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異国の酒と重戦車のプラモデル/ドラゴンのE-100超重戦車

 白酒(バイジョォ)とはコーリャン、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどの穀物を原料とした中国発祥の蒸留酒です。日本ではあまり馴染みがないこのお酒も中国では宴席に欠かせないようで、9年前に出張で訪中した際に初めて飲みました。その時は独特な臭みとアルコールのキツさが感じられ、しばらくその香りがするだけでげんなりしたものです。しかし不思議なもので、何度かの出張を経ていつの間にか苦手ではなくなっていました。独特な香りは異国を象徴するものとなり、またソーダやオレンジジュースで割って楽しむことも覚えました。

 ドラゴンは1980年代末に創業された香港の模型メーカー。現在は膨大なラインナップを誇りますが、活動初期は他社が当時キット化していなかった現用ソ連車両やドイツ試作・計画戦車といったモチーフを積極的に立体化。連結式履帯やエッチングパーツを同梱するなど意欲的な内容である一方、組みにくかったり説明書がわかりにくいと評されていました。

 そういうわけで、当時スケールモデルを始めたばかりの私にはクールなタミヤに対してドラゴンは押しの強いパッケージデザインも相まって、「興味はあるけどなかなか手が出せない……」という対象だったのですが、このドイツ軍試作超重戦車E-100は当時の印象とは裏腹にワンダーに満ち溢れたキットでした。箱を開けてまず目に入るのは一体成型された巨大な砲塔パーツで、金型をどう分割すればこのオーバーハングを一体成型できるのか皆目見当も付きません。

 そして溶接痕や切断痕も荒々しく再現され、その断面から普段の生活では絶対目にしない厚さの鉄板でできた装甲の重量感を感じさせます。一方でパーツが巨大なのでゲートもそれに相応の太さを持つので切断や整形が大変だったり、箱組の車体を慎重に仮組みしながら調整しないとうまく組めない問題もあります。またエッチングパーツで再現されたマズルブレーキを丸めて取り付けるというスパルタンな工程もあります。

 とはいえ、今こうして作ってみるとどれも基本工作の積み重ねで、ゆっくり落ち着いて作業すれば決して難しくはないというのが感想。サイズの割にパーツ数が少ないこともあって、足回りさえ終わればすごい速さでマッシブさと精密さを併せ持つ超重戦車の模型が完成します。ドラゴンのE-100が戦車模型の入門にこそ向いてなかったとしても、大型パーツによるダイナミックな組み味は楽しいし、なによりこの存在感は無二のもの。苦手だった白酒の香りを楽しみながら、「いつもと違う味わいが欲しくなったらチャレンジしてほしいな」とここにオススメしたいのです。

Branz01

静岡県出身・大阪府在住の1985年生まれ。本業はマシーンの研究開発で模型は心の栄養です。

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