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タミヤ新作、護衛艦「もがみ」のプラモデルにスナップフィットが使われる理由。

 全日本模型ホビーショーでいちばん意外な新製品だったのは、タミヤのもがみでした。左右の壁が上すぼまりになっている海上自衛隊の「もがみ」は、その内部にある構造物を再現しようとすると、先に構造物を組んでから左右の壁をそれぞれ貼り合わせるしかないように見えます。しかしタミヤは「上部が開口された船体を一体成型して、下から構造物をハメる」というコペルニクス的転回でこれを解決していたのです。すご!

 上の船体はまるっとワンパーツで、そこに4つのブロックごとに組み立てた構造物を下からはめ込むという仕組みです。しかもですね、固定するのに接着剤を使いません。下からブロックを入れると「カチン」と音がして、決まった位置に固定されるのです。いわゆるスナップフィットというやつですね。塗装後に合体できるのも制作の手順がシンプルになりそうで最高。

 艦底側から見たところです。最終的には喫水線の面にあたるパーツでフタをされるのですが、下から押し込んだ各ブロックが船体側面内側にある小さな爪に引っかかって落ちてこないようになっています。各ブロックが、上下方向だけでなく前後方向にもカタカタ言わずにピシッと収まってくれるのは衝撃的。

 開発スタッフによれば、「すべての構造物を1ブロックにまとめて最後にハメ込む設計も原理上は可能だけど、船体パーツの収縮率(プラモデルは金型から出てくるときに冷えて縮みます)と構造物のブロックの収縮率が違うので、最終的な寸法をぴったり合わせるのが難しい」とのこと。あえて構造物を4ブロックに分割して決められたスペースに押し込むことで、微妙な遊びをお互いが打ち消し合う……という”ミクロレベルのおしくらまんじゅう的な原理”でカチッとした位置決めが可能になったのだとか。微妙にズレた位置に貼ってしまうと上下前後に隙間ができる可能性がある「接着」をあえて使わず、ベテランでもノービスでも確実にキレイに組めるようにするための「攻めのスナップフィット」だというのです。

 ステルスマストの四方から伸びるフラット(横棒)も水平垂直がビシッと出るようにスライド金型を使って一体成型。たしかにこれをプルプルしながら正しい角度で貼るのは難しいもんね。ただし、船体下面からマストをはめ込む際はこの細いパーツを折らないようにちょっと注意が必要だなと感じました。このプラモ、スナップフィットや一体成型を使っていると言っても決して「初心者向け」と間口を狭めているのではなく、むしろ「ベテランでもノービスでも必ずうまく組めるようにする」というタミヤのイズムがしっかりと流れています。

 海上自衛隊のもがみ、すでにピットロードという会社が同じ1/700スケールでプラモデルにしているし、カクカクしたシルエットは模型的に美味しい「ごちゃごちゃした感じ」にも乏しい印象です。しかし、タミヤにはタミヤらしい組み味があり、それを体験するために組みたいなぁと思わせるプラモデルです。同社のウォーターラインシリーズにおける完全新規開発アイテムとしては6年前に発売された「島風」以来の進水。さあ、みんなもアップデートされた護衛艦を組んで、最新のタミヤの手腕を感じてください。そんじゃまた。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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