「ロボット・アニメメカ」タグアーカイブ

自分にとって思い入れのあるキャラクターを探すのは、プラモ遊びの大きな入口。そのまま組んでアクションポーズを楽しむも良し、実在のメカを小さくしたスケール モデルと並べてよし、登場作品の垣根を超えたコラボレーションも、机の上でなら自由自在にできます。色分けや可動を楽しめるものもあれば、クールなポーズで固定され、塗装へといざなう単色のモデルも次々と発売されています。空想する楽しさはもちろん、あたかも実在するかのようにアイディアを込めるのも楽しみです。

徹底的にロボットモデル。PLAMAXのVF-1バトロイドをランナー状態で味わう!

 左はPLAMAX最新作、VF-1J バトロイドの胸パーツ。右はPLAMAX VF-1A/S ファイターの胴体上面パーツ。『超時空要塞マクロス』に登場するVF-1を知っていれば、これが同じ機体の同じ部分であるというのを理解できるはずです。こんなにカタチが違うのに、「なるほど、飛行機っぽく作ればそうなるし、ロボットっぽく作ればそうなるよね」と納得してもらえるメカって、もしかしたらバルキリーしかないんじゃないかな。

 いまから40年以上前に生み出された「実在しそうなデザインの戦闘機がロボットに変形する」というアイディアは、映像として多くの人に刷り込まれ、たくさんの変形玩具やプラモデルで「本当に変形しそう!」と思い込まされてきました。たとえそれが現実には存在し得ないものであると頭のどこかでわかっていても、僕らはVF-1という稀代のアイディアに魅入られてしまったから、いろいろな態度でそのカタチやギミックと戯れてきたし、これからも戯れ続けるのです。

PLAMAX 1/72 VF-1J バトロイドバルキリー(一条輝機)

 左がPLAMAX製バトロイドの脚。右がPLAMAX製ファイターの脚。エンジンの収まる脚が太ければロボットとしてかっこいい。飛行機としては細いほうが機体が薄く見えてリアリティが増す。「それならちょうどその間を取ればいいじゃない」というのは簡単ですが、バルキリーはファイターのすべてのパートが移動し、余すことなくロボットのフォルムに転換される奇跡のデザインなのでそんなに話は単純じゃありません。

 あちらを立てればこちらが立たず、こちらを大きくするとあちらがどうにも収まらない。「それならここが落とし所ではないか」と数多くの製品が変形モデルの実現に挑み、多くのファンが「俺はこの製品のここが好き」「でもここはこっちの製品のほうが好き」と愛ある激論を交わしてきました。この”揺らぎ”こそが、VF-1というメカをここまで長いこと愛される存在にしたんじゃないかと僕は思っています。

 それにしてもこの、ハリのある腕の面。どう考えても胴体下面のエンジンブロックに挟まれた空間には収まってくれそうにありません。でもでも、「かっこいい!」と痺れた劇中シーンやパッケージイラストには、たしかに力強い前腕が描かれ、そこからごっつい丸指の手が突き出していました。拳なんてまず腕の中に格納できない大きさだけど、これは「変形しそうなこと」や「航空機的なリアリティ」よりも「ロボットとしてのダイナミズムに溢れたシルエット」を再現することに力を注いだ結果です。

 アニメに登場したロボットのプラモデルって、いまでは「高解像度にして工業製品的なシャープさを追い求める」「古いアニメの設定画もトレンドに合わせた体型のバランスにアジャストしていく」というのがほとんどです。手で描かれたキャラクターとしてのロボットを、なるべくそのままの印象で立体化し、よく動いてまあまあ色分けされているプラモデルにしよう……という考えのほうが、じつのところレアだったりするんですよね。

 背中で折り畳まれた主翼は左右一体。このプラモデルがファイターには変形しない(=徹底的にバトロイド形態に向き合う)ことに対する決意表明であると同時に、パーツ数を減らして組みやすく剛性感のある仕上がりになるというメリットももたらしてくれています。各ユニットをつなぐダボもしっかりとしたもので、かなりガッチリした完成品が手に入ります。

 足首(ファイター時にはエンジンノズル)も前後一体型で、内部のディテールはガッシリ&ハッキリ。組み立てるとわかりますが、頭部〜胸部のややこまかい分割から四肢に向かって構成がシンプルになり、説明書の後半に進むにつれて加速していく組み味は爽快そのもの。欲しいカタチ、過ごしたい時間。その両方にしっかりと目を向けて作られた次世代のバトロイド模型を、みなさんもぜひ!

VF-1Jバトロイドバルキリー
完全新金型でテイクオフ!

PLAMAX 1/72 VF-1J
バトロイドバルキリー
(一条輝機)


¥4,180(税込)

予約期間:2023年05月11日〜2023年06月07日まで
2024年05月発売


からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

僕は切り取らない。あなたが「プラモデルのアイコンだったこと」をみんなに知ってもらいたいから。

 先日開催された「第62回静岡ホビーショー」で先行発売されたマックスファクトリー期待の新プラモ「PLAMAX マシーネンクリーガー 1/35 反重力装甲戦闘機 Pkf.85 ファルケ」。めちゃくちゃ楽しみにしていたので、迷わずゲットしてきました。このプラモ、説明書をめくったらいきなり「プラモのアイコン」にニッパーを入れるのです。初手からびっくりさせられます。

 静岡の街には、プラモのランナーの形(ランナーとはプラモのパーツが収まっている枠のこと)をしたモニュメントが多数設置されています。僕の妻もニュースでモニュメントを見て「プラモじゃん」と言っていたので、多くの人がプラモと言ったらこの姿を思い浮かべるのでしょう。ランナーこそプラモのアイコンなのです。

 PLAMAX ファルケのDランナー。このランナーがファルケを運搬する「ドーリー」に変身するのです。説明書に指示されている位置でカットし、パーツを繋げることで完成します。

 説明書では初手から登場しますが、ファルケを組んだ後でもドーリーは作れます。先にファルケ本体を組みたい場合は、Dランナーはパーツだけカットするようにしましょうね。

 説明書とパーツを照らし合わせていくと、カットする箇所にはこのようにガイドが設けられています。この部分を目印にパーツをカットしていきましょう。

 ドーリーを作っている時、ランナーにあるパーツ番号のタグもカット指示がありました。僕の中でこのパーツ番号のタグってランナーをランナーたらしめている大きな要素だと思っています。これをカットしないことで、「実はこのドーリーはプラモのランナーから作れるものなんだよ」というメッセージがより強く残せると思いました。

 「4」とか「1」。ハンガーで何かを区別するために付けられている番号かな? とかディテールとしても活用できますね。

 プラモデルのアイコンである「ランナー」をバラバラにカットして繋げることで生まれるドーリー。そんなユニークさを、このプラモを見た多くの人に知ってもらいたい、そして作った自分も忘れたくない……だからバラバラになったプラモのアイコンの中に、きらりと光るランナーらしさを残してみたくなったのです。そんな遊びも「PLAMAX シーネンクリーガー 1/35 反重力装甲戦闘機 Pkf.85 ファルケ」は楽しめます。発売は7月ともう少し先ですが、実際に組んでみて本当に最高のプラモでした! ぜひ予約できるうちにポチッとしてくださいね!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

全モデラーのストックに「クリアー塗料缶スプレー」をお届けしたい理由。

 缶スプレーは「小さなパーツを1発で塗装する」のにも超便利! 特にキャラクタープラモのセンサークリアーパーツや、飛行機模型の翼端灯なんかを塗る時に「クリアー塗料缶スプレー」があるだけで、秒で塗装が終わります! エアブラシで塗る人も、筆塗りで楽しんでいる人にも「クリアー塗料の缶スプレー」はぜひともオススメしたいのです。

 模型を作っているとクリアーオレンジやクリアーレッド、クリアーブルーなどをクリアーパーツに塗る指示に結構遭遇します。最近のプラモはパーツで分けてくれていることが多いので、組み立てる前に塗装してからパーツを取り付ければ問題ないのですが、そのために塗料を出して希釈してエアブラシ塗装したり、筆塗りしたりするのはひとアクション多くなり「面倒だな〜」って気分になります。また瓶のクリアー塗料は、通常塗料よりも粘度があったりして希釈や筆塗りのコントロールがちょっと難しいです。

 そこで登場するのが「缶スプレー」ってわけです。缶の中にメーカーがベストに希釈してくれた塗料が入っているので、よく撹拌してからプッシュするだけで塗装が完了してしまうのです。面倒なあれこれはクリアー塗料缶スプレーがあれば解決してしまうのです。

 ハセガワの1/72 VF-1 バトロイドのセンサーパーツ。クリアーオレンジの塗装指示に合わせてさっとひと吹き。これで完成です!

