プラモの歴史は僕が生まれるずっと前から始まっている。むしろ過去のキットに会いに行く方が多いくらいだ。nippperでけんたろうが書いた旧版の「ハセガワ 1/72 F-4EJ ファントムII」の記事は、僕達よりも大先輩のプラモを手にする楽しさ、組んでみる勇気を僕に与えてくれた。古いプラモも模型店の“現在のステージ”にしっかりと立っているのだ。
2023年に、このMiG-27 フロッガーDは再生産され店頭に並んだ。可変翼に武装をどっさり積んだかっこいいパッケージアートに惹かれて、僕は購入。ハセガワのロシア機といえば、フランカーなど近年のプラモしか組んだことがなかったので、冷戦真っ只中の時代に開発されたプラモに触るのかとちょっとした興奮を覚えた。そして、箱を開け、説明書を手に取るといきなり「西と東」の世界が僕の目の前に飛び込んできた。
当時の空の様子が見えてくる、ソビエト機と西側の飛行機の比較イラストからフロッガーとの物語が始まるのだ。当時手にした人も、今このキットを手にした僕も「ワクワク」な気分は変わらないんじゃないかと思える。
箱を開けると、各パーツの美しさに驚いた。「金型を整備したんですか?」って言いたくなるくらい、各パーツはシャープで、バリもほとんどない。1977年に生まれたキットとは思えない清潔感がそこにはあった。
パネルラインは実機とは異なる箇所が多いようだが、組んで行くとそのシルエットはMig-27にしか見えない。今よりも取材が困難であった時代にひと目みてそのモチーフだとわかるプラモを開発したスタッフには、本当に驚かされる。それはハセガワに限ったことではなく、他のメーカーでも言えること。いにしえのプラモを跨がず、手に取るとそういった情熱を体感できるのだ。
この飛行機は、可変後退翼戦闘機MiG-23の対地攻撃能力を発達させた戦闘/攻撃機。可変後退翼や尾翼はMiG-23と同じだが、レーダー火器管制装置が取り外されたため、機首は偏平な形に改められ、コクピットは防弾装甲されている。パイロンが7ヶ所に増設され、外部兵装量の増大が計られているのも特徴。そのためキットも武装をどさっと装備でき、迫力あるシルエットを拝めるのだ。
細かなパーツはほとんどなく、1時間程度で飛行機になった。そしてこのシルエットの良さである。冷戦真っ只中の時代に、この形に到達し、武装もどっさり付けて発売したハセガワのパワーに感動してしまった。ソビエト/ロシアの飛行機は近年、本国ロシアだけでなく東欧や中国のメーカーから新キットが多数リリースされている。それらも素晴らしいものがたくさんあるが、こうやってコレクションサイズに見合ったキット内容で、コレクションに適した価格で普通に提供されているプラモが、今も僕らの目の前にあるのだ。プラモの棚にはまだまだ面白いキットがたくさんある。ハセガワのレジェンドフロッガーDは、そんなことを改めて僕に教えてくれたのだった。