再会。僕の大事な模型/タミヤ 響

▲1972年に発売。タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズの中でもベテランキット「日本駆逐艦 響」

 また模型を作れるようになった、あの時の自分に会いたくて。

 数度の大損傷にも関わらず太平洋戦争を生き抜いた日本海軍の武勲艦「響」。戦後も復員艦として多くの日本人を運びました。そして僕自身もこの「響」のプラモと友人のおかげで、またプラモ趣味に戻って来ることができました。このプラモを手に取らなかったら、きっと違う人生になっていたと思います。それだけ僕の中では大事な模型。

 そして初めて作ったスケールモデルでもありました。25才の時だったと思います。

▲パッケージを裏返すとカラー図があります

 単純に仕事のプレッシャーで大好きな模型が嫌いになってしまい、それを心配した友人がヨドバシ新宿ホビー館に僕を引っ張って行きました。しかもほとんど覗いたことがない「スケールコーナー」。なんもわかりません。そして、もうプラモ無理や……と会社も辞めようと本気で思っていました。そこで差し出されたのがこの「響」でした。

 「駆逐艦って言って小さいから組むだけなら1日で終わっちゃうよ。値段もお手軽だしね」と。その時、正直「買ったら組むしかないよね〜……」と思いましたが、信頼している友人の言うことだしなーと、全く知らない艦船模型をレジに持って行ったのでした。

 これが後に月刊ホビージャパンから発売されたHow to本「艦船模型製作の教科書」へと繋がるのですが、それはまた別のお話。そして僕はこの響をなんと買った日に完成させてしまったのです。2年ほど模型が作れなかった自分が1日で。あの体験は本当にヘレン・ケラーの「ウォーター」のように、僕をプラモの海へと連れ出してくれました。

▲家に帰り、とにかく箱を開けました。確かに小さいしパーツは少ない
▲説明書にこんなにも解説が入るんだとびっくり。この辺りから目に光が宿ってきました。プラモ買いまくって作れば詳しくなれるのでは……そんな単純なことにここで気がつくのでした
▲イラストから来るベテランキットの風格! ちょいゆるいイラストに、やってみるか!と変に気合いが入ったもんです
▲キットの中によくわからないパーツが集まった小袋があったんですよ。全くわからないし、なんか八九式なんちゃらかんちゃらとかいっぱい書いてあって、当時は怖くなってそっと箱に戻しました
▲そして今、あの時の自分を思い出しながら「響」と遊んでみよう。少し太ったし、結婚もして子供もいるぞ
▲バラストのパーツを初めて手にした時、金属の棒を中に入れて一体何が起こるんだ?って本当に思いました。でもあの時、今まで知らなかった模型に触れているんだという感動はこのバラストが一番重く感じさせてくれたかな
▲あの時には無い「速乾タイプの流し込み接着剤」が今はある!当時よりも君をカッコ良く綺麗に貼れる自信が僕にはあるよ
▲どうだい?船体と船底があっという間にくっついただろ。それにしても俺よりも君は年上なのに背筋もピンとして、綺麗にパーツが合うなんてすごいね。俺も頑張るね
▲当時は怖くて使えなかった、同梱されているウォーターラインシリーズ用のパーツセットの意味も今はわかる。ランナー同士を見比べて、該当パーツを探していくんだ
▲左がキット当時のパーツで、右が追加されたディテールアップパーツのもの。そう、こちらは昔のキットをよりディテールアップできるようにと後から追加されて、キットと一緒に同梱されるようになったものだったのです。その善意をわからず、僕は閉まったんですね。ぜひ使ってください!
▲流し込み接着剤でパーツを貼っていく楽しみを教えてくれたのも響でした
▲小さなパーツがひとつの塊になっていく……俺が形にしたんだ…とワクワクとドキドキでいっぱいになりました
▲これまでデカール貼りとかでしか使わなかったピンセットのありがたみに触れた瞬間。怖いけど、やれるぞ!と全集中したもんです
▲青年からおじさんになった私は、使い終わった流し込み接着剤の蓋に付いている細い筆が欲しくて、白蓋接着剤とマッスルドッキング
▲煙突、艦橋と軍艦のアイコンがグレーの塊の中に現れて軍艦になった時、俺は今なんかすごいものが組めたんじゃないか!模型ってこんなに面白いのか!と感情が爆発しました
▲プラモの撮影が大嫌いでした。自分が思える写真が全く撮影出来なくて、何度もスタジオで泣いてました。それも響が変えてくれました
▲プラモの楽しさを再認識した僕は、ポジティブの塊に変身。怖かった撮影にも立ち向かえるようになりました。カメラマンさんや先輩に食らいつきまくり
▲だから、あの時より君を綺麗に撮影できると思う。今見ても本当にかっこいいね
▲約10年ぶりの再会。当時嬉しすぎて、そのまま梱包して会社にも持って行きました。紹介してくれた友人のマジで?って顔と、完成した模型見ながら話した楽しさは忘れることはないと思います

 触ったことが無く、自分の視界に入ってなかった物と出会い世界が広がる。当時プラモの世界の広さを知る旅へと僕を連れて行ってくれたタミヤの響。僕にとっての大事なプラモ……。そして今また、nippperというメディアでプラモの海へと航海にでました。『あなたが再出発し、あの時感じたプラモの楽しさを多くの人と共有できる航海にしましょうね』と響からメッセージをもらった気がします。楽しい航海をしていきましょう。

■タミヤ 1/700 日本駆逐艦 響(ひびき)本体価格1200円(税抜き)

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フミテシ
@neofumiteshi

1983年生まれ。月刊ホビージャパンで12年間雑誌編集&広告営業として勤務。ホビージャパンで様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。「ホビージャパンnext」、「ホビージャパンエクストラ」、「ミリタリーモデリングマニュアル」、「製作の教科書シリーズ」などを企画・編集。