「アクリルガッシュとU-35でプラモデルを塗る」。塗装準備は身近なもので整います。

▲ゴッドゴーガン!だぜ! 後ろに映るチューブの塗料もオシャレだぜ!

 金色だぜ! PLAMAX ライディーン! まぶしいプラモデルを組み立てました。バッキーンとエッジが効いてる、ポーズ固定のプラキットは大好物。しかもプロポーションバツグン。脚がなげえ! 固定ポーズならではのパース造形が超かっこいい!! オールゴールドのキットでファビュラスな気分を堪能出来たので、ヒロイックなトリコロールで塗りたくなりました。そこで、最近ヨドバシカメラの模型コーナーでも大プッシュされている、ターナー色彩の水性塗料シリーズ、アクリルガッシュとU-35でペイントしようと思います。

 画材屋さんなどで売られているこのふたつの塗料、「筆塗り」でも「エアブラシ」でも同じように気持ちよくなれるプラモ塗料としても優秀なんです。図工の時間なんかで慣れ親しんだチューブタイプの塗料なので、使いやすさと取り回しやすさはなんとなく想像できるかと思います。アクリルガッシュとU-35を使ったペイントに必要なものをちゃちゃっと準備して、フェードイン! していきましょう。

▲筆塗りするなら準備はこれだけ! 水とパレット。乾燥するこれからの季節には、ウォーターパレットがあるとさらに安心です

 アクリルガッシュとU-35は水性アクリル塗料。水で希釈して塗れます。コップに入れた水とパレットがあればペイントを楽しむことが出来るということです。潤いを保ってくれるウォーターパレットとの相性もグッド。筆は扱い慣れているもので問題はありませんが、かなり乾燥が早いため、ハードめに使いたい時は、天然毛より強度や耐性があるナイロンの筆を使うといいと思います。最近のタミヤのHGモデリングブラシIIなんかはオススメですね。

▲ペーパーパレット、もしくはご家庭にあるアルミホイルもパレットがわりになりますよ

 ターナーペーパーパレットというその名の通りの紙のパレットも売ってたりします。また、パレットでなくても、市販のアルミホイルも十分パレットとして機能します。パッと出して、使い終わったらそのまま丸めて捨てることができるので快適です。それから、筆の水気を拭う用のキッチンペーパーも用意しておきましょう。

▲実はエアブラシ塗装する時に「水性ホビーカラー専用うすめ液」が最高のパートナーになります

 エアブラシで吹く時に用意したいのはこちら。紙コップと水性ホビーカラーうすめ液。アクリルガッシュもU-35も、水で希釈してエアブラシで吹き付けることが出来ます。しかし、ハンドピースのカップの中で乾燥がはじまると、ノズルが詰まったりしてアクシデントも起きやすくなります。そんな問題を解決してくれるのが「水性ホビーカラー専用うすめ液」。これを使うと、詰まりも無く快適に吹ける上に、塗料の定着もすごく滑らかになります。エアブラシ塗装時の希釈時にぜひ使ってください!紙コップは希釈をする時に使いましょう。

▲下地を塗っておくと、さらに定着が良くなります。今回は黒のサーフェイサーを吹きました

 アクリルガッシュの食い付きを良くするために、プライマー、サーフェイサーはぜひ塗ってください。白や黒、グレーのサーフェイサーと塗りたいカラーに合わせて、お好みの下地を塗ってください。「俺はプラスチックの色の上からそのまま塗りたいんだぜ!」という人は、サッとつや消しクリアーを吹いてあげるとかなり塗りやすくなると思います。

▲これでアクリガッシュ塗装への準備が完了しました!!

 これで塗装までの準備が整いました! アクリルガッシュは使用した「筆塗り」と「エアブラシ塗装」でライディーンをカッコ良くしていきますよ!!  筆で塗る時はあまり気になりませんが、エアブラシで吹き付けるとミストが舞うので簡易ブースを準備しておくと良いです。匂いがほとんどしないといっても換気はしっかりしておきましょうね。次回、アクリルガッシュとU-35の説明をしながらブルーのペイントをしていきたいと思います! それでは、またね!! ラーイ!!

むっちょ

平成2年生まれ。水性アクリルボーイ。ボーイと名乗るには厳しい年齢になりだしている。模型の他にゲームも大好き。

「福岡みやげのνスタンダード」、エントリーグレード RX-93ff νガンダム

▲福岡の友人からおみやげをいただきました。華やかな成型色が目を引きます。

 福岡在住の友人と久しぶりに顔を合わせる機会がありました。このところ仕事でずいぶん大変だったそうですが、元気そうな顔を見て一安心です。リュックサックからおもむろに友人が取り出したのはエントリーグレードのνガンダム。ららぽーと福岡にそびえる実物大νガンダム立像に合わせた仕様の「福岡みやげ」でした。
 筆者はいただきものはすぐに食べちゃうタイプです。友人と久しぶりに会えてうれしくなった筆者は、帰宅するなりおみやげを開けてビニール袋を引きちぎりました。タッチゲート式のキットということで、工具を準備する必要すらないのです。うれしい余韻が残っているうちに完成させちゃいましょう。

 νガンダムのプラモデルは20年以上前のBB戦士や食玩キット以来の筆者です。白黒2色成形+シールという先入観があるので、ランナーの色数の多さにびっくりします。バーニアの内側のアクセントカラーまで成型色で再現されていることに加え、「福岡みやげ」ならではの華やかなカラーリングでうれしさが続きます。アルコールはまだ残っていますが、組み間違えの心配も皆無。友人と語らった楽しい時間から、そのままプラモデルを作る楽しい時間になだれこんでいきます。

 カメラアイのパーツはミントグリーンの成型色。マスクの部分と隙間が開くように設計されており、そこに影が落ちることで縁取りの黒い部分が表現されるという仕掛けです。今までになかった立体の解釈&墨入れ/シール貼り要らずの構造で、新鮮な感動があります。

  ガンプラに付属のシール・デカールの類は日頃あまり貼らないタイプの筆者ですが、なにしろこれは「福岡みやげ」。実物大立像に準じた状態で完成させることにします。シール貼りは不得手な筆者ですが、それでもデカールほど気負わなくていいのはありがたいところです。レインボーな特別仕様のマーキングは薄手のしっかりしたテトロンシールです。位置決めの苦手な筆者は、シールの糊面に水をびちゃびちゃにつけて貼ります。もともと粘着力が強いので、しっかり圧着してやれば剥がれることもありません。

 νガンダムといえばシックなカラーリングが魅力のひとつですが、こちらのカラーリングもおみやげらしい華があります。一緒にもらったショッパーと記念撮影もしちゃいます。

 「福岡みやげ」といえば通りもんや辛子明太子のイメージが強いですが、工具不要でパッケージ内で完結するうえに設計の妙を味わいながらサクサク作れて華やかなこのEGνガンダムも、もらってうれしい「福岡みやげ」でした。生ものではないので、渡す方も貰う方もそれほど気負わなくてよさそうです。色気より食い気の筆者なので他人へのおみやげにも乾きものを選びがちなのですが、ご当地プラモもアリだな…と思う今日この頃なのでした。

G.Masukawa a.k.a.らえらぷす

1994年生まれ。恐竜の化石から骨格図を描き起こしてごはんを食べています。著書に「ディノペディア Dinopedia: 恐竜好きのためのイラスト大百科」、「新・恐竜骨格図集」、イラスト展示制作に「恐竜博2023」、「ポケモン化石博物館」ほか多数。

日本人の心、与兵衛の閃き/「握り寿司の歴史」をプラモデルから探る。

▲これはシド・ミードデザインの寿司です

 いわゆる「江戸三鮨」と呼ばれた寿司がございます。「毛抜き鮨」「与兵衛寿司」「松が鮨」の三つですね。「押し鮨」や「なれ鮨」らと異なる、江戸ならではの「江戸前寿司」の中でも当時名店とされた三店舗のことをこう呼んだわけです。

 「毛抜き寿司」は現在でも神田・小川町に店舗が現存していて食べられますが、見ての通り見慣れた「握り寿司」ではございません。我々がいちばん見慣れた「握り寿司」の元祖と呼ばれているのが華屋与兵衛が現在の両国に開業した「華屋」。

▲すし技術教科書<江戸前ずし編>(旭屋出版 刊)より引用

 実際のとこは与兵衛の前にも握り寿司は売られていた、と自伝でも語られているようで本当に元祖の元祖、オリジナルの発明者というわけではないようです。
 が、当時の狂歌に詠まれたりするほど大繁盛した握り寿司屋は与兵衛寿司が最初。ワサビを寿司に用いたのも最初……という話ですから、なんにせよ握り寿司の大成者にして完成者、普及に大きく貢献した人物というのは揺るぎないところでしょう。

 両国には与兵衛鮨発祥の地を現代に伝える看板があります。なぜか区が立てたものと区の教育委員会が立てたもののふたつある。なんらかのスシ政治を感じさせる。そしてなんと、そんな華屋与兵衛の店舗が、プラモデルになっているのです!それがこれだ!!

 えっ!? これ!? ウッソだろ!! ……でも箱の横には……。

 こう書いてあるし。しかしなんかふわふわした文章だなあ!「ある工夫好きの男」のふわふわ感すごくないですか? 工夫好きて。そんなプロフィールあるかよ。
 最初に与兵衛が紹介された後に盛大に寿司の前日譚が始まって最後に与兵衛に帰ってくる、妙に遠回しなストーリーだ。ぜんぜん握り寿司と与兵衛のはなししてねーじゃん。……っていうか冷静に読むとかなり巧妙なテキストで「握り寿司の元祖は与兵衛で彼が考えた寿司はこういうものです」とは書いてるけど、このプラモが与兵衛寿司とはまったく断言してないな。なんなんですか?

▲生きてるか? こんなタイプの寿司屋……。みなさんは、記憶にありますか?

 パッケージサイドには似たような佇まいの豊富なラインナップ!でも興味がない人から見たらガンダムも戦車も見分けがつかないのと同じで、見る人が見ればこれらも「なるほど」と思うような作り分けがされているのかもしれないな。……世界を見る目を広げる源はあなたの知識と経験です。

 完成見本の寿司はけっこういい感じに見えるが果たして……。江戸時代の寿司だからかデカいですね。

 さらに「手作り樹木入り」と来た。手作り!? 誰の!? プラモデルの箱に手作りって書いてあるの初めて見たかもしれない。……っていうか考えてみれば「手作り」って言葉なんなんだろう。不思議だ。例えばプラモデルは工業生産品ですが、それを我々が完成させた場合、それは「手作り」と呼べるのだろうか?

 そういえば飯屋でよく「特製ナントカ」ってメニューあるよな?あの「特製」って別に「腕によりをかけて作った」って意味じゃなくて「買ってきたもの出してるんじゃなくて店で作ってるんだよ」程度の意味らしいですよ。そうなんだ。

 そんなわけで、箱を眺めるだけで充分楽しめたので中身については次回書きます。プラモも寿司と同じで調理する前の目利きが大事ですからね。ではこんなところでお愛想お願いします。

寿司で戦うマンガ『スシシスターハンター』ジャンプ+で掲載中! 全20話! 江戸前寿司ができた本当の歴史もわかる!

 完結後に描いた外伝マンガも同人誌で出てるので読んでね。

マシーナリーとも子

殺人サイボーグVTuber。池袋晶葉ちゃんを世に広めることと人類を滅亡させることを目標に日々動画投稿やコラム執筆などを手がける。お仕事募集中。

ひと箱にリラックスと緊張という異なるムードがセットされた日本人のプラモデル。「ファインモールド 帝国陸軍戦車兵セット2」

▲ファインモールドといえば、こういうプラモデルを作ってるメーカーだよなあ、というプラモです

 最近はジェット戦闘機のプラモなども作っていますが、ファインモールドといえばやっぱり日本軍。ちょっとした戦車兵のキットにも、そのこだわりはみっちり詰まっています。

 なんとなく全員似たようなカラシ色の服を着てるなあ、みたいな印象の日本陸軍ですが、当たり前ながら各種の兵科や任務に合わせた装備品を支給していました。戦車兵もそういった兵科のひとつで、専用の戦車帽(夏用と冬用、さらに内側のボアが分厚い防寒用がありました)やゴーグルといったヘッドギアが支給されていました。

 それ以外の軍衣は基本的に歩兵と共通なんですが、寒い場所では軍衣の上から着るオーバーオール型の防寒作業衣や、フェルト製の手袋や半長靴を着ることも。なんせ超寒い満州の平原でソ連軍と戦う想定だったんで、日本軍は防寒装備に関してはそれなりにバラエティがあります。

▲ビシッとしてる二人とダラッとしてる二人のセットです

 で、ファインモールドの「帝国陸軍戦車兵セット2」は、そういうモコモコに着膨れてないほうの日本軍戦車兵のキット(モコモコの戦車兵はひとつ前の「帝国陸軍戦車兵セット」に入ってます)。箱を見ると、何やらダラッと座った作業服姿のおじさん二人と、日本刀を持ったちょっと雰囲気が違うおじさん二人がいますね。全員ちょっと頭がでかくて、昔の日本人っぽい体型。親近感湧くな〜。

▲戦車帽かぶってたり、略帽の上からゴーグルかけてたりと、ヘッドギアはまさに戦車兵
▲戦車兵のキットにも銃剣がくっついてきちゃうあたり、日本軍だなあ

 ランナーを見ると、拳銃用のホルスターや騎兵用弾薬盒といった戦車兵ならではのアイテムが。拳銃の他、日本軍の戦車には車外戦闘用火器として三八式騎兵銃などが配備されることもあったそうで、弾薬盒はそのための装備でした。戦車兵にも銃剣を持たせるあたり、いかにも日本軍ですね。

▲こういう感じで飲んでるおじさん、今でもたまに外で見ますね

 というわけで、組み立てるとこの感じ。兵隊のおじさん二人は腰掛けたリラックスムードのポージング。日本軍の戦車兵用作業衣は左胸に大きなポケットが付いているのが特徴で、この二人の服もそうなっています。本来ならば上までボタンをとめて着用するものではあるんですが、一番上のボタンは外しているあたりからいかにも休憩中という雰囲気が漂っております。

▲何かに片足を乗せているポーズの彼。箱絵通り石に足を乗せても、戦車のどこかに乗せても絵になります
▲この人はハッチに突き刺して使いたいフィギュア。汎用性高そうです。右手には双眼鏡も持たせられます
▲「階級章なんて塗れないよ!」という人に関しても、ちゃんとデカールでフォローしてくれます

 対して将校の方はもうちょっとピリッとしたムード。戦車兵らしく戦車帽をキリリと頭、軍刀を手に何か指示を出しております。九八式軍衣はそれまでの詰襟型軍服を刷新して折襟になったのが特徴で、階級章はこの折襟のところについています。この階級章がビシッと塗り分けられていると精密な感じがしてカッコいいわけですが、細かい作業が苦手でも大丈夫なようにファインモールドは汎用の日本陸軍階級章デカールをつけてくれております。こんな細かいところに星描いたりするの、無理だもんね……。

 というわけで、「帝国陸軍戦車兵セット2」でした。リラックスムードの戦車兵は、どんな日本軍戦車に合わせてもヨシ! 広く使われた作業衣なので、合わせる戦車を選びません。また、きっちりと軍服を着こなした戦車兵の将校も、使い所を選ばない便利そうなフィギュアとなっております。日本戦車のキットを買うなら、ぜひ一緒に組み立ててあげたいフィギュアでした

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

震電のプラモデルを作りたい人に贈る「あるがまま流」の話。

 ハセガワの1/48震電、作ったことがなかったので買ってきました。震電ってめっちゃカッコいいことが自明なのと、よくインターネットに書いてある「表面の彫刻が凸」というのを読んでなんだか避けていたんですよね。凸モールドと呼ばれる表面のスジが出っ張ってるプラモデルはどうしても敬遠されがちです。なぜか。パーツを接着して合わせ目を消すためにヤスリをかけるとスジもいっしょに消えてしまうからです。じゃあヤスリをかけなければよくないですか。

