
模型誌を読むと模型が作りたくなる直球脊髄反射マンなので、スケビ最新号の帝都防空戦特集を読んで速攻欲しいプラモを買いました。買ったのはファインモールドの「五式戦(ファストバック型)」。最後の陸軍主力戦闘機です。どんな飛行機かといいますと、三式戦「飛燕」を母体に、エンジンを飛燕の液冷から空冷のハ-112IIエンジンに換装。優れた飛行性能に高い信頼性が加わり、戦争中のいわば即席ともいえる改修機ながら航空史に残る傑作機と称されることもあります。個人的な感想ですが、換装された機首周辺はまるでドイツ軍のFw190のようにマッシブです。


ファインモールドの五式戦は初体験。同社の大戦機は1/72 Bf109を作ったことがあるのですが、それも綺麗なディテールに美しいフォルムかつすぐ組み立てられたので、五式戦にも期待が膨らみます。そして箱を開けてみると……


五式戦のプラモは博物館でした。大戦末期の戦局の悪化による生産体制の厳しさ。日本陸軍機が抱える問題や、五式戦が語られる上でよく登場するエピソード・「三式戦の「首なし機体」」などが詳細に記述されています。五式戦が生まれるまでのプロジェクトXを存分に堪能できます

エースには心奪われます。キットで紹介される檜與平少佐は加藤隼戦闘隊で名高い飛行第64戦隊に配属され各地を転戦。ビルマ戦線に初めて現れたP-51を撃墜もしているそうです。このビルマでの戦いで重傷を負って、右足を膝下10センチのところから切断……それでもリハビリに励み義足のパイロットとして復帰。五式戦を装備する明野教導飛行師団第1教導飛行隊の第2大隊長として第一線に舞い戻りました。そして彼は義足を五式戦のブレーキに合わせて切断。まさに人馬一体で日本の空を守るために飛び立ったのでした。
彼は戦争を生き残り、戦後の手記は五式戦を知る上でも大切な資料とされています。キットの説明書にも手記を引用した彼の言葉が掲載されています。それを読むとさらにこの飛行機が魅力的に見えてきます。プラモを買ってから、さらに買って良かったと思える体験ってこのような印刷物の中に詰まっている要素がもたらしてくれますよね。





プラモの箱を開けた瞬間に博物館のような世界に引き込んでくれるファインモールドの五式戦(ファストバック)。プラモを作りながら帝都防空戦で日本の空を守るために戦った名機に思いを馳せることが出来るおもてなしがされたステキなプラモです。ぜひ手にとってみて下さい。
