エアブラシ塗装実例多数収録!「ひとまずやってみる!」を後押しするパワーが込められた「エアブラシの教科書」。

 とにかくエアブラシを吹いてみたい、何ができるかを見たい、そしてエアブラシで使って実際に塗ってみた後にもう一度読むと、「あぁポイントはここか」、ということが書いてある。そんな一冊が、今回ご紹介する「エアブラシの教科書」です。

 こちらは去る2024年4月23日、ホビージャパンから発売となりました。私けんたろうもこのなかで色々製作や文章で関わっていますので、本の中身の紹介とつくるときに考えていたことなど、本書をご紹介しつつ書いていきます。

 エアブラシは塗装用具として筆に並ぶツールであり、初期投資費用こそ据え置きゲーム機ぐらいかかりますが、永らく使えて便利なツールです。コンプレッサーは本当に長持ち。

 私が使っているのはワーサー15Aです。もう10年は使っていますね。静かで空気圧も強力、頼もしい相棒です。

 今回のエアブラシの教科書は、フラットに塗ることやグラデーションなどエアブラシならではの定番テクニックだけで無く、とにかく多数の技法が詰まっています。ラップ塗装とか、アルコール落としとか、そのほかにも「これもエアブラシでできるの?」なんて裏技まで収録されています。

 エアブラシは理論も大事なのですが、最も大事なのが「ひとまずやってみること」。これは模型にとってとっても大事です。本書はそのステップを後押しするように、理論より実践が多め、という内容なんですね。すぐに実践に入ります。その実践例がたくさん掲載されていて、How toとカタログ合わせて162ページものボリュームになっています。

 もしかしたら、エアブラシを一度買ってみたものの、うまく使いこなせないでしまっているという人がいるかもしれません。そんな人にもまたエアブラシを触って欲しい、ちょっと面白いテクニックを見て再度興味を持ってくれたら……など、何か小さなことがきっかけでエアブラシをもう一度使ってみて欲しいと言う思いも込めています。

 いま市販の模型用エアブラシシステムは、どれも性能がよいものがそろっています。私は仕事の都合でさまざまな組み合わせで使うミッションをしてきたのですが、現在はコンパクトで静音重視の空気圧が小さなコンプレッサーでも広めの面積が塗れたりします。そんな今のエアブラシ関連アイテムが巻末に多数収録されています。

 こういったカタログで、今のエアブラシアイテムを俯瞰してみると、「今は本当にどれもいいものだな」と隔世の感があります。GSIクレオスより発売されているカロンのちょうどよさは、実際に使ってみて本当に楽しいアイテムでした。

 これから導入を考える方には、カタログのスペックも大事ですが、コンセントの位置や数、自宅でのスペース展開について考えてみてください。ライトや排気ファンのコードの取りまわしや、タップの数は結構必要だったりします。

 たくさんの工具のなかで、私けんたろうが一番好きな工具はエアブラシです。はじめてエアブラシを使ったときの、すごい速さで好きな色にプラモデルが変化したとき、入念なグラデーションで重みを魅せる塗装ができたとき、完成品ができたときの感動は忘れません。少しずつ実践で積み上げて、現在のいい完成品が作れるようになったと思っています……。

 自分の経験や一緒に本書を作ったメンバーの経験がうまく合わさって、1冊で基本から応用まで収録された本に仕上がっています。ぜひエアブラシ塗装にチャレンジしたい! エアブラシ塗装で悩みがあると言う方は、ぜひ本書をゲットしてくださいね。

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

お馴染みの掃除用品で塗装をトラブルフリーに/カーモデルのボディはメラミンスポンジで磨こう。

 カーモデルのボディを塗装する際、塗料が弾かれムラになってしまうことがたまにあります。また乾燥後に塗料の密着が悪く、エッジのところから剥がれてしまうトラブルも避けたいところです。そのためには塗装前のボディの表面の汚れを取り除き、細かい傷をつけておく必要があります。そのためにおすすめなのが掃除でおなじみのメラミンスポンジです。安価でどこでも手に入るこのお掃除用品によってボディの塗装トラブルを回避することができます。

 今回はアオシマの楽プラ、GR86のボディを例にメラミンスポンジを使って下地を簡単に整えてみます。今回はスプレーで塗装するため、必要に応じて各部のパネルラインが塗料で埋まらないようにラインチゼルで彫りなおしておきます。

 台所で湿らせたメラミンスポンジに食器用洗剤を2,3滴垂らし、ボディの表面に押し当てながらこすっていきます。メラミンスポンジなら普段紙やすりでは磨きにくい奥まった部分も簡単に研磨できます。

 全体を磨いたら流水を当てながら新しい歯ブラシでこすって洗い、パネルラインに詰まった削りカスを除去します。そして清潔なタオルなどで拭きとり、よく乾燥させれば理想的な下地が完成します。カーモデルのボディを塗装する際には、お手軽掃除用品のひと手間を加えてトラブルフリーな下地を整えてください。

SOF

1993年生まれな静岡のオートモデラー。たまに車バイク以外も作ります。モデルアートより単行本発売中!

「中身が気になるあの車」はなんでも積めそうな良い車だった/アオシマのトヨタ ハイエース

 「著名人のカバンの中を大公開!」なんて特集が雑誌で組まれることがあるが、私が今知りたいのは、街中で走っているハイエースの中身だ。バスに乗って移動しようものなら、ぼーっと窓の外を眺めている間に何台も見かける。試しに数えたが20を超えるあたりでやめた。そんな背景に溶け込みそうな車も注目してみると思わぬ発見があった。

 まず、運転手は老若男女問わずといった具合。勝手に男性が多いと思ったがそんなことはなく女性も運転している。見た目も物流関係っぽい作業着の人が多いかと思いきやスーツ姿も結構いた。それにジャージやパーカーなどの動きやすい服装も多く、タイダイ柄の虹色のTシャツを着ているのを見たときは驚いたし、いろいろな人が運転しているということを認識した。

 それに、各々でカスタムしていることも良くわかる。白いハイエースを一番見かけたものの、持ち主が貼ったであろうシールがリアガラスに何枚も並んでいたり、会社名やロゴが側面に貼り付けて、社用車としての体裁を整えたものがあったりした。主力商材なのか、ワサビの柄で全体をラッピングしているものはさすがに驚いた。

 ここでわかるのは、ありふれた車であるがそれぞれが何らかの愛着や意味を持って、大小さまざまな形で見た目が変えられているということだ。自然に愛されている車がハイエースなのかもしれず、そういう車がプラモデルになっているというのはとてもいいことだと思った。もし自分が日常的にハイエースを運転するのであれば、会社のステッカーを貼り付けたりして、何らかの形で自分の乗る姿に近づけようとしたと思う。

 アオシマの1/24スケールのトヨタハイエースはクリアレッドで再現されたブレーキランプやバシッと決まるフロントグリルのメッキパーツが美しいプラモデルだ。ウィンドウパーツを綺麗に塗るマスキングシートもついているので、塗装も楽にできそうだ。ただ、私が本当に感心したのリアゲートを開けた状態を再現できることだ。

 中の様子をじっくりと見られるし、ここにどれくらいの荷物を入れられるかが想像できる。何を積んでいるのだろうと思っていたが、なんでも積めそうだ。だからこそ、あれだけの数が走っているのか。また、真っ白なプラスチックで作られたボディは「街でよく見る姿」という感じで、色を塗らずに作ってもそれらしさを十分に味わえるのが楽しいのだ。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。圧倒的スピードで組み上がるでっかい車模型でGWを駆け抜けろ!!「タミヤ 1/20 トヨタ セリカ LB ターボ Gr.5」

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週はゴールデンウィークの連休にもぴったりの、組み立てるだけで気分がぶち上がる大きな車模型「タミヤ 1/20 グランプリコレクションシリーズ No.72 トヨタ セリカ LB ターボ Gr.5」です。ガンダム世界でもお馴染みのキーワード「シルエットフォーミュラ」の車です!

 この車は1970年代後半に人気を博したグループ5レーシングカー。このレースのマシンは市販車のフォルムを残しながら大改造して作られるため、別名「シルエットフォーミュラ」とも呼ばれていたのです。ベースとなったセリカの味はどこにあるの?? という記事もnippperにありますのでぜひ一緒にお楽しみください。

 箱を開けた瞬間に、天然生メタルアニキのパーツとご対面。花金の開幕を告げてくれます。銀の成型色のアニキを車に乗せると、セリカ LB ターボ Gr.5は一気にSFライクなマシンに見えてくるから、アニキの力ってすごいな〜と感心してしまうのです。

 メッキの質感はしっとり系とキラキラ系の2種になっています。エンジンの各部がメッキなので、組み上げるだけで高級な雰囲気に仕上がりますよ〜〜。

 ボディが大胆に分割されていて度肝を抜かれます。そしてこの2パーツだけで車の全容が見えます。本キットは基本細かなパーツが無く、さらにパーツ数もかなり少ないので3時間あれば組み上げられるでしょう。でかいパーツ同士をバンバン貼っていく大胆さと、すぐに形になっていくスピード感を味わえるのが本キットの魅力といえます。

 ボディの内部もエンジンルーム、内装に張り巡らされたロールケージも再現。この状態でもめちゃくちゃかっこよくて、好きな色に塗って汚したりしたらマッドマックス風味な車に変貌確定です。アニキがウォーボーイズになっちゃうルートも用意されています。

 最後にイケイケのボディパーツをつければ完成!! 内と外のテンションの違いがすごい! その違いもプラモを作ったあなただけが楽しめる体験です。打倒ポルシェを掲げて開発された日本生まれのドイツ製グループ5マシン、「セリカLBターボ」。あなたの週末のテンションを上げてくれる魔法が詰まった最高のプラモデルです。ぜひ楽しんでください!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ゴッドハンド最強のヤスリセットアップは「削る刃(ブレード)&神ヤス!10mm厚」で決まりです。

 ゴッドハンドの大人気スポンジヤスリ「神ヤス」の10mm厚と、同社が発売している金属ヤスリ「けずる刃(ブレード)」の組み合わせがマジで最強です。スーツのセットアップくらいしっくりきます。その秘密がこちらです。

 ほぼサイズが一緒。神ヤスの方が少しだけ幅広です。たったこれだけなのですが、サイズが揃っているので、ほぼ同じ幅で削っていけるので、ズレやブレも無く少ない回数で表面の処理が終わります。この組み合わせが本当に好きでよく使っているので、「けずる刃(ブレード)」の表面の顔つきもカッコよくなっています。

 けずる刃(ブレード)は感覚的には320番〜400番くらいの削り心地。金属ヤスリなのでそうそう簡単にへたることは無く、常に一定の削り心地をキープしてくれます。初手にこのヤスリで表面を均し、その後に神ヤスで整えるというのが僕の定番となっています(曲面や丸いパーツには使用しません)。

 けずる刃(ブレード)の特徴が、金属ヤスリなのに、紙やすりのように前後左右に動かしてパーツを削れることです。多くの金属ヤスリは、前方に押して削るというのが一般的です。ガシガシと削る手軽さも魅力なのです。

 力を入れずにささっとやするだけで、表面が美しく仕上がります。金属ヤスリに発生しがちな、刃が食い込んだような傷もありません!

 その後に神ヤスの400番、600番で表面を磨いて上がれば終了です。ヤスリのサイズがほぼ同じだから、先ほどの削る刃(ブレード)と同じ感覚で表面を綺麗にしていけます。

 あっという間に綺麗になりました。神ヤスの10mm厚は手頃な硬さと反発があるのでエッジや平面も綺麗に整えられますが、その前により硬い金属ヤスリである削る刃(ブレード)を挟むことで、さらにカチッと角や平面が出ます。ガンプラやキャラクターモデルのパーツ整形にとってもおすすめのセットアップをぜひ揃えてください。それでは!

片道550kmの旅先にある望郷プラモデル。色褪せても今なおそこにある凄み/フジミのNISMOマーチ

 いわき植田には私の故郷から失われてしまった「玩具店兼模型店」がまだ残っていました。先日の模型展示会「春のタン祭り」へ往訪した際に寄った老舗おもちゃ屋さん「おもちゃのトダ」。店内には最新のプラモデルもたくさん並んでいて、ちゃんと品物が新陳代謝していることから(単なるノスタルジアにとどまることなく!)店も客も現役バリバリであることがちゃんとわかります。

 しかし、お土産にしたフジミのNISMOマーチは色褪せてしまった箱がお店と共に歴史を刻んできたように感じて手にしたのでした。色褪せたプラモを好んで買うとか初めて。今回の旅の余韻を反芻するのと合わせて、今はなき地元の老舗おもちゃ屋さんに思いを馳せる今日この頃です。

 生まれ育った名古屋市東部に「おもちゃのバンビ」という老舗があり、地方都市にとっては貴重な文化の交差点でした。トダさんのように「玩具店兼模型店」でそれぞれのコーナーがほぼ等しい面積で設けられており、模型に関してはプラモデルの他にガレージキット、模型誌のムック本や『ファイブスター物語』関連書籍など、他ではお目にかかれない濃厚な品揃えでした。閉店してから20年は経つのですが、このバンビの値札がついた空瓶は捨てられずにいます。ここ数年模型をガシガシ触れるようになった自分にとって、もし現存していれば実家に帰るたびに寄るお店になっていたはず。

 遠く離れたいわきの地で自分のノスタルジーが重なる旅にもなるとはなぁ。そんな心持ちでキットをながめていると息子が「組み立てみたい!」というので親子モデリングが勃発です。実はフジミのクルマ模型を触れるのは初めてで、親子して新鮮な気持ちでランナーと向き合いました。パーツの彫刻と造形が「カッチリしているなー」というのが最初の印象。

 息子がどんどんパーツを切り出していくのでパーツ配置がナイスなのでしょう。のりしろがしっかり用意されていて、タミヤセメントの通常角瓶と流し込み速乾でみるみるカタチになっていきます。後輪車軸やヘッドレストとかが位置決めのダボ穴となかくてツルッと平面。接着剤の固定頼みなのにはギョッとしましたが、そこは「角瓶白ブタのトロミで仮止めからの位置決め、緑ブタの流し込みで速乾接着固定」のテクニックが活かされます。

 後々塗装するつもりなのでクリアパーツはいっさい付けずにいったんのゴール。特徴的なインテリアが眺めやすくてこれはこれでナイス。外装も内装もパーツ表面がグロス仕上げで輝いており、白磁のような趣があります。さて、ボディは何色にしようかな。息子と相談して缶スプレー塗装でバーッと仕上げようと思います。

 おもちゃのトダさんみたいに玩具と模型を等しく扱うお店って、ゲームやカードとかへの購買の移り変わりとか、大型家電量販店の進出とか、浮き沈みに何度もさらされて多くが退場してしまいました。そんな中で今なお子供にはじまるホビーのファンたちに向き合い続けた姿勢には敬意しかありません。しかし550kmも離れた土地に失われた望郷を抱くとは、旅の体験って予想の範疇に収まらないワンダーがある。旅、いいな。旅、もっとしたいーっ!

