設定画こそ本体!/「スペースコロニーに真面目に向き合う態度」のプラモデル。

 「人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった」と言わんでもわかりますね。買わなきゃいかんと思っていたのにまだ買っていなかったプラモデルにバッタリ出会ったので買いました。ウェーブの「スペースセツルメント」です。耳慣れない名前ですが、要は『機動戦士ガンダム』シリーズで親の顔より見たスペースコロニーの原案、「オニール・シリンダー」を立体化したものです。もともと物理学者が大真面目に考えたデザインですから、直径、長さ、回転数に至るまでガッチリ決まっています。そこにリアリティ(=現実味)があるから、ガンダムだけではなく数多くのSF作品にほとんどこのままの姿で登場しています。

 カタチがカタチですから、そんなに複雑なパーツ分割がどうこうとか、驚くべき仕掛けがあるとか、そういう類のプラモデルではありません。三枚の陸地と三枚の採光窓が設けられた長い円筒を組み、そこに光を取り入れるためのミラーがあり、先端部には農業や漁業を営むためのプラントがリング状にくっついている、という形状を再現しています。しかも点対称なデザインですから、大きめのパーツは同じランナーが3枚ずつ入っていてそれを組み合わせることになっており、まあなんというか、ごくシンプルで「組み立てる面白さ」に対する期待感はそこまで感じられません。

 どっこい、付属の「製品開発用設定資料集」を読むと、みるみるうちにこのプラモは面白さが倍増していきます。スタジオぬえの宮武一貴氏(関わった作品は『宇宙戦艦ヤマト』『超時空要塞マクロス』『聖戦士ダンバイン』などなど……きりがないので知らない人はwikipediaを参照されたし!)によって描かれた「いまオニール・シリンダーをプラモデルにするならこれくらいのことを考えてカタチを決め、ディテールを彫刻しないとだめでしょ!」と言わんばかりの”設定”がモノクロ12ページに渡ってギッシリと掲載されています。プラモデルひとつ作るのに、こんなに……と言いたくなるほどの濃厚さ。本格家系コロニーです。

 このプラモ、箱には「NONスケール(縮尺は特に決まっていませんよ、の意)」と書いてありますが、オニール・シリンダーは遠心力で重力を発生させ、安定した大気組成や姿勢制御を実現するために「直径5マイル (8.0 km)、長さ20マイル (32 km)」と相場が決まっております。宮武氏はそれをごくあたりまえのこととして、「じゃあ全長18cmの模型にしたらスケールはこれくらいで、表面にこういうディテールが入っているとそれは実物で◯◯mくらいの大きさになるよね。模型的にはいいけど、現実には絶対に有り得ないよね」と論理を組み立て、それに見合ったイラストを描き、びっしりと注釈を書き入れています。

 オニール・シリンダー、じつは2個でワンセット(回転によって生じるジャイロ効果を相互に打ち消すために逆回転するコロニーを連結する)という構想なので、これがひとつだけ単独で宇宙に浮いているのは「ダウト」です。でもみんなが知っている「スペースコロニー」をみんなが知っているカタチで手もとに置いておきたい。じゃあどうするのがベストだろうね?というのをすっごく真面目に考えた人が世の中にはいる。その思考をまとめて読める(単一シリンダーでの姿勢制御にも言及されているのだ!)。ああ、素晴らしいじゃないですか。

 「正直表面のディテールは凹んでいるより出っ張っている方がまだリアルだと思うけど、それも模型的に盛り上がるデザインに過ぎないよ(本当にオニール・シリンダーを建造したら、おそらく表面は限りなくツルツルに見えるだろうよ)」というのをわかった上で眺めるSFチックな彫刻。そしてそのままパチパチと組んで現れるのは意外性もなにもない、いつものスペースコロニーのカタチ。でもキットのなかに副読本があるおかげで、あなたは人より少しスペースコロニーに詳しくなれるのです。人類の未来は、もしかしたらこういうところから切り開かれるのかもしれません。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

編成はコピペでも俺のギャングだ/ウォーハンマー40kよりネクロムンダのOrlock Gangを作る

 「10×CITADEL MINIATUERS」って書いてある箱を開けると多すぎるパーツ。何が多いかよく見てみると武器を握った手のパーツがとにかくたくさん。

 ウォーハンマーの中でもギャングたちの構想を描いたゲームであるネクロムンダを始めようと思ったので、Orlock Gangを購入したらあまりの武器のバリエーションの豊富さに驚きました。これ、武器ごとにコストが割り当てられているのです。それを計算して自分なりにミニチュア一体一体の装備を考える。そうして規定のポイントに収まるようにギャング全体の編成を考えていって、ゲームに使うことになります。

 しかし編成を考えるのは結構大変です。何せゲームをプレイしたことないのに考えないといけないから。有効な武器や面白い武器がわからない……でも、今すぐこのパーツをランナーから切り離したい!というわけで今回は海外サイトに載っているおススメ編成を真似してみました。

 編成を真似するってことは、要はコピペです。自分で考えていないので、それほど愛着もわかないだろうと思っていました。しかし、そんなことは全然ない。同じ武器でもポーズが違うパーツが用意されているからです。

 くぼみに腕の付け根をはめ込んだあとに多少ズレていても接着剤で問題なく取り付けられます。そこに肩のアーマーをかぶせれば接続部分はまるっきり隠れてしまう。こんな風にいろいろな武器を割と自由に取り付けられるボディの工夫が本当に頭の良いプラモデルです。

 「作ったらメンバーの名前を考えてください」ってウォーハンマーストア神保町で言われて、最初はピンと来なくて番号でいいかなと思っていました。ただ、作っていく中で色々なポーズを考えて組み立てたギャング達のことを考えるとしっかりと名付けずにはいられません。

 文字情報でしかなかったおススメ編成をプラモデルとして組み立てていく中で、ギャング一人一人に個性が生まれるのは他のプラモデルにはなかなかない体験。顔も10種類が2つずつ用意されているので選び放題。組み立て終わったので塗装して初めてのゲームプレイに備えようと思います。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。この週末は「プラモになった子供たち」と遊ぼう/AKインタラクティブ 子供フィギュア少年セット

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週はどんなプラモとも仲良くなれちゃう「子供たちのプラモデル」をご紹介します! ひと箱で6人の特徴ある少年たちが、あなたのもとにやってくる。

▲ランナーは3枚。パーツ分割にトリッキーな部分は無く、シンプルなプラモです

 軍服や一昔前の服装では無く、今の時代でも目にする服装をした子供たちとなっています。釣りや読書、ペンキを塗っている少年などポーズはそれぞれユニークなものとなっているので、お好きな模型の側に添えるだけで、あなただけのストーリーを生み出せます。

▲服装もそれぞれ異なっていて、シャツとか普段僕たちがよく目にする服がプラモになっています
▲釣竿は手と一体で成型されているので、組み立て簡単!
▲人形を抱いた手も、人形と手が一体成型。胴体パーツに貼るだけでポーズが決まります
▲バケツとトランペットだけは別パーツになっています

 スケールは1/35ですが、子供たちをそんなスケールに閉じ込めておくなんて勿体無い!! あなたのお家にある全プラモと合わせて、ガンガン遊びましょう!

▲「これ、兄ちゃんが塗ったんだぜ!」「兄ちゃん、かっこいい!」
▲「いい音奏でるじゃねぇか! 踊ろうぜ」「ぽー」
▲「俺、好きな子できたんだ」「慌てて釣るなよ」
▲「昔から人が読んでいる本を覗いたもんじゃ……」「迷惑!!」

 兵隊さんやアニメキャラだけじゃ無く、「どこかにいそうな普通な人」のプラモがどんどん増えています。今回ご紹介した子供たちは、あなたのインスピレーションをとっても刺激してくれること間違い無しのプラモです! ぜひこの週末、子供たちと思いっきり遊んでくださいね。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

一番使う塗料のお宿に。「ハイキューパーツ DPボトル」

 希釈した模型用塗料をハンドピースのカップやペーパーパレットなどに手早く移せるだけで、プラモの塗装は超快適になります。それを可能にするハイキューパーツの「DPボトル」を今回ご紹介します。模型用に開発されているので、一般的なラッカー塗料への耐性もありますよ(強力な溶剤などの使用は推奨していません)。

▲あと2個で願いが叶う!! 5個の弾が入っているので攪拌もしっかりできます

 セラミック製の攪拌用の球が最初から入っていて、蓋も片手でパカっと開閉可能。塗料を注ぐことに関してのすべてが備わっています。高密閉容器ではないので長期間置いておくと少しづつ揮発しますが、使ってみた感じ不便な思いをしたことはありません。50mlを選択しているのは、ちょうどいい感じに使い切れる量だから。使い切ったら再度足す……の繰り返しで使っています。

▲キャップをパカっと開ければ、片手で注げます。超便利。手も汚れません

 僕にとってこのボトルは、最強の「クリアーコート」系塗料の基地となっています。最近はクリアーコートに関してはラッカーと水性を併用しているので、溶剤耐性もあって手軽に注げるDPボトルが欠かせません。デカールを貼る前の光沢コート、仕上げのつや消しとコートするたびに塗料をいちいち準備していたのですが、その工程ともこのボトルのおかげでおさらばできたので、一気に塗装スピードが上がりました。

 たかがボトル。されどボトル。しかし、よく使う塗料のためのボトルというのは模型塗装において大きな力をあなたに与えてくれます。

▲クリアーコートとか、サーフェイサーなどよく使うものを入れておくとすぐに使えて便利!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

森の中で休息する海兵隊/ミニアートのプラモデルと涼しい秋に出かけよう。

 今年の夏はヤバかったですね。9月末になっても暑くて暑くてイヤになりました。この暑さを吹き飛ばすようなさわやかで素敵なプラモデルでも組みましょうか。

 ミニアート1/35アメリカ海兵隊〈休息中〉です。ボールを投げようとしたり、ゴロンと転がったりとリラックスした姿の兵士が4体入っています。ナイスガイよくばりセットすぎやしませんか。

 ちょっとたい焼きのパリパリしてるところみたいになってますが、いまはゆるーく作りたい気分なのであまり深追いしない方向で作ってみます。ニッパーと流し込み接着剤とカッターでささっと組み立てました。ズボンから飛び出した手袋が小さめなので、そこは慎重に貼りました。

 完成したところでちょっとひらめきました。海兵隊ナイスガイ達を屋外で撮ったらかわいいのでは……と。立たないとやりにくいかなと思ったので、ウォーハンマーのベースに両面テープで貼ってお出かけしました。

▲海兵隊なのかい? 妖精なのかい? どっちなんだい?

 この人たち、自然でいい芝居がつけられていて、ウットリしてしまいますね! 鍛え抜かれた肉体に優しい微笑み。誰もが魅了されるに違いありません。あなたもそうでしょう。うむ。それが小さなまま外の風景と混じり合うことで、コロポックル海兵隊が爆誕しました。

▲ラグビーボールを投げるアニキ

 かわいすぎますね! 妖精って本当にいたんですね! 人のハートに軽率にパスを送るセクシーなフィギュアです。

▲ははーん。これは無防備な姿でドキドキさせるタイプのですな。罪作り。
▲存在感すごい

 日本版コティングリー妖精事件化すると困るのでそろそろ撤収します。草と小さいプラモを一緒に撮るのはめちゃくちゃ楽しいので、みなさんも是非是非やってみてください。ではまた。

森砂季

模型の挫折を繰り返したのち、ウォーハンマーとの出会いでアクリル筆塗りの手軽さと楽しさに目覚めたペインター。
サイズが小さめなプラモとガレージキットが好き。

タミヤ新作、護衛艦「もがみ」のプラモデルにスナップフィットが使われる理由。

 全日本模型ホビーショーでいちばん意外な新製品だったのは、タミヤのもがみでした。左右の壁が上すぼまりになっている海上自衛隊の「もがみ」は、その内部にある構造物を再現しようとすると、先に構造物を組んでから左右の壁をそれぞれ貼り合わせるしかないように見えます。しかしタミヤは「上部が開口された船体を一体成型して、下から構造物をハメる」というコペルニクス的転回でこれを解決していたのです。すご!

 上の船体はまるっとワンパーツで、そこに4つのブロックごとに組み立てた構造物を下からはめ込むという仕組みです。しかもですね、固定するのに接着剤を使いません。下からブロックを入れると「カチン」と音がして、決まった位置に固定されるのです。いわゆるスナップフィットというやつですね。塗装後に合体できるのも制作の手順がシンプルになりそうで最高。

 艦底側から見たところです。最終的には喫水線の面にあたるパーツでフタをされるのですが、下から押し込んだ各ブロックが船体側面内側にある小さな爪に引っかかって落ちてこないようになっています。各ブロックが、上下方向だけでなく前後方向にもカタカタ言わずにピシッと収まってくれるのは衝撃的。

 開発スタッフによれば、「すべての構造物を1ブロックにまとめて最後にハメ込む設計も原理上は可能だけど、船体パーツの収縮率(プラモデルは金型から出てくるときに冷えて縮みます)と構造物のブロックの収縮率が違うので、最終的な寸法をぴったり合わせるのが難しい」とのこと。あえて構造物を4ブロックに分割して決められたスペースに押し込むことで、微妙な遊びをお互いが打ち消し合う……という”ミクロレベルのおしくらまんじゅう的な原理”でカチッとした位置決めが可能になったのだとか。微妙にズレた位置に貼ってしまうと上下前後に隙間ができる可能性がある「接着」をあえて使わず、ベテランでもノービスでも確実にキレイに組めるようにするための「攻めのスナップフィット」だというのです。

 ステルスマストの四方から伸びるフラット(横棒)も水平垂直がビシッと出るようにスライド金型を使って一体成型。たしかにこれをプルプルしながら正しい角度で貼るのは難しいもんね。ただし、船体下面からマストをはめ込む際はこの細いパーツを折らないようにちょっと注意が必要だなと感じました。このプラモ、スナップフィットや一体成型を使っていると言っても決して「初心者向け」と間口を狭めているのではなく、むしろ「ベテランでもノービスでも必ずうまく組めるようにする」というタミヤのイズムがしっかりと流れています。

 海上自衛隊のもがみ、すでにピットロードという会社が同じ1/700スケールでプラモデルにしているし、カクカクしたシルエットは模型的に美味しい「ごちゃごちゃした感じ」にも乏しい印象です。しかし、タミヤにはタミヤらしい組み味があり、それを体験するために組みたいなぁと思わせるプラモデルです。同社のウォーターラインシリーズにおける完全新規開発アイテムとしては6年前に発売された「島風」以来の進水。さあ、みんなもアップデートされた護衛艦を組んで、最新のタミヤの手腕を感じてください。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

戦車と共に進撃する歩兵たちの姿がありありと刻まれたレジェンドプラモ!「タミヤ 1/35 ドイツ陸軍 歩兵 進撃セット」

▲「戦車に乗った歩兵」のフィギュア、実はMMではちょっと珍しいんです

 タミヤの製品も含め、古の戦車模型は元々モーターで走るのが前提でした。が、1968年のミリタリーミニチュア(MM)シリーズの登場によって、タミヤは「戦車だけではなく乗員やその周囲の兵士や小物なども含めて模型化し、それをディスプレイする」という画期的な遊び方を提案しはじめます。この斬新な遊びの面白さをプレゼンするため、箱や説明書には兵士の服装や装備についての詳細な解説を掲載したり、写真コンテストを主催したり、人形を改造するコンテストを開催したり、とにかく全力でさまざまな施策を打ち出しました。

▲まるで映画のポスターのような濃厚なパッケージアート

 と、いろいろやっているタミヤですが、意外にも「戦車に乗った歩兵のフィギュア」が発売されるまでにはそこそこ時間がかかりました。MM最初の商品は「ドイツ戦車兵セット」でそのものズバリ戦車兵のキットですが、「戦車のおまけとして砲塔に立たせる戦車兵」以外のフィギュアは、実のところさほど発売されていないのです。

