エアブラシといえばプラモの塗装に導入したいけど躊躇する道具の筆頭。しかし近年ではバッテリーやコンプレッサーの小型化、高性能化が進み、缶スプレーくらいの大きさですべてが一体式にまとめられたタイプの商品がモリモリと増殖し、わりと手を出しやすくなりました。今回はRAYWOODの新型機、DELTA RS-1がかなりユニークな特徴を持っているので紹介します。
USB充電式の一体型エアブラシシステムにおいて、革新的だと言えるのがこのバッテリー交換システムであります。コンプレッサー下部にちょうどバッテリーの収まる空洞があり、ここにスチャッとバッテリーを差し込めば塗装準備完了。この動き、クセになります。
また、電池残量もパーセンテージ表示がついており、動作中もLEDで残量を光ってお知らせ。連続して塗装をしたい場合に予備バッテリーを用意することもできますし、将来的に充電容量が低下しても本体ごと廃棄せずにバッテリーを買い増せば良いという寸法です。
USB-Cケーブルも付属しており、バッテリー単体で充電することができます。試してみたところ、ケーブルで給電しながらの塗装はNGでしたのであしからず。充電時間は60〜90分、最大連続使用時間は30〜40分となっております。バッテリー単体の販売があるのもいいっすね!
ハンドピースはダブルアクションのものが付属。トリガーボタン押すと空気が吐出され、後方に引くと塗料が吐出されます。引きしろに応じて塗料の吐出量が変化し、最後部のアジャスターをぐるぐる回し、引きしろを制限する(ある程度の細吹き状態でストップできる)機構が付いています。このへんは世間の標準的なハンドピースとほぼ同じ作り。
実際にさまざまな条件で吹き付けてみると、ハンドピース単体で1万円前後の中級機と比べるとノズル周りやアジャスタ周りの精度がやや低く感じられました。極細のラインを使った迷彩塗装などに使いたい場合はお手持ちのより高価なハンドピースに換装することもできます。ひと昔前はこうした互換性に欠けるマシンも多かったので、自分の好みでハンドピースが選べるのもいい時代になったものだと思います。
空気の吐出量は一体型のエアブラシシステムとしては多めの7L/min、最大圧力0.12MPaということですが、メタリック塗料も適切に薄めれば動画のようにガッツリ吹き付けることができました。逆にハンドピース側で空気の流量を絞れるエアフローバルブを使って超低圧での吹き付けも試してみましたが、オートカットオフスイッチが作動するギリギリの圧力だと空気の脈動によって安定したラインを吹くのはちょっと難しい、と感じました。
エアブラシのコンプレッサーは大きいほど(=高額であるほど)安定して大きな出力を出すことができますし、これをコントロールするレギュレーターやハンドピースにも当然コストをかければより安定した制御ができます。しかし、「筆塗りではどうしてもできないこと」として挙げられる「広大な面積をツヤありで手早く塗る」とか「美しいボケ足のあるグラデーション塗装をする」というのはエアブラシを手に入れなければできないこと。自分の選んだ色を吹き付けるのは本当に楽しいものです。RAYWOODの新機種は、そこにバッテリーの自由度を追加した新たな挑戦。1万円以下でデビューできるエアブラシの最初の一歩、ぜひとも踏み出してください。プラモ塗装の世界がグンと広がりますよ!
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。