みんなで作る模型サイト nippperはあなたの投稿をお待ちしています!
詳しくはコチラ!

複葉機で工業コミュニケーション/ファインモールドの九五式戦闘機二型

 プラモデルメーカーの代表が「私自身は複葉機が好きなんです」と語るのを目の当たりにして、同社の複葉機プラモを手にしてみたくなった。「ファインモールド」という豪気な社名を背負った代表自ら現場に立ち、金型製作など手掛けて確かな製品を世に放っている事を知ったのならなおさら説得力がスゴい。同じ愛知県で工業人として勤めてきた自分なので、シンパシーを強く感じた、というのもある。

 箱を開けると主翼と胴体、布張りと鉄板のコントラストがパーツにしっかり刻まれていて早速素晴らしい。どんなフレーム構造だったのだろうか? などとカタチと機能に思いを馳せられる。『風立ちぬ』の九試単戦にF-4戦闘機とファインモールドのディティールの精密さ、カッチリとした組み味を知ったのはまだ最近の話。今回は日本陸軍の複葉機『九五式戦闘機』で同社のイズムをより感じてみたい。

 ファインモールドの説明書には解説がしっかり盛り込まれていて毎度楽しい。ランナーを手にしながら気持ちも高まろうというもの。加藤攻撃戦闘隊のキットという事で加藤建夫中隊長がミニチュアとなっており、精巧な彫刻でカメラを手にした姿が再現されている。なぜカメラを? それについてのほんわかエピソードも解説されており「日本国内において最も有名なエース・パイロット」とまで言われる人物について、その戦歴よりも人柄にフォーカスしているところに好感が持てる内容だった。

 例年酷暑でおなじみになった夏の余暇は、心身ともに余裕がなくてスナップフィットのプラモに触れるばかり。秋になって余裕もできたので接着剤やピンバイスを用いての「切って貼って」の工作を久しぶりに。スナップフィットのキットとは完全に別腹で終始エンジョイできた。機体はランナー2枚だけで構成パーツも思ったよりも少なめ、グングンと形になっていくヒコーキ模型だ。エンジンの再現は省略されているけど、排気系やラジエターを組んでいくとその配置からエンジンが見えてきて面白い。

 初めてつくる複葉機のヒコーキ模型だったので上下翼のとりつけにプレッシャーを感じていたけど、翼間支柱が思っていたより丈夫な感じだったので難なく接着できた。とはいえ「俺にもできたぞー!」と自己肯定感がライジング。キット付属のミニチュアを組んで添えると青空整備な情景ができあがる。ビシッと刻まれたファインモールドなディティールなので無塗装であっても情景力が強い!

 「複葉機カッコ良い! なぜ!? 翼が2枚あるからカッコ良さが2倍に!?」とテンションが上がったので「もし戦争がなくて、エアレースの世界大会があった世界線だったら……」という妄想のもと、日本代表の機体としてタミヤのレーシングホワイトでピカピカの光沢仕上げとした。デカールはキット付属のもので充分レーサー感があって大満足でゴール。俄然、複葉機への興味が深くなった今回。

 専門家と一般市民とが交流して理解を深める「科学コミュニケーション」という言葉があるけど、プラモデルには「工業コミニケーション」がある製品だと最近感じている。世にあふれる工業製品のなかでもプラモデルはメーカーとユーザーの距離が近い。それは講演会「プラモデルメーカーが語るプラモデル開発について」を思い返して、ファイモールド代表は工業コミュニケーターのひとりであると理解したからだ。話を聴いたらプラモデルの事がさらに興味深くなったわけで、手にしたり、読み取ったり、作り手の考え聽いたり……と、プラモデルの面白みの幅と深さには果てがないのだ。

ダテツヨシのプロフィール

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

関連記事