 缶スプレーというと「広い面積を一気に塗装する」というイメージが強いかもしれませんが、このようなクリアーパーツで表現されたセンサーを塗装するような「小面積&特殊カラー」を塗るシーンにも大活躍なのです。1本買うだけでそうとう長い間使えますので、もしクリアー塗料の缶スプレーをまだ持っていないという人はこの機会に各色揃えてください。塗装の楽しいテンションを、クリアーパーツが阻害してしまうなんてことからおさらばできますよ!! それでは〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ガンダムSEEDが発明した「ディアクティブホワイト」が白の筆塗りを快適にします!!

 水性ホビーカラー筆塗りで白を発色させる時、1層目にこの「水性ガンダムカラー ディアクティブホワイト」をぜひ塗ってください。ガンダムSEEDが発明したディアクティブモードの白は、さまざまな白の上塗りを受け止めてくれますよ! その理由を解説していきます。

 水性ホビーカラー塗装におけるサーフェイサーとして大注目を浴びている「ガイアノーツ ナスカカラー メカサフヘヴィ」。青みのあるグレーとラッカー塗料下地なので、上から水性ホビーカラーを塗っても溶けることなく下地の色の効果をフルに発揮してくれます。この下地を活かして最高にかっこいい筆塗りを見せてくれているのモデラーが清水圭さん。彼の著書もnippperで紹介しているので、記事を読んでぜひ本も買いましょう!

 メカサフヘヴィの上から直接メインカラーの白を塗ると、下地のグレーと白との差が激しいのでなかなか発色しません。そのまま塗り重ねると塗膜も厚くなり、見映えを損ないます。そこで繋ぎとして「グレーに近い白」を一層挟むのがポイントなのです。

 そして、グレーに近い白の傑作塗料こそが、この「水性ガンダムカラー ディアクティブホワイト」ってわけです。隠蔽力が他の白の塗料よりもあり、かつグレーにも白にも見える超ナイスな調色具合がたまらんのですよ。上の写真のようにまずは薄く全体に塗っていきます。

 乾いたら再度上から重ね塗りした状態です。メカサフヘヴィの色味が透けながらも、各所で白にもグレーにも見える雰囲気になっています。この上からあなた好みの白を塗ってあげることで、塗る回数も少なくメインカラーの白を発色させられます。水性ホビーカラーの白を塗る際の1層目に、ここまで適した塗料はないでしょう! 「ディアクティブホワイト」で白塗装を楽しんでいこうぜ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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いつだって「ロボットのリアル」は胸像が教えてくれた/PLAMAXのアルフォンスが改めて示す『機動警察パトレイバー』のリアリティ。

 マックスファクトリーの「1/20 泉野明 with アルフォンス」がオレの原体験を一気にフラッシュバックさせる。そうだった。俺は胸像生まれリアルロボット育ち。生まれて初めて見た模型専門誌の別冊は『ガンダム・センチネル』で、あたかもそこにめちゃくちゃデカいロボット(1/20 Sガンダム胸像)が本当にいるんじゃないかという表紙の胸像を見て衝撃を受けた。

 遡れば、同じ『月刊モデルグラフィックス』の別冊『プロジェクトZ』や『ミッションZZ』も同じようにガンダムのデカい胸像を表紙にしていたし、『電撃ホビーマガジン』の創刊号をはじめ、模型に関連するメディアというのは”ここぞ”というときにスペシャルなビジュアルとして「大スケールの胸像」を提示してきた。



 

 ビジュアルイメージとして新しい何かを示すために作られるクローズアップモデル……すなわち、「ロボットプラモの胸像」は、そもそもサイズが大きくなければいけない。全身が再現されたフツウのロボットモデルの胸から上だけを作っても、「すでにあるロボットプラモの一部分」だ。ディテールアップすればそれ以上の表現ができるかもしれないけど、例えばカメラのレンズに収まったときのパースや人間の手が可能な工作精度といったものを考えれば「パース感や細部のディテールと、それに由来する”リアル”な説得力」というのは大サイズだからこそ感じられるものに違いない。

 PLAMAXが展開する「機首コレ」でアルフォンスが組める。商品名のアタマに「泉野明」が来ているとおり、なるほどこれは1/20のフィギュアありきで算出されたイングラムの部分的立体化(=全身像では巨大になりすぎることからきた選択)であり、ハナから「模型誌別冊の表紙モデルに耐える何かを作ろう」と考えたわけではない。しかし、そのサイズゆえにパーツの端面はごくシャープに感じられ、グラマラスに変化する曲面は小スケールモデルのそれとはまったく異なる説得力──すなわちスジ彫りの追加に頼らない”情報量”を持っている。

 大スケールだから細密な模型でなければいけない、と誰かが決めたわけではないように、本作はパーツ分割自体どこも大ぶりであって、たとえば実機があるならそこに備わっていてほしい緻密なギミックを大量のパーツで”再現”するタイプのプラモデルではない。

 巨大でギミックフルで組み立てに手間のかかるものほどありがたい、という話をするならこのアルフォンスは評価に値しないだろうが、しかしシーリングのシワとそれを固定するための金属フレーム、一体成型ながらあるべきところにきちんと収まるシリンダーやウネる配管の類はしっかりとメカとしての説得力をもって組む者に訴えかけてくる。

 こうして写真に撮られ画面に収まり相対化してしまうと、パーツの寸法がどれほどのものなのか伝わらないのはあたりまえ。しかし組んでいるときに感じる圧倒的な存在感はユーザーにとって絶対的な価値を持つ。アニメの設定以上のアレンジをことさら加えることなく、イラストにあるメカと分割線を極力重んじながら量感と曲率を追い求めた造形は、ロボットを”リアル”に見せるための方法論が「見た目をリッチにするためにディテールを増やす」というものだけではないことを教えてくれる。

 イングラムはキャラクターであり、メカであり、木偶であり、頼れる相棒である。つまるところ、イングラムはもともとリアルロボット(=本当にありそうな何か)を露悪とシリアスの間で揺れる振り子のように描いたものだ。ゆえに、それを実直に読み取り、樹脂にすればじゅうぶんリアルな(あるいは正しい意味で馬鹿げた、荒唐無稽な)印象を与えてくれるものだったのだ……という不思議な感動がここにある。パーツの曲面、ハメ合わせ、重なりかた。そのひとつひとつが「イングラムのデザインの意図」を再確認するために機能している。

 ボディ色の白/黒とシーリングや内部メカのグレーだけにとどまらず、メッキパーツの旭日章、肩に取り付けられた赤色回転灯のカバーもプラモデル的な素材の歓びに満ちあふれている。パーツの厚みやシャープネスが本物を想起させてくれるのは、1/20という大スケールが既存モデルよりも実物に近い縮尺だからこそ。赤色回転灯の内部に見えるリフレクターの構造も、リレーを組み込んだLEDが回転しているように見える発光ギミックを仕込むのとは全く違うアプローチだ。

 このキットで一番驚くのは泉野明が佇むキャットウォーク(アルフォンスのディスプレイベースから伸びる支柱に据え付けられる)の裏側にある蛍光灯やダクトの類だろう。アルフォンスにいっさいのアレンジを加えず、あまつさえコクピットの構造を再現することもしなかったこのプラモデルにおいて、我々の知っている現実世界のディテールを「完成後に覗き込まなければ見えない場所」に刻むことによって、このロボットの活躍する舞台がどこなのかを暗示している。蛍光灯から伸びる電線とその留め具、キャットウォークのリブを避けるようにうねる蛇腹状のダクトカバーは、かつてなら模型の達人だけに許された「粋な表現」と言えよう。

 プラモデルというのはなにかのカタチを模したものであると同時に、モチーフや時代や情景や、あるいはプラモデル自体を通じて表現したい「何か」をたくさんの人に気軽に手に取ってもらい、解体されたものを再構築するだけで手に入れられるようにするプロダクトだと思う。言ってみれば、スキルやセンスや知識や技術に依存していたものを「持たざる人」にも味わえるようにする、民主化のアイテムなのだ。

 その観点で言えばこのプラモデルは「かつてわれわれが模型誌の表紙で見てシビレた『リアルロボットの立体物としての高解像度な捉え方』」を民主化したものであり、自宅で組み、机の上に置き、手にとって肉眼視することでようやくその意味がハッキリと立ち上がってくるプロダクトだと思う。

 ただ大きくて、ロボットの一部分しか再現されていない突飛なプラモデル……と捉えて組み始める。そこにはよく動く全身像を組み立てるよりも強烈に「ロボットモデルが表現できていたこと/いなかったこと」を明らかにする何かが現れる。しかも、さしたる工作や塗装のテクニックは要求してこない。

 もちろん「大きなイングラムが手に入って嬉しい」という感情も満足させながら、樹脂のままでもたくさんのことを語りかけてくる稀有なプラモデルだ。組んで、手で持ち、近く遠くで眺めながらぜひとも味わってほしい。これは「自分以外の誰かが組んだ感想」を聞いただけでは絶対にわからない、しかしとてつもなく素敵な体験をもたらしてくれる最高のプラモデルだと断言しよう。

からぱた/nippper.com 編集長

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ゴッドハンド最強のヤスリセットアップは「削る刃(ブレード)&神ヤス!10mm厚」で決まりです。

 ゴッドハンドの大人気スポンジヤスリ「神ヤス」の10mm厚と、同社が発売している金属ヤスリ「けずる刃(ブレード)」の組み合わせがマジで最強です。スーツのセットアップくらいしっくりきます。その秘密がこちらです。

 ほぼサイズが一緒。神ヤスの方が少しだけ幅広です。たったこれだけなのですが、サイズが揃っているので、ほぼ同じ幅で削っていけるので、ズレやブレも無く少ない回数で表面の処理が終わります。この組み合わせが本当に好きでよく使っているので、「けずる刃(ブレード)」の表面の顔つきもカッコよくなっています。

 けずる刃(ブレード)は感覚的には320番〜400番くらいの削り心地。金属ヤスリなのでそうそう簡単にへたることは無く、常に一定の削り心地をキープしてくれます。初手にこのヤスリで表面を均し、その後に神ヤスで整えるというのが僕の定番となっています(曲面や丸いパーツには使用しません)。

 けずる刃(ブレード)の特徴が、金属ヤスリなのに、紙やすりのように前後左右に動かしてパーツを削れることです。多くの金属ヤスリは、前方に押して削るというのが一般的です。ガシガシと削る手軽さも魅力なのです。

 力を入れずにささっとやするだけで、表面が美しく仕上がります。金属ヤスリに発生しがちな、刃が食い込んだような傷もありません!

