

腹を割って話す。腹に一物、などとも言いますが、古来日本において大事なことは腹にある、と考えられていたという事が伝わります。英語でいうとhave a heart-to-heart。心か腹か。違いが面白いですね。
さて、本音も透けない関係性が多い昨今、せめてプラモは透けさせたい。腹の内を透けさせてほしい。全日本模型ホビーショーにて限定発売され、買えなかった私が腹を立てた、海洋堂さんの「ARTPLA すけてんねん キュスター シャンパンクリアー」が無事オンラインでも販売されたのですぐに注文しました。限定品をこうしてネットでも販売してくれる。助かる。腹立てるより義理立てよとはまさにこのことですね。
>ARTPLA すけてんねん キュスター シャンパンクリアーVer.[限定品]

外箱がかっこいい。なんとなくかすてらでも入っていそうな雰囲気を感じる良い箱です。ひとしきり堪能したら開けてみましょう。目に飛び込んでくる美しいクリア。シャンパンクリアーとは言いえて妙ですね。腹に落ちる。シャンパンという飲み物がそれまでの歴史上において他の葡萄の発泡酒と大きく異なる点は澱(おり)を取り除くことによる透明度の高さでしょう。透明度を売りにしたプラモデルに透明度が売りのシャンパンの名前を刻む。素晴らしい覚悟ですね。
その覚悟に向き合って組んで行きたい。クリアのプラモを綺麗に組むやり方として一番丁寧なのは、ニッパーでランナーから切り取って、白くなった部分は、600番くらいから2000番くらいまでやすりをかけて最後にコンパウンドで磨いてピカピカって感じでしょうか。うーんどう考えてめんどくさい。150字くらい前の覚悟とかそういうの忘れてもう少し手軽に行きたい。大丈夫。腹案があります。キレイに切れてるでしょ下の写真。

というわけで取り出しましたるはタミヤさんの精密ノコギリ、いわゆるエッチングソー。これでランナーから切り落としてやれば、負荷がかからず、白く濁ったりもしないって寸法ですよ。ではゴリゴリと。どうですか。コンパウンドで磨くのには敵いませんがぱっと見ではわからないくらい綺麗です。ゲート部分が太いところもあるのでニッパーだと白くなりがち。こっちのやり方は切るときにパーツを傷付けないよう気を付けてやらねばなりませんが、サクサク進んでいきますよ。曲線部分はえぐりやすいから気を付けていきましょう。

さて、サクサク進めようと思いましたが、このキットの素材はABS。ABS用の接着剤あったかしらと棚を探そうとしたときに飛び込んでくる驚愕の情報。

なぜかMr.セメントSPで接着が可能だと。なぜか!?……あ、ほんとにくっついた。
溶解力が強いからABSも溶かすんですかね。というわけで慣れ親しんだ接着剤を手に今度こそサクサクやっていきましょう。ディテールが細かく、それがクリアで見えにくくなっているのでパーツの前後裏表に少し悩んだりもしますが、一個一個じっくり見ていけば大丈夫。組みあがったら海洋堂さんおすすめの光沢のトップコートをたっぷり吹き付けてやって完成。うひょーかっこいい。美しい。シャンパンのような高級感と日焼けしたセロテープのようなノスタルジー。絶妙なカラーですね。クリアを吹くことで透明感がさらに増しています。

クリアのプラモはちょこちょこあれど、単色のクリアなプラモは実はあんまりない気がします。光の反射のみで細かいディテールと形を味わう。なんというか侘びを感じるプラモデルですね。
見渡せば 花も紅葉もなかりけり すけてんねんの 秋の夕暮
不完全なものを美しいと思うことが侘び。クリアの塗料吹いて迷彩みたいにしても面白いかなとか思ってましたが、ここは腹八分目に抑えて、味わい尽くすことに致します。