最新記事やプラモデル情報を毎日お届け!
follow on Xをフォロー!

動かない心臓に宿る、消えない炎/蘇るクラッシュギア、ガルダイーグルの話。

 『激闘!クラッシュギアTURBO』という作品があった。当時熱狂していたという方がいればぜひ熱い握手か、それが嫌なら熱い抱擁をしたいと思う。2001年にスタートしたアニメ作品で、当時小学生だった私は毎週日曜の朝がとにかく楽しみだった。そして、作中に出てくる数々のマシンを模した対戦型玩具「クラッシュギア」が発売され、小学生のお小遣いにはハードルの高い1台1000円のマシンを買うため必死に貯金をしていたのだ。写真のクラッシュギアはアニメ初期の主人公機「ガルダイーグル」で、私の一番好きな機体である。アニメ放映当時に地元の量販店で購入したもので、実家の押し入れで大切に保管してあった。

 時は経ち2021年。すっかり大人になった自分に、信じられないニュースが飛び込んできた。アニメ放映20周年を迎え、あのクラッシュギアがバンダイのSMPから完全新規造形で発売決定。あまりの驚きから、会社の休憩室で声が出てしまったのを覚えている。そう、「玩具」として発売された当時のクラッシュギアは安全上の都合で、アニメ作中で激しいバトルを繰り広げるCG描写のマシンデザインから大幅なデフォルメが施されている。小学生だった当時の自分も玩具を手にし、「アニメとあんまり似てないなぁ」なんて思った記憶がある。当商品の企画担当者も当時から同じ想いを抱いていたようで、理想のフォルムを持ったマシンを「モーターで走行しないディスプレイモデル」として令和の時代に甦らせてくれたのだ。

 玩具という制約の中で、当時多くの少年たちに夢を見せてきたガルダイーグルのビークソード。前輪軸のカムシャフトと組み合わさり高速でピストン運動をするのだが、玩具版のそれは刀身の短さからなんともコミカルな動きと見た目だった。あれから20と数年、ディスプレイモデル版としてシャープになり、大人になった僕たちは再び手に取る。
 そして特筆すべきは、ランナーに刻まれたこれらのパーツ。この存在を知った時、様々な感情が溢れ出てきて胸が締め付けられたのだ。

 完成するのはなんと、1/1スケールの130モーターの模型。もちろん電池を繋いでもピニオンギアは回転しないし、なんならこのモーターの模型を車体に組み込まなくてもリメイクされたクラッシュギアはしっかりとカタチになるのである。これだけ聞くと不要に見えてくるパーツだが、クラッシュギアを愛する全てのファンに向けた、企画担当者からのあまりにも粋なサプライズであり、このキットの「心臓」なのである。

 もう玩具という存在ではなくなり、モーターからの動力で走行する必要がないクラッシュギアの模型。しかし、当時を経験した私たちにとって、クラッシュギアにモーターを載せるのは「儀式」なのだ。これから共に戦っていく愛機を自らの手で組み立て、モーターやギアを慎重に組み込み、ちゃんと動くのかドキドキしながら電池2本をセットしてスイッチを入れる……。「当時のあの気持ちを思い出して欲しい」というメッセージを、動かない歯車たちから感じ取ったのだ。

 勝手な推測でしかないのだが、当商品の企画担当者と私は限りなく近い年齢のハズ。あれから20年近く経ち大人になった今でも、少年だった頃の熱い想いが忘れられず声を発し、先述のような胸に刺さる演出を仕込み、きっと自分と同じ想いを持った大人たちが待っていると信じてどれだけ売れるか不安な製品を世に送り出したのであろう。
 劇中のシャープなフォルムを再現してくれた点に評価が集まりがちだが、それ以上に「動かない心臓」から発せられるメッセージが刺さり、当時の気持ちを取り戻すことができた。名前も知らないし会ったこともないが、同世代がこんなに頑張っている。人の気持ちを動かしている。自分ももっと頑張らなくちゃ。

たまごんのプロフィール

たまごん

ごく稀に真面目にプラモデルを作るらしいが、基本的には酒の力を借りながら夜な夜なミキシングでモンスターを生み出す等の活動に力を入れている。

関連記事