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

叢とプラモデル/「鉢」と「台座」の共通関係。

 その植物に似合う鉢を。僕たちがプラモデルで大事にしている「台座」と同じ考えを持っている植物屋があります。その名も「叢(くさむら)」。僕は植物をたくさん買ったり集めたり、部屋を植物でいっぱいにしたい! という願望はないのですが、お部屋のどこかに緑が欲しいと思うタイプです。

 そこでよくみているウェブサイトが「」です。僕がホビージャパンを辞めた時に、今でも一緒にお仕事をしているデザイナーさんが「お疲れ様でした」と叢さんの植物をプレゼントしてくれたのが、僕と叢さんの出会いです。それが一番上の写真の植物になります。この時植物にも驚いたのですが、鉢にも驚かされました。「これもいただけるんですか!?」と聞くと、「この鉢とセットでひとつの世界であり商品なんです」と教えてくれました。その時に、僕が大好きなプラモデルと同じじゃないか……と思ったんですね。

 確かに植物も素敵な鉢に入っていると見え方が一気に変わります。プラモデルもそう。ハードな汚し塗装をしているものでも、ソリッドな木材の上におけば軽い印象になる。主題を彩る力が、鉢や台座にはあるのです。

 叢のウェブサイトには「店主みずからが日本中を旅して集めた個性あふれる植物を、その個体の特徴を引き出す器とあわせて提案する」とあります。僕たちが作り出したプラモデルも同じですよね。それぞれしっかりと個性があります。

 先日僕の実家で開催した模型展示会「春のタンまつり」では、みんなで示し合わせたわけでもないのに、自分が作った模型をさらにかっこよく見せたいと、皆が「台座」を持ち寄って来てくれました。テーブルの上に直置きしないだけで、模型はテーブルの空間から切り離されて、より際立って見えます。台座に使用したものも、それぞれの製作者のイメージが反映されて、とても素敵な景色となっていました。

 僕は、いつもだったら使い終わったら捨ててしまうペーパーパレットや綿棒、スポンジなども一緒に展示しました。これも僕にとっての模型であり台座です。作っている途中に、「消耗品たちも一緒に走ってくれた相棒」のように思えたのです。だからこそ、これは僕のザブングルをより良く見せるための台座となっているのです。

 台座があると模型がカッコよく見える。そして次は、その台座にどんな思いを込めてみるか。叢の鉢の思想を持って、僕も自分の模型を家に展示できたらめちゃくちゃ楽しいだろうなと本気で思うのでした。大好きな模型だからね。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ハセガワが叶えてくれた20年越しの夢/セリカLBは実質アーマードバルキリーだった!

 ハセガワのカーモデル最新作、セリカLBが実質アーマードバルキリーだという話をします。いやセリカはマクロスじゃないだろと思った人はちょっとまってほしい。このプラモデル、まるまる新作なのではなく「もともとハセガワから発売されていたトヨタ1600GTにリフトバックのボディを新規で追加したもの」なんすよ。でもただのバリエーションじゃなくて、両者の間に21年の隔たりがあるのがエモいっちゅうことなんです。

 ハコを開けるとシャーシのパーツが見えますけど、これが21年前に彫られた金型。おそらくなんですが、ハセガワのほかのプラモデルたちの開発記事なんかを思い起こすと当時は図面から木型を起こしてそれをもとに金型を作っていた時代なんですよね。2002年にハセガワがVF-1バトロイドバルキリーを発売しているんですが、その翌年に作られたのがこのシャーシ。たくさんのバリエーション展開を支えてきたこともあって、パーツ裏面はなかなかに老兵の表情を醸し出していますね(パーツの彫刻とか精度はまだまだ現役なので安心して!)。

 そこに加わる新しいLBタイプのボディと、合わせて立体化されたバスタブをご覧ください。2024年のシャキシャキプラモデルは3DCAD技術を駆使したデジタルの申し子。ダッシュボードの細かいディテールまでブレずボケずにシャキーっと映し出す最新鋭のデジタル写真みたいな造形です。パーツ数がやたらめったら多いわけではなく、シンプルな構成でしっかりと特徴を捉えているのもすごく嬉しい。

 

 なんかこうやって書くと、古いプラモに新しいパーツを追加しただけに見えるかもしれません。しかし当時「セリカが出たならLBもすぐに出るやろ」と全員思ってたのに20年以上待ったんです。そしたらプラモデルの設計製造技術がまるまる違うものになっていた。この文脈、20年以上前のバトロイドに新しく装甲を着せて2022年に発売されたアーマードバルキリーと同じじゃないですか。なかなかないですよ。ひとつのパッケージに20年の時がそのまま封じ込められてお互いが合体しているプロダクト……。

 アナログ作業で作ったシャーシにデジタル作業で作ったキャビンとボディを載せるというのはそんなに簡単なことじゃございません。でも、E13パーツとE14パーツという夢の架け橋をシャーシに接着すると、ビターっとボディが被さってLBの姿が蘇ります。まさにフルアーマーセリカの爆誕なんですわ。

 組み立ては快調。古いところと新しいところで精度や組み合わせにチグハグな印象はいっさいありません。言うてみりゃボディをシャーシに被せるときに「こんなにタイトなの!?」とちょっと恐ろしくなるようなキツさがありますが、そこはちゃんと計算されているから大丈夫。寸分たがわぬ精度で20年前のアナログ造形と最新のデジタル造形が手を繋ぎ、多くのカーモデラーの夢を叶えてくれるハセガワのセリカLB。ほら、こういう話を聞くと「うわー作ってみたいかも」と思えるでしょ。すぐに買いましょう。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

オリジナルメカプラモの満漢全席がやってきた!!「TASTIER(初回限定版セット)」

 箱を開けたら、中から3つもの箱が!! 中国からやってきたオリジナルメカのプラモデルが、老舗ホビーメーカー・ウェーブより発売となります。まるでパーフェクトグレードかな? ってくらいのボリュームで定価7260円!! どういうことなの!? ってびっくりしながら、箱を開けてみるのです。

 このプラモデルは、中国の模型メーカー「和模线(HEMOXIAN)」によりオリジナル作品《超限零點/OVER ZERO》に登場する軍用サイボーグ「TASTIER」というもの。日本国内メーカー同様、中国でもメーカーがプラモオリジナルコンテンツを作り出し商品化しているのです。ウェーブが輸入販売をするこのTASTIERは、ひとつ商品に「TASTIER」本体、支援メカ「汎用型Mechanical Dog」とディスプレイ用の「複合整備台」がセットされています。言わば3アイテムがひとつになっているのです。だから外箱の中には3つの箱が入っていたんですね!

 こちらが主なセット内容。これで7260円。ちょっと理解できません。今回はまず「TASTIER」の箱を開けてみようと思います。

 サイボーグ「TASTIER」だけでもこのボリューム。プラの質感も国内メーカーのキットとほとんど変わりません。チューブなどは軟質パーツのランナーがセットされています。

 最も驚いたのが「塗装済みパーツ」の美しさです。このキット、シルバーのパーツだけで全て塗装処理されています。少しだけ粒子感がありながらめちゃくちゃ輝度が高いシルバーが選択されており、パーツを見ているだけでワクワクしてしまいます。組み立てるだけで高級感を演出できますね。

 クリアーパーツも紫や赤のものがセットされており、どちらもとっても透明度が高いです。傷やゴミの混入も見受けられません。

 水転写デカールの他に、バイザー内のディテールを選択できるエッチングプレートが付属します。これをバイザー内に入れるだけで、クリアーパーツ越しにきらりと光るディテールが表現されます。

 トイ的な遊びとして電飾ユニットも最初からセットされています。電池は別売りになります。

 試しに電飾ユニットの部分だけパーツをセットしてみたら、なんの苦もなくすんなりとパーツが収まりました。設計で無理をしているところも無く、パーツは多いですがスムーズな組み立てが期待できそうです。

 箱を開けてパーツを見てみるだけでもお腹いっぱいになれる「TASTIER」。今度は実際に組んでみて、どのような構造になっているのかご紹介してみようと思います。中国オリジナルメカプラモの今を確実に体験できること間違い無し!!! それでは〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

あの頃気になってたプラモデルを組んでみる/童友社のマリンジャンボ

 買っちった。マリンジャンボ。ANAの機体デザイン公募で「小学生の女の子の作品が採用された」ということもあって学校向けの壁新聞的なヤツでも大々的に紹介され、飛行機に乗ったことがなくとも「クラスのみんなが知ってる」くらいの知名度だったラッピング旅客機のはしり。当時どこの模型屋さんにもなんとなく一個は並んでいたのをおぼえている。


 箱を開けると当時のラインナップを紹介するカタログも同梱されていた。マリンジャンボ自体は限定商品(のハズ)なのでここには載っていないけれどデカール以外は同じである1/144 ボーイング747-400の価格が¥3800なのでちょっと高いくらいだろうと当時価格を推察する。参考までに同じ頃店頭にあった当時のガンプラのフラッグシップ、1/60 V2ガンダムは¥3000だった。「当時両方を手にした子供はいただろうか?」などと考えてしまう。

 自分は小学生当時ビニール風船を買い与えられて、プラモじゃないのかと微妙に肩透かしをくったような気分でいた。そうはいってもプラモ売り場に行けばガンプラやミニ四駆に目を奪われていたあの頃、なにかひとつ買ってあげるよと言われた時に¥3800のマリンジャンボをねだっていたかというと中々怪しい……。自分の世代にとってスケールモデルとは既にそんな距離感の存在だった。


 そんな微妙な位置の当時の花形スケールモデル(?)は中古通販で¥7000弱で買った。生産終了した30年前の限定キットとしてはプレ値というほどでもない気がする。ガンプラだったら何個買えるのに!とかそういう皮算用をする気分はさっぱりないし、組み立てるつもりで買ったのでこの先コレクションとしての価値がつくかどうかという感情もない。かといって、先述の通り「万感の思いを込めて~」というのもちょっと違う。作りたい対象に対してこの額を出す価値を見いだせるかという一点に尽きる。自分もそういう買い物をする齢になったのだ。

 ホッチキス止めじゃない密封された袋の封を切ると、工場で袋詰めされて以来の外の空気だよって伝えたくなる。どうだい?30年ぶりのシャバの空気は。


 もう流石に黄ばんでしまっているけれど巨大な機体に貼る巨大なデカール。本当に貼れるの? 名人じゃなくてもできる? 絶対窓とかズレる自信があるよ。リタッチするかどうかとかそういうのも含めて胆力を試される気がする。

 車輪がたくさんのランディングギアもちゃんと用意されている。ジャンボなだけあって車輪の数も半端ないな。しかもこいつは形式名の末尾に「ダッシュ400」が付く拡張型。ミニ四駆もびっくりのダッシュマシンなんだぜ……(?)。


 ジェット旅客機のメカ的魅力、主翼から下げられたジェットエンジン。よく見えるファンも気持ちの良い彫刻。まぁ「あの日気になったプラモを僕はまだ組んでいない」に決着を付けたいなぁみたいな気分で向かい合っているので、ハードとしての「出来栄え」自体はあまり関係ないんだけどね。見せびらかしたかったんだ、30年越しに買ったプラモをね……だって思った以上に良く出来てるし……。

 そんなわけで、なんだかちょっと気になるな……から「思い切って買う(30年越し)」は達成した。デカールの封も切った。仮組みもした。作るしかない、もう引き返せないんだ。僕もオトナになったから。あの頃気になっていたプラモを組む。同窓会で「実はあの頃好きだったんです」というような気恥ずかしさがあるよ。オトナになってもね。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

『紅の豚』の名シーンを絶妙なバランス感覚で立体化したプラモデル/ファインモールド製「寝不足のフィオ」

 ファインモールドが海洋堂とタッグを組み、香川雅彦という天才原型師の手業をデジタルリマスターしてプラモデルにする「スタジオジブリ ヴィネットコレクション」の第二弾は『紅の豚』のフィオ。サボイアS.21試作戦闘飛行艇の改設計にいそしむフィオの姿がプラモデルになっています。「徹夜はするな、睡眠不足はいい仕事の敵だ。それに美容にも良くねぇ」というポルコの声が聞こえてくるぜ。

 プラスチックパーツは白、ペールオレンジ、ブルー、ブラウンの4色。パーツ数は少なく感じられますが、完成すると意外に伸びやかな空間が立ち上がるのに驚かされます。香川造形の魅力である「水平垂直であるはずのオブジェクトにも極端にパースを付けてサイズ以上の広がりを感じさせる」という手腕が今作でも遺憾なく発揮されていて、有機物にも無機物にも躍動感が満載!

