、鮮やかなオレンジが入ったことで俺の盛り合わせはより豊かな景色になった。ちょっと「サーモン」みたいだ。サーモンって盛り合わせの中でも赤でも白でもないアクセントカラーな存在だから、このコルト ギャランも棚の中にちょうど良いアクセントを与えてくれている。

 刺身? 盛り合わせ? なんじゃそりゃと思ってもらってもちろん良い。でも、どんな趣味にもウェイトがあって良いんだ。プラモだったら、買うだけでも良い、組むだけでも良い、好きな色1色で塗るのも良い。そして自分の理想像を追い求めてやり切っても良い。このメリハリに乗れると、趣味ってのは長続きするし、実はより深く楽しめる。

 日本三大随筆の一つ、作/鴨長明による「方丈記」(他に徒然草、枕草子)でもそのようなことが書かれていて、本書を読んでから、“プラモを作ることへの姿勢”が大きく変化した。
 およそ800年前に書かれた本書は、京都・下鴨神社の禰宜の一族として生まれた鴨長明の挫折、都を立て続けに襲った5度の大災害の克明な様子(大地震・大火・大飢饉・辻風といった災害のことが綴られていて歴史的価値が高い。さらに遷都も災害扱いしているのがなるほどで面白い)、それらを経て辿り着いた「方丈の庵」の中で彼が見つけたハッピーライフの考え方を記したとってもユニークな1冊だ。

 「念仏を唱えるのも大変だったら、毎日唱えなくても良い」。「好きで弾いている琵琶の音も、人の耳を喜ばせるのではなく、自分の心の慰みとしているの……」。そう、俺が楽しいように楽しむってのが良い人生なんじゃないって800年も前の先輩が楽しんでいる様子が本書には美しい文章で綴られている。

 そして鴨長明がすごいところは、他の人へのリスペクトな感情も忘れていないことだ。自分が良いなと思ったものをもっと趣深い人が見たら、さらに何かを得られるのだろうと言っている。自由にやるのもいいけど、周囲へのリスペクトって気持ちは趣味にとってとても大切。「方丈記」はまさに趣味を楽しむ人の考え方の「盛り合わせ」と言っても良い、プラモが楽しくなる本なのだ。

▲自分の心が良いと思ったことなら、どう楽しんでもいい。それが趣味ってもんだぜ。思いっきりやろう 

 大好きな趣味だからこそ、周囲を見ると色々悩んだり嫉妬したりと言うマイナスな感情が生まれるのもわかる。でもそんな時は、刺身のようにウェイトを軽くしたり、全く別の方法で作ることにチャレンジしてみたり、いっそのこと一旦遠ざかってみたりするのも悪くないことだと思う。俺の棚にあるプラモの盛り合わせも、自分の機嫌を取る役目を大きく果たしてくれている。自分が良いなと思ったことでプラモを、楽しもうじゃないか。そしてなんか迷ったら、nippperにアクセスして欲しい。ここにはさまざまな人の盛り合わせが用意されているからね。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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花金だ!仕事帰りに買うプラモ。色がついている「ハセガワ 1/24 ミニ クーパー スポーツパックリミテッド(1998)」でミニのオーナーになろう!!

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週はハセガワから発売された二つ目のミニ クーパー「1/24 ミニ クーパー スポーツパックリミテッド(1998)」をお届けします。こちらのプラモは先に発売されている「ミニ クーパー 1.3i」をベースに新規パーツを追加したバリエーションキットです。最近のハセガワの車模型はバリエーションキットになると週末でも気軽にドライブできるようなサービスも追加されます。それが成型色です。

▲手前の「スポーツパックリミテッド」の成型色はオレンジ!! 塗らないで組んでも色付きの車ができて嬉しくなっちゃいます。奥が「ミニ クーパー 1.3i」。白成型でどんな色も受け止めます

 完全新規で登場するプラモの多くは「塗装もしやすい白成型パーツ」が採用されることがほとんど(2023年8月に発売される「いすゞ ベレット 1600GTR 前期型(1969)」は、なんと最初からオレンジ成型!)。あなたの好きな色に車を塗ってねというメッセージも込められています。

 そして2台目となるバリエーションキットでは、その車のイメージにあったカラーの成型色で商品化されたりします。同じような車をサクッと作ってコレクションしたい、プラの色を活かしてちょい塗りで仕上げたいなんて人にとっても嬉しい仕様なのです。塗れる人は、成型色が違っても色々やれてしまうもんですから、新規パーツの他に色も変えてくれるのは個人的にはとっても嬉しいです。

▲パッケージになっているメタリックな「ボルケイノオレンジ」をイメージさせるような、オレンジの成型色。またこの成型色、「ボルケイノオレンジ」に塗るときの下地色としても最適なのです。

 キットの塗装図を見て、このオレンジの成型色には、ハセガワからの2つのメッセージが込められていることがわかりました。まずはパッケージのように、組むだけでオレンジの車の雰囲気が楽しめること。そしてもう一つがこの色を、この車のメインカラーのひとつ「ボルケイノオレンジ」の下地色として活用して欲しいということなのです。塗装指示をみるとボルケイノオレンジにするためにはMr.カラーの「GXクリアオレンジ+シルバー」を混ぜたものを塗りましょうとあります。そしてその隣に、その前に「オレンジを下地に塗ると発色が良くなります」とアドバイスが書いてあるのです。なるほど……オレンジ塗らんでええやん。塗ることにも使えるオレンジだったのです。

▲車内はグレーのパーツが多いので、外と中で色が分かれて情報量も多くなります
▲本キットの目玉パーツである「4灯のフォグランプ」
▲本車の特徴であるワイドフェンダー、13インチホイール、扁平タイヤも新規パーツでセットされます。足回りがゴツくなって迫力、可愛さの中にパワフルさも備わったデザインを楽しめます

 バリエーションと言っても「1/24 ミニ クーパー スポーツパックリミテッド(1998)」こそ大本命だという人がいるくらい大人気の車です。成型色にも色が付いているので、組んだだけでもとても様になりますから、ハセガワのミニを初めて作る人にはぜひともオススメしたい仕様です。

 小さな車のプラモでも、ハセガワの生真面目さが詰まった心のプラモなので、細かな部品も多く組み上がるまでそれなりに時間は要します。だからこそ、まずは刺身でも楽しめるこちらの「1/24 ミニ クーパー スポーツパックリミテッド(1998)」をオススメしたいです。こちらを刺身で食べてキットの内容を理解したら、「ミニ クーパー 1.3i」を好きな色で塗って楽しんで、また「1/24 ミニ クーパー スポーツパックリミテッド(1998)」に戻ってくる。どんな塗装も様になる傑作デザインの車ですから、そんな風に何度も楽しめます。そのスタートを、ぜひこの週末に切ってください! 

フミテシ/nippper.com 副編集長

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プラモがもっと作りたくなる優しい言葉は、僕たちの生活を何百倍も楽しくする話。

▲「汚れてる車ってかっこいいよね〜〜、サビてるところとかすごく好き。もっとこういう車見たい」

 息子・ジュニテシ(名付け親・クリスチニキ)が放ったことば。それだけで僕はとても嬉しくて、もっともっと車模型も作りたくなりました。そう、誰かが自分の作ったものを見て言ってくれる言葉ってとっても大事なんです。

 息子はプラモの中では車によく反応します。塗っていても塗っていなくても。僕は息子が自室に遊びに来た時用に、自室の棚の一角に息子が好きそうなプラモを並べたコーナーを用意しています。そこに先日完成させた「ハセガワ 1/24 ミニクーパー 1.3i(1997)」を納車しました。すると、やっぱりパクリと食いついてくれました。「いつもよりいいじゃん!」「ありがとうございます。マイサン」。親子の信頼関係により、ど直球なちょっと生意気な言葉使いも許せます。そして、そんな言葉を言うようになったかと息子の成長に心震わせる、フミテシなのです。

▲車やバイクが中心のマイサンゾーン。彼が楽しく作ったMODEROIDモルカーもいます。立派な車です。あと、アニキで遊ぶのも好きです

 子供はいいなと思ったものをすぐ触りたがります。そう、それで良いのです。だって、「なんか違うな」ってのはマジで見向きしないほど正直なのですから。だから、子供に「かっこいいね! このプラモ」と言われるとマジで嬉しいのです。本当に正直だから。前作ったアバルトも気に入ってもらえました。

 そして僕は、息子がそう思ってくれた模型は、絶対に触ってもらうようにしています。たとえ壊れても良いです。良いと思ったものを手で握って感じた感動が、彼の心に何かを残してくれたら……僕が作った模型たちも絶対に喜んでくれると思うんですよ。

▲子供ってカメラが大好き。そして子供が撮影した写真ってのも僕は大好き

 そしてプラモの写真を撮るのが楽しいみたいで、携帯やコンデジを貸してくれとよく言ってきます。僕が作った模型で、彼が良いなと思ってくれたものを撮影してくれるんです。嬉しいですね〜〜。一生懸命にスマホやコンデジを握る顔を見ているだけで、最高です。まだ一緒にプラモをバリバリ「作る」ことはできないけど、作るだけじゃない楽しみ、「プラモ」と言うものを通して笑顔になれる体験を送れているなと思います。

▲まぼろし〜〜〜。こういうの見ながら二人でガハハと笑い合ってます。プラモがあるから、楽しめているんですね

 ちょっと話がそれましたが、僕は息子が「お父さんの汚い車かっこいいね」(汚いってのが最高)って言ってくれたことで「汚しの車模型、もっと楽しんじゃおう!」ってテンションが上がりました。僕の最高のサポーターは息子ですが、これは大好きな模型仲間や、仕事で信頼できる仲間にも当てはまると思います。そして言ってもらえて嬉しかったことってすごく覚えているんですよね。だから、僕たちも素敵な言葉をキャッチボールしたいと思えてくるんです。プラモにも私生活にもそう言う関係って、本当に素敵で自分の生活が最高に楽しくなると思います。プラモが届けてくれたこの感覚を大事に、毎日を過ごしていこうと思ったのでした。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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「白」は強力な汚し塗料。ひと塗りであなたの模型がリアルに褪色!/Mr.ウェザリングカラー マルチホワイト

▲「白」で汚す? 白ってクリーンなイメージがありますよね

 プラモデルには、塗装で「汚れ」を表現してカッコよくする塗り方があります。それを「ウェザリング」と模型の世界では言っています。そんな汚しを、塗るだけで多くの人がいい感じに楽しめちゃうのが、GSIクレオスの「Mr.ウェザリングカラー」です。この中に「マルチホワイト」という色があります。白ってクリーンなイメージがあるから汚しなの? って思うじゃないですか。「白」はとっても便利な色で、これを模型に塗ることで色が褪色したようになり、経年劣化した雰囲気になるんです。とっても簡単に、目の前の模型に「時間経過の魔法」をかけられます。

▲早速この車のドアに試してみましょう
▲やり方は超簡単。ドアの上部の方に、チョンチョンとマルチホワイトを塗っていきます
▲後は重力を意識して、上から下へと筆を動かします。平筆、もしくは使い古した先がボサボサの筆を使用すると表面の塗料がランダムに流れて自然な雰囲気になります
▲最後は綿棒で調子を見ながら擦って、お好みの加減に塗料を調整します
▲ボンネット側とドアを比較してみてください。ドアの方が彩度がガクンと落ちて、車の塗料が経年劣化したようになりますね。これが白の力です

 マルチホワイトは、塗料の彩度をガッツリと奪っていきます。これにより一段明るくなるので褪色した雰囲気になります。さらに埃汚れを纏っているような雰囲気にもなるのが面白いです。

 汚しというと黒や茶色、グレーなどが一般的ですが「白」もかなり強力に模型を汚せます。ぜひあなたのプラモの彩度を落として褪色表現をしたい時、このマルチホワイトを使ってください。オススメです! 