 その後に神ヤスの400番、600番で表面を磨いて上がれば終了です。ヤスリのサイズがほぼ同じだから、先ほどの削る刃(ブレード)と同じ感覚で表面を綺麗にしていけます。

 あっという間に綺麗になりました。神ヤスの10mm厚は手頃な硬さと反発があるのでエッジや平面も綺麗に整えられますが、その前により硬い金属ヤスリである削る刃(ブレード)を挟むことで、さらにカチッと角や平面が出ます。ガンプラやキャラクターモデルのパーツ整形にとってもおすすめのセットアップをぜひ揃えてください。それでは!

オリジナルメカプラモの満漢全席がやってきた!!「TASTIER(初回限定版セット)」

 箱を開けたら、中から3つもの箱が!! 中国からやってきたオリジナルメカのプラモデルが、老舗ホビーメーカー・ウェーブより発売となります。まるでパーフェクトグレードかな? ってくらいのボリュームで定価7260円!! どういうことなの!? ってびっくりしながら、箱を開けてみるのです。

 このプラモデルは、中国の模型メーカー「和模线(HEMOXIAN)」によりオリジナル作品《超限零點/OVER ZERO》に登場する軍用サイボーグ「TASTIER」というもの。日本国内メーカー同様、中国でもメーカーがプラモオリジナルコンテンツを作り出し商品化しているのです。ウェーブが輸入販売をするこのTASTIERは、ひとつ商品に「TASTIER」本体、支援メカ「汎用型Mechanical Dog」とディスプレイ用の「複合整備台」がセットされています。言わば3アイテムがひとつになっているのです。だから外箱の中には3つの箱が入っていたんですね!

 こちらが主なセット内容。これで7260円。ちょっと理解できません。今回はまず「TASTIER」の箱を開けてみようと思います。

 サイボーグ「TASTIER」だけでもこのボリューム。プラの質感も国内メーカーのキットとほとんど変わりません。チューブなどは軟質パーツのランナーがセットされています。

 最も驚いたのが「塗装済みパーツ」の美しさです。このキット、シルバーのパーツだけで全て塗装処理されています。少しだけ粒子感がありながらめちゃくちゃ輝度が高いシルバーが選択されており、パーツを見ているだけでワクワクしてしまいます。組み立てるだけで高級感を演出できますね。

 クリアーパーツも紫や赤のものがセットされており、どちらもとっても透明度が高いです。傷やゴミの混入も見受けられません。

 水転写デカールの他に、バイザー内のディテールを選択できるエッチングプレートが付属します。これをバイザー内に入れるだけで、クリアーパーツ越しにきらりと光るディテールが表現されます。

 トイ的な遊びとして電飾ユニットも最初からセットされています。電池は別売りになります。

 試しに電飾ユニットの部分だけパーツをセットしてみたら、なんの苦もなくすんなりとパーツが収まりました。設計で無理をしているところも無く、パーツは多いですがスムーズな組み立てが期待できそうです。

 箱を開けてパーツを見てみるだけでもお腹いっぱいになれる「TASTIER」。今度は実際に組んでみて、どのような構造になっているのかご紹介してみようと思います。中国オリジナルメカプラモの今を確実に体験できること間違い無し!!! それでは〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

全長87cmのバスターランチャーで歴史に名前を残しちゃう!/IMSのシュペルター・K.O.G. 限定版

 「長いよ!」と思ったみなさん、こんにちは。大きいプラモデルが大好きなワタクシです。それにしてもこんなに巨大なものをどうやってお伝えしようかと考えたとき、こうして縦に長く見せられるのがWebページのいいところですね。ボークスの1/100 IMSシリーズ最新作、シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992=(限定版)に同梱される新規造形のバスターランチャーです。全長870mmというのは我が家の息子の頭頂高を凌駕しており、この時点で「なんちゅーもんをプラモデルにしてくれたんや……」という気持ちになります。

IMS 1/100 シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992= with バスターランチャー(限定版)

 ボークスの1/100 IMSシリーズでは「シュペルター・K.O.G.」とそのバリエーションである「シュペルター・K.O.G. =ボォス 2989=」が製品化されており、そのパッケージは見たことがあったのですが、今回はそこにさらなる追加パーツを大量投入。デカすぎるパッケージの最上段からバスターランチャーのパーツがこんにちは。フタの上に置いたニッパーが小さく見えるでしょ。シュペルター本体も大幅な設計変更と新規パーツの追加がされているのだけど、今回はバスターランチャーの話をしたい。

 新規造形されたバスターランチャーのパーツはランナー4枚にまとめられているけど、A4判の説明書と比較するとど迫力のサイズ感であることがわかると思います。それぞれのパーツはハリのあるシルエットに奥行きのある彫刻で、シンプルだけど重層的な構造を感じさせる設計。ともすれば単調になってしまう(=いわゆる「間が持たない」)大型武装ですが、いたずらにディテールを彫りまくるのではなくいい感じのテーパーや微妙な曲率でもって注意深くデザインされていることを強制的にわからせてくれます。

 バスターランチャー全体は大まかに4つのパートに分けられており、潔くふたつに分割されたユニットを前後に接続していく構造。いちばん大きなユニット同士は挟み込みになりますが、これは強度的にもナイスな判断だと思います。ゲート痕はだいたいパーツの接合ラインに来るから、パーツごとにていねいに処理するよりもまずはざっくりと接着してから接合面を#240〜#320あたりのサンドペーパーでジャカジャカ削って面を出し、最後にヤスリ傷を消すように面を均すのが良いと感じました。

 豪快な組み立ての感触はとにかく気持ちよく、仮組みで少々キツく感じられるハメ合わせも接着剤を流し込めばスルリと収まってくれます。塗り分けは右サイドの装甲やエネルギーチューブといった目立つところだけ手を入れてもいいでしょうし、説明書には詳細な指示があるので色を差していってもOK。プラスチックの成形色を活かす(あるいは基本塗装をラッカー系塗料で行う)のであれば、奥まったところは水性塗料を使って塗り分けてから、はみ出し部分をキッチンマジックリンで拭い取るのがオススメです。

 組み立てが完了しましたので、どこのご家庭にもあるDJ機器であるところのXDJ-XZと比較するとこのサイズです。だいぶ存在感あります。もしDJ機材をお持ちでない場合は、床の間に飾られた日本刀をイメージしてもらうとだいぶ近い……というかこれを装備したシュペルター・K.O.G.は床の間に展示するのが最高な気がします。このバスターランチャー、もちろん本体とのエネルギー・バイパス接続のためのリード線や、支持架となる専用ベースも同梱。本体側にはバスター・グリップ保持用の武器持ち手(左右)も新規に付属しています。



 ところでこちらはボークスのオフィシャルサイトに掲載されている俯瞰のバスターランチャー構え写真なのですが、前後がトリミングされています。じつは全景が説明書の末尾に掲載されていて、これがだいぶ痺れます。バスターランチャーの支持架なしで自立させるにはだいぶ工夫が必要(本体を固定したり重心位置を調整したり、あるいは本体とディスプレイベースを合体させるなど……)ですが、いつかはやりたいですねこのポーズでの展示……。

 単体で展示してもこれだけの存在感があるバスターランチャー。ちなみにワタクシ完成見本写真を見て「どうも砲身が前下がりになって見えるな……」と思っていたのですが、写真を撮ってよーく観察するとこれがきちんと真っ直ぐなんですね。ユニットごとにがっちりハマる構造上、砲身が自重で垂れ下がるようなことはいっさいなく、機関部〜尾部の造形に起因する目の錯覚でございましたのであしからず。


 「IMS 1/100 シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992= with バスターランチャー(限定版)」は、ボークスのGL/VS/VIP会員限定アイテム。予約受付期間は5/6までとなっていますので、ぜひとも会員登録のうえ入手してください。あなたも長大なバスターランチャーを組み上げて、歴史に名前を残しちゃいましょう。そんじゃまた!


