

いわゆる「江戸三鮨」と呼ばれた寿司がございます。「毛抜き鮨」「与兵衛寿司」「松が鮨」の三つですね。「押し鮨」や「なれ鮨」らと異なる、江戸ならではの「江戸前寿司」の中でも当時名店とされた三店舗のことをこう呼んだわけです。


「毛抜き寿司」は現在でも神田・小川町に店舗が現存していて食べられますが、見ての通り見慣れた「握り寿司」ではございません。我々がいちばん見慣れた「握り寿司」の元祖と呼ばれているのが華屋与兵衛が現在の両国に開業した「華屋」。

実際のとこは与兵衛の前にも握り寿司は売られていた、と自伝でも語られているようで本当に元祖の元祖、オリジナルの発明者というわけではないようです。
が、当時の狂歌に詠まれたりするほど大繁盛した握り寿司屋は与兵衛寿司が最初。ワサビを寿司に用いたのも最初……という話ですから、なんにせよ握り寿司の大成者にして完成者、普及に大きく貢献した人物というのは揺るぎないところでしょう。

両国には与兵衛鮨発祥の地を現代に伝える看板があります。なぜか区が立てたものと区の教育委員会が立てたもののふたつある。なんらかのスシ政治を感じさせる。そしてなんと、そんな華屋与兵衛の店舗が、プラモデルになっているのです!それがこれだ!!

えっ!? これ!? ウッソだろ!! ……でも箱の横には……。

こう書いてあるし。しかしなんかふわふわした文章だなあ!「ある工夫好きの男」のふわふわ感すごくないですか? 工夫好きて。そんなプロフィールあるかよ。
最初に与兵衛が紹介された後に盛大に寿司の前日譚が始まって最後に与兵衛に帰ってくる、妙に遠回しなストーリーだ。ぜんぜん握り寿司と与兵衛のはなししてねーじゃん。……っていうか冷静に読むとかなり巧妙なテキストで「握り寿司の元祖は与兵衛で彼が考えた寿司はこういうものです」とは書いてるけど、このプラモが与兵衛寿司とはまったく断言してないな。なんなんですか?


パッケージサイドには似たような佇まいの豊富なラインナップ!でも興味がない人から見たらガンダムも戦車も見分けがつかないのと同じで、見る人が見ればこれらも「なるほど」と思うような作り分けがされているのかもしれないな。……世界を見る目を広げる源はあなたの知識と経験です。

完成見本の寿司はけっこういい感じに見えるが果たして……。江戸時代の寿司だからかデカいですね。

さらに「手作り樹木入り」と来た。手作り!? 誰の!? プラモデルの箱に手作りって書いてあるの初めて見たかもしれない。……っていうか考えてみれば「手作り」って言葉なんなんだろう。不思議だ。例えばプラモデルは工業生産品ですが、それを我々が完成させた場合、それは「手作り」と呼べるのだろうか?
そういえば飯屋でよく「特製ナントカ」ってメニューあるよな?あの「特製」って別に「腕によりをかけて作った」って意味じゃなくて「買ってきたもの出してるんじゃなくて店で作ってるんだよ」程度の意味らしいですよ。そうなんだ。

そんなわけで、箱を眺めるだけで充分楽しめたので中身については次回書きます。プラモも寿司と同じで調理する前の目利きが大事ですからね。ではこんなところでお愛想お願いします。
>寿司で戦うマンガ『スシシスターハンター』ジャンプ+で掲載中! 全20話! 江戸前寿司ができた本当の歴史もわかる!
完結後に描いた外伝マンガも同人誌で出てるので読んでね。