▲この後、筋彫りにブラウンやグレーを流すと、さらにいい感じに引き締まります

フミテシ/nippper.com 副編集長

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ザクだけじゃない!!ザクの緑はあらゆる模型をカッコよくする。「ガンダムカラースプレー MSグリーン」

▲ガンダムカラースプレーの中にいるかっこいい緑!! それこそが「MS グリーン」

 ザクの緑はかっこいい!! なんと言っても、明るいグリーンがメインカラーってのが洒落ている。汚した塗装をしても色が沈まないから、さまざまな塗装方法も受け入れてくれる。そんなイケてる鮮やかなグリーンをザクだけに独占させておくなんて勿体無くないですか!! あなたの好きな模型にザク色を塗ろうぜ!!

▲ダークイエロー一色でもこのかっこよさ。模型は単色で統一されていると美しいのだ

 設定の色をパーツ分割で再現!!! ってのもいいけど、そのモチーフのイメージカラー1色の塊ってのも良い。彫刻とかにも、石の色1色だからこその美しさがありますよね。プラモも1色だけで塗った時、豊かな色分けとは違うかっこよさを味わえるのです。

▲かっこいい〜〜〜!! 組んで缶スプレーをブシュってするだけ

 ザクの鮮やかなグリーンのかっこよさを1000%味わっている俺。1色で塗りつぶすだけでこんなにもカッコ良いのです。色を塗る楽しさって、このくらい雑なことから始めて良いのです。自分で塗った色に変化した模型は、本当に特別な存在になってくれます。だから、ザクの緑のようにかっこいい色を見つけたら、ぜひあなたの模型に思いっきり塗ってみてください。超楽しいのよ。これが。

▲素敵な色は、あなたが好きな模型を自分だけのものにしてくれます

 ミニクーパーとザクが色で合体。いいなと思った色の引き出しは、塗ることで増えて行きます。いい色だな〜いつか塗ろうではなく、とにかく組んだ模型にエイやと塗ってみる! そうすると目の前にあなただけの色の塊と、楽しかった思い出、そして色の引き出しが加算されます。素敵な経験ですね。このMSグリーンはとっても良い色なので、まずはこれで楽しんでください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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発売から30年のベテラン「ハセガワ 1/700 日本海軍戦艦 金剛」が気づかせてくれたプラモとの触れ合い。

 艦船模型の花形である「戦艦」のプラモで、ハセガワの金剛は2時間ほどでぺろっと食べられる美味しいプラモです。戦艦ってすごい細かなパーツが多くて難しそうじゃん! ってイメージを良い意味で裏切ってくれます。

 「ハセガワ 1/700 日本海軍戦艦 金剛」は、1992年〜1993年、日本の艦船模型においてウォーターラインが新たなスタートを切った大事な年に発売された戦艦のプラモデルであります。

▲金剛型って本当にキレイ! 組むだけでもこのかっこよさですよ。もう発売から30年経ちました。今でも頑張ってます!!

 ウォーターラインシリーズは、静岡のタミヤ・ハセガワ・アオシマ・フジミの4社共同でスタートした艦船模型シリーズ。各メーカーがそれぞれ船を担当し、広大な海の記憶をプラモにしていこうというものです。しかし1992年にフジミが脱退(その後フジミは2008年を皮切りに艦船模型を爆裂リードします。それはまた別のお話)。フジミが担当していた船を3社が分担して再度開発することになりました。フジミの脱退により、ある意味艦船模型の2週目が到来したのです。そしてハセガワは、フジミが担当していた金剛型を、1993年に発売します。現行の体制になってからでは、最も古い戦艦キットでもあります。

▲「戦艦」は艦船模型の中でも随一のボリュームを誇ります。駆逐艦とか小さな船を組んで艦船模型を知ったら、ぜひこのハセガワの金剛に触れてほしいです

 その当時の最新考証で生まれたハセガワの金剛。開発の都合上、船体は共通パーツとなっており、金剛型4隻の細部の違いまでは表現できていません。しかし、艦橋や煙突、後部艦橋など「船の個性」が出る部分には別パーツが用意され、それぞれの違いを演出しています。現在の各艦を新規パーツでバリバリ再現!! みたいなマッチョなプラモではありません。

▲日本の戦艦でも超スマートなフェイス。積み木感覚なブロックになっていて最高
▲ほら、積み木でしょ。これだけで顔ができちゃう
▲艦船模型を初めて組んで、この艦橋が出来上がったらそりゃ感動するでしょう!

 過去のモチーフに模型で触れるように、僕たちは模型自体の歴史の流れに触れることもできます。同じモチーフでも古いプラモ、新しいプラモがあり、それらが今でもお店で同じ棚にいるから……。プラモデルならではのこの状況は、僕たちにとってとても幸せなことだと思います。

▲1993年のハセガワの成型を侮らないでね。とってもキレイでしょ
▲全体はあっさりして見えるけど、艦橋周辺はこの密度。これが戦艦の魅力でもありますね! プラの色もグレーが2種使われていて素敵です。各艤装も大きめなデフォルメで、とっても強そう! 模型らしくていいよね
▲艦船模型の楽しさには、見立ての良さってのもあります。今ではこのトラスを本当に抜いちゃってすごいパーツにしてるけど、その分パーツの扱いは繊細になりますよね

 こと艦船模型だけに注目してみると、最近のキットは「超高解像度」「繊細なプラパーツ」「さらに解像度をあげる金属パーツ」というものが当たり前のようになっています。フジミ模型が接着剤不要の艦NEXTシリーズなどで敷居を下げてみようというアクションはありますが、あのシリーズも非常に「現代の艦船模型の趣向」を組んだ細密モデルであり、まだまだハードルの高さを感じます。

 プラモデルを作る。僕たちのようにたくさんプラモを作ってきた人たちはより良いもの、最新のものをお出ししがちですが、もしかしたらそれはこれからの人にとってはとってもヘヴィなんじゃないか……。形を知る、艦船模型や戦車模型など、それらの世界ならではのキット構成やパーツを貼る楽しさ、パーツを切ったり掴んだりしてワクワクすることは実は先輩プラモの方が寄り添ってくれることもあるのでは……。そういう視点でもう一度プラモを見て、誰かに紹介する。細部の違い、考証の面白さも、まずは模型を形にしてみることからスタートすると思う。多くの人がそのジャンルに入っていけるプラモはどれだろう……。

 模型ってのは優れていると思える基準が人の数だけあると思います。だから、艦船模型がバキバキなマクロの世界に閉じこもるだけだと勿体無い。模型店の棚の前でもっともっと考えても良い時期が、僕にも来たのかもしれないです。ハセガワの金剛は、僕に様々なことを問いかけてくる、そして、すごく楽しい模型でした。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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旅客機プラモほど身近で特別なモチーフはない!/ハセガワ ボーイング787

▲実機展示とキッズエリアを一緒くたにしてしまうワンパクな施設。冷暖房完備で父も子もウレしさしかない。シアトル直送のビールも飲める!

 「私はボーイング787と共に育ちました」とウチの子は自身の生い立ちについて語ることができるでしょう。なにそれカッコいい。住まう常滑には中部国際空港があり、子が生まれた時を同じくしてその空港島に787を展示する商業施設『フライト・オブ・ドリームズ』がオープン。機体周辺にアスレチックなどの遊具が設置されてからは良く通うように。なので「本物の旅客機を間近で見れてスゴい!」という感覚はすっかり薄れ、身近な存在となっているのがこのボーイング787初号機です。

▲国際分業体制で製造されている787、胴体と主翼がここ東海地区にて製造されており中部国際空港から北米の組立工場へ空輸されています

 遊具のこなしで子の健やかな成長を垣間見る場ともなっており、最近では「ボーイング787!」とハッキリと固有名詞を示すようになりました。もう、立派に人間だ。ならばなぜ、ここに初号機があるのか?という問いと向き合う機会をつくった今回。ハセガワから1/200スケールでちょうど良いキットが発売されていたので親子モデリングです。この翼は日本でつくられているんだってー。とか語らいながら。

▲自分にとって未知すぎるジェットエンジンの構造をザックリ示してくれるナイスなパーツ構成。エンジン後端のギザギザがまさに787

 初手のビス締めでまずギョッとします。ヒコーキ模型では尻もちしないように機首にオモリを入れるのが通例。でもこのキットでは同封のビスがオモリとなっています。模型でよく見られる精密ビスではないのでごく普通の+ドライバーが必要です。意外なところはこれくらいで、流し込み接着剤(速乾)と普通のプラモ用接着剤でどしどし貼って組んでいけるキットでした。

▲精密ビスではない本気のビスが箱にゴロッと入っていて「なにごと!?」となりました
▲「思っていたよりデカい!」がこのキットのウレしいところ。主翼全幅が30cmオーバーでなかなかのボリューム

 ボーイング787の先進的な特徴となる炭素繊維複合材でつくられた主翼。従来機と比べて細く長く、そして尖ったフォルムをこのキットではより感じられました。そして飛行時には反った状態になるのですが、キットの主翼も程よく反るのでその機能に思いを馳せれます。炭素繊維複合材も大括りいえばプラスチックの仲間。プラモデルが「しなる」ことがリアルに近いという稀なケース。

▲787に搭乗した際、気流のはげしさで主翼がグワングワンしなるのを目の当たりにしてギョッとしたのですがプラモでも再現できる
▲デカールが美麗かつ立派。貼るのにプレッシャーあるけど俺はANAにしたいんだー!

 パーツを切ったり貼ったりは親子モデリングで楽しみましたが、シメの水転写デカール貼りは大人の時間だ。ヒコーキ模型としてはデカい方なので当然、デカールもデカい。怯える。でも、デカール貼りの必殺の如意棒ことハイキューパーツ『デカールスキージー』で水抜きしていけば堂々のゴール! デカいデカールはしっかり水抜きすればマークフィットなど軟化密着させる必要はありませんでした。心配性で隅にマークセッターをチョンとつけておきましたが。nippperにはデカールを貼るのに心強い記事がいくつもあります。一読してもらって貴方も堂々のゴールをしてほしいです。是非。

▲中古国際空港のある伊勢湾へテイクオフ。プレコー光沢仕上げのテカリ具合にグッとくる!

 子が今年で6歳になりますが、その間幾度も目の当たりにしたボーイング787初号機。正直いってプラモデルとして楽しめる気がずっとしませんでした。戦闘機の方がカッコ良くてアコガレ強いじゃないですか。でも、ヒコーキとして世界の超人技術者らが知恵を結集しているモチーフなので特別でしかない。しかも、自分らもその翼に乗れる。そしてその時は、特別な機会でしかないハズ。次に787に乗る時はどこに行く時なのだろうか。それともウチの子が単身、787に乗って旅立つのだろうか。 そんなリアルな思いを馳せれる最高のプラモデルでした。

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

「傑作プラモ」は組んで初めて実証される/祝再販、ハセガワのF-111A

 傑作映画、傑作ゲーム、傑作小説。「これは傑作ですよ!」と言われると逆にとっつきにくい現象、あるよね。「もし自分が傑作だと思えなかったら世間とズレてるってこと?」とか「オレが体感しなくても傑作なのが確定してるんでしょ!?」と思うのは天邪鬼だろうか。

 プラモデルでも「傑作」と言われるものがいくつもあるけど、そういうのも組んでみなけりゃ自分の体験にはならない!ということでついに巡り会えたハセガワ 1/72 F-111だ。アメリカで主翼が前後に動く飛行機といえば『トップガン』でおなじみF-14トムキャットと、コイツ。

 ハセガワが『超時空要塞マクロス』のVF-1をプラモデルにしたのが2000年。その後ハセガワバルキリーを特集した『月刊モデルグラフィックス2001年4月号』にて「ハセガワバルキリーで初めて飛行機のカタチしたプラモデルを組む人って、飛行機模型がどういうものか知らないでしょ」「ハセガワバルキリーは飛行機模型としてちゃんとリアリティがあるのかっていうと、実は微妙じゃない?」「例えばハセガワにはF-111という超傑作があるけど知ってる?」という話が出てきたのが強烈に記憶に残っている。

 しかし待てど暮らせどハセガワのF-111A(アメリカ空軍がベトナム戦争に投入した元祖&本家のスタンダードな仕様)は店頭で見かけなかったんだよね。んで、いまから4年前、2019年にオーストラリア空軍仕様の「F-111G Aardvark ‘R.A.A.F.’」が再発されたときにすぐ手に入れた。手に入れたけど、組まなかった。「キットが傑作なんだから、オレがちゃんと作れないと傑作が駄作になってしまう!」という恐怖。たかがプラモデル、たかが趣味なのにね。