IMS 1/100 シュペルター・K.O.G. =ボォス 2992= with バスターランチャー(限定版)

からぱた/nippper.com 編集長

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僕のプラモライフに欠かせない「最強の赤」/シタデルカラー メフィストン・レッド

 水だけで希釈・洗浄ができて無臭の水性塗料「シタデルカラー」。発色・伸びも良く筆塗りにとっても適しています。かなりの色数があるのですが、その中でもこの「メフィストン・レッド」は僕のプラモライフに欠かせない「赤」です。シタデルカラーでベストイレブンを組むなら、絶対に加えます。キャラクターモデル、スケールモデルのどちらでも大活躍間違い無しなのです。買いましょう!!

 キャラクターモデルのミサイルの弾頭によく塗られる色が「赤」。モデルのアクセントにもなります。プラスチックの色で色分けされているプラモもありますが、このように別の色で成型されているキットもあります。こんな時、メフィストン・レッドに登場してもらいましょう。

 一つ30秒くらいで、つるんと塗れます。ひと塗りで一気に発色するので、1度全体を塗ったら次のパーツを塗るという順番で2週しましょう。それだけで綺麗に弾頭を塗り分けられます。

 こちら、全て筆塗りしたものです。塗料の伸びが良く、発色も良いので塗面が汚くなりません。

 さらに隠蔽力が抜群! 黒いランナータグ(プラモデルのパーツが繋がっている枠をランナーと呼び、ランナーの脇についているタグをランナータグと呼びます)にそのまま塗っても赤が発色します。

 ですので、グレーのパーツの上から直接赤を塗ってもしっかりと発色し、手早く塗り分けられます。飛行機模型のコクピットのスイッチ、キャラクターモデルの細部の塗り指示にもすんなり対応できます。数あるシタデルカラーの中でも1本あるとめちゃくちゃプラモ塗装が快適になる「メフィストン・レッド」。ぜひこの機会にゲットしてください!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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細い線が彫れる最高の神ヤスリ!「ゴッドハンド スジ彫りヤスリ」

 ゴッドハンド スジ彫りヤスリ

 刃物?? 何?? これは「スジ彫りヤスリ」という商品。最強のニッパーであるアルティメットニッパーを発売しているメーカー「ゴッドハンド」が販売している超人気ヤスリです。これがあれば、プラモに彫刻された細い線を簡単に彫り直せます。目立てヤスリをベースに開発された、本当に便利なヤスリなのです。

 そもそも目立てヤスリは「ノコギリのギザギザの刃を奥まで研磨して、切れ味を取り戻す」のに使用されるもの。それを模型用の特殊形状&薄さにして「スジ彫りヤスリ」として販売したのがこの商品です。僕が今作っているハセガワの「1/72 VF-1」製作で本当に大活躍なのです。その様子をご覧いただきながら、商品を解説していきます。

 ハセガワのVF-1の表面には繊細な彫刻が刻まれていますが、パーツの合わせ目を跨ぐところが数箇所あります。このまま、いつものようにゴリゴリと紙ヤスリをかけて合わせ目を消すと、ツルツルバルキリーに早変わりしてしまいます。そこで合わせ目を跨ぐ彫刻だけ、このスジ彫りヤスリで彫り直しています。早速合わせ目を跨いでいる横線を彫り直してみます。

 このヤスリ、片面にしか刃がないので両面に刃がついているヤスリよりも細い線が彫れます。ヤスリのサイズは2種類(そのほかに左利き用、右利き用もあり)あって、小が0.2mm以上のスジ彫りの彫り直し、極小が0.2mm以下のスジ彫りの掘り直しに適しています。今回は極小を使用しています。

 直線のスジ彫りを彫り直す際は、刃の先端が斜めになっている方を使用します。斜めにカットされていることで抵抗が少なく、余分な力が加わりません。刃を立てるのではなく、20度〜30度と少し寝かし気味にした角度にして、筋彫りにセットします。

 そして優しく前方に押します。切れ味が良いので、力を入れる必要はありません。そのまま押し進めましょう。これを数回繰り返せば、筋彫りは深くメリハリあるものになり、上からヤスリをかけても簡単には消えることはありません。これで安心して合わせ目消しができます。

 丸いパーツやパーツの角にある彫刻も、このヤスリのお腹部分を使うと綺麗に彫り直せます。バーニアなどの丸いパーツのディテールの彫り直しもできるほどの精度があります。

 斜めにカットされていない方を使用すれば、奥まったディテールの終点までしっかりと彫れます。

 スジ彫りというと、昨今はオリジナルのディテールをバキバキに彫るのが流行っています。それだけでなく、元から入っている彫刻を彫り直してメリハリをつけたり、より線を整えたりするのも立派なスジ彫りです。もとからあるかっこいい線をスジ彫りヤスリでなぞることで、習字のお手本を見て文字を書くような、お手本を知り再現するということも体感させてくれます。もともとあるものを綺麗になぞることは成功体験も得やすく、上達スピードも上がることでしょう!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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「流し込み接着剤」があるだけでプラモの組み立てがめちゃくちゃ楽になる話。

 2002年にハセガワ初の人型メカプラモデルとして送り出された「1/72スケール VF-1 バトロイド バルキリー」。まだ10代だった僕は、このキット化に興奮して買ったものの、最後まで組み立てられませんでした。当時の僕はある接着剤の存在を知らなかったのです。そう、今回のテーマ「流し込み接着剤」です。それさえ知っていれば、もっとスイスイ組めて、机の上にVF-1を飾れたに違いなかったのです!

 当時の僕は、この白い蓋のタミヤの接着剤とウェーブの瞬間接着剤しか使っていませんでした。この白い蓋の接着剤は粘度が高いのが特徴。蓋の裏にセットされているハケを使って、パーツの軸などにペタペタと塗ってパーツを貼っていきます。今の自分なら、この白い蓋の接着剤だけでも形にできそうですが、当時はこの接着剤だけを塗って組んでいって挫折したのです。

 ハセガワのVF-1は、表面のディテールがめちゃくちゃカッコよくて、リアルなモチーフを触ってきたメーカーが送り出すリアルロボットの味を楽しめます。接着剤を使用して組んでいくことが推奨されているプラモでもあります。

 しかし、ここが癖ものなのです。接着剤推奨なのに、結構な箇所に「スナップフィット(接着剤を使用せずにプラの嵌合でパーツをとめていく模型)かな? ややスナップフィットかな?」というファジーさあるのです。さらに「ちょっと入んないんですけど!?」ってくらいきつい軸&軸穴なんかもあり、パーツを組み合わせていくたびに、軸の先と穴を軽く合わせてチェックしていく必要があります。そういうプラモだと知らないで、当時のヤングフミテシは裸一貫でハセガワのVF-1に飛び込んだのでした。

 そのファジーさを解決してくれるのが「流し込み接着剤」です。今の僕の模型製作において、主役と言える接着剤。この接着剤があるだけで、ハセガワのVF-1は、よりあなたに近い距離のプラモデルになります。上の写真は、スケールモデルキットのように、軸がパーツを止めるのではなく位置を決める嵌合になっているパーツ。こういう場合はパーツを同士を合わせた部分に、流し込み接着剤の蓋についている筆をちょんと置くだけでパーツが接着されます。接着剤の後も目立たなくて綺麗な仕上がりになります。

 これは軸と穴の径が合ってなくて、奥までしっかりと入らないパーツ。こういう箇所にも流し込み接着剤があるだけで、スムーズに解決できるのです。

 軸を短く切る、もしくは全てカットしてしまいます。

 軸を綺麗にカットすることで、パーツが面と面で密着するようになりました。あとはそこに流し込み接着剤を流すだけで良いのです。時間も短縮できる上に、パーツが合わさる精度も上がっています。

 当時人型にまで組めなかったVF-1が今目の前に!! 流し込み接着剤の恩恵で、憧れていたハセガワのVF-1 バトロイドバルキリーを手に入れられました! ゆるい・硬いというファジーな合わせが多いプラモデルは世の中にたくさんあります。そのファジーさの間を取り持つことがもできるのが「流し込み接着剤」。確実にプラモの世界を広げてくれます。取り扱いもとっても簡単なので、まだ使ったことがないという方、ぜひあなたの工具箱にお迎えください!! それでは〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ロボットプラモの足元を超簡単に汚せる最強塗料「Mr.ウェザリングペースト マッドイエロー」

 キャラクターモデルの青や赤といった派手な足元のカラーにも負けないナイスな塗料。それが「Mr.ウェザリングペースト マッドイエロー」です。これを塗って余分な塗料を落とすだけで、カッコ良く足元に砂汚れを施せます。

