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飛行機プラモに人間の限界を超えたディテールを/エデュアルドのMiG-15UTI

 チェコのエデュアルドというメーカーの飛行機模型は世界最高レベルのカッコよさ。ディテールもシャープだしパーツの合いはいいし、どれを掴んでも最近のは全部出来が良い。ソ連製ジェット戦闘機の最高傑作、MiG-15の複座型(人が前後に二人乗りになるやつ)なんかもバシッとプラモデルになっているのが偉い。

ホビコレ プラッツ 1/72 MiG-15 UTI (ミグ15複座型) フィンランド空軍

 で、もともとエデュアルドというのは色んな国の飛行機プラモデルをさらにかっこよくするためのパーツを売っていた会社で、いまもディテールアップパーツの販売をしながら自社でもプラモデルを作るようになった。エデュアルドが自分の会社の飛行機をさらにかっこよくするために自分でパーツを別売りしている、となればもうそれは完成度がバカ高いものができることが約束されているっちゅうわけです。

 それなりに値段はしますし細密に加工された金属板を切ったり折り曲げたりして貼り込んでいくのはかなり難しいけど、しかし自分の目と手で工作しろと言われたらまず不可能なレベルの緻密な造形が手に入る。もっと言えば、上の写真みたいに印刷済みで塗装しなくてもいいパーツすら用意されています。つまりエッチング製のディテールアップパーツはプラモデルの名人が作り込んだような精密感がお金さえ出せば得られるところにアドバンテージがあるんですよね。

 飛行機模型のみどころのひとつ、コクピットの計器盤です。プラモデルのパーツに極薄&印刷済みの金属板を二枚重ねで貼り込むだけでもう肉眼ではわからんくらいの超細かくて立体感のあるメーターが出現しました。自分の会社のプラモデルの設計データをもとに作っているから輪郭だってバッチリ合います。小指の爪くらいの面積にこれだけの情報量があれば誰でもびっくりするはず!

 シートベルトを追加したりフットレストをプラパーツから金属に置き換えたりと、難易度は場所ごとに違いますが、瞬間接着剤とよく切れるナイフとピンセット、そして拡大鏡があれば取り組めます。もしこれをゼロから自分でやってね、って言われたらまずできないし、シートベルトのステッチ(縫い目)なんか人間の手では描けない。用意されていることが超大事!

 コクピットまわりに用意されたエッチングパーツをガンガン貼り込んでいくと、こんなに緻密な景色になります。凝縮感がすごい。あとMiG-15は機首から吸い込んだ空気が左右に分かれて、パイロットの左右の壁がそのままダクトになっていることがわかってこれがめちゃくちゃに楽しい。さらに複座の機体は単座の機体の2倍コクピットを楽しめる。前後にボヨーンと長いコクピットを覆う風防がこれまた猛烈に未来的なフォルムでかっこよろしい。

 コクピットに風防と天蓋を取り付けると……あんなに一生懸命貼り込んだエッチングパーツはほとんど見えない。

 じつは私、「モデラーは見えないところまで作り込むのが楽しい生き物なのだ」みたいなのがあんまり得意じゃない。誰にでも「見えなくなるところを作りたい日」と「そうじゃない日」があるので、いつでも気分でそれを選べることこそが自由なんじゃないのかと思います。

  見えなくなってもちらっと感じられる精密感、というのもまあいいのですが、むしろエッチング製のディテールアップパーツって「すっげえ細かい工作を(じつは誰かがお膳立てしてくれているから)できる自分SUGEEE」ってなっている状態の脳汁ドバドバ具合がいいんじゃないかと思うんですよ。

 どこをどれくらいディテールアップしたいかによって3種類から選べるエデュアルドのMiG-15UTI用エッチングパーツ。人間の手技では追いつかないような細密な造形と塗装を手に入れられるという意味ではまさにプライスレスな存在。せっかくお金を出したから全部使わないと……とビビる必要はありません。どこまでやるかは己が決めて、使いたいものを選んで投入しましょう。プラスチックパーツを貼って塗るだけではたどり着けない(そして自分だけがニヤニヤできるような)めくるめくミクロの世界に誘ってくれます。みなさんも、ぜひ。

ホビコレ プラッツ 1/72 MiG-15 UTI (ミグ15複座型) フィンランド空軍 エッチングパーツ3種付

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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