 デカールは比較的貼りやすい箇所意外は予備も用意されていますが、徒手空拳で挑むには正直ちょっと難度高め。どうしても必要だと思われる「ドラフターに貼り付けられた図面」(そのアウトラインもパースが付いている!)は説明書にも印刷されているのでそちらを切って貼るのもヨシ。

 説明書を見ていると「塗装とかデカール貼りとか、だいぶ大変そうだな……」という印象を受けます。プラモデルは同じものをまた買ってこれるのがいいところ。不安な人はまずパーツを貼ってカタチを楽しむだけでもOK。プラスチックパーツの色の組み合わせが少々淋しいかも、と思ったのですが、組み上がると離れ離れに位置する青いパーツが空間のなかで効果的な差し色となっていて、思ったより賑やかです。

 木でできたところ、紙を丸めたところ、シワの寄った布……と、それぞれの質感もちゃんと表現されたパーツの造形は言うことなし。こういう造形をプラスチックパーツで楽しめるというだけで「プラモデルになってよかったね〜!」と言うべきアイテムで、「全塗装しなきゃ!」「合わせ目消さなきゃ!」なんて、ビビらなくてもいいんです。貼って、造形を楽しんで、色を塗りたくなったらこんどは少しずつ挑戦してみればいいだけの話。

 ドラフターまわりのデカールは簡単そうだったのでサクッと貼って、あとはバリバリバリとパーツを組み立てて完成。海辺でひとり電話をしていたポルコに相棒が加わり、とってもいい景色が生まれました。ピンと張り詰めた静かな夜、根を詰めた設計作業の合間に訪れる一息。ホッとする瞬間を切り取っているにも関わらず、独特の造形センスによってオブジェクトたちが今にも動き出しそうな不安定な感覚は、このプラモデルシリーズならではの表現です。ぜひとも組んで、その絶妙なバランスを味わってください!そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

街で見かけたニクいアイツにプラモデルで再会したい/ハセガワのサニトラ

 酒を飲んだ帰り道、信号を待っていると交差点で一台の車が信号待ちのため停車した。車体形状はピックアップ型トラックで、ボディは黄変したホワイト。ところどころサビが露出しているが、それがいい塩梅でアクセントとなっている。年季を感じるボディとは相反してホイールがビカビカと輝いていた。端的に言うと、かなりいい感じの車だった。

 しかし、車種がいまいち判別しない。ヒントになるものがないかと探してみると、フロントグリルの部分に「Sunny」と筆記体のエンブレムが輝いていた。これが世に聞く「サニトラ」っちゅーやつか、とアハ体験をしていると、信号が青に変わり車はマフラーから快音を立てて去っていった。

 家に帰りサニトラのことばかり考えていた。あの”いい感じ”をどうにか所有したい。手段を漁っているとすぐに解が出た。プラモデルで所有すれば良いのではないか。

 そう思い早速、ハセガワのキットを購入。封を開けてみると真っ白に輝くボディパーツが出迎えてくれた。あの時見たボディの形状と似ている。ディテールを比べると全て一緒ではないと思うのだが、それでいても心が踊る。これから”いい感じ”を自身の手で組み立てることができるという高揚感も合わさって。

 そして、肝心のフロントグリルで輝いていた「SUNNY」のエンブレムだが、これは箱に入っていなかった。ここで初めて理解したのだが、あのエンブレムは別の型式のものであり、いま持っているこの型式には装備されていない。さらに言うと、あのエンブレムはもともとグリル部分には装備されているものではないらしい。ということは、あの時見たエンブレムは所有者の一種の遊び心のようなものだったのだろうか。なんというかニクいことをする。

 「Sunny」のエンブレムが手にすることができなくなったからといって、目の前にあるキットの魅力がなくなるわけではない。未だボディパーツとグリルの部分を手に取っただけなので、この要素だけで魅力を推し量ることは難しい。幸いにも、付属しているデカールシートに目をやると「Sunny」の文字を象ったデカールがある。筆記体ではないがこれはこれでいい感じだ。であれば、このデカールの「Sunny」に恥じないように、私は私で目一杯楽しむつもりだ。

コロ助

1992年生まれ。沖縄出身。生物とアークナイツ、ダイナソーJr.が好き。

ゴールデンウィークに欠かせない「キャリーバッグ」が主役のプラモデル!/マスターボックス 1/24 ヒッチハイカー

 先日ずっと愛用してきたキャリーバッグが壊れてしまいました……連休、そして静岡ホビーショーへの旅に欠かせない相棒を失ったのです。「いっしょにいろんなところ行ったよな〜〜」と思いを馳せながら粗大ゴミに出したのでした。

 カバンやキャリーバッグは、まさに旅の象徴です。そしてそのような日常のアイテムも、今はプラモデルになっています。今回は旅の模型「マスターボックス 1/24 トラッカーシリーズ ヒッチハイカー エリカ・ケリー」をご紹介します。

 ヒッチハイク。ドラマとかでは見たことがありますが、僕の人生ではまだ一度も遭遇したことがありません。そんな景色をウクライナのメーカー・マスターボックスはプラモデルにしています。本キットの主役はエリカとケリーなのでしょうが、僕にとってはノンノンです。ランナー(プラモデルのパーツが繋がっている枠のこと)の中央にいるキャリーバッグです。君が俺にとっては本キットの大トロなのだ!

 ディテールはふわふわで、キャリーバッグという概念を抽出したような造形です。でもいいのです。キャリーバッグに見えるしね! これがあるだけで、そこに人がいなくても「人の存在」を車に追加できます。

 おそらく足はくるくる回るタイプなのでしょう。ヨーロッパの石畳にはめっぽう弱いタイプとみました。キャリーバッグの模型を見るだけで、旅情が掻き立てられます。「連休、人が多いからな〜」と思っても、やっぱり外に行きたいと思ってしまいます。

 試しに後部座席に転がしてみます。いきなり車の中の密度感がアップ!

 窓からちらりと見えるこの感じ! おしゃれでしょ〜〜。このチラ見せくらいなら、フワッとした造形でもあまり気にならないのです。キャリーバッグが豪快に置かれている。結構大胆な性格のオーナーさんなのかな〜とか、想像力を掻き立てられます。

 プラモデルにはさまざまなアクセサリーがあります。あなたが模型に込めたい思いや雰囲気は、アクセサリーによって強調できます。単品で売ってもいますが、このようにフィギュアと共にセットになっているアクセサリーもまた魅力的です。あなたにとって「これはいいな〜」というものが見つかりましたら、ぜひ僕たちに教えてください。みんなで楽しく模型を彩っていきましょう。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

全長87cmのバスターランチャーで歴史に名前を残しちゃう!/IMSのシュペルター・K.O.G. 限定版

 「長いよ!」と思ったみなさん、こんにちは。大きいプラモデルが大好きなワタクシです。それにしてもこんなに巨大なものをどうやってお伝えしようかと考えたとき、こうして縦に長く見せられるのがWebページのいいところですね。ボークスの1/100 IMSシリーズ最新作、シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992=(限定版)に同梱される新規造形のバスターランチャーです。全長870mmというのは我が家の息子の頭頂高を凌駕しており、この時点で「なんちゅーもんをプラモデルにしてくれたんや……」という気持ちになります。

IMS 1/100 シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992= with バスターランチャー(限定版)

 ボークスの1/100 IMSシリーズでは「シュペルター・K.O.G.」とそのバリエーションである「シュペルター・K.O.G. =ボォス 2989=」が製品化されており、そのパッケージは見たことがあったのですが、今回はそこにさらなる追加パーツを大量投入。デカすぎるパッケージの最上段からバスターランチャーのパーツがこんにちは。フタの上に置いたニッパーが小さく見えるでしょ。シュペルター本体も大幅な設計変更と新規パーツの追加がされているのだけど、今回はバスターランチャーの話をしたい。

 新規造形されたバスターランチャーのパーツはランナー4枚にまとめられているけど、A4判の説明書と比較するとど迫力のサイズ感であることがわかると思います。それぞれのパーツはハリのあるシルエットに奥行きのある彫刻で、シンプルだけど重層的な構造を感じさせる設計。ともすれば単調になってしまう(=いわゆる「間が持たない」)大型武装ですが、いたずらにディテールを彫りまくるのではなくいい感じのテーパーや微妙な曲率でもって注意深くデザインされていることを強制的にわからせてくれます。

 バスターランチャー全体は大まかに4つのパートに分けられており、潔くふたつに分割されたユニットを前後に接続していく構造。いちばん大きなユニット同士は挟み込みになりますが、これは強度的にもナイスな判断だと思います。ゲート痕はだいたいパーツの接合ラインに来るから、パーツごとにていねいに処理するよりもまずはざっくりと接着してから接合面を#240〜#320あたりのサンドペーパーでジャカジャカ削って面を出し、最後にヤスリ傷を消すように面を均すのが良いと感じました。

 豪快な組み立ての感触はとにかく気持ちよく、仮組みで少々キツく感じられるハメ合わせも接着剤を流し込めばスルリと収まってくれます。塗り分けは右サイドの装甲やエネルギーチューブといった目立つところだけ手を入れてもいいでしょうし、説明書には詳細な指示があるので色を差していってもOK。プラスチックの成形色を活かす(あるいは基本塗装をラッカー系塗料で行う)のであれば、奥まったところは水性塗料を使って塗り分けてから、はみ出し部分をキッチンマジックリンで拭い取るのがオススメです。

 組み立てが完了しましたので、どこのご家庭にもあるDJ機器であるところのXDJ-XZと比較するとこのサイズです。だいぶ存在感あります。もしDJ機材をお持ちでない場合は、床の間に飾られた日本刀をイメージしてもらうとだいぶ近い……というかこれを装備したシュペルター・K.O.G.は床の間に展示するのが最高な気がします。このバスターランチャー、もちろん本体とのエネルギー・バイパス接続のためのリード線や、支持架となる専用ベースも同梱。本体側にはバスター・グリップ保持用の武器持ち手(左右)も新規に付属しています。



 ところでこちらはボークスのオフィシャルサイトに掲載されている俯瞰のバスターランチャー構え写真なのですが、前後がトリミングされています。じつは全景が説明書の末尾に掲載されていて、これがだいぶ痺れます。バスターランチャーの支持架なしで自立させるにはだいぶ工夫が必要(本体を固定したり重心位置を調整したり、あるいは本体とディスプレイベースを合体させるなど……)ですが、いつかはやりたいですねこのポーズでの展示……。

 単体で展示してもこれだけの存在感があるバスターランチャー。ちなみにワタクシ完成見本写真を見て「どうも砲身が前下がりになって見えるな……」と思っていたのですが、写真を撮ってよーく観察するとこれがきちんと真っ直ぐなんですね。ユニットごとにがっちりハマる構造上、砲身が自重で垂れ下がるようなことはいっさいなく、機関部〜尾部の造形に起因する目の錯覚でございましたのであしからず。


 「IMS 1/100 シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992= with バスターランチャー(限定版)」は、ボークスのGL/VS/VIP会員限定アイテム。予約受付期間は5/6までとなっていますので、ぜひとも会員登録のうえ入手してください。あなたも長大なバスターランチャーを組み上げて、歴史に名前を残しちゃいましょう。そんじゃまた!


IMS 1/100 シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992= with バスターランチャー(限定版)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

僕のプラモライフに欠かせない「最強の赤」/シタデルカラー メフィストン・レッド

 水だけで希釈・洗浄ができて無臭の水性塗料「シタデルカラー」。発色・伸びも良く筆塗りにとっても適しています。かなりの色数があるのですが、その中でもこの「メフィストン・レッド」は僕のプラモライフに欠かせない「赤」です。シタデルカラーでベストイレブンを組むなら、絶対に加えます。キャラクターモデル、スケールモデルのどちらでも大活躍間違い無しなのです。買いましょう!!

 キャラクターモデルのミサイルの弾頭によく塗られる色が「赤」。モデルのアクセントにもなります。プラスチックの色で色分けされているプラモもありますが、このように別の色で成型されているキットもあります。こんな時、メフィストン・レッドに登場してもらいましょう。

 一つ30秒くらいで、つるんと塗れます。ひと塗りで一気に発色するので、1度全体を塗ったら次のパーツを塗るという順番で2週しましょう。それだけで綺麗に弾頭を塗り分けられます。

 こちら、全て筆塗りしたものです。塗料の伸びが良く、発色も良いので塗面が汚くなりません。

 さらに隠蔽力が抜群! 黒いランナータグ(プラモデルのパーツが繋がっている枠をランナーと呼び、ランナーの脇についているタグをランナータグと呼びます)にそのまま塗っても赤が発色します。

 ですので、グレーのパーツの上から直接赤を塗ってもしっかりと発色し、手早く塗り分けられます。飛行機模型のコクピットのスイッチ、キャラクターモデルの細部の塗り指示にもすんなり対応できます。数あるシタデルカラーの中でも1本あるとめちゃくちゃプラモ塗装が快適になる「メフィストン・レッド」。ぜひこの機会にゲットしてください!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

細い線が彫れる最高の神ヤスリ!「ゴッドハンド スジ彫りヤスリ」

 ゴッドハンド スジ彫りヤスリ

 刃物?? 何?? これは「スジ彫りヤスリ」という商品。最強のニッパーであるアルティメットニッパーを発売しているメーカー「ゴッドハンド」が販売している超人気ヤスリです。これがあれば、プラモに彫刻された細い線を簡単に彫り直せます。目立てヤスリをベースに開発された、本当に便利なヤスリなのです。

 そもそも目立てヤスリは「ノコギリのギザギザの刃を奥まで研磨して、切れ味を取り戻す」のに使用されるもの。それを模型用の特殊形状&薄さにして「スジ彫りヤスリ」として販売したのがこの商品です。僕が今作っているハセガワの「1/72 VF-1」製作で本当に大活躍なのです。その様子をご覧いただきながら、商品を解説していきます。

 ハセガワのVF-1の表面には繊細な彫刻が刻まれていますが、パーツの合わせ目を跨ぐところが数箇所あります。このまま、いつものようにゴリゴリと紙ヤスリをかけて合わせ目を消すと、ツルツルバルキリーに早変わりしてしまいます。そこで合わせ目を跨ぐ彫刻だけ、このスジ彫りヤスリで彫り直しています。早速合わせ目を跨いでいる横線を彫り直してみます。

 このヤスリ、片面にしか刃がないので両面に刃がついているヤスリよりも細い線が彫れます。ヤスリのサイズは2種類(そのほかに左利き用、右利き用もあり)あって、小が0.2mm以上のスジ彫りの彫り直し、極小が0.2mm以下のスジ彫りの掘り直しに適しています。今回は極小を使用しています。

 直線のスジ彫りを彫り直す際は、刃の先端が斜めになっている方を使用します。斜めにカットされていることで抵抗が少なく、余分な力が加わりません。刃を立てるのではなく、20度〜30度と少し寝かし気味にした角度にして、筋彫りにセットします。

 そして優しく前方に押します。切れ味が良いので、力を入れる必要はありません。そのまま押し進めましょう。これを数回繰り返せば、筋彫りは深くメリハリあるものになり、上からヤスリをかけても簡単には消えることはありません。これで安心して合わせ目消しができます。

