左はPLAMAX最新作、VF-1J バトロイドの胸パーツ。右はPLAMAX VF-1A/S ファイターの胴体上面パーツ。『超時空要塞マクロス』に登場するVF-1を知っていれば、これが同じ機体の同じ部分であるというのを理解できるはずです。こんなにカタチが違うのに、「なるほど、飛行機っぽく作ればそうなるし、ロボットっぽく作ればそうなるよね」と納得してもらえるメカって、もしかしたらバルキリーしかないんじゃないかな。
いまから40年以上前に生み出された「実在しそうなデザインの戦闘機がロボットに変形する」というアイディアは、映像として多くの人に刷り込まれ、たくさんの変形玩具やプラモデルで「本当に変形しそう!」と思い込まされてきました。たとえそれが現実には存在し得ないものであると頭のどこかでわかっていても、僕らはVF-1という稀代のアイディアに魅入られてしまったから、いろいろな態度でそのカタチやギミックと戯れてきたし、これからも戯れ続けるのです。
>PLAMAX 1/72 VF-1J バトロイドバルキリー(一条輝機)
左がPLAMAX製バトロイドの脚。右がPLAMAX製ファイターの脚。エンジンの収まる脚が太ければロボットとしてかっこいい。飛行機としては細いほうが機体が薄く見えてリアリティが増す。「それならちょうどその間を取ればいいじゃない」というのは簡単ですが、バルキリーはファイターのすべてのパートが移動し、余すことなくロボットのフォルムに転換される奇跡のデザインなのでそんなに話は単純じゃありません。
あちらを立てればこちらが立たず、こちらを大きくするとあちらがどうにも収まらない。「それならここが落とし所ではないか」と数多くの製品が変形モデルの実現に挑み、多くのファンが「俺はこの製品のここが好き」「でもここはこっちの製品のほうが好き」と愛ある激論を交わしてきました。この”揺らぎ”こそが、VF-1というメカをここまで長いこと愛される存在にしたんじゃないかと僕は思っています。
それにしてもこの、ハリのある腕の面。どう考えても胴体下面のエンジンブロックに挟まれた空間には収まってくれそうにありません。でもでも、「かっこいい!」と痺れた劇中シーンやパッケージイラストには、たしかに力強い前腕が描かれ、そこからごっつい丸指の手が突き出していました。拳なんてまず腕の中に格納できない大きさだけど、これは「変形しそうなこと」や「航空機的なリアリティ」よりも「ロボットとしてのダイナミズムに溢れたシルエット」を再現することに力を注いだ結果です。
アニメに登場したロボットのプラモデルって、いまでは「高解像度にして工業製品的なシャープさを追い求める」「古いアニメの設定画もトレンドに合わせた体型のバランスにアジャストしていく」というのがほとんどです。手で描かれたキャラクターとしてのロボットを、なるべくそのままの印象で立体化し、よく動いてまあまあ色分けされているプラモデルにしよう……という考えのほうが、じつのところレアだったりするんですよね。
背中で折り畳まれた主翼は左右一体。このプラモデルがファイターには変形しない(=徹底的にバトロイド形態に向き合う)ことに対する決意表明であると同時に、パーツ数を減らして組みやすく剛性感のある仕上がりになるというメリットももたらしてくれています。各ユニットをつなぐダボもしっかりとしたもので、かなりガッチリした完成品が手に入ります。
足首(ファイター時にはエンジンノズル)も前後一体型で、内部のディテールはガッシリ&ハッキリ。組み立てるとわかりますが、頭部〜胸部のややこまかい分割から四肢に向かって構成がシンプルになり、説明書の後半に進むにつれて加速していく組み味は爽快そのもの。欲しいカタチ、過ごしたい時間。その両方にしっかりと目を向けて作られた次世代のバトロイド模型を、みなさんもぜひ!
VF-1Jバトロイドバルキリー
完全新金型でテイクオフ!
PLAMAX 1/72 VF-1J
バトロイドバルキリー
(一条輝機)
¥4,180(税込)
予約期間:2023年05月11日〜2023年06月07日まで
2024年05月発売
からぱた/nippper.com 編集長
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。