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“いにしえのモノ”とまたいでいた半世紀物のプラモデル。作って分かった、今でもお店にある理由。

 このキット「ハセガワ 1/72 F-4EJ ファントムII」が発売されたのが、半世紀前の1972年。航空自衛隊でファントムを導入して間も無い頃でした。現在はF-4 ファントムだけで飛行機模型の棚を満載にできるくらい新旧様々なプラモが発売されています。

 そんなF-4 ファントムのプラモ、最近も最新キットが出るくらいですから、令和のプラモの方が解像度が高くてすごいプラモがたくさん発売されています。ハセガワにも、今回紹介するキットをリニューアルしたF-4があり、あらゆるバリエーションに対応したところなど夢のようなキットになっています。そのためこの1972年に発売された「1/72 F-4EJ ファントムII」を“いにしえのモノ”としてまたいでしまうところはありました。

 しかし!! そんな古いキットでもハセガワはデカールや説明書、パッケージをリニューアルしつつ現在でも流通しているのです。だからこそ気になってきました……。

 早速買ってきて中身を見てびっくり!! 迫力のボディがドンと入っています。昨今の、パーツが細分化されたキットではあまり見当たらない、塊パーツでジェット戦闘機とわからせるパワーが箱の中にあふれています。今のキットは、ファントムの細かいバリエーションを最初から想定してキット開発に入っているので、機首と胴体、さらにノーズまで一体なんてことはほとんどありません。

 ドリル? いらないいらない。パイロン接続の穴開けといたから! スピードブレーキはこれぐらいの太いスジのほうが落っこちてきそうだろ! ガツンとくる下面のパーツにクラクラ。見えづらいかもですが、凸モールドのパネルラインも縦横に走っています。

 コクピットだってシンプルです。後席のアニキが四角いファイルか何かを持っているのが面白いですね。フィギュアに演出が入っているなんて最高ですね!

 そして、組んでみるとめっちゃシンプルですぐカタチになるのです。単純にEJを志向したキットですから、バリエーション寄り道なしの直行。これがジェット戦闘機のマッハだ!

 そして脚が生えて、F-4ファントムIIが顕現す。こりゃあF-4です。このなんともいえない、当時のフィルムカメラで撮ったような空気感をまとっている姿がいいですね。

 デカールも超シンプルです。自衛隊機は取材が行き届くだけに、パネル番号表記まで丹念に追った素晴らしいデカールも多いところですが、きざみネギと天かすだけみたいなこのデカールは、プラモを手早く食べるにはちょうどよい分量です。

 機体から吊るす装備として対空ミサイルと、増槽がついてきます。1972年のF-4はまだまだ導入したてですから、上を向いて対空のことだけ考えていたころ。下も見なきゃマズくね? ってなるきっかけのベレンコさんが飛んでくる(ベレンコ中尉亡命事件)のは4年後ですね。

 ちょっとノーズがカッコよすぎないかなって現在の目で見ると思ってしまいますが、それもまた良さ。実物よりカッコいい模型なんて山ほどありますからね。

 こんな手早く作れてしまうので、シンプルにF-4の良さが受け取れます。そこに当時のハセガワの人たちが「取材してきたF-4、めっちゃカッコよかったよ」と言って興奮しているテンションの高さすら感じ取れる内容なんです。

 だからバシバシ組んでみて、ぐるぐる回してみてしまう。めっちゃ速そう! めっちゃ飛びそう、どうですこの横向きのスピード感……。現代F-4キットはサービスが行き届いていて、踏み込んだ部分がいくつもあって、このキットより優れているところはいくつもあり、ハセガワ自身も1990年に新しいF-4キットを発売しています。

 しかし、このキットはF-4の良さをフォルムよく、シンプルかつ鋭く表現しています。なぜ半世紀を経ってもこの製品が現役でいられるか、それが組んでみてよくわかったのでした。飛行機模型の棚に定番としている1972年製のハセガワファントムプラモ。ぜひあなたも組んでください。

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けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

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