 これはちょっと意外です。というのも、戦車の後ろに歩兵を乗せて進撃するという戦闘スタイルは、洋の東西を問わずいろいろな国の軍隊で一般的なものでした。戦車は視界が悪く索敵能力に限界があるため、隠れた歩兵や砲兵を素早く発見するのが苦手。また、こういった小粒な敵を素早く制圧するためにも、随伴して行動する歩兵は必須です。

 「だったら戦車の上に歩兵を乗せちゃえばいいじゃん」というわけで、戦車跨乗兵(タンクデサントともいいます)というのは現代でもしばしば見られるポピュラーな存在となりました。第二次大戦中のソ連によるタンクデサントの多用は有名ですが、別にソ連に限らずあらゆる国で見られた戦術です。「フィギュアと戦車を組み合わせて遊ぼう!」というコンセプトをプレゼンするには打ってつけだと思うんですが、これを再現したキットはなかなか発売されませんでした。

▲ちょっと使い道がわかりづらいキットだと思ったのか、説明書には「こうやって遊んでね」という参考例が掲載されています

 そんな戦車跨乗兵のキットがタミヤからようやく発売されたのは、1975年のこと。その名も「ドイツ歩兵 進撃セット」。この1975年はMMにとってすさまじい年でして、この年だけでおよそ27点もの新製品が発売されております。嘘だろ……。この「進撃セット」も、まさに絶頂期を迎えたMMのノリにノったテイストを味わえるキットとなっております。

▲現在のタミヤのキットらしいパーツ配置とは違いますが、これはこれでシステマチックな感じがするランナー

 ランナーは二枚。当時のタミヤのフィギュアは現在のような「フィギュア本体のランナー+汎用装備品ランナー」という構成になっておらず、フィギュアと装備品のパーツが同じランナーに配置されております。しかしヘルメットならヘルメット、ライフルならライフルが集中して並ぶ配置には、独特の美学も感じますね。

▲この下半身のむちむち感! 劇画だ!!
▲この良い意味での彫刻のクドさが、MM絶頂期の味なのです!
▲よく見るとこの人だけ首元のボタンを外している! 芸が細かいですね〜

 パーツを見るとさすがに時代を感じますが、この頃の劇画っぽいクドめの彫刻はこれはこれで見ていて楽しい。全員きっちり制服を着こなし、足回りもジャックブーツと、70年代における「無敵ドイツ軍」的イメージを具現化したようなフィギュアたちです。

▲戦車と組み合わせるとこんな感じ。賑やか!
▲この、狭いところにミチミチに歩兵がしがみついている感じ! めっちゃいい
▲地面にいる人たちは「物陰から攻撃のタイミングを伺っている歩兵」としても使えそう
▲車体の上に寝そべって正面からの面積をなるべく減らそうとしている人など、ポーズは全体的に緊迫感があります

 やはりこのフィギュアセットは、戦車と組み合わせてこそ光り輝きます。ちょっとポーズは大袈裟ですが、全員の視線が前方に向いて揃うことで意外なほど緊張感が漂っております。ある者は砲塔の後ろに隠れ、ある者は銃を抱えて戦車の影から前方を警戒し……と、戦闘を控えたピリピリした空気が伝わってくるようです。砲塔の後ろに歩兵がゴチャッと乗ることで戦車のシルエットに変化が生じているのも面白いポイント。車両単品では出せない、緊張した雰囲気はこのキットならではです。

 というわけで、50年近く昔のキットながら、ピリリとしたムードが楽しめるこのキット。まさに絶頂期のMMらしい、数を重ねたことによる表現力の高さを窺わせる内容でした。小さな兵士たちと映画のポスターのようなギトギトした箱絵を往復すれば、脳内に戦車と共に進撃する歩兵たちの姿がありありと思い浮かぶはず。昔のキットではありますが、単に古いキットと切り捨てるには惜しい魅力のあるアイテムです。

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

「少女発動機」に相棒がいれば二人で最強だし、バイクらしさが分かる!/タミヤ Kawasaki ZZR1400

 イラストレーターのAF_KURO氏による、近未来都市をサイボーグ少女たちが最速・最強を目指し駆ける……という世界観から、その少女の一人がフィギュア化されています。以前から『少女発動機』と銘打たれたこの世界観のファンであった私は、氏の同人誌を眺めて嘆息をついていたのですが、その立体化の報を聞いて迷わず予約したのでした。

 走行ポーズは後ろ姿がかっこいいです。背中から覗くエンジンと、接地性抜群の足先タイヤがポイント。機械とひとつになった彼女のデザインには、人馬一体ならぬ”人機一体”となるマシン、「バイク」と通じるものがあるはずです。私はバイクのことはよく知りませんが、少女発動機ならここにあります。彼女と見比べながらバイクプラモを作れば、バイクのことが分かるし、大好きな彼女のことはきっともっとよく分かります。

 最速・最強のサイボーグ少女と並べる相棒なら、それに負けないパワフルなモンスターマシンがいいでしょう。いかつい見た目のKawasaki ZZR1400にします。4つ目のヘッドライトが只者ではない雰囲気です。

 メッキのマフラーとランナーが立体的にうねっています。排気がすごい=エンジンが強い=最強!

 胴体に納める大きなエンジンです。彼女の背中からも大きなエンジンがのぞいています。どちらも肝心かなめの動力源が体のど真ん中にあります。

 前後のタイヤの太さが全然違います。コントロールの前輪とパワーの後輪と推察します。彼女の足先と見比べると、片足に複数のタイヤがついていることに気づきます。つま先側(前側)が小さいタイヤ、かかと側(後ろ側)が大きいタイヤです。こんなところも同じなんですね。

 もっと観察するため、彼女の配色を参考にZZR1400を塗装します。人型の彼女とバイク、どこがどこに相当するのか考えます。例えば両脚はもちろんタイヤ周辺です。頭の2本の角はどこでしょう? ここはフロントカウルからにょきっと生えるミラーとそっくりですから、同じ色にします。

 現実のバイクから彼女のような架空のデザインに変換されるとき、”バイクらしさ”が抽出されるのだと思います。共通点を探すことは、すなわち“らしさ”を見つけることなのです。

 並べて飾ると最高です。組立説明書にはキットの周辺知識が紹介されているのですが、ここの最後の一文を引用します。

“あらゆる状況において最高のパフォーマンスを発揮する、世界最強・最速を目指したカワサキの新世代フラッグシップがZZR1400なのです。”
(タミヤ 1/24 Kawasaki ZZR1400 組立説明書より)

”最強・最速”を目指す「少女発動機」の相棒は当然”最強・最速”なのでした。このキットを選んだことの答え合わせがされたようで、私にとって彼女たちがますます最強の二人になりました。

シンガジ

90年代生まれ。父の影響でガンダムが好きになる。
最近はガンプラ以外にも興味あり。

全日本模型ホビーショー会場で模型の達人に教わった「極太ランナー」の活用法!あなたも今日から瓦礫名人。

▲海外生産のプラモでよく見られる四角い断面の極太ランナー。これ、めっちゃお宝です

 2023年9月30日、10月1日と東京ビッグサイトで開催された「全日本模型ホビーショー2023」の会場で、マシーネンクリーガーの原作者である横山宏氏(以下横山さん)からとっても楽しいテクニックを伝授してもらいました。それは「ランナーから瓦礫」を秒速で生み出す方法です。これであなたの地面も今日からさらにカッコよくなっちゃいますよ。

▲全日本模型ホビーショーの海洋堂ブースにて展示された、横山さん製作のキュスターのディオラマ。無造作にばら撒かれた瓦礫がめちゃくちゃかっこいいのです

 会場で横山さんのディオラマを見ていると、まさかのご本人登場! 「フミテシくんさぁ、この瓦礫めっちゃええでしょ。これ、誰でも簡単に作れるから、フミテシくんもやってみて。画像今あげるから」。と速攻でiPhoneのAirdrop機能で画像を送ってもらいました。それを見ると、マジで簡単な上に、すごく楽しそう……。そしてプラモアニキすぎる大胆さも最高な技でした。

▲極太ランナーをザクザクと切り刻むだけ!!

 海洋堂のキュスターのように、海外生産のプラモの中には、金型にしっかりとプラスチックが流れるよう極太のランナーが採用されたりします。じはこのランナーがお宝。プラ棒とかを買ってこなくても、これを好きな大きさにカットしてばら撒くだけで、瓦礫が完成するのです。太いランナーを見つけたらぜひ真似してください!

▲カットしたランナーをばら撒きます。横山さんは瓦礫がランダムに配置されるように、豆を撒くみたいに本当にばら撒くそうです。考えて配置するよりも自然になって最高とのこと
▲ばら撒いた瓦礫をプラ板の床に固定するために、注射器にツールクリーナーを入れて、直接ぶっかけます。そうするとプラスチックが溶けて勝手に固定されるとのこと。大胆すぎる!

 上の方法で、ディオラマのアクセントになっている瓦礫ができるなんて……。こんなの見せられたら模型好きのハートが疼くってもんです。早速僕もキュスターの極太ランナーで同じようにやってみます。

▲ランナーをザクザク。大きいものから小さいものまでランダムにカットし、流し込み接着剤をドシドシと瓦礫の間に流して固定!
▲グレーで塗装。破壊されている瓦礫ですから、筆ムラなんて気にしない。むしろムラがあった方がらしくなります
▲足元に情報量が増えました!! 15分でこんなふうにできちゃいます
▲兵隊さんを立たせれば、さらにそれらしくなりますね! 超楽しい

 模型のパーツが収まっているランナーを活用するテクニックはさまざまあります。いつもならポイと捨ててしまうものも、こうやって瓦礫に変身! 身近なものを活用するアイディア、着眼点というものは模型を楽しんでいる分だけ養われるのだと改めて知りました。まだまだプラモ製作には楽しいアイディアがありますね! このようなアイディアがありましたら、ぜひnippperで発表してください。みんなのアイディアでどんどん模型を楽しんでいきましょう!! それでは〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

透ける、輝く、カニのプラモデル/橘猫工業の水産箱007 シオマネキ

 カニ。美味しいですよね。何を隠そう人生で一番食べたいと思っているものは金沢おでんのカニ面(カニの甲羅に内子と外子を詰めて脚の肉で蓋をしてあるもの)です。

 メカ。かっこいいですよね。メカメカしい雰囲気があるともうそれが現実的かどうかはさておき大好物なんですよね。メカメカしさは大事。

 クリアパーツ。ロマンですよね。古くゲームボーイブロスの透明に心奪われて以来クリアなものはいつだって私の心を揺り動かしてきました。

 そんな3つのものがひとつになった100万パワーのプラモを買ってきましたので楽しんでいきます。橘猫工業さんの「水産箱007 シオマネキ ゴールドブラック」です。シオマネキは食べないから前提がくずれてるやないかい、というご意見を賜りそうですが、有明海近辺では「がん漬け」というシオマネキを潰して作る非常にしょっぱい塩辛がありますからセーフという事で話を進めていきましょう。一舐めで焼酎一杯。

 美しいパッケージに整然と並べられたランナー。いいですね。熨斗がつけばもうお中元になりそうです。完成写真がパッケージに絶対に必要かどうか、考えさせられます。ランナーは4色、クリアが2色に金と黒。デカールもついています。デカールは多分カラバリのキットで使い分けていない関係で黒字白字の2種類が入っており、余りがたくさん出るので嬉しいです。

 一目でわかる脚のランナー。ランナー丸ごと脚。タラバガニも脚だけで売ってたりしますしカニ感を感じます。カニをばらすのは経験がありますが組み立てるのは初めてで心が躍ります。「カニの目を組み立てたことがある」というのがいつか大きな財産になる。

 基本的にはカニにちょっとメカメカしいパーツを組み合わせてあげる感じ。固定モデルなのでパーツ数も少なくあっという間にカニになっていきそうです。せっかくなのでちょっと手を加えてあげます。憧れのカニ面も出汁の取り方から身の詰め方まで細かい作業が光りますからね。金はギラギラに輝いてほしいので塗装します。他の成型色はとってもきれいなのでそのままで。クリアも黒もいい光沢です。

 綺麗だよ、ハサ美(名付けた)。アクセントにちょっとだけ銀色も入れてみました。もっとピカピカにしたいならトップコート吹いてやすりやコンパウンドでピカピカにしてもいいですね。スケスケでピカピカのカニ。カニにデカールを貼るのも楽しいですね。曲線に合ういい感じに貼ってあげましょう。

 面白いモチーフでしかもピカピカのクリアパーツのプラモがお手頃な値段で楽しめる。よいシリーズです。もっと展開してほしい。いつかハサ美を連れて金沢おでんを食べに行こう。その時まで棚から見守っていておくれ……。

いち

16の頃に別れたプラモデルと36で再会した82年生まれ。

敵は空にあり!!!人の目線が伝える物語。「タミヤ アメリカ自走対空機銃 1/35 M16 スカイクリーナー」

▲人のプラモを添えると景色が生まれます! 今回もひと癖ある楽しいアニキたちのお話です

 タミヤの戦車模型「ミリタリーミニチュア」は、戦車&装甲車両と“人間のプラモ”のマリアージュによって多くの人々を魅了してきました。ここでご紹介する「M16 スカイクリーナー」に搭乗するフィギュアたちは、その楽しさをストレートに僕達に伝えてくれる素晴らしいプラモです。アニキたちの視線や体の動きによって、彼らを添えるだけで「空への緊張感」がその空間に現れます。

▲大きく体を捻り上空を見上げるアニキ! 顔もとても険しい表情をしています
▲顎をしゃくり上げて、何かを伝えようとしているオペレーターアニキ

 M16 スカイクリーナーは、M3A2ハーフトラックに4連装対空機銃を搭載した車両です。対空機銃の中にはしっかりとガンナーもセットされます。彼の目線からも、空からくる何かに対して集中している雰囲気がビンビンに伝わってきます。

▲熱視線!!! ちらっと見えるだけですが、こういう演出がプラモの世界をさらに楽しくさせてくれます

 そして、スカイクリーナーにアニキたちを搭乗させると、素晴らしすぎる景色が切り取れます。それが下の写真です。

▲全視線が空へと集中!! 緊張感が半端ない!!
▲トランシーバーのアニキと、ドライバーの組み合わせのバランスが本当に最高です

 フィギュアの造形はノスタルジーを感じるものですが、それぞれの演技がとても濃いことで、空に対する緊張感が僕らに迫ってくる、ブレないドラマが車両の中で生まれます。単品の戦車や装甲車両の模型だけをポンと置いても、このような景色は生まれません。アニキたちの演技があるからこそ、さらに車両が輝き出します。ぜひM16 スカイクリーナーをゲットして、アニキたちの視線や演技によって生まれる景色を、あなたも堪能してください。ミリタリーミニチュアの楽しさの全てが、このプラモには詰まっていますよ。

▲このM16 スカイクリーナーは、タミヤMMの面白さの全てを運んでると言っても過言ではありません。さぁ行こうぜ……エンタメの向こう側へ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

アオシマのナイト2000は、誰が組んでも笑顔になれるプラモデルだった……という話。

 誰が言ったか、「プラモデルは誰が作っても同じものができる(=だから創造性がない)」なんて言葉があります。少年たちは「それじゃあもっと創造性のあることを始めよう」などと思うはずもなく、「ナニクソ、俺は人と違う完成品を作ってみせるぞ」と思い、よりプラモデルにのめりこんでいくのでした……。

 『ナイトライダー』に登場するナイト2000というマシンは、喋って光る未来のクルマです。プラモデルでそれを再現しようとすると、まあ喋って光ってほしい。喋って光るプラモデルはアオシマから発売されているのですが、オレは「喋って光れば誰が見てもナイト2000だし、喋らせるのも光らせるのもメーカーが用意してくれた基盤を組み込む作業であって、オレがわざわざそれを組み立てる必要があるかな」と思っていたのです。めんどくさい人ですね。

 ナイト2000のプラモデルに入った基盤は、チップLEDが並び、ICとスピーカーが実装され、組み立てと配線が終わっています。あとはカーモデルを普通に組んで、ボンネットにこのユニットをブチ込めばだれでも喋って光るクルマが手に入ります。ボタン電池2個を買ってきて、準備完了。

 それ以外のところはフツウのカーモデルです。内外装の色分けはもちろん、メッキパーツや、4色のクリアーパーツが入っているゴージャスなプラモです。フロントとサイドの窓は透明、リアはスモークが入り、ストップランプやウインカーはそれぞれクリアーレッドとクリアーオレンジに着色してあるから自分で塗らなくていいのが嬉しい。

 未来的なハンドルのカタチがいいですね。左右に並ぶ光るボタンの数々は肉眼で見えないくらいの細かさですが、ご丁寧にひとつひとつを違う色で塗るよう塗装指示があります。すごく大変そうでしょ。大変なときはやらなくても大丈夫です。室内、わざわざ覗き込まなければあんまり見えないし!

