タミヤのCBR1000RR-Rはいつか組もうと思って買ってあったのだが、ウカウカしていたら赤と青のマーキングがめちゃくちゃカッコいい「30th Anniversary」仕様も発売されてしまった。ノーマル仕様とはデカールが違うだけだと思われるので、これは幸運である。2回組む口実ができたのだ。最初は色も塗らずにサラッと。次はその時に得た知見で塗ったほうが効果的なところを塗って、自分が目指す仕上がりに。なんでもそうだが、予習と復習ほど効くものはない。
シルバーのエンジン、白いカウル。プラスチックの色でだいたい実車に近い質感が得られるのがタミヤのバイク模型のいいところである。ノーマル仕様のキットではカウルが赤or黒の塗装パターンが示されていたが、「30th Anniversary」のキットはフロントカウルとタンクカバーを塗装するほかは白カウルにデカールを貼るだけでほぼ実車どおりになる。ということは塗装せずにパチパチと組んでいけばけっこうそれらしくなるのじゃないか、と予想していたのだが……。
予め穴の空いたブレーキディスクはありがたいなぁ……と思っていたら、プラスチックが黒である。本物はシルバーだ。というかこのプラモデル、最近のタミヤのバイク模型としては珍しく、プラスチックの色と全く違う色で塗装が指示される箇所がかなり多い。実車の再現度を高めることを優先してか、このマシン特有の細かいパーツが多い上にそれを効率的にランナーに配置しているため「これがシルバーのパーツだったらな(でも黒いプラスチックだ……)」とか「これがホワイトのパーツだったらな(でも黒いプラスチックだ)」といった場面にちょいちょい遭遇する。
もちろん組み味は抜群で、どこもかしこもまごつくことなくスルスルと組み上がる。バイク模型にありがちな小さいビスも完成するとけっこう隠れるようになっていたりして実感も損なわない。組んでいく途中で「なるほどこのパーツは塗ったほうが良さそうね」「ここは塗らなくてもそのままで充分かっこいいね」というのをチェックしていく。
組むアタマと塗るアタマは違うので、組み立てる過程で「塗るか塗らないか」をその都度判断していると結構疲れるし効率が悪いなと思うことがある。一周目でまず組むだけ、二周目でポイントを見極めた塗装を施し、そのあとで組むのに集中する……というのを勧める理由はそこにある。
なんてカッコいいことを言っているが、実際問題塗らずに組むだけでもかなり見ごたえがある。なにより複雑なカタチのパーツが所定の位置に収まり、だんだんガッチリとした塊になっていくのはヒーリング効果があり、「はー、このパーツがここにくっつくのか!」と驚いているだけでもプラモデルは充分楽しい。
ひとまずバイクのカタチになったところで記念写真を撮っておく。完成後に見えなくなってしまうところはどこか、絶対に塗ったほうがいいところはどこか。いまではもう完全にアタマにインプットされている。いきあたりばったりで100点の完成品を作るのは難しいが、「強くてニューゲーム」ならその道のりは決して困難ではない。すでに持っているプラモデルのカラーバリエーションが発売されたら「本当に完成させたいバージョンを本番に選び、そうじゃなかったほうは練習台と割り切る」というのも、気持ちを晴れやかにする方法なのである。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。