 プラモデルの説明書を読んでも、どこにも「合わせ目をヤスリで消しましょう」とは書いてありません。接着して、塗装図を見ながら模型用の塗料を塗るとそれらしくなりますよ、ということだけがハコの中に入っています。それ以外のことは、もっときれいに、他の誰かよりもじょうずに、実物に忠実に……と模型の仕上がりを追い求めるからこそ出てくる欲求です。経験したことのない人が、いきなりやってうまくいくもんじゃありません。まずはプラモデルのあるがまま、そこにあるパーツを貼って、言われたとおりに組み上げるとどうなるか。これがめっぽう楽しいのです。

 コクピットだって、簡素なもんです。筆でぴろぴろ塗りましょう。ムラがあっても命までは取られません。エアブラシできれいにひとつひとつのパーツを塗って「プラモデルでは省略されている装備を追加しました」という人の製作記が、インターネットのおかげでいっぱい読める時代です。反面、「プラモデルのあるがまま、そのとおりに作るとまあだいたいこんな感じになりますよ」というのは案外わからないもんです。もしかしたら、上手く作った”作品”を探すより難しいかもしれない。つまり、「あるがまま作る」という行為こそ、あなた固有の体験になる可能性すらあるのです。

 初めてハセガワの1/48震電を組んで驚いたのですが、ずいぶんとパーツの精度の高いプラモデルです。大きくて存在感があって、どこもビシッと合うし、なによりパーツ数が少ないのに機体の特徴をよく捉えています。「あるがまま」にこだわれば、時間はかかりませんし、ここが足りないあそこが足りないと思い悩むこともありません。なるほど、このプラモデルはこういう方法で震電という飛行機に迫ったんだな!ということがよくわかる作り方。諦めるのではなく、こだわりとしての「あるがまま流」を僕はオススメしたいのです。

 ひとつのプラモデルをとりあげて、それが初心者向けなのかベテラン向けなのかを決められるのは、組む人だけです。シンプルに、プラモデルをまっすぐ正面から受け止めて作れば、まずほとんどのプラモデルは「あるがまま」に組み上がります。もしそれに飽き足らない気持ちを抱くときが来たら、その時に次のステップに進めばいいはずです。まずは、そのまま組みましょう。またどこかで必ず会えるのが、プラモデルのいいところ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

極小潜水艦プラモに詰め込まれたディテール!「ピットロードのUボート」は味濃いめのかっこよさ!!

▲パッケージアートがほんまかっこいいんだ

 ドイツ軍を代表する海の兵器。それが潜水艦である「Uボート」です。Uボートは軍艦や商船に忍び寄り、気付かれないまま襲って撃沈する恐怖の潜水艦……みたいな印象がありますが、連合軍の対潜部隊が進歩するとドイツ軍のUボートも苦戦を強いられます。そんな状況を打破できる、奇跡のUボートと呼ばれた2種類の潜水艦が第二次世界大戦後半に誕生します。それが今回紹介するXXI型とXXIII型です。

▲2隻×2セットなので全部組むと4隻完成するぞ! なんだかとってもお得!!

 この2種は水中航行時に使用する蓄電池が大量に搭載されていることからエレクトロボートとも呼ばれ、以前のUボートに比べて長時間の潜水航行が可能となってます。それまでは、水上はディーゼル機関/水中では電動モーターと別々の機関を使用しなくてはならず、大半の時間は浮上して行動し、潜航するのは攻撃時や逃走するときに限られていたのです。特にXXI型は新設計の船体ゆえに水中でも高速航行が可能であり、静粛性を無視すれば17ノットで航行可能でした(従来型のUボートは7.6ノット)。

▲小スケールと侮るなかれ。キレッキレのモールドです
▲小型のXXIII型なんてほぼ2パーツだ

 船体をバラバラに分割して造船所や鉄工所で建造して合体させるブロック工法を用い、大量生産する予定でしたが時すでに遅し。大戦中ほぼ活躍の場面がなかった悲運の潜水艦でもあります。でもその高性能ぶりが評価され、戦後各国の潜水艦設計の基礎ともなったのでした。

▲一番小さいパーツはスクリューです

 キットはパーツ構成もごくシンプルで船体構造物も少ないため、2隻1時間もかからず組めます。どのパーツも小さいからピンセットは必須ですよ!!

▲展示台も付いてるからちょっと豪華

 大きい方のXXI型でも110mmというサイズ。しかし、組み上がって並べてみると不思議と迫力があります。流線形に綺麗にまとめられた船体がよくわかります。

▲いや……でもちっさいな!!

 現用の潜水艦だったら1/700でもボールペンぐらいのサイズ感はありますが、本キットはさらに小さい感じ。XXIII型なんかはもう、スタイルも含めて玩具的な手触りがかわいい。このスケールならば他の国の潜水艦と一緒に並べて、設計思想の違いも楽しめます。揃えて楽しんでみようっと。一箱で4隻も作れるとってもお得な「ピットロード 1/700 ドイツ海軍 潜水艦 Uボート XXI型&XXIII型」で、ぜひ潜水艦プラモを楽しんでください。

内藤あんも

1977年生まれ。戦車道とスピットファイア道を行き来する模型戦士。生まれ育ちは美濃の国、今はナニワ帝国の片隅でプラモデルを作る日々でございます。

好きなコートで、かっ飛ばさない二輪車に乗りたい/アオシマのホンダ AC15 ドリーム50 ’97 カスタム

 今年も寒くなってきて、「そろそろコートの季節だな」と思いながら衣装ケースをガサゴソやっていたら変形のモータサイクルコートが出てきた。モーターサイクルコートにはいろいろな形があるが、一般的にはロングコートタイプのものが多い。襟が大きくて、トレンチコートのようにダブルの合わせのものあるし、シンプルなシングルタイプもある。どちらもウエストのベルトをギュッと絞って着ると雰囲気が出る。

 この手のコートがかなりゆとりのあるシルエットなのは、中に着る服を選ばないようにだと思う。実際着ていると何を着ようがベルトを絞ればサマになる。ラグラン袖で動きやすくシルエットもかしこまらないのが良い。私が自分が持っているものを「変形」といっているのは裾が短いから。しかし、これくらい短い方が、風が吹いたときに裾がバサバサしないし、取り回しが良い。なので当時も丈が短いタイプも出回っていたんじゃないか。

 短めの裾のコートを着てバイクでかっ飛ばしたら寒いだろうから、と原付のプラモデルを探していたら見つかったのがアオシマの「1/12 ホンダ AC15 ドリーム50 ’97 カスタム」だ。「こんな見た目で原付なのか……」と、とても新鮮に見えて思わず購入した。箱を開けたら真っ赤なフレームが目に付く。それ以外にも銀メッキのパーツはギラギラに光るものと、サテン調の落ち着いたものが二種類あって、なんだか得した気分だ。

 完成までは通常の流し込み接着剤よりも、瞬間接着剤を使う時間の方が多い。 これほどまでに瞬間接着剤を使うことがあったか、と驚くほど。それだけメッキパーツが多いのと、通常の接着剤でくっつけるための「接着面のメッキを剥がしてください」という説明書の指示を無視したということだ。

 瞬間接着剤は低粘度のさらさらしたものを使ったが、流し込み接着剤のように隙間に入り込むのには驚いた。勢いよく出し過ぎて、はみ出た瞬間接着剤が白化した部分もたくさんあった。一通り組み立て終わった後に白化した部分を除光液で拭いてキレイにしたり、指紋がべったりついたメッキパーツをキムワイプでつやつやにし直す時間は「完成後へ向けてのもうひと踏ん張り」ということで、めっぽう楽しかった。

 昔っぽい見た目のバイクは今ではすっかり見かけない姿で、いつか出会うだろうと思いながら外を歩いていると思ったよりも原付バイク自体が道路を走っていなかった。モーターサイクルコートは数年前にふと流行ったが、ドリーム50のような原付は流行るだろうか。シャキッとしたドリーム50、走っている姿を街で見逃さないようにしたい。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。マクロスプラモのマスターピースを楽しもうぜ!/ハセガワ マクロスプラス 1/48 YF-19

▲エンジンのディテールに震える!! ハセガワのYF-19で花金の向こう側へ飛ぼうぜ!!

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週は、最高に“かっこいいディテールで目が喜んじゃうでっかい飛行機プラモ”を刺身で楽しみましょう。キットは「ハセガワ マクロスプラス 1/48スケール YF-19」です。ハセガワマクロス模型の中でも、個人的にパーツ分割、剛性、ディテールと全てが高次元でまとまっているスーパーキットだと思います。マジでかっこいいので、ぜひこの週末に楽しんでください。

▲うっとりするくらい美しい機首のライン。スタイル抜群だぜ!!

 1/48スケールとなるとかなりのサイズになりますが、このYF-19は大きくなったからといって細かいパーツ分割で細部を再現したりとかそういうプラモではないです(YF-19は同社から1/72スケールも発売中)。デカくて迫力あるかっこいい飛行機模型を、組み立てやすいパーツ数と分割でキット化しています。

▲箱を開けるといきなり30cmオーバーの胴体パーツがゴロンと入っています

 成型色はYF-19をイメージしたアイボリー一色。各パーツにはとてもシャープなスジ彫りが刻まれています。特にエンジンのディテールは、ずっと見ていられるほど素晴らしいです。

▲ディテールの洪水!! こういうパーツが入っていると、作るのがワクワクしちゃいますね

 マクロスの模型はスケールモデルとキャラクターモデル両方の楽しみを味わえる、とっても素敵なコンテンツ。ハセガワのファイターは飛行機模型の楽しさやパーツ構成を、キャラクターモデルを通して味わえるので、スケールモデルへの橋渡し的な役目も担っています。この1/48 YF-19の組みやすさは、まさに飛行機模型を作ってみたい! という人に本当にオススメしたいです。サクサク組めて、組み上がった後の満足感もすごいですよ。

▲飛行機模型で組み立てるのにちょっとめんどい着陸脚。こちらはある程度の塊の状態で成型されたものを左右貼り合わせるだけで形になります
▲すごく大きな胴体下部ですが、中に入るのはこんなに小さなコクピットだけ
▲これだけの飛行機を1人で任されるんだな〜と思うと怖くなってきます……。アニメだけじゃなく、飛行機のパイロットって本当にすごいですよね
▲コクピットやフィンのパーツなどを内側に接着したら、胴体を上下で接着!!
▲およそ15分で30cmオーバーの飛行機の様な物体が机上に爆誕します。この塊を見ながら他のパーツを組んでいくので、自ずと「早く形にしたい!」とテンションが上がります

 小さなコクピットを収めたら、いきなりでかい胴体が完成してしまうメリハリの良さ! こういった思い切りの良さが各所にあります。そしてパーツの接着軸や穴もかなり大きめに取られているので、パーツの接着がしやすく、接着後の剛性もしっかりとしたものとなっています。

▲ガンポッドは左右割り。迫力あるパーツです
▲こちらは収納された腕部。箱型のシンプルなパーツなので、組み立てスピードがアップ。ガンポッドを固定する大きめの穴も用意されています
▲脚庫カバーも、接続専用の軸がニョキっと生えています。この部分に接着剤を塗って、脚庫内側の穴にペタリと貼ればしっかりと固定できます
▲ガッチリと接着できるので、完成後にカバーがプルプルしたりしません。塗装後でも軸だけに接着剤を塗って貼れば問題なく綺麗に接着できます
▲翼は側面に合わせ目が出ないパーツ構成。裏側にパネルをペタリと貼るだけで完成します

 このキットは各ユニットごとに作っていけるのも特徴です。ですので、塗装して仕上げたい時は、ユニットごとに塗って、最後に各部を接着という方法で攻められます(下の写真でガンポッドと腕は胴体に接着してしまいましたが、そちらも接着しなければ、ユニットにばらせます)。

▲塗装したい時に、これだけ分けられると各部の塗り分けも楽ですね
▲最後に残された究極の選択! エンジンにカバーするか……ディテールを楽しむか……

 バラバラになったユニットの接着も安心してください! 非常に大きな軸と穴があなたをお待ちしています。塗装後とかに接着でプルプルするのって本当に嫌。でも、たとえば脚部と胴体を接着するデカい穴と軸、そして板状のノリシロのおかげでガッチリ固定できます。

▲ノズル内のディテール、ソール裏の細かな滑り止め表現!! 飛行機模型のかっこよさが凝縮されています
▲インテークも脚部同様しっかりと接着できるので、正面から見た時のシルエットがとても綺麗になります

 完成後全長が約38.8cmというとても大きな飛行機模型ですが、週末2日あれば間違いなく完成します(僕は4時間で完成しました。1日2時間ずつ使えば組み上がりますね)。

 細かいパーツが少なくて、大きな塊に美しい彫刻が刻まれたパーツをペタペタと接着していくのがとても楽しい本キット。マクロスのキャラクターキットとしても、飛行機模型としても最高の組みやすさと完成度を兼ね備えた傑作プラモです! ぜひこの週末に作ってくださいね。それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

真剣に、命がけで遊べ/太陽の塔のプラモが教えてくれた岡本太郎のスゴさ。

 人工衛星のようだ、と思った。金のパラボラとアンテナ。ブルーのディスクはさながらソーラーパネル。『太陽の塔』がショートケーキならば、この部分は最後に食べるイチゴのようなパートだ。その威容の頂部にあって万博の喧騒を見届け、いまは記念公園の近くを通る人達を睥睨する黄金の顔。

 太陽の塔には全部で4つの顔があった。金色に輝き未来を象徴する「黄金の顔」、現在を象徴する正面の「太陽の顔」、過去を象徴する背面の「黒い太陽」、そして万博当時に存在した”幻の顔”である。地下空間にディスプレイされた「地底の太陽」は黄金色で顔の直径は3メートル、左右に伸びるコロナは最大で13メートルという巨大な物体だったが、万博終了後に所在不明に。2018年の再公開に向けて海洋堂が当時の資料をもとにひな形を作り、現在はそれをもとに復元されたものが展示されている。

 その表面に自分でなにか痕跡を残したい、と思う模型だった。プラスチックモデルで堪能できるのは「地底の太陽」を除く3つの顔。模様の再現にはデカールも用意されているが、パーツの表面の彫刻にしたがってアクリル塗料を筆塗りしたいという気持ちがむくむくと湧き上がってきた。両脇がほんの少しめくれ上がった凹みに赤い塗料を走らせると、波打つ模様が傷口のようにも見えてくる。ただ瓶からすくっただけのプラモ用塗料に、内側から吹き出す血や溶岩のエネルギーを感じたのは初めてだった。

 完成後も前後の外装を分離して内部を見られるようになっているから、正面と背面の顔を同時に眺められるのも模型ならではの楽しみ方だ。立体的な「太陽の顔」と、タイルの陰影と緑のコロナが不気味な「黒い太陽」はわかりやすく対照的。コンクリートの微妙な凹凸も意図的に彫刻されていて、白いプラスチックのままでも案外豊かな質感があるのに驚かされる。

 万博と塔の間には、密接な関係がある。パリ万博で建てられたエッフェル塔と、大阪万博で建てられた太陽の塔。どちらも造形的な美があり、万博のテーマを象徴するメッセージがあり、そして何よりも建造物として(あるいは上昇する装置として)当時の技術の粋を凝らしたものだった。

 完成してみれば、誰もが知っている太陽の塔がそこにある。しかし、プラスチックモデルを作る過程で太陽の塔が内包する意味をさまざまな角度から感じ、読んで知り、ああホンモノを改めて眺めたいなと思わされた。そしてなにより、岡本太郎という世紀の芸術家が遺した巨大なオブジェの忠実な模型が家にあるということがひたすらに面白い。全高360mmに縮んだとて、その存在感は決して小さくなっていないことに、改めて驚かされるのだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

ギラギラしたいなら「ステラパープル」を塗れ!LINKL PLANETカラーのぎらつき番長!!