 瓶の蓋を開けるとかなり黄色味が強いです。この色だからこそ、派手な足元の色にも負けません。Mr.ウェザリングペーストは泥や土、砂汚れを立体的に施せるように設計されたペーストです。Mr.ウェザリングカラーの姉妹アイテムとなっています。

 ペーストの濃度はMr.ウェザリングカラー専用うすめ液で調整できます。僕は伸びをさらに良くしたいので、ほんの1滴だけ加えます。薄め過ぎるとペーストの意味が無くなってしまうので、ほんの少量で良いです。

 汚したい部分にペタペタと塗っていきます。粒子感あるまさに砂や土と言った塗料。写真でも細かな粒子が確認できますね。

 Mr.ウェザリングペーストの特徴が、乾燥すると色が1段明るくなるということ。瓶の中の時よりも黄色味が少し落ち着きます。この乾いた状態の雰囲気が最高なのです。ここから余分なペーストを落とすのですが、このように完全乾燥してから塗料を落としにかかった方が作業しやすいです。

 ペーストが乾いたら、メラミンスポンジで上から下方向(重力方向を意識しています)へと塗料をこすり落とします。もうこれだけです。メラミンスポンジの細かな目が塗料をランダムにこすり落としてくれます。

 完成!! スポンジがひっかかるパーツの角などにいい感じにペーストが残り、非常にメリハリある汚し表現が出来ます。ガンプラやキャラクタープラモの足元にめちゃくちゃ相性が良いので、ぜひMr.ウェザリングペースト マッドイエローをお試しください! 最高ですよ。それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

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どこで止めても完成しているプラモデル/PLAMAX 機首コレクション 泉野明 with アルフォンス

 「バルキリーのコクピットから前だけ」をプラモデルにしてきたPLAMAXの機首コレクションに、『機動警察パトレイバー』のイングラム1号機が加わった。泉野明のフィギュアと、胸像(+左肩だけ!)のアルフォンスがセットになっていて、ハンガーで愛機を見上げる情景を楽しめる。はっきりと見せたい情景が固まっているので、ロボットプラモというよりもジオラマに近い。

 可動ロボットプラモではなく固定ポーズなので、どこのパーツが何になるのか分かる外装部分と、パッと見では何のパーツか判別できないメカメカしさを持った内部構造のコントラストがめちゃくちゃ楽しい。眼にあたるカメラの部分のディテールをよく見ると左右非対称だったり、メッシュホースが実機の可動を妨げないよう這っていたり、頭部を動かすシリンダーが絶妙な角度で成形されていたりするのは組んでいて驚きの連続だ。

 このプラモの危険なところは、思わず塗りたくなるディテールが随所に盛り込まれていることだ。外側から見えるダクトのメッシュにスミ入れをすればそれだけで「うわ、プラモデルを作っているな!」という気分になるし、頭部を動かす6本のシリンダーに金属色を塗っていると「めちゃくちゃプラモ作ってる感じがするな!」と高まること間違いなし。手元にある筆でチョイチョイ塗るだけで量産機の”イングラム”ではなく、相棒たる”アルフォンス”になっていく感覚……と言っても大げさではない。

 「結局、我々はこういうのが好きなんだよな」と思わず独り言を言ってしまう。説明書どおりに組んだらこの姿にはならないのだが、機構部やカメラをチョイチョイと塗って、複雑なディテールのところにはスミ入れをするだけでもだいぶ盛り上がり、仮組みをしては「え、これってちゃんと完成させるよりカッコいい状態なのでは?」とニヤニヤする。内部フレームが動いてナンボ、そこにディテールがたくさん入っているからリアル……みたいな話ではない。設定画にあるディテールを拾い、1/20というスケールだとどうしても見えてしまうところをちゃんと設計していくことで自然とにじみ出る「メカバレの美学」がここにはある。

 なんとも魅惑的なシリンダーたちも、首を取り巻くカバーのパーツを上から被せればほとんど見えなくなってしまう。「中身もちゃんと再現されているので、整備中の風景を作りましょう」……なんて野暮なことは言わない。いつどこで手を止めてもカッコいいイングラムがここにあり、そして完成しても腕や下半身はそこにない。未然に至る道程の楽しさと、完成のその先に広がるイマジネーション。機首コレクションシリーズは、まるでサモトラケのニケのようにあなたの想像力を掻き立てるのだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

『サイバーフォーミュラ』のイシュザークに宿るプラモデルの設定遊びに「リアルロボット文脈のサービス精神」を見た!

 これは新マシンの発表会をイメージしたシチュエーション。アニメ本編で直接的に描かれたシーンではない。アオシマの1/24サイバーフォーミュラシリーズのボックスアートは今ではちょっと他に類を見ないくらいのサービス精神に溢れている。最新作であるイシュザーク 00-X3/Ⅱもその例に漏れないサービス満点の箱絵を用意してくれている。そのボックスアートを担当しているのは原作アニメでメカニカル作画監督を努めた重田智氏。今なら大ヒット中の『劇場版ガンダムSEED FREEDOM』のメカニックアニメーションディレクターも務める同氏による描き下ろし!…といったほうが通りがいいかもしれない。


 このシリーズのボックスアートの何が凄いかというと「組み上がるキットとは別のアレンジで描かれている」のだ。カウルの厚みとかキャノピーライン、インテークのフィンの有無とか、パッケージイラストとプラモデルは確かに同じモチーフだけど別モノ。「かつてのリアルロボットプラモデルの箱絵」がキットにないパネルライン等のディティールを加えた「盛った姿」で描かれていたように、あくまでも「箱絵はイメージビジュアルです」というレトリックのもとに描かれているのだな。

 さて、キット本体は河森正治氏による設定画準拠で造形されていて、箱横やHPに掲載されるメーカー完成見本も色やマーキングに至るまで設定画に即した仕上がり。……にも関わらず、箱を開けてデカールシートを見ると箱絵にも完成見本にも見当たらないマークが大量に収録されている。説明書にはちゃんと貼り位置が指定されているのだけれど、商品箱横の説明でこの存在にふれることもなく箱を開けるまでさっぱりわからない。このデカールをひととおり貼ったメーカー見本も、発売時点で何処にも見当たらない(!)。そういう意味ではコレもサービス精神の炸裂と言えちゃうな。

 このデカールで面白いのは、シーズン途中で動力系を刷新する劇中設定を拾ってパワーユニットメーカーのロゴが二種類入っている所。シーズン第10戦以前(シュトロブラムス社製リニアホイール搭載型)と第11戦以降(ユニオンセイバー社製水素エンジン搭載型)をデカールの違いで表現できるようになっているのだ。でもその設定自体を説明することはしない。その態度がなんだかスケールモデルっぽい(「実物がそうなっているから」に帰結するので)。そういう意味じゃ「サイバーフォーミュラの世界線で売られているスケールモデル」っぽいともいえるわけで……アレ、コレってガンプラとかでやっているリアル考証とか考察ってやつじゃない?しかもかなり濃い目の……。

 自分は設定をかじっているので「シュトロブラムス社は本マシンのもう一つの特徴であるローリングコックピット技術も供給しているので両方貼ってもおかしくないハズだという妄想が加速しデカール貼りが捗ってしまう。「シュトブラムス社は動力系以外にも技術供給しているので”supported by〜”なんだな。芸コマ!」と。

 デカールデザインは公式に起こされたものかもしれないけれど、劇中で描かれていないし箱絵とも違うし。サービス分はどこに貼るか?どれを貼るか貼らないかさえ自分で決めていいワケだ。「設定を軸足に自分で考える」楽しみへと進む導線の置き方がとても心地いい。


 さらに設定では水素エンジン実装に伴って可変展開するブースト加速装置「メッサーウィング」が使えるようになったのだけど、このシリーズは大掛かりな変形状態は別キットとしてリリースしてきた。キットにはそんな前例に倣い将来的にリリースされるであろうメッサーウィング展開状態用と思しき部品も既に(剰部品扱いで)収録されていて、まだ見ぬ後続ラインナップへの期待も膨らむ。

 ボックスアートに追加マーキング、余剰部品に至るまで「それが何であるか?」は明言しない。だからといって「続きはみなさんの自由な発想で楽しんでください」なんて放り投げ方でもない、あくまでも「サイバーフォーミュラの世界観」の枠組みを意識しながら想像を広げていける「匂わせ」の巧さが光るキット構成に仕上がっている。

 基本色が白一色のマシンなので、素組みにデカールを貼るだけでも満足度が高い本キット。その昔、キット本体とは似てるとは言い難いボックスアートを参考にイメージを膨らませて手を加えていく時代があった。劇中描写、劇中設定を起点に考察し架空のメカニックにリアリティを見出していく遊びがあった。最近では箱絵と中身が剥離するのは良くないという考え方、設定の深堀りは新規層への訴求が弱まるといった視点からそれらを当然のように内包したスタイルの商品はずいぶんと減ってしまった。

 このキットはそんなもうマイノリティと言ってもいいかもしれない「今では珍しいくらいのリアルロボットプラモの味わい」を見せてくれる。「箱絵と寸分違わぬものが入っている」のではなく、「原作設定画の再現に徹した」だけでもない「プラスチックのパーツに収まりきらない可能性」のパッケージングに成功しているといえるのだ。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

マックスファクトリー 太陽の牙ダグラムの集大成的全部盛りプラモ!「ダグラム ハングライダー装着タイプ」

 ダグラム専用形状のハングライダー、バキュームフォームの翼、そして通常のヤクトダグラムにも組めるパーツ、まさにマックスファクトリー製ダグラムキットの集大成! これを作らずして真実は見えるか!?

