ハセガワの1/48震電、作ったことがなかったので買ってきました。震電ってめっちゃカッコいいことが自明なのと、よくインターネットに書いてある「表面の彫刻が凸」というのを読んでなんだか避けていたんですよね。凸モールドと呼ばれる表面のスジが出っ張ってるプラモデルはどうしても敬遠されがちです。なぜか。パーツを接着して合わせ目を消すためにヤスリをかけるとスジもいっしょに消えてしまうからです。じゃあヤスリをかけなければよくないですか。
プラモデルの説明書を読んでも、どこにも「合わせ目をヤスリで消しましょう」とは書いてありません。接着して、塗装図を見ながら模型用の塗料を塗るとそれらしくなりますよ、ということだけがハコの中に入っています。それ以外のことは、もっときれいに、他の誰かよりもじょうずに、実物に忠実に……と模型の仕上がりを追い求めるからこそ出てくる欲求です。経験したことのない人が、いきなりやってうまくいくもんじゃありません。まずはプラモデルのあるがまま、そこにあるパーツを貼って、言われたとおりに組み上げるとどうなるか。これがめっぽう楽しいのです。
コクピットだって、簡素なもんです。筆でぴろぴろ塗りましょう。ムラがあっても命までは取られません。エアブラシできれいにひとつひとつのパーツを塗って「プラモデルでは省略されている装備を追加しました」という人の製作記が、インターネットのおかげでいっぱい読める時代です。反面、「プラモデルのあるがまま、そのとおりに作るとまあだいたいこんな感じになりますよ」というのは案外わからないもんです。もしかしたら、上手く作った”作品”を探すより難しいかもしれない。つまり、「あるがまま作る」という行為こそ、あなた固有の体験になる可能性すらあるのです。
初めてハセガワの1/48震電を組んで驚いたのですが、ずいぶんとパーツの精度の高いプラモデルです。大きくて存在感があって、どこもビシッと合うし、なによりパーツ数が少ないのに機体の特徴をよく捉えています。「あるがまま」にこだわれば、時間はかかりませんし、ここが足りないあそこが足りないと思い悩むこともありません。なるほど、このプラモデルはこういう方法で震電という飛行機に迫ったんだな!ということがよくわかる作り方。諦めるのではなく、こだわりとしての「あるがまま流」を僕はオススメしたいのです。
ひとつのプラモデルをとりあげて、それが初心者向けなのかベテラン向けなのかを決められるのは、組む人だけです。シンプルに、プラモデルをまっすぐ正面から受け止めて作れば、まずほとんどのプラモデルは「あるがまま」に組み上がります。もしそれに飽き足らない気持ちを抱くときが来たら、その時に次のステップに進めばいいはずです。まずは、そのまま組みましょう。またどこかで必ず会えるのが、プラモデルのいいところ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。