バンダイスピリッツの30MMと『アーマード・コア』はまったく関係のないコンテンツ。ただ、それぞれに何名かのメカデザイナーが集っているなかで柳瀬氏はどちらにも参加している。ゲームとプラモ、デジタルとフィジカル、デザインの組み立て方は違うだろうが飢えたファンとしてはこの30MMエグザビークルを「AC6に出てきそうな大型ティルトローター機!」と文脈ごった煮で味わってしまう。これはゲーム内にある無数のSFメカ、無数のアセンブルのひとつだと。
火を点けろ、燃え残った全てに。2023年8月25日、AC6こと『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』が発売。当日0時より状況を開始し、鉄と油と硝煙の匂いにまみれたSFの世界に没入した。それから2週間、辺境の開発惑星ルビコンでの闘争に明け暮れるため、現実世界の仕事と家事を高効率でこなして可能な限りPS4のコントローラーを握り続けた。3周目のクリアを果たし、今はトロコン達成のために全ミッションSランククリアという修羅の道を歩みはじめている。同時に、この世界をフィジカルで手にしたい欲もライジングし、スタチューやアートブックなどが同梱されるコレクターズエディションを追加で購入。これで私は完全にACを駆る独立傭兵であり、立派なルビコニアンだ。
「このゲームのプラモをいち早く手にしたい。アーマード・コアの旧タイトルのキットでも良いが現在入手困難。AC6のプラモを早く!しかし待てない……」 飢餓状態で逆に知恵がフル回転して閃く。柳瀬敬之デザインワークスがあるじゃないか。氏は国内の著名メカデザイナーのひとりでアニメ、ゲームとそのアウトプットを見ない日はない。今回のAC6にも携わっているし、そもそもアーマード・コアを制作するフロム・ソフトウェアに在籍していた時期があり初期タイトルも参加している。そんな氏が手がけた『エグザビークル(ティルトローターVer.)』が発売となった。30 MINUTES MISSIONS(以下30MM)にグッと重心が生まれたのである。
バンダイスピリッツ独自のプラモシリーズである30MMは、手軽な価格と工程で量産型リアルロボットをマジで量産できるし、自分の好みにカスタマイズも楽しめる。同時にそのサポートメカとして世界観も支えるエグザビークルは陸海空、そして宇宙で活躍するメカではじまり、最近ではイヌやバイクと幅が広がるなか、今回のティルトローターはあらためてリアルみの強い空中支援SFメカだ。「リアルロボット」という言葉で括られるSFメカが主体となるアニメとゲームの系譜が’80年代から続いた先にAC6と30MMがあり、しかもどちらも「SFメカだけがオンステージする作品性」という尖った共通点がある。メカだけで存分に昂りたい。両者の求める理想郷は遠からずで、それは私にとっても切望した地でもあったのだ。
ニッパーひとつで30分もかからずゴール。思ったよりもデカくて堅牢で抜群フォルムなSFメカがその手に。プラ成型色も硬派でナイス。リアルロボットに背負わせるようにもできるので、同じく柳瀬敬之デザインの30MMラビオットにアセンブルすると強烈なマリアージュで優勝! ニコイチ合体させてドローン形態にすると各ミッションに出てくる敵メカみたいになってAC6プラモつくりたい欲も満足! すっかり第2次30MMブームが勃興です(3年前の第1次ブームでは20体ほど組んだ)。
しかしなぜここまで30MMに重心が生まれたのか? それはAC6をプレイして刻まれたリアルロボットの手触りがあってこそ。30MMのカスタマイズウェポンズにあるキャノンはAC6のメリニット製大型キャノンでしかなく、その取り回し、発射音、爆風と威力が容易にイメージできる。大きすぎるキャノンと機体とのアンバランスなど気にならず、ただただ頼もしいのだ。このアセンブルで駆けるべきミッションも目に浮かぶ。
現状、無数にアセンブルを選べる30MMは、もはや「アーマード・コアの模型」と言えるのではないのか? 状況ごとにアセンブルを組み替えできるのが正しくアーマード・コアなのだから。コア理論はAC6の世界を飛び出して30MMへと伝播したのだ。さぁ、貴方も30MMで独自アセンブルを組み、脳内戦闘で勝利すべく飛びたつのです。戦いの中でなぜ、我々は人型SFメカに魅せられるのか? その問いの答えのひとつが、ゲーム中に示されていてギョッしたのでAC6のプレイも是非。身体は闘争を求める。
「つくる」をテーマに、世間話をしています。