




「ヨシおじさん」というのは、タミヤの1/24 スポーツカーシリーズ No.266 ラリーメカニック セットに入っているドライバーを指す。恐ろしいスピードで悪路を走るラリーカーは、短い時間で修理や整備をしなければいけない。セットには4人のメカマンと1人のドライバー。ドライバーはおそらく「ここのセッティングが微妙だ。もっとハードにしてくれ」みたいなことを指示しているのだろう。この指差しポーズは、ありとあらゆるミニチュアにフィットする。

メカニックの4名はパーツを選んで組み立てることによりそれぞれ異なるポーズ(寝そべっているのが2体、膝をついているのが2体)に仕上がる。工具を持たせたり、タイヤをもたせたりすればそれだけでドラマが生まれる。

指差しポーズのドライバーは1体のみ入っている。組み立てはカンタン。切って貼ればOKだ。

シルバーのランナーは同じパーツのくっついたものが2枚入っており、こちらには豊富な工具類が用意されている。ジャッキ、ツールボックス、ブレーキディスク、インパクトレンチ、オイルジャグ、ノートパソコンetc.……。



ミリタリーモデルならまだしも、1/24スケールでこんなに想像力をかきたてられるフィギュアセットというのは他にあまり類を見ない。なんなら、このセットさえあればラリーカーを作らなくても「ここにはラリーカーがあるな!」と知覚できてしまうほど、このプラモは具体的な景色をカタチにしているのだ。
大きさもまた良い。小さすぎず、大きすぎず、プラモに限らず身の回りのあらゆる小さいものにちょうどいいサイズで、指差すポーズというのは、人とモノの間に何かしらの関係性があることを一発で理解できる不思議な魔力がある。もうひとりの片膝をついたメカマンがいれば、なおさらだ。物騒な鉄砲を持ったり、叫んだりヘルメットをかぶっていたりしないのも、ユーティリティープレイヤーとしての素質に溢れている。
「人間」というのはあらゆる人が知っているモチーフであり、それがだいたいどんなふうに振る舞い、どんな気持ちのときにどのような表情になるのか想像できる。だから、人間が置かれた景色を見ると、対象の大きさや置かれた状況が突然自分のことのように理解できるようになる。これがフィギュアの持つ最大の効能と言ってもいいかもしれない。

キットではスバルチームかプジョーチームを選択して塗装し、各チームのロゴを再現したデカールも用意されているのだが、これはスバルのクルマやプジョーのクルマと合わせて展示するときに最大の威力を発揮するわけで、なにか写真を撮るときに、ふとそこに「指を指している人がいるといいな」と思って召喚するならば、黒子のようにアノニマスな、単色のほうが引き立て役として優秀である。

「顔を塗るのが難しいから、フィギュアは作りません!」というのはもったいない。人間はもっとも身近な造形物であり、万物の尺度であり、そのポーズが想像力をブーストする存在だ(建築模型に決まって白い人間のフィギュアが添えられるのは、こうした理由による)。そこにただ人の形があることで、SNSや展示会におけるあなたのプラモへの注目度は10倍も20倍もアップすることを約束する。
すべてのモノに命を吹き込む魔法のプラモを、あなたもぜひ。
■タミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ No.266 ラリーメカニック セット 1600円(+税)