▲蓋を開けた瞬間からギラギラ!! 紫のパールカラーは色気がやばい

 完走まであと2色!! 水性ホビーカラーでお手軽に「パール塗装」が楽しめるすごい塗料「LINKL PLANET カラー」(リンクルプラネットカラー、以下リンプラカラー)の魅力をお届けしてきた連載も間も無くクライマックスです。一気に行きますよ〜〜。

 BANDAI SPIRITSのプラモデル公式アンバサダーとして、様々なプラモデル啓蒙活動を行っている「LINKL PLANET」とMr.HOBBYのコラボカラー。アイドルとのコラボカラーというだけでなく、ありそうでなかったパール色を気軽に棚から選択できるという革命的な塗料となっています。今回は「小橋川梢 ステラパープル」をご紹介します。

▲塗った瞬間から笑顔になっちゃうくらいの発色!! ギラついた紫が目の前に爆誕します

 アイボリーの成型色のパーツに塗ったら、一瞬でギラつきました。アイボリーの可愛さはどこへ……。紫のラメラメのドレスや、街で見かけたらちょっと怖い紫の改造車の様な輝きを纏いました。美しい光沢によるツヤツヤ感と、ギラギラとしたパール粒子の迫力がすごいです。

▲車に塗ったら速攻で夜の街を駆け抜けられそうな色ですね

 このギラツキ度、そしてちょっとだけ品のない感じが改造車やヤンチャなバイク模型にピッタリですね!! 塗れば間違いなくいつもと違いを出せます。あなたの模型をド派手にしたいなら、絶対にステラパープルはオススメです。ぜひステラパープルで、ギラギラした模型を楽しんでください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

世界一イケメンのイギリス人パイロットプラモは「タミヤのスピット」の中にいる!!

 タミヤが1/48 傑作機シリーズの飛行機プラモと、1/48ミリタリーミニチュアの車両をセットにして販売している限定商品がどんどん発売されています。その中で英国を代表する「スーパーマリン スピットファイア」と小型車両の「10HPティリーセット」をご紹介します。

▲草の飛行場の絵を見るたびに、英国に行った記憶が蘇ります。本当に緑が綺麗なんですよね

 このセットに入っているスピットファイアMk.Iは、2018年に発売された完全リニューアルキット(先代は1993年に発売されたキット)。実機を徹底リサーチし、スタイリングやコクピット内の細部も丁寧にプラモで表現されています。その中でも超進化を遂げたのが「フィギュア」です。ここ数年のプラモで最も革命的進化を遂げたとも言えるのがまさに「人のプラモ」なのです。

▲たった2パーツで、最強のイケメンパイロットをあなたの手で作れるんです

 タミヤのフィギュアは、軍装した人を3Dスキャンしたデータをもとに、原型師がプラモでカッコ良くなる様に造形しています。シワや軍装の細部ディテールまでプラで表現されており、タミヤによって人間のプラモの世界は飛躍的に成長したのでした。このスピットファイアのパイロットも、精悍でまさに「救国の戦闘機」と言われるスピットに引けを取らない仕上がりとなっています。このプラモを作るだけでも、タミヤの新生スピットファイアは買う価値があります!!

▲マスクがだらんとなっていたり、顔が少しだけ横向いているとか芸が細かい!
▲かっこいいアニキは背中でも語るぜ〜〜

 どんなイギリス機にも彼を乗せたくなるくらい、本当にかっこいい!! 現在の開発スタイルになってからのパイロットフィギュアはどれも素晴らしくて、タミヤの1/48スケール飛行機模型の大トロの一つです。その味わいを、ぜひこのプラモで堪能してください。それでは、またね!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデルを組み立てながら設計者の背中を追いかける/「ファインモールド製F-2Bの3D-CAD仕立て」

 プラモデルが設計されて完成するまでのプロセスは長くて複雑だ。設計のことには詳しくないが、聞きかじった知識や公開されている情報からその様子を想像するに大変な仕事なのだろう。

 今日のプラモデル開発は3D-CADソフトを用いることが主流で、金型の都合やユーザーが組み立てる工程から逆算してパーツを一つひとつ3Dモデルで作成し、パーツの集合体であるアセンブリモデルを作成する。そしてアセンブリされた状態の画像が模型誌や広報用のSNSに公開されてユーザーの目に留まるという仕組み。3Dモデルの画像を公開する際、ユーザーに完成状態が想像しやすいように製品化するときと似た色が着色されている。メーカーは情報に誤解が生じないように気を配っているはずだ。

 しかし開発中の3Dモデルにはピンクやイエロー、グリーン、ブルーなどのカラフルな色でパーツを塗り分けていると想像している。アセンブリされた状態ではパーツ毎の形状が把握しづらいため成形色を無視したカラーリングで認識力を補い開発をスマートに行なっているのではないだろうか。

 おそらくユーザーに開発中の画像が提供される直前まではカラフルに色分けされた3Dモデルが存在している。色分けのルールはメーカーや部署、設計者個人の意向で変わると思うので今回はランナー毎に色を分けてみる。使用する色は赤、黄、橙、青、緑、紫。これらの色を原色、淡色、暗色で使い分けると色の判別がしやすい。

  いざ組み立て始めると、なぜコクピット周りのパーツを同じランナーに集約しないのだろう?きっと何か意図があるはずだ、と少し手を止めては憶測の域を出ない答えが増えていく。そんな脳内とは裏腹に、理路整然と組み上がっていくプラモデルを見ていると、つくづく不思議な遊びをやってるなと思う。

 そして完成した戦闘機を眺めると、どのパーツがどのランナーと一体になっていたのか、パーツが分割されている箇所はどこなのか、組み立て後には分からなくなる情報が現在に留まっている。
実機ではあり得ない外観だがプラモデルとは何かの状態を模している物体なので「設計段階の模型」の模型としてはとても良い出来になった。

ねこやなぎ

1990年生まれの会社員。休日はプラモデルとイラスト制作に明け暮れる。

安定感抜群のパールブルー!「LINKL PLANETカラー 石田悠佳 ステラブルー」

▲インディーブルーにパールが入った雰囲気ですね!

 水性ホビーカラーでお手軽に「パール塗装」が楽しめるすごい塗料「LINKL PLANET カラー」(リンクルプラネットカラー、以下リンプラカラー)。BANDAI SPIRITSのプラモデル公式アンバサダーとして、様々なプラモデル啓蒙活動を行っている「LINKL PLANET」とMr.HOBBYのコラボカラーです。アイドルとのコラボカラーというだけでなく、ありそうでなかったパール色を気軽に棚から選択できるという革命的な塗料となっています。今回は「石田悠佳 ステラブルー」をご紹介します。

▲こちらは似た名前の「ステラスカイブルー」。記事を見て色味を比べてみてね
▲これまでの色で一番発色が良いですね! 吹いていて、塗料が暴れないので、めちゃくちゃ安定感があります

 蓋を開けた瞬間、他の色のような鮮やかさがあまり感じなかったので、少々心配になりました。しかし塗ってみたらその心配は杞憂に終わりました。緑が少し入ったような青に、綺麗なパールがあっという間に発色したのです。

▲ステラスカイブルー1:水性ホビーカラーうすめ液1の割合で塗っています。

 リンプラカラーは隠蔽力はそれほど強くないので、下地が透けたり下地の影響を大きく受けます。ですので綺麗に発色させたい時は下地を「白」にしてください。グレーが入っているような白も避けて、ピュアホワイトの上から塗ることをオススメします。白いプラスチックの上は直接塗っても良いでしょう。

▲今回もクリアーパーツに塗ってみます。かなり濃い青のクリアーパーツですね

 隠蔽力の弱さを活かすと、クリアーパーツの味付けにも使用できます。今回は濃い青のクリアーパーツに塗ってみます。ステラブルーの青と色味が似ていたせいか、塗ってみると色の変化はあまりありませんでした。しかし、リンプラカラーの特徴であるパール粒子がかなり良い働きをしてくれました。

▲ビームサーベルに、成型色を完全に隠蔽しない程度にベタ塗りしてみました。透明度は減りましたが、キラキラと粒子が輝くサーベルが完成しました
▲広い面のパーツに吹くと、より粒子感がわかるとお思います

 ステラスカイブルーよりも、より青に近く、しかも扱いやすいステラブルー。青はさまざまなモチーフに塗装されている色ですので、ぜひこのステラブルーを青の部分に塗ってアクセントにしてみてください。美しい光沢と綺麗なパール粒子を、ここまでお手軽に味わえる青い塗料は他にはないでしょう。ぜひ楽しんで塗装してください。それでは!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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超高精細な印刷で再現されたコメダ珈琲店の模型にビビり倒そう。

 みそカツパンをひときれ食べると「これ3切れ行くの結構ヤバいな」といつも思う私です。しかし家にコメダ珈琲店があればだいたいのことは解決します。グリーンマックスという鉄道模型メーカーから発売されたNゲージ用のコメダ珈琲店の模型です。なんと箱から出した時点でここまでできている。そんならこれはもう完成品じゃないか、プラモデルではないんじゃないのかなど、与野党から批判の声が続出しています。

 コメダ珈琲店には屋根に看板が乗っかっている店舗とそうでない店舗がありますので、看板のパーツが別に用意されています。看板には自分でカットしなければいけない枝が付いているので、ニッパーが必要。つまりこれはギリギリプラモデルだと言い張って良いという判決が出ました(自分の中で)。

 この模型何がスゴいって壁に彫刻された室外機や配管の凹凸と寸分たがわぬ精度で彩色されていることなんですよね。最近は少々の凹凸があっても印刷できるUVプリンタという機械があり、超拡大するとインクのツブツブが見えます。当然ながら肉眼ではほぼわからないレベルですので大丈夫。リアル系のフィギュアの瞳なんかもこの技術で印刷されることが増えてきましたが、しかし「実在するお店の外観を板状のパーツで再現して印刷しちゃう」というソリューションはなかなか思い切っております。

 屋根をガポーンと開けると室内もばっちり再現されています(中央に穴があるので席数はリアル店舗より少なくなっていますが、窓から覗き込んだときの実感は担保されていてよろしい)。そして厨房のスペースというのはこれくらいあるんだな、などの気づきがあります。ちなみに室外機の配置をはじめとした店舗の外観から、この模型のモデルになったのは松戸常盤平店であることがマニアによって特定されています。

 屋根のフチに入ったコメダ珈琲店独特の帯や内装、縦長の看板などはシールが用意されています。カットラインが入っていないので自分で切る必要があります。この模型を手に入れたい人は短めの金尺とよく切れるカッターナイフを用意しましょう。

 Nゲージはだいたい1/150スケールなので、ガンプラとの親和性も抜群(本当に!?)。メニューの写真より盛りが良いことから「逆写真詐欺」などと称賛されることも多いコメダ珈琲店ですが、この模型も実物を手に取ると「なにもそこまでせんでもよくない!?」と思うほど出来が良い。お値段は少々張りますが、それだけの価値があります。みなさんも、ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

世界最強戦車の超決定版が手のひらサイズでやってきた!!「モンモデル 1/72 アメリカ軍 主力戦車 M1A2 SEP エイブラムス TUSK II」

▲組みやすさとカッコよさを両立した究極の1/72スケール戦車の登場だ!! 値段も親切!!

 スケールモデルだけでなく、アニメやSF映画に登場するメカまで精力的にプラモを展開する中国の大手メーカー、MENGモデル(モンモデル)。同社は1/35スケール戦車模型のラインナップが充実しているのですが、近年「組みやすさとカッチリとした精密さ」を目指した1/72スケールの戦車模型も発売しています。その第1弾が、以前ご紹介した「中国人民解放軍 ZTQ15式戦車」だったのです。

 そしてその1/72スケールに、世界最強戦車「アメリカ軍 主力戦車 M1A2 SEP エイブラムス TUSK II」がラインナップとなりました。間違いなく本シリーズのラインナップで花形となるであろう戦車模型をレビューします。

▲モンモデルは1/35スケールでもエイブラムスを発売中。1/72スケールはどのようなキットになっているのでしょうか?

 現用戦車はボリューム・装備共に第二次世界大戦の戦車とは別物です。ガラケーとスマホくらい違います。そのため1/35スケールとなるとかなりのフルコース的ボリュームになります。それらの車両を「1/72スケール」というミニサイズに縮小して楽しもう! という提案がこのモンモデルの1/72スケール現用戦車シリーズなのです。小さくしただけでなく、組みやすさも考慮されています。

▲プラ製の履帯だけど、めんどくさいカーブのところは既にランナーの中で完成しています

 小さくなったらパーツも自然と小さくなります。だからパーツの破損や紛失がないように、彫刻や成型のアイディアで、1パーツで収められるものは極力1パーツで成型されています。履帯は何枚か繋がった状態のものが6パーツ入っていて、それをカチカチと嵌めて接着すればすぐに完成します。転輪を指すトーションバーも、シャシーから生えているので1本1本接着する必要はありません。

▲シャシーと一緒に成型されたトーションバー

 小さいスケールモデルっていうとディテールはそれなりなんでしょ? って思う方が多いと思います。そんなことはありません! このグリル部分のディテールを見てください。エッチングパーツなんて必要ないと思える細かな彫刻が刻まれています。各ハッチのフックなんかも誇張気味にディテールが施されていて、非常にかっこいいです。

▲アップで撮影したら何分の1のスケールモデルか判断しにくいほど、精密なモールドが入っています

 そして組み味です。キットには、パーツに接着剤を塗る糊代と接着のガイドとなる穴などがしっかりと用意されています。そのため各パーツを接着するときに迷いやズレが生じないので、サクサク組んで行けます。

▲ここまで30分ほどで形になります。その秘密が……
▲ジェリカンのパーツにの根元にも見られる大きな軸です。各パーツにしっかりと接着するためのガイドがあるので、組み立てがとっても楽なのです
▲エイブラムス M1A2 TUSKII(市街戦用強化パッケージ)の1番のチャームポイントである瓦状の爆発反応装甲も、的確な軸位置と受けでしっかりと接着されます。2パーツで完成しちゃうのもすごい!
▲各種装備をつける前の砲塔。あっさりしてます。でもここから30分で〜〜
▲装備爆盛りの砲塔に早変わり! 防弾シールドの枠は1パーツで成型されているので、クリアーパーツをはめるだけ。爆発反応装甲も、各箇所2パーツ構成だからすぐに組み上がります

 シンプルなエイブラムスが、ガンダムでいうフルアーマー化されたTUSK IIは模型映えも抜群。でもその分、市街戦用強化パッケージとも言われる各種武装を作らねばなりません。なんだか大変そう〜〜って尻込みしてしまいそうですが、このキットのパーツ構成や組みやすさなら問題なし! しかも手のひらサイズに装備モリモリの戦車が爆誕するので、ディテールの凝縮感がより濃い味で脳に届きます。

 そして完成するとこのルックスです。僕は2時間ほどで組み上げられました。全部盛りのエイブラムスが、ここまでカチッとしたパーツ成型であっという間に組み上がるなんて、ミニスケール模型界の事件です。価格も輸入キットの中では非常に抑えめともなっています。ぜひこの機会に、世界最強戦車のかっこよさをハイクオリティプラモで楽しんでください!! 今すぐ絶対にゲットだよ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

小さなプラモデルの翼は精霊馬になるか/SWEET 零戦21型 空母戦闘機隊

▲SNSなどで呼ぶときは「お嬢ちゃん」と呼んでいた、うちの子

 2023年の1月に家族を見送りました。15年も一緒にいたためそのショックは結構なもので、「うまく世話できてたかなぁ」「幸せに生きられたかなぁ」などと時々考えてしまいます。動物なので言葉も通じていたか分からないけど、一緒にいた時間は確かに幸せでした。

 それでも時は過ぎるもので、2度の彼岸と初盆を経て、なんとなく気持ちも落ち着いてきました。お盆にはできなかったことを、今やっておこうかと思います。今回買ってきたのはSWEETという静岡の小スケールなプラモデルを多くラインアップするメーカーの「零戦21型 空母戦闘機隊」。次のお盆に「これが精霊馬だよ!」と飾っておいたら、馬や車なんか敵わないくらい早く帰ってこられるでしょう。生ものじゃないから腐る心配も無用!