 んでもって、先日ようやく真打ちであるところの「F-111A アードバーク “ベトナム戦争”」が発売されて、こちらも手に入れた。調べるとA型とG型は主翼の長さや機体各所のちょっとしたディテールが違う。オレの傑作はA型にしよう。そのかわり、ハセガワの傑作として4年前から棚で寝ていた(そして今回のA型再発でオレの中での”本命”から”リリーフ”に変化した)G型を組んじゃおう。刺し身で食べてどんな魚か分かれば、煮るのも焼くのも前向きになれそうじゃないか。

 機体全面に入れられたとても繊細なパネルライン(もちろん凹んだ線で表現されている)に、大柄な胴体。そして独特な分割で怪鳥の姿をうまく捉えている。パーツ同士の合いがあまり良くない、なんて評価をネットで見たこともあったけど、どこにどうパーツが収まるかをしっかり確認しながらイマドキの接着剤を使って組めば、かなりビシッと組める。

 このキットの初版が発売されたのは1989年。ちょうどその前の年に、いまだ模型店に定番アイテムとして並んでいるF-14A(新版)が発売されたけど、「細かく分割して機体をリアルに再現しようぜ!」という気合の入った内容なのでかなり歯ごたえのあるプラモデルだ。このF-111もそういう時代性を背負っているから、たとえば着陸脚周りの精緻な構造なんかは「そこまでやるの!?」とちょっと驚くようなパーツ数を費やしている。

 確かにこれはただカタチを再現しているだけじゃなくて、いまにも動きそうな機械の雰囲気がある。言ってみれば、解像度が高い。組んだら「なんとなくこんな飛行機ですよね」から「オレはF-111のすべてを知っているぞ」と言いたくなるような。

 このキットのすごいところは「前後に動く主翼」というこの機体最大の特徴をあえて殺し、主翼が前進してスラットやフラップが下がった状態で固定するように設計されているところだ。じつは胴体の中には「後退した状態で主翼を接着するホゾ」が用意されているし、実機では主翼の前後動と干渉するのを避けるために動く部分もすべて別パーツ化されている。

 こういうところを観察すると、もしかしたら当初は「前進/後退を選択して組める」という設計だったのかもしれない。そうなると主翼パーツにそれなりの加工が必要になるし、武器を吊るすためのパイロンをどの角度で取り付けるかという指示もかなり難度が上がるから、あえて前進状態で固定したのかもしれないな……と勝手な想像をしてしまう。

 説明書をつらつら見ているだけでは「けっこう大変そうだな」と思っていた組み立ても、案外半日でなんとかなった。図体が大きいので胴体内の燃料タンクだけで任務を遂行できることが多く、主翼下にタンクを装備することはほとんどなかった……といわれるF-111だが、このキットにはタンクが4本も入っているかわりに爆弾のパーツが入っていない。これを別売りで手に入れなければいけないのも前世紀の香りがするが、いまや爆弾のパーツは各社から精巧なものが選び放題。作り時は、むしろ今だと思える。

 エンジンノズルのやたら立体感あるパーツ構成は組んでいて思わず笑顔になってしまうところ。胴体後端部の上下厚をエンジンの直径に合わせようとするとやや齟齬が出るのが難儀だが、裏返して見なければおそらく気にならないだろう。このキットは微に入り細に入り調整することで150点にもなるだろうけど、そもそものポテンシャルがものすごく高いから、ただ組むだけでもそうとうなワンダーが感じられるはずだ。

 いろんな会社からとんでもない解像度の飛行機模型が発売されまくる現代において、いまさら30年以上前の飛行機をあえて組んで、なお「傑作」と感じられるだろうか?というのは完全に杞憂だった。大きく、繊細で、ギミックフルな機体が今にも動きそうなシャープさと立体感でしっかり模型になっている。昭和と平成の間で、ずば抜けて優秀だと言われたその表現力は、いまでも「たしかにこれは傑作であるな」と思わせるに足る、飛行機模型のマイルストーンに違いない。

 F-111Aの再販はものすごく久しぶり。願わくば定期的に模型店の棚に並ぶ「定番品」となってほしいが、まずは今回の再発を心から喜びたい。「レトロさ」とは違う、いまだに通用するエバーグリーンな”良さ”がこのキットには宿っている。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

買ってくるだけで君も魔改造を体験できる特別なプラモデル。「ハセガワ 1/72 イスラエル空軍 F-16I ファイティング ファルコン」

▲イスラエルで魔改造されたF-16!! 実機のようにプラモもひと箱で魔改造の所作を堪能できるのだ!! やべーぞ!!

 改造パーツやアフターパーツなんて必要ない!! このプラモを買ってくるだけで「飛行機模型の改造工程」の所作を味わえる!! しかも完成すると鬼かっこいいスペシャルF-16が完成するのだ。次のフライトへと進みたいアニキにぜひともオススメしたいプラモなんだぜ。「ハセガワ 1/72 イスラエル空軍 F-16I ファイティング ファルコン」。スーファという愛称が付けられています。

▲奥が米軍のF-16A プラス。手前がイスラエルのF-16I。背中にめちゃくちゃなんかついてる〜〜!!

 イスラエルってのは、戦車も飛行機も独自の魔改造がバンバン行われる、まさにモデラーアーミー。しかもすんごい見た目が強そうでかっこいいのばかり爆誕するので、模型メーカーもついつい手が出ちゃうんですね。

 このF-16Iも、アメリカから購入したF-16を鬼改造。コクピットを複座に。その結果、減ってしまった機体内燃料タンクや入り切らない電子機器を、機体外部に増設して補ったことで、見た目の変化はゴリゴリ!! さらにプラモではわからない内部の電子機器の性能も、大幅にグレードアップしているのです。

▲ハセガワの1/72 F-16プラモのオールスター感謝祭。ランナータグをみてみると……
▲さまざまな型式が刻印されています。まさにハセガワF-16プラモの歴史の集合体ですね

 冒頭で言ったように、このプラモは特別なF-16にするために各所でさまざまな工作を要求されます。「穴あけ」「穴埋め」「パーツの切断」「小さな余分ディテールのカット」などです。これらをすることでスーファの形になるのですが、特筆すべきは全て「プラパーツ」でこの工程を楽しめるということです。アフターパーツ的な金属やレジンはありません。僕たちが普段使っている工具とプラ用接着剤で、ちょっとだけアドバンスな工程に立ち向かえるのです。そう、ドラゴンボールの「カリン塔」のように“登る”という単純作業で、強くなれるようなプラモなのです。

▲余分箇所を切断する「カッターマーク」、穴を開ける「ドリルマーク」がめちゃくちゃ登場します
▲お? なんか頭良さそうな指示が出てきたぞ!! パーツを切断して、図のように取り付ける?? 俺はディテールを目印に雰囲気で取り付けちゃうぜ
▲元々ある翼のパイロンを切り出します。勇気が入りますよね。焦らずデザインナイフで何度もなぞります。ポイントは力を入れないこと。パーツの境目を優しく何度もなぞると綺麗にカットできます
▲カットしたらG1のパーツを取り付けます。これでスーファの仕様になります

 元々あるパーツをカットして、全く異なるパーツと差し替える。プラモに慣れてくると受け入れられる行為(いや、めんどいのは今でも嫌だ!!)ですが、初めては誰でも緊張します。うまく切り出せて、カットした部分にピタリとパーツがあった瞬間は「おれ、できるじゃん!」ってすげー自己肯定感がライジングしますよ。これもプラモの楽しさなんですよね!!

▲スーファの大トロ3種盛り。背ビレ、左右のコンフォーマルタンクの登場です

 追加装備、改修された箇所があるモチーフというのは、やっぱり作っていて盛り上がります。スーファは特に元のF-16から大きく形状が変わるので、作っていて楽しいです。

▲美しい背中のラインに沿って装着されるコンフォーマルタンク。しっかりと位置決めして、強力な速乾流し込み接着剤で1発勝負を決めようぜ!!
▲たくさんの工程を経て辿り着くお姿!! この時のブンドドは格別です

 与えられたパーツを素直に組んで出来上がるプラモも楽しいですが、メーカーから「この形にするには、ちょっとだけ君たちにミッションをクリアしてもらいたい。頼む!」と言われているようなプラモもすごく楽しいのですよ。そういうスタンスのやりとりができるからこそプラモになれる、プラモとして送り出せるモチーフもあるわけです。ハセガワのF-16Iは、そう言ったプラモの中でも手に入れやすく、かつ完成後にめちゃくちゃかっこいい飛行機をゲットできるのでオススメです。形になった時、あなたは次のステージに立っていると思いますよ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。ハセガワのヒストリックカー1番「トヨタ 2000GT」を作る最高の週末!!

▲箱を開けた瞬間にこのテロテロの光沢ボディとご対面! 最高の週末が開幕!!

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週は日本を代表する名車「トヨタ 2000GT」のプラモをご紹介します。
 このプラモは、今最も車模型に熱いメーカーである「ハセガワ」の、ヒストリックカーシリーズ第1弾として発売されました。ヒストリックカーシリーズは現在のハセガワの看板とも言えるシリーズで、ノスタルジックな車や、ちょっと前のネオクラシックとも言える車など魅力的な車がどんどんラインナップされています。あれもこれも作ってみたいんですよ〜〜。

▲「ヒストリックカーシリーズ1」という文字が輝いて見えますね

 プラモは1993年に発売。2年後の1995年にはマスターグレード ガンダムが発売される……そんなちょっと前の時期の模型です。現在のヒストリックカーシリーズは、できるだけ実車の細部まで彫刻やパーツ分割で表現していこうという商品になっていますが、このトヨタ 2000GTは、箱を開けてみるとなるべくシンプルなパーツ構成で実車の魅力をプラモで表現してみようという内容になっています。時代によってシリーズの中で表現が変わっていくと言うのを味わうのも、プラモの楽しさですね。

▲嬉しいのがふんだんなメッキパーツ。これにより組みあげただけでとってもゴージャスな仕上がりになります
▲インテリアのウッド張りはデカールで表現します。ボディに貼るメタルシールも付属

 足回りのフィッティングも良く、しっかりとタイヤが地面に接地します。組み立てで気をつけたいのはメッキパーツの取り扱いです。大きなメッキパーツを貼るときは、接着面のメッキをデザインナイフで削ってプラ用接着剤でがっちり貼りましょう。小さなメッキパーツは、セメダインの「ハイグレード模型用」を使用すると快適にメッキパーツを接着できます。このキット発売当時にはなかった、ハイグレード模型用のような便利接着剤のおかげで、ちょっと昔のプラモがさらに組みやすくなる。マテリアルの進化もプラモを通して知る。ますますプラモ作りが楽しくなっちゃう!! ナイス週末。

▲大々満足!!! パーツを切って貼っただけでこの美しさ! ボディに反射する光が眩しい〜〜
▲多くの人を虜にしたのも納得のデザインです

 今見てもとても美しいパーツ成型と流麗なボディライン。さらに超ゴージャスなメッキパーツ。この内容のプラモが2000円以内(アマゾン価格)で購入できるなんて幸せです。お好きな色に塗って自分だけのトヨタ 2000GTにしても良いですし、ハセガワの美しい純白成型のボディをそのまま堪能するもよしです。多くの人にぜひとも組んでほしい車模型です。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

冷戦真っ只中に生まれたハセガワの情熱に会い行く。「ハセガワ 1/72 Mig-27 フロッガーD」

 プラモの歴史は僕が生まれるずっと前から始まっている。むしろ過去のキットに会いに行く方が多いくらいだ。nippperでけんたろうが書いた旧版の「ハセガワ 1/72 F-4EJ ファントムII」の記事は、僕達よりも大先輩のプラモを手にする楽しさ、組んでみる勇気を僕に与えてくれた。古いプラモも模型店の“現在のステージ”にしっかりと立っているのだ。

▲1977年に発売された「MiG-23」をベースに専用パーツを追加して翌年発売されたMiG-27。ミグやスホーイって響きは、現代でも未知のものに触る感覚が僕にはある