 『太陽の牙ダグラム』はリアルロボットブームの1981年に放送が開始され、長くて4クール1年のアニメが多いなかで、異例の全75話(1年半)という放送期間になりました。長期間ならではの起伏に富んだストーリー、番組終盤の大きな打ち上げ花火的展開として、ダグラムはハンググライダーを装備し空から急襲をかけるのです。

 ダグラムは飛翔し、声に出して読みたいコンバットアーマーNo.1「サバロフAG9ニコラエフ(さばろふえーじーないんにこらえふ)」と激戦を繰り広げ、見事に太陽の牙チームは作戦を成功させました。”EXODUS”という曲がかかるなか、ミュージックビデオのような鮮やかでスピード感あふれる映像に、テレビの前で度肝をぬかれたのを覚えています。

 おなじみダグラムにハングライダーが装着。なんと翼長46cm。ハングライダー装備はソルティックもありましたが、翼の形状もポールの形状も違っていて、新規パーツになります。このバージョンではリニアカノンが外されていますが、パーツとしては入っているので、そちらでも組むことができます。

 マックスファクトリーはダグラムをキット化するたびに成形色を変えています。今回はハングライダーの緑系にマッチした薄い銀色と赤みの薄い濃い紺の渋い色合いになっています。

 バキュームフォーム(とっても薄いパーツを作るのに適している技法。熱して柔らかくしたプラ板と型の間の空気を抜くことでプラ板が型に密着。プラ板がパーツの形状の型と密着することで、薄いパーツが成型されるという原理。ガレージキット(少量生産の自作キット)やプラモの改造、ゼロから造形するときに同じ形のパーツを軽く仕上げるのに昔から使われてきたテクニックで、薄くてキレイな透明パーツを作るのにも向いています)の翼はカット済みでポールのダボにピッタリ合います。ふわふわした翼が、組み立てるとしっかり保持されるのは、設定もすごいしプラモデルの設計もすごい。

 通常のバックパックのパーツ(右)と比べてみると、左右下側にある出っ張りにハングライダーの固定位置が重なっていて、この出っ張りってハードポイントとして考えることもできたんだ、とダグラムのバックパックへの考察が40年越しで増えるのもダグラムファンにとって興味深いところ。

 ハングライダーダグラムは物語の終盤で登場する、物語の集大成的な装備です。主役のクリンが物語序盤にソルティックのハングライダーで飛んだことなど、まさに走馬灯のように思い出される展開。ダグラムのロボットをあらかたキット化してしまったマックスファクトリーもまた、アップデートパーツを基本とした全部盛りの集大成的なダグラムを飛ばしました。みなさんもEXODUSの熱い歌詞とともに、ダグラムプラモデルを突っ走ろうじゃあないですか!

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

【特集】水性塗料の筆塗りで複雑な塗り分けもガンガン攻められる記事、総まとめ!

 SDガンダムの水性塗料を使った筆塗りの記事、だいぶ書いてるのにまとまってないな?ということに気がついたのでまとめます。まずプラスチックに色を塗るのはめっちゃおもしろい。水性塗料と筆の組み合わせなら気が向いたときにサクッと色を乗せられます。必要なのは良い筆と良い塗料。まずは何が面白いのか、基本的にどうやって塗ればいいのかを紹介!

 でもプラスチックに水性塗料を直接塗ったら弾くんじゃないのか。弾きません。水で薄めすぎると弾くけど。「では弾きづらい下地を作るならどうすればいいのか?しかもプラモデルの持っているプラスチックの色はそのまま活かしたい!」というアナタのためにこの記事。「色付きのガンプラをチョイ塗りするなら、サフ代わりにつや消しコートしませんか?」です。

 下地に使うならつや消しのプレミアムトップコートが抜群。プラスチックのツヤが消えてカッコよくなるし、筆塗りの下地にもなってくれます!

 筆だとたくさんのパーツを一気に塗ったり広い面積をキレイに塗ったりするのが大変……という問題を解決すべく、エアブラシを使ってシタデルカラーを吹いてみたのがこちら。結論から言うと、シタデルカラーは適切に薄めれば吹けるし下地がつや消しならちゃんと定着します。無臭、安全な水性エマルジョン系塗料をとにかく幅広く使ってまいりましょう。

 水性塗料の筆塗りと併用するなら缶スプレーだって味方になってくれます。下地を一気にキレイな色で覆い、その上に筆で塗るのがめっちゃ快適になるシタデルブランドの缶スプレー。筆塗り用の塗料と色味もカンペキに合わせてあるので、両方持っていれば鬼に金棒です。

 筆塗りで悩ましいのは白!キレイにムラなく発色させるのが難しくて、何度も塗っているうちに厚塗りになって悲しい……という日もありますが、そもそも白を塗るってどういうことなのか。白ってどれくらい白になっていれば白なのか?うーん、だいたい白くなっていれば白なんじゃないですか……という提案をしているのが下の記事でございます。

 で、複雑な塗り分けは筆だとはみ出しちゃうし凹んだところはどうすればいいんだとかいろんな問題が発生します。これを水性塗料ならではの特性を活かして解決しちゃうのがキッチンマジックリンです!

 マスキング無しでプラモデルの塗り分けがすべて解決しちゃいます。ラッカー塗料と組み合わせればだいぶ複雑な塗り分けでもスイスイ。とにかく今の時代、筆塗りするならキッチンマジックリンと綿棒を傍らに常備しておきましょう。絶対だぞ!

 マジックリンを使った塗り分け法ならシールとの組み合わせなんかも全然余裕なのではないか……ということで、スプレーとシールと水性塗料を使った塗り分けにもチャレンジ。

 SDガンダムのシールって本当によくできているので、最初から「使わない」と決めてしまわず、塗装とプラスチックの地色と適材適所で組み合わせることでだいぶリッチな見た目の完成品が手に入ります!

 もちろんプラモデルはSDガンダムだけじゃないぜ。スケールモデルでも凹んだところに違う色を塗る場面はたくさんあります。プラスチックの色を活かして作りたいプラモデルだってたくさん。そんなとき、水性塗料やアクリル系塗料を使えば「いままでの悩みはなんだったんだ!?」というくらい塗り分けが楽ちんになります。

 つい最近まで「SDガンダムの塗り分けは達人にのみ許されたすごい技術!」と思っていたんですが、高性能な水性塗料の普及とマジックリンの発見、そしてみんなの「水性塗料を筆塗りしたい!」という欲望によってテキパキと塗り分けられる方法が広まりつつあります。これを読んだ人は手元にあるプラモデルをよく観察して「ここ、水性塗料で塗り分けたらイッパツじゃん!」というのを探してください。難しそうで諦めていたプラモデルも、一気に作りたくなること間違いなしです。そんじゃまた!

からぱた/nippper.com 編集長

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泣く子もザワつく『サイバーフォーミュラ』プラモデルシリーズ最高傑作!/アオシマのイシュザーク00-X3Ⅱ

 前輪のステアリングが切れるってのは聞いてたけど、前後が連動するなんて聞いてなかった!組み立ての最初の工程からサプライズだ。ちょっとした事件だねコレは……アオシマの1/24サイバーフォーミュラシリーズも気づけば25年以上続く一大シリーズ。その最新作イシュザーク00-X3Ⅱが発売直後からファンを大いにザワつかせている。

 ランナーを眺めただけでココロがザワつく。「プラモにしたらこんな感じの部品が並ぶだろう」という想像はしていたんだけれど、実際に見てみたら何処に使うかわからない部品がたくさんあるのだから。なんだかワクワクしてきたぞ……!