▲ランナーもちっちゃくてかわいい。なんと2セット同梱で、お得な感じ

 コンパクトなサック箱に旧海軍風味を強く感じる若草色~ベージュの中間くらいの成形色のランナーが2枚。1枚で1機完成する、2機セットのパッケージです。風防はクリアパーツなので、ちまちま筆塗りして塗り分けたくなります。彫刻がみっちり入っていて、ちっちゃくても満足できるハイパワーな造形です。モールドははっきり見せたかったのでシタデルカラーのナルン・オイルでスミ入れしました

 説明書に「流し込み接着剤を使用してください」と書いてあるとおり、タミヤの流し込み接着剤を使っているとスポーンと完成する簡単さ。機体や主翼といった主なパーツが一体化しているので、組み立ては休日の昼下がりに1時間もあれば終わります。お昼ご飯後の腹ごなしにひとつ、みたいな感じですね。

▲パーツはバラバラでも、どれをどこに貼り付けたらいいかすぐ分かります。尾翼にはLとRの刻印があり、差し込む向きが分かる親切仕様

 1/144スケールという小ささの中で、翼端を折りたたんだ状態にもできる! プロペラは回転する! タイヤが付いている足の造形も細かい……! しかもモールドもはっきり刻まれていて、こんなにちっちゃくてリッチな造形が1000円ちょっとで手に入っていいのか!? 精霊馬を作るという目的を忘れかけるくらい、ちっちゃくまとまったかわいいスケールのマシンに魅了されます。

▲裏側までツルッとしていると空気抵抗を減らした「飛ぶための機械」っていう印象が強まります……が、これはプラモデル! 一見のっぺりとしていながら、足の収納部や吸気口の造形がはっきりしていてかわいいですねぇ

 などと考えていると、このプラモデルは「造形を作り込んで塗装は作り手に委ねる。組み立てただけで外観は完成してカッコいいけど、造形の中に塗装したくなる意匠やモールドを忍ばせておいた」という印象を受けました。小さなスケールで当時存在していた装甲の分割線や造形を表現しているので、簡単なスミ入れで済ませてオッケーそうな成形色や彫刻の細かさをしているし、風防の隅々まできっちり塗装してこだわってもいい。航空機らしくシルエットやパーツ自体の点数はすっきりしているので、組み立てた後から塗装するのも楽ちんです。そう言ったらきれいに塗りたくなってきたな!

▲出来上がりまでちっちゃくてかわいい~。これくらいなら机の上にちょこんと置いておいたら収まりがいいでしょう

 彼女は飛行機に乗ることも遠出することもなかったので、彼岸から帰ってくるときくらいは空の綺麗な場所を飛んで帰ってきてほしいな。どれくらいの距離があるかも分からないから、燃料を積んだ増槽も付けておこう。

 また彼岸に行くとき用には、大好きな鮭ときゅうりと、大根をたんまり積んでほしいから、輸送力のある車両……。景色も楽しんでほしいし、カーゴトラックなんかを作ろうかな? バキッと塗ってあったら、私が贈った精霊馬だって分かってくれるだろうか。そんなことを思いながら、少しだけ広くなってしまった部屋で生きていきます。

雪城あさぎ

平成生まれのアラサー。ライターが本業だが、ハムスターになってプラモやガレージキットを作ったり、絵を描いたり、YouTubeで配信したりする。コトブキヤとウォーハンマーとじゃがいもが好き。

アンモナイトのごときエンジンがプラモデルの歴史を語る/タミヤのポルシェ 935ヴァイラント

 縮尺に対して体積は3乗で効く。1/24のカーモデルと比べると、1/20のプラモデルは1.728倍もの空気を押しのけるから、その存在感はスケール表記から直感的に想像されるものよりうんと強くなる。タミヤから久しぶりに再販された1/20のポルシェ 935 ヴァイラントと1/24のポルシェ 911 ターボのボディをこうして並べると、数字を羅列するよりもわかりやすいはずだ。鮮烈なコバルトグリーンのプラスチックは、塗装の必要を感じさせないほど美しい。

 ボディ以外のパーツは黒とシルバーに大別されるが、シルバーのランナーにはバラバラになったエンジンと、カーボンフリーズされたハン・ソロよろしく四角い箱に半立体となって彫刻されたエンジンがある。最初は「上から見たところと下から見たところを組み合わせる仕組みかな?」と思ったが、どうも違うらしい。

 水平対向6気筒のエンジンとトランスミッションの彫刻が入った箱を裏返したら、正体は電池ボックスだった。今回はディスプレイ(=スタティックな展示を楽しむタイプの)モデルとして売られているが、このプラモデルがかつてはモーターで走る仕様でも組めたことを示す化石だ。聞けば、そもそもカーモデルは1/24スケールが”主流”だったのだが、走行模型がブームになった時代はモーターをエンジンのパーツの中に仕込む都合上、各社がこぞって標準スケールより大きな1/20を採用していたのだという。
 その名残としてタミヤには(最初からディスプレイ専用モデルとして設計された後年のアイテムも含め)F1マシンを中心に”グランプリコレクション”と銘打った1/20スケールのラインナップが現存している。モーターを仕込んで走行させる以上いくばくかのディテールが犠牲になったかつてのプラモデルのなかでも、現代の鑑賞に耐えうるものが走行ギミックを取り払われ、「ディスプレイモデル」として販売されているというわけだ。

 「走る模型も面白いが、走行させないキミは完璧なエンジンを組み上げるという選択をしてもいいんだぜ」と言わんばかりの立体的で豊かな彫刻に彩られたディスプレイモデル用エンジン。
 プラモデルにおける”プレイバリュー”という言葉がただ単に「動く!光る!音が鳴る!」という加算的な概念ではなく、正確さへの憧憬と動く喜びのいずれかを排他的に選ばねばならぬユーザーの心の葛藤にこそあるのだとすれば、ハナから決められたゴールに向かってひたすらにまっすぐ走り抜けるようなプラモデルとの違いが浮き彫りになる。このポルシェに残された無駄とも過剰とも捉えられ得る余地を、「そういう時代だったから」と片付けてしまうのは、ちょっと惜しい気もする。

 デカールを見やれば、右下のタミヤロゴの上にイタリアの名門、カルトグラフ社の名前がある。いまや決してモーターで走ることのないポルシェ935だが、美しく用意されたボディカラーや精緻なエンジンのパーツと高品位なデカールを組み合わせれば、おそらくこのプラモデルが単なるリバイバルではなく、当時すでに備えていた高いポテンシャルを現代に伝える貴重なアイテムであることが体感できるはずだ。

からぱた/nippper.com 編集長

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動かない心臓に宿る、消えない炎/蘇るクラッシュギア、ガルダイーグルの話。

 『激闘!クラッシュギアTURBO』という作品があった。当時熱狂していたという方がいればぜひ熱い握手か、それが嫌なら熱い抱擁をしたいと思う。2001年にスタートしたアニメ作品で、当時小学生だった私は毎週日曜の朝がとにかく楽しみだった。そして、作中に出てくる数々のマシンを模した対戦型玩具「クラッシュギア」が発売され、小学生のお小遣いにはハードルの高い1台1000円のマシンを買うため必死に貯金をしていたのだ。写真のクラッシュギアはアニメ初期の主人公機「ガルダイーグル」で、私の一番好きな機体である。アニメ放映当時に地元の量販店で購入したもので、実家の押し入れで大切に保管してあった。

 時は経ち2021年。すっかり大人になった自分に、信じられないニュースが飛び込んできた。アニメ放映20周年を迎え、あのクラッシュギアがバンダイのSMPから完全新規造形で発売決定。あまりの驚きから、会社の休憩室で声が出てしまったのを覚えている。そう、「玩具」として発売された当時のクラッシュギアは安全上の都合で、アニメ作中で激しいバトルを繰り広げるCG描写のマシンデザインから大幅なデフォルメが施されている。小学生だった当時の自分も玩具を手にし、「アニメとあんまり似てないなぁ」なんて思った記憶がある。当商品の企画担当者も当時から同じ想いを抱いていたようで、理想のフォルムを持ったマシンを「モーターで走行しないディスプレイモデル」として令和の時代に甦らせてくれたのだ。

 玩具という制約の中で、当時多くの少年たちに夢を見せてきたガルダイーグルのビークソード。前輪軸のカムシャフトと組み合わさり高速でピストン運動をするのだが、玩具版のそれは刀身の短さからなんともコミカルな動きと見た目だった。あれから20と数年、ディスプレイモデル版としてシャープになり、大人になった僕たちは再び手に取る。
 そして特筆すべきは、ランナーに刻まれたこれらのパーツ。この存在を知った時、様々な感情が溢れ出てきて胸が締め付けられたのだ。

 完成するのはなんと、1/1スケールの130モーターの模型。もちろん電池を繋いでもピニオンギアは回転しないし、なんならこのモーターの模型を車体に組み込まなくてもリメイクされたクラッシュギアはしっかりとカタチになるのである。これだけ聞くと不要に見えてくるパーツだが、クラッシュギアを愛する全てのファンに向けた、企画担当者からのあまりにも粋なサプライズであり、このキットの「心臓」なのである。

 もう玩具という存在ではなくなり、モーターからの動力で走行する必要がないクラッシュギアの模型。しかし、当時を経験した私たちにとって、クラッシュギアにモーターを載せるのは「儀式」なのだ。これから共に戦っていく愛機を自らの手で組み立て、モーターやギアを慎重に組み込み、ちゃんと動くのかドキドキしながら電池2本をセットしてスイッチを入れる……。「当時のあの気持ちを思い出して欲しい」というメッセージを、動かない歯車たちから感じ取ったのだ。

 勝手な推測でしかないのだが、当商品の企画担当者と私は限りなく近い年齢のハズ。あれから20年近く経ち大人になった今でも、少年だった頃の熱い想いが忘れられず声を発し、先述のような胸に刺さる演出を仕込み、きっと自分と同じ想いを持った大人たちが待っていると信じてどれだけ売れるか不安な製品を世に送り出したのであろう。
 劇中のシャープなフォルムを再現してくれた点に評価が集まりがちだが、それ以上に「動かない心臓」から発せられるメッセージが刺さり、当時の気持ちを取り戻すことができた。名前も知らないし会ったこともないが、同世代がこんなに頑張っている。人の気持ちを動かしている。自分ももっと頑張らなくちゃ。

たまごん

ごく稀に真面目にプラモデルを作るらしいが、基本的には酒の力を借りながら夜な夜なミキシングでモンスターを生み出す等の活動に力を入れている。

「アオシマグラチャンのマドンナ」はハセガワのプラモデルにいた話/ハセガワ 80’s ガールズフィギュア

▲私を振り向かせてみなさい……

 日本のカスタムカー文化をプラモで追体験できる、アオシマのグラチャンシリーズ。1970年代に誕生したこの「街道レーサー」とも呼ばれるカスタムに、ピッタリのフィギュアプラモを見つけたのでご紹介します。それがハセガワの「80’sガールズフィギュア」です。アオシマのプラモのベストパートナーはハセガワにいたんですね。

▲松田聖子、中森明菜的な雰囲気の2人がプラモになっています

 グラチャンのプラモを買った時にあまりにも知らない世界だったので、インスタで「#グラチャン」と検索しました。するとガンプラ改造例もびっくりな羽根や竹ヤリみたいなマフラー、超ど派手なカラーを纏った車が多数目に飛び込んできました。「いや〜、アオシマのグラチャンはセンスがいいものをしっかりとピックアップしてプラモにしているんですね……」とインスタの画像とプラモのラインナップを見比べて思うのでした。

 そういった写真の中には車のオーナーやヤンチャなアニキたちの他に、彼らのマドンナ的存在の人も一緒に写っていました。当時の最先端の格好で、ギラギラしている車の前に立ったり、ボンネットに乗ったりしているその景色が、僕には最も印象に残ったのです。

▲トリッキーな分割も無いので、接着剤でパーツを貼ればすぐに完成します

 そしてそんな景色を可能とさせてくれるプラモが、既にこの世にありました。ハセガワの「1/24 80’sガールズフィギュア」は、聖子ちゃんカットと呼ばれて当時一世を風靡した巻き髪スタイルが特徴です。こういう女性が当時の写真にバンバン写っていました。

▲特にこのカーディンガンを肩からかけている方のフィギュアのような女性は、ほぼそのまま当時写真にいたりします
▲みんなが憧れた聖子ちゃんカットの巻き髪を綺麗に表現するために、別パーツで成型されています
▲このフィギュアのツンとした雰囲気は、中森明菜を彷彿とさせますね

 グラチャンのケンメリ4Drのキットと並べてみたら、ちょっとだけ尖った香りがする景色が出来ました。街道レーサーのマドンナは、ハセガワにいたんですね。ギラっとしたあなただけの改造車を完成させたら、ぜひ彼女に猛アピールしに行きましょう!! それでは。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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雪の青春がプラモになっている!/ハセガワジムニーを彩る「スキーフィギュア」で暖冬を吹き飛ばせ。

▲スキーフィギュア! ランナータグが優勝しています

 箱を開けたら絶好調真冬な恋なヤングたちのプラモデルが飛び込んできました。これはすごい!! 今年は暖冬だけど、僕の部屋には一足早くスキーシーズンが到来しちゃいました。’90年代な雰囲気のウェアが、逆になんだか新鮮です。これをジムニーに添えれば確かに楽しいスキー旅行の景色が爆誕しますね!