 2023年に、このMiG-27 フロッガーDは再生産され店頭に並んだ。可変翼に武装をどっさり積んだかっこいいパッケージアートに惹かれて、僕は購入。ハセガワのロシア機といえば、フランカーなど近年のプラモしか組んだことがなかったので、冷戦真っ只中の時代に開発されたプラモに触るのかとちょっとした興奮を覚えた。そして、箱を開け、説明書を手に取るといきなり「西と東」の世界が僕の目の前に飛び込んできた。

▲上から当時のソビエトの飛行機が並ぶ。そして下2機はF-16、F-15と西側を代表する戦闘機が描かれている

 当時の空の様子が見えてくる、ソビエト機と西側の飛行機の比較イラストからフロッガーとの物語が始まるのだ。当時手にした人も、今このキットを手にした僕も「ワクワク」な気分は変わらないんじゃないかと思える。

▲組み立て時は錘が必要なので、下の記事を参考に準備しよう

 箱を開けると、各パーツの美しさに驚いた。「金型を整備したんですか?」って言いたくなるくらい、各パーツはシャープで、バリもほとんどない。1977年に生まれたキットとは思えない清潔感がそこにはあった。

▲多くのモールドは凸。凸と凹のディテールが共存したプラモ

 パネルラインは実機とは異なる箇所が多いようだが、組んで行くとそのシルエットはMig-27にしか見えない。今よりも取材が困難であった時代にひと目みてそのモチーフだとわかるプラモを開発したスタッフには、本当に驚かされる。それはハセガワに限ったことではなく、他のメーカーでも言えること。いにしえのプラモを跨がず、手に取るとそういった情熱を体感できるのだ。

▲ちょっとにこやかなソビエトアニキ。良い表情だ。コクピットに乗せよう!
▲Mig-27はベースとなったMig-23とは機首が異なる。そのため胴体より先の機首で別パーツ化されている。キャノピーのパーツもバチピタ。開閉は選択式で、後部のキャノピーは接着しなくてもある程度固定される
▲この飛行機の最大の特徴である可変翼。無理なギミックを入れずに、ギアの噛み合わせのような構造(今でも定番な構造として各メーカーで採用されている)で実現
▲機種と胴体の合体は面と面のダイレクト合体。機首側には受けが、胴体側には大きめの軸があるので、がっちり接着できる
▲キットは飛行状態を駐機状態を選択できる。駐機状態にすると、垂直尾翼をこんなふうに折りたたむようだ。プラモを作って知るギミック。作るってのは本当に楽しい発見の連続なのだ

 この飛行機は、可変後退翼戦闘機MiG-23の対地攻撃能力を発達させた戦闘/攻撃機。可変後退翼や尾翼はMiG-23と同じだが、レーダー火器管制装置が取り外されたため、機首は偏平な形に改められ、コクピットは防弾装甲されている。パイロンが7ヶ所に増設され、外部兵装量の増大が計られているのも特徴。そのためキットも武装をどさっと装備でき、迫力あるシルエットを拝めるのだ。

▲ひと箱の中にUB-32ロケット弾ポッド×2、爆弾×2、K-13(AA-2アトール)空対空ミサイル×2、大型増槽×1、落下式増槽×2がセットされる。飛行機と武装がこれだけ入って1000円はとってもお得だ
▲ソビエト機らしい、西側にはないこのシルエット! かっこいいぜ

 細かなパーツはほとんどなく、1時間程度で飛行機になった。そしてこのシルエットの良さである。冷戦真っ只中の時代に、この形に到達し、武装もどっさり付けて発売したハセガワのパワーに感動してしまった。ソビエト/ロシアの飛行機は近年、本国ロシアだけでなく東欧や中国のメーカーから新キットが多数リリースされている。それらも素晴らしいものがたくさんあるが、こうやってコレクションサイズに見合ったキット内容で、コレクションに適した価格で普通に提供されているプラモが、今も僕らの目の前にあるのだ。プラモの棚にはまだまだ面白いキットがたくさんある。ハセガワのレジェンドフロッガーDは、そんなことを改めて僕に教えてくれたのだった。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

貼れば即入社!! お気に入りのアニキを憧れの「プラモメーカーのスタッフ」にする魔法。

▲デカールに入っているメーカーロゴで、スタッフになろうぜ! 就職!!

 俺たちが敬愛してやまないプラモのアニキたち。彼らを全員プラモメーカースタッフにできる最高のデカールが、各模型メーカーのプラモ中に入っているぞ。そう、水転写デカールに入っている「メーカーロゴ」だ! シートのすみっこに印刷されていることが多いぞ。これをカットして貼るだけで即入社なのだ。

▲2003年タミヤ入社のヨシおじさんが爆誕

 タミヤのデカールには、キットの製造年号やどのキットのデカールか分かるようにする識別ナンバーが書いてある。これなんて入社年度と社員番号にしか俺には見えないね!! この数字に着目すれば、ベテラン社員と新米社員の融合待ったなし!!

▲転職だ!!!俺もイノベーションするんだ!!!

 メーカーロゴを貼るだけで、アニキたちの衣服がスタッフTシャツやシャツに早変わり。兵隊さんに貼っても全然OKだ!! メーカーロゴを纏ったアニキたちを、お気に入りの模型の隣に置いて、俺たちだけの景色を楽しもうぜ!! 

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

“いにしえのモノ”とまたいでいた半世紀物のプラモデル。作って分かった、今でもお店にある理由。

 このキット「ハセガワ 1/72 F-4EJ ファントムII」が発売されたのが、半世紀前の1972年。航空自衛隊でファントムを導入して間も無い頃でした。現在はF-4 ファントムだけで飛行機模型の棚を満載にできるくらい新旧様々なプラモが発売されています。

 そんなF-4 ファントムのプラモ、最近も最新キットが出るくらいですから、令和のプラモの方が解像度が高くてすごいプラモがたくさん発売されています。ハセガワにも、今回紹介するキットをリニューアルしたF-4があり、あらゆるバリエーションに対応したところなど夢のようなキットになっています。そのためこの1972年に発売された「1/72 F-4EJ ファントムII」を“いにしえのモノ”としてまたいでしまうところはありました。

 しかし!! そんな古いキットでもハセガワはデカールや説明書、パッケージをリニューアルしつつ現在でも流通しているのです。だからこそ気になってきました……。

 早速買ってきて中身を見てびっくり!! 迫力のボディがドンと入っています。昨今の、パーツが細分化されたキットではあまり見当たらない、塊パーツでジェット戦闘機とわからせるパワーが箱の中にあふれています。今のキットは、ファントムの細かいバリエーションを最初から想定してキット開発に入っているので、機首と胴体、さらにノーズまで一体なんてことはほとんどありません。

 ドリル? いらないいらない。パイロン接続の穴開けといたから! スピードブレーキはこれぐらいの太いスジのほうが落っこちてきそうだろ! ガツンとくる下面のパーツにクラクラ。見えづらいかもですが、凸モールドのパネルラインも縦横に走っています。

 コクピットだってシンプルです。後席のアニキが四角いファイルか何かを持っているのが面白いですね。フィギュアに演出が入っているなんて最高ですね!

 そして、組んでみるとめっちゃシンプルですぐカタチになるのです。単純にEJを志向したキットですから、バリエーション寄り道なしの直行。これがジェット戦闘機のマッハだ!

 そして脚が生えて、F-4ファントムIIが顕現す。こりゃあF-4です。このなんともいえない、当時のフィルムカメラで撮ったような空気感をまとっている姿がいいですね。

 デカールも超シンプルです。自衛隊機は取材が行き届くだけに、パネル番号表記まで丹念に追った素晴らしいデカールも多いところですが、きざみネギと天かすだけみたいなこのデカールは、プラモを手早く食べるにはちょうどよい分量です。

 機体から吊るす装備として対空ミサイルと、増槽がついてきます。1972年のF-4はまだまだ導入したてですから、上を向いて対空のことだけ考えていたころ。下も見なきゃマズくね? ってなるきっかけのベレンコさんが飛んでくる(ベレンコ中尉亡命事件)のは4年後ですね。

 ちょっとノーズがカッコよすぎないかなって現在の目で見ると思ってしまいますが、それもまた良さ。実物よりカッコいい模型なんて山ほどありますからね。

 こんな手早く作れてしまうので、シンプルにF-4の良さが受け取れます。そこに当時のハセガワの人たちが「取材してきたF-4、めっちゃカッコよかったよ」と言って興奮しているテンションの高さすら感じ取れる内容なんです。

 だからバシバシ組んでみて、ぐるぐる回してみてしまう。めっちゃ速そう! めっちゃ飛びそう、どうですこの横向きのスピード感……。現代F-4キットはサービスが行き届いていて、踏み込んだ部分がいくつもあって、このキットより優れているところはいくつもあり、ハセガワ自身も1990年に新しいF-4キットを発売しています。

 しかし、このキットはF-4の良さをフォルムよく、シンプルかつ鋭く表現しています。なぜ半世紀を経ってもこの製品が現役でいられるか、それが組んでみてよくわかったのでした。飛行機模型の棚に定番としている1972年製のハセガワファントムプラモ。ぜひあなたも組んでください。

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

窓枠にあえて「プラスチックの色」を足す。飛行機模型の楽しいチョイ塗りは「窓枠」にあった話。

▲全部塗るのは大変だ。でも、あの透明パーツに1色足すだけで、ちょっと特別なものになるんじゃないかな?

 プラモってのはどのように楽しみたいか、どんだけカロリーをかけたいかを、自分の匙加減で決められる。だからとっても楽しい。僕なんかは組むのが好きだから、色を塗らないで組んだだけのプラモをたくさん棚に並べている。そこから「これ塗ってみようかな〜」って感じで選んで、ぺろぺろ塗ったりしている。そんな感じで、別にガッツリ塗りたいとかじゃなく、「ぺろっと塗装という行為を楽しみたいな〜」という気分で飛行機模型を眺めていた。その時だ、「あ〜、ここに色が無いじゃないか。成型色で再現!!」なんてフレーズが頭をよぎった。

▲そう、キャノピーの窓枠だ。ここにはグレーの成型色(プラスチックの色)が無い。成型色が再現されていない

 もしここにプラスチックの色を塗ったらどうなるだろう? もしかしていい感じにまとまってカッコよく見えたりするのかな? F-15の窓枠ならおそらく15分もあれば筆塗りできるだろう。塗装を楽しみたい欲求を満たすのにも最適だ。

▲ちょっと成型色より暗い!! 再現って難しいね!! でも色を混ぜたり、細い線を描こうとチャレンジしたり。少ない面積なのにめっちゃ楽しい!

 プラスチックの色に近づけようと、手持ちのグレーと白を混ぜてみたり、細い枠をはみ出さないようにそ〜っと筆を動かしたりと、塗装の楽しさがキャノピーには凝縮されていた。はみ出しちゃって、ツマヨウジでコリコリと塗装を剥がしている時も、だんだん窓枠が整っていくのをダイレクトに感じ取れるので楽しい。

▲できた! 調色って難しいね! 次はもっと良い色を作るぞ

 窓枠に色を塗るだけで、機首の色と近くなり、飛行機らしくなる。何より、全塗装した時と同じような楽しさと快感、趣味に没入している時の面白さを窓枠を塗るだけで体感できた。もし、グレーじゃ無い成型色の飛行機模型でこれをやったら、さらに楽しくなるに違いない。飛行機模型の楽しいチョイ塗りは「窓枠」にあった。どんどん塗れば、筆塗りのスキルもアップするだろう。刺身をちょっと炙る感覚で、これからも楽しんでいこうと思う。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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花金だ!仕事帰りに買うプラモ。ノスタルジーな美しさをストレスなく楽しめる「F-15」。ハセガワの定番ヴィンテージで乾杯。

▲箱を開けた瞬間、各部ができてる!! しかもパーツがとっても綺麗。うれしい〜〜

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週はジェット戦闘機プラモの大人気機種「F-15」のプラモをピックアップ。紹介するのは、1974年に発売されたF-15をベースにした旧版の方のイーグル「ハセガワ 1/72 F-15D/DJ イーグル」!! 小さい箱から大きなプラモが1時間で完成するまさに花金プラモにぴったりなジェット戦闘機プラモです。

 ハセガワは、1998年にリニューアルキットとして「F-15J イーグル」を発売したことで、今回ご紹介するF-15のプラモは、旧キットの方なんて呼ばれたりします。この古いF-15も定期的に定番キットとして発売されているので、お店では新旧入り混じって販売されているんです。古いからって侮るなかれ。F-15の形を爆速で楽しみたい! って人にはすごく寄り添ってくれるアニキなプラモなんですぜ!

