いすゞ 117クーペのデザインの良さとハセガワと言うとても生真面目なメーカーの良さが溶け合った恐ろしいプラモデルだ。前期型の後にバリエーションとして登場したこの「いすゞ 117クーペ 後期型(☆☆XE)」は、ボディの成型色をシルバーへと変更し、組み上げただけで本当にパッケージのような雰囲気になってしまうのだ。あまりにも極上な刺身を目の前に出された気分だ。
ひとつひとつの彫刻、シャシー裏の見えないところの麗しい起伏。全パーツに生真面目さを感じる。そしてこのプラモ最高のアクセサリーがメッキパーツ。実車でメッキのところはほぼ、このパーツで再現している。それ故に、作る人にもそれ相応の準備を要求してくる。メッキパーツやクリアーパーツを曇らせることなく、プラパーツにそのまま接着できる接着剤「セメダイン ハイグレード模型用」は、このプラモのドレスコードだ。
極小メッキパーツにもアンダーゲート(パーツ側面ではなく、組み立て後にゲートをカットした痕が露出しない箇所にゲートを配置する方法。カットする手間が増える)がビシビシと入っている……。こちらもメッキの剥がれを意地でも表面に露出させないようにしている。小さなパーツのアンダーゲート処理は慎重な作業が必要だ。極上の刺身を食べるには、それなりの苦労がいるのだと体感させられる。切れ味の良い薄刃ニッパーを用意しよう。
ライトが丸目で、白い成型色で発売された前期型とキット構成はほぼ同じ(後期型の専用パーツは多数入っている)。成型色を変えることで、こんなにもバリエーションキットが映える構成に、今のハセガワの車模型は到達している。それはハセガワの生真面目さが前面に出た「クルマの分解」があってこそなのだ。だからこそ、極上の刺身を楽しめるのである。
パーツ数も多く、説明書内の情報量も凄く多い。様々な情報を脳内で処理しながら組んでいくことになるプラモではある。しかし、パーツ精度はバチピタなので、慌てずじっくり組めば大丈夫。お手軽に早くだけじゃなく、こういった美しく分解されたプラモを、じっくりと楽しんでみるのも極上のプラモライフのひとつだと思う。
1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)