▲タミヤのミリタリーミニチュアもびっくりなボリューム! 4人の若者とスキー板&ストックがびっしり

 このキットはハセガワの「1/24 スズキ ジムニー スキーバージョン」。定番モデルの「スズキ ジムニー(JA11-2型)」に、雪にまつわる装備やフィギュアをセットしたスペシャルキットです。ちなみにこのヤングたちはもともと同社のセリカGT-Four RCとセットで登場したもの。もとは超有名な映画をモチーフにしたキットだったんですね。’80年代〜’90年代って、ちょうど11月から12月にかけてスキーのTVCMが今よりバンバン流れていて、CMで使われた歌も大ヒットしていました。僕は実家のこたつに入って、CMをよく観ていたのを思い出します。

▲20番と21番のデカールのこのライン! 僕の近所にあったジムニーにも貼られていました。見たことある! って思えるだけで一気にモチーフとの距離が縮まって、より興味を持てますよね
▲フィギュアは手原型。’90年代のだいぶノスタルジー味ある雰囲気を見事に表現しています
▲そろぞれ腰のひねりや腕の上げ下げなどポーズが決まっています。組み立てると「これからゲレンデへGO!!」みたいな、楽しい思い出の始まりを切り取った雰囲気になります
▲スキーウェアのモコモコ感を味わえるフィギュアってそうそうないと思います。塗装で’90年代らしい派手な色使いにしたり、化学繊維の光沢感を表現したら楽しそうですね〜
▲ジムニー本体にもスキーキャリアが新規パーツでセットされます。これでルーフに板を固定できるようになります

 僕はてっきりこの「1/24 スズキ ジムニー スキーバージョン」に入っているフィギュアはレジン製だとばかり思っていました(ハセガワはプラの車とレジンフィギュアをセットにしている商品を展開しています)。そして箱を開けたらびっくり!! プラのランナーにびっしりとヤングがいたのです。こういう驚きって最高ですよね! また車模型にフィギュアが入っているとすぐに情景が楽しめるので、超嬉しい。こんなに大量じゃなくても、その車に似合った1人がつくだけで車模型の景色が大きく変わると思います。またこういう商品がぜひとも欲しいです! ハセガワさんよろしくお願いします。それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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複葉機で工業コミュニケーション/ファインモールドの九五式戦闘機二型

 プラモデルメーカーの代表が「私自身は複葉機が好きなんです」と語るのを目の当たりにして、同社の複葉機プラモを手にしてみたくなった。「ファインモールド」という豪気な社名を背負った代表自ら現場に立ち、金型製作など手掛けて確かな製品を世に放っている事を知ったのならなおさら説得力がスゴい。同じ愛知県で工業人として勤めてきた自分なので、シンパシーを強く感じた、というのもある。

 箱を開けると主翼と胴体、布張りと鉄板のコントラストがパーツにしっかり刻まれていて早速素晴らしい。どんなフレーム構造だったのだろうか? などとカタチと機能に思いを馳せられる。『風立ちぬ』の九試単戦にF-4戦闘機とファインモールドのディティールの精密さ、カッチリとした組み味を知ったのはまだ最近の話。今回は日本陸軍の複葉機『九五式戦闘機』で同社のイズムをより感じてみたい。

 ファインモールドの説明書には解説がしっかり盛り込まれていて毎度楽しい。ランナーを手にしながら気持ちも高まろうというもの。加藤攻撃戦闘隊のキットという事で加藤建夫中隊長がミニチュアとなっており、精巧な彫刻でカメラを手にした姿が再現されている。なぜカメラを? それについてのほんわかエピソードも解説されており「日本国内において最も有名なエース・パイロット」とまで言われる人物について、その戦歴よりも人柄にフォーカスしているところに好感が持てる内容だった。

 例年酷暑でおなじみになった夏の余暇は、心身ともに余裕がなくてスナップフィットのプラモに触れるばかり。秋になって余裕もできたので接着剤やピンバイスを用いての「切って貼って」の工作を久しぶりに。スナップフィットのキットとは完全に別腹で終始エンジョイできた。機体はランナー2枚だけで構成パーツも思ったよりも少なめ、グングンと形になっていくヒコーキ模型だ。エンジンの再現は省略されているけど、排気系やラジエターを組んでいくとその配置からエンジンが見えてきて面白い。

 初めてつくる複葉機のヒコーキ模型だったので上下翼のとりつけにプレッシャーを感じていたけど、翼間支柱が思っていたより丈夫な感じだったので難なく接着できた。とはいえ「俺にもできたぞー!」と自己肯定感がライジング。キット付属のミニチュアを組んで添えると青空整備な情景ができあがる。ビシッと刻まれたファインモールドなディティールなので無塗装であっても情景力が強い!

 「複葉機カッコ良い! なぜ!? 翼が2枚あるからカッコ良さが2倍に!?」とテンションが上がったので「もし戦争がなくて、エアレースの世界大会があった世界線だったら……」という妄想のもと、日本代表の機体としてタミヤのレーシングホワイトでピカピカの光沢仕上げとした。デカールはキット付属のもので充分レーサー感があって大満足でゴール。俄然、複葉機への興味が深くなった今回。

 専門家と一般市民とが交流して理解を深める「科学コミュニケーション」という言葉があるけど、プラモデルには「工業コミニケーション」がある製品だと最近感じている。世にあふれる工業製品のなかでもプラモデルはメーカーとユーザーの距離が近い。それは講演会「プラモデルメーカーが語るプラモデル開発について」を思い返して、ファイモールド代表は工業コミュニケーターのひとりであると理解したからだ。話を聴いたらプラモデルの事がさらに興味深くなったわけで、手にしたり、読み取ったり、作り手の考え聽いたり……と、プラモデルの面白みの幅と深さには果てがないのだ。

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

大好きな靴と真っ赤な飛行艇をつないだのは、家族経営の工房だった/サボイアS.21F フォルゴーレ号

 2020年代の革靴勢力図を国別に考えてみると、本格革靴のど真ん中でブランド名を上げだしたらキリがないイギリス、Aldenが綺羅星のように輝くアメリカ、素朴さとエレガントさが交差するJ.M.WESTONを抱えるフランスが主要なところだろうか。そこに小回りの利く日本のメーカーがいくつか。RENDO、Arch Kerryなんかは特に良い靴。ほかにもコストパフォーマンスで勝るスペインも見逃せない。

 

 そこですっかり隠れてしまった感もあるのがイタリア。といっても有力ブランドはまだまだ力は健在だ。ただ、昔ほど目立たなくなっているのは事実。それでも私はイタリアの靴が好き。イタリア靴は抑え目な価格ながらも華美になり過ぎないデザインのものが多く、それを形にする丁寧な仕事が素晴らしい。ほどほどの価格のイタリア靴は、あまり重厚なブランドストーリーが語られることはなく、ブランドというよりは工房といった趣で語られ、家族経営のものもいくつかある。

 Bolliniは家族経営の工房で作られる革靴で、私が好きなメーカーの一つだ。技術の引き出しの多さを見せつけるような変形のUチップは、なかでも1番のお気に入り。つま先のUの字のステッチが甲に達する前に途切れるが、呼応するように途切れた部分にだけソールにはギザギザの細工が入れられてる。いやー、細かい。革もイルチアというキラキラした輝きが特長の良いものを使っている。この靴は2010年ころのものなので、一度倒産する前のイルチアの革なので、今となっては貴重なもの。

 「イタリア人が怠け者だというのはとんでもないデマだ。一族だけの家内工業だと猛烈に働くのだ」と、知り合いが貸してくれた宮﨑駿の『飛行艇時代』に書いてあったので、俺の持ってるイタリアの革靴達もまさにそうじゃないか! ととても驚いた。というか俺、今まで『紅の豚』ってちゃんと見たことなくて、それを告白すると「見たことないの!?」と驚かれるから余計に距離を置いていた。だから、譲ってもらったサボイアのプラモデルもピンと来なった。

 ただ、一族だけの家内工業が生み出す逸品が美しく素晴らしいものだと宮﨑駿が知っているんだったら、俺がイタリアの靴を愛するように彼もも飛行機を愛したんじゃないかと思えてきた。だったら、靴をきれいに磨き上げるように、プラモの箱を開けてピカピカのサボイアをを作ろうじゃないか。 

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。低カロリーでエンジンのかっこよさも味わえる/タミヤ フォルクスワーゲン 1300 ビートル 1966年型

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週は車模型界の超人気者「フォルクスワーゲン ビートル」から、タミヤの「フォルクスワーゲン 1300 ビートル 1966年型」をご紹介します。このプラモは、外見の可愛さだけじゃなくて、内側にあるエンジンのかっこよさも楽しめる、1度で2度美味しいプラモです。

▲黒いランナーにはメカなパーツやインテリアのシートなど、内部や足回りのパーツがみっちりと収まっています

 エンジンがあると作るのが大変そう、って思われるかもしれませんが、このプラモは問題なしです。まず、メカっぽいパーツのほとんどが黒い成型色のランナー(プラモのパーツが繋がっている枠のこと)1枚に収まっています。ひとつのパートを組むのに複数のランナーを行ったり来たりすることがないので、パーツも見つけやすくスムーズに組み立てられます。さらに、細かなパーツ分割は無く、誰もに優しい大きめのパーツで構成されているのもグッドなのです。

▲エンジンの組み立て工程。シリンダーブロックなんかも作るのですが、どのパーツも塊感ある摘みやすい形状となっているので、サクサク組んで行けます
▲これが黒ランナーの全体像。組み立てやすいようにパーツをレイアウトするタミヤのセンスが黒光りしております

 そんな感じで15分もあればビートルのエンジンが完成しちゃいます! 色も黒なのでメカな雰囲気を組み立てるだけで味わえますね〜〜。少ないパーツ数で、これだけ満足感ある塊が作れちゃう。楽しいですよ!

 内側のかっこよさはインテリアにもあります。ドアの内側のパーツがまた泣けるんですね〜〜。自然と塗ってみたくなるディテールをしています。

▲ポケット部分のシワ! こういうちょっとしたところに、柔らかディテールが入っているのがにくい! ここだけ質感を変えて塗ってみたくなります

 タミヤの宣材写真ではキットの成型色の白に近いカラーリングも提案。組むだけでもこの雰囲気に近くはなるので、塗れないって人もぜひ組むのを楽しんで! プラモは組むだけでも立派な楽しみとして成立するよ!!!(出典/田宮模型全仕事[増補版]2 カー・モーターサイクルモデルズ)

 内側を作るけど、その内容は低カロリーでペロリと楽しめてしまう、まさに現代版コンビニスイーツのような魅力と、外観のビートルのエレガントさの両方を楽しめるタミヤのビートル。永遠の定番キットとして多くの人に楽しんで欲しいプラモです。今回は3連休ですもんね! ぜひこの週末に思いっきりビートルとプラモドライブしてください。僕もいってきます〜(缶スプレー買ってこよう!)。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

万博における上昇装置/プラモデルで読み解く『太陽の塔』の本質的機能とアートの衝突。

 エッフェル塔は、現象学的体験としての「三百メートルの高さ」を、エレヴェーターによって、というよりむしろ、エレヴェーターとして、現実化したのであり、今日エッフェル塔見物に訪れる人々にとって、この<塔>のもっとも「関与性」の高い構成要素とは、その「高さ」である以上に、「高さ」を体験させてくれるこのエレヴェーターという建築学的装置それ自体なのではないだろうか。もっと言えば、エッフェル塔の本質はエレヴェーターにある、とさえ暴力的に断言してしまいたい気持に駆られないでもないのだ。
(松浦寿輝『エッフェル塔試論』より引用)

 大阪万博のことを知らないなりにさまざまな文献を読み進めていくと、『太陽の塔』は地上、地下、空中の3層にわたるテーマ館を貫く建造物であり、すなわち空中に設けられたパビリオン(現在は解体済み)へ来訪者を運ぶための設備であったことがわかる。塔として建てられ、あとから内部にエスカレーターを設けたのではなく、「人類の進歩と調和」というテーマを見に訪れた人々を垂直に輸送するための装置だったのだ。

 岡本太郎は「人類の進歩と調和」というテーマに真っ向から反対し、不気味な地底空間を人類の昔の記憶で飾り立て、塔の内部に太古から繋がる生命そのものの進化を彫刻し、壁を真っ赤に塗り、上昇する来訪者たちに痛烈なメッセージを投げかけた。精緻に組み上げられた鋼管フレームが左右の腕を支えていて、右腕の内部は大屋根の空中展示に人を運ぶエスカレーターがあり、左腕の内部には緊急時に使われる非常階段があったのだという。

 海洋堂の『太陽の塔』はこの円錐形に組まれた鋼管フレームをこれでもかと再現しており、円錐の底部にあたる端面から内部を覗けば当時の人々が畏怖した未来への階段とそれを取り巻く景色をを想像できる。上昇というのは単に物理的な運動のことだけを指すのではなく、進歩とか調和……つまり、「未来」を見に行くための導線であり、それと絡み合うように人類を含む生命の辿ってきた歴史を配置したことに太陽の塔の凄みがある。

 ちなみに、長い期間をかけて万博終了後に埋め戻された地下空間や塔内部のレストアが行われ、2018年にふたたび公開された太陽の塔は各部の補強と軽量化に伴い、下層部のエスカレーターは階段へと架け替えられ、右腕部のエスカレーターは撤去された。

 このプラスチックモデルでは左腕部の階段を立体化し、右腕の内部は現状と同じエスカレーターがない状態、そして下層部は現状の階段ではなくエスカレーターが「復元」された状態でパーツ化されている。いわばひとつの模型の中に異なる時空が封じ込められていると言い換えてもいいだろう。

 中央に建てられた「生命の樹」と干渉しないようにエスカレーターを互い違いに取り付けていく工程は緊張するが、この塔の本来的な機能を体感する上で欠かせない工程とも言える。アートであり、建造物であり、装置である太陽の塔の様々な顔が、組立工程のなかで行きつ戻りつしながら我々を驚かせる。

  現存する外観からは決してうかがい知ることのできない、「人が上昇するための装置」としての太陽の塔。しかし、内部を組み立て、上昇に必要な設備を取り付けると岡本太郎の訴えはほとんど見えなくなってしまう。なるほど、このエスカレーターを昇りながら眺める驚異的な景色こそが本質であり、模型化されたものを外部から鑑賞するという行為ははあくまで客観的な体験にすぎないことがよく分かる。

 幸い、これはプラスチックモデルだ。前後に分かれた外装はいつでも分割でき、エスカレーターは完成後も取り外せる。悲しいかな我々は1/200スケールの人間ではないが、この塔が持つメッセージをどのように見せるかを選ぶことはできるのである。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

箱絵には描かれていない最高の名優が隠れていることを君は知っていたか!?「タミヤ 1/35 アメリカ陸軍 M21 モーターキャリヤー」

▲荷台のパーツが1パーツでここまで情報モリモリ!! かっけーーー!!!

 今年の夏に再生産がかかり、お久しぶりに店頭に並んだタミヤミリタリーミニチュア(以下MM)のレジェンドプラモ「アメリカ陸軍 M21 モーターキャリヤー」。M3ハーフトラックのシャシーを利用したバリエーションモデルで、モーターとは箱絵にも描かれている「迫撃砲」のことを指しています。モーターキャリヤーは迫撃砲を搭載して、リヤデッキからも砲撃ができる便利な車両なのです。

▲迫撃砲は箱絵のように車外に出してディスプレイもできます

 特徴的なモーターキャリヤー用のリヤデッキは、砲弾ラックや通信機でぎっしりしていてめちゃくちゃカッコ良くなります。迫撃砲をぶっ放そうとしている3人は「アメリカ歩兵 機関銃チームセット」に入っているメンバーがコンバートされています。

▲このキットの味も濃いぞ〜〜。楽しいから作ってね!
▲このアニキたちは情景に「音」を感じさせてくれます。そして、この演技についてくるノリのいいドライバーが、モーターキャリヤーのキットにはちゃんとついているんです

 アメリカン迫撃砲アニキの中でも、耳を塞ぐ兵隊はあまりに演技が秀逸すぎて多くの模型ファンから愛されています。めっちゃうるさいんだろうな! ってこれだけで分かりますもんね。そんなものを車内のリヤデッキからぶっ放すのですから、ドライバーも覚悟が必要です。

▲M3ハーフトラックシリーズのキットにセットされている共通ドライバー。なんとこのキットには彼専用の右腕がもう1本つくのです。それが……
▲耳塞ぎ用の腕!! これで周囲と呼吸の合った演技が完成するのだ!!!
▲「早く終わってくれよ〜〜」とか思ってそうな渋い表情もグッド! この右腕だけで、彼と迫撃砲アニキたちは見事なセッションを見せてくれるのです!! 最高!!