▲量販店などでは1000円くらいで購入できるプラモ。基本的な武装もセットされてますよ!

 量販店や通販サイトだと1000円あれば購入できるナイスプラモ。しかもF-15って元がなかなかの大きさなので、1/72スケールでも完成すると大満足のボリュームを味わえます。凸モールドも綺麗だし、ランナー(プラモのパーツが繋がった枠のこと)写真を見て貰えば分かる通り、パーツ表面も超綺麗なんですよ。このクオリティには改めて驚かされました。

 組み立てはマジでマッハ! 複座のコクピットが5パーツほどで完成し、それを上下から本体パーツを挟み込むようにして組み立てれば、ほぼF-15の形が現れます。

▲コクピットを組んだら上下でバコーン! ここまで5分!!
▲びっくりするくらい癖のないフィット感。超組みやすいです。流し込み接着剤があれば、何の苦労もありません
▲冗談じゃなくマッハでできちゃった!! 楽しすぎます!

 どこからどう見てもF-15と言えるプラモが1時間しないで組み上がります。キャノピーもしっかりとフィットしますので(写真は接着せずにキャノピーを置いただけの状態)、最後の最後でがっかり……なんてこともありません。パーツの擦り合わせとか、僕はどこもやってないです。ジェット戦闘機の花形のひとつ「F-15 イーグル」の形をここまで楽しく、爆速で組み上げられるプラモってだけでも、旧版のハセガワ F-15は存在価値を示していると思います。

 F-15は世界中のメーカーから発売されているアイドル飛行機模型。だから店頭では新旧入り乱れながら、内容も複雑なものからシンプルなものまでズラーっと並べられています。そこからぜひ、1度この「旧版 ハセガワ 1/72 F-15D/DJ イーグル」を摘んでみてください。昭和の「アイドル懐かし映像」のようなノスタルジーある美しさをその手にできます。このプラモでF-15の形を知って、あなたの次の推しを探しに行くってのも楽しいですよ。

▲かっけ〜〜〜!!! 約1000円で最高最速のブンドド体験もできます
▲小さな箱からでっかい飛行機が出てくるぞ!! 最高だろ

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

バイクのプラモデルを作るなら、30MM用のマーカーがオススメです。

 残業で疲れて家に帰ると、ガレージでは1台のバイクが私を待っていた。知り合いのバイク屋から譲ってもらったこの古いバイクをオーバーホールするのが最近の楽しみなのだ。バラバラにして綺麗にしたパーツを一つ一つ、サービスマニュアルを眺めながら組み上げていく。そういう時間が何物にも代えがたい……。

 そんな妄想をしながら僕はいつもバイクプラモを組んでいる。

 ハセガワのYamaha RZ250はそんな僕の妄想をより高めてくれるプラモデルだ。ホンモノのバイクをそのまま小さくしたんじゃないかと思ってしまうような細かなパーツ分け。説明書には今組んでいるパーツが何なのか、キャブレターなのかサイレンサーなのかエアクリーナーボックスなのか。それがわかるよう組立図の横にしっかり付記されている。レンチを接着剤に置き換えただけ。そんな風に思わせてくれるようなプラモデルだ。

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 しかしながら僕の妄想のノイズになる部分が少しある。このプラモデル、パーツは白と黒のプラスチックで出来ているので、金属部分はシルバーやゴールドに塗らなければいけない。効率よく組み立てようと思ったら説明書を行きつ戻りつ、どのパーツが何色なのかチェックして、まとめて塗装できるところは塗装して……このパーツはいったん組んでから塗装した方が良いかな?この色この色を混ぜるとホンモノに近いのかな?とか考えなきゃいけない。

 塗装が嫌いなわけじゃないよ。効率いい塗装の手順を考えるのも楽しいし、混色して作った色がプラスチックの質感を変えていく瞬間はいつも感動する。でも僕は今、バイクを組んでいるのだ!と思うとそれが少しノイズに感じてしまう。

 それを解決してくれるのがこれ。30Minutes missionsマーカーセットだ。ガンメタ、ゴールド、シルバー、グレー、ブラックという「マシーン」を塗装をするのにいい感じの色が揃っている。しかもマーカーというのは準備や後片付けがほぼ皆無で、「ひとつの色を出したら乾いちゃう前に使い切らなきゃ!」みたいなのがない。だから、シルバーのパーツを組んだらチョチョっと塗ってすぐ次のパーツを組もう!ということができるのでテンポがいい。

 ホンモノのバイクならオーバーホールが終わったら走りこんで、風を感じて……そういう楽しみがあるかもしれない。プラモデルではそういうことはできない。その代わり、このバイクプラモが完成したらきっと次のバイクプラモを作る。何台もバイクを買って組み立てるなんて、エンジニアにでもならない限り難しい。プラモデルならそれができる。何台も何台もバイクを組み立てて、そのうち妄想の中でならエンジニアになれるかも。そんなことを考えながら今日も妄想のガレージでバイクを組み立てるのだ。

もとぴ

東京在住。世界を理解するための糸口としてプラモデルを制作中。趣味の記録や思索のためにnoteも書いています。

ビビっていたプラモ。開けたらとても優しい先輩みたいでした。「ハセガワ 1/72 F-106A デルタダート」

 1969年生まれというハセガワのレジェンドプラモ「1/72 F-106A デルタダート」が、2023年の3月末に再生産されていた。アメリカで実機を見てからいつかは作りたいな〜と思っていた飛行機だけに、この再生産を機に作ってみることにした。なんせ僕よりも大先輩のレジェンドプラモだ。中身がどんなものかわからない。そしてハセガワの完成見本写真は、どの完成見本も超うまいので、刺身状態が全く想像できない。だから開けてみないとわからないのである!(開けるだけでも記事になるから、みんなも書いてどんどん送ってくれよな!!)

▲箱に描かれたデルタダートがカッコ良すぎるのよ。作りたくなるっしょ!

この飛行機は、のちにセンチュリーシリーズと言われる飛行機のひとつ。ガンダムのフォーミュラシリーズみたいでかっこいいでしょ。センチュリーシリーズは、なかなかに癖のあるかっこいい飛行機ばかりなのでぜひ検索してみてね。デルタダートは、基本的には核ミサイルを搭載したソ連の大型爆撃機の侵攻を阻止する目的で開発されていた飛行機だ。

▲アメリカ空軍博物館で見たデルタダート。エアインテークからのうねりが超セクシー。ハセガワのキットもこのセクシーさを味わえたので、最高だったぜ!!

 長年飛行機模型の歴史を牽引してきたハセガワ。なので、模型店にあるハセガワのキットには古いものから新しいものまで混在している。冒頭でも書いた通り、デルタダートの初出は1969年。それだけ聞くと「本当に大丈夫なのか?」とビビってしまう。実際に僕はビビったことで、今日までこのキットに触れてこなかった。

▲箱を開けるとビビっていたのが馬鹿らしくなるくらい。スマートなプラモじゃないか

 枠にパーツが収まっている状態で、どれが何のパーツかすべて把握できるほどシンプルなプラモだった。バリはあっても、こんなもんだったらなんてことはない。先輩と楽しく会話する感じで接していこうや。

▲キャノピーの先が尖りすぎていて、マジで指に刺さるレベル。すんごいよ。窓枠のモールドほぼ見えなくなっていた
▲雰囲気あるアニキもセット
▲モールドの多くが凸。リベットなんかも細かく入っていて、表面の情報量が多い

 ディテールやフィギュアの造形を見ると時代を感じるが、パーツの形状や表面はとても美しく、好感が持てる。しかもこの内容のジェット機プラモが、定価1100円(当時はもっと安かったぞとか野暮なことはなしよ)で楽しめるのだ。気軽に買って、パチパチっと組んでみるのにも良い。

▲10分で胴体が完成!! 後ろに向かってぐ〜〜っと絞られたボディが本当にかっこいい

 組んで見ると、全く問題なくパーツがフィット。タミヤの流し込みタイプ速乾や、GSIクレオスのMr.セメントSPのような高性能流し込み接着剤を使用すれば、あっという間に形になる。

▲胴体中央部にあるミサイルベイも表現されており、開状態にしてミサイルを吊るした様子も作れる。飛行時はミサイルベイの扉は閉じる。完成見本写真は閉じた状態で作られていた
▲迫力あるデルタ翼がついて、飛行機の形になった。ここまで30分。デルタダート、めっちゃ組むの楽しいぞ

 やっぱりプラモってものは自分で組んでみないとわからないもんだ。それは良いプラモの価値観が人それぞれだからだ。「古いキットでなんちゃらかんちゃら」と周りの声を聞いて、「組んでみたいな〜」という思いがしゅんと小さくなってしまったあの頃の自分に教えてあげたい!! 作りたいって思いを大事にしようぜってね。

 他の人がハセガワのデルタダートを組んだら、僕と絶対に違う感想を持つと思う。だからプラモ作るってことは、面白いんだと思う。

 最後に僕は、タミヤカラー アクリル塗料のクロームシルバーで塗って、中に入っていたデカールから好きなものをペタペタ貼った。大満足!! アメリカで見てから作りたいな〜って長い間思っていたモヤモヤが解消された。ビビっていたレジェンドプラモとも仲良くなれたし、最高の1日となったのだった。

▲完成まで4時間。めっちゃ楽しかったぜ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

はじめて作るヒコーキ模型は「銀1色」で最高にカッコ良くなる!

▲飛行機模型が恋に落ちる色、「銀」。銀1色塗装は、何度やっても本当に楽しい

 飛行機のプラモデルが一撃でカッコ良くなる塗料、それが「銀」だ!! どんな塗料の「銀」でも良い。手元にある銀を思いっきり筆で塗ったり、缶スプレーやエアブラシで吹き付けたりして欲しい。それだけで、飛行機ってかっこいい! プラモって楽しい!! って絶対になるから!!