 ボンネット内側にメッキパーツやクリアーパーツを組み込んでいくのですが、リトラクタブルライトの可動ギミックはめっちゃこまかいパーツを慎重に貼らなければいけません。速乾性の流し込み接着剤を使ってなるべくキレイに組みます。赤いクリアーパーツはLEDの光を劇中同様に見せてくれるはずです。

 急いで組んだから屋根のクリアーパーツがちょいと浮きましたが、ツヤツヤのナイト2000があっという間に完成しました。メッキパーツやクリアーパーツを貼るのにセメダインのハイグレード模型用を持っていると完全に勝利できます。リトラクタブルライトがカチッというクリック音とともに出し入れできるのが楽しい。サイドウィンドウがないのもアメリカ製のカーモデルっぽくてなんだか面白い。そして、スイッチオン。

 自分が組んだプラモが光って喋ります。自分がなにか特別なことをしたわけじゃないのに。じゃあ自分がこれを作らなくてもよかったのか?というと、断じてそんなことはありません。組み立てている間は楽しかったし、完成してからも楽しい。このプラモデルは誰が作っても同じものができる。だからいいんだ!と思えるのが、アオシマのナイト2000なのでした。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

キミのための面白モビリティを/アオシマの「ホンダ モトコンポ」

▲コレがバイクのカウルとはお釈迦様でも気がつくまい。

 figmaのゴールドシップちゃんをお迎えしたらセグウェイが入ってなかったんですね。figmaのR・田中一郎くんには轟天号がついてたのに!……ということでゴルシちゃんに似合うおもしろモビリティで何かないかと積みプラの中からチョイスしたのがこちら。

 1981年にホンダから「持ち運べる原付き」というコンセプトで発売されたユニークな見た目のバイク、モトコンポ。僕が初めて知ったのはOVA版「逮捕しちゃうぞ」でした。

 こちらのキット、発売日は2021年ですがパッケージには「昭和50年代の金型を使用」とあり、作ってみると確かにちょっと気になる部分がいくつかありました。

 クラッチカバーにHONDAの刻印がありますが、小さいので上下が分かりづらい。今のキットなら上下の組間違いを防止するためにダボ穴に切り欠けや凸をつけて、間違った向きではハマらないようにしますが、そういった工夫はありません。

 フェンダーステーの取り付けの正解は今もわからない。取説も昭和の手書きのままなんですね。そして取り付け位置や角度は曖昧。なんとなくで組み付けました。

 カウルをはめるダボ穴を加工すると、後ハメ(合わせ目消しと塗装を終えてからハメ込むこと)ができるようになるので、カウルの合わせ目を消したい方におすすめ。今回は合わせ目をパテで埋めたらメッキパーツの取り付けで隙間ができたりと、ちょっと失敗。皆様は仮組みしてチェックしてから作業しましょう。

 デカールは丈夫で余白もなく、とても扱いやすいのがGOOD!デカールは2色のバリエーションが用意され、ボディカラーに合わせて使い分けできます。元が古いキットだからといってまったく気が利かないわけではないんですね。安心して好きなボディカラーで塗れます。

 塗装で表面が多少ゆず肌になってもツヤありのクリアーを吹けばなんとかなる!……ということでゴルシちゃんを乗せて完成です!どうですかこのシンデレラフィット。満足そうな笑顔がステキ!ゴルシちゃん付属の握り手でそのままハンドルを握れちゃいます。なおハンドルをマッキーで塗ったら、ゴルシちゃんのお手々が真っ黒になったので、皆様は塗装しないよう注意。ごめんねゴルシちゃん。

 キット自体は古くても、完成すればきちんとモトコンポの形になります。僕は接着剤で固定しましたが、実車どおりの変形機構をしっかりと備えているので、箱型へ変形させることも可能です。残念ながら同スケールのシティのプラモデルは存在しないので、私はかわりにランチア・デルタを組んで隣に飾ります。では皆様、お手元の美少女プラモやfigmaの隣にぜひモトコンポを!

優しい人間

1988年生まれ。ニッパーを読み始めてからガンプラだけでなくミリタリーにも手を出し始めた。普段のお仕事は重機オペレーター。

憧れのブラックバードを爆速で作れるご機嫌なプラモデル。「プラッツ 1/144 アメリカ空軍 SR-71 ブラックバード」

▲1/144スケールだけど全長約22cmで作りごたえも抜群!! ブラックバードデビューに最適!!

 飛行機・飛行機模型にあまり馴染みがない人でも「ブラックバード」という言葉はどこかで聞いたことがあるかもしれません。真っ黒い機体に美しく伸びた機首、そして大迫力のエンジンという美しさの塊みたいな超音速・高高度戦略偵察機です。そんなブラックバードを、「組むだけで素晴らしい完成度を味わえるキット」をご紹介します。それが、プラッツより発売されている1/144スケールの戦闘機モデル、「SR-71A ブラックバード」です! キットのパーツは中国を代表する模型メーカー・ドラゴン製になります。

▲箱を開けたらほとんどできてる!! これだけのパーツ数でかっこいいブラックバードが完成します

 部品の表面が良い感じに半ツヤ。塗る場合だったら塗料もしっかりと食いついてくれそうな理想的な表面状態。ウェルドやバリ、ヒケも見当たらずきれい。これだけ綺麗なので、組むだけでも十分にかっこいいですね。

 特徴的な前方からの平たいシルエットも美しい。この機体は「迎撃ミサイルよりも速く飛び、偵察を成功させよ」とのコンセプトで開発された、音速の3倍もの速さ、つまりマッハ3で飛行する特殊機体(映画 「トップガン マーヴェリック」に登場するダークスターのモデルでもありますよね)。他の戦闘機には見られない特徴が多く存在します。

▲正面から見るとこの平べったさ。上から見た時とは全く異なる印象を受けます。こんな飛行機が実際にあるのですから、人類はすごいですね!

 特徴的なモールドも丁寧に成形されています。1/144と小さなサイズのキットなのに、箇所による間隔や太さの違いもハッキリしており、シャープで角のダレも見当たりません。

 各部のディテールが1/144スケールの飛行機模型でも模型映えするように、少々オーバースケール気味にメリハリあるものとなっています。そのおかげで、出来上がった時の立体感が凄まじいです。

 全パーツを組付け。なんて美しい! 降着状態としていますが、飛行状態でも組み立て可能です。この芸術的な姿を少ないパーツ数で楽しめます。SR-71が大好きな人、初めてSR 71を作る人、どちらも幸せになれる素敵なプラモですので、ぜひゲットしてください。

シンサク

1991年生まれ。模型やテニス、乗り物が好き!!

初公開のハセガワ最新作、クァドラン・ローの設計にシビレた話。

 ハセガワからクァドラン・ローが発売されます。しかも1/72スケールです。唯一発売されていたプラモデルは1/144スケールなので、その倍の大きさ……と言ってもプラモデルは体積で見るもんですから、実際どれくらい大きいのかわからない。ただいま開催中の全日本模型ホビーショーでサンプルを見てきました。

 デカい!前高259mm。しかも人間のカタチとは大きく違うフォルムのロボットなのでやたらとボリューム感があります。これがスナップフィットで色分け済みのプラモデルだというのだからビビります。
 で、この上手い造形ですよ。組んでないから組み心地についてはまだわかりませんが、どっしりとしたフォルム、なめらかな曲面はとてもいい感じに捉えられています。

 3D造形には大まかに2種類あり、輪郭線と断面形で物体を描いていく方法と、粘土を盛り削りするように作り上げていく方法があります。こういう曲面だらけの物体は輪郭が良くても断面形の変化を直感的に把握しづらいので、粘土を盛り削りするように作るのに向いています。しかし、ハセガワのスタッフによれば「飛行機と同じように、いきなりCAD(=輪郭と断面形でカタチを描く方法)で作りました」とのこと(仰天)。線と線を繋ぐとどんな面が出てくるのかを想像しながらこれを作るのはめちゃくちゃ難しそうですが、案の定「このパーツはなかなかイメージ通りのカタチにならなくて、8回作り直しました」「これは6回くらい作ったかな……」と苦労の連続だった模様。

 おもしろかったのは、「ハセガワが最近手掛けたザブングルやアイアン・ギアーとは全く違って、クァドラン・ローにはこれまで作ってきた実在のステルス戦闘機の設計と共通する感触があった」という設計スタッフの発言です。現代のステルス戦闘機はうねうねした曲面の連続で、そのプラモデルを設計するには複雑に変化する断面形を正確に推測しながらキレイに繋いでいくスキルが必要。これはもう経験とカンによるところが大きいのですが、このうねうねしたクァドラン・ローにそれが応用できたというのが「イイ話」だと感じました。

 これだけ大きなプラモデルだとふたつ合わせにした外皮がワギワギする(微妙に歪んでカチッとした感じにならないことを指す)のが心配ですが、腕や脚の内部には黒い板状のパーツを挟み込んで桁がわりとし、完成後の剛性感を増す工夫がされています。さらによく見ると、上の辺には等間隔に小さな丸い凹みが設けられていますが、これは……?

 外装パーツの端面に設けられた小さな丸い突起と噛み合うことで、グッと力を入れてはめ込んでも外装のフチがグラグラ動かないようにする工夫なんだとか!外装同士が接触する端面には凹凸の細長い彫刻を入れることで、これもお互いが噛み合って突き合わせた部分がズレないよう工夫されています。キャラクターモデルではあまり見ない処理なので、これがどれくらい機能するかを体感するのが楽しみ!

 かわいいミリアも入って出撃準備中のハセガワ製クァドラン・ロー。同社のキャラクターモデルは変化と進化の連続ですが、フォルム、組みやすさ、大きさに負けない完成後のガッシリ感も含めて期待大のアイテムです。発売は12月アタマですので、いまのうちにポチッと予約しちゃいましょう。そんじゃまた!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

マッチョな戦車模型でジャンボな楽しさをゲット!!/タミヤ アメリカ M4A3E2 中戦車 ジャンボ

▲この高荷義之氏による箱絵だけでも脳汁が出ます。マジで最終決戦

 この夏はタミヤよりミリタリーミニチュアの傑作が多数再生産されました!! そのひとつがごっついシャーマン「アメリカ M4A3E2 中戦車 ジャンボ」!! 個人的にめちゃくちゃ嬉しい再生産!! 一時期は作りたくて中古ショップを回ったほどでした。

 一度聞いたら忘れない「ジャンボ」という響き。ドリームジャンボ、ジャンボ鶴田、ジャンボ尾崎(僕の少年時代、日曜日のゴルフ中継は彼が中心でした)、チョコモナカジャンボ……俺もジャンボの称号が欲しい。ジャンボ・フミテシ……。そんな偉大な響きはゲットできませんが、プラモのジャンボはこの度ゲットできました。

 この戦車は、第二次世界大戦のクライマックスに登場したアメリカ軍の車両。アメリカを代表するM4シャーマン中戦車の装甲を強化した「突撃戦車」です。その重武装の逞しい姿から、アメリカ兵に「ジャンボ」の愛称で呼ばれます。強化された装甲でぐいぐいと前線を突破し、主力である歩兵部隊を導くのがジャンボの役目なのです。

▲ジャンボと言うけど、パーツ数はコンパクト! ギャップ萌えだぜ

 ジャンボは人気の車両でもあるので、アスカモデル、モンモデルなどからもバキバキのプラモが発売しています。こちらもかっこいいのですが、細部までこだわったキットなので製作のカロリーもそれなりにかかります。しかしタミヤのキットは、1987年に発売されたキットということもあり、シンプルな構成でサクッと組めます。しかし各パーツの成形のクオリティは充分なので、完成後も古臭さが前面に出るようなことはありません。付属のアニキ(フィギュア)だけが、昭和写真を見た時のようなノスタルジーを感じさせます。

▲「張り切り過ぎだぞ!」と声をかけたくなる、178mmという分厚さの防楯。エッジがピンピンだぜ
▲砲塔の装甲厚は152mm。普通のシャーマンの可愛い丸っこさとはおさらばした、マッチョな仕様

 ぱっと見は普通のシャーマンなのですが、砲塔が大型の一体鋳造タイプになっていたり、各装甲板がかなり分厚くなっているので、実際に組んでみると全くの別物という印象を得られます。

▲M4A3の車体に、ジャンボの装甲板を直接接着していきます。そのためにいらないディテールをカットすることになります

 ジャンボはM4A3の車体前部・側面に38mmの装甲板を溶接するという、僕達が大好きな増加装甲的パワーアップが施されています。それを追体験するかのように、M4A3の車体に、直接ジャンボの装甲板を接着していくのです。ドイツ戦車に負けないぞ! なんて思いながら、どでかい板を接着していく工程は楽しいですよ〜。

▲カットしたディテール部分はヤスリで削ってより平滑に。こうすることで前面の増加装甲もピタリと合わさります
▲車体と同じ長さの装甲板を追加! マシマシでござる
▲合体!! めちゃくちゃゴツくなりました!!

 足回りはシャーマン戦車の基本的なスタイル。地道にやっていきましょう。シンプルな構成ですがボギーを6個作るとなんだかんだ疲れるので、休憩なども入れて楽しんでくださいね。

▲足回りのパーツが収められたランナー
▲車体とのフィットは問題なし。ガタついて車体が浮いちゃうなんてことはないです
▲付属するフィギュアは、タミヤのシャーマン系キットを買うと何度も出会うことになる定番のお二人。体型や造形から、懐かしさが感じられるパーツです
▲完成!! 履帯は外側に「アヒルのくちばし」なんて呼ばれたエンドコネクターが装備されたタイプです

 キットは2時間半もあれば組み上がります。車体の成型色がオリーブドラブで、履帯が黒いので、組むだけでもこれだけ満足感ある仕上がりになります。キットそのものが、昔のキットとは言え良いので、現代のアニキたちを召喚したりするだけで、ジャンボはさらに輝きます。ぜひ最新のアメリカ歩兵や戦車兵なんかと合わせて楽しむと、何倍も幸せな時間を過ごせると思うので、合わせて作ってくださいね! それではジャンボな週末を!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ウォークライのアイアンゴーレムは塗装してみると、筋肉×金属の硬さMAXのプラモデルだった

 サーフェイサーで真っ黒にして、そこにシルバーのスプレーをかけた瞬間に「かっけぇなこれ……」となりました。筋肉モリモリのアイアンゴーレム。彼らのことを最初は”筋肉のプラモデル”だと思っていました。ただ、シルバーに塗った瞬間に”金属のプラモデル”でもある可能性を感じました。
 そして楽しく身体や鎧を塗り進めていたら、それは確信に変わりました。なにせ、塗れば塗るほど下地のシルバーは覆い隠されてしまい、魅力が薄れていってしまったからです。

 薄れていった魅力を取り戻すのはカキンとした金属らしい硬質感だと信じ、ファレホのメタルカラーのカッパーを買ってきて、使ってみることにしました。
 これ、ボトルの中に攪拌球が入っているのでかなり親切。しかし、勢いよく降ったらボトルの中身がじわっとキャップのフチから出てきて、手が汚れたのでほどほどに振ると良いです。そんなちょっとしたクセを差し引いても有り余るほどの圧倒的な金属感に本当にびっくり。伸びも良く特に薄めずに筆でキレイに塗れましたし、魅力を取り戻しておつりが来るくらいに雰囲気も良くなりました。

 アイアンゴーレムの塗装は、筋肉のギュッと肉が詰まった硬さと、金属の無機質な硬さの違いを味わうことができる楽しい時間です。また、彼らは身体のところどころに金属のとげを埋め込んでいます。これ、塗ってみるとわかるんですが筆が届きにくい奥まった部分には存在しないんです。アイアンゴーレムの8人はどれも考えられてデザインされているなと最後の最後に感心することになりました。
 塗装をするということは、指差し確認をするように対象の質感やデザインの面白さをじっくりと見る楽しさがあると気づけたので、次の塗装も楽しめそうです。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

どんな現場でも大活躍!自衛隊を代表するトラックを30分で楽しめるプラモデル/ピットロード 3 1/2t トラック

▲小さいからって侮れない! ピットロードの「1/144 3 1/2t トラック」は味濃いめでかっこいいぞ

 指でひょいっと摘めるサイズにぎゅぎゅっと濃いめのディテールを刻み、メリハリあるプラモとしてお届けしているピットロードの1/144スケール自衛隊車両。そのシリーズに、陸海空自衛隊で使用されている汎用トラック「3 1/2t トラック」がラインナップされました!!