 丸いパーツやパーツの角にある彫刻も、このヤスリのお腹部分を使うと綺麗に彫り直せます。バーニアなどの丸いパーツのディテールの彫り直しもできるほどの精度があります。

 斜めにカットされていない方を使用すれば、奥まったディテールの終点までしっかりと彫れます。

 スジ彫りというと、昨今はオリジナルのディテールをバキバキに彫るのが流行っています。それだけでなく、元から入っている彫刻を彫り直してメリハリをつけたり、より線を整えたりするのも立派なスジ彫りです。もとからあるかっこいい線をスジ彫りヤスリでなぞることで、習字のお手本を見て文字を書くような、お手本を知り再現するということも体感させてくれます。もともとあるものを綺麗になぞることは成功体験も得やすく、上達スピードも上がることでしょう!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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「吊るしてしまうデカール収納」でプラモデル作りの機嫌が爆アガりします。

 デカールは余った分も何となくとっておくって人も多いと思う。別売りデカールでまかなってしまい、付属デカールを新品のままストックするなんてこともある。使う時も端から順番というわけでもなく不定形に不規則に切り取られていくこともしばしば。ケースやクリアファイルといろいろ収納を試してみたけれど意外とうまくしまえない。大きさがまちまちだとこんなに扱いに困るものなのか……。

 そんなデカール整理に対する回答がコレ。チャック付きポリ袋とフックシールのコンボである。

 差し替えパーツの保管や展示会への移動時に取り外す小パーツの管理なんかでモデラーにも浸透しているチャック袋。実はジャンクなシート素材の整理にも使いやすい存在なのだ。

 まちまちになったサイズ毎に袋を分けることで具合よく整理できる。チャック袋は大きさのバリエーションが豊富なので調子が良い。重なることで一方を完全に覆い隠せる程に大きさの差があるモノを同じ袋にいれると中に何が入っているのか分かりづらくなるし、探すのに苦労すると実作業を始める際の腰も重くなってしまう。

 粉々に小さくなってしまうコーションマークの整理には特にオススメ。極小のチャック袋に極小のデカール片なら袋の外からも確認しやすいし、かさばらないのである程度の種類毎に分けて使うのも容易。再び使うときにはトレーなどに袋の中身を全部広げてしまったほうが、任意のマークを探すのにも摘まむのにも具合がいい。小分けにしておけば中身を丸ごと出し入れするのにもそれほど面倒を感じないハズ。

 事細かに仕分けしても、その仕分けたものを管理できないと本末転倒。幾らかのジャンル毎に大きい袋の中に小さい袋をまとめてしまうと吉。

 デカール以外にもシールにプラバン、メッシュやエッチング等、シート状で使うごとにサイズがまちまちに変化していく素材は同じように扱うことができる。チェーンやチューブ、スプリングといったひも状小物もこの収納と相性がいい。

 そして最後にチャック袋の上端にフックシールを貼って吊るしている。めくったりして奥の方のコレクションを覗くように探したりもできるし、箱や引き出しに平たく重ねたり、ファイリングして本棚にしまったりするより快適。アクセスが良くなって「探すのが面倒で作業が進まない」みたいなことが減って日々の機嫌が良くなること請け合い。機嫌がいいとプラモも上手に作れそうだよね。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

アオシマのおもてなしは外観に宿る/ボディ作りの楽しさ溢れるランエボ ファイナルエディション

 家のそばにパジェロが止まっていることに最近気付いた。それを見て「三菱の車って最近は見かけないな」と思うようになった。そういう風に思い出すと、急に街中で見かける三菱の車はレアという気持ちになってくるから不思議だ。アオシマの1/24ランサーエボリューションを購入したのはそういった三菱の車への関心と、真っ白い箱に描かれた精悍な見た目がいかにも名車という感じがして惹かれたからだ。このプラモデルはXモデルとファイナルエディションの選択式。ファイナルエディションの実車は2015年に販売されたということで、懐かしさを感じさせないかっこよさなのも良いと思った。

 箱を開けてみると思った以上にパーツが多い。これは大変そうだと思ったが、多いと感じた正体はランナーの枚数だ。ボディのフロント部分で一枚、リア部分で一枚……いった具合で細かく分けられている。それにホイールも2種類ある。

 作り始めると枠だけになるランナーや、選択しなかった車種の使わないパーツがどんどん生まれる。車内は後部座席と床が一体成型であっさりとまとめられ、対して外観に関わる車高の高さを選べるシャーシは細かく作るといった感じでメリハリのある作り心地だ。

 ボディのパーツ分割がとくによく、バラバラになった前後のパーツや三菱マークのあるフロントグリル周辺とボンネットは別パーツ。これらが精度よく収まるのが気持ちいい。サイドミラーだけ接着して、全体をスプレーで塗装するとかなり楽で、その後にメッキパーツを挟み込めばボディはだいたい完成とかなり楽をさせてくれる設計だった。

 それに嬉しいのは赤とオレンジのブレーキランプとウィンカーのパーツだ。早く組み立てたいという気持ちに寄り添うように、こういったものが用意されているのは嬉しい。他にもフロント、リアガラスを塗装するためにはマスキングシートがついているし、メッシュは網目が斜めになるように断裁されたのものが入っている。こういった細かな気遣いがプラモデル作りに速さを与えてくれる。

 あっさりとしたインテリアと、綺麗に仕上げやすいようにと考えられた分割と色分けの外観はランサーエボリューションという名車をいつでも私たちは作り上げることができるとアオシマが約束してくれているような気がした。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。商品名から激戦地の空気を感じるアニキたち。「ミニアート カルヴァドス売り」

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週は、ブランデーを売り歩くアニキたち「ミニアート カルヴァドス売り」をご紹介します。二人のアニキが見せる素敵な景色を見ながら一杯飲みたくなるプラモです。

 ミニアートの小物シリーズの中でも「ビン」のパーツは超オススメ。これが入っているというだけでも買う価値があります。美しいクリアー成型のビンは、戦車の上だけでなく、さまざまな模型のアクセントになってくれます。

 また今回の商品名も良いですよね。「酒売り」とかではなく「カルヴァドス売り」。酒の種類を限定しています。カルヴァドスはフランスのノルマンディー地方のカルヴァドス県やその周辺で作られているアップルブランデー。「ノルマンディー」と聞くと「上陸!!」と脊髄反射してしまうのですが、そのような激戦地でも逞しく酒を売るアニキたちなのかなぁ〜と商品名だけでも妄想できます。

 ミニアートのプラモの「木」も良いですよ〜〜。彫刻にとってもデフォルメが効いていて、かっこいいのです。

 酒のケースの刺身の完成です。めちゃくちゃ良いのですよ!! 木箱とクリアーパーツのビンが織りなすハーモニー。最高です。ビンも色違いなだけでなく、形状も2種セットされています。

 もうこれだけで情景が完成していますね! 地面を作らなくても、アニキが酒と共に時を過ごしているのが分かります。

 カルヴァドス売りのもう一人のアニキが引いている荷車。このランナーはミニアートのさまざまな商品で活躍しています。

 荷車アニキの服装がなんともオシャレ。ジャケットを着て、ネクタイもしています。そして腰巻きタイプのエプロンも良いのです。

 握り拳の先には、ちょこっと荷車の持ち手が成型されています。不要部分だと思ってカットしないようにしましょう。

 これぞミニアート!! カルヴァドス売り・爆誕!! いいですね〜〜。戦わないプラモを精力的に出し続けるミニアート。そのラインナップもかなり膨大になってきました。もはや軽い商店街ができるくらいになっていると思います。それぞれ本当にユニークなので、ぜひその最初の1個として「カルヴァドス売り」を作ってみてください。それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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いざ、いわき植田の春のタン祭りへ! 模型とお酒を愛する人たちの引力

 美術館で酒を飲みたいタイプの私です。いや、飲酒が許される美術館はない。酒をちびちびやりながら延々と作品の奥行きを舐めまわしたいんだけどな。同じくプラモ、模型の展示会においても酒が飲める会場ってのは聞いたことがない。それを「入場1ドリンク制。酒屋オススメのアルコールを各種用意」と掲げたのがnippper副編集長のフミテシ氏が主催する模型展示会『春のタンまつり』なのである。「だってウチが酒屋だから」とか、なにそれ最高。行くしかない!

 私の住まう愛知県常滑市から会場である福島県いわき市植田までは電車を乗り継いで5時間半ほど。遠い。だが陸続きの先に日本を代表するモデラーと作品がアベンジャーズしているうえに酒が飲める。即断で仕事と家族の都合をつけて植田のホテルを予約した。

 3回の電車乗換を最短ノーミスでこなし、遠路はるばるたどり着いたカタルシスたるや。旅情が爆発しているうえ、会場の情報量が過多すぎていったん落ち着け俺。いったんビールだ。

 土地の酒から自然派ワイン、閉会まで5時間は飲んだ。心底うまい酒だった。何度も作品を眺めなおし、写真では知覚できないツヤや色味、フォルムやディテールを味わいまくった。そうこうしていると各モデラーさんが気さくに声がけしてくれて、作品の解像度がさらに深まる。加えてご本人のライフスタイルなどうかがえると興味が尽きなくて酒がススム。あと「名古屋の南の方から来ました」からの「遠い!凄い!」のドヤ顔でさらに酒が美味い。

 matさんはSNSが世に放たれる以前、blog全盛のころからのファンだったのですが、後にオラザク大賞でホビージャパンの表紙を飾った時には書店で声を出したものです。それをご本人に話せてカンパイできる機会が訪れるとは。たまらずライジングです。

 書籍の販売ブースではプロモデラーのオールスターたちがサインに追われる事もしばしば。私は買おう買おうと思っていた松本州平氏の著書がまさかのサイン本に。加えてその雑誌の編集長の話も聞けたりとか、とにかく距離が近い近い。

 閉会後の打ち上げでのフミテシこと丹さん、酒屋のお兄さんとお母さん。丹ファミリーがお届けするイベントだからタン祭り。直球! その土地の、家族と仲間たちが迎えてくれるローカルの説得力。皆さんの模型とお酒への愛をビシバシ感じる現場でした。こんなこと今までなかったし、今後もぜひ開催していってほしい。

 フミテシさんのルーツである「おもちゃのトダ」も会場スグなので大盛況でしたね。自分はこのフジミのNISMOマーチを手にしました。お店の雰囲気とこの色あせた箱がこの旅の思い出になるかと思って。今回の旅では14年前のCanon S95をひっぱり出してきました。デジイチをここ2年、ガシガシ使ってきてからのこのサイズ感がたまらない。詰められた機能を駆使するのが面白い。なにせコンパクトでフットワーク軽くてナイス。またこれ持って旅にいきたいな。

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

プラモのパーツを外すための大ヒット工具パーツ・オープナーがさらに進化して帰ってきた!!「ウェーブ パーツ・オープナーV2」

 プラモデルのパーツを間違って組んでしまった! 塗装しやすくするためにパーツをバラしたい! そんな時に大活躍するのが「パーツ・オープナー」。プラモデルの世界には組んだパーツを分解するための工具もあるのです。面白いですね〜。レゴの世界にも似たような工具があります。

 その元祖がウェーブが発売した「パーツ・オープナー」。この元祖がパワーアップして「パーツ・オープナーV2」という名前で帰ってきしまた。光の翼です。

 パーツが合わさっている合わせ目部分に、このパーツ・オープナーの先を差し込み。こじ開けます。セイヤっ! と一気にこじ開けると破損してしまうことが多いので、ゆっくり優しくキコキコとこじ開けます。

 「V2を信じるんだ!」と言っている暇もなくパカっとパーツが外れます。パーツの破損も少なくなるし、少ない力でパーツを外せるので、一度使うと病みつきなのです。キャップもボディ内に収納可能なのも嬉しいです。

 V2は先の幅が小型になり、より狭いところや小さいパーツにも対応可能となりました。そしてナックルダスター(メリケンサック)のような薄くてフィットする持ち手にもなり、より中2ハートを刺激してくれる姿に変貌しました。

 そしてボディには6角穴と数字が書いてある丸穴が空いています。6角穴はストラップなどをつけられるために、数字の書いてある穴は「軸径」をお手軽にチェックできるために空いています。

 このように3mm軸を通してみると、ぴたりとフィット。他に5mm、2mmの丸棒を計れます。パーツをこじ開けるだけでなく、ちょっとしたアイディアもボディに搭載された「パーツ・オープナーV2」。パーツを外したりバラしたりする時にとっても力になってくれるので、ぜひこの機会にゲットしてください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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あえてライトを黒く成型したアオシマの英断。さらに進化した「楽プラ GR86」の新機軸!

 アオシマの楽プラことザ・スナップキットシリーズはツヤツヤに成型されたボディ、パタパタ折りたたんで組み立てられる内装、成型色でラインナップされた複数のボディカラーが魅力的です。もちろんウィンドウやランプ類もクリアーパーツで再現されています。

 一方で、楽プラシリーズ最新作のトヨタGR86ではあえてテールライトが黒く成型されています。一見するとライトの表現には都合が悪そうです。しかし実際に組み立ててみるとその理由が伝わってきます。

 というのも、実車のテールライトはエッジに黒い縁取りが多いためです。クリアーパーツの上に黒い縁まで再現したシールを貼り付けると当然しわが寄ってしまいます。そこであえて成型色を黒くし、キレイに貼り付けられるようシールの面積を小さくしているのです。

 組み立てるとホイルシールの光沢のおかげで違和感なく仕上がってくれます。テールライトに秘められたアオシマ楽プラの新たな可能性をぜひとも感じてください。

SOF

1993年生まれな静岡のオートモデラー。たまに車バイク以外も作ります。モデルアートより単行本発売中!

「流し込み接着剤」があるだけでプラモの組み立てがめちゃくちゃ楽になる話。

 2002年にハセガワ初の人型メカプラモデルとして送り出された「1/72スケール VF-1 バトロイド バルキリー」。まだ10代だった僕は、このキット化に興奮して買ったものの、最後まで組み立てられませんでした。当時の僕はある接着剤の存在を知らなかったのです。そう、今回のテーマ「流し込み接着剤」です。それさえ知っていれば、もっとスイスイ組めて、机の上にVF-1を飾れたに違いなかったのです!

