みんなで作る模型サイト nippperはあなたの投稿をお待ちしています!
詳しくはコチラ!

篠原重工のオートバランスは逸品/MODEROID クラブマン・ハイレッグ

  1990年、小学生だった当時の私の頭の中を占めていたのは、SDガンダムにワタル、ミニ四駆、そして『機動警察パトレイバー』でした。この年、初めて家族旅行で東京へと辿り着いた私には、どうしても行きたい場所がありました。それが当時バンダイが出店していたアンテナショップ、B-CLUBショップです。

 コミックボンボンに載っていた渋谷店の地図を頼りに辿り着いた店内には、地元のどのおもちゃ屋にも模型屋にも置いていない、ガレージキットの山々。そしてショーケースにはまだ暗黒四天王が全種発売前で再現不可能だった、BB戦士の復活闇将軍が凄まじいオーラを放って飾られていたのを今でも覚えています。

 私のお目当ては、1/60クラブマン・ハイレッグのガレージキット。漫画版パトレイバーで強烈な印象を残したこいつが欲しくて仕方なかったのです。棚に陳列されたクラブマン・ハイレッグを見つけたものの、6,900円と予想外の高額にその日は断念。翌日家族に頼み込みお金を借り、店に行くもすでに売り切れ。店員さんからはガレージキットは生産量の都合で再入荷できるか不明、との返事。さらに「あれは凄く難しいからこっちにした方が良いよ」とSDパトレイバーのガレージキットを薦められ、それを慰めのように買って店を後にしました。

 そして私だけは観光にもテーマパークにも行かず日程の許す限りは店に通いつめ、また並ばないかと淡い期待を抱くも、結局は出会うことも無く帰路に付いたのでした。

 それから33年後の2023年。クラブマン・ハイレッグが箱に詰まっている!そう、MODEROIDシリーズで1/60クラブマン・ハイレッグがプラモデルとなってリリースされたのです。どっからどう見てもプラスチックモデルです。マジかよ……。

 組み立てはいたってシンプル。潜水艇を思わせる本体に、名前の由来である長い足を取り付け。一時間半もあれば完成。ではこのMODEROIDクラブマン・ハイレッグがマイナーメカをとりあえず形にしただけのモノなのか……というとそんなことは決してありません。パトレイバーに登場するメカ、レイバーに共通する特徴的な関節のシーリングを、MODEROIDでは硬質なプラスチック素材そのままで表現しています。本来柔らかいものを硬い素材で造形すると可動範囲と強度が確保できるものの、見栄えが犠牲になりがち……あちらを立てればこちらが立たぬ。しかしこのクラブマン・ハイレッグでは一番目立つ前足の関節部に、蓋になるパーツを被せて問題をクリアしています。

 このカバーには関節軸があって前足の動きにきちんと追従するので、組んだ後にも気になりません。シンプルゆえユーザーにストレスを与えず、むしろ組み味はすっきり。そして効果は抜群。じつにスマートな解決方法です。

 気持ちにも時間にも余裕があるので、せっかくだしと付属のデカールを貼り付け。楽しくなってきたのでクリアパーツもマッキーで塗ってしまいます。

 目の前にあるな……。
 
 何度見返しても、目の前にクラブマン・ハイレッグがあるんです。他にもX10、ピースメーカー、ヴァリアント、レイバーキャリアなど当時の夢だったアイテムがどんどんリリースされました。でもこいつは、一度実際に手を取ったもののするっとすり抜けて、33年もかけてプラモデルに姿を変えやっとこの手に戻ってきたのです。

 そしてごめんなさい。あの時の親切な店員さん。やっぱり私は、例えいくら難しくてもクラブマン・ハイレッグに挑戦したかったようです。

S-HAR-ON

1979年生まれ。熊本出身。 ジャンルはメカプラ美プラスケモまで。

関連記事