 あまりにも快晴だったので、僕は水性ホビーカラーの「シルバー」1本と、コードレスのエアブラシ、ハセガワの飛燕を持って外に出た。天気が良い日に、外で模型を塗るってのは気持ちが良いもんだ。僕が愛用している水性ホビーカラーなら匂いもマイルドなので、周囲に迷惑をかけることもほとんどない。

▲家のベランダへ。外の光は、エアブラシもカッコ良く見せてくれる。こいつもシルバーじゃないか!! やっぱ銀は最強なのよ

 ハセガワの飛燕は、ハセガワの1/72スケールにある飛行機模型の中でも「早い、安い、うまい」を兼ね備えたスーパーキット。ここでのスーパーというのは精密や緻密ではない。箱を開けた瞬間にモデラーにぺた〜っと寄り添ってくれる最高のフレンドリーさが、スーパーなのだ。良い塩梅、まるで慣れ親しんだかぁちゃんの味噌汁のように、いつでも胃をあったかく包んでくれるような優しさに満ちたプラモなのだ。だから、僕は好きな時に、好きな味で楽しめるように常に複数ストックしている。複数購入できる価格帯なので、そう言った思い切りもできる。

▲パーツはこれしかない。パーツが枠に繋がったままの状態で水性ホビーカラーのシルバーを吹き付けるのだ!!
▲外で塗装すると、塗り立ての塗料が光を浴びてキラキラする瞬間が最高にセクシーなのだ。プラモのパーツが何倍もカッコ良く見える。だから自然とテンションが上がり、塗装が楽しくてしょうがなくなる

 プラモのパーツが枠に収まった状態のまま、一気にシルバーを吹き付ける。無機質なグレーの塊が、輝きを放ち、いきなりスペシャルなものへと変貌していく。完全に塗料が乾いたら、後は説明書通りに組み立てるだけだ。

▲キャノピーを銀で筆塗り、タイヤを黒で塗れば、かっこいいシルバー飛燕の完成だ!! よっしゃ!! 今日もプラモが楽しかったぜ

 僕は飛行機模型と銀の組み合わせは、本当に鉄板なかっこよさをゲットできると思っている。ぜひこれから飛行機模型を作るぞという人は、僕のようにランナーのままで塗ったり、一旦全部組んでから「銀」を思いっきり塗って欲しい。美しい輝きを纏った飛行機模型を作り上げられたという、あなたの成功体験が、必ず次のプラモの楽しさへと繋がる。ぜひ新年度の新たなチャレンジのような感じで、やってみて!! 本当に楽しいよ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ランナーから飛び立つエアロスミス/ハセガワ F4U-1D コルセア

▲ボラーレ・ヴィーア(飛んで行きな)

 マイフェイバリット漫画『ジョジョの奇妙な冒険』には、戦闘機の形をしたスタンドが出てきます。その名は「エアロスミス」。エアロスミスの主翼はいわゆる逆ガルという形で、当時中学生の私に強烈なイメージを植え付けていきました。昨年初めて作った戦闘機のプラモデルが零戦だったんですが、主流であるはずの真っすぐな翼が最初はなんだかしっくり来なかった。

▲このそり返る翼が逆ガル翼だッ

 先日手に入れたのはその逆ガル翼を持つ戦闘機、F4U-1D コルセア。ハセガワの1/72コルセアは凸と凹のモールドが混在していて、ベテランキットの雰囲気が漂います。ネイビーのカラーリングやイケてるチェック柄からクールなイメージがあったけど、パーツを見てみるとなかなかにパワフル!グイッと折れ曲がった翼は想像していたよりもずっと大きく、前後の幅が広くてインパクトあります。プロペラも大きいし。

 さて主翼の下側をカバーするパーツは左右の翼が一体化されていますが、このパーツ、ランナーには機体下面を上側にして配置されています。ということは逆ガルの逆、つまりガルの状態なんです。ガルとはすなわちカモメ(gull)の意。絶妙な角度に翼を曲げてスタンバイしています。普段は説明書の順番通りに組んでいくけど、これはもう翼を一番に組むっきゃないぜ……。

▲お先に〜

 小さいパーツを忘れずに挟み込み、主翼の上下を貼り合わせます。気が急いている時にも速乾性の流し込み接着剤があれば問題なし。チョンと隙間に流して押さえておけば、次の手順を確認する十数秒の間にしっかり接着してくれます。大きなパーツは何箇所かチョンチョンしましょう。主翼を手にベランダへ出て、日が落ちる直前に空へ飛ばすと、細かい凸モールド周りや大きな脚庫の窪みに影が落ちて美しい。翼の下面は完成して飾ったらあまり見えなくなるだろうから、今のうちに気付いてよかった。

▲ちょっとメーヴェっぽくもあるよね

 ほとんどの場合、箱絵を見ればプラモの完成形はわかるようになっています。でもパーツがどのように分割されているか、途中どんな形を辿るのかは箱を開けて作ってみないとわからない。そこに「○○みたいで面白い!」とか「何物でもないけど爆裂カッコいいカタチ!」という感動が入り込む余地があるというのは、プラモの素晴らしいところだと思います。

ジョナ

1986年生まれ。東北の住みよい街にて、のんびりとプラモデルをいじる日々を送っている。ファレホLOVE。

ハセガワ新作ザブングルが「可動ロボットプラモ」の形をした、異質さ溢れる怪作だった話。

 「巷を騒がせた完全合体変形のMODEROIDザブングルに続き、ハセガワが1/72でザブングルを発売する!」という春のお祭り状態。しかもプラスチックパーツでほぼ設定通りの色分け済み、接着剤不要のスナップフィット仕様で、ポリパーツを使用した可動モデルと来たら、「あなたにもお手軽に組めるよ!オススメ!」という記事を期待するでしょう。どっこい、今回のハセガワ製ザブングルは普段みなさんが組んでいるロボットモデルとは明らかに違う、ちょっと不思議なプラモデルでございます。

 いかにも飛行機模型で見られるような翼の折り畳み用ヒンジの彫刻は脊髄反射で「さすが飛行機のハセガワ」と言いたくなるポイント。しかしハセガワのここ10年のラインナップのなかで、新規に設計された飛行機モデルはわずかに10点程度にすぎません。現在ハセガワが手掛けているのはキャラクターモデルやカーモデル、自動販売機や女の子フィギュアなどなど、とにかくバラエティに富んでいて「老舗のスケールモデルメーカー」から「総合模型メーカー」へと大変革の真っ最中です。でも、フルカラーの可動人型ロボット(しかも全高259mmというビッグサイズ)となると、同社にとっても初めてのチャレンジになります。

▲「三枚おろし」でトレッドパターンを再現したタイヤの構成に、ハセガワの意地と本気が見え隠れします

 上品で端正なディテールが目を引きますが、パーツの肉厚はかなり薄め。表面のディテールをスポイルする「ヒケ(プラスチックの収縮)」をなるべく出さないようパーツの裏にほとんど補強のリブも入っていませんし、端面を折り曲げて剛性を出したりといったいかにもプラモデル的な処理に頼らず形状に向き合っています。パーツ同士の合わせは高い精度ではあるものの、ガンプラのように「いちど組み付けたらバラすのに難儀するほど強固!」というわけでもありません。組んでいるときの感触はあくまで「組み付けるとパーツがその位置にとどまる程度の嵌合」という印象です。

 また、従来のハセガワの可動モデルでは「小さめのポリパーツで力のかかる軸をなんとか保持する」という心もとない部分がありましたが、今回は大型モデルなのでポリパーツを新造。大径のポリキャップや穴のふたつ開いたポリキャップでどんな軸もガッチリ保持してくれそうじゃありませんか。ここは素直に「やっと新しいポリパーツを開発してくれたんだね!」と喜んだポイント。

▲膝関節はポリパーツによって二重に折れる仕掛け

 しかし、ポリパーツが猛烈にシブくて、プラスチックは薄くてちょっとユルい……というのは、組み始めるとかなり異質に感じます。可動部がスッと動いてピタッと止まるというよりも、かなりの力を入れないと関節が動かず、それにつられて周囲のプラパーツが軋むのを感じるはずです。頑丈さとスムーズな可動を両立する、というロボットモデルの設計ノウハウが、ガンプラではものすごく高次元にまとめられていることが改めて感じられる次第。

 ではハセガワはそのことを理解していないのか?というと、さにあらず。今回は1/72スケールで変形合体ギミックをあえて排し、同社のストロングポイントである「ギミックよりも目指すべき外観を最初に決めて、それをしっかりと追いかける」「スケールモデルらしい繊細なパーツに端正なディテールを入れる」ということを選択しながら、間口を広げるために「ひとまず完成形まで組み上げるだけならば、ガンプラを組むのと同等のスキルがあればOK」という設計を取り入れています。よって、(それがいいことなのか悪いことなのかではなく)一般的なロボットモデルと同じ水準の剛性や可動のスムーズさは持ち合わせていません。

▲内部構造に外装を被せて厚みを出す構成ですが、パーツの厚みはどちらもほぼ同じように見受けられます

 結果的に「パッと見の構成はガンプラのようだけど、組み味は極めてスケールモデル的」という、ガンプラ基準で見ると異質なキットに仕上がっているのが今回のザブングル。色分け済みのパーツは塗装の手順が明快に理解できるし、スナップフィットは仮組みをするときにも接着剤いらず。そしてポリパーツは「フルアクション」を実現するためというよりむしろ、ユニットごとに組み立ててから最後にそれぞれを接続する……という工程を実現するのに寄与しています。

 ポリパーツの渋みに耐えきれないほど繊細な構造のプラスチック製フレームや外装も、接着剤でビシッと貼ればちゃんと剛性が出ますし、合わせ目処理をして全体を塗装する程度のテクニックを持っている人ならば、このキットのポテンシャルを引き出すことができるはずです。逆に言えば、ガンプラみたいにニッパーだけでスパパパーンと組んで、ガッシガシ動かして遊ぶことを推奨できるプラモデルではないのよ、というのがホントのところ。

 ひとまずストレートに接着剤を使わず組んでみましたが、各ユニットが形を現すまでに土日の午後を費やし、全ブロックを接合してビシッとポーズを取らせるためにはそこから30分ほど根気よく取り組む必要がありました。ユルいところ、硬いところ、あきらかに接着したほうが安心できるところが各部にありますが、そうした箇所を見極めて対処できる人ならばもうすこし手際よく組み上げられます。もしもポーズを取らせたければ、関節部を慎重に掴んで、ゆっくり確実に力をかけることを心の底からオススメします。

▲たとえばこのボールジョイントもかなりシブいのですが、ポリパーツ側に直径1mm程度の穴を開けるとはめ込みやすくなります!

 色分け済み、スナップフィット、ポリパーツ同梱のアクションモデル……と捉えるとなかなかビックリするかもしれませんが、「昔ながらのスケールモデル的なプラモデルに対してこれらの要素を取り入れ、単色/固定モデルにはないプレイバリュー(と、「チャレンジできるかも!」と思えるお客さん)を広げる」という取り組みだと捉えれば、なるほどこのキットの手触りもむべなるかな、といった見方に変わるはずです。

 もちろんこれからハセガワが同種のアイテムを展開し続けることで設計の知見が蓄積されていけば、より高い剛性やスムーズな可動を実現できるはずですが、少なくとも今回のザブングルは繊細さ(あえて言うならば、手荒に扱うことを許してくれないスケールモデルのような「脆さ」)があります。いわばその”繊細さ”こそが、ハセガワに受け継がれているスケールモデルメーカー的なDNAなのかもしれません。

▲左がハセガワ製ザブングル、右がMODEROIDザブングル

 完成してみれば、右のMODEROID版とはまったく趣を異にするザブングルが立ち現れます。形やディテールの好みはあれど、大きな体積を持ちながらどこか朴訥とした面構成にハセガワらしい細い線が入れられたこの佇まいは、ある意味で「リアル」を感じさせる……というのはおべんちゃらでもウソでもありません(正直、ワンダーフェスティバルの会場に展示されていた塗装済みの完成見本は「おおっ!」と息を呑むような迫力がありました)。

 そこに至るまでの組み立て工程にはかなり歯ごたえがありますが、独特の存在感とシャープネスを持ち、合体変形機構を排して「徹底的にひとつのシルエットとディテールに全振りしたザブングル」と向き合ったハセガワ。これをどんなふうに捉えるのか(そして感じたことをどう表現して、メーカーにエールを送るか)は、ユーザーの肩にかかっています。「我こそは!」と感じたそこのアナタ。組んで、評して、今後も展開されるであろう(されてほしい!)ザブングル模型のさらなる発展に一役買ってください。みんな、走れ!

©創通・サンライズ 協力/GA Graphic

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

 

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。誰でも爆速で作れるスーパー飛行機模型/ハセガワ F-20 タイガーシャーク

▲かっこいいジェット戦闘機を手頃な値段でサクッと楽しみたい時はこれ!!「ハセガワ 1/72 F-20 タイガーシャーク」

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週は、週末2日でとってもかっこいいジェット戦闘機を楽しめちゃう「ハセガワ 1/72 F-20 タイガーシャーク」をお届けします。このプラモ、1000円でお釣りがきちゃうほどの超お手頃価格なのに、中身はシュッとしています。本当にこういう塩梅の飛行機プラモがあってありがてぇ〜〜ってなること間違いなしなのです。組み立ても一切癖がないので、何度でもおかわりしたくなる魅力があるんですよ!!