▲キットは一箱で3両作れます

 かつては”73式大型トラック”とよばれ、1973年より自衛隊で採用。初代モデルは40年も前に登場し、現在は8代目のモデルとなっています。2003年度以降の納入分より名称が「3 1/2t トラック」に名称変更されました。本記事では愛称のひとつである「3t半(サントンハン)」で呼んでいこうと思います。

▲シャフトやシャーシのパーツは1体になっているので、足回りの組み立てでがたつくことなく、安定した足回りが完成します

 

▲組み合わせるとこの密度感。小さい模型でも満足感が十分に得られます

 冒頭でも書きましたが、このシリーズは、あえてオーバースケールにディテールを彫り込んでいて、非常にメリハリのある模型が完成します。特にキャビンは、窓やドアのディテールをしっかりと彫り込むために、あえてパーツ分割を細かくし、箱を組むように各面を接着していく分割(このようにパーツを貼り合わせていくことを”箱組み”と呼んだりします)が採用されています。

 このキャビンのパーツ精度がとっても良くて、小さいパーツでありながら、ピシピシと角同士が合っていくので気持ち良いです。

▲キャビンの左右側面。サイドミラーも一体で成型されているので、小さなパーツをプルプルしながら切り出し&接着という工程は、このキットにはありません
▲キャビンを箱組する際のコアとなる運転席パーツ。組み上がると全く見えなくなるのですが、ハンドルやシートもしっかりと彫刻されています。まさに魂
▲パーツの内側には貼り合わせのガイドもしっかりあります。ガイドに沿ってパーツどうしを合わせたら、そこに流し込み接着剤をチュンとひとさし。それだけで組み上がります
▲見てください! 1/144スケールという小さな模型とは思えないくっきりとしたディテール! 模型映えしてとてもかっこいいです

 このキットは、後ろの荷台の「幌のあるなし」も選択可能。3両入っているから、ひと箱でどっちの形態も迷わず楽しめますね。

▲幌の波打っている雰囲気もお見事
▲柵もしっかりとパーツの間が抜けている本格仕様。バリなどもなくとても綺麗に成型されています
▲どちらのパーツも床下のパーツを中心に、4面を貼り合わせて完成します。今回は幌ありとして作成。荷台のパーツの下にはサイドガードのパーツを接着します
▲30分で完成!! この組みやすさなら大量に配備してずらっと並べて遊べます

 本シリーズは味濃いめな模型を、サクッと作って味わえる「早くて美味いプラモデル」です。3t半のように、ずら〜っと揃えた景色を見たいなんて夢も気軽に叶えてくれます。ピットロードありがとう! 成型色もオリーブドラブなので、組んだだけでも良い雰囲気を味わえて良いです。週末にタイヤと窓のところだけを、マッキーで黒く塗るなんて遊び方も楽しいと思います。ぜひピットロードの3t半、作ってくださいね。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデル作りに効くマルチな固定具を手に入れた話。

 治具(じぐ)。加工作業とかの中で工具の位置合わせを行う器具の事です。挟んで固定する万力とかも治具ですね。この言葉が英語の”jig”に対する当て字だと知った時、その字の収まりの良さや漢字で見たときの日本語感の強さに何とも言えない感動を覚えて以来、好きな日本語です。治具。道具関係の言葉でいうと直角定規のスコヤが英語のsquareが訛った、というのも美しいですね。発音がいい。

 さて、以前から気になっていたタミヤさんのペインティングスタンドを使う機会があり、そのあまりの便利さに、そろそろ紙コップからの卒業かな……と物色していたところ、更に琴線に触れるものを発見してしまいましたので予定変更で買ってきました。LMGさんのAFV模型製作用ジグ LMGBB-05です。
 お察しのとおり、「治具」という名前ありきでの購入です。LMGさんはレーザーカットした木材の商品を取り扱っているウクライナのメーカー。レーザーカットされた板が入っているのでもちろん組み立ては自身で行います。プラモを組み立てるための治具を自分で組み立てる。この面倒くささこそ面白いですね。

 板にみっちりパーツが入っています。レーザーカットの商品は、塗料入れとかパズルとか色々組み立てたことがありますが、作りやすさにはそれぞれ差があるような気がします。レーザーの精度なのか、使用してる木材の問題なのかは分かりませんが抜きにくかったり、はめにくかったり。今回組んだのは板の反りなどもなく組み立てやすかったですね。レーザーの出力の所為か焦げ目が強いような気はします。

 クリップの固定部分は接着後収縮チューブで固定されていて丁寧な仕事を感じます。説明書に関していうと割と不親切というか番号とか違うのも散見されますが、パーツの形状を信じて組み立てて行って完成。組み立てるものは台座がひとつと選択式のパーツ固定部分がふたつ。固定パーツが4本のものと3本のもの。3本の方はフックとクリップの選択式です。

 さっそくこれまで使っていた紙コップから選手交代。戦車の砲塔部分を固定してみましょう。おお、文明開化。ネジで爪の位置を固定するので内側から引っ掛けるも外からひっかけるもどちらもできます。

 車体部分は4本の方で。いい感じですね。しっかり固定すればひっくり返しても落ちない程度の固定力はあるのでくるくる回しながら塗装できます。

 名目はAFV用ですが基本的にはただの棒ですので飛行機や車も固定できますね。車プラモからも紙コップくんが卒業です。

 治具という響きが好きなだけで選んだので正直値段とか機能とか考えるとタミヤさんの商品と紙コップは偉大だな、と思ったりしなくもないのですけれど、趣味の道具はいいものより好きなもの、というのが楽しく遊び続ける秘訣かなと思っております。使う度に俺は治具を使ってるぜ、と思いながらこれから楽しくジグを使う事、つまりジギング(誤用)していくこととしましょう。

いち

16の頃に別れたプラモデルと36で再会した82年生まれ。

プラモキッズの好きな要素が特濃で味わえるミリタリープラモ!/タミヤ 自走対空機銃 M16 スカイクリーナー

▲対空機銃が乗ってなくても、このかっこよさ!! ハーフトラックって最高だぜ

 タミヤがこの夏に再販したM3ハーフトラックのプラモをまだ買ってないなら、今すぐ買ってください! 再販された3種とも面白すぎる模型で、タミヤミリタリーミニチュアのレジェンドプラモだから特濃の楽しさを味わえます。特に対空機銃を装備したM16 スカイクリーナーは、SFメカなテイストも感じられてとてもかっこいい。

▲スカイクリーナーの大トロである12.7mmの4連装機銃
▲スカイクリーナーが搭載している対空機銃に関してはこちらの記事をどうぞ
▲足回りもとってもこだわりの仕様。パーツ数は多いけど完成した時の塊感は最高です

 M3A2ハーフトラックシリーズは、共通の車両パーツに、それぞれの装備品やフィギュアがセットされた内容になります。バリエーション展開できる巧みな設計と、こだわりの足回りなどを楽しめますよ。特に足回りはおよそ50年前のキットとは思えない緻密さで、エンジンから動力が前後に伝わるメカニズムが作りながら理解できたりします。

▲リヤデッキにある、ござのようなクッションと壁面に直張りされたクッション。僕の故郷にあった健康センターの壁を思い出すのでした

 リヤデッキには大きな台座があり、この部分に対空機銃をセットします。この台座が結構な迫力で、4連装もの機銃を運用するのにはこれだけしっかりとした台が必要なのかと思い知らされます。武装をポンと載せてるだけじゃないということを知れるだけでも、メカプラモでオリジナル装備を付ける時の参考になったりしますよね。

▲車体やリヤデッキは基本箱組のようにパネルを貼り合わせていきます。この精度が今のレベルでも全然問題なくて、ピタピタとパーツが貼り合わさっていきます

 シャーシ、運転席のあるフロント、リヤデッキという3つの大きなパーツで構成。車体前後を接着した後に、シャーシにかぶせるように接着します。

▲前輪はステアリングも切れまっせ! 履帯は軟質素材。接着剤を使用しないで、軸と軸穴を噛み合わせるだけのとってもシンプルな構成になっています
▲ラジエーターグリルは開閉パーツの選択式。開状態を選択するとグリル内の繊細のモールドを楽しめるのでオススメです

 本キットは、各パネルの開閉を選択できる使用になっています。開閉パーツの選択、カッターでパーツの一部をカットしてパネルを開けるという手法がとられます。どちらの状態もかっこいいので、ぜひ3種のバリエーションを購入して、開閉状態を作り分けて見てください!

▲リヤデッキに対空機銃をセットすれば……
▲この迫力!!! 最高だぜ……

 戦車模型のかっこよさは「戦車」だけじゃない! こういったトラックなどの装甲車両もすごくかっこよくて楽しいんだぜってことが、このプラモを作るだけで本当に分かります。特に今回再販された3種「M3A2 パーソナルキャリヤー」、「M21 モーターキャリヤー」、「M16スカイクリーナー」はどれも超魅力満載なプラモです。ぜひ店頭で見かけたら速攻でゲットしてください。幸せな時間をお約束します。

▲後ろ姿も最高だぜ……まだまだこのプラモは面白いよ。次回を待て!!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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ハコからツートンのBBSホイール!/プラモデルで好きになるR33の話。

 アオシマのプラモを開けたらBBS LMホイール(クロームとゴールドのツートン)を発見!これ、1/24スケールの「ザ・チューンドパーツ」では長いこと再販されていないし、そのものが入ったキットを探すとなかなか巡り会えないシロモノです。しかし漫画やらゲームやらでめちゃくちゃよく目にする特徴的なホイールなので、一度見たら忘れられない。そんなありがたいパーツが入っているのが1/32 ザ・スナップキット R33スカイラインGT-Rのカスタムホイール仕様です。「いま、まさに、オレは、これが欲しかったんだ!」と叫んでしまいました。

 それにしてもザ・スナップキットは箱を開けるたびに何かしらの発見があります。説明書に書かれたR33 GT-Rの解説文はおそらく大人向けに書かれたものをそのままベタっと載せ、そのかわりに小学生でも読めるようにふりがなが振ってあります。「ニュルブルクリンク」とか「ECUの処理能力向上」とか「アテーサE-TSプロ」といったフレーズを背伸びしながら覚え、大人に一生懸命話したりしているうちに小さなカーマニアが爆誕するという寸法です。こういうところで「子供向けの説明」にしていないところがなんだかいいな、と思います。

 いまのいままで、「GT-RといえばR34かR32でしょ」と思っていた私です。しかし、初めて組んだR33はめちゃくちゃにいい内容で、このプラモのお陰でR33のことが好きになりました。スパルタンな造形のR32、見るからにマッチョなR34との間で、R33はちょっと優雅でどっしりとした、グランドピアノみたいな雰囲気を纏っていることに気付かされます。パーツもシールも少なめで、ザ・スナップキットシリーズのなかでも屈指のスピード感で完成させられます。

 フロントマスク内側にはヘッドライトのケースやウインカー、上下のグリルとスポイラーを兼ねた「キミ、一人何役なのよ!」と叫びたくなるようなパーツがお出まし。これをバコンと嵌めるところがかなりエクスタシーです。最初は「いまいちばん見たいホイール」ことBBS LMを履かせたい一心で組み始めましたが、途中からR33のことも、このプラモデルのこともどんどん好きになって来ました。愛が生まれ、育まれていく……!

 プラスチックの色そのままでキレイなツヤのあるアオシマのザ・スナップキットシリーズですが、やはり薄い色は透け感があって軽く見えてしまいます。しかしこのキットミッドナイトパープルのように濃い色ならしっかりと重みがあり、さらにメタリックの粒子のお陰で「むしろ塗装よりいいかも!」というルックになります。リアの灯火類もシール貼って上からクリアーパーツを被せるだけでこんなにリッチになるんだからいいよね〜。

 カーモデルに興味を持つようになって、ホイールがめっちゃ大事だということに気が付きました。乗用車がほしいとき、メジャーな車種はたいていプラモデルになっています。でも街中や雑誌の写真で見かけたクルマにノーマルとは違うホイールが付いているのが気になり始めると、「同じホイールを探したい!」という気持ちが爆発します。ホイールはクルマの印象を大きく左右するパーツなんだということをしっかりと理解し、立体化してくれているアオシマのカスタムホイール仕様。みなさんも好みのホイールを探しに出かけてください。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

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「水星の魔女カラー ガンダムエアリアルホワイト」を本気レビュー!!

▲瓶の中の色味を見ると、とっても汎用性の高そうな白に見えますね。というか、このままだと他のホワイトと印象が変わりません

 GSIクレオスが水性ホビーカラーでラインナップしている「水星の魔女カラー」。こちらの塗料は、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に登場する中間色が多いモビルスーツの微妙な色合いを表現したとっても良い塗料です。そのラインナップの中で「ガンダムエアリアルホワイト」という、専用に開発された白があり、その色味や塗り心地を使って試してみました。

▲うっすらと紫のような色味が白に入っています。またざらつきにくいです

 実際にエアブラシで「塗料1:うすめ液1」の割合で希釈して塗装。瓶の中の状態よりも、塗ってみると青から紫の間のような色味が白に入っている印象でした。劇中でも青っぽい色を帯びた白となっているので、そのイメージを押し出した塗料になっています。

▲グレーのサフの上から塗装したこともあるかもしれませんが、エアリアルの成型色(左のパーツ)と比較すると色味が少々異なります。ガンプラの成型色を目指すのではなく、劇中の色味を目指そうとしているのが分かります

 このガンダムエアリアルホワイトの注意点は「隠蔽力の弱さ」です。色味は素晴らしいですが、少々隠蔽力が弱く、濃いグレーの上とかに塗ると、何度塗っても濁った発色になります。塗り上がる頃には厚塗りになってしまうので、明るいグレー、もしくは白サフか白成型色の上に直接塗装することをオススメします。逆によりグレーな雰囲気にしたい場合は、下地のグレーを透かした仕上がりにするのも良いでしょう。

▲こちらが濃いめのグレーサーフェイサーを塗った上から、エアリアルホワイトを塗った状態。塗り重ねる回数も多くなり、エッジが丸まってしまいました。色味だけでなく、塗ってみないとわからないことってたくさんあります

 ガンダムエアリアルホワイトという名前ですが、もちろんこの色味が気に入ったら他の模型に塗ってOK。あなたのイメージに合った色なら、何を使っても良いのです!

