誰が言ったか、「プラモデルは誰が作っても同じものができる(=だから創造性がない)」なんて言葉があります。少年たちは「それじゃあもっと創造性のあることを始めよう」などと思うはずもなく、「ナニクソ、俺は人と違う完成品を作ってみせるぞ」と思い、よりプラモデルにのめりこんでいくのでした……。
『ナイトライダー』に登場するナイト2000というマシンは、喋って光る未来のクルマです。プラモデルでそれを再現しようとすると、まあ喋って光ってほしい。喋って光るプラモデルはアオシマから発売されているのですが、オレは「喋って光れば誰が見てもナイト2000だし、喋らせるのも光らせるのもメーカーが用意してくれた基盤を組み込む作業であって、オレがわざわざそれを組み立てる必要があるかな」と思っていたのです。めんどくさい人ですね。
ナイト2000のプラモデルに入った基盤は、チップLEDが並び、ICとスピーカーが実装され、組み立てと配線が終わっています。あとはカーモデルを普通に組んで、ボンネットにこのユニットをブチ込めばだれでも喋って光るクルマが手に入ります。ボタン電池2個を買ってきて、準備完了。
それ以外のところはフツウのカーモデルです。内外装の色分けはもちろん、メッキパーツや、4色のクリアーパーツが入っているゴージャスなプラモです。フロントとサイドの窓は透明、リアはスモークが入り、ストップランプやウインカーはそれぞれクリアーレッドとクリアーオレンジに着色してあるから自分で塗らなくていいのが嬉しい。
未来的なハンドルのカタチがいいですね。左右に並ぶ光るボタンの数々は肉眼で見えないくらいの細かさですが、ご丁寧にひとつひとつを違う色で塗るよう塗装指示があります。すごく大変そうでしょ。大変なときはやらなくても大丈夫です。室内、わざわざ覗き込まなければあんまり見えないし!
ボンネット内側にメッキパーツやクリアーパーツを組み込んでいくのですが、リトラクタブルライトの可動ギミックはめっちゃこまかいパーツを慎重に貼らなければいけません。速乾性の流し込み接着剤を使ってなるべくキレイに組みます。赤いクリアーパーツはLEDの光を劇中同様に見せてくれるはずです。
急いで組んだから屋根のクリアーパーツがちょいと浮きましたが、ツヤツヤのナイト2000があっという間に完成しました。メッキパーツやクリアーパーツを貼るのにセメダインのハイグレード模型用を持っていると完全に勝利できます。リトラクタブルライトがカチッというクリック音とともに出し入れできるのが楽しい。サイドウィンドウがないのもアメリカ製のカーモデルっぽくてなんだか面白い。そして、スイッチオン。
自分が組んだプラモが光って喋ります。自分がなにか特別なことをしたわけじゃないのに。じゃあ自分がこれを作らなくてもよかったのか?というと、断じてそんなことはありません。組み立てている間は楽しかったし、完成してからも楽しい。このプラモデルは誰が作っても同じものができる。だからいいんだ!と思えるのが、アオシマのナイト2000なのでした。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。