▲ランナー3枚で完成! しかも小さなパーツは操縦桿くらいしかないです。最高だぜ
▲パイロットがいるってだけで嬉しい!
▲1/72スケールらしい情報量。各部のスジ彫も綺麗。パーツ形状もご覧の通り、シャキッとしているでしょう〜

 このプラモは1984年生まれ。まもなく40年選手となります。しかしその内容は、これから飛行機模型を始める人も、ジェット戦闘機を試しに組んでみたい人にも全推しできる内容です。各パーツは今の目でも見ても歪みもなく綺麗で、箱を開けた時に不安な気持ちに一切なりません。そしてパーツ数もコンパクトに抑えられているので、飛行機の形に30分でなります。これ大袈裟でなく、撮影しながら組んで30分でブンドドできたので、組み立てだけに集中してもらえればもっと早く組めると思います。

▲飛行機模型の組み立てで、ちょっとだけめんどい着陸脚。このキットはパーツを枠から切り離すだけでほぼ完成します

 小さなパーツは操縦桿くらいで、ほとんどが大き目なパーツで成型されています。だから組み立てスピードが落ちることなく、一気に形にできるのです! ここまでバシバシ組み上がっていくジェット戦闘機のプラモはなかなか無いと思います。

▲胴体の左右貼り合わせもノーストレス。パーツ同士がピッタリ合います
▲主翼と胴体も、仮組み段階でガタつきません。流し込み接着剤をチョンと流してやるだけでピッタリ貼り合わさります
▲かっこいいぜ!! F-20 タイガーシャーク

 とってもスタイリッシュにまとめられた機体でありながら、エアインテークからエンジンノズルまでのセクシーなボディラインは、まるでメリハリあるモデルさんのよう。美しさとかっこよさを兼ね備えたF-20 タイガーシャークというジェット戦闘機を、ランチ価格でゲットできて、しかも爆速で組み立てられるというまさに「花金プラモ」の鑑と言えます。ぜひ今週はこの傑作プラモ「ハセガワ 1/72 F-20 タイガーシャーク」で最高のフライトをお楽しみください!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「完全新金型のB型」に込められた、ハセガワの男気/「1/72 アメリカ海兵隊 F-35 ライトニング2 B型 U.Sマリーン」

 現代最強の多用途戦闘機として、アメリカをはじめ各国で配備が進むF-35シリーズ。空中戦も対地攻撃もこなすマルチロールぶりと、レーダーに映らないステルス性能を両立した、「そんなチート性能の機体って作れるんだ……」と感心するしかない戦闘機である。

▲機体の上面は大きく1パーツで成形。滑らかな曲面が美しい。各部に彫られたジグザグのモールドは、ステルス機ならでは

 このF-35の特徴のひとつが、空軍用・海兵隊用・海軍用というそれぞれ異なった性能を求められる形式を、一機種のサブタイプで賄おうとしている点。現在は通常の空軍型であるA型、海兵隊などが運用するB型、海軍が運用する艦載型のC型の3タイプが運用されているのだ。陸上の基地から飛び立てるA型と違い、海兵隊が使うB型では狭い揚陸艦から離発着できるような短距離離陸・垂直着陸能力が求められるし、海軍が航空母艦で運用するC型は低速での安定性や着艦用の強度が必要。本来ならば別々の飛行機を用意しないといけない状況である。

 それを一種類の飛行機から派生したサブタイプでまとめて賄うことができれば、大幅なコストカットや開発プロセスの省略になって効率的……というのは誰しも考えるが、実現するのは至難の業。F-35がすごいのはそれを成し遂げ、さらに当代随一の空戦性能やステルス性も実現したことである。普通に戦闘機を作るより、グッと高いハードルをクリアした機体なのだ。

 そんなF-35を次々にプラモデルにしているのが、ハセガワである。これまでに空軍向けのA型、海兵隊向けのB型を定番キット(ある程度恒常的に模型店などの店頭に並んでいるキット)としてコンスタントに製品化し、デカールが異なる限定盤も数多くリリースしてきた。
 ちょっと興味深いのが、A型の後に発売されたB型は完全新金型のキットになっている点である。A型とB型には違いが多い。なんせB型は胴体のど真ん中に機体を垂直に持ち上げるための軸駆動式リフトファンがついているし、尾部の排気ノズルだってグネグネと下向きに90°曲がる設計だ。実物の飛行機は設計を流用しているかもしれないけれど、実際にプラモデルにしようと思うと、「A型をちょっと手直ししてB型にする」などという小手先の修正ではどうにもならないのである。

▲リフトファンを組み立てている時間は特別だ
▲開閉選択式の胴体下面ハッチ。開ければ素敵なディテールと出会える
▲排気ノズルは回転レールによって実際に90°下向きに曲げることができる設計。注意して組み立てれば、完成後も動かすことができる


 ハセガワの男気を感じるのは、そんな面倒な飛行機を新しく金型を用意してまでプラモデルにした点だ。A型が出てるんだから、B型までやらなくてもいい(実際、一種類発売しただけのメーカーはある)。にもかかわらず、ハセガワは話題の最新戦闘機のバリエーション展開を諦めなかった。そしてA型もB型も、今時の洗練された作りやすいキットとして製品化したのである。

▲エアインテークパーツや胴体内部に設けられた桁が、的確な胴体の上下貼り合わせを実現。剛性も高い

 キットはそんなハセガワの執念と男気を感じさせず、繊細な質感のモールドがあしらわれた端正なものだ。実機と異なり、設計の流用では再現できなかったバリエーション機を、完全に設計し直してさらりとキット化してみせる。そんなハセガワのクールさに想いを馳せつつ、組み立てたいプラモデルなのである

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

35分の1の日常的なプラモデル/ハセガワのメカトロウィーゴ東雲研究所Ver.

▲全米よ、これが日本のプラモの箱だ!KAWAIIだろう!

 「え?これってプラモなんですか?」プラモに興味のない友人のK君とプラモデル売り場を練り歩いた時の言葉だ。ハセガワのメカトロウィーゴはシリーズを通してK君の大好きな漫画『日常』の作者あらゐけいいち氏がボックスアートを手がけている。限定版の「東雲研究所Ver.」は、ボックスアートをあらゐ氏が描いているだけでなく、マンガ『日常』とのコラボレーション仕様で同作品のキャラクターがこれでもかと好き放題している。「ジグソーパズルかと思いました」というK君には悪いが(?)、コレはプラモである。しかも、ウィーゴというロボットの……。

 箱を開けてみれば同じランナーが2枚ずつ、異なる色で入っている。異なる色の組み合わせのロボットが2体入ってる仕様なのだ。もちろん2体とも色違いなだけの同じ部品なので、説明書とは異なる色の組み合わせを楽しむことだってできる。

 組み立てはスナップフィット。組み立て後も付け外しができるから、コックピットの展開状態も閉じた状態も接着剤無しで作り進めることができる。そう、ウィーゴだけならね。

▲いろんなとこが開くデザインのロボなのだ。

 「~だけならね」なんて含みのある言い方をしたのはオマケでついてくる小学生フィギュア(このロボットは子供が操縦するのだ!)の組み立てには接着剤を使う。キットにはウィーゴ本体と同じ1/35スケールの小学生男子女子が色違いを含めて4体もついてくるのだ。並べることで一気にスケール感が強調される。架空のロボット単体では高さ何メートルだとか何分の一スケールだとか言われてもピンとこないからね。

 もう一つのオマケ。と、いうより今回買った「限定版:東雲研究所Ver.」最大のお目当てとも言える日常のキャラクターフィギュア。安心してくれK君、この東雲研究所Ver.には箱画だけじゃなくてちゃんと部品としても日常が入っているよ。あらゐけいいちキャラが分割されてランナーに収まってる絵面だけで無限に笑える。マンガ『日常』と同じ感触の笑いだ。このオマケも接着剤を使う必要がある。マンガの中で作ったなら、ゆっこが接着剤をひっくり返したりしてると思う。みんなはゆっこじゃないのでひっくり返さずに完成させてヒヤシンス。

▲キャラの瞳にはデカールが用意されている。

 東雲研究所の3名(?)が付属。左からはかせ、はかせ、なの、阪本さ~~~~~~~~~~~~~ん(猫)。左端のコントローラーを持ったデラックスサイズのはかせだけ1/20スケール。残りはウィーゴと同じ1/35スケール。1/20のはかせはデラックスサイズなのだけれど、このパッケージの中では一体だけ浮いたオマケのオマケのさらにオマケみたいな存在。一見唐突に思えるけれどコレは同じくハセガワから発売されている一回り大きい1/20ウィーゴシリーズと並べてね(そっちも買ってね!)という宣伝なのかもしれない。

 この”東雲研究所Ver.”の面白さの真骨頂はこれらを全部並べたところ。元々スケールを謳うデザインのロボットとしてリアル造形のフィギュアを付属させていた1/35ウィーゴ。その横にマンガ体形のキャラクターが「私も1/35です」と言って並ぶ。”なの”は高校生なので小学生より背が高く、はかせは劇中の幼い印象から小学生より背が低く、阪本さん(猫)は劇中で小柄な猫だけれどリアル造形の小学生と並べたらかなりの大猫だ。同じ1/35スケールでも実際の人間や猫のプロポーションとは全然違う「デフォルメされた表現」が浮かび上がる。

 1/35なら何か他にも並べてみたい。そうは言っても戦車は似合わない…と思っていたら海洋堂のキリンセットがドンピシャだった。このキットも動物園に来た小学生がついてくる。まるで友達が出来たみたいな組み合わせだ。架空のEVトラックも同じく架空のロボであるウィーゴと中がよさそう。東雲研究所の一同にも似合うキリンさんと仲間たちだ。スケールだけでなくプラモデルとしてのテンションが揃っている。普段見ない外国の街角でもなければ、ロボットバトルの戦場でもない。見慣れた日本の小学生が、マンガのキャラクターが、ほんのり未来のガジェットが、平和な日常が机の上に広がっていく。こういうのを「日常的なプラモデル」というのかもしれないな。

 果てしなく平和で楽しい……さぁ、どんな友達を増やしていこうか? 

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

「ドラムロVSホーネット」。今日の気付きがプラモをもっと楽しくする。

 小さい頃に見てわからなかった・気が付かなかったものに、大人になってから気が付く……ある人にとっては「ずっと当たり前」に見えているものが、今日の自分にとっては初めての素敵な体験だったりする。そんなちょっとした感動っていいなぁ〜ってことを「バンダイ 1/48スケール ドラムロ」の箱絵が教えてくれました。

▲ホーネットじゃん!! やべ〜〜〜!!

 アニメ「聖戦士ダンバイン」に登場するメカ・ドラムロのプラモに描かれた戦闘機・ホーネット。メカと実際の戦闘機がなんで空中戦やってるの? って思った方はダンバインの公式HPへどうぞ。ゴリラばりにざっくり言いますとダンバインの舞台である海と陸の間にある異世界“バイストン・ウェル”のメカが地上界にやってきてしまうんですね。そこで地上の兵器とどんぱちやりあうってわけです。

▲プラモを作って形を知っただけで、なんだか幸せになれる

飛行機というぼんやりした存在から、「ホーネットじゃん!!」ってなっただけ。ブルっと体が震えました。飛行機プラモを作る前のかつての僕だったら、「ドラムロVSなんか知らん戦闘機」で終わっていた絵。それが「ホーネット」とわかっただけで、急にこの絵のエモ味が格段にアップしました。しかもドラムロのプラモは飛行機のメインスケールのひとつ1/48スケール……。箱絵と同じ夢のバトルを机上でも追体験できる!! ホーネットとわかった瞬間にさまざまな妄想が押し寄せてきて「あ〜プラモ作りたいよ〜〜」って幸せな気分になってしまったのです。

▲中のプラモもすごくかっこいいよ

 さまざまなプラモを作っていくと、こんなアハ体験もあって本当に楽しいですね。このキットはずっと昔からあるものだから「そんなの知ってるよ」という人も多いと思います。でも僕は、今日知りました。そして大人になって飛行機模型を作るようになった(僕の飛行機模型初体験は28歳か29歳頃。10年前ぐらいです)経験があったからこそ、気付くこともできました。いろんな模型を作ることって本当に良いですね。こんなちっちゃな気付きでしたが、僕はもっとプラモが作りたいという幸せな気持ちになりました。プラモって本当に楽しいよね!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

唯一無二のファンタスティックな建造体験!!1日で組めるどでかい艦船プラモ「1/450 海上自衛隊 イージス護衛艦 あたご」

▲どーん!!! でっかくてピキピキの「イージス艦 あたご」を1日で建造できる!!

