
九試単戦の説明書がメインディッシュといっても過言ではなかったのです。ジブリ映画『風立ちぬ』の特別パッケージとしての本キット、解説がなかなかのボリューム。史実と虚構が入り交じる本作に対して、堀越二郎という航空技術者の熱情と天才性を、その半生にあえてフィクションを加えた宮崎駿の作家性を、それぞれじっくり味わえるプラモデルだったのです。

そう、劇場公開から10年という今となって、二郎の思いを改めて受けとめ、そして彼が夢にまでも見たヒコーキを組み立て、ようやく私のなかの『風立ちぬ』が完成したのです。週末、ジブリパークで買ってきた本キットを開けたらすっかり気持ちが高まり、翌日に空いた時間で工作開始。「二郎が夢想してまで追い求めた翼を!あの翼をオレに見せてくれ〜!!」と、バババババッ!と1時間で組み上げてビューン!です。

ファインモールド1/48『風立ちぬ』九試単座戦闘機のキットでまず目につくのが逆ガルの主翼。それに対して小ぶりすぎる胴体。最初「ホントにこれ1/48スケールなの? 小さすぎでは」とギョッとしたくらい。そう、戦前に世界基準に挑んだこの「零戦以前の試作機」は大変コンパクトな機体だったと知ることに。胴体の外板はモールドがしっかり彫られていてストライプ柄のよう。とってもキュートだ。

パーツの合いが大変良いので、流し込み接着でパチパチ組み上げていけます。胴体は小ぶりな事もあってか、難なく貼り合わせできました。接着面が大きく緊張が走る主翼の貼り合わせもサクッと完遂。結果、このヒコーキ模型を組み立てるのに特殊なツールは必要ありませんでした。ニッパーにデザインナイフ、流し込み接着剤(速乾)。あと、ピンセットがあれば良いな。くらい。それと主ランナーも2枚だけなので工作の疾走感があります。

二郎が夢にまで見たヒコーキが完成。 胴体が小ぶりなので翼の主張を強く感じられる特異なフォルム。歴史上、採用例が少ない「主翼は逆ガル」という結論に、二郎の並々ならぬ熱情を模型ごしに感じ取れます。この試作一号機を皮切りに二郎は世界の記録を塗り替える戦闘機をつくり上げていく事になります。アコがれと向上心、良いモノをつくりたい熱情、成し得た熱狂、高めた機能が持つ美しさ、それらに人々が魅せられるのも内包するのが戦争の恐ろしさである。宮崎駿が作品で延々と示してきた事であり、映画『風立ちぬ』ではより具体的に見せてくれたワケです。
とはいえ結果、このキットが持つ物語性、造形美、組み味にシビれきった私。なんて人間の業が深きヒコーキ模型なんでしょう… ゆえに、オススメです! レッツ業!

余談。2022年11月1日に愛・地球博記念公園内に開設されたジブリパーク。そのメインといえる『ジブリの大倉庫』がスゴかった。模型の世界だった。プラモデル愛好家の皆さん、大空模型だけが模型ではありませんでしたよ。多くは語りません。ぜひ、行きましょう。ジブリパークの予約は手間ですが『ジブリの大倉庫』を予約しての往訪をぜひ。

そしてわたくし、企画展示室で最後、宮崎駿にブン殴られて終わりました。
「とりあえず、やってみる…」