▲ガンダムエアリアルホワイトで塗ったGP01。この白は影が落ちる部分により青みが出るのが特徴です

 MSホワイトのようなグレーが入った白とは明らかに色味が異なる「ガンダムエアリアルホワイト」。白のバリエーションをあなたの引き出しに仕込ませておくことで、白いMSを塗る時の戦略が大きく広がると思います。あなたの戦略に大きな力となってくれること間違い無しなので、ぜひゲットしてください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ミニ四駆からの「塗装」の誘い/タミヤK4ギャンボーではじまる文化の秋。

 コロナ禍でプラモ復帰した派の自分です。20年ほど離れていましたが、その間もタミヤスプレーで何かしら塗っていたんですよね、自転車パーツなり遊び道具なりを。アパートのベランダにて、新聞やダンボールで養生しての屋外スプレー塗装。多少のホコリの付着はぜんぜん問題なくて、カジュアルな作業でも輝く塗装面に「DIY冥利に尽きるな」と大満足。屋外塗装するなら湿気の少ない季節がベストですし、どうせなら快晴な週末の午前中とかが気持ち良くてナイス。スプレー吹いてから遊びに出かけ、帰ってきたら仕上がりを確かめてライジングする。

 息子が喜ぶかな、と模型屋で買ってきたカスタム軽トラのミニ四駆、ボディのランナーを手にしたら「塗ろうぜ!」というタミヤからのメッセージを受信。箱絵のようにツートンカラーで仕上げるのように最適なパーツ分割になっていたのです。説明書のカラーチャートには3色のタミヤスプレーが記されていました。「老眼で細かい作業が苦になってきた田宮俊作が、気軽に楽しめるプラモデルをと考えたのがミニ四駆の発祥」というエピソードがよぎったので、今回はお気軽な自動車プラモとして接してみたくなったのです。そう、屋外スプレー塗装で。

 ボディパーツのプラスチックは綺麗なメタリックオレンジ。同色をスプレー塗装する必要もないなとも思いましたが、あえて説明書のオススメに乗っかってみます。プラ成型色もスプレー塗料もどちらも工業製品ですからね、メチャクチャ考えて作られているワケです。そのメチャクチャ考えられた結果を体感するのがプラモ遊びの醍醐味でもあるので。サッと一発吹き付けで輝く塗装面を獲得できます。同色のプラスチックへの塗装と、黒と銀という隠蔽力の強いカラーの塗装というイージー設定なので。

 まずブラックを塗ってからメタリックカラーを塗ると「オレ天才!」な仕上がりが実現するので是非。プラモ復帰して3年は経つので塗装ブースをはじめ、絶好調な模型制作環境が整っている自分ですが、今回はあえて「原点回帰/日常品活用モデリング」という縛りプレイをしてみました。独人貴族だったアノ頃に思いを馳せながら。ブースはダンボール、クリップはわりばし、スタンドは空き缶。空き缶には水を少し入れてコケないようにする。 KとUとFとU、わりとフツーに言うと「工夫」と言う。です。

 ステッカーをバッと貼って……K4ギャンボー! 俺の仕事が輝いてやがるぜ! 俺のカスタム軽トラが堂々のゴールです。ちょっと空いた時間で組み上げる事ができるカーモデル、ミニ四駆40年の揺るがぬ魅力ですね。プラ成型色での色分けで塗装しなくても大満足なキットが増えてきた昨今、あえて「塗ろうぜ!」とカジュアルキットで提案してくるタミヤのイズムを読み取った今回。「楽(らく)」で楽しいのも良いけれど、積み上げて得られる喜びも良いよ。そんな所でしょうか。

 タミヤからの工作と塗装の誘い。過酷な夏が終わり、文化の秋を肌で感じる今日この頃。貴方もタミヤスプレーでプラモを輝かせて文化活動としてみてはいかがでしょう? プラモデルのランナーをいきなり塗装しただけでも、その輝きでしっかりライジングできますよ。なりより外が気持ち良くてサイコー。

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

「タミヤ ミニ四駆クリーニングブラシ」が、ガンプラに最高な理由。

▲ガンプラの埃取り、ゴミ取りに絶妙なサイズ感とコシがある!! ミニ四駆のフィールドを飛び足しても大活躍だぜ!!

 発売した当初に一度紹介した「タミヤ クラフトツールシリーズ No.163 ミニ四駆クリーニングブラシ(ステッカー用ヘラ付き)」。こちら、ガンプラ製作に取り入れたら便利すぎて最高だったので、その体験をまとめました。これ1本あるだけで、ペーパーがけ後の削りカスの除去、塗装前の最終埃取り、撮影時のごみ取りと大活躍間違いなしです!!

▲こちらはミニ四駆クリーニングブラシよりも先にタミヤより発売されていた大きめの「クリーニングブラシ」のレビュー。こちらも併せて読んでね
▲大きめのクリーニングブラシのグリップを外すと、細部まで狙える小さなブラシが出てきます。それで良くない? っと思っているあなた。ミニ四駆用を、ぜひ使ってみてください!

 まずなぜこのブラシがガンプラに良いのか。それは、「サイズとコシ」にあります。1/144でも1/100でもどちらにも対応可能なブラシ幅と、毛の長さが絶妙です。

▲こういうディテールの中にプラのカスが詰まりますよね! このブラシをひと撫でするだけで簡単に埃を除去できます
▲またこのブラシの長さが絶妙で、パーツの奥や裏側などの埃やゴミもキャッチしてくれます

 そしてコシです。しっかりと跳ね返ってくるコシがあるので、ブラシがくにゃくにゃしません。先に発売されていた大きめのクリーニングブラシは柔らかさが特徴でゴミや埃を掻き出すのがちょっと苦手。だからグリップ内に小さいブラシがついているのですが、これだとピンポイントすぎて奥まった所にブラシが届かないなんてこともあります。

 こちらのミニ四駆用は強いコシによる「パワー」が特徴。そのため奥まったゴミや埃をどんどん掻き出せます。毛の長さ、幅も関節の奥まった箇所やガンプラの各パーツにフィットするサイズでとっても使いやすいです。ディテールがどんどん細かくなっていっている昨今のガンプラに、まさにピッタリなクリーニングブラシなのです。

▲指で押しても、ぐっと反発が返ってきます。このコシでしっかりと埃をとりましょう
▲静電気も除去できるので、塗装前の最後のゴミ処理やトップコート前の入念なごみ取りにも効果を発揮! しかもコンパクトサイズだから机に置いてあっても邪魔になりません

 クリーニングブラシはさまざまな商品が出ていますが、模型と共に歩んできた「タミヤ」が発売しているブラシは一味違います。特に塗装前なんかは、このブラシで模型をひと撫でしておくだけでも、心に安心感がもたらされます。そして何よりデザインも最高にかっこいいのです。まだ持ってない人は買わない理由はないと思えますので、ぜひあなたの机にお迎えください! それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデルの下地を活かしてキラキラフィニッシュが手に入る「GXクリアシルバー」の話!

 白いプラスチック、いいですよね。でも「そのままだとプラスチック感が強すぎる!」というときにこの一本。GSIクレオスの「GXクリアシルバー」です。シルバーなのにクリアってどういうことよ……と思って買ってきました。塗装というのはどうしても「色を塗る行為」をイメージしますが、最近は味付け的に質感を変化させる塗料が増えてとっても嬉しいです。

 フタを開けると白濁した乳液みたいなのが入っています。シルバー感はいっさいありませんが、よーく見るとキラキラした微粒子が入っています。トロミがけっこうあるのでよく撹拌してからラッカー溶剤で割ってエアブラシで吹きましょう。筆塗りは推奨しません。

 白いプラスチックの上に吹くと、みるみるうちに輝き始めます。シルバーを塗っているのではなく、あくまでクリアーなので下地の白がそのまんまなのがキモ。パール系の塗料って「よく見ると粒子感があるな」という感じがするのですが、写真に撮ると全然質感が伝わらなくて困ることがあります。対してこのクリアシルバーはハッキリとした粒子感があるので「プラスチックそのままではありません!」という主張が強い。

 クリアーなので、有彩色のパーツに吹いても色味がほとんど変わりません。プラスチックの色をそのままに、まるで市販のエクストラフィニッシュを自分で作っているような「質感の変化」を与えられるGXクリアシルバー。ガンプラをパチパチ組んでこれを吹くだけでもかなり宝物感が演出できます。調色やマスキングなしでもリッチな完成品が手に入る魔法の塗料、みなさんもお使いくださいませ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

プラモデル作りの強力な助っ人、遠近問わずの視覚サポートデバイス「ViXion01」がスゴいって話。

 突然ですが、皆さんはプラモデルを作るときに肉眼で何もかもが見えていますでしょうか。あ、拡大鏡のセールスではありません。本日私がどうしても訴えたいのは、「目のピント調節機構」を外部装置に任せてしまうというとんでもないコンセプトで作られた『ViXion01』がもしかしたら全人類をハイパーモデラーにしてしまうかもしれない可能性を秘めているよ、という話です。あ、老眼鏡のセールスでもありません。私はメガネ店のスタッフから「まだ老眼じゃないから大丈夫です」とお墨付きをもらっています。ということで、このデバイスのプロトタイプを数日借りて試した顛末を書きます。

ViXion01|オートフォーカスで眼のピント調節をサポートする次世代アイウェア

▲画像提供/ViXion株式会社

 このメガネのようでメガネでない、なんとも不思議な見た目の機械(オートフォーカスアイウェア)がViXion01です。眉間に仕込まれたセンサーが対象物の距離を測り、両目のレンズを通して見ている場所に爆速でフォーカスを合わせてくれます。メガネと違うのは、機械が人間の機能を能動的にアシストするという点。みんなが大好きなパワードスーツが運動機能を強化してくれるように、このデバイスは視覚という身体機能を拡張してくれるというワケです。

※動画はViXion01での見え方を再現したイメージ(提供/ViXion株式会社)

 スゴい技術で作られているため詳しく説明できませんが、レンズはモーターを使わずに電気の力で音もなく動きます。見た目ではどこがどう動いているのか全然わからない。でも近いところだろうが遠いところだろうが、顔をそっちに向けるだけでビュッとピントが合うのです。実際にかけてみるとあまりにも当たり前に「見える」ので、最初は何がすごいのかわかりません。が、これを外すと「うわ、”見る”ってけっこう大変なことだったんだな」ということに気付かされます。

▲私、普段はメガネをしてプラモ作ってます。ちなみに「メガネ on ViXion01」はできないのであしからず。

 まず「メガネしてたら見えますよ」という人に伝えたいのは、手元数cmから無限遠までこれ一本で見えるということ。私は左目だけが極度の近視ゆえに、メガネで矯正していると近接視野にフォーカスを合わせづらいという苦労がありましたが、ViXion01を適切に設定して装着したところ、近くのプラモも遠くの景色も同じように見られることに驚きました。老眼で苦労している人にもViXion01を貸してみたら「うわ、どこも同じようにくっきり見える!」と驚き、大感動していました。裸眼と矯正視力を使い分けたり、レンジによって複数のメガネを使い分ける煩わしさからの解放であります。

▲眉間のセンサーが対象物との距離を測り、左右のレンズが視力に合わせてピントを調節してくれます

 そして「メガネしてなくても見えるから大丈夫ですよ」という人に伝えたいのは、ものすごく近くからものすごく遠くまで、シームレスに、かつこれまで以上にクッキリとラクに見えるようになりますよ、ということ。要は、筋肉で動かしていた目のフォーカスが外部のデバイスによって強化されるんですよね。鼻先までパーツを近づけてもプラモデルのスジ彫りにバシッとピントが合うし、そのまま顔を上げて説明書が読める。自分の筋肉ではない力でフォーカスが移動すると、目が疲れないのです。

 ちなみにこれは拡大鏡ではなくあくまでも「肉眼での見た目をそのままに、フォーカシングをサポートする装置」です(と言いつつ、わりと近い場所をまじまじと見ると実物よりちょっとだけ大きく、コントラストが強く感じられるエンハンス的な効果があります)。
 また、最初に右目と左目の視度調整をして、鼻パッドの高さや瞳孔間距離も入念に決めないとなかなかクリアな視界が得られません。このへんはよりレンズが大きくなれば解決しそうですが、現時点での技術的な限界ゆえの難しさ。開発中のスマホアプリを使えばセッティングが保存され、Bluetoothを介して即座にプリセットを呼び出せるので、毎度ごちゃごちゃいじらなくてもいいのが救いと言えましょう。

▲度数がリアルタイムで調整されているのが可視化!

 プラモデルを作るという用途で言えば、鼻先数cmという極端な場所にフォーカスを合わせようとすると瞳孔間距離をめいっぱい寄り目にしないとキレイに見えないこと、視度調整を極端に近接側に設定した状態では無限遠側のピントが合いにくいこと、また乱視の直接的な矯正には対応していないことなどが弱点として挙げられますが、対象物と常識的な距離を取って作業するのであればテレビと説明書とランナーと手元のパーツにヒュンヒュンとピントが合う様子が味わえるはずです。そうそう、眉間のセンサーは照度に左右されない仕組みなので薄暗いところでもピントが合うのが嬉しいところ。

 いちばんおもしろいなと思ったのが、イマドキこのデバイスの「気持ちいい見え方」をビジュアルに紹介する動画がないことです。というのも、個々人の目の特性に合わせて視度を都度調整し、見る場所によってリアルタイムに、目が本来持っているフォーカシング機能と協調するかのように働くため、カメラを通して追体験することがとてもむずかしいのです。つまり、これは自分で装着してその見え方を「体験」しないとそのスゴさがわからんのですね。

▲スマホから顔を上げてもビュッと見えます。見た目がバトーさんなのも近未来的でよろしい。

 はいそれならもう私すぐに買って試したいです、という人は現在進行中のクラウドファンディングに飛び込んでください。実際にかけてみないとわからないけど興味あるな、という人はぜひとも各地で開催されている実機展示に赴いてください。オートフォーカスアイウェアとしては初の市販モデルであり、とっても大事な「見る」を拡張してくれる新しくて楽しい装置、ViXion01。みなさんも、ぜひ!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

大トロから提供される「タミヤ M16 スカイクリーナー」という傑作プラモデルを今すぐゲットだ!!

▲タミヤより再販された「M3A2」系のバリエーションたち。これはミリタリーミニチュアの超傑作モデルなので、ぜひ今作って欲しいプラモです

 戦場の緊迫感を、車両と人のプラモで切り取った最高の模型たち。先頃タミヤより再生産されたミリタリーミニチュアの傑作である「M3A2」シリーズの3種は、どれを買ってもその要素を思いっきり楽しめるプラモです。今回はトラックの後ろにめちゃくちゃかっこいい対空機銃を搭載した「アメリカ 自走対空機銃 M16 スカイクリーナー」をピックアップします。

▲アニキの視線は空へ!! ドイツ軍の飛行機を撃ち落とすぞ。スカイクリーナーの名は伊達じゃない

 M3A2というのは、アメリカ軍が第二次世界大戦で使用したハーフトラック。前輪がタイヤ、後輪に当たる後側はキャタピラ(無限軌道)になっていて、整備されていない悪路でも活躍できる便利な兵員輸送車でした。使い勝手の良さからさまざまなバリエーションが登場しています。スカイクリーナーは、重機関銃の超傑作で、今でもアメリカ軍で使用されている「12.7mm ブローニングM2重機関銃」を、4丁も連装した対空機銃をM3A2に搭載したモデルです。

 この対空機銃がめちゃくちゃかっこいい上に、説明書でも初っ端から組むように指示されます。本車両のメインディッシュからこのプラモ製作はスタートするのです。

▲車両は各パネルの開閉を選択できます。最初にパカパカするかを選んでから組み立てスタート!!

 このキットは1976年4月生まれのスーパーレジェンドプラモ。しかし、その完成度は今でもバチバチに通用するすんごいプラモです。完成見本写真は当時のマテリアルで製作された物なので、味わい深い物ですが、組んでみるとそのシャープさに驚くこと間違い無し。僕らの時代のマテリアルで塗装してやることで、スーパーな完成度を楽しめます。だから安心して買ってください。

▲アメリカ軍の戦車を作るとめちゃくちゃお世話になるブローニングM2重機関銃。こいつを4丁もつけたらそりゃ強い。数だぜ〜〜
▲このランナーが大トロ。メカニカルな対空機銃を組んでいこうぜ!

