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戦車と共に進撃する歩兵たちの姿がありありと刻まれたレジェンドプラモ!「タミヤ 1/35 ドイツ陸軍 歩兵 進撃セット」

▲「戦車に乗った歩兵」のフィギュア、実はMMではちょっと珍しいんです

 タミヤの製品も含め、古の戦車模型は元々モーターで走るのが前提でした。が、1968年のミリタリーミニチュア(MM)シリーズの登場によって、タミヤは「戦車だけではなく乗員やその周囲の兵士や小物なども含めて模型化し、それをディスプレイする」という画期的な遊び方を提案しはじめます。この斬新な遊びの面白さをプレゼンするため、箱や説明書には兵士の服装や装備についての詳細な解説を掲載したり、写真コンテストを主催したり、人形を改造するコンテストを開催したり、とにかく全力でさまざまな施策を打ち出しました。

▲まるで映画のポスターのような濃厚なパッケージアート

 と、いろいろやっているタミヤですが、意外にも「戦車に乗った歩兵のフィギュア」が発売されるまでにはそこそこ時間がかかりました。MM最初の商品は「ドイツ戦車兵セット」でそのものズバリ戦車兵のキットですが、「戦車のおまけとして砲塔に立たせる戦車兵」以外のフィギュアは、実のところさほど発売されていないのです。

 これはちょっと意外です。というのも、戦車の後ろに歩兵を乗せて進撃するという戦闘スタイルは、洋の東西を問わずいろいろな国の軍隊で一般的なものでした。戦車は視界が悪く索敵能力に限界があるため、隠れた歩兵や砲兵を素早く発見するのが苦手。また、こういった小粒な敵を素早く制圧するためにも、随伴して行動する歩兵は必須です。

 「だったら戦車の上に歩兵を乗せちゃえばいいじゃん」というわけで、戦車跨乗兵(タンクデサントともいいます)というのは現代でもしばしば見られるポピュラーな存在となりました。第二次大戦中のソ連によるタンクデサントの多用は有名ですが、別にソ連に限らずあらゆる国で見られた戦術です。「フィギュアと戦車を組み合わせて遊ぼう!」というコンセプトをプレゼンするには打ってつけだと思うんですが、これを再現したキットはなかなか発売されませんでした。

▲ちょっと使い道がわかりづらいキットだと思ったのか、説明書には「こうやって遊んでね」という参考例が掲載されています

 そんな戦車跨乗兵のキットがタミヤからようやく発売されたのは、1975年のこと。その名も「ドイツ歩兵 進撃セット」。この1975年はMMにとってすさまじい年でして、この年だけでおよそ27点もの新製品が発売されております。嘘だろ……。この「進撃セット」も、まさに絶頂期を迎えたMMのノリにノったテイストを味わえるキットとなっております。

▲現在のタミヤのキットらしいパーツ配置とは違いますが、これはこれでシステマチックな感じがするランナー

 ランナーは二枚。当時のタミヤのフィギュアは現在のような「フィギュア本体のランナー+汎用装備品ランナー」という構成になっておらず、フィギュアと装備品のパーツが同じランナーに配置されております。しかしヘルメットならヘルメット、ライフルならライフルが集中して並ぶ配置には、独特の美学も感じますね。

▲この下半身のむちむち感! 劇画だ!!
▲この良い意味での彫刻のクドさが、MM絶頂期の味なのです!
▲よく見るとこの人だけ首元のボタンを外している! 芸が細かいですね〜

 パーツを見るとさすがに時代を感じますが、この頃の劇画っぽいクドめの彫刻はこれはこれで見ていて楽しい。全員きっちり制服を着こなし、足回りもジャックブーツと、70年代における「無敵ドイツ軍」的イメージを具現化したようなフィギュアたちです。

▲戦車と組み合わせるとこんな感じ。賑やか!
▲この、狭いところにミチミチに歩兵がしがみついている感じ! めっちゃいい
▲地面にいる人たちは「物陰から攻撃のタイミングを伺っている歩兵」としても使えそう
▲車体の上に寝そべって正面からの面積をなるべく減らそうとしている人など、ポーズは全体的に緊迫感があります

 やはりこのフィギュアセットは、戦車と組み合わせてこそ光り輝きます。ちょっとポーズは大袈裟ですが、全員の視線が前方に向いて揃うことで意外なほど緊張感が漂っております。ある者は砲塔の後ろに隠れ、ある者は銃を抱えて戦車の影から前方を警戒し……と、戦闘を控えたピリピリした空気が伝わってくるようです。砲塔の後ろに歩兵がゴチャッと乗ることで戦車のシルエットに変化が生じているのも面白いポイント。車両単品では出せない、緊張した雰囲気はこのキットならではです。

 というわけで、50年近く昔のキットながら、ピリリとしたムードが楽しめるこのキット。まさに絶頂期のMMらしい、数を重ねたことによる表現力の高さを窺わせる内容でした。小さな兵士たちと映画のポスターのようなギトギトした箱絵を往復すれば、脳内に戦車と共に進撃する歩兵たちの姿がありありと思い浮かぶはず。昔のキットではありますが、単に古いキットと切り捨てるには惜しい魅力のあるアイテムです。

しげるのプロフィール

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

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