 箱絵ではモーターキャリヤー内にいるために描かれていませんが、こんなにも魅力的なドライバーがこのプラモには入っています。彼が耳を塞いでいるだけで、情景の「音」の要素がより色濃く出ます。たった1本の腕ですが、そのパーツが信じられないくらいドラマを引き立てる……フィギュアプラモのポーズやパーツの楽しさ、大切さをこのドライバーから教わりました。おしまい。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ガンプラのクリアーパーツの裏にはリンプラカラーを塗ろうぜ!煌めくブルー「LINKL PLANETカラー 宮﨑菜々 ステラスカイブルー」

▲スカイブルーって名前の通り、かなり明度の高い青ですな〜〜

 水性ホビーカラーでお手軽に「パール塗装」が楽しめるすごい塗料「LINKL PLANET カラー」(リンクルプラネットカラー、以下リンプラカラー)。BANDAI SPIRITSのプラモデル公式アンバサダーとして、様々なプラモデル啓蒙活動を行っている「LINKL PLANET」とMr.HOBBYのコラボカラーです。アイドルとのコラボカラーというだけでなく、ありそうでなかったパール色を気軽に棚から選択できるという革命的な塗料となっています。

▲ツヤツヤの車のボディ吹いても、ラッカー塗料のようにピシッと食いつくのがすごい! 簡単に弾かれません

 今回ご紹介する「宮﨑菜々 ステラスカイブルー」は、蓋を開けた瞬間に「イザーク・ジュールのスラッシュザクファントム!」って声が出ました(ちょっとガンダムSEEDわかんないっすって人はググってください)。ステラってキャラもいましたね〜〜(遠い目)。いつものように車のボディに塗って色チェックをしたのですが、そのついでに、クリアーパーツにリンプラカラーを塗ってみたくなりしました。特にガンプラのビームエフェクトのようなパーツってソリッドな透明もかっこいいですが、CGのようにぬわ〜〜ってエフェクト効果が入ってるのもいいじゃ無いですか(語彙がゴリラよ)! この塗料の隠蔽力の弱さと、パールの美しい粒子感によってお手軽にエフェクトパーツがカッコ良くなりそうな予感がしたんです。フミテシの種が弾けるか!! ガンダム!!!

▲こちらはデスティニーガンダムのビームシールド。普通の盾も持ってるのに、ビームシールドまで発生させちゃうなんて胸キュンですよね

 クリアーパーツは裏から塗っても表に色が露出します。表からではなく裏から塗ることで、色の擦れや剥がれも予防できます。ステラスカイブルー1:水性ホビーカラーうすめ液1の割合で割った塗料で、塗ってみましょう。

▲全体を塗りつぶさないように、パッケージやアニメの版権イラストを参考にして細吹きしてみます
▲大成功!!! めちゃくちゃ満足度高いぞ!!

 自分がイメージしていた仕上がりがドンピシャでできちゃいました!! リンプラカラーとクリアーパーツとの相性は素晴らしいです! しかもリンプラカラーにはレッドやイエロー、グリーン、オレンジなどもあり、さまざまなガンプラのクリアーパーツと組み合わせて楽しめますね!! 

 ステラスカイブルーの鮮やかさはただただ美しいの一言。パール感も嫌らしく無くぎらついてません。どんな模型もちょっと雰囲気ある佇まいにしてくれる塗料です。青系のクリアーエフェクトパーツのアクセントに、車やバイクの全塗装にと、あなたの模型塗装をめちゃくちゃ楽しくさせてくれる塗料です。ぜひ、今すぐ買ってください。それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

異国の酒と重戦車のプラモデル/ドラゴンのE-100超重戦車

 白酒(バイジョォ)とはコーリャン、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどの穀物を原料とした中国発祥の蒸留酒です。日本ではあまり馴染みがないこのお酒も中国では宴席に欠かせないようで、9年前に出張で訪中した際に初めて飲みました。その時は独特な臭みとアルコールのキツさが感じられ、しばらくその香りがするだけでげんなりしたものです。しかし不思議なもので、何度かの出張を経ていつの間にか苦手ではなくなっていました。独特な香りは異国を象徴するものとなり、またソーダやオレンジジュースで割って楽しむことも覚えました。

 ドラゴンは1980年代末に創業された香港の模型メーカー。現在は膨大なラインナップを誇りますが、活動初期は他社が当時キット化していなかった現用ソ連車両やドイツ試作・計画戦車といったモチーフを積極的に立体化。連結式履帯やエッチングパーツを同梱するなど意欲的な内容である一方、組みにくかったり説明書がわかりにくいと評されていました。

 そういうわけで、当時スケールモデルを始めたばかりの私にはクールなタミヤに対してドラゴンは押しの強いパッケージデザインも相まって、「興味はあるけどなかなか手が出せない……」という対象だったのですが、このドイツ軍試作超重戦車E-100は当時の印象とは裏腹にワンダーに満ち溢れたキットでした。箱を開けてまず目に入るのは一体成型された巨大な砲塔パーツで、金型をどう分割すればこのオーバーハングを一体成型できるのか皆目見当も付きません。

 そして溶接痕や切断痕も荒々しく再現され、その断面から普段の生活では絶対目にしない厚さの鉄板でできた装甲の重量感を感じさせます。一方でパーツが巨大なのでゲートもそれに相応の太さを持つので切断や整形が大変だったり、箱組の車体を慎重に仮組みしながら調整しないとうまく組めない問題もあります。またエッチングパーツで再現されたマズルブレーキを丸めて取り付けるというスパルタンな工程もあります。

 とはいえ、今こうして作ってみるとどれも基本工作の積み重ねで、ゆっくり落ち着いて作業すれば決して難しくはないというのが感想。サイズの割にパーツ数が少ないこともあって、足回りさえ終わればすごい速さでマッシブさと精密さを併せ持つ超重戦車の模型が完成します。ドラゴンのE-100が戦車模型の入門にこそ向いてなかったとしても、大型パーツによるダイナミックな組み味は楽しいし、なによりこの存在感は無二のもの。苦手だった白酒の香りを楽しみながら、「いつもと違う味わいが欲しくなったらチャレンジしてほしいな」とここにオススメしたいのです。

Branz01

静岡県出身・大阪府在住の1985年生まれ。本業はマシーンの研究開発で模型は心の栄養です。

電動工具のパーツに導かれ、シトロエン公式の強烈な「模型製作資料集」にぶち当たった話。

 ラリーカーのプラモデル。説明書を見ていたらフロアに電動工具が転がしてある。ハンブロールの47番、光沢のシーブルーで塗り分けてね、と書いてあるのがいやに具体的だが、マキタならもっと黄色みが強いし、ボッシュなら真緑である。そもそもラリーカーなんだから工具が積載されているのはなんとなくわかるが、こんなに即物的に「電動工具が転がっています!」というのにはなんか強い意志を感じる。

 パーツの形状もいやに生々しく、その横にあるよくわからないカタチのパーツも気になる。このプラモデルを設計した人の印象に強く残っているのだとしたら、’18年のツール・ド・コルスを走ったシトロエンC3に何か所以のあることかもしれないと思ってインターネットの海をさまよう。あれやこれやとググり、そしてよくわからない。よくわからないが、室内の様子がいちばん明確に把握できるのは、なんとシトロエンの公式サイトだった。

(画像はCitroën Originsより)

 シトロエン公式サイトのなかに設けられたスペシャルページ、「シトロエン・オリジンズ」は1919年から今年までに作られたさまざまなシトロエン製品のアーカイブである。360°回転させられる外観の画像と、内部をぐるりと見渡せるインテリアの画像。そして美しく撮影された細部の写真たち……。2017年のところに目当ての「C3 WRC」があるのだが、それ以外も恐ろしい情報量で見る者の時間を溶かし尽くす。

(画像はCitroën Originsより)

 被写界深度がめちゃくちゃ浅くて、非現実的な(しかし緻密に計算され尽くした)ライティングで撮影された画像たちはどこかミニチュアのようだが、細部を観察するとこれが模型やCGではなく、まぎれもない実車であることがわかる。なにより、「そんな細かいところまで俺たちに見せてどうしようって言うんだ!」と言いたくなるほどのディテール写真の山。

(画像はCitroën Originsより)

 室内に電動工具は認められずじまいだったが、C3のあらゆるディテールをまじまじと眺めているうちに「このプラモデルをどう完成させればそれらしくなるのか」という観念は巨木のように育ち、いつのまにやらシトロエンの綺羅星の如しクルマたちのことを好きになっている……。なんという説得力。なんという罪な資料たち。

 ベルキットのシトロエンC3のパッケージの中には、このクルマを作るために必要と思われるものがすべて揃っている。細部まで表現されたデカールも、極薄の金属光沢を放つエッチングパーツも、窓を美しく塗り分けるためのカット済みマスキングシートも。ラリーカーを愛し、それを模型にするために異常な情熱を燃やすベルギーの同士の熱量が、フランス車に対する憧れを呼び覚ましてくれた。プラモも良いが、シトロエンのサイトも最高だ。秋の夜長にじっくりと眺めて、プラモデル製作の魂に火をつけてほしい。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

小さな船体に詰め込まれた“今の艦船模型のスペック”を楽しもうぜ!「ピットロード 1/700 日本海軍 日振型海防艦」

 艦船模型の花形と言えば、もちろん巨砲を備えた勇壮な戦艦であります。また戦艦に並ぶ長さと目を引く飛行甲板を備えた航空母艦も魅力的で、上に艦載機を並べたときの色どりも鮮やかです。……と、魅力的な艦種や艦名を上から数えても、きっとたどり着かない、そんな世界が「海防艦」です。

 そんなあまりにも渋い世界にも、ゲームによって光が当たるようになってきました。こちらの日振(ひぶり)は、艦隊これくしょん”艦これ”で実装され、ゲームらしい絶妙な調整で対潜に活躍し、その名を広く知らしめました。そして、ピットロードによって遂に高精細化した艦船模型が登場となりました。たくさんのパーツで、ギュッとした濃縮された小さな船を楽しめる魅力的なキットとなっています。キットは2隻入りなので、この倍入っています。つまり、箱の中もぎゅうぎゅうです。

 甲板の滑り止め表現はとてもシャープ、水密扉もはっきり立体的。レンズを通すとそのすごさがよりわかります。

 防盾で隠れる艦砲基部もこれでもかと作っています。後ろからチラっと見えるところもここまでこだわってくれる、メーカーの心意気に感謝。

 艦船ごとのちがいや前期・後期の違いを、説明書でしっかりフォロー。日振型全9隻どれも選択して制作できます。

 当然ながらパーツがこまかいので、ピンセットは必須です。でも艦船模型で小さなパーツをピンセットで取りまわすのはいかにも精密な模型を作っている感覚で、楽しい。

 小さな船体にこんなにギューッと装備が詰め込まれて、本当にすごい。駆逐艦は魚雷をたくさん積んで、攻撃的なフォルムですが、こちらは対空砲に対潜用の爆雷と、海防艦の名前の通りの守りのフォルムです。

 小型艦艇の魅力はこの密度ですよ。巡洋艦や戦艦にはサイズ的余裕から来る優雅さもありますが、この近さ、まとまり、海防艦ならではです。

 単三電池がでかい! と思えるぐらいのサイズ。しかし組みやすく、ピンセットを用意すればいけるでしょう。ルーペもあればなおよしですね!! キットは船底をつけなければこのように洋上の姿を楽しめます。

 日振は2隻ぶんのパーツが入っているので、2回作ってたっぷり世界を楽しむもよし、1隻だけ作るつもりならパーツを飛ばしても安心(私だ。)、ギュッと詰まった現代フォーマットの艦船模型を味わう楽しみが待っています。小さくてもボリューム満点ですよ。ぜひ作ってください!!

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

デザインに食らいつき、組やすさとバリューを極めた「Gt版ビッグフット」のプラモデルを褒める!

 「ダグラムのプラモデルといえばタカラ」という時代から数十年を経て、アニメに登場するコンバットアーマーをすべてキット化するメーカーことマックスファクトリーの快挙にダグラムファンが驚かされてはや数年。今度は太田垣康男氏が描き始めたコミック版『Get truth太陽の牙ダグラム』のダグラムをキット化し、単行本へセットしたという再びの驚きをもたらしました。

 その『Get truth太陽の牙ダグラム』のプラモデルとして、今度はライバルであるビッグフットをリリースしてきました。そもそも原作では防寒シールドで覆われ、そのディテールがなかなか見えなかったビッグフットをライバル機として選んだ太田垣康男氏の慧眼もさることながら、それをヒロイックに仕立てたデザインの凄さが光ります。見よ、ランナーの太田垣康男の刻印を(ボディのディテールの濃さも見なさい)。

 ビッグフットは二人乗りの機体であり、今回太田垣康男氏のデザインでは相当現代風に小顔になっています。キャノピーの大きさは小さくなったにも関わらず、サイズの変わらない人間。どうやってこのパイロットを治めるのか。マックスファクトリーの開発にとっては相当にチャレンジしなければならない課題だったはずです。それにしてもこちらのトラビスとアウラのふたり、ダグラムによって傷つけられた復讐を誓うパイロットたちですが、アウラの眼帯や髪の表現がすごいですね……。

 頭部はこうやってみっちりとパーツを詰め込んで解決しています。前方のパイロット、トラビスの脚の左右にルーバーをくっつけて、頭部の表面に露出するディテールや色分けを再現するというすごい解決方法です。白いキャノピー枠とクリアパーツのキャノピーが絶妙なクリアランスで合わさって、色分けも満足。よくまとめきりましたね。

 頭部ではパイロットやキャノピーでお互いに組み合わさる妙技を見ましたが、他の部分ではその組み合わせは「可動とディテールの相互補完でパーツをシンプル化して組み立てやすくする」という方向で働いています。スネの内部パーツは縦方向では可動ギミックの芯として、横方向ではディテールとして赤紫のパーツが使われています。

 また足首では白いアーマー部分を独立可動とすることで、スネアーマーを細くしても干渉しないようにしています。2パーツでパチっとはめるだけのシンプル構造。ダグラムのアニメ版キットでもやってきたことが進化して、こと太田垣康男氏のビッグフットの細いスネでよく動き高い接地性をもたらす。「ダグラムらしさ」を磨いてきたマックスファクトリーの地味にすごいところです。

 本当にパチパチ組んで、あっという間に本体は完成します。元のビッグフットからディテールを足して、ここまで正統派ライバルの風格に仕立てた太田垣康男氏の凄さと、それをシンプルかつ組みやすく仕上げたマックスファクトリーの凄さに感動する部分です。

 さらにすごいのはここからですよ。アニメでは2連マグランチャーを中心にした武装だけだったのが、そこを逆手に取ったのか、味の濃い装備をプラスしてライバルとしてのスペシャル感を増幅させています。とくに左腕の大型ソードはダグラム世界になさそうな武装でありながら、アニメダグラムのエルボーアーマーが地味に武器であったことを拡張したような武装で、知っていると「そう来たか!」と唸るアイテムです。また右肩のミサイルポッドは、ソルティックやダグラムでおなじみの拡張武装ですよね。

 武器を積み増すとこの迫力。あ、左肩は2連カノンか6連装ミサイルポッドかを選べます。カノンじゃなくてもにじみ出る強者の風格。『Get truth』本編での武装変遷にこだわるもよし、ソードを右腕につけてあなただけのビッグフットを追い求めるもよしです。

 バックパックを外せば量産機の姿。紫2色の成型色が本当に素晴らしい。このあたりも絶妙な特別機と量産機のあいだをうまく取り持っています。そしてさらに、めちゃ動きます。接地性も高いし、武装とポージングの相性もいいんです。たのしくって、ついつい動かしてしまう。

 ディテールフルでもパーツ割りはシンプル、おかげで組み立てやすい。しかし小さい頭のなかにギュッと要素をいれて、関節も動きやすいように各部のスペースを使い切って詰め込んでいる。もちろん太田垣康男氏のデザインをしっかり押さえて、武装もフルに搭載して……。マックスファクトリーのダグラムプラモシリーズの知見がフルに活かされたアイテムがこのビッグフットVer.GTです。どこをとっても味濃くリッチなビッグフットのキットはいままでにない触感で、満腹になれること必至ですよ!

