残業で疲れて家に帰ると、ガレージでは1台のバイクが私を待っていた。知り合いのバイク屋から譲ってもらったこの古いバイクをオーバーホールするのが最近の楽しみなのだ。バラバラにして綺麗にしたパーツを一つ一つ、サービスマニュアルを眺めながら組み上げていく。そういう時間が何物にも代えがたい……。
そんな妄想をしながら僕はいつもバイクプラモを組んでいる。
ハセガワのYamaha RZ250はそんな僕の妄想をより高めてくれるプラモデルだ。ホンモノのバイクをそのまま小さくしたんじゃないかと思ってしまうような細かなパーツ分け。説明書には今組んでいるパーツが何なのか、キャブレターなのかサイレンサーなのかエアクリーナーボックスなのか。それがわかるよう組立図の横にしっかり付記されている。レンチを接着剤に置き換えただけ。そんな風に思わせてくれるようなプラモデルだ。
しかしながら僕の妄想のノイズになる部分が少しある。このプラモデル、パーツは白と黒のプラスチックで出来ているので、金属部分はシルバーやゴールドに塗らなければいけない。効率よく組み立てようと思ったら説明書を行きつ戻りつ、どのパーツが何色なのかチェックして、まとめて塗装できるところは塗装して……このパーツはいったん組んでから塗装した方が良いかな?この色この色を混ぜるとホンモノに近いのかな?とか考えなきゃいけない。
塗装が嫌いなわけじゃないよ。効率いい塗装の手順を考えるのも楽しいし、混色して作った色がプラスチックの質感を変えていく瞬間はいつも感動する。でも僕は今、バイクを組んでいるのだ!と思うとそれが少しノイズに感じてしまう。
それを解決してくれるのがこれ。30Minutes missionsマーカーセットだ。ガンメタ、ゴールド、シルバー、グレー、ブラックという「マシーン」を塗装をするのにいい感じの色が揃っている。しかもマーカーというのは準備や後片付けがほぼ皆無で、「ひとつの色を出したら乾いちゃう前に使い切らなきゃ!」みたいなのがない。だから、シルバーのパーツを組んだらチョチョっと塗ってすぐ次のパーツを組もう!ということができるのでテンポがいい。
ホンモノのバイクならオーバーホールが終わったら走りこんで、風を感じて……そういう楽しみがあるかもしれない。プラモデルではそういうことはできない。その代わり、このバイクプラモが完成したらきっと次のバイクプラモを作る。何台もバイクを買って組み立てるなんて、エンジニアにでもならない限り難しい。プラモデルならそれができる。何台も何台もバイクを組み立てて、そのうち妄想の中でならエンジニアになれるかも。そんなことを考えながら今日も妄想のガレージでバイクを組み立てるのだ。