 当時の僕は、この白い蓋のタミヤの接着剤とウェーブの瞬間接着剤しか使っていませんでした。この白い蓋の接着剤は粘度が高いのが特徴。蓋の裏にセットされているハケを使って、パーツの軸などにペタペタと塗ってパーツを貼っていきます。今の自分なら、この白い蓋の接着剤だけでも形にできそうですが、当時はこの接着剤だけを塗って組んでいって挫折したのです。

 ハセガワのVF-1は、表面のディテールがめちゃくちゃカッコよくて、リアルなモチーフを触ってきたメーカーが送り出すリアルロボットの味を楽しめます。接着剤を使用して組んでいくことが推奨されているプラモでもあります。

 しかし、ここが癖ものなのです。接着剤推奨なのに、結構な箇所に「スナップフィット(接着剤を使用せずにプラの嵌合でパーツをとめていく模型)かな? ややスナップフィットかな?」というファジーさあるのです。さらに「ちょっと入んないんですけど!?」ってくらいきつい軸&軸穴なんかもあり、パーツを組み合わせていくたびに、軸の先と穴を軽く合わせてチェックしていく必要があります。そういうプラモだと知らないで、当時のヤングフミテシは裸一貫でハセガワのVF-1に飛び込んだのでした。

 そのファジーさを解決してくれるのが「流し込み接着剤」です。今の僕の模型製作において、主役と言える接着剤。この接着剤があるだけで、ハセガワのVF-1は、よりあなたに近い距離のプラモデルになります。上の写真は、スケールモデルキットのように、軸がパーツを止めるのではなく位置を決める嵌合になっているパーツ。こういう場合はパーツを同士を合わせた部分に、流し込み接着剤の蓋についている筆をちょんと置くだけでパーツが接着されます。接着剤の後も目立たなくて綺麗な仕上がりになります。

 これは軸と穴の径が合ってなくて、奥までしっかりと入らないパーツ。こういう箇所にも流し込み接着剤があるだけで、スムーズに解決できるのです。

 軸を短く切る、もしくは全てカットしてしまいます。

 軸を綺麗にカットすることで、パーツが面と面で密着するようになりました。あとはそこに流し込み接着剤を流すだけで良いのです。時間も短縮できる上に、パーツが合わさる精度も上がっています。

 当時人型にまで組めなかったVF-1が今目の前に!! 流し込み接着剤の恩恵で、憧れていたハセガワのVF-1 バトロイドバルキリーを手に入れられました! ゆるい・硬いというファジーな合わせが多いプラモデルは世の中にたくさんあります。そのファジーさの間を取り持つことがもできるのが「流し込み接着剤」。確実にプラモの世界を広げてくれます。取り扱いもとっても簡単なので、まだ使ったことがないという方、ぜひあなたの工具箱にお迎えください!! それでは〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

この世に「プラモデルツーリズム」があったなら/四万十海洋堂ホビー館

 高知といえばはりまや橋。橋といえば……沈下橋というのをいちどは見てみたいな。子連れで高知、大自然……なんもわからん。そこで海洋堂の宮脇センムに連絡を入れて、オススメの沈下橋はどこですかと尋ねると「上宮沈下橋なんかがいいでしょうね」と返事があり、つまりそれは四万十海洋堂ホビー館からほど近いところにあるのだった。罠である。

 やっとこたどり着いた川の流れは例えばテレビで見るような絶景ではなく、「ふうん、まあキレイだな」という印象だったが、幅員いっぱいのレンタカーでハンドル操作を誤れば即落下のスリルを味わうのには充分だった。あと、四万十、めちゃくちゃ遠い。インターネットは北海道の大きさばかりでなく、高知もめちゃくちゃ横に長いというのを画像でコスったほうがいい。

 そこから10分ほど山道を登ったところに海洋堂ホビー館がある。四万十の山の中にホビーというのもだいぶ似合わないと思ったが、廃校をリノベーションした建物はだいぶ豪勢でまず驚く。館内には海洋堂の歴史とセンムの私物がごった煮になって、しかしうまいこと編集された状態で展示されている。

 おもちゃ収集にハマる経営者が勢い余ってミュージアムを作ってしまう……というのはこれまでにいくつか見たことがあり、「集めること買うこと自体がおもしろくて、一個一個の価値とか関連性には全然興味がないんだろうな」というパターンに陥ることもしばしばだ。しかし、海洋堂の館長(センムのお父さん)とセンムはやはりホビー狂である。ひとつひとつの収蔵品から「ドヤ!」が滲み出している。

 完成品フィギュアとか食玩のイメージが色濃い海洋堂だけど、そもそもホビーショップに端を発しているから、彼らはどうすればプラモデルが売れるかを考え、ありとあらゆる方法を試した。ニッパーなどという専用工具がひょいひょい手に入らなかった頃にニッパーを売って「これで模型がうまいこと作れまっせ」、エアブラシがひょいひょい手に入らなかった頃にスプレエースという手押しの噴霧器を開発して「これで帆船模型でもなんでもまるっと金属色に塗っちゃいましょう」とやっていたのだ。いまから50年前に、商材としてプラモデルを売るだけでなく、「どう作るか」「作ったあとどう遊ぶか」まで、ツールやマテリアルや自費出版の冊子でフォローしていたのだ。

 広い体育館に収められたフィギュアの数々はまあ、その歴史を知っている人にとってだいぶノスタルジックに映るものだろうし(かく言う私も子供を抱きながら「おお、この完成品は初めて見たぞ」などとやっていたし、海洋堂の歴史を微塵も知らない妻も「わあ、こんなものがあったのか」とバシャバシャ写真を撮っていた)、古き良き時代のプラモデルが展示されているのも、たとえばセンムが中古模型店で買ってきた値札がそのまま貼り付いているものまで含めて興味深くはある。しかし、館内をウロウロしていて「そう来たか!」と思ったのはちょっと違うポイントにあった。

 タミヤの1/48 F-35Aが、無塗装で裏返しになってガラスケースに入っている。世の中の常識的には組み上がってきれいに塗装したものをババンと置いて「こんなによくできた模型なんですよ」とか「こんなに上手に作れましたよ」みたいなことをプレゼンテーションするのが”模型の展示”だけど、これは「着陸脚の収納庫とか爆弾槽の中の彫刻がヤバいんで見ていってくださいね」というセンムのメッセージである。

 ボーダーモデルの1/32ランカスターの主翼だって、ランナーからパーツを切り離しもせず、しかし表面の凸凹がよく見える照明の位置で縦に飾ってある。パーツの陰影の向こう側からセンムの「どうや〜このボコボコが〜すごいやろ〜お前さんも作りたいやろ〜」という声が聞こえてくる。

 この他にも海洋堂製品のランナーとか、中古で買ってきた古今東西の飛行機模型のランナーがもう壁一面にガーッと貼り付けてあって、だいぶ盛り上がる。誰かが作ったプラモデルは「誰かのもの」だが、組まれていないプラモデルは「自分のものでもあり得る」ということがビシバシと伝わってくるのであり、これはつまり私が常々完成品の写真よりもランナーの写真でもってプラモデルの魅力を伝えようとしているのと同じなのだなぁと勝手にシンパシーを抱く次第である。

 結局のところウチの息子はフィギュアやプラモが充満したガチャガチャした空間に怯えっぱなしで、そのへんの草や木の手触りや、あとオマケでお土産にもらったカラのカプセルに夢中。当然四万十の記憶だって残らないだろう。でも、いつかいきなりその手でニッパーを握り、私のよく知らないプラモデルを勝手に組んだりするのだろうと無責任に期待をかける。そのときに「キミ、まだ物心がついてないときに日本でいちばんオモロいプラモデルの展示空間を見に行ったんだぜ」という話をしたい。旅行の先に、プラモデルはさまざまなカタチをして潜んでいる。四万十に行った際には、ぜひ海洋堂ホビー館へ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

世界最強戦車エイブラムスのありえたかもしれない進化系。アミュージングホビーのエイブラムスX!

 王道なようでいて、ちょっとニッチなプラモデルをよくリリースしているのがアミュージングホビーです。ホビーショーのブースでも、こりゃあアミュージング……という新作発表でよく我々を沸かせてくれるメーカーで、とくに日本ではガルパンのフェルディナントやARL44(フランス)の戦車を作ったことでおなじみです。

 今回出てきたのはエイブラムスX。カクカク&センサーコテコテなデザインで、まさに絵に描いたような未来の戦車です。じつはこの戦車、エイブラムス戦車の製造元であるジェネラル・ダイナミクス社がデモンストレーション用に実際に製作した車両です。

 ポイントはエンジンがディーゼルハイブリッドに変わり、パワーのあるモードや静粛性に特化したモードとハイブリッドエンジンならではの走行ができたり、砲塔に人が乗らずに横並び3人(現行は車体と砲塔合わせて4人)になったりと、それまでのエイブラムスの面影を持ちつつも、センサー部分が各所に配置されたり(防護システムやHMDで全周見られるようにするシステムのセンサーがあるようです)、真ん中に3ハッチできるなど外見に変化が現れています。

 もちろん、一番の変化は砲塔でしょう。シルエットからして変化があって、このエイブラムスXがいままでのエイブラムスと違う! と一発でわかる部分になっています。

 参考に、こちらはライフィールドモデルのM1A2エイブラムスのキット。エイブラムスXは前面装甲がギュッと小さくなっていて、天面がスロープになっています。M1エイブラムスの素の形状は、後部の弾薬庫と人の入るハッチ、乗員の目となるセンサー窓と、役割がはっきり見えますね。

 まさに近年のキットらしい部分として、オプションパーツに3Dプリントのパーツが入っています。銃身先端の多孔な部分はたしかに3Dプリンターの強みがでるところでしょう。機銃弾帯のカーブも同様に3Dプリントパーツのいいところかもしれません。

 センサー類がクリアーパーツなのも今らしい作りです。最終的に見える部分は少しでも、クリアーにしておくことでそれっぽく再現できるように、ユーザーに委ねています。

 金属パーツも豊富で、砲身もアルミ挽き物だし、エッチングパーツも付属しています。中身がめちゃくちゃ豪華なんです。

 キットの組み立てはパーツがシンプルでじつはとても簡単なのですが、履帯と足周りだけはちょっと頑張る構造です。サスペンションが動くわけではないので、割り切って固めてしまえばスピードアップできます。

 ここまではよく知っているエイブラムス戦車です。アミュージングホビーのキットはピッタリパーツが合って本当に組みやすい。

 しかし上部を組み立てると知っているところと進化しているところが混在していて、実車の写真以上に理解が進みます。サイドスカートはあまり変わらないけど、下部の切り方と塗装で実車は見事に化けています。

 銃身はプラパーツも入っています。しかし金属&3Dプリントパーツは精度がすごい。

 砲塔をつけるとまさに未来の戦車の完成です! 

 なにかパーツがまだ余ると思ったら、きみは……謎のドローンではありませんか。こんなオマケまで入れてくるアミュージングのサービス精神に乾杯。

 結局、エイブラムスXは採用には至らず、現在のエイブラムスを発展させるM1E3というコードのついた戦車を開発中のようです。すべてをガラッと変えようとしたエイブラムスXは、ありえたかもしれない未来で終わってしまいましたが、パッケージのように、実際に採用されたら……? ということを想定した塗装で作っても面白いでしょう。

 こうしたプランで終わった夢のアイテムも立体化してくれるからこそ、アミュージングホビーは何かやってくれそうな、面白く注目すべきメーカーなのです。現用、大戦問わず面白いアイテムが揃っているので、何か気になるアイテムがあったらぜひ手に取って楽しんでください!

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

ロボットプラモの足元を超簡単に汚せる最強塗料「Mr.ウェザリングペースト マッドイエロー」

 キャラクターモデルの青や赤といった派手な足元のカラーにも負けないナイスな塗料。それが「Mr.ウェザリングペースト マッドイエロー」です。これを塗って余分な塗料を落とすだけで、カッコ良く足元に砂汚れを施せます。

 瓶の蓋を開けるとかなり黄色味が強いです。この色だからこそ、派手な足元の色にも負けません。Mr.ウェザリングペーストは泥や土、砂汚れを立体的に施せるように設計されたペーストです。Mr.ウェザリングカラーの姉妹アイテムとなっています。

 ペーストの濃度はMr.ウェザリングカラー専用うすめ液で調整できます。僕は伸びをさらに良くしたいので、ほんの1滴だけ加えます。薄め過ぎるとペーストの意味が無くなってしまうので、ほんの少量で良いです。

 汚したい部分にペタペタと塗っていきます。粒子感あるまさに砂や土と言った塗料。写真でも細かな粒子が確認できますね。

 Mr.ウェザリングペーストの特徴が、乾燥すると色が1段明るくなるということ。瓶の中の時よりも黄色味が少し落ち着きます。この乾いた状態の雰囲気が最高なのです。ここから余分なペーストを落とすのですが、このように完全乾燥してから塗料を落としにかかった方が作業しやすいです。

 ペーストが乾いたら、メラミンスポンジで上から下方向(重力方向を意識しています)へと塗料をこすり落とします。もうこれだけです。メラミンスポンジの細かな目が塗料をランダムにこすり落としてくれます。

 完成!! スポンジがひっかかるパーツの角などにいい感じにペーストが残り、非常にメリハリある汚し表現が出来ます。ガンプラやキャラクタープラモの足元にめちゃくちゃ相性が良いので、ぜひMr.ウェザリングペースト マッドイエローをお試しください! 最高ですよ。それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ワンコインで大満足!/グリーンマックス製、保線区車両のプラモデル。

 ごきげんよう。たまごんだよ。
 令和になってもう6年も経っちゃった。そういえば「ワンコインランチ」を売りにしているお店も減った気がするなぁ。最近は物価高のせいで気軽に買い物や外食ができなくて悲しいよね。500円で満足できる体験、探すとなかなかないもんです。

 しかし、この令和の時代に、まさかのワンコイン以下で楽しめる鉄道模型があるのです。それがこちらの「グリーンマックス 保線区車両」! 見慣れない・聞き慣れない車両だけど、お客さんを乗せて運ぶような車両ではなくて、鉄道の命である線路の点検や交換を行う、とても重要な役割を持った可愛い車両なのです。このキット、なんと税込440円!実売価格だと400円を切るお店もあったりと、まさしくワンコインランチのような気軽さで楽しめるプラスチックモデルなのです。

 ランナーはたった1枚。梱包されている姿からも分かるように、とにかく起伏のないパーツたちが並んでいます。多くの鉄道車両は四角い箱のような形をしているため、自分で組み立てるタイプの鉄道模型では平たいパーツたちを箱状に組み立てることで立体的にしていくのです。このため、真っ平らなランナーの組み立て式鉄道模型は「板キット」と呼ばれていたりするよ。

 自分で組み立てる鉄道模型って敷居が高いイメージがあるけれど、なんたってワンコイン!失敗を恐れず気軽につまみ食いできるのがこのキットの素晴らしいところ。丁寧にゲート処理をして、流し込み接着剤で貼っていくよ。

 成型色がオレンジ色なのでそのままでも良い雰囲気になるんだけど、今回はもう一手間加えちゃおう。組み立てた状態でつや消しスプレーを吹いてから、手すりや車輪に筆塗りで色差しをしてみるよ。Nゲージサイズ(1/150スケール)なのでなかなか細かい作業!呼吸を止めて集中だ!