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

誰が見てもポルシェだから、自分だけのポルシェが手に入る/タミヤ RSR 934

 ポルシェ911って、すごくアイコニックな車だなと思う。クリクリしたヘッドライトやリアにエンジンがあることで生まれる少し膨らんだボディライン。古い911を見ても、新しい911を見ても、なんとなくポルシェだってわかる。そんなアイコニックな911にはレース仕様もあれば、オープンカーもあるしカスタムカーだってある。自分がもし、911に乗るとしたらどんな911に乗りたいだろうか。

 自分だけのカスタムカーを考える時、プラモデルはその手助けをしてくれる。カーデザイナーのように粘土を削って自分だけのスタイリングを作るのは難しい。でもプラモデルなら、もう形が見えているボディを切ったり貼ったり色を変えてみたりして自分の理想を探していける。そしてそれは金属を削ったり溶接したり、ガレージをビニールシートで養生したりしなくてもできるのだ。

 僕が911に乗るとしたら、ちょっとスパルタンなレース仕様で、リアフェンダーの張り出したボディ。でもボディカラーは地味なグリーンとかがいい。

 「ポルシェ ターボ RSR 934」は930ターボをベースにしたレーシングカー。タミヤからはイエーガーマイスターカラーをイメージさせるオレンジの成形色がカッコいい1/24のプラモデルが出ている。これをダークグリーンに塗って自分の理想のポルシェ911を考えよう。

 黒の成形色の部分はそのまま、それ以外のパーツはシルバーのスプレーを吹いてみる。別にリアルな車が作りたいわけじゃない。なんとなく「自分の理想のポルシェってなんだろうな」と考えるだけだから細かいところは気にしない。反面、ボディカラーはすごく大事なので自分の持っている塗料やお店の棚を眺めながら、どんな色がいいか悩む。手元にあったダグラムカラーのダークグリーンが似合いそうなので塗ってみよう。

 このプラモデルのいいところは、ボディがドーンとそのまま911にしか見えない形で入っているところだ。塗り分けがしやすいように細かなパーツに分かれているプラモデルもありがたいが、こんなふうに「好きな色に塗った瞬間に完成形がパッと見える感じ」というボディもいい。

 完成した僕のポルシェ911を眺めてみると、暗いグリーンが自分らしくていいけれど、どうせポルシェならもうちょっと派手な色でもいいかなとも思う。そう思ったらもうひとつ買ってきてまた好きな色に塗ればいい。箱を開けたら毎回同じものが入っていて、同じ組み味で、何回もチャレンジできる。そこがプラモデルのいいところ。ポルシェならなおさら、その楽しみが際立つのだ。

もとぴ

東京在住。世界を理解するための糸口としてプラモデルを制作中。趣味の記録や思索のためにnoteも書いています。

躍動する小さく多様な生命/「太陽の塔」のプラモデルは海洋堂の動物セットなのか!?


 太陽の塔の内部には高さ約41メートルの「生命の樹」がおっ建てられており、そこにはアメーバからクロマニヨン人に至るまで、292体の生物模型がくっついている。これは大阪万博の「人類の進歩と調和」というスローガンに対して「進歩と調和が人類だけのものだなんて傲慢なこと言ってんじゃねーぞ!」という岡本太郎の主張がカタチになったものであり、つまり我々も海洋堂のプラモデルを組むことで岡本太郎の熱き創作を追体験できるというわけだ。ヤバいプラモだな……(このへんの詳しい解説も説明書に記載があり、めちゃくちゃ面白いので必読である)。

 流石に292体はいないっぽいが、めちゃくちゃな量の動物(指先サイズ)をしこたま接着する指示が説明書には描き込まれている。動物の名前も描いてあるのだが、半分くらいは知らん。キミは誰なんだ……と問いかけながらピンセットで貼る。人間中心主義が崩壊し、生命の大いなる歴史を指先でビシバシと感じることになる。

 プラモデルはランナーと呼ばれるパーツの付いたワク自体が商品であるからして、芸術的なレイアウトはそれだけで作る人の心を打つ。このプラモデルではあえて生命の樹を構成するパーツをランナー1枚に収まるように配置することによってその全体がすべて視界に収まるよう設計されている。開発担当氏曰く、「これから何が起きるのかがなんとなくわかるのが楽しく、それでいて組み始めると『なんだこれは!』と驚くワンダーがあるのがさらに楽しいのだ」ということで、私もまったく同意見である。パッと見で何をさせられるのか分からず、組んでいる間も何をしているのかよくわからないプラモデルは組んでいても作業になりがちだ。

 前言撤回スレスレのビーンボールが初手から飛んでくる。生命の樹が建つ土台にはじつに30パーツほどの原生生物を植え込む必要がある。小さな穴に不気味なウミユリのようなものをブシブシと差し込み、接着剤で留めていく工程はまるで暗い海の底にいるような気分になるが、しかしその先には輝かしい進化の歴史が待っている。息子が寝ている隙に黙ってクリアしよう。

 生命の樹の幹からは枝が伸び、そこには大小様々な生物がしがみついている。ぶら下がっているものもあれば、上に乗っかっているものもあり、2〜3パーツに分割されている生き物があれば、ワンパーツで見事に特徴を捉えて立体化されている生き物もいる。海洋堂は動物園のプラスチックモデルをさかんに発売しているが、このプラモデルは「ひとつの箱に入っている生き物の種類」のギネス記録に登録可能だろう。

 幹に設けられた凹みと枝の付け根は巧みに形状が一致するよう設計されていて、一見不安定な印象でもカッチリと角度が決まる。得体のしれない動物がワサワサと群生する根っこのほうから、徐々に具体性を帯びる梢のほうへ。ゴリラがいて、ネアンデルタール人がいて、いちばん上にはクロマニヨン人がいて、それを眺めるのが我々人類である。こんなにストーリーのあるひとかたまりの立体はそうそうない。このプラモデルすごいな、の前に、岡本太郎がすごすぎる。

 組んだ生命の樹はおよそ20cmほどの長さになり、きわめて繊細。古賀学氏によってデザインされた説明書には超詳細な塗装指示が描き込まれているので完成見本のように仕上げたければ大量の塗料を買ってきて調色して面相筆でシコシコ塗ると望みのものが得られるだろう。それはあくまでも「太陽の塔の実物を模す」という行為であるからして、岡本太郎のことばをここで反芻しよう。でたらめをやってごらん。自分の歌を歌えばいいんだよ。

 べらぼうな夢はあるか。生命の樹をゴールドに塗り、私は私のストーリーを手に入れた。説明書を読めば塔の内部の色や構造にもめちゃくちゃ意味があることがわかるのだが、しかしその造形自体もまたすばらしい。白い内壁の凹凸と金色の生命の樹がコントラストを生み、なんだかとても清潔で高貴な空間がそこにある。GINZA SIXの大きな吹き抜けをエスカレーターで上昇しているときのような……。そう、このプラモデルにはまだ、「鑑賞者が上昇する装置」としての側面が残されている。その話はまた次回。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

メカトロチューブかく語りき/プラモデルの設計哲学を読む!

▲ウィーゴより「後から発売されたお兄ちゃん」鉄腕アトムに対するコバルト兄さんのようでちょっと違う。

 メカトロウィーゴといえば今やハセガワの看板娘ならぬ看板ロボプラモになってしまった感もあるのだけれど、実はこのウィーゴには「お兄さん」がいる。ハセガワ製のプラモデルとして登場したのは後からだけど、原作者である小林アニキが自作のレジン製組み立てキットとしてウィーゴより先に発表していたのがこの「メカトロチューブ」だ。

 プラモデルとしての基本構成は同社のメカトロウィーゴに倣い「スナップフィット仕様のロボットに要接着仕様の搭乗者フィギュアをセット」したもの。ひと箱の中にツートン配色の色違いがまるまる2セット入っている点も同じ。同じフォーマットのデザインの違うロボットの種類が増えて良かったね!めでたしめでたし……ではすまないのがこの「ウィーゴに対するチューブ」の面白いところ。

 並べてみるとわかるのだけれど、メカトロチューブはメカ味が濃いのだ。全身に配された手すりやカウルからの露出が多いむき出しの関節等、チョクに「メカ」を演出するパーツが目立つ。レトロフューチャーな設定と相まって、ウィーゴとは趣を異にする油にまみれた機械の武骨な味わいのロボットに仕上がっている。

 スネの上下端に配されたロールバーの部品。「え、コレ……お好みで接着しても良いオマケ部品じゃなくてデフォルトで組み立てに含まれる部品なの!?」と、指先で摘まむのも難しいほどに細かい部品が当然のように存在する。そしてこの部品は左右で挟み込む構成なのだけど、片方だけでは仮組みも利かない程度の渋みなのでポロッと落ちる。こういうプラモデルを組むのに慣れていないとそこそこ苦労する。しかもスネ上下端ふたつのロールバーを同時に挟み込まなくてはならない。スナップフィットでありながら器用さを試してくるんだな。

 運転席周りはまた精密な部品のオンパレード。レバーにしてもサドルにしても突き出したウィンカーやバックミラーにしても同社のスケールモデルと同じくらいの繊細さで作られている。

 そんなこのキットの「繊細な極小部品のスナップフィット化」に対する処理で面白いのは「脱落の防止」に対する気遣いだったりする。脚の組み立てで触れた左右挟み込みのロールバーはまさにその代表で、組みあがってしまえば動かして遊んでもポロポロ外れるようなことはない。もしこれが左右分割の部品を閉じた後にさして渋みの期待できない小さな勘合で差し込んでいたらこうはならなかっただろう。

 股間のナンバープレートもサドルも背もたれも同じように「不用意に脱落してしまわないように」設計されている。「脱落しないコト」とのトレードオフで少々組み立てが難しくなるのに気づかないなんてことはないハズで、その辺のバランスにはかなり自覚的に設計しているんじゃないかと思う。こういうのを”設計哲学”って言うんだろう。

 じゃあその哲学のもとになんでもかんでも「挟み込みで脱落防止」で片づけているかというと、そんなことはなくて、肩やモモの手すりは「必要十分な勘合がとれる」という判断で素直に差し込む方式。ここは角穴に丸軸を差し込む事で必要最低限の保持力が発揮されるよう調整してあって、差し込む時の力で部品がつぶれてしまうのを防いでいる。手段は違っても繊細な部品をどうスナップフィットに落とし込むかという哲学自体は一貫しているんだよ、ここの処理も。

 そしてフィギュアはあくまでも接着して組み立てるというメカトロウィーゴ由来のフォーマット。結局ここで接着剤を使うのだからロボット側の細かいディティールなんかも接着させてもいいと思うのだけれど「ロボット部分は接着剤不要で組みあがる」のをメカトロシリーズとして固持すべきフォーマットであると考えているのだろう……これも哲学だな。


 接着剤不要!スナップフィット!と言ったら「要はガンプラに寄せたんでしょう?」と言いたくなるくらいにスナップフィットという概念はガンプラが浸透させたものなのだけれど、それを採用したプラモデルがひたすら「ガンプラ的」になるかというとそんなことはない。接着剤不要や成形色で色分けを再現する仕様が被っていてもメーカーによって目指すところが変わってくる。繊細さも、組み味も全部違う。メカトロチューブかく語りき。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

100円ショップのキャンドゥで「プラモ工具のスタメンとスマホを支えるペンケース」と出会った話。

▲スマホがピタッと固定できるペンケース。工具入れ+αなアイディアケースが100円ショップにありました

 ニッパー、デザインナイフ、デザインナイフの替え刃、ドリル、ピンセット、スティックヤスリという「プラモツールのスタメン」がピタッと入って、しかも模型製作のお供になるスマートフォンがピタッと固定できるペンケースが、100円ショップのキャンドゥに売っていました。これ、とっても便利です。和泉化成株式會社による、その名も「スマホが立つペンケース」です。

▲スタメンがぴったり入ります。工具を持って移動する時にも便利

 スマホを活用した動画学習などが当たり前の時代。ペンケースでスマホを固定できるというアイディアは素敵です。容量もペンだけでなく、僕らが愛用する模型工具がぴったりと入ります。

▲僕の製作スペース、まな板のへりに置いてもしっかりと安定します。動画見ながらプラモを作るのにちょうど良いです
▲スタメンを入れてもピタッと閉まります。ちょうど良い容量!

 工具だけでなく、よく使うマーカー塗料などを入れても良いと思います。スマホは横だけじゃなく、縦置きしても安定しますよ。スタメン工具を綺麗に収納できて、製作時にはスマホを見やすい位置で固定できる便利なペンケース。ぜひ100円ショップのペンケース売り場に行って見つけてください。僕はキャン★ドゥで買いました! それでは〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ガゼルの皮を被った怪物/アオシマの大らかなプラモデルで知る「スーパーシルエット」の熱狂

 カーモデルは、「毎日その辺の道路で見かける自動車」というなんとなく知ったようなメカにも異様な幅と奥行があることを教えてくれる。この冗談みたいにカクカクしたシルエットのなかに、よーく見るとフツウのクルマのボディが入っているプラモデルはどうだ。ハコにはガゼールと書いてある。ガゼールとはなにか調べると、ちょっとハイグレードなシルビアと考えていいようだ。まず車種に対する知識がひとつ増えた。

 シャーシは市販車のプレスされたフロアとは違って味も素っ気もない金属板のようで、ところどころにパイプのようなものがチラホラ見える。このプラモデルのモチーフとなった’81年モデルは「量産車用モノコックを大幅に改造したマシン」だったのだが、翌年からは全面的に手作りのパイプフレームになり、もはやフォーミュラカーのような”レース専用シャーシ”に市販車っぽいシルエットのガワを被せたマシンがサーキットをカッ飛ばしていたのだという。これが世にいう「シルエットフォーミュラ/もしくはスーパーシルエット」である(このへんで、本キットが’82年のシルビアにガゼールのデカールを入れた、「なんちゃってガゼール」だということがわかってきた……。もしホンモノの「ガゼール スーパーシルエット」を再現仕様となると各部に大幅な改造が必要になるが、そこはそれ)。

 ホンモノが市販車仕様のシルビアやガゼールをプラモデルのように改造してレーサーに仕立てていたのとは違って、このキットは最初からシルエットフォーミュラとして形作られている。余計なものはすべて取り払われたキャビンの横には、かつてのキッズを熱狂させたモーター走行用の電池ボックスが鎮座している。なるほど、こんな凶暴なカタチのマシンがスイッチオンでギューッと走ったらさぞかし楽しいだろう。大丈夫。プラモデルは走らなくてもだいぶ楽しい。

 接着剤が乾くのが待ちきれなかった40年前のキッズとは違い、現代を生きる我々は凄まじい性能の接着剤を何種も使い分けて剛速でプラモデルを組み立てられる。きっちり塗って最新のプラモデルに見劣りしないように作ることもできるだろうが、このキットのありのままの姿を知りたくて白いパーツは白いまま、黒いパーツは黒いままジャンジャンカタチにしていく。荒々しいスピード感が、プラモデルのキャラクターとマッチする。

 かくて現れるのはガゼールの皮を被った強烈なレーサー。ストレートの伸びでもドリフトのスキール音でもなく、フルブレーキでコーナーに突っ込みながらエキゾーストから盛大にアフターファイアーを吹き出すのに当時の観衆は熱狂したのだという。若者がシルエットフォーミュラに熱狂した’80年代初頭は、同時に”プラモデルの夏”でもあった。当時のガチャガチャした熱狂は、このキットの成り立ちからも匂い立ってくるようだ。

 40年前、レースシーンに花開いた夢がプラモデルとなって、いまも普通に店頭で買える。風洞実験じゃなく、走って確かめ、そのたびに盛り削りして形作られた恐竜のようなエアロパーツが僕らの手中に収まる。シルビアとガゼールの違いを云々するのもいいが、お互いをごっちゃにしても「カッコいいのが正義」というメーカーのおおらかな気持ちをそのまま受け取って、ボディを塗装しスポンサーデカールを貼ろう。カーモデルが教えてくれる、まるで恐竜時代のようなお話が始まる。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

今夜のメインディッシュは「タイヤの輪切り」です。ミニアート ソビエト フィールドキッチン2 KP-42 牽引馬2頭付

 戦車模型の世界で大人気のモチーフが「フィールドキッチン」。戦場での食を支える大事なものです。日本ではタミヤのキットが人気で、多くの人に愛されています。また、先日開催された全日本模型ホビーショーでは、ファインモールドが旧日本軍のフィールドキッチンとも言える「帝国陸軍 野戦炊事セット」の発売を発表しました。

 そんな人気のフィールドキッチン。先日模型店に行ってみると、ウクライナのメーカー・ミニアートからもソビエト軍のフィールドキッチンが発売されているのを発見しました。馬に牽かれたフィールドキチン……これは作るの楽しそうじゃんと即購入。発売中のタミヤの「動物セットII」ともいろいろと相性も良さそうだし、僕が今はまってる草の景色にも合いそう。早速開けてみると……。
▲めっちゃ細かいやん!! 作ってるうちにお料理冷めてしまうわさ〜〜〜

 フィールドキッチンも変わらずのミニアートな姿勢でございました。ミニアートはディテール表現を細かなパーツに分けて表現してくるメーカーの最先鋒。フィールドキッチンもありとあらゆるところがパーツ分けされています。よく切れるニッパーと、ピンセットが必須です。そして何よりインパクト抜群だったのが「タイヤの輪切り」です。

▲パーツの縁を見て!! なんかディテール入ってる!!!