 中央にコクピットのような席があり、その両サイドが機銃座となっているデザインがなんともSFメカ味があってかっこいいのです。パーツ1個1個をよ〜くみると、現在のプラに比べてシャープさは落ちますが、全てのパーツが合体するとそんなこと忘れるくらいかっこいいのです。

▲機関銃、左右の機銃座のパーツ、弾倉のパーツ。これらが合体すると……
▲このかっこよさ。台座に装着した際、左右が照準器と連動して可動します
▲台座でござる。この円盤が、全てを受け止めます
▲アニキ、入ります! 足がないけど、これはシールドのパーツを付けると見えなくなるからだよ。けっしてSF的なノリで兵器と一体化なんてしていないよ

 左右の機銃座を中央の台座に接着。台座のシートにアニキをスポッとはめた時の塊感がなんともクレイジー! アニキの目線も空を見上げていて、攻めてくるドイツ軍の飛行機を警戒している緊張感がビンビンに伝わってきます。

▲最後にシールドを装備!!
▲コンバットアーマーは既にアメリカ軍にいたんですね。太陽の牙!!

 シールドを付けると、ロボットの頭部にめちゃくちゃ見えてきます。この対空機銃の部分だけでもめちゃくちゃに面白い「M16 スカイクリーナー」。これだけの傑作プラモが再生産されたこのチャンス、絶対に逃さないでくださいね!!! それでは。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

彫刻の「量感」を楽しむプラモデル/minimum factoryイングラム & クラブマンハイレッグ

 minimum factoryシリーズのパトレイバー(イングラム & クラブマンハイレッグ セット)を組んでみたのだけれど、自分の知っている中から似ている組み味のプラモを探すとタミヤ1/35MMフィギュアがそれに近い。「Theプラ彫刻!」といった趣。そもそもこのシリーズはフィギュアを皮切りに発展してきた存在なのだから当然といえば当然なのだけど、ロボットがモチーフだからという理由で普段ガンプラを嗜んでいる視点から手にしてしまったならきっと強烈なパンチを受け取れるハズだ。

▲指紋と比べて大きさを把握して…1円玉じゃ大きすぎるから…

 いきなり4パーツが組み合わさるイングラムの頭は指先程にしかならない大きさ。塩ビやレジンキャストなら無垢の1パーツ作れるサイズだとしてもプラモだと分割せざるを得ない。でもプラモなら薄いところまで歪みなく造形を保つことができる利点がある。「細かいww」と草を生やしながらギリギリピンセット無しで組める塩梅も絶妙だと思う。

 雑誌やメーカーの商品紹介を眺めていてこの胴体部品とか、造形がいいのはわかるけど、複雑な分割からなる設計の妙と言われても「だって前後に閉じるだけなんだぜ?なんだか安っぽくない?」みたいな気分があったけれど杞憂だった。襟元のアンテナが一体成型なところとかランナーに並んでる時点で面白いし精密感もある。原型師とか設計師の他に「分割師」とかいるんじゃないかと思ってしまう。

 ロボットのコブシは造形をうるさく言われる部分。ここまで小さいと握る警棒と一体にしてプラ肉厚内でも無垢で作れてしまう。この右手は金型の抜き方向の制約から前腕の肉抜きをふさぐようにしたフタ部品と親指だけ一体になっているのも芸コマ。

 組んでいて気持ちよかったのが肩側面の穴あき装甲。貫通しているが故のクッキリ感に加えてこの穴から覗く位置にある関節を覆うキャンバスの彫刻までされていて、奥行きのある立体に組みあがる。「彫りが深いレリーフ」ではなく「貫通した穴とその向こう側の景色を表現として活かした」彫刻なのだ。彫刻作品というのはそれ自体が三次元上で辻褄を合わせた、二次元のウソから解放された(解決/折り合いをつけた)表現であるから、その「解放」される箇所に関して持てるアドバンテージを如何に尖らせられるか、というのが快楽原則になる。

 このキットのもう一つの主役であるクラブマンは4脚デザインなこともあって分割が大変なことになっている。仮に脚が一本ごとに左右分割で4本あったらいくつの部品が必要になるの?こういうのを計算するのは何算ていうの?鼠算?鶴亀算?ガタマン算?クラブマン算?

 部品を組み上げてロボットを完成させるというよりも、分解された彫刻を復元する感覚というのが近い。可動するロボットプラモのような「ロボットの機械的な仕組み」を追うのではなく、彫刻作品の持つ「空間を押しのける量感」を追うスタイル。彫刻を作るうえでの「量感を追う」って作業は特にアナログ作業だと粘土を盛りつけていったり木や石の塊を削るとかそんな文字通り質量と向かい合うことになるのだけれど、これはプラスチックの皮一枚で実際には質量の抜けた「量感だけが再現されたイミテーション」なのだ。

▲クラブマンの足回りは煙に巻かれるうちに立体が立ち上がる。イリュージョン!

 割られたパーツを閉じることで「薄皮一枚のイミテーション」は「量感をもったマス(塊)」となり最後には「空間を押しのけて存在する彫刻」になる。

 「彫刻」っていうとなんだか高尚な芸術の話をしているみたいでむず痒いかもしれないけれど、有名なダビデ像だって平たく言えば「聖書のエピソードを再現した立体物」だし、だったら「少年サンデーコミックスのエピソードを再現した立体物」であるコレだって「彫刻作品」であることに間違いない。
 少年サンデーコミックス、ファンにとっては立派な聖書だしね!

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

プラモデルの予習と復習/タミヤのCBR1000RR-Rでサーキットを2周しよう!

 タミヤのCBR1000RR-Rはいつか組もうと思って買ってあったのだが、ウカウカしていたら赤と青のマーキングがめちゃくちゃカッコいい「30th Anniversary」仕様も発売されてしまった。ノーマル仕様とはデカールが違うだけだと思われるので、これは幸運である。2回組む口実ができたのだ。最初は色も塗らずにサラッと。次はその時に得た知見で塗ったほうが効果的なところを塗って、自分が目指す仕上がりに。なんでもそうだが、予習と復習ほど効くものはない。

 シルバーのエンジン、白いカウル。プラスチックの色でだいたい実車に近い質感が得られるのがタミヤのバイク模型のいいところである。ノーマル仕様のキットではカウルが赤or黒の塗装パターンが示されていたが、「30th Anniversary」のキットはフロントカウルとタンクカバーを塗装するほかは白カウルにデカールを貼るだけでほぼ実車どおりになる。ということは塗装せずにパチパチと組んでいけばけっこうそれらしくなるのじゃないか、と予想していたのだが……。

 予め穴の空いたブレーキディスクはありがたいなぁ……と思っていたら、プラスチックが黒である。本物はシルバーだ。というかこのプラモデル、最近のタミヤのバイク模型としては珍しく、プラスチックの色と全く違う色で塗装が指示される箇所がかなり多い。実車の再現度を高めることを優先してか、このマシン特有の細かいパーツが多い上にそれを効率的にランナーに配置しているため「これがシルバーのパーツだったらな(でも黒いプラスチックだ……)」とか「これがホワイトのパーツだったらな(でも黒いプラスチックだ)」といった場面にちょいちょい遭遇する。

 もちろん組み味は抜群で、どこもかしこもまごつくことなくスルスルと組み上がる。バイク模型にありがちな小さいビスも完成するとけっこう隠れるようになっていたりして実感も損なわない。組んでいく途中で「なるほどこのパーツは塗ったほうが良さそうね」「ここは塗らなくてもそのままで充分かっこいいね」というのをチェックしていく。

 組むアタマと塗るアタマは違うので、組み立てる過程で「塗るか塗らないか」をその都度判断していると結構疲れるし効率が悪いなと思うことがある。一周目でまず組むだけ、二周目でポイントを見極めた塗装を施し、そのあとで組むのに集中する……というのを勧める理由はそこにある。

 なんてカッコいいことを言っているが、実際問題塗らずに組むだけでもかなり見ごたえがある。なにより複雑なカタチのパーツが所定の位置に収まり、だんだんガッチリとした塊になっていくのはヒーリング効果があり、「はー、このパーツがここにくっつくのか!」と驚いているだけでもプラモデルは充分楽しい。

 ひとまずバイクのカタチになったところで記念写真を撮っておく。完成後に見えなくなってしまうところはどこか、絶対に塗ったほうがいいところはどこか。いまではもう完全にアタマにインプットされている。いきあたりばったりで100点の完成品を作るのは難しいが、「強くてニューゲーム」ならその道のりは決して困難ではない。すでに持っているプラモデルのカラーバリエーションが発売されたら「本当に完成させたいバージョンを本番に選び、そうじゃなかったほうは練習台と割り切る」というのも、気持ちを晴れやかにする方法なのである。

からぱた/nippper.com 編集長

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きらりと輝くオレンジパールはステラオレンジにお任せ!!抜群の塗り心地な「LINKL PLANET 佐藤咲菜 ステラオレンジ」

 水性ホビーカラーでお手軽に「パール塗装」が楽しめるすごい塗料「LINKL PLANET カラー」(リンクルプラネットカラー)。BANDAI SPIRITSのプラモデル公式アンバサダーとして、様々なプラモデル啓蒙活動を行っている「LINKL PLANET」とMr.HOBBYのコラボカラーです。アイドルとのコラボカラーというだけでなく、中の塗料のクオリティも素晴らしい塗料になっています。

▲黄橙色にパールが入ったような色味が特徴です

 この塗料、抜群の輝きと塗膜をガッチリとコートする「プレミアムトップコート光沢(以下「プレコー」)」の輝きにパールが追加された質感で塗り上がります。細かな美しいパールの輝きとプレコーのテカテカ感が一気にゲットできちゃうんです。

 今回はその中から「HLP03 佐藤咲菜 ステラオレンジ」をレビューします。

▲エアブラシで使用するときは塗料1:水性ホビーカラーうすめ液1が良いです。紙コップのフチをす〜っと滑らかに垂れていくくらいを目安にしましょう

 黄色やオレンジの塗料は、発色や塗装時のコントロールが難しい物が多いです。しかしこのステラオレンジは、2度塗りでしっかりと発色します。

▲いきなりどばーって吹かないのがポイント。1回目は表面がうっすらオレンジになるくらいで止めておきます

 ステラオレンジの色味をフルに発揮したいなら下地は白が良いです。白い塗料、もしくは白の成型色の上に塗りましょう。1度塗り目は下地がうっすらと透けるくらいにとどめて、パーツ全体を塗ります。

 乾燥後に、2回目を塗ると、パールの粒子感と美しい輝き、そして黄橙色のようなオレンジの色味がしっかりと発色します。

▲2回でバッチリ発色!!! 光沢もパールもいい感じです

 黄色やオレンジは、ガンプラやキャラクターモデルにおいてはアクセントカラーによく使用されます。そこにきらりと輝くステラオレンジをさしてみると、他の部分と差が生まれて面白い表現ができると思います。塗装時のコントロールのも楽なので、初めてパール系塗料を使用する人にもおすすめですので、ぜひリンプラカラー・ステラオレンジを使用してみてください。それでは!

▲最近では、「HGUC V2ガンダム」のミノフスキー・ドライブ・ユニットをステラオレンジで塗ってみました。細部のアクセントカラーにぴったりですよ

フミテシ/nippper.com 副編集長

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この筋肉がすごい!/ウォークライのアイアンゴーレムは8人のマッスルの詰め合わせ

 とにかく筋肉がすごい。重量級のボディがかっこよく表現されているのはウォーハンマーの『ウォークライ』というシリーズのアイアンゴーレム。ウォークライというゲームは蛮族たちが集う世界が舞台なのか、ワイルドな造形が癖になります。早そう、力が強そう、毒を使いそう。いろんな邪悪さを持ったチームがあります。その中でも肉弾戦が強そうな見た目なのが彼らというわけ。

 ウォーハンマーらしさを味合うという意味では一番デカい男性の身体をはり合わせるとき。ヘルメットなどの防具が繋がって一つのパーツになっているものが、気持ちよく合わさるのでとても気分が良い。ウォーハンマーのプラモデルを作っていると何度もこういう瞬間に出くわします。

 そんな、”らしさ”の対極とも言えるのが、両手にハンマーを持った背の低い男性。まさかの2パーツです。こういう最小限の手数でとびきりの造形を生み出すみたいなこともできるのかという驚き。それになんだか可愛らしい見た目なのも面白い。アイアンゴーレムは8人の戦士を作ることになりますが、異質な組み心地なのは彼な気がします。

 それと、横から見るとジェットコースターみたいなチェーン。このチェーンが身体に巻きつくようにくっつきます。こういう動きのあるパーツが存在するのもウォーハンマーらしさだと思います。時を止めるかのようにプラモにしてしまうというか。

 8人の戦士をあっという間に作ってしまいました。平日に2時間くらいの組み立てを3セット。一番大きい戦士は見た目の良さに惚れてしまい、我慢できずに黒のサーフェィサーを吹いてしまいました。つや消しの黒になると重厚感が増してますます強そうですね。

 ウォーハンマーってSFとかファンタジーとか想像の世界を題材にしているので、めちゃくちゃ強そうなドラゴンとか悪魔とかの見たことのない生き物だったり、過酷な未来を生き抜くためのアーマーのデザインの面白さに目がいきがちです。それらに十分発揮されている造形センスってよく考えると人体にも十分発揮されるよな……とアイアンゴーレムをつくって思った次第です。

 先日手に入れたルールブックでは「アイアンゴーレムの戦士たちは卓越した技量で戦を起こす」と書いてありました。思ったよりも技巧派なのか……! というわけで、力が強いだけじゃない彼らにますます魅力を感じています。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。30年間定番商品として飛び続ける傑作飛行機模型「ハセガワ 1/48 川崎 三式戦闘機 飛燕」

▲この美しいパッケージをゲットして、素敵な週末を過ごしましょう

 週末の模型ライフが楽しくなるプラモを、フミテシの独断と偏見でご紹介する「花金プラモ」。今週はハセガワの1/48スケールの人気キット「日本陸軍 川崎 三式戦闘機 飛燕 I型丁 飛行第244戦隊」をご紹介します。nippperでは手のひらサイズの「1/72スケール」を以前ご紹介しましたが、1/48スケールも週末でサクッと組めるすごく良い飛行機模型なので、ぜひゲットしてください。

 飛燕の最新キットと言えば「タミヤ」のキットがあります。タミヤのキットが発売される2016年までは、このハセガワの飛燕が1/48スケールキットの最前線におりました(ハセガワの飛燕は1993年に発売)。まさにひと時代前のキットなのですが、キットの完成度はとても素晴らしいです。飛燕はハセガワ製もタミヤ製も良好な出来という、プラモに恵まれた飛行機なのです。ハセガワのキットは、パーツ数が非常に抑えられており、箱を開けた瞬間に「これは花金で楽しめるぞ!」って思えます。

▲箱を開けると、箱のサイズに比べてだいぶゆとりがあります
▲胴体、主翼などがランナーにドーンとセットされています。各部でパーツがバラバラになっているような模型では無いので、非常に組み立てやすいです
▲キャノピーも1パーツ。開閉選択はできませんが、コクピット部分にポンと置くだけで良いという手軽さがあります

 僕が初めて飛燕のプラモを作ったのは2016年に発売した「タミヤの飛燕」でした。そのため、ハセガワの飛燕は古いもの、どこかで勝手に役目を終えたものというひどい見方をしていました。実際に手に取って見ると、小池繁夫氏による非常に美しいイラスト、箱を開けた時の優しくモデラーを迎えてくれる圧の無さ、今見ても美しいパーツ形状と素晴らしいプラモでした。そして何より、1時間半ほどで非常にスタイルの良い飛行機が机の上に爆誕して、めちゃくちゃ嬉しい気持ちになりました。

▲コクピット内の計器盤やスイッチのディテール。計器盤のディテールがちょっとデフォルメ感があって可愛いです
▲機首から垂直尾翼までドーンと1パーツで成型された胴体。表面の凹モールドが非常に繊細
▲胴体内側には、コクピット側壁面のパネルパーツを貼ります。これによって密度感が出ます
▲こちら断面。飛燕の特徴であるお腹のラジエーターダクトも表現されていて、飛燕の特徴的内部構造も楽しめます。エンジンは付属しません
▲胴体を貼り合わせて、上から覗き込むとこんな感じ。十分な密度感を味わえます

 飛燕最大の特徴である液冷エンジン「ハ40」のパーツはありませんが、その分非常に早く飛行機の形になります。液冷エンジンのおかげで、機首がこのように鋭いシルエットになっています。零戦のように機首が大きく口を開けたようになっているのが空冷エンジンです。このハ40というエンジンは、ドイツ軍のメッサーシュミット Bf109に採用されていたダイムラー・ベンツ DB601エンジンをライセンス生産したものでしたが、当時の日本の技術や資源不足によって度々問題を起こしてしまいました。そのことにより、のちに五式戦闘機という飛行機が生まれますが、それはまた別の機会にご紹介します。

▲このプラモの一番気持ちよかった箇所が、胴体と主翼の接着。隙間なくピタ〜っと合わさるので、胴体と翼のラインが綺麗につながります
▲キャノピーは1パーツなので、乗せれば完成です!
▲キャノピーのフィット感も問題無し!! 和製メッサーとも呼ばれる鋭いシルエットを堪能できます。
▲ハセガワの1/48スケールには、他の日本陸軍機もラインナップ! 右は二式単座戦闘機 鍾馗(しょうき)

 2016年に、川崎重工創立120周年記念事業として行われた「飛燕再生プロジェクト」。それによって、一気に脚光を浴びた飛燕は現在、岐阜県の各務原にある「岐阜かがみがはら航空宇宙博物館」に展示されています。お近くの方は週末にぜひ見に行ってみてください。いけない人も、最高のプラモがありますので、プラモでかっこいい飛燕を堪能しようじゃないですか!! それでは〜〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

オトナはプラモデルをエレガントに攻略する/後付けのオーバーフェンダーに効くテクニック!