 組み立てに1時間、塗装で2時間ほどと、晩ごはん後の息抜きモデリングにも最適!ディスプレイモデルなので走行はできないものの、ちょこんと置いておくだけで癒されちゃうね。

 グリーンマックス社から発売されているキットは、実は鉄道車両だけでなくストラクチャーキット(鉄道模型を盛り上げる建造物など)も充実していて、何より安いのが嬉しい!模型屋に行った際には、ぜひ鉄道模型コーナーも覗いてね。ふぅ〜、おなかいっぱい。ごちそうさま!

たまごん

ごく稀に真面目にプラモデルを作るらしいが、基本的には酒の力を借りながら夜な夜なミキシングでモンスターを生み出す等の活動に力を入れている。

どこで止めても完成しているプラモデル/PLAMAX 機首コレクション 泉野明 with アルフォンス

 「バルキリーのコクピットから前だけ」をプラモデルにしてきたPLAMAXの機首コレクションに、『機動警察パトレイバー』のイングラム1号機が加わった。泉野明のフィギュアと、胸像(+左肩だけ!)のアルフォンスがセットになっていて、ハンガーで愛機を見上げる情景を楽しめる。はっきりと見せたい情景が固まっているので、ロボットプラモというよりもジオラマに近い。

 可動ロボットプラモではなく固定ポーズなので、どこのパーツが何になるのか分かる外装部分と、パッと見では何のパーツか判別できないメカメカしさを持った内部構造のコントラストがめちゃくちゃ楽しい。眼にあたるカメラの部分のディテールをよく見ると左右非対称だったり、メッシュホースが実機の可動を妨げないよう這っていたり、頭部を動かすシリンダーが絶妙な角度で成形されていたりするのは組んでいて驚きの連続だ。

 このプラモの危険なところは、思わず塗りたくなるディテールが随所に盛り込まれていることだ。外側から見えるダクトのメッシュにスミ入れをすればそれだけで「うわ、プラモデルを作っているな!」という気分になるし、頭部を動かす6本のシリンダーに金属色を塗っていると「めちゃくちゃプラモ作ってる感じがするな!」と高まること間違いなし。手元にある筆でチョイチョイ塗るだけで量産機の”イングラム”ではなく、相棒たる”アルフォンス”になっていく感覚……と言っても大げさではない。

 「結局、我々はこういうのが好きなんだよな」と思わず独り言を言ってしまう。説明書どおりに組んだらこの姿にはならないのだが、機構部やカメラをチョイチョイと塗って、複雑なディテールのところにはスミ入れをするだけでもだいぶ盛り上がり、仮組みをしては「え、これってちゃんと完成させるよりカッコいい状態なのでは?」とニヤニヤする。内部フレームが動いてナンボ、そこにディテールがたくさん入っているからリアル……みたいな話ではない。設定画にあるディテールを拾い、1/20というスケールだとどうしても見えてしまうところをちゃんと設計していくことで自然とにじみ出る「メカバレの美学」がここにはある。

 なんとも魅惑的なシリンダーたちも、首を取り巻くカバーのパーツを上から被せればほとんど見えなくなってしまう。「中身もちゃんと再現されているので、整備中の風景を作りましょう」……なんて野暮なことは言わない。いつどこで手を止めてもカッコいいイングラムがここにあり、そして完成しても腕や下半身はそこにない。未然に至る道程の楽しさと、完成のその先に広がるイマジネーション。機首コレクションシリーズは、まるでサモトラケのニケのようにあなたの想像力を掻き立てるのだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

安心と楽チンと楽しいがいっぺんに手に入る最強の撹拌マシン「LACHOI ミニボルテックスミキサー」

 塗料を置いて押すだけ! それだけで攪拌完了なのです!!!

 最近、僕がペイントをする上で手放せないアイテムリストに新しく加わった最強のマシンがあるので紹介させてください。「LACHOI ミニボルテックスミキサー」です。シンプルで省スペース、そして僕がメインで使用しているシタデルカラーやファレホにシンデレラフィットする受け口がまさに奇跡、って感じの撹拌マシンを手に入れました。シタデルカラーと同じくらいの大きさの容器まで攪拌できます。

 臭いが少なく、速乾、水だけで希釈が出来る手軽さから重宝しているこれらの塗料(水性エマルション塗料)。その乾燥時間の早さゆえ、あまり空気に触れないよう、塗料を出す時は撹拌スティックなどを使って塗料を混ぜるのではなく、ビンを思いっきりよく振ってから使用するのが良いとされています。

 塗り分ける箇所の多いモデルの完成間際、とにかくいろんな種類の塗料をとっかえひっかえ、ぶんぶんと腕を振りまくっていると、なんなら軽く汗ばんでいる時がありました。そんなところに現れたのがこのアイテムだったのです。

 すんごいぴったりサイズ。この撹拌マシンを使ってムラなく気持ちのいい塗料でペイントするためのステップはとてもシンプル。てっぺんにビンの底を押し当てて、グッと押し込むだけ。押し込んでいる間だけ振動し続け、「ヴィイイイイ」といいながら、分離した各種成分をいい感じに撹拌してくれます。僕が使用しているのは振動スピードが固定されているタイプなので、設定すら必要なしです。

 こんなに下側に顔料が溜まっています。久しぶりに使うシタデルカラーでも、30秒もしないうちに分離がなくなって、気持ちよくペイントできちゃいます。

 30秒押し付けるだけでこの攪拌っぷり。素晴らしい仕上がりです。

 底面に貼り付けるシリコンのマットも付属しているので、机の上にしっかりと固定できます。

 撹拌するために鼻息を荒げながら「これでもか!」と腕をぶんぶんしまくっていましたが、めちゃくちゃ楽になりました。使っている様子もちょっと、ラボ感みたいなのがあってカッコいいのもミソで、なにより楽しいんです。

 安心と楽チンと楽しいがいっぺんに手に入る最強の撹拌マシン、「LACHOI ミニボルテックスミキサー」の紹介でした。みなさんも良きペイントライフを!

むっちょ

平成2年生まれ。水性アクリルボーイ。ボーイと名乗るには厳しい年齢になりだしている。模型の他にゲームも大好き。

俺プラモのフォトブック/富士フィルムで憧れのオリジナルハードカバー写真集を!

 マッド・マックスな荒廃した世界が訪れても良いように、電子制御がないと動かないクルマではなくキャブレターなど電気いらずのカラクリで作動するクルマを手にしておくべきでは……。なら、やっぱV8だよな〜。と、今なお妄想はかどる厨二病な私ではありますが一児の父としてもそれなりにやれている2024年。

 親子モデリングを含めてプラモが日常になるなか「カッコ良く写真を撮る」が嗜みのひとつに。自らの行いが写真でブーストされた際には「俺スゴい!」が爆発します。ただその後、写真を眺めるのはスマホが一番手軽な反面、デバイスが必須であることが制約的にも感じてしまう。データでの保存は便利だが一本槍な状況にも不安がある。やはり物理でもほしい。そこで今回目をつけたのが富士フイルム公式『FUJIFILMプリント&ギフト』を活用した「俺プラモのフォトブック化」です。

 富士フイルムのフォトブックはPCのWEBブラウザアプリに写真をアップロードしていき、直感的な操作でページにレイアウトできるカジュアルさ。写真の縦横比の変更、拡大はページに貼ってから自由にできるので写真の選択に悩むことは少なかったです。見開きにでっかく写真を置けるのが嬉しい。今回は「ハードカバー」の「こだわり作成」を選択。A5相当のサイズで16ページだと価格は3,500円ほど。あこがれのハードカバー装丁でオリジナル写真集を作れるなら高くはないなと。

 そもそも富士フイルムのフォトブックを知ったきっかけは「そろそろ子どもの写真をフォトブックにして!」と妻にせっつかれたから。なまじAdobeのソフトを使ってきたので億劫になっていたところ「富士フィルムのフォトブック注文ソフトがリニューアル!さらに使いやすく!」とのニュースが目に止まりました。使ってみると動作も工程も軽いこと軽いこと。なによりも、DTPソフトを持ってなくてもハイクオリティな印刷物をつくれるのは皆が嬉しいはず!

 余白をまったく作らない「裁ち落とし」というレイアウトもできるのも嬉しい。ただ、削除されるグレー部へコマを充分に広げておかないと余白がつくられてしまいます。削除の目安となるグレー部に少しでもかかれば裁ち落としになるというわけではなさそう。今回の反省点。

 レイアウトにこだわらずとも写真を並べるだけで充分にグッときます。テキストを入れられるのでキットのプロフィールだけ置いておきました。プラモをつくって写真撮って、デジタル現像してSNSへ放流して自己肯定ライジングするまでが一連の楽しみでしたが、定期的に俺プラモのフォトブックをつくるという楽しみが追加されて嬉しい!プラモに限らずですけども、自画自賛な写真が撮れたときには物理のフォトブックをつくるのもなかなかの愉悦です。みなさんも、是非。

>富士フイルム公式『FUJIFILMプリント&ギフト』

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

選び放題の豊かな艦船模型の世界になった今だからこその「入り口」は、「艦船模型製作の教科書2.0」にお任せください。

 はじめて艦船模型を作る人にとってのバイブル『艦船模型製作の教科書』が、近年の新しい潮流の艦船模型を取り入れて、2024年3月『艦船模型製作の教科書2.0』としてバージョンアップして帰ってきました!!! 

 「2.0」と言っても初代より難しいこと・高度なテクニックにチャレンジするのではなく、近年の艦船模型を題材に、「はじめて艦船模型を作る人への入り口」として編集されています。まずは組んでみよう! 組み立てにおいて絶対に知っておいてほしいポイントなど塗装仕上げ前の段階の解説から踏み込んでいます。また艦船模型が店頭でどのように販売されているのかという、ショーウィンドウ的体験ページもあります。初代艦船模型製作の教科書よりも、より1歩手前から始まるのが本書最大の特徴なのです。本書の後半は「テクニックのみに特化したTips集」となっているので、ここだけ知りたい! って人にもとても役にたつと思います。

 今回、私はアオシマ文化教材社からリニューアル版として発売となる高雄をメインに製作。このキットは、既存キットに完全新規パーツの装備品をセットしたバージョンになっています。新旧が融合した、多くの人におすすめしたいプラモデルです。模型の組み立ての基本から、よりパーツを綺麗に組み立てるポイントなどを解説しながら、新しい高雄を完成させています。

 初代「艦船模型製作の教科書」は、およそ10年前に発売されました。その頃は艦船模型の細密化が一気に進んだ頃でした。既存のパーツと交換するだけでじゅうぶん精密にできる、というアイテムや、キット自体が高密度なディテールをもったプラモデルがラインナップされたのです。

 またこの時期に模型雑誌作例も精密化へと一気に進んでいき、どれもがまるで本物かのようなものばかりが誌面に並んでいたのでした。

 しかし当時ホビージャパン編集部にいたフミテシ氏は「艦船模型はそのまま作っても楽しいし、かっこいい。普通に作る楽しさ、入り口の本が作りたいんだ」と、時代の流れに逆行しているかのような言葉と共に、艦船模型製作の教科書チームに私を引き込みました。

 艦船模型の入り口としての本ということで、箱の中にあるパーツだけを使用する作り方、ちょい足しでカッコよくできるプラ製ディテールアップパーツの使い方など、艦船模型に躓かずに楽しめるHow to本が「艦船模型製作の教科書」なのです。こちらはタミヤの傑作艦船模型「1/700 阿武隈」の製作途中写真。

 このキットのHow toで撮影した枚数は、なんと1200枚。入り口となる本というのも初めてで、とにかく手あたり次第、一挙手一投足を撮る。自分にとっては次の工程がイメージできても、初めて艦船模型を作る人にとってはもしかしたら工程が飛んでしまっているかもしれない……そんなことをイメージしていると自然と撮影枚数も膨大になっていたのでした。

 ここだけではなく、全体で各モデラーからすごい途中写真が集結。おかげさまで『艦船模型製作の教科書』は、基本からちょっと手を出してみたいところまで、技術が詰まった本になりました。

 結果的に、その翌年から艦隊これくしょん、艦これのブームが来て、にわかに艦船模型が盛り上がりを見せました。そこからこの書籍を手に取っていただけたようです。全部が詰まっている本だからこそ、胸を張っておすすめできます。

 そして結果的に、はじめての人が艦船模型を手に取ったときに、困らないような作り方も必要だよね、という動きがメーカーでも加速します。フジミの艦NEXTは、キャラクタープラモデルのように、接着剤を使わないで組めて、かつ組むだけで色分けも済んでいる、という仕様になりました。艦EASYという、既存のキットにシールで色分けを、というシリーズもあって、迷彩塗装の瑞鶴甲板を貼るアイテムもありました(これが意外なまでにうまくいったものでした)。

 またいっぽうでヤマシタホビーのような新たなメーカーの誕生やピットロードの躍進などもあり、キットの”ほどよい”精密化という流れもありました。ただただパーツをバラバラにするのではなく、うまく整理しながら近年のレベルのパーツ成型を施していくという方向性です。

 ほかにもピックアップしたいのが2009年に新パッケージになっているハセガワの青葉です。青葉も2007年に発売されたキットで、ハセガワの艦船模型の上品で流麗なところがよく出た、キレイなキットです。こちらを「艦船模型製作の教科書2.0」では缶スプレーと筆で仕立てました。パーツの合いがいいキットなので、甲板を別にして組む、という2010年以降の艦船模型ならほとんどでいける技を実践しています。

 現在の艦船模型は、箱の中だけのパーツで既に超高解像度なプラモデル、そこそこ解像度が高いもの、シルエットを優先して組みやすいもの、プラスチックの色とシールで色分けがなされているものと、初代艦船模型製作の教科書を編集した頃とは世界が大きく変わりました。だからこそ最初のコンセプトである「艦船模型の入り口」としての本が再度必要だよねとなったのです。結果的にほぼリニューアルし、「2.0」という名にふさわしい内容になったと自負しています。

 上の写真は2012年の頭に、どれだけ艦船模型のパーツに寄れるだろう、とテストで撮影したものです。これは本番では使用していない、本当に一番最初のショット。本当に2012年はこの仕事を皮切りに、ハードな製作をたくさんしています。秋にはガールズ&パンツァーの三凸もあり……。年初からはじまったこの『艦船模型製作の教科書』、自分にとってまさにターニングポイントとなった仕事でした。

 艦船模型の新しい時代とともに、我々も新たに本を作ることができました。読んでいると、自分もまた違う艦船模型を作りたくなってきます(じつは阿武隈を作ってしまった)。みなさまも、新しい「艦船模型製作の教科書2.0」とともに、新しい艦船模型をぜひ作ってください!

