

ここにあるプラモたちは皆すっぴん。「プラモの刺身」である。こう並ぶとまさに盛り合わせだ。どうだい? 盛り合わせになるとめちゃくちゃ豊かに見えるだろう。そう、プラモってのはこれがいいんだ。プラスチックの色とプラの質感ってのは、逆に塗装したプラモにはない魅力がある。だから素敵な色を纏ったプラモを見たり、作ったりすると、また別な満足感が得られるのだ。これもまたプラモの楽しさである。

そして今日も良い色のプラモが俺の家にやってきた。「1/24 ハセガワ ヒストリックカーシリーズ 三菱 コルト ギャラン GTO-MR」だ。このプラモ、箱を開けると鮮やかなオレンジのパーツが目に飛び込んでくる。良い色を纏ったプラモはこの「箱を開けた瞬間」がたまらなく楽しい。イメージ通り、もしくはそれを超えた色のパーツなんかが出てくると嬉しくてつい「出来てる!!」と叫んでしまうほどだ。



箱を開けた瞬間「出来てる」と思ったプラモに、素直に応えた。こうやってまた一つ、自分のコレクションが軽やかに増えていく。既に棚にいる仲間たちの中に、鮮やかなオレンジが入ったことで俺の盛り合わせはより豊かな景色になった。ちょっと「サーモン」みたいだ。サーモンって盛り合わせの中でも赤でも白でもないアクセントカラーな存在だから、このコルト ギャランも棚の中にちょうど良いアクセントを与えてくれている。

刺身? 盛り合わせ? なんじゃそりゃと思ってもらってもちろん良い。でも、どんな趣味にもウェイトがあって良いんだ。プラモだったら、買うだけでも良い、組むだけでも良い、好きな色1色で塗るのも良い。そして自分の理想像を追い求めてやり切っても良い。このメリハリに乗れると、趣味ってのは長続きするし、実はより深く楽しめる。
日本三大随筆の一つ、作/鴨長明による「方丈記」(他に徒然草、枕草子)でもそのようなことが書かれていて、本書を読んでから、“プラモを作ることへの姿勢”が大きく変化した。
およそ800年前に書かれた本書は、京都・下鴨神社の禰宜の一族として生まれた鴨長明の挫折、都を立て続けに襲った5度の大災害の克明な様子(大地震・大火・大飢饉・辻風といった災害のことが綴られていて歴史的価値が高い。さらに遷都も災害扱いしているのがなるほどで面白い)、それらを経て辿り着いた「方丈の庵」の中で彼が見つけたハッピーライフの考え方を記したとってもユニークな1冊だ。
「念仏を唱えるのも大変だったら、毎日唱えなくても良い」。「好きで弾いている琵琶の音も、人の耳を喜ばせるのではなく、自分の心の慰みとしているの……」。そう、俺が楽しいように楽しむってのが良い人生なんじゃないって800年も前の先輩が楽しんでいる様子が本書には美しい文章で綴られている。
そして鴨長明がすごいところは、他の人へのリスペクトな感情も忘れていないことだ。自分が良いなと思ったものをもっと趣深い人が見たら、さらに何かを得られるのだろうと言っている。自由にやるのもいいけど、周囲へのリスペクトって気持ちは趣味にとってとても大切。「方丈記」はまさに趣味を楽しむ人の考え方の「盛り合わせ」と言っても良い、プラモが楽しくなる本なのだ。

大好きな趣味だからこそ、周囲を見ると色々悩んだり嫉妬したりと言うマイナスな感情が生まれるのもわかる。でもそんな時は、刺身のようにウェイトを軽くしたり、全く別の方法で作ることにチャレンジしてみたり、いっそのこと一旦遠ざかってみたりするのも悪くないことだと思う。俺の棚にあるプラモの盛り合わせも、自分の機嫌を取る役目を大きく果たしてくれている。自分が良いなと思ったことでプラモを、楽しもうじゃないか。そしてなんか迷ったら、nippperにアクセスして欲しい。ここにはさまざまな人の盛り合わせが用意されているからね。