このかまぼこ型のパーツがご本尊。鉄道模型メーカーのグリーンマックスが1987年の製品カタログに試作品を掲載し、そのまま発売されることがなかった幻のプラモデルが35年の時を経て我々の前に現れたのです。もともとは同社の「バス営業所」というキットのバリエーションとして企画されていたみたいですが、当時でも「そもそも鉄道模型に飛行機の格納庫というマリアージュはややピーキーじゃないっすか?」という空気感があった様子。
しかし時は流れ、Nゲージと同じくらいの縮尺で楽しめる1/144の飛行機模型本当もいまではかなり充実しています。そこで「よし、当時は発売まで至らなかったけど今ならイケる!」と企画され直したのがこの「格納庫(倉庫)」でございます。
鉄道模型では線路の幅が9mmの「Nゲージ」という規格。スケールはだいたい1/150〜1/160です。超厳密なことを言わなければ、1/144スケールの飛行機模型と合わせて遊べる縮尺。もちろん鉄道と無関係に「飛行機模型と合わせて遊ぶ建物」としても、コイツは最高にごきげんな予感がします。
グリーンマックスの建物プラモって、「ああ、見たことある。こんな感じだよね!」というくすぐりを入れるのが本当に上手い。たとえば建物裏に走る配管。留め具の彫刻とか2本が曲がりくねって途中で分かれるところ、建物の中に入り込んでいくところなんかは少々オーバースケールなんだけど「らしさ」を演出するうえで最高に効果的なんですよね。裏口の蝶番や把手、上下に入れられたリベットもまたすばらしい。
格納庫のトビラは一体になっているので、「全開状態にしたければ切り取ってくれ」と説明書に書いてあります。カッターやのこぎりだとなんだか危ない気がしたので、いにしえのミニ四駆肉抜きテクで覚えたピンバイスで穴を開けまくってからニッパーで切り抜いていくという方法で攻めていきます。格納庫から飛行機が出てくるシーンを思い描きながら、『トップガン マーヴェリック』におけるハンス・ジマーの劇伴を爆音で流しつつ作業すると盛り上がります。
ガコガコの切断面にヤスリ(粗目のものを使うとめっちゃ速いぞ)をかけてシャープに。キレイにドアが全開になりました。こういうの嬉しいよね。「改造」までいかんけど、俺の工作でモノのカタチが変わる瞬間!
流し込み接着剤で全体をバリバリ組んでいきます。開いたトビラは建物の外にまではみ出した戸袋に収納されるんだな。すごくシンプルなことだけど、説得力があるし「そういえばいままで格納庫の構造をちゃんと考えたことなかったなオレ……」みたいなことに気付かされます。
最後に小さいパーツを建物にちまちま追加していきます。天井の通風孔とか壁に付いてる排気ダクトとか。さっき配管の話も書いたけど、こういう「見たことあるディテール」をユーザーの好きなところに貼らせることでオリジナリティとリアリティの満足度を存分に味わえるのがグリーンマックスらしさだと感じます。最高に好きですね。
プラッツの「ウイングキットコレクション」からスピットファイア氏を動員して格納庫の前にポンと置きます。単体ではちょっと小さくて寂しかった1/144の飛行機模型も、こうして建物と一緒に飾るといまにも動き出しそうな雰囲気。もちろん屋根や壁を塗装すればもっともっと実感のある仕上がりになるね。マジ楽しいので、みなさんも写真撮影のお供に格納庫、ひとつ手元に置いておきましょう。そんじゃまた!
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。