 窮屈そうに収まる姿も「レーシングマシン特有の狭さ」を感じられる。シリーズ恒例の着座姿勢のドライバーフィギュアが付属。ステアリングにブーストレバーにペダルまで操作系はひととおり部品になっている。

 キャノピーは開閉選択式。縮尺模型とは言えど、プラモデルとして部品の肉厚を確保する必要があるから、ただでさえ狭いレーシングマシンの内部は実物をそのまま1/24に縮めたときよりも狭くなる。ゆえに室内の部品は一回り以上小さく再現せざるをえないジレンマがある。それでも再現すべき箇所であるという判断を下してくれたのがウレシイ。原作アニメ劇中の運転動作のカッコよさも大きな魅力なのだと開発側も「解っている」のが伝わってくる。


 車体後方もフルインテリアとまではいかないものの、最低限どころじゃない内部メカ表現がなされている。「ええ!そんなことホビーショーでは全然告知してくれてなかったじゃない?」と。このキット、最近のキャラクターモデルにしては発売前の情報がとても少なくランナー状態の展示や公開がなかった事もあって、発売予告から動向に注目していたファンからすれば「組み進めていくにあたってことごとくサプライズに出会う状態」が発生しているのだ……。


 薄さやエッジといった物理的なシャープさもさることながら、分割や造形自体にプラモの部品としてのキレの良さも感じる。


  そして設定上最大の特徴であるダウンフォースローター。自転する円筒状ウィングで走行風に依存しない能動的ダウンフォース制御(?)を可能とするSF空力デバイス。状況によって展開する羽根車状態も選択できる仕様なのだけど、この展開状態に対して費やされる部品の数も羽のシャープさも発売前の想像を優に超える出来栄え。展開しないときは継ぎ目もわからないほどピッタリ閉じる設定のもと閉状態ではツルツルになっている。あらかじめ告知されていた箇所でさえ予定調和以上のサプライズを汲み取れてしまう。

 組み立てのクライマックスは前後に分かれたシャーシの連結。


 ウィングごとコックピットブロックがローリング可動する。カッコよすぎる……!この独特の車体構造は、コーナーリング時にバイクの様にドライバーごと傾く「ローリングコックピット機能」の可動ギミックのために考えられたものだったのだ。まるでパラサウロロフスの頭のような特徴的なウィングと相まってこの機能が映える!そして前輪の連動可動ステアはそうか!ローリングコックピットを傾けたならステアは傾けた方向に切っていないと設定上おかしいもんね!この2つの可動はセットでしか考えられない存在だったんだ。組み上がるまで全然気づかなかったよ……。

 トリッキーなデザインだけど、じつを言うと組みやすさもシリーズ随一に仕上がっている。
漠然とウレシイなと思っていた個々の仕様は実際に組み上げてみると点と点がつながって線になった。今まででいちばん美しい線だと思う。シリーズ最高傑作ですよ、コレは……。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

プラモデルを作る人のことを徹底的に考えた「窓の執行猶予」が激アツ!/ウェーブのP.K.A. Ausf H0

 たとえばこういうガラス越しに人間が見えるパワードスーツのプラモデルがあったとします。組んでそのまま置いといてもカッコいいけど、ハコのイラストがめちゃくちゃ素敵なので、オレもなんかこう、イカした塗装をしたい。しかしクリアーパーツに塗装がはみ出るのはイヤです。どうすればいいのか。マスキングか。こんな丸いものをマスキングしたくない。息を止めて真空塗りか?窒息しちゃうよ。ということで、ウェーブのP.K.A.です。

 『マシーネンクリーガー』は大学生の頃にお絵描き掲示板に入り浸る程度にハマった私ですが、恥ずかしながらウェーブのスーツ系アイテム(マシーネンは大きく分けるとスーツ系と空を飛ぶ系と地面を移動する戦車系のメカに分かれます)を初めて組みました。4面の外装をそれぞれパーツ化していて、これがなんかこう、上手いこと組み合わさってママチャリに装備される子供キャリアみたいな縦長のシェルが出来上がることがわかります。

 どうやって合わせるのか全然予想しないで組んでいったら、コクピットの真ん中から軸の生えたケタが立っていて、ここに左右の板と前面の板がポリパーツでムニュッと取り付けられる設計になっています。それぞれの板が爪で噛み合うようになっていて、シェルがピタッと隙間なく閉じるようになっているのも芸コマ。接着剤を使わずに着脱できるから、透明パーツを取り付けずに組んでから塗って、最後にバラしてガラスを嵌めればキレイな完成品が手に入ります。すげーな!エラいぞ。めっちゃおもしろい。

 「透明パーツは綺麗なままで、カッコいい塗装がしたいでしょ?」という声が聞こえてくるプラモデル。これ以外にも「ここがあとからハメられると楽でしょ?」「このパーツがガッチリくっつかないと不安でしょ?」というわくわくポイントがたくさんあります。「とりあえずパーツは作っといたからあとは買った人が頑張ってね。よろしく〜!(え、どうやって作るの?)」というプラモデルも世の中にはあるっちゃあるんですけど、こんなふうにつくる人のことをめちゃくちゃ考えて設計してあるプラモデルは組んでいる間もずーっとニコニコできますね。マシーネン、ちょっと気になってるんだよなぁ……というそこの貴方、コイツは買いですよ!

からぱた/nippper.com 編集長

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6歳児が「ウェーブ P.K.A.」の門出を祝う。キッズが掴んだマシーネンクリーガーデザインの源流。

 「お父さん、この透明のパーツ、ヘリコプターの窓みたいだね」。
 僕は震えました。6歳の子供にもマシーネンクリーガーのスーツの向こう側にある世界が見えていたのです。実際のモチーフのプラモデルを切り出して生み出されてきたマシーネンクリーガーのデザインのパワーを、息子のたった一言で体感できたのです。

 イラストレーターの横山宏氏により生み出されるさまざまなメカをプラモ化している「マシーネンクリーガー」シリーズは。本シリーズのメカは、デザインの源流に実際の兵器の姿が隠れたりしています。それはパーツだったり、時には名前だったり。それを知って作るのも、作ってから知るのも楽しいので、SFメカが僕らの世界のかっこいいモチーフに導いてくれます。そんなコネクト感も僕は大好きで、マシーネンクリーガーのプラモをよく楽しんでいます。だからこそ、今回ウェーブより新発売された「P.K.A.」のプラモをリビングで組んでる時に、隣で焼きおにぎりをもぐもぐしながら「ヘリコプター」って言った息子の言葉に衝撃を受けたのです。

 P.K.A.というスーツは、ヒューズH-500というヘリのパーツを加工して生み出されています。息子は元になったヘリの名称までは分かりませんが、「透明のパーツと、この丸い穴が開いてるパーツがヘリコプターに見えるんだよな〜」って言って、喜んでました。

 まさに40年ぶりに完全新規プラモとして復活したP.K.Aの門出を祝うかのような息子の言葉。キッズもマシーネンクリーガーの楽しさを掴めるのです。それを聞けただけで、プラモの箱を開けて、ニッパーを握って良かったと思います。P.K.A.、ふたりで笑いながら作ろうと思います。

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追加されたファストパックとフォールドブースターがYF-19のプラモデルの超速完成に効く!

 薄ベージュの本体、グレーのファストパック、そして濃緑色のフォールドブースター。まるで往年のマッチボックス製プラモデルを思わせる3色の取り合わせ、とってもマッチしています。ハセガワが2002年に発売したYF-19にふたつの装備が追加され、『マクロスプラス』の3話終盤〜4話冒頭の名シーンがプラモデルで再現できる日がやってきました。激アツ!

 胴体は機首から最後部まで上下分割でそれぞれかなり大きなパーツ。1/72の戦闘機模型としてはだいぶ大きい部類に入りますが、一気呵成に組み上げられるスピード感たっぷりの構成です。すっぴんのYF-19はすべて薄ベージュのパーツなので、塗装せずに組み上げると単色のカタマリが完成します。マーキングのたぐいはデカールでフォローされていて、説明書で示される細部の塗装指示も合わせてそれなりにスタミナが必要。しかし!

 まずファストパックを装備することで脚部外側がまるっとカバーされます。本体に入った黒くて細いラインを再現するのはデカールにせよ塗装にせよなかなか難しいところですが、ファストパックで隠れるとわかっていれば一気にワープできます。そもそも薄ベージュの機体にグレーのパーツを装備してツートンカラーになるのがカッコいいんだわ。

 さらに濃緑色のフォールドブースター(新規金型で追加されたもの)を機体上面に背負います。近未来的なフォルムとはいえ「まあ人類が作ったメカだよな」という飛行機のカタチにヌメッとした完全にSFチックな装備をプラスするのがこのプラモデルの魅力。取り付けには機体上面パーツに1.4mmの穴開け工程があるのでドリルを買いましょう。

 もうひとつ、このキットにはマクロススタンドが付属します。機体側に追加加工することなく飛行状態で展示できるのがマジで素晴らしい。着陸脚を格納状態で組むには工夫が必要なのが惜しいといえば惜しいですが、それは皆さんの創意工夫でどうにかしましょう。

 あえて塗装せずにガガガッと組み上げて2時間ちょい。ただプラスチックパーツを貼っただけでも、3色組み合わさるとだいぶ盛り上がります。インテークのカバーも閉状態だから内側の塗装で悩まないし、先述した通り脚部外側はファストパックに覆われるし、これにデカールを貼るだけでもだいぶいい感じの見た目になること間違いなし。そもそも組みやすくてド迫力のYF-19に、強力な装備を追加したおかげで「こっちのほうが完成に近いじゃん!?」という内容になったファストパック&フォールドブースター入り、ぜひとも手に入れてほしいNEWアイテムでございます。

からぱた/nippper.com 編集長

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少しだけわかるくらいがちょうどいい/窓越しの視界を思うマシーネンクリーガーのフリーゲ