 日本で生まれたクルマ、日本で花開いたカルチャー。アオシマのカスタムカープラモデル、『ワークスの鷹』がめっぽうおもしろくて驚いている私です。ブルーのボディにオレンジのオーバーフェンダー。こんな取って付けたような追加パーツがちゃんと合うんですか?古いプラモなんでしょ?

 とりあえずボディーにチョンと載せてみると、驚くべきことにかなりビタッと合います。うん、これなら塗装しないで貼り付けるだけでもかなり箱絵のイメージに近づきそう。しかしですね、ワークスの鷹は車高がべったりと下がっているのでそのままだと元のボディとタイヤがぶつかるんです。そこまで下げるの?というくらい下げているからね……。

 驚くべきことに、説明書には「ボディの黒く塗り潰した部分をカットしろ」という指示があります。しかもカッターナイフで。この表記はかなり古いものがそのままにされているはずで、多くのヤングなモデラーたちが「よしわかった」と実際にカッターナイフを片手に持ち、そしてボディをエイヤと切りつけたに違いありません。

 「まず型紙を切り抜いてボディに当ててカットラインをトレースせよ」と書いてはありますが、実際問題どうやってやるかを考えてくれと言われたらけっこう困難ではないでしょうか。目見当でカッターナイフの刃を食い込ませ、時には怪我もしたことでしょう。切りすぎて枕を濡らした夜もあったでしょう。そうして人間は大きくなっていく……じゃないんだよ!失敗したくない。俺はもうオトナだ。向こう見ずな工作をしてとんでもない目に合うのはゴメンだぜ。必要なのはお膳立て!

 オトナな我々は説明書のカットラインをマスキングテープに貼り付けて写し取り、マスキングテープをカットしてから今度はボディにマッキーでラインを引きます。これは先日塗ったポルシェのロスマンズカラーを攻略する方法論の応用編です。やり方は以下を見るべし。

 マッキーで引いたラインの内側をモーターツールでガバーッと削り、オーバーフェンダーを上から貼ります。カッターナイフは危ないので、ジェントルに高速回転するセラミックのビットでイッパツです。フェンダーひとつ、ほんの30秒くらいでカット(というかやや溶かしながら削り落としている……)が完了。写真を見れば分かるとおり、必ずしもビシッとキレイに切り抜く必要はありません。オーバーフェンダーのパーツのほうがいくぶん大きいし、このパーツを貼ってしまえばくり抜いたところはほとんど見えない。なるほど、これならビビらなくて済みますね。

 デザインナイフ、マスキングテープ、マッキー、そしてモーターツールがあればノーマルからバーフェン仕様にするのもあっという間。怪我の恐れも失敗のリスクもぐっと減らせるのがオトナちゅうもの。ワークスの鷹だけじゃなくて、アオシマのグラチャンシリーズを始めとした走り屋のプラモデルも一網打尽に作れるようになりました。嬉しい&かっこいい!みんなもおいでよ、オーバーフェンダーの森へ……。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

究極の可動式サスペンションを組んで楽しもうぜ!!「プラッツ ガールズ&パンツァー 最終章 1/35 M4A1 シャーマン 76mm砲搭載型 サンダース大学付属高校 リニューアルパッケージ」

▲ガルパンパッケージで、鋳造車体のかっこいいシャーマンを作ろうぜ!

 〉プラッツ ガールズ&パンツァー 最終章 1/35 M4A1 シャーマン 76mm砲搭載型 サンダース大学付属高校 リニューアルパッケージ

 プラッツが模型メーカー各社の協力を得て展開する、アニメ『ガールズ&パンツァー』の戦車模型。この度サンダース大学附属高校のM4A1 シャーマン 76mm砲搭載型が、パッケージを新たにして再登場となりました。リニューアル版は初回特典として「バトルダメージデカール」が付属します。

 こちらのプラモは、全世界のシャーマンファンに愛されているアスカモデルのシャーマンがセットされています。このキット、只者じゃ無い戦車模型でして、1回で記事を終えるのは難しいので、2回に分けてお届けしますね。

▲サンダースのみんながキットレビューしてくれるぞ! フミテシの出番はおしまい! 完ッ!!!

 ガルパンキットのお楽しみは才谷屋 龍一氏によるイラスト解説。BB戦士のプラモのように説明書に漫画が掲載され、それぞれの高校のメンバーがキットレビューしてくれるのです。つまり、これを読んでいただければおしまいなのです。はい。でも、実際に組んだライブな声も大事ですよね。だからフミテシ頑張ります!

▲このヌメ〜っとした曲面。見事なまでの鋳造車体。これを一度味わうと丸っこいシャーマンが大好きになっちゃう。かっこいいのよ

 シャーマンは多数のバリエーションが存在します。それに真摯に向き合ってきたのがアスカモデル。キットのランナーの中にも使用しない細かな差異を表現できるバリエーションパーツが収めれていて、シャーマン研究の歴史が樹脂化しています。全部組んだ後に、「この使わなかったパーツはなんだろう?」なんて眺めながら、色々なシャーマンをネットで検索してみるのも面白いです。

 M4A1 76mm砲搭載型は、アニメでは副隊長アリサの登場車として活躍します。実車は、強力なドイツ戦車に対抗すべく搭載された、76mm砲新型砲塔と、通常のM4の溶接車体とは異なる、丸みを帯びた鋳造車体となっているのが特徴です。

▲このキットの最大のお楽しみがナオミが言っている通り「可動式サスペンション」

 今回は本キット最大の特徴である可動式サスペンションをご紹介します。作る工程は多いのですが、完成するとボインボイン遊べるし、情景を作る時に段差を乗り越えたりする表現も可能となります。それを実現する特殊パーツが「発泡ゴムシート」です。

▲発泡ゴムシート! これをカットしてボギーの中に仕込むのじゃ!

 この黒い弾力あるシートを、説明書に記載されているサイズにカットします。カットしたもの3枚が標準。シャーマンは6つのボギーを組み立てるので、18枚カットして仕込むことになります。

▲ふふふ。これがアスカモデルのシャーマンよ。じっくり説明書を読もうぜ。接着しない箇所がほとんどなので、パーツをしっかりと押さえながら挟み込んでいきます
▲高さを固定できるプラ製のスペーサーパーツもあります。こちらはランナーからカットして、ボギー内部に接着するだけ

 シートをカットして仕込むのがしんどい……、もしくは動かなくて良いから高さを揃えたいって人のためにプラ性のスペーサーパーツもセットされています。これはランナーから切り出してボギーの中に接着するだけでおしまいです。

 「これを仕込めばお手軽に楽しめますね」なんて、いつもの感じで来ると思ったでしょ! フミテシを侮らないでね。俺にかかれば、発泡ゴムシートの切り出しなんて2分で終わるからね。俺はボインが大好きなのさ!!

▲指定のサイズに1枚カットしたら、あとはそれをガイドにハサミでザクザク切っていきます! 多少不揃いでも全く問題無し! 大体でもボギーの中には収まるよ〜〜

 律儀に1枚ずつなんて切らない! 中に収まれば良いのだから大体で良いのです。見えなくなるし。1枚しっかりとカットしたら、それをガイドにシートを切っていけばすぐ終わる! この切り出しさえ突破すれば、パーツの合いも最高なのでサクサクと可動式サスペンションが完成するのです。

▲まずこのサスペンションアームを12個作るのです!!

 押忍押忍!! 12個、どんとこい!! サスペンションアームを先に作ります。この後、先ほどの説明書で見せたボギー製作に入ります。

▲このようにカットした発泡ゴムシートをセット。3枚入れるとスペースにピッタリ。プラパーツだけでなく、シートが入る隙間のサイズも完璧。本当に各パーツがぴちぴち合います
▲接着!!! このボギーに、先ほど作ったサスペンションアームを取り付ければ完成です
▲こちらが素の状態。指で押してみると……
▲発泡ゴムシートと可動式のサスペンションアームによって、ぐっと沈み込みます
▲これを6ユニット作るのだ!! 最後の2個くらいになると空気を吸うように組める!

 これぞアスカモデルのシャーマンの足元を支える至高の可動式サスペンション!! 6個組むのに1時間半費やしました。でもそれだけの価値はあるし、ボインボイン押しているのも楽しい。各部もすごくシャープで、このディテールの良さが車両に取り付けられた時にさらに、戦車をカッコよく見せてくれます。シャーマンプラモの最高峰を、ぜひこの機会に楽しんでください! それでは、またお会いしましょう〜〜。

 〉プラッツ ガールズ&パンツァー 最終章 1/35 M4A1 シャーマン 76mm砲搭載型 サンダース大学付属高校 リニューアルパッケージ

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

篠原重工のオートバランスは逸品/MODEROID クラブマン・ハイレッグ

  1990年、小学生だった当時の私の頭の中を占めていたのは、SDガンダムにワタル、ミニ四駆、そして『機動警察パトレイバー』でした。この年、初めて家族旅行で東京へと辿り着いた私には、どうしても行きたい場所がありました。それが当時バンダイが出店していたアンテナショップ、B-CLUBショップです。

 コミックボンボンに載っていた渋谷店の地図を頼りに辿り着いた店内には、地元のどのおもちゃ屋にも模型屋にも置いていない、ガレージキットの山々。そしてショーケースにはまだ暗黒四天王が全種発売前で再現不可能だった、BB戦士の復活闇将軍が凄まじいオーラを放って飾られていたのを今でも覚えています。

 私のお目当ては、1/60クラブマン・ハイレッグのガレージキット。漫画版パトレイバーで強烈な印象を残したこいつが欲しくて仕方なかったのです。棚に陳列されたクラブマン・ハイレッグを見つけたものの、6,900円と予想外の高額にその日は断念。翌日家族に頼み込みお金を借り、店に行くもすでに売り切れ。店員さんからはガレージキットは生産量の都合で再入荷できるか不明、との返事。さらに「あれは凄く難しいからこっちにした方が良いよ」とSDパトレイバーのガレージキットを薦められ、それを慰めのように買って店を後にしました。

 そして私だけは観光にもテーマパークにも行かず日程の許す限りは店に通いつめ、また並ばないかと淡い期待を抱くも、結局は出会うことも無く帰路に付いたのでした。

 それから33年後の2023年。クラブマン・ハイレッグが箱に詰まっている!そう、MODEROIDシリーズで1/60クラブマン・ハイレッグがプラモデルとなってリリースされたのです。どっからどう見てもプラスチックモデルです。マジかよ……。

 組み立てはいたってシンプル。潜水艇を思わせる本体に、名前の由来である長い足を取り付け。一時間半もあれば完成。ではこのMODEROIDクラブマン・ハイレッグがマイナーメカをとりあえず形にしただけのモノなのか……というとそんなことは決してありません。パトレイバーに登場するメカ、レイバーに共通する特徴的な関節のシーリングを、MODEROIDでは硬質なプラスチック素材そのままで表現しています。本来柔らかいものを硬い素材で造形すると可動範囲と強度が確保できるものの、見栄えが犠牲になりがち……あちらを立てればこちらが立たぬ。しかしこのクラブマン・ハイレッグでは一番目立つ前足の関節部に、蓋になるパーツを被せて問題をクリアしています。

 このカバーには関節軸があって前足の動きにきちんと追従するので、組んだ後にも気になりません。シンプルゆえユーザーにストレスを与えず、むしろ組み味はすっきり。そして効果は抜群。じつにスマートな解決方法です。

 気持ちにも時間にも余裕があるので、せっかくだしと付属のデカールを貼り付け。楽しくなってきたのでクリアパーツもマッキーで塗ってしまいます。

 目の前にあるな……。
 
 何度見返しても、目の前にクラブマン・ハイレッグがあるんです。他にもX10、ピースメーカー、ヴァリアント、レイバーキャリアなど当時の夢だったアイテムがどんどんリリースされました。でもこいつは、一度実際に手を取ったもののするっとすり抜けて、33年もかけてプラモデルに姿を変えやっとこの手に戻ってきたのです。

 そしてごめんなさい。あの時の親切な店員さん。やっぱり私は、例えいくら難しくてもクラブマン・ハイレッグに挑戦したかったようです。

S-HAR-ON

1979年生まれ。熊本出身。 ジャンルはメカプラ美プラスケモまで。

模型を主役にする究極のシンプル台座。「グッドスマイルカンパニー THE シンプルスタンド ビルドオンタイプ」

▲足元の照り返しもGOOD!! グッスマからとっても良いお立ち台が出てます!!

