
「え?これってプラモなんですか?」プラモに興味のない友人のK君とプラモデル売り場を練り歩いた時の言葉だ。ハセガワのメカトロウィーゴはシリーズを通してK君の大好きな漫画『日常』の作者あらゐけいいち氏がボックスアートを手がけている。限定版の「東雲研究所Ver.」は、ボックスアートをあらゐ氏が描いているだけでなく、マンガ『日常』とのコラボレーション仕様で同作品のキャラクターがこれでもかと好き放題している。「ジグソーパズルかと思いました」というK君には悪いが(?)、コレはプラモである。しかも、ウィーゴというロボットの……。

箱を開けてみれば同じランナーが2枚ずつ、異なる色で入っている。異なる色の組み合わせのロボットが2体入ってる仕様なのだ。もちろん2体とも色違いなだけの同じ部品なので、説明書とは異なる色の組み合わせを楽しむことだってできる。

組み立てはスナップフィット。組み立て後も付け外しができるから、コックピットの展開状態も閉じた状態も接着剤無しで作り進めることができる。そう、ウィーゴだけならね。

「~だけならね」なんて含みのある言い方をしたのはオマケでついてくる小学生フィギュア(このロボットは子供が操縦するのだ!)の組み立てには接着剤を使う。キットにはウィーゴ本体と同じ1/35スケールの小学生男子女子が色違いを含めて4体もついてくるのだ。並べることで一気にスケール感が強調される。架空のロボット単体では高さ何メートルだとか何分の一スケールだとか言われてもピンとこないからね。

もう一つのオマケ。と、いうより今回買った「限定版:東雲研究所Ver.」最大のお目当てとも言える日常のキャラクターフィギュア。安心してくれK君、この東雲研究所Ver.には箱画だけじゃなくてちゃんと部品としても日常が入っているよ。あらゐけいいちキャラが分割されてランナーに収まってる絵面だけで無限に笑える。マンガ『日常』と同じ感触の笑いだ。このオマケも接着剤を使う必要がある。マンガの中で作ったなら、ゆっこが接着剤をひっくり返したりしてると思う。みんなはゆっこじゃないのでひっくり返さずに完成させてヒヤシンス。

東雲研究所の3名(?)が付属。左からはかせ、はかせ、なの、阪本さ~~~~~~~~~~~~~ん(猫)。左端のコントローラーを持ったデラックスサイズのはかせだけ1/20スケール。残りはウィーゴと同じ1/35スケール。1/20のはかせはデラックスサイズなのだけれど、このパッケージの中では一体だけ浮いたオマケのオマケのさらにオマケみたいな存在。一見唐突に思えるけれどコレは同じくハセガワから発売されている一回り大きい1/20ウィーゴシリーズと並べてね(そっちも買ってね!)という宣伝なのかもしれない。

この”東雲研究所Ver.”の面白さの真骨頂はこれらを全部並べたところ。元々スケールを謳うデザインのロボットとしてリアル造形のフィギュアを付属させていた1/35ウィーゴ。その横にマンガ体形のキャラクターが「私も1/35です」と言って並ぶ。”なの”は高校生なので小学生より背が高く、はかせは劇中の幼い印象から小学生より背が低く、阪本さん(猫)は劇中で小柄な猫だけれどリアル造形の小学生と並べたらかなりの大猫だ。同じ1/35スケールでも実際の人間や猫のプロポーションとは全然違う「デフォルメされた表現」が浮かび上がる。

1/35なら何か他にも並べてみたい。そうは言っても戦車は似合わない…と思っていたら海洋堂のキリンセットがドンピシャだった。このキットも動物園に来た小学生がついてくる。まるで友達が出来たみたいな組み合わせだ。架空のEVトラックも同じく架空のロボであるウィーゴと中がよさそう。東雲研究所の一同にも似合うキリンさんと仲間たちだ。スケールだけでなくプラモデルとしてのテンションが揃っている。普段見ない外国の街角でもなければ、ロボットバトルの戦場でもない。見慣れた日本の小学生が、マンガのキャラクターが、ほんのり未来のガジェットが、平和な日常が机の上に広がっていく。こういうのを「日常的なプラモデル」というのかもしれないな。
果てしなく平和で楽しい……さぁ、どんな友達を増やしていこうか?