色違いのプラスチックパーツで細かく分割して、モチーフの色を表現するという手法だけでなく、現在では「塗装済みパーツ」を同梱して組んだだけでも見た目が良くなるという手法が多く取り入れられている。そんな塗装済みパーツの究極とも言えるパーツに出会えた。「ピットロード 1/700 日本海軍 航空母艦 千歳」である。
飛行機を搭載する空母の飛行甲板に施された、とってもユニークな形状の迷彩塗装が最初からスーパーなレベルで決まっている。パーツを手にとって、あまりの凄さに震えてしまった。
仕上がりは光沢になっている。だから、この上からスミ入れしても滲んだりすることなく綺麗に拭き取れるだろう。最後の仕上げの部分だけユーザーに託すパーツとなっているのだ。
飛行甲板というのは空母のアイデンティティであり、艦船模型においても木のディテールや白線や赤線のラインなどが目を惹く非常かっこいいパーツだ。しかし、その分塗装のハードルはなかなかに高い。その部分にだけこうやって塗装済みパーツをセットするというアイディアは、大歓迎だ。このキットは他の部分はグレー。飛行甲板のみに塗装が施されているが、この迷彩塗装が最初からこれだけのレベルで完成しているのだ。やる気スイッチが勝手に入ってくる。
戦艦に並ぶ迫力、そして太平洋戦争の海では主役となった航空母艦は、艦船模型でも花形だ。でも他の艦船模型にはない飛行甲板のハードルというものがどうしてもある。
この千歳のように現在の塗装済みパーツの精度の高さをその一点に使用し、他はプラモならではの楽しさを提供する。この考えは航空母艦プラモのひとつのスタンダードになって欲しいとさえ思えるほど感動した。赤城や加賀といった船体がグレーの空母であれば、正直組むだけで最高にかっこいい空母が手に入る。しかもそういった船はすでにキットがあるのだから、資産として活用し新キットとして送り出せるのだ。またプラモの海が活気付くきっかけになるかもしれない。ピットロードの千歳の迷彩パーツのレベルを、キットを手にしてぜひとも堪能して欲しい。
1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)