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

『サイバーフォーミュラ』のイシュザークに宿るプラモデルの設定遊びに「リアルロボット文脈のサービス精神」を見た!

 これは新マシンの発表会をイメージしたシチュエーション。アニメ本編で直接的に描かれたシーンではない。アオシマの1/24サイバーフォーミュラシリーズのボックスアートは今ではちょっと他に類を見ないくらいのサービス精神に溢れている。最新作であるイシュザーク 00-X3/Ⅱもその例に漏れないサービス満点の箱絵を用意してくれている。そのボックスアートを担当しているのは原作アニメでメカニカル作画監督を努めた重田智氏。今なら大ヒット中の『劇場版ガンダムSEED FREEDOM』のメカニックアニメーションディレクターも務める同氏による描き下ろし!…といったほうが通りがいいかもしれない。


 このシリーズのボックスアートの何が凄いかというと「組み上がるキットとは別のアレンジで描かれている」のだ。カウルの厚みとかキャノピーライン、インテークのフィンの有無とか、パッケージイラストとプラモデルは確かに同じモチーフだけど別モノ。「かつてのリアルロボットプラモデルの箱絵」がキットにないパネルライン等のディティールを加えた「盛った姿」で描かれていたように、あくまでも「箱絵はイメージビジュアルです」というレトリックのもとに描かれているのだな。

 さて、キット本体は河森正治氏による設定画準拠で造形されていて、箱横やHPに掲載されるメーカー完成見本も色やマーキングに至るまで設定画に即した仕上がり。……にも関わらず、箱を開けてデカールシートを見ると箱絵にも完成見本にも見当たらないマークが大量に収録されている。説明書にはちゃんと貼り位置が指定されているのだけれど、商品箱横の説明でこの存在にふれることもなく箱を開けるまでさっぱりわからない。このデカールをひととおり貼ったメーカー見本も、発売時点で何処にも見当たらない(!)。そういう意味ではコレもサービス精神の炸裂と言えちゃうな。

 このデカールで面白いのは、シーズン途中で動力系を刷新する劇中設定を拾ってパワーユニットメーカーのロゴが二種類入っている所。シーズン第10戦以前(シュトロブラムス社製リニアホイール搭載型)と第11戦以降(ユニオンセイバー社製水素エンジン搭載型)をデカールの違いで表現できるようになっているのだ。でもその設定自体を説明することはしない。その態度がなんだかスケールモデルっぽい(「実物がそうなっているから」に帰結するので)。そういう意味じゃ「サイバーフォーミュラの世界線で売られているスケールモデル」っぽいともいえるわけで……アレ、コレってガンプラとかでやっているリアル考証とか考察ってやつじゃない?しかもかなり濃い目の……。

 自分は設定をかじっているので「シュトロブラムス社は本マシンのもう一つの特徴であるローリングコックピット技術も供給しているので両方貼ってもおかしくないハズだという妄想が加速しデカール貼りが捗ってしまう。「シュトブラムス社は動力系以外にも技術供給しているので”supported by〜”なんだな。芸コマ!」と。

 デカールデザインは公式に起こされたものかもしれないけれど、劇中で描かれていないし箱絵とも違うし。サービス分はどこに貼るか?どれを貼るか貼らないかさえ自分で決めていいワケだ。「設定を軸足に自分で考える」楽しみへと進む導線の置き方がとても心地いい。


 さらに設定では水素エンジン実装に伴って可変展開するブースト加速装置「メッサーウィング」が使えるようになったのだけど、このシリーズは大掛かりな変形状態は別キットとしてリリースしてきた。キットにはそんな前例に倣い将来的にリリースされるであろうメッサーウィング展開状態用と思しき部品も既に(剰部品扱いで)収録されていて、まだ見ぬ後続ラインナップへの期待も膨らむ。

 ボックスアートに追加マーキング、余剰部品に至るまで「それが何であるか?」は明言しない。だからといって「続きはみなさんの自由な発想で楽しんでください」なんて放り投げ方でもない、あくまでも「サイバーフォーミュラの世界観」の枠組みを意識しながら想像を広げていける「匂わせ」の巧さが光るキット構成に仕上がっている。

 基本色が白一色のマシンなので、素組みにデカールを貼るだけでも満足度が高い本キット。その昔、キット本体とは似てるとは言い難いボックスアートを参考にイメージを膨らませて手を加えていく時代があった。劇中描写、劇中設定を起点に考察し架空のメカニックにリアリティを見出していく遊びがあった。最近では箱絵と中身が剥離するのは良くないという考え方、設定の深堀りは新規層への訴求が弱まるといった視点からそれらを当然のように内包したスタイルの商品はずいぶんと減ってしまった。

 このキットはそんなもうマイノリティと言ってもいいかもしれない「今では珍しいくらいのリアルロボットプラモの味わい」を見せてくれる。「箱絵と寸分違わぬものが入っている」のではなく、「原作設定画の再現に徹した」だけでもない「プラスチックのパーツに収まりきらない可能性」のパッケージングに成功しているといえるのだ。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

夢を形にする魔法の数字は「1/25」/amtのフォードピントとディズニーシーの新エリア

 「ニューヨークにいます」と冗談めかしてディズニーシーのレストランの写真をInstagramのストーリーズに写真を投稿した。すると「シーだ!いいな!」とすぐに何人かの友達から返事が来て、世界的なテーマパークの影響力の大きさに驚いた。そんなディズニーシーに「ファンタジースプリングス」という新しいエリアが近々完成するらしく、その模型が先日公開された。スケールはまさかの1/25スケールだ。

 1/25という数字は、プラモデルを作る人間からすればアメリカのプラモデルメーカーが貫いたカーモデルの縮尺でもある。1インチ、つまり25.4ミリを1ミリに変換するという、理由を聞けば思わず膝を打つその数字がディズニーランドの建設に使われているという事実に思わず、何か共通点を探したくもなる。

 1/25というスケールはなにもカーモデルの専売特許というわけではなく、もともと計算が簡便なので建築模型でもよく見られる縮尺。「新しいエリアの模型は1/100、1/50、1/25……と、徐々に実寸に近づくように作る」というアメリカのディズニーランドに関する2019年の記事を見つけられた。

 最後が1/25である明確な理由は見つからないが、全体のプラン(1/100)、より詳細な形状(1/50)、そして人間のサイズ感や実際の質感に至るまで詳細をシミュレートできるスケール(1/25)として捉えられているようで、パークにある景観を作るための素材は1/25モデルをスキャンして拡大してパーツごとに用意されるとある。もし新エリアの模型を見るときに手元にアメリカンカープラモを一台でも作っていたら、実際の大きさをイメージするときに大きな助けになるのではという想像が膨らむ。

 Amtの1/25フォードピント U.S.MAILバージョンは手のひらに乗りそうな小ささではあるが、サイズ感を味わうには十分な存在だ。個性的なデザインは、仮に日本で走っていたとしても外国の車だとわかる。プラモデルとして作り込まれたエンジンや、黒い艶消しのスプレーを吹くと正体を現す繊細なディテールが施されたシャーシが楽しい。作り心地に関してはエンジンをシャーシに組み込むところが面白く、こまかなステップが番号順に記載されているので、いちど仮組をしてみると「なるほどね」と思わせる工程だった。またデカールの品質がとても良く、ボディに走るトリコロールのストライプもキレイに貼れた。

 アメリカが誇る一大テーマパークは1/100スケールから始まり、1/25スケールから原寸と徐々に大きくなってその夢を形にする。豊かだったころのアメリカを象徴するアメリカンカープラモは1/25スケールにその夢をギュッと凝縮する。まるで、この数字がアメリカのものづくりを象徴する魔法の数字に見えてきたのだった。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。個性的荷物をあなたの机上にお届けします。「ファインモールド 帝国陸軍 軍馬輸送隊セット 三九式輜重車 甲」

 干物! 切いか! 貝紐! まさに花金のあてとも言えるワードがびっしり!! そんなハイテンションプラモの登場です。

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でご紹介する「花金プラモ」。今週はファインモールドから発売された「 1/35 ミリタリーシリーズ 帝国陸軍 軍馬輸送隊セット 三九式輜重車 甲」をご紹介。パッケージからも分かる通り「荷物輸送」をテーマとした人と馬の景色を楽しめるプラモデルです。

 馬1頭、人ひとり、輜重(しちょう)車1両のほかに箱や樽がわんさかセットされています。輜重という聞き慣れない言葉ですが、これは軍需物資の輸送に使用される人や馬がひく車を指し、転じて荷物そのものや輸送を行う人員・機器材を意味するそうです。

 戦闘ではなく、戦いを支えるための景色もこうやってプラモ化される。またひとつ、豊かな景色を楽しめるプラモデルが生まれたことに乾杯なのです。

 輜重車に乗せる荷物の塊がとってもファインなモールドです。荷物に布が被せられた状態を1パーツで表現しています。これだけ眺めていてもめちゃくちゃ楽しいです。うっすらと中の荷物の雰囲気が凹凸で感じられます。さらにファインモールドのプラモのすごいところは、組み立て説明書のディープな解説。荷物の固定方法の詳細さは、まるで迷路ブックを読んでいるかのよう。

 輜重車には1パーツの荷物だけでなく、樽や箱を個別でも詰めるので、その際にはこの固定方法を参考にディテールアップも楽しめます。

 そしてこちら「生物」がひしめくランナー(プラモのパーツが収められた枠のこと)。ひとめ見て、馬の装備が細かい! 荷物を引く馬のプラモ化ってこんなに細かくなるのね! って思わされます。

 馬のモールドもとってもファイン。成型が良すぎて肌ツヤ抜群。プラモパドックに登場したら間違いなく一番人気。みんなの視線を独り占めでございます。装備品を取り付ける場所やボディパーツを合わせる場所にはしっかりと軸や糊代が用意されているのも素敵です。

 兵隊さんのほうも手綱と手首が一体化されたりしていて、パーツ分割がとてもユニーク。今回、馬や人には3Dモデリングが導入されているので、より細かな細部表現や今までのファインモールドのフィギュアプラモには見られなかったパーツ分割なども堪能できます。ファインモールドにとっても新たなチャレンジの幕開けとなるプラモと言えます。

 馬、人、輜重車を堪能した後に待っているのがデザートと言える荷物。こちらに先ほどのユニークなデカールを貼っていくことで「俺は味噌樽! 俺はひじき!」とそれぞれに個性が生まれます。あなたが無効性な箱や樽に個性を与えて運ぶのです。あなたの模型世界には何を持っていきましょうか。そんなことも考えながら楽しめる素敵なプラモ。まさにパーツやデカールを眺めているだけでも花金の向こう側(土曜日)へと突入してしまいます。めちゃくちゃ最高のプラモなので、ぜひこの週末楽しんでください!

1/35 ミリタリーシリーズ 帝国陸軍 軍馬輸送隊セット 三九式輜重車 甲

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

南国の掩体に導かれ、紫電改のプラモデルが持つコク深いディテールに慄く!

 コッテリとした、しかしちゃんと繊細さの宿るディテールにハッとした。初めて出会う飛行機模型、ハセガワの1/48紫電改だ。零戦のカッコよさはわかるし飛燕や雷電といった飛行機の持つ個性はひと目でわかるけど、正直言って紫電改は「ここが紫電改だ!」という強烈な特徴がないように思えて、いままであまり魅力を感じたことがなかった。

 1歳になったばかりの息子を連れて高知に出かけるにあたり、モデルコースを考えるのはたぶん無意味だというのはなんとなくわかっていた。車に乗ればすぐに寝るし、腹が減ったらグズるし、そこがどんな場所であろうが生理現象は止まらない。それなら息子のペースに合わせて車を停め、そこで親は食べられるものを食べたり眺められるものを眺め、息子が好き放題に歩いたり砂利と戯れたりするのをそっと見守るくらいしかない。

 いよいよ東京へのフライトに向けてなんとなく意識を空港に向けていたら、寝るもんだと思っていた子供が寝ない。フライトまでの中途半端な時間を眠気で暴れる子供と過ごすのは気が重いから、レンタカーの返却予定時刻まで空港の周りをゆっくり流す。

 高知龍馬空港の北側を走る国道沿いは走り飽きてきたから、滑走路の東端をぐるりと回り込んで南側の田園地帯を走る。いまにも寝そうな子供をルームミラー越しにチラと眺め、外にかまぼこ型のコンクリート塊がポツポツと建っていることに気がつく。掩体だ。田んぼのあちこちに、戦時中に作られ飛行機を格納しておいた掩体が残っている。

 子供は滑走路東端をもう一度回り込む前に寝息を立てはじめ、親は田んぼのまんなかに建つファミリーマートの駐車場で昼食休憩。サンドイッチを右手で頬張りながら、左手のスマホでササッと調べると、高知海軍航空隊のあった土地に41基作られた掩体のうち、現存する7基が市の史跡に指定されているらしい。息子が寝るか寝ないかで走行ルートが不随意に変更され、偶然こんな戦争遺産に導かれる……というのはコスパ/タイパ重視の旅行の対極にあると感じた。

 水田のなかに不規則に点在する掩体を間近で眺める拠点のように建つのが前浜防災コミュニティーセンターだ。高知の海沿いを走ると大量の津波避難タワーが立ち並んでいるが、近所の防災設備や備品を格納すると同時に駐車場としての役割も果たしている。

 浅い眠りから覚めた子供を抱きかかえて屋上から眺めれば、静かな水田にコンクリの肌を晒す掩体もあれば、いまにも草木に呑まれて自然と一体化しそうな掩体もあることに気づく。それぞれに番号が振られていて、向きや大きさもまちまち。高知海軍航空隊は白菊という練習機を使ってパイロットを養成していた(そしてほどなくパイロットも機体も特攻を命ぜられた)はずだが、解説板を読んでいると、「6号掩体には紫電改が格納されているのを見たと語る住人もいる」と書いてある。

 紫電改の姿を魅力的だと思ったことはなかった。でも、いま紫電改とはどんな飛行機だったのかを知りたくなった。自分の知っていることをコンパスの軸にしても、決まった半径の円しか描けない。子供ができて、旅行に行って、まったく制御できない偶発的なナビゲーションが私を掩体に導き、そして新しい知識の軸足をもって新しいプラモデルに手を伸ばすきっかけをくれた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

そこに置けばどこでも亜熱帯/「ICMのイギリス空軍熱帯仕様パイロット」を組む!