 やりたいことはめっちゃわかる!! タイヤのトレッドパターンを表現したいので、1枚1枚輪切りになっているのです……。おじさんはドーナツ状でいいのよ!! こんなにスライスしなくてもいいのよ! と心ではなく声で叫びました。

 実際にタイヤ・ホイールのパーツを並べると、今夜は君とランデブーだね! って気持ちになり、他のランナーを製作の邪魔にならないように箱に戻しました。

▲外側になるタイヤ(3枚のスライスを接着)、内側になるタイヤ(4枚のスライスを接着)でホイールをサンドイッチしてタイヤが1本完成します

 パーツを並べると、ウルトラマンの八つ裂き光輪(すごい技名ですよね)もびっくりな数の輪が目の前に。こんなにたくさんパーツがあっても、完成するのは台車のメインとなる4本のタイヤと、予備タイヤ1本。

▲タイヤってさまざまな表現でプラモ化されていて面白いっす

 ゴム製のもの、プラでタイヤ部分のみ1体成型されたもの、このように輪切りにされたもの。タイヤって本物は見た目以上にディテールも細かいので、メーカーのさまざまなアイディアが盛り込まれるパーツなんだと再認識。ミニアートのタイヤは作るのは確かに大変だけど、完成するとその塊感にグッときます。フィールドキッチンでもタイヤはとっても目立つ部分だから、ここまで気合を入れたんでしょうね。馬とか、台車の細かさにも驚きましたが、何よりタイヤは伏兵であり、本プラモのメインディッシュとなりました。おしまい。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

大きさと組み心地、好き。見た目、大好き!/ウォーハンマーのツリーマンは「部屋を彩るファンタジー」だ。

 「ほどよい大きさのミニチュアが欲しい!」というのがプラモデルを作る楽しさと同じくらい大事にしたい気持ちっぽいことに、ツリーマンのプラモデルを買って気づきました。ツリーマンは『ブラッドボウル』というファンタジー世界で繰り広げられるフットボールに出場する選手。ブラッドボウルはミニチュアを使ったボードゲームです。

 ゲームのルールはわからないし、遊ぶ予定もない……なんてことはツリーマンを見た瞬間に吹っ飛びました。手に入れたのは秋葉原のウォーハンマーカフェ。家に帰ったらお菓子のような中箱に丁寧にしまわれたランナーが二枚入っていました。

 樹皮がメキメキと音を立てて、動き出しそうな姿。動力源は口の中に仕込まれた怪しげなドクロのカップです。枝の付け根もなんかマンドラゴラっぽく脚が生えているように見える。作ることで「ああ、こいつはそういうキャラなのか……ふむ」と自然とブラッドボウルの世界観に引きずり込まれそうになります。そしてほんとうに楽しいのはこういった幻想的な見た目が気持ちいくらいにカチカチと組み合わさること。樹皮のギザギザ感とプラモデルってこんなに相性がいいのか。

 快適な組み心地の最後。腕の取り付けはまさかの「好きに接着してね」という状態。腕の付け根が球状になっていて、それを身体に取り付けます。そのときの角度を自由に決められるというわけ。さっきまでは唯一の正解を教えてくれていたのに、急に放り出される。

 腕の角度の次第で脅かしているのか身構えているのか表情がつけられるものだなぁ、とタミヤのクラフトボンドで仮組みをして様子を見ています。とりあえず、手近にあった1/35スケールのタミヤの兵士と一緒に撮影。

 いや、なんか仲良さそうでいいですね。こういうコップくらい背の高さのミニチュアでとんでもない見た目をしているものって、部屋にポツンと置いてあると楽しいです。ルールがわからない、遊び方がわからない、原作がわからない、そんなことはお構いに無しに見た目優先で突っ込んで楽しむのもプラモデルの面白さなのです。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。傑作ドイツ戦闘機で花金の夜に突撃しようぜ!「タミヤ 1/48 フォッケウルフFw190 A-8/A-8 R2」

▲このシールが増加装甲なんだって!! まじで??

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週は、第二次世界大戦のドイツの戦闘機で、メッサーシュミットBf109と並んで代表格とされているフォッケウルフ Fw190(以下フォッケ)から、最も生産されたタイプであるA-8のプラモをご紹介します。キットはタミヤの「フォッケウルフFw190 A-8/A-8 R2」となります。

▲さっきのシールをカットして貼ると……ここだけスペシャルになってかっこいいぜ……

 フォッケの中でもA-8は重武装・装甲強化など、プラモが大好きな僕たちにビビッとくる要素が詰め込まれた戦闘機です。先ほどご紹介したシールも、切って貼ることで「1/48スケールにした時の増加装甲の厚み」ってものを組み立て工程で体感させてくれます。

▲突撃ラブハート。パッケージはドイツ本土防空線をイメージしたような絵となっています

 キットは主翼に20mm機関砲を4門装備し、ドイツ本土防空戦に参加したA-8とさらに連合軍の重爆撃機迎撃用として、機首の13mm機関銃を廃し、代わりに外翼機関砲を強力な30mmに換装したA-8 R2を選択して組めます。僕は箱絵にもなっている「A-8 R2」で製作。A-8 R2は別名“突撃戦闘機型”なんとも言われて、そのネーミングだけで僕の中2ハートをガッチリキャッチ。爆撃機を撃墜するため、まさに突撃していくのですが、そのための重武装やコクピット周り&キャノピーに装甲板や防弾ガラスが追加されているのです。超かっこいい。また搭載された30mm機関砲は、米軍の「空の要塞」とも言われた爆撃機B-17を、たった3発の命中弾で撃墜できたとも言われています。マジで震えるぜハートなのです。

▲パーツは一見多く見えますが、選択式のパーツや他のバリエーションのパーツも入っているので、3割は使いません

 ベースのキットは1994年に発売された「Fw190 A-3」。その金型を一部改修しA-8/A-8 R2タイプのキットして販売しています。

▲フォッケの迫力あるシルエットを生み出している「BMW801空冷星形エンジン」や脚庫内部のディテールは素晴らしいですよ〜
▲キットには窓枠のマスキングシートも付属。線に沿って切り出して使うタイプです

 キットは一部穴を開けたりしてパーツを取り付ける箇所があります。穴を開ける箇所にガイドがあって、指定された径のドリルで穴を開けます。こういったパーツを取り付けるために自ら穴を開けるって工作は、初めて体験してできるととても嬉しくなるもの。自分でワンアクション加える工作の楽しさも教えてくれます。

▲ドリルは1.5mmと2mmを使用します。僕は1.5mmがどこかにお散歩に行ってしまい、なぜか微妙な1.6mmが目の前にあったので代用しました。問題はありませんでした
▲1/48スケールだとペラペラだけど、実際には厚さ5mmの鉄板……。シールで増加装甲を表現するのは初めての体験でした

 完成するとこのかっこよさ! ボリュームある機種からぐい〜っと直線的に絞られていくボディの流れがたまりません。組んだままの刺身状態だと、シールで表現された増加装甲板がきらりと光っていてスペシャルな装備の雰囲気を醸し出します。素組みのままでもかっこいいので、マジで組んでほしいです。
 飛行機模型のスターな1機である「ドイツ空軍 フォッケウルフ Fw190」をまだ組んだことがないという人には、ぜひとも組んでほしいプラモです。その迫力をぜひこの週末手に入れてください! ではまた!!

▲カウルの隙間からチラッと見える配管がかっこいいのよ〜〜。こういうプラモならではのチラリズム、好きです
▲重武装で花金の夜に突撃!! 行こうぜ、花金の向こう側へ(それは土曜日)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ベトナムの景色を見せてくれる迫真の演技が込められたプラモデル。「マスターボックス アメリカ ベトナム戦兵士3体 車上射撃シーン+解放戦線兵2体」

 ウクライナにあるプラモデルメーカー、マスターボックス。スケールモデルのフィギュアを得意としているだけでなく、日本向けのコスプレっぽさ満点のメイドさんのプラモなんかも出しているユニークなメーカーです。また1/24のカーモデルに合わせたドライバーなども販売していますね。

 しかし実はマスターボックスは血の匂いのするアイテムが最も得意で、出力高めのシチュエーションのフィギュアが出ているのです。今回紹介するフィギュア、「Charlie on the left!!!」というアイテムです。パッケージでもベトナム戦争当時の米兵がバリバリと車上でバトっている姿が描かれていますね。

 マスターボックスの魅力はなんといってもその表情です。額に力をギュッと入れ、歯を食いしばっているのがよくわかります。

▲こまかい造形の良さもさることながら……
▲おや、この編み笠とAKは……?
▲そう、Charlie(ベトナム兵を指すスラング)と呼ばれた、ベトナムの戦士も入っているんです
▲フィギュアだけでなく武装もポイント。車載のM2機関銃の台までついているんですね
▲ベトナム兵のひとり。銃を持たせないと3塁コーチャーズボックスで指示する人みたいだな
▲しかしもう一人は、このように倒れるポーズなのです。撃たれた、というシーンをガチで切り取りに来る、これがマスターボックスです
▲こちらは車上に配置されるアメリカ兵

 アメリカ兵たちはみんなラフながら車上にいるためのポーズをしています。全身に渡って筋肉の躍動が伝わってきます。肉体がしっかり演出され、体重のかかり方などもわかる、とても良いフィギュアだと思います。

▲かぶるもののオプションが豊富。ブーニーハットをつけると、ちょっと特別な部隊感が出るかもしれませんね
▲マスターボックスのフィギュアと相性良いのがタミヤのケネディジープでございます

 で、マスターボックスのキットには車両がついてきません。ちょうどよいのがタミヤのフォードマットですので、一緒に買っておきましょう。フィギュアに付属しているM2機関銃も簡単に取り付けられて、ディテールアップが可能です。

▲ナイスなキットなんですよね。最近では3D技術を活かしたフィギュアをつけてリパッケージされたバリエーションもあって、愛される車両キットです
▲素晴らしい絵が爆誕!!

 マスターボックス民を乗せるだけでこの迫力っぷり。いま、動き出すような勢いがありますよね。並べるだけで白い背景に道と植物を錯覚するような、迫真の空間が現出するのです。まさにマスターボックスマジック。あまりに画が強いのですが、我々がやっているスケールモデルってこういう面もあるんだ、ということを思い出させます。さまざまなスケールで、素晴らしいフィギュアをリリースしているマスターボックス。スケールモデルの棚で、マスターボックスを一度見てみると、面白い(だけではない)世界が覗けます。ぜひ、お店で手に取って作ってください!

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

このプラモデル、透けてんねん。/海洋堂の限定アイテム、キュスター シャンパンクリアーVer.

 腹を割って話す。腹に一物、などとも言いますが、古来日本において大事なことは腹にある、と考えられていたという事が伝わります。英語でいうとhave a heart-to-heart。心か腹か。違いが面白いですね。

 さて、本音も透けない関係性が多い昨今、せめてプラモは透けさせたい。腹の内を透けさせてほしい。全日本模型ホビーショーにて限定発売され、買えなかった私が腹を立てた、海洋堂さんの「ARTPLA すけてんねん キュスター シャンパンクリアー」が無事オンラインでも販売されたのですぐに注文しました。限定品をこうしてネットでも販売してくれる。助かる。腹立てるより義理立てよとはまさにこのことですね。

ARTPLA すけてんねん キュスター シャンパンクリアーVer.[限定品]

 外箱がかっこいい。なんとなくかすてらでも入っていそうな雰囲気を感じる良い箱です。ひとしきり堪能したら開けてみましょう。目に飛び込んでくる美しいクリア。シャンパンクリアーとは言いえて妙ですね。腹に落ちる。シャンパンという飲み物がそれまでの歴史上において他の葡萄の発泡酒と大きく異なる点は澱(おり)を取り除くことによる透明度の高さでしょう。透明度を売りにしたプラモデルに透明度が売りのシャンパンの名前を刻む。素晴らしい覚悟ですね。

 その覚悟に向き合って組んで行きたい。クリアのプラモを綺麗に組むやり方として一番丁寧なのは、ニッパーでランナーから切り取って、白くなった部分は、600番くらいから2000番くらいまでやすりをかけて最後にコンパウンドで磨いてピカピカって感じでしょうか。うーんどう考えてめんどくさい。150字くらい前の覚悟とかそういうの忘れてもう少し手軽に行きたい。大丈夫。腹案があります。キレイに切れてるでしょ下の写真。

 というわけで取り出しましたるはタミヤさんの精密ノコギリ、いわゆるエッチングソー。これでランナーから切り落としてやれば、負荷がかからず、白く濁ったりもしないって寸法ですよ。ではゴリゴリと。どうですか。コンパウンドで磨くのには敵いませんがぱっと見ではわからないくらい綺麗です。ゲート部分が太いところもあるのでニッパーだと白くなりがち。こっちのやり方は切るときにパーツを傷付けないよう気を付けてやらねばなりませんが、サクサク進んでいきますよ。曲線部分はえぐりやすいから気を付けていきましょう。

 さて、サクサク進めようと思いましたが、このキットの素材はABS。ABS用の接着剤あったかしらと棚を探そうとしたときに飛び込んでくる驚愕の情報。

 なぜかMr.セメントSPで接着が可能だと。なぜか!?……あ、ほんとにくっついた。

 溶解力が強いからABSも溶かすんですかね。というわけで慣れ親しんだ接着剤を手に今度こそサクサクやっていきましょう。ディテールが細かく、それがクリアで見えにくくなっているのでパーツの前後裏表に少し悩んだりもしますが、一個一個じっくり見ていけば大丈夫。組みあがったら海洋堂さんおすすめの光沢のトップコートをたっぷり吹き付けてやって完成。うひょーかっこいい。美しい。シャンパンのような高級感と日焼けしたセロテープのようなノスタルジー。絶妙なカラーですね。クリアを吹くことで透明感がさらに増しています。


 クリアのプラモはちょこちょこあれど、単色のクリアなプラモは実はあんまりない気がします。光の反射のみで細かいディテールと形を味わう。なんというか侘びを感じるプラモデルですね。

 見渡せば 花も紅葉もなかりけり すけてんねんの 秋の夕暮

 不完全なものを美しいと思うことが侘び。クリアの塗料吹いて迷彩みたいにしても面白いかなとか思ってましたが、ここは腹八分目に抑えて、味わい尽くすことに致します。

いち

16の頃に別れたプラモデルと36で再会した82年生まれ。

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