 完成後に約40cmにもなる艦船模型が1日で組み上がる!! 船の模型ってなんだか細かそうだし……という方にこそ手に取ってほしい、既成概念をぶち破る組みやすさとかっこよさが味わえるのがこの「ハセガワ 1/450 海上自衛隊 イージス護衛艦 あたご」です。

▲プラモの枠の状態で、すでに海が見える!!!

 ハセガワの1/450スケール あたごは、多くの人が組める組みやすさを追求しようというコンセプトで開発されています。「極力小さなパーツはセットしない、明確な接着軸や糊代、バチピタのパーツ精度」と3拍子揃った艦船模型です。早速組みながら見ていきましょう〜〜!

▲大きな船体がビシッとずれなく組めるように、中には桁が入ります。桁の接着位置を間違えないように、指定の番号がパーツに刻まれています
▲桁を介して合体した左右の船体パーツ。仕上げとして、艦底に流し込み接着剤を流し込みます
▲船体が爆誕! どでかいパーツががたつきなくキレイに組めて、初手からテンションMAX!!

 ニッパーでパーツをカットする。桁と船体をプラモ用接着剤で貼る。そうするととってもでかい船体ができる。プラモを普段作っている人なら当たり前のことだと思います。しかし、艦船模型を初めて作る人・プラモを初めて作る人がこのプラモの船体の組み立てを体験したら……絶対にテンション上がること間違いなしです。パーツ同士はバチピタで合わさり、さっと隙間に流すだけでピタッとパーツが接着されるまるで“魔法のような流し込み接着剤体験”、それだけで目の前に40cmクラスのどでかい船の形をしたプラスチックの塊が爆誕する……。このプラモは初手からぶち上がる組み立て体験が用意されているのです。

▲甲板のパーツも船体に乗せて、隙間に流し込み接着剤を流すだけ

 船の甲板や構造物の床にはさまざまな装備(艤装)が搭載されています。艦船模型はそう言った艤装が小さな別パーツとなっていました。ピンセットをプルプルさせながら、それらをペタペタと貼っていく行為は慣れれば楽しいですが、初めての頃は緊張の連続。パーツを貼る度にブレないように息を止めて……といった感じで建造していました。
 しかしこのキットは、そう言った細かい艤装がすでに床パーツと一体になって成型されています。床を貼れば、一緒に艤装もやってくる。小さなパーツの取り回しが減ったことで、一気に組み立てスピードがアップするんです。

▲床からキノコのようなものが最初から生えています。極力パーツを一体化することで、作りやすさをアップさせています

 また各ユニットごとに組めるのも特徴。組み上がったユニットごとに、船体にドーンと接着していけます。ですので、約40cmにもなる船体を、常にぐるぐると振り回しながら各パーツを貼っていくような乱暴な組み立て工程は発生しません。

▲見事な分業。これらを船体にドッキングだ!
▲めっちゃぴったり合う!! 気持ちヨシ!!!
▲船の顔でもある艦橋がついに船体と合体!!

 この瞬間はこの模型のハイライト。船体内部に大きな糊代となるスペースが用意されているので、ずれることなくパーツがセットされます。精度もバチピタなので、今回は接着せずに置くだけにしてみました

▲できたー!!! 1日でこんなにでかい船を完成させたのは初めて!!

 完成後の迫力は圧巻。僕自身この模型は初体験。「これだけ大きな艦船模型を1日で完成させることができた!」という体験からくる自己肯定感は半端ないです! 唯一無二のファンタスティックな建造体験、ぜひとも味わってほしいので、今すぐ「ハセガワ 1/450 海上自衛隊 イージス護衛艦 あたご」をゲットしてください!! 日本の海を守る最強の盾をお家に飾ろうぜ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

季節のプラモに一年越しのB面を/nippperデカールとバレンタインのプラモデル。

 そういえば、バレンタインですね。昔は多少盛り上がったものですが、最近はすっかり。うるおい不足だ。でも、ふと思い出したんです。去年の今頃、バレンタインデーのプラモ作ったなーなんて。久しぶりに押入れから引っ張り出して飾ったら、気分が乗ってきました。一杯やろうと思いついて、チョコレートリキュールなんかも買ってきちゃったり。

 久しぶり。また会ったね。当時の記事には慌ただしくもバレンタインデーに滑り込め…ないくらいで完成したとしたんだけど、実はとんでもない”ウラ”があったんです。

▲見えないところはやってない!!

 そう。デカール貼ったのは片面だけだったので、裏側には広大なキャンパスが。まぁこれはこれで、バスのカタチを楽しむ余白としての機能を果たしてくれていたのだけど今の気分的にはちょっと寂しい。

 今からキットの付属デカールを貼って「完成」させてもいい。でも違うものを貼ることにしました。だってこのプラモは俺にとって初めての痛車で、同時に初めてのnippper投稿ネタ。記事なんて書くつもりで作り始めたわけじゃなかったんだけど、なんか「書くか!」と思わせてくれた。だからここに貼るものはすぐに決まりました。

 去年、裏まで走り抜けてたら思いつかなかったチョイス。二度目の完成でまた気に入っちゃいました。あえて“やらない”という過去の決断が今見せてくれる景色にありがたさを感じる、優雅なティー(酒)タイムとなったのでした。

マニアーーー

ミサイルとasimoとチャットbotは全部同じロボットに見える1996年生まれのサラリーマン研究者(工学)

切って、貼るだけで美しい「フォルクスワーゲン ビートル」がやって来る!/ハセガワ 1/24 フォルクスワーゲン ビートル

▲マジで最高の定番。みんな買おう!!!!

 1990年に発売されてから数々のバリエーションキットがラインナップされているハセガワの車模型の超定番「1/24 スケール フォルクスワーゲンビートル」。このプラモ、ボディやシャシーのプラスチックに色がついていて、さらにメッキパーツも入っているので、接着剤でペタペタ貼るだけですごく良い気持ちになれる車模型です。こういう模型が定番キットにいるってのがさすが老舗っすね!

▲僕は散歩の途中で寄った近所の模型店「ことぶきや模型店」(小田急線向ヶ丘遊園駅下車徒歩5分)で出会いました

 発売以来多数のモデラーさんが作ってきた「ハセガワのビートル」ですが、僕は今回が初体験。箱を開けた瞬間、「これは楽しいプラモだわ」ってなりましたよ。皆さんに愛されるわけです。

▲すごい安心するパーツ数と、各パーツの大きさ。そしてこの絶妙なアイボリーの色! すべてヨシ!!

 見てください、この絶妙なパーツ数。これなら作れそうって気になりますよね。本当に圧がないんです。小さいパーツもないので、ピンセットでのプルプル体験もほとんどないです。

▲ゴムタイヤ。塗らなくてOK。取り付けるだけで雰囲気出ますよ
▲何これ!? ベロア? 床に貼るの!? なんだかゴージャス

 このキットでちょっとびっくりしたのが床に貼るベロアのようなシールが入っていたこと。これを貼るだけでフロアマットになるってわけです。なんだかゴージャス!! 完成後はほとんど見えないけど、俺の車はちょっと豪華だぜ〜と作った人が満足できる楽しみがあります。

▲カット済みだからゴリラも安心! 綺麗に貼れるよ
▲内装も組むだけでなんだか華やか。アイボリーって素敵ですね

 シートや内装はボディと同じアイボリーになっています。アイボリーのプラスチックって不思議なもんで、白より一段とかわいくみえます。このインテリアもこのままで十分ナイスな見映えですね。

▲このツヤツヤのボディ!! ニコニコしちゃうよね〜〜

 俺はこのツヤにクラクラ。最高にかわいいぜ。とても綺麗なパーツなのでこのままでも存在感は抜群。これにメッキパーツが貼られるとマジでかっこいいですよ。

▲各部のメッキパーツやクリアーパーツの接着は「セメダイン ハイグレード模型用」にお任せ!

 セメダインから発売されているハイグレード模型用は、メッキパーツやクリアーパーツが多い車模型を作る時にとっても便利。メッキを剥がさなくてもそのまま接着できますし、クリアーパーツの表面を荒らすことなく透明なまま固まってくれます。硬化時間が長めなので、貼った箇所はいじらずにそっとしておきましょう。1日経つと完全硬化してカチカチに固まります。

▲接着剤の硬化前にポロッと落ちてしまうような大きなパーツは、メッキを削ってプラ用接着剤で貼りましょう
▲ボディは被せるだけでぴったり。接着しなくてもOK! ボディに貼られたメッキパーツがナイスアクセント!

 最近のハセガワの車模型のように、細部をバチバチに追い込んでくるタイプの模型ではないので、1時間もあれば可愛いビートルの形になります。ハイグレード模型用でメッキパーツやクリアーパーツを貼るなら、パーツを貼った後は特に模型に触らずにベッドでお休みして、1日しっかり乾燥させてね!

▲パーツを貼っただけでこのゴージャスっぷり!!!

 ハセガワの綺麗な成型を味わえて、さらにサクサクと組み上がっていくビートル。アイボリーの成型色もとってもチャーミングですよ。パーツを切って貼るだけで、あなたのお家に”THE BEST OF BEETLE”と呼ばれた車をお出迎えできますので、ぜひ作ってください!

▲後ろ姿もかわいい〜〜!!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ちいさなヒコーキ模型を金色にして完全勝利!/ハセガワ 日本航空母艦 赤城 “三段甲板”

 1/700スケールの空母を親子モデリング。飛行甲板にのせる小さなヒコーキ模型たち、この細かいのくらいは色を塗れば調子良いのではないかと思い「何色に塗りたい? 好きに塗っていいよ」と息子に尋ねたところ「金色! ぜんぶ金!」と即答。そう、プラモデルは金色にすればたいていは勝利するからね。ということでエンジョイ筆塗りです。

 使用するカラーは子供が使っても安心な『水性ホビーカラー スターターセット』です。銀色・金色入りの8色セットで抜かりなし。筆塗りなら希釈なしの瓶生でバツグンに輝きます。子のおぼつかない手先でも2度塗りすれば色ムラもわずかなうえ、プラへの食いつきもバッチリ。「プラモに色をちょっと塗ってみたいかも」という方にジャストなマテリアル。

 完成したハセガワ『 ウォーターラインシリーズ 日本航空母艦 赤城 “三段甲板”』です。船体は無塗装でプラスチックの色そのまんまですが、飛行甲板にならぶ細かなヒコーキ模型らがワンポイント的お洒落に。金色の機体に日の丸のデカールがたいへん映えます。やだ~、エレガント! そう、空母のプラモデルに付属する艦載機、それを金色にするだけで絵力が増すことを知った今回です。これはオススメの一手。 他の空母プラモでもやってみたい。

 赤城というパーティーの沸点は間違いなくこの支柱たち。上部飛行甲板のウラに30本ほど貼っていきます。まるで建築。体感的に「なにコレー! ぜんぜん終わんない!」と息が上がりつつも「この流し込み接着剤とピンセット、バツグンに調子良いぜ!サイコーかよ!」つって、ツールとマテリアルをしっかり味わえる最高な建築現場です。

 そしてこのキットの盛り上がり最高潮なのがこの上部航空甲板と船体とのドッキング。流し込み接着剤(速乾)がなければ我々はこの局面を乗り切ることは叶わなかっただろう……。

 そう最近、息子(5歳)が流し込み接着剤(速乾)の概念を理解しはじめたので、この写真のように二馬力でプラモデルを進められます。ちょい塗りしてから10まで数えたら大抵のパーツはくっつきます。そういえば最近、息子が30まで数を数えられるようになりました。ウチの子スゴい。

 じつは2年前から「赤城をつくりたい!」と訴え続けてきたウチの子。念願かなって歓喜しているのですが、まだまだ赤城をつくりたい模様。なぜだ。ただ、赤城という空母は今回の三段式から大改修を経た一段全通式があるので次はそれを頂きましょう。もともとは戦艦として造船していたのを無理くり空母にされてしまった赤城。その経緯も含めると艦船界のサグラダ・ファミリアか。空母艦を巨大建築物としてつくり比べるのは楽しそうだな。

 それでは以上、皆さんもエンジョイ赤城!

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。