 ICMといえば戦車も飛行機も、なんならカーモデルも(クラシックスタイルが多いけど)艦船もと「スケールモデルならなんでもやるよ!」というメーカーなのですが、嬉しいのはフィギュアを絡める展開をしてくれているところ。自社の製品に並べて楽しめるよ! というフィギュアセットを多く発売しているメーカーなのです。

 100%とまでは言わないけど、かなりの率でこの「フィギュアと車輛や飛行機を並べられる」という展開をしてくれている気がします。今回紹介する「1/48英国空軍パイロット(熱帯仕様1941-1945年)」も、自社の英軍機に合わせた展開ですし、1/32や1/48の航空機に合わせたフィギュアのインジェクションキットはとても貴重なので新作発表されるたびにワクワクするんですよねー。

 箱を開けてみると一枚のランナーに納められた5体分のパーツが。1/48だからランナーも小ぶり。ICMはスケールが違えどディテール再現のためには1/48でも1/35クラスの分割をしてくれるのは嬉しい限り。

 腕が別パーツなのはポーズ替えの改造には楽でよいし、足も左右分割されてるから靴のモールドやズボンの細かいシワもしっかり表現されてて原型のディテールを再現しようとするメーカーさんの努力をヒシヒシと感じます。

 特にこの右手の飛行帽なんかはステキ。スケール的に一体成型されてるから強度がある。別パーツにするのは可能だったと思うけど、そうすると接着面積が小さくて強度不足になるからこういうカタチにしたんじゃないかなーとか考えて楽しめます。

 パッケージの通り、パイロット×3と整備兵×2というセット。組み立てはちょっと小さいものの、ゲートをちょいちょいと処理したらぴたぴたっと組めます。ワンセットあれば飛行機プラモを用意さえすればジオラマが作れそうです。

 本当はICMの英軍機プラモと合わせて写真撮りたかったけど、手持ちは未組み立てのものばかりなので残念。でもこうしてハセガワのハリケーンの前に立たせるだけで、ブリーフィング中な情景があっという間に生み出せます。見上げてる姿だから味方の機体が帰還してくるのを見守ってる感じにも見えるね! ちょいと地面を作って合わせたくなるフィギュアセット、オススメです。

内藤あんも

1977年生まれ。戦車道とスピットファイア道を行き来する模型戦士。生まれ育ちは美濃の国、今はナニワ帝国の片隅でプラモデルを作る日々でございます。

あなたのお気に入り塗料の引っ越し先はすぐ目の前にあった/使い終わった溶剤のボトルは最高の物件です!

 プラモの塗装を楽しめば楽しむほど空っぽになっていくのが「溶剤」。そして思い出はいっぱいになっていきます。いつも何も気にせず処分していた容器ですが……これ再利用できるやんって40歳になって気がつきました。

 こちら、模型塗料メーカーとしても最大手のGSIクレオスが発売しているうすめ液のボトルです。うすめ液というのはその名の通り「塗料を薄めるもの」。筆塗りする時に伸びを良くしたり、エアブラシで塗料を吹き付けるために薄めるのに使用します。その溶剤を入れておくボトルやビンなので、塗料への耐性も考えられています。模型用塗料の耐性がしっかりしているボトルやビンを一から探すのは結構大変。だから使い終わったボトルって実はお宝だったりします。

 溶剤の中でも超強力なのがツールクリーナー。プラモのパーツも溶かすほどのパワーです。その溶剤にも耐えうるように作られているので、この中に大量に作り置きしたい塗料を入れてもへっちゃら。スパーキングしません!!

 今、水性塗料筆塗りの下地塗料として超話題の「ガイアノーツ メカサフ HEAVY」。これをすぐにエアブラシで塗装できる濃度に希釈しておいて保存したい時、使い終わったボトルがとっても便利なのです。

 そしてそれを可能としてくれるのが、こちら。「GSIクレオス うすめ液 大・特大ボトル用 Mr.注ぎ口キャップ」です。これをボトルに取り付けるだけで、蓋を開けることなく、つまみを捻るだけで塗料を適量出せます。空ボトルが、この帽子を被っただけで転職しちゃうんです。

 攪拌ボールなんかも入れておくと最高ですね。これで使う前に振れば、中の塗料もしっかりと混ざります。

 空のボトルに塗料を入れる時、希釈率がイマイチわからない! ってときは焦らずに「移す塗料のビン」を活用しましょう。もし満杯の状態の塗料をすべて空のボトルに移したら、ビンに同じ量のうすめ液を入れて、ボトルに注げば1:1ですね(主に塗料1:溶剤1の割合が良いとされています。やってみて自分の好みの濃さを見つけてみてね)。すでに何回か使って、減っている塗料でも、ボトルに注ぐ前におおよその塗料の量を目で見て覚えて、塗料をボトルに移し終えた後に同じくらいの溶剤をビンに注いでからボトルに移せば、大体1:1で割れます。

 あとは軽くシェイク。キャップのつまみが閉まっていることを確認してからシェイクしないと、注ぎ口からスパーキングするので気をつけてください。

 今日から君は「メカサフ HEAVY」だ!! よろしくな!!

 特にこのMr.ウェザリングカラー うすめ液(大)に使われている250mlボトルは、とっても使い勝手の良いサイズでオススメです。使い切ったボトルを全部取って置くとそれはそれで邪魔ですので、いい感じにセレクトしながら再利用すると良いでしょう。サフやお気に入りの白、あなただけの勝負色などを大量に保管してみてね! それでは〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデルで味わうイケおじのバラエティーアソート/ミニアートのウェイター詰め合わせ

 ブルボンの人気のあるお菓子の詰め合わせパック、「バラエティーアソート」です。いっぱい入っていてお得感がすごいのです。アルフォートはビスケットのザクザクした食感とチョコレートがマッチして最高だし、しっとりソフトクッキーは優しい甘さが口の中にふわっと広がってたまらない……。コーヒーを飲みながらそうやって味の違いを比べるのも楽しいです。

 さて、こういったバラエティーアソートはお菓子界だけのものではありません。「1/35 ウェイター フィギュア4体入」は、なんとミニアートのいろんなセットに入っているウェイターを集結させたプラモセットなのです。お店で見かけた時は全員イケおじの贅沢っぷりに驚きました。

▲ワイン……じゃないです

 このワインボトルなんだかデカくない? って一瞬思ったんですが、瓶めいて見えるのがランナー(パーツが付いている枠の部分)で、先端に付いている蝶ネクタイがパーツでした。ちっちゃ!

▲トゥンク……

 組んでみると美しく上品な佇まいが現れました。洗練された仕草でワインを注いでいくセクシーな様子、熟練した技術とワインへの愛情、セクシーさ、そして客に対する心配り、セクシーさが感じられます。

 自分で組んだウェイターを眺めながら、コーヒーとブルボンのお菓子を味わいました。アルフォートの上品な甘さとコーヒーの苦味、イケおじの渋みがよく合って最高です。コーヒータイムにぴったりのプラモ、あなたもぜひ組んで、上質な時間を味わってください。

森砂季

模型の挫折を繰り返したのち、ウォーハンマーとの出会いでアクリル筆塗りの手軽さと楽しさに目覚めたペインター。
サイズが小さめなプラモとガレージキットが好き。

マックスファクトリー 太陽の牙ダグラムの集大成的全部盛りプラモ!「ダグラム ハングライダー装着タイプ」

 ダグラム専用形状のハングライダー、バキュームフォームの翼、そして通常のヤクトダグラムにも組めるパーツ、まさにマックスファクトリー製ダグラムキットの集大成! これを作らずして真実は見えるか!?

 『太陽の牙ダグラム』はリアルロボットブームの1981年に放送が開始され、長くて4クール1年のアニメが多いなかで、異例の全75話(1年半)という放送期間になりました。長期間ならではの起伏に富んだストーリー、番組終盤の大きな打ち上げ花火的展開として、ダグラムはハンググライダーを装備し空から急襲をかけるのです。

 ダグラムは飛翔し、声に出して読みたいコンバットアーマーNo.1「サバロフAG9ニコラエフ(さばろふえーじーないんにこらえふ)」と激戦を繰り広げ、見事に太陽の牙チームは作戦を成功させました。”EXODUS”という曲がかかるなか、ミュージックビデオのような鮮やかでスピード感あふれる映像に、テレビの前で度肝をぬかれたのを覚えています。

 おなじみダグラムにハングライダーが装着。なんと翼長46cm。ハングライダー装備はソルティックもありましたが、翼の形状もポールの形状も違っていて、新規パーツになります。このバージョンではリニアカノンが外されていますが、パーツとしては入っているので、そちらでも組むことができます。

 マックスファクトリーはダグラムをキット化するたびに成形色を変えています。今回はハングライダーの緑系にマッチした薄い銀色と赤みの薄い濃い紺の渋い色合いになっています。

 バキュームフォーム(とっても薄いパーツを作るのに適している技法。熱して柔らかくしたプラ板と型の間の空気を抜くことでプラ板が型に密着。プラ板がパーツの形状の型と密着することで、薄いパーツが成型されるという原理。ガレージキット(少量生産の自作キット)やプラモの改造、ゼロから造形するときに同じ形のパーツを軽く仕上げるのに昔から使われてきたテクニックで、薄くてキレイな透明パーツを作るのにも向いています)の翼はカット済みでポールのダボにピッタリ合います。ふわふわした翼が、組み立てるとしっかり保持されるのは、設定もすごいしプラモデルの設計もすごい。

 通常のバックパックのパーツ(右)と比べてみると、左右下側にある出っ張りにハングライダーの固定位置が重なっていて、この出っ張りってハードポイントとして考えることもできたんだ、とダグラムのバックパックへの考察が40年越しで増えるのもダグラムファンにとって興味深いところ。

 ハングライダーダグラムは物語の終盤で登場する、物語の集大成的な装備です。主役のクリンが物語序盤にソルティックのハングライダーで飛んだことなど、まさに走馬灯のように思い出される展開。ダグラムのロボットをあらかたキット化してしまったマックスファクトリーもまた、アップデートパーツを基本とした全部盛りの集大成的なダグラムを飛ばしました。みなさんもEXODUSの熱い歌詞とともに、ダグラムプラモデルを突っ走ろうじゃあないですか!

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

ルーペとピンセットで超人的細密さの組み立て体験を/ピットロードの鵜来は「プラモデル作りの期末試験」だ!

 とってもシャープな滑り止めの彫刻や、アンカーチェーンの立体感!1/700の鵜来型海防艦は「これぞピットロードの味濃いめな艦船模型」の面目躍如でございます。パーツのフチもギンギンにシャープだし、艦上構造物を接着するための土台となる出っ張りがカチッと設定されているので組みやすそう。しかーし、このプラモデルは全長11cmくらいしかありません。とにかく小さくて、こまかい。

 鵜来型20隻の微妙な差異を表現するために機銃をはじめいくつかのパートが選択式になっていて、なにをどう選び、どこに取り付けるのかが説明書で詳しくフォローされています。魚雷発射管や強力な大砲こそないものの、沿岸警備や艦隊援護のために対潜装備を中心としたさまざまな要素がぎっちりと詰め込まれているので小さくとも組みごたえは圧倒的。

 まず絶対に必要なのがよく切れるニッパーとヘッドルーペ(拡大鏡)です。肉眼では見えないレベルの緻密な造形も、でっかくして眺めると「うおー、ちゃんと組み合わせられるように設計されている!」と驚くはずです。

 組み始めるとわかるのですが、どれだけパーツが細密でもちゃんと組めます。取り付け位置がしっかりと設定されているし、コンマ数ミリのかみ合わせでもビシッとノリシロがあります。少量の接着剤で慎重に組み上げるのが楽しいのですが、パーツをつまんで所定の位置に持って行くには先の尖ったピンセットが必須です。単装機銃の取り付け基部だけが説明書で図示されている形状と実際のパーツで異なるため、「どうやってくっつけようかな……」と悩むところですが、どうしても難しければ取り付けなくて済む個体を選ぶのもひとつの手。

 組み上がった姿はこのとおり。小さいからってパーツ数が少ないわけじゃないので、言ってみれば「超緻密な工作ができるかどうか」の期末試験みたいな内容です。特殊な作業はいっさいなくて、切って貼るだけ。でもその「切って貼る」の限界を味わうなら、この鵜来はとてもチャレンジングなプラモデルです。

 すべてのパーツを貼り終えたら、誰に見せても「うわ、細かい!」と驚かれるはず。おおらかに楽しみたい人には倍寸の1/350モデルもありますが、「世の中にはこんなにこまかい(でもちゃんと組める!)プラモデルがあるのか……」というベンチマークとして、1/700鵜来はだいぶ衝撃的な体験なのでした。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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