 完全にノーマークでした。こんなにもシンプルで、しかも高級感&統一感、そしてベースの広さも絶妙という台座がグッドスマイルカンパニーから発売されていたなんて。その名も「THE シンプルスタンド ビルドオンタイプ」。クリアーとブラックが発売されているのですが、ブラックはガンプラからMODEROIDと言ったメカプラモの足元をピリッと引き締め、あなたの作品を何倍もカッコよく見せてくれます。さすがホビーメーカーが作り出したシンプルな台座。こういうのが、僕は欲しかったのです。

▲商品は3つの台座と、連結用のパーツなどが入っています

 ABS樹脂製で光沢成型されたベースが3つも入っています。さらにそれぞれ連結させたり高さを変えたりできるパーツがセットされています。連結に関してはこちらをクリックして公式ホームページで確認してみてください。

▲各パーツはランナーにセットされています!! まさにプラモだね!!!
▲ビルドオンという名前だけあって、このように階層構造に組み合わせられます
▲各パーツは指でも外せる嵌合に調整されているので、工具も入りません
▲ベースの寸法は120mm×120mm。iPhone12を置くとこんな感じ
▲支柱の高さ1本あたりの長さは48mm
▲ベースには別売りの「THEシンプルスタンド」の支柱を刺せます。これによってアクションベースにも早変わり
▲1/144のガンプラにばっちり!! 統一感あるディスプレイができて最高です

 作ったプラモが主役だから、ディテールとかはいらない。そんな台座を探していました。そうしたらこんなにも近くにめちゃくちゃ良い台座があったなんて。特に黒のかっこいい台座は汎用性がとても高いです。ぜひあなたが作った模型を「THE シンプルスタンド ビルドオンタイプ」でカッコよく飾ってください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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プラモを買うことで僕達は名画をお家にお迎えできる。ハセガワの美しい鍾馗がやってきた話。

▲小池繁夫さん、最高すぎるよ……。こんなかっこいい絵を見たら買っちゃうよね

 パッケージアートの力に導かれて「ハセガワ 1/48 日本陸軍 中島 二式単座戦闘機 II型丙 鍾馗(しょうき)」のプラモを購入した。太平洋戦争のクライマックスである本土防空戦において、飛来するB-29に対して奮戦する鍾馗が描かれている。不気味な夜空は群青を纏い、爆撃による炎が空を燃やす。その光が鍾馗を照らし、銀色の機体が鈍く輝いている……。これだけ素晴らしい絵が「1/48スケール」という、ガンプラで言えば「1/100スケール」のようなプラモの箱に描かれているのだ。美術館で名画を見て、最後の売店でハガキやクリアファイルを買うように、僕らは大好きなプラモを買うことで素晴らしい絵も手にしているのだ。当たり前のことだけど、それがいかに素晴らしいことかってことを、ハセガワの飛行機模型はいつの時代も教えてくれる。

 パッケージアートは演出の世界。元々好きなものがカッコよく描かれていたらより好きになるし、知らないものでも「え? なにこれ? めちゃくちゃかっこいいじゃん」と惹き込まれて、新たな出会いを産んでくれる。中のプラモが持っている背景やストーリーの入り口も見せてくれるのだ。中にはバラバラになったプラスチックのパーツが入っているだけなのに、ここまで素敵な装いがなされている。僕達が大好きで、めちゃくちゃ楽しんでいるプラモデルは、世の中でもそうそう無い素敵なメディアなのだ。

▲鍾馗は直径の大きい「ハ-41」というエンジンが搭載されているので、機首の迫力が凄い! そこから絞り込まれた胴体のシルエットが、他の日本機には無い独特の姿を生み出している

 飛行機模型を楽しんでいる人なら日本陸軍の飛行機たちは当たり前の存在。でも、飛行機模型をあまり作らない人にとっては「零戦」以外の日本機というと……。そういう状況でも、このような素敵な絵が、箱に描かれていれば、低い確率かもしれないけれど興味を持って手に取ってくれる人が現れると思うんだ。

▲鍾馗は主翼がとっても小さい。そして主翼後縁には独特の形状をした蝶型フラップを採用している
▲パーツで見ても、胴体はカウル付近がとってもマッチョ。胴体後ろの水平尾翼が垂直尾翼よりもかなり前に装着されているのも特徴。この構造は後の四式戦闘機にも引き継がれている
▲1/48スケールだが、細かなパーツはほんとんど無し。コクピットのパーツ、足回りのパーツがシンプルなので、サクサク組める
▲メリハリある味濃いめの計器盤。1/48スケールは、飛行機の各部ディテールを楽しむのにもちょうど良いサイズ
▲胴体はピターっとパーツが合う。各部の組み立てはストレスフリー
▲20分で空へ〜〜
▲初めて飛行機模型を組む人でも、1日あればすんなり形になる。ボリュームがしっかりとあるにも関わらず、とても作りやすい定番プラモだ

 最近1/72スケールの飛行機模型ばかり作っていたので、ちょっと大きめのサイズが作りたいなと思いお店でプラモを見ていた。ゆっくり1/48スケールの日本機プラモを見ているとハセガワの地力というものを体感せずにはいられなかった。日本海軍機、日本陸軍機、どのパッケージアートも美しいのだ。確かにプラモは中身が主役だ。しかし、その中身ばかりに関心が行き(特にネットで検索しているとね)、こうやってプラモの箱を眺めながらワクワクすることに距離ができていた。それはコロナ禍も一つの理由であったかもしれない。普通を取り戻してきた今、実店舗で名画を見るようにしてプラモが買える。その体験って、僕達プラモが大好きな人に許された最高の幸せだと思うのだ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

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飛行機プラモに人間の限界を超えたディテールを/エデュアルドのMiG-15UTI

 チェコのエデュアルドというメーカーの飛行機模型は世界最高レベルのカッコよさ。ディテールもシャープだしパーツの合いはいいし、どれを掴んでも最近のは全部出来が良い。ソ連製ジェット戦闘機の最高傑作、MiG-15の複座型(人が前後に二人乗りになるやつ)なんかもバシッとプラモデルになっているのが偉い。

ホビコレ プラッツ 1/72 MiG-15 UTI (ミグ15複座型) フィンランド空軍

 で、もともとエデュアルドというのは色んな国の飛行機プラモデルをさらにかっこよくするためのパーツを売っていた会社で、いまもディテールアップパーツの販売をしながら自社でもプラモデルを作るようになった。エデュアルドが自分の会社の飛行機をさらにかっこよくするために自分でパーツを別売りしている、となればもうそれは完成度がバカ高いものができることが約束されているっちゅうわけです。

 それなりに値段はしますし細密に加工された金属板を切ったり折り曲げたりして貼り込んでいくのはかなり難しいけど、しかし自分の目と手で工作しろと言われたらまず不可能なレベルの緻密な造形が手に入る。もっと言えば、上の写真みたいに印刷済みで塗装しなくてもいいパーツすら用意されています。つまりエッチング製のディテールアップパーツはプラモデルの名人が作り込んだような精密感がお金さえ出せば得られるところにアドバンテージがあるんですよね。

 飛行機模型のみどころのひとつ、コクピットの計器盤です。プラモデルのパーツに極薄&印刷済みの金属板を二枚重ねで貼り込むだけでもう肉眼ではわからんくらいの超細かくて立体感のあるメーターが出現しました。自分の会社のプラモデルの設計データをもとに作っているから輪郭だってバッチリ合います。小指の爪くらいの面積にこれだけの情報量があれば誰でもびっくりするはず!

 シートベルトを追加したりフットレストをプラパーツから金属に置き換えたりと、難易度は場所ごとに違いますが、瞬間接着剤とよく切れるナイフとピンセット、そして拡大鏡があれば取り組めます。もしこれをゼロから自分でやってね、って言われたらまずできないし、シートベルトのステッチ(縫い目)なんか人間の手では描けない。用意されていることが超大事!

 コクピットまわりに用意されたエッチングパーツをガンガン貼り込んでいくと、こんなに緻密な景色になります。凝縮感がすごい。あとMiG-15は機首から吸い込んだ空気が左右に分かれて、パイロットの左右の壁がそのままダクトになっていることがわかってこれがめちゃくちゃに楽しい。さらに複座の機体は単座の機体の2倍コクピットを楽しめる。前後にボヨーンと長いコクピットを覆う風防がこれまた猛烈に未来的なフォルムでかっこよろしい。

 コクピットに風防と天蓋を取り付けると……あんなに一生懸命貼り込んだエッチングパーツはほとんど見えない。

 じつは私、「モデラーは見えないところまで作り込むのが楽しい生き物なのだ」みたいなのがあんまり得意じゃない。誰にでも「見えなくなるところを作りたい日」と「そうじゃない日」があるので、いつでも気分でそれを選べることこそが自由なんじゃないのかと思います。

  見えなくなってもちらっと感じられる精密感、というのもまあいいのですが、むしろエッチング製のディテールアップパーツって「すっげえ細かい工作を(じつは誰かがお膳立てしてくれているから)できる自分SUGEEE」ってなっている状態の脳汁ドバドバ具合がいいんじゃないかと思うんですよ。

 どこをどれくらいディテールアップしたいかによって3種類から選べるエデュアルドのMiG-15UTI用エッチングパーツ。人間の手技では追いつかないような細密な造形と塗装を手に入れられるという意味ではまさにプライスレスな存在。せっかくお金を出したから全部使わないと……とビビる必要はありません。どこまでやるかは己が決めて、使いたいものを選んで投入しましょう。プラスチックパーツを貼って塗るだけではたどり着けない(そして自分だけがニヤニヤできるような)めくるめくミクロの世界に誘ってくれます。みなさんも、ぜひ。

ホビコレ プラッツ 1/72 MiG-15 UTI (ミグ15複座型) フィンランド空軍 エッチングパーツ3種付

からぱた/nippper.com 編集長

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AC6で昂ぶる気持ちを30MMでアセンブル! プラモデルで戦闘モード、起動します。

 バンダイスピリッツの30MMと『アーマード・コア』はまったく関係のないコンテンツ。ただ、それぞれに何名かのメカデザイナーが集っているなかで柳瀬氏はどちらにも参加している。ゲームとプラモ、デジタルとフィジカル、デザインの組み立て方は違うだろうが飢えたファンとしてはこの30MMエグザビークルを「AC6に出てきそうな大型ティルトローター機!」と文脈ごった煮で味わってしまう。これはゲーム内にある無数のSFメカ、無数のアセンブルのひとつだと。

▲数量限定『ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON コレクターズエディション』はスタチューとアートブックを目玉とし、熱狂した者にはたまらない内容。さらにプレミアムコレクターズエディションが存在する…

 火を点けろ、燃え残った全てに。2023年8月25日、AC6こと『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』が発売。当日0時より状況を開始し、鉄と油と硝煙の匂いにまみれたSFの世界に没入した。それから2週間、辺境の開発惑星ルビコンでの闘争に明け暮れるため、現実世界の仕事と家事を高効率でこなして可能な限りPS4のコントローラーを握り続けた。3周目のクリアを果たし、今はトロコン達成のために全ミッションSランククリアという修羅の道を歩みはじめている。同時に、この世界をフィジカルで手にしたい欲もライジングし、スタチューやアートブックなどが同梱されるコレクターズエディションを追加で購入。これで私は完全にACを駆る独立傭兵であり、立派なルビコニアンだ。

 「このゲームのプラモをいち早く手にしたい。アーマード・コアの旧タイトルのキットでも良いが現在入手困難。AC6のプラモを早く!しかし待てない……」 飢餓状態で逆に知恵がフル回転して閃く。柳瀬敬之デザインワークスがあるじゃないか。氏は国内の著名メカデザイナーのひとりでアニメ、ゲームとそのアウトプットを見ない日はない。今回のAC6にも携わっているし、そもそもアーマード・コアを制作するフロム・ソフトウェアに在籍していた時期があり初期タイトルも参加している。そんな氏が手がけた『エグザビークル(ティルトローターVer.)』が発売となった。30 MINUTES MISSIONS(以下30MM)にグッと重心が生まれたのである。

▲エグザビークルは30MMの世界観を補強する重要なメカ。こちらもアニメやゲームでお馴染みの国内著名デザイナーらが携わっている

 バンダイスピリッツ独自のプラモシリーズである30MMは、手軽な価格と工程で量産型リアルロボットをマジで量産できるし、自分の好みにカスタマイズも楽しめる。同時にそのサポートメカとして世界観も支えるエグザビークルは陸海空、そして宇宙で活躍するメカではじまり、最近ではイヌやバイクと幅が広がるなか、今回のティルトローターはあらためてリアルみの強い空中支援SFメカだ。「リアルロボット」という言葉で括られるSFメカが主体となるアニメとゲームの系譜が’80年代から続いた先にAC6と30MMがあり、しかもどちらも「SFメカだけがオンステージする作品性」という尖った共通点がある。メカだけで存分に昂りたい。両者の求める理想郷は遠からずで、それは私にとっても切望した地でもあったのだ。

▲6歳の息子でもニッパーひとつで30分かからず組めるカジュアルさ。彼はロボットより実機めいたメカが大好物なので夢中になってプラモしていた
▲ヘリコプターのローター部って脆いイメージなんですが、デカめの本キットなこともありけっこう丈夫。ガシガシ遊べて良いです

 ニッパーひとつで30分もかからずゴール。思ったよりもデカくて堅牢で抜群フォルムなSFメカがその手に。プラ成型色も硬派でナイス。リアルロボットに背負わせるようにもできるので、同じく柳瀬敬之デザインの30MMラビオットにアセンブルすると強烈なマリアージュで優勝! ニコイチ合体させてドローン形態にすると各ミッションに出てくる敵メカみたいになってAC6プラモつくりたい欲も満足! すっかり第2次30MMブームが勃興です(3年前の第1次ブームでは20体ほど組んだ)。

▲このティルトローターは飛行モードから組み替えて30MMメカに背負わせられる。背中に3mm軸穴×2があるキットならガンプラにも装着可能
▲ティルトローターは2個買いましょう。ニコイチ合体させてドローン形態にレールキャノン付けて赤ミライト光らせば、ほらもう、アーマード・コア

 しかしなぜここまで30MMに重心が生まれたのか? それはAC6をプレイして刻まれたリアルロボットの手触りがあってこそ。30MMのカスタマイズウェポンズにあるキャノンはAC6のメリニット製大型キャノンでしかなく、その取り回し、発射音、爆風と威力が容易にイメージできる。大きすぎるキャノンと機体とのアンバランスなど気にならず、ただただ頼もしいのだ。このアセンブルで駆けるべきミッションも目に浮かぶ。

 現状、無数にアセンブルを選べる30MMは、もはや「アーマード・コアの模型」と言えるのではないのか? 状況ごとにアセンブルを組み替えできるのが正しくアーマード・コアなのだから。コア理論はAC6の世界を飛び出して30MMへと伝播したのだ。さぁ、貴方も30MMで独自アセンブルを組み、脳内戦闘で勝利すべく飛びたつのです。戦いの中でなぜ、我々は人型SFメカに魅せられるのか? その問いの答えのひとつが、ゲーム中に示されていてギョッしたのでAC6のプレイも是非。身体は闘争を求める。

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

プラモデルが紡ぐ親と子の物語/タミヤの「動物セット」を慈しむ。

 タミヤの1/35ミリタリーミニチュアシリーズには、戦車や人間ではなくいろんな動物が入ったアイテムがある。「1/35 動物セット」と銘打たれたこのプラモデルは大小18の動物と6つの鶏卵が入っているのだが、英語表記は”LIVESTOCK”、つまり家畜の模型である。

 パッケージの差し込み部にはそれぞれの役割が書かれている。主役は軍用のシェパード。ラバは荷役用、ウサギは食用なので死骸で造形されていて、豚、鶏、ガチョウたちもまた、人間のために飼育され、卵を産んだり食べられたりするための動物だ。人間中心主義のセット内容だが、組んで並べてハッとするのは、たぶん私に子供が生まれたからだろう。このプラモデルは、親子の物語でもある。

 犬と子犬、豚と子豚、鶏とひよこ。それぞれの成体が堂々たる造形で楽しめる一方、小さく弱き子供の姿もそこに添えられる。プラモデルには複雑なカタチを組み立てる喜びもあるが、動物セットはごくシンプルな分割ですぐにカタチが出来上がり、色を塗る面白さに軸足がある。まして、ひよこや子犬はワンパーツ。切り出すだけでそこにカタチがすでにある。そっと机に置くと、子どもたちは自立すら難しい。コテンと倒れたり、ぺたんと座り込んだりした姿は「家畜」という言葉で呼ぶのが憚られるほど愛おしい。

 豚は雌だ。並んだ乳房は母の持つ力を感じさせる。脚が造形されていない雌鳥は卵を温めているのだろう。第二次世界大戦の戦車や兵士が血なまぐさい男の世界であるのに対し、つかの間の平和やユーモラスな風景を表現するために用意された動物たちのプラモデル。しかし、ここにはそれ以上に生き物の営みや食物連鎖といったより根源的な概念が生々しく刻まれているようにも思える。

 あくまで情景作りの「おかず」として提案された動物セットではあるが、ゆえにこれまで数多くの模型ファンがこのアイテムを使ってたくさんのストーリーを紡いできた。なぜこれをいきなり組んでみようと思ったのかと言うと、タミヤから本作の続編にあたる「1/35 動物セットII」を発売するとアナウンスしたからだ。


 種類の違う3匹の犬はもちろん、鞍の付いていない馬やリアリティのある乳牛、もこもこした毛並みの羊はプラモデルとしてかなり新鮮だが、そこに子どもたちの姿はいない(大型の動物をパーツ化することで金型のスペースに余裕がなくなったこともあるかもしれない)。どっこい、動物セットIIの豚はよく見るとオスであることがわかる。およそ40年の時を経て「動物セット」の子豚たちが父に再会できるのだとしたら、やはり親子の物語は続いているのだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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