接着剤の革新とプラモの全方位的進歩!ファインモールド最新作、F-2Aに見る驚異的精度の話。

 英語で「素晴らしい金型」を社名に冠した愛知県豊橋市の老舗、ファインモールドが新たな快作を放ちました。航空自衛隊で活躍する日米共同開発の戦闘機、F-2Aの1/72スケールモデルです。すでに上の写真から「これはタダゴトじゃありませんね」という空気感が溢れ出ていますが、実際にパーツを見ながら組んでいきましょう。

 どれくらい彫刻が繊細かをいちばんハッキリと示しているのが、説明書のこの表記でしょう。モデラーの多くが「とりあえず生!」くらいの勢いで吹き付ける下地塗料、サーフェイサーの使用を控えるよう指示されています。各部に入れられたパネルライン(スジ彫り)やリベットが、下地塗料の厚みで埋まってしまうくらい繊細に入れられていますよ!という自信の現れです。

 実際クローズアップしてみると、たいへんな精度で各部のディテールが彫刻されていることがわかります。とは言え、これまでのファインモールド製品でも同様の精緻さは保証されていたようなものですから、今回初めて同社の製品を見たという人でない限りは「ふーん。で、ちゃんと組めるの?」と思うかもしれません。

▲こうしたメカニカルな部分はもちろん……
▲機体の外板も恐ろしくスムーズにピシパシとアウトラインが繋がってくれます!

 プラモデルの世界でCAD/CAMと呼ばれるコンピューター支援設計・製造が可能になった現在でも、実際の金型加工や射出成形における「設計通りのカタチを製品にして送り届ける」というプロセスは膨大な知識と経験の上に成り立っています。言ってみれば職人芸的な世界であり、PCの画面のなかでビシッと組める設計であっても、実際のプラスチックパーツがそのまま自動的にゴロンと生産されるわけではありません。

 しかし、このキットはかなりの部分で「タミヤ以外にここまでビタッと合うパーツはあんまり見たことがないぞ」というレベルでパーツが思い描いた通りの形状になっており、ひとたび合わせ目に接着剤を流せばどこが接合線だったのかがわからなくなるところすらあります。

 さらに合わせ目は完成後にほとんど気にならない部分に追い込まれているか、実際に存在する機体のパネルラインに沿っているのでスイスイと組み立てが進みます。いわゆる昔ながらのプラモデル用接着剤(トロトロタイプ)で貼ると、おそらくはみ出したり溶かしすぎたりといったミクロレベルの誤差によって、このキレイな合わせ目の設計も台無しになってしまうことでしょう。

 現在では樹脂を含まない(プラスチックを溶かす成分だけで構成されているためサラサラとした)速乾タイプの流し込み接着剤が各社から発売されています。パーツを合わせてからほんの少量を先の尖った刷毛でチョンと流し込み、数秒待つだけでしっかりと接着され、待ち時間がほとんど不要なのがその最大のメリットですが、同時にパーツを不必要に溶かしすぎたり、接着剤に含まれた樹脂が合わせ目の外にはみ出したりすることがないというのも大きなポイント。

 穴にスパッと嵌め込むようなパーツも、位置決めが万全であれば裏面からちょいと接着剤を流せば表面にまったく影響を与えずスムーズに貼ることができます。これを可能にするのはパーツ同士の圧倒的な精度と、さらに接着剤がしっかりと流れ込むだけの「ノリシロ」がちゃんと設定されていることにあります。

 ノリシロは接着の容易さだけでなく、大きなハメ合わせによって全体の強度や取付角度の正確さ、触っていてがっちり感のある組み立て工程にも寄与します。垂直尾翼に設けられたノリシロはドーサルスパインを貫通して胴体背面に到達し、「しっかりと垂直に取り付ける」という案外難しい工作を用意にしてくれています。

 ただ繊細で、ただ組みやすいだけではありません。胴体背面のパーツに走るハイライトを観察すると、前後方向に真っ直ぐ走っていません。これは断面形が微妙かつ複雑に変化していることを意味していますが、ファインモールド社長いわく「ここは単にCADをいじっていてもなかなか実機に似せられないポイントだった」とのこと。

 この曲面は実機の陰影を観察しながら3Dプリンタの出力品にパテを盛って削り、納得できる形状が出たところでそのアウトラインを再度実測しながらCADに落とし込むという「コンピューター設計と手作業のハイブリッド」によって実現したといいます。図面を引いて木型を彫り、それを金型に落とし込んでいた時代からフルデジタルの設計に移行しつつあるプラモの世界ですが、そのどちらも経験しているファインモールドならではのエピソードと言えましょう。

 もちろん精度や正確さだけでなく、組みやすさもなかなかのもの。胴体下面のエアインテークから尾部のノズルまでは(エンジン本体こそ再現されていませんが)筒状のパーツが一体となってお出まし。これが胴体上下パーツを支える桁となるというトレンドを抑えた設計です。

 六角の凹みに丸穴が開けられた板はノーズコーンの内側に収まるパーツ。ここにキット同梱のボルトとナットを締め込むことで、完成した後に尻もちをつかないようにするオモリになるという寸法です。飛行機模型を作っていて突如「オモリを○グラム用意してください」という指示に出会うことはしばしばありますが、こうしてしかるべきところにしかるべき重さのものを用意してくれるのは本当に素晴らしいおもてなしです。

 あらかた飛行機のカタチになるまで1時間程度。もちろん細部を塗装しながら進めればそれなりに時間がかかるわけですが、これだけピタピタと組めるとなれば、F-2Aという戦闘機の形状をじっくり味わうだけでもかなり満足感の高い遊びです。

 ハセガワ製の大ベテランキットがありながら、あえてファインモールドが全く同じスケール、モチーフで挑んだF-2A。当然ながらそこには「俺達なりの表現がある!」というプライドが滲み出しています。プラモは同じ対象を製品化したとしても、違うメーカーが作れば必ずどこかが違うもの。そこに潜むメッセージを読み取りながら、味の違いやメーカーごとの特色を感じ取ることで、あなたの味覚も確実に育っていくはずです。ひさびさの日本機における競作、ぜひとも作って唸ってください。前作よりも確実に凄味が増していますよ!

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。