それはまるで、額に入れて飾りたくなるような。

ハセガワから先日、”1/32 A-4E/F スカイホーク”が再販されました。
「再販」というのは、過去発売されたプラモがもう一度生産され、模型屋さんの棚に並ぶという意味です。

このキットが最初に発売されたのは1976年。
その後も機体のマーキングやパッケージのイラスト、写真が変更されて何度も再販されてきました。
今回の再販の知らせはインターネットで知ったのですが、
背中にコブの付いたスカイホークの姿は『エリア88』というマンガで見たのを思い出させる迫力があり、
これはいちど自分でも作ってみたいなぁ、とムラムラ来てしまったわけです。

出荷日を過ぎて何日かあと、模型店に行く機会があったので飛行機の棚を覗いて驚きました。

最近のハセガワのパッケージデザインではスタンダードとなった白を基調としたものではなく、
サイドにビシッと締まった黒い面があり、箱の天面には画面いっぱいにスカイホークのイラストが入っています。
僕はすっかりこの絵が気に入ってしまい、レジへと足を運んだのでした。
(4000円くらいで巨大な飛行機が買える、というのもベテランキットのいいところだと思います)

帰ってきて、まずこの絵をいつでも眺められるようにデジカメで撮影しました。

手前の機体だけを見ると、超望遠レンズで撮影したような印象。
極限まで遠近感を減じて、機体の体積が大きく見えるように描いています。
主翼の下に吊るしたドロップタンクは手前のより奥の方が大きいように錯覚しますし、
水平尾翼後縁の左右長さもほとんど差がないように見えます。
結果として、実機よりもずんぐりむっくりで、身の詰まった雰囲気に見えます。
実機がいかにも強くなさそうなカタチなので、写実的な絵の為せる範囲でマッシヴさを演出しているのかもしれません。

舞台はベトナム上空でしょうか。太陽は奥の方から斜めに機体を照らす半逆光。
背中のエッジが明るく光っていて、そのアウトラインが機体の側面や主翼の上に影となって落ちています。
均質なグレーに塗られた機体であるはずなのに、明るさによって色調が違ったり、
垂直尾翼やコブにはパネルごとに異なる色相の茶色が乗せられています。

けっこうな高度を飛んでいるように見えますが、機体下面は海の色を反映して、涼やかなブルーに見えます。

大きなドロップタンクの間に挟まれた爆弾は本来濃いグリーンであるはずなのですが、
そこにグリーンの絵の具は使われていないことにも気付かされます。
奥の機体はサッと左にロールを打って、これから高度を一気に下げるのでしょう。

手前の機体の周りには白いモヤのようなものが出ていて、カラッとした日差しに反するかのように
空気がたっぷりと湿気を含んでいるのを教えてくれます。
このモヤは、結果として手前の機体と奥の機体がゴチャッと一体化して見えなくなる効果も担っています。

機体のメリハリと体積を極限までブーストし、
さらに二機の大きさを変えて遠近を表現しつつ、ひとつの飛行機の特徴を余すことなく画面に入れ、空気と海岸線でまとめる。
これにより、製品の魅力と特徴を最大限に伝えるパッケージイラストに仕上がっています。

このパッケージイラストを手掛けたのは佐竹政夫というアビエーションアーティストで、
氏は数々のプラモのパッケージや本のイラストを手掛けています。
このパッケージは90年代の再販のときと同じものが復刻されているようですが、
メーカーのロゴや機体名は左下に控えめに入れられていて、全体のデザインはシンプル極まりないものとなっています。

しかしこの絵の迫力、見れば見るほど複雑な色使いはいつまでも眺めていたくなるような魅力があります。

齢44歳のキットですから、いまの目で見るとパーツは少なく、
各部の合わせ目をしっかり確認しながら接着していくとあっという間に飛行機の形になります。
かといって大雑把なモデルなのかと言えばそんなこともなく(自分で調整しないとうまく貼れない部分もあるにはあるのですが)、
案外繊細な表現も随所に見受けられます。
なによりも、大きな飛行機が少ない手順でドンドンドンと姿を現していく様子は本当に気持ちが良く、
多くのパーツを組み合わせて緻密なものを作るのが主流となっている最近の大スケール模型とは違う快感があることに気づくはずです。

(たとえば「このスカイホークと同じくらいのパーツ数で、ディテールの表現やパーツの精度は現代風」というコンセプトのプラモがあったら、
僕は喜んで買うと思います)。

偶然なのか、胴体のパーツがめいっぱい箱に入っているから当たり前なのか、
プラモの大きさは佐竹氏のイラストとほとんど同じです。

この機体をベタッとしたグレーで塗ってしまっていいのか、このイラストのようにコッテリと、
たくさんの色を使ってイラストのように仕上げていくのか、僕にはまだ決心が付きません。
(と同時に、いまの状況下では欲しい塗料が満足に買えないという物理的な理由もあります。)
スカイホークになろうとしているものは、この状態でかれこれ2週間ほど作業場のスペースを我が物顔で専有しています。

そろそろ次のプラモを作りたいから、一旦このスカイホークのことは横に置いておこう。そう考えたときに、ひらめきました。
次に作りかけのスカイホークと向き合うときは、色を塗るときです。
それまで、パッケージのイラストをいつでも眺められるようにしておこう、と。

家のある一定の場所にイラストを掲げ、何度も見るうちに、やりたいことが自分のなかではっきりするのかもしれない。
そう思い立って、クローゼットから使っていないポスターフレームを取り出し、
箱の四辺を金尺とカッターでキレイに切断してから、水平垂直に気を配って収めたのです。

あなたはこれまでに「額に入れたくなるようなプラモのパッケージ」に出会ったことがありますか?
もしあったら、思い切って本当に額に入れて飾ってみてください。
プラモとカッコいい絵がいっしょに買えるという驚きとともに、
これまで見たこともなかったような、ピリッとした空間が生まれます。

みなさんも、ぜひ。

■ハセガワ 1/32 A-4E/F スカイホーク 3800円(+消費税)

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からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。

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