 世界観を調べようにも他の創作物よりも情報が少なく、どこかドライな事実のみが並ぶウェブサイトを見かけることが多い。それよりも楽しく塗装したであろうたくさんの完成画像が印象に残る。これが私の抱く『マシーネンクリーガー』へのイメージだ。そんなマシーネンクリーガーの中でも、フリーゲは乗り手が窓越しに外の世界を直視するスタイルのメカだ。「中の人が見える」というだけでフィギュアのようでロボのようでもあるというたたずまいになるのが不思議だ。人間と機械がまじりあった見た目で「パワードスーツ」という言葉がぴったりだと思う。現実世界のパワーアシストスーツの延長線上に存在しそうだ。

 ただ、これで宇宙に飛び出すことをイメージすると、窓が割れたらどうしようと不安になる。ましてや偵察に向かうのかと思うと不安な気持ちはさらに高まるが、何もなければ宇宙を直視できるワクワク感があるし、カメラを介するよりも故障の可能性も少なく、自分の目で見ているからこそ、気づけることがあるような気もする。

 プラモデルとしては接着剤不要とアナウンスされているが、接着剤を使った方が早く確実に作り込めた。特に、嵌め合わせるパーツへ力をどう入れるかの要領がつかめない部分はピンを短く切ったり、穴にニッパーで切り込みを入れて、パーツを合わせてから流し込み接着剤で貼ってしまうのが楽だった。また、手のような小さなパーツは嵌め込むだけでなく接着してしまったほうがあとでバラバラになりにくいとも思った。

 とはいうものの、塗装の後に取り付けたいと思ったクリアパーツや胸から上のみのパイロットが気軽に取り付けられるのは接着剤不要のプラモデルならではの良さ。ここは貼りたい、ここは貼らなくていいと自由に判断できるのはありがたい。

 関連書籍を集めることでもっとマシーネンクリーガーの世界観に親しみを持つことも楽しみ方の一つだと思う。ただ、このままの距離感で断片的な情報を浴びる程度にとどまることで、思わず塗りたくなる手ごろなサイズ感のSFメカのプラモデルという付き合い方ができると感じている。

 どう動くのか想像が膨らむ背中の二枚のブレードはうさぎの耳みたいで、方向をくるくる変えるとフリーゲに表情がつくような感じがして楽しい。ここも接着剤不要だからこそ遊べる部分で、どんな姿で動いているのか想像が広がる魅力的な箇所だと思う。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

ジブリパークには大空模型がある!/風の谷のガンシップ

 ジブリパークの商店街エリアには模型店『大空模型』がある。ジブリ作品のプラモデル以外にも国内外のスケールモデルが陳列されており「宮崎駿とは?」を見つめる展示室のひとつ として監修されている。ただ、ジブリパークをテーマパークとして往訪する多くは各ショップでオリジナル商品を手にするが、ここでプラモを買っていくのは少数派。「それは組み立てないといけないものだから」と子供を諭す親御さんを見かけたりもする。だが、大空模型はここにある。ジブリを構築する要素には模型が、プラモデルが必須なのだという気概には敬意しかない。

 今回、息子が大空模型で選んできたのはガンシップ。『風の谷のナウシカ』映画公開40周年というタイミングでのこのチョイス。やだ、ウチの子ナイスセンス。パーツ構成はヒコーキ模型のそれであるが、ひとつのランナーにクリアパーツも配置されているのがまさにバンダイスピリッツ。このドーム状の側面キャノピーは王蟲の眼の皮が用いられている設定なので、映画序盤の腐海でのナウシカの様子がよぎる。ナウシカの意匠がつまった一枚になっていることからこのパーツ配置にはきっと意図があるはずだ。

 「姫様ー!」なサムズアップミト! 小さいながらしっかりミト爺で良いー。説明書にはキャラクター以外にもガンシップの設定画がビッチリ。ボックスアートもナウシカがバーンとあったりとビジュアル面だけでも目が嬉しいキットです。

 胴体の分割とコックピットのあり様はヒコーキ模型そのもの。違いは接着剤不要のスナップキットであること。それはバンダイスピリッツのアイデンティティであり、誰でも組み立てに挑戦できるカジュアルさの根幹ともなっている。ただ、ハメ合わせる際に胴体内のパーツがズレたり落ちたりして息子が「ムキー!」となっていたので接着剤で仮止めしてあげました。状況次第でスナップキットにも接着剤を用いるのは最善手かと。

 組みきると息子が「説明書みたいに塗りたい!」と言うので、どうしたものかと考えましたが「水性プレミアムトップコートUVカットスムースクリアーつや消し」と「タミヤ スミ入れ塗料(ダークブラウン)」を用意して息子にやらせてみました。私がフォローしながらですが、つや消し吹いてダークブラウンをバシャ塗りして拭き取り、簡単フィニッシュで息子は大満足。加えて私がナウシカとミト爺を水性ホビーカラーでサッと筆塗り、エンジョイ親子モデリングとなりました。

 ジブリパークにおいてプラモデルを買えるということは多くの人の求めるものではないかもしれない。それでも、大空模型がプラモデルとの出会いの場となっているのだと私は信じています。挑戦するきっかけとしてはバツグンの背景がここにはあるから!

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

イージーペインターがあればお外でプラモの塗装が楽しめる様子、お見せします!!

 僕は刺激臭がするラッカー系塗料を使う時は、自宅にある小さな庭で(庭に出るのがめんどくさい時はベランダで)塗装しています。その時に大活躍するのがガイアノーツのイージーペインター。先日ご紹介したガイアノーツから発売されているとっても良い下地塗料「モデラーズプロデュース NAZCAシリーズ メカサフ ヘヴィ」を吹いている様子をご紹介します。

 イージーペインターとは、エア缶に塗料を吹き付けられるアタッチメントと塗料を入れるボトルが合体した塗装道具。ボトルに好きな色を希釈して入れるだけで(塗料1:うすめ液1の割合)、すぐに吹き付け塗装ができます。

 お外で適当なダンボールを組んで、簡易の塗装ブースとします。この中に塗料を吹き付けることで塗料が拡散することを防ぎます。またイージーペインターは、缶スプレーのように一気に大量の塗料が出ることはありません。少量の塗料をシュッと吹き付けられる道具なので、ダンボールブースでもかなり対応できます。

 しかし! ダンボールブースに直吹きすると、塗料の吹き返しが起こります。ここで少量でも良いのでコピー用紙や新聞紙を丸めたものをブースの中に放り投げておきましょう。

 たったこれくらいの量でも全然OK! この紙に向かって吹き付けると余計な塗料が紙に付着して、塗料吹き返しなどが抑えられます。紙の量を多くすれば、さらに塗料の吹き返しを防げます。

 またお外で作業する時は埃を除去できるブラシもあると便利です。埃を払ってから吹き付けるという順番で作業すると良いです。

 塗装完了! 30分ほどでサーフェイサーを吹き付けられました。ラッカー塗料よりも匂いの少ない水性塗料、特に水性ホビーカラーはイージーペインターとも相性が良いので、お外で水性塗料を吹く時にも良いですよ。イージーペインターがひとつあるだけで、さまざまな場所で塗装を楽しめますので、ぜひ活用してください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

水性塗料筆塗りが最高に楽しくなる下地塗装は「メカサフヘヴィ&イージーペインター」の最強コンビにお任せ!

 今水性塗料筆塗りの下地塗料として大ヒットしているの「ラッカー塗料」があります。それが「ガイアノーツ モデラーズプロデュース NAZCAシリーズ メカサフ ヘヴィ」です。模型雑誌作例や商品プロデュースなど多方面で活躍されているNAOKI氏が監修したカラーで、重みのある紫のようなグレーがお手軽に塗れちゃいます。この塗料、水性ホビーカラー筆塗りの匠・清水圭さんが筆塗りの下地塗料として使用したことで注目を集め、今水性ホビーカラー筆塗り界隈では多くの人が手に取っています。

 水性塗料を塗る際に、ラッカー塗料を下地にすると何が良いのか。それは「絶対に溶け出さない」ということです。水性塗料の代表格のひとつ「シタデルカラー」も下地用のスプレーはラッカー塗料のものを販売しています。溶けないことで下地の色を完全に活かせるのです。

 メカサフを使えば「絶妙な色味」と「溶け出さない下地」という二つの条件を完全にクリアできます。あとはこの塗料をどう吹き付けるかですね。エアブラシがあればすぐに塗装できますが、持ってないという方もいると思います。そんな時は同じガイアノーツから発売されている「イージーペインター」を使用してください。これを買えばどんな模型塗料も吹き付け塗装することができます。

 エア缶に吹き付け用のアタッチメントと塗料ボトルがセットされているのがイージーペインターの特徴です。塗料ボトルにお好きな色を入れるだけで、すぐに缶スプレーのように吹き付け塗装ができます。これさえあれば、筆塗り前に均一にメカサフを吹き付けられます。そしてイージーペインターと缶スプレーの一番違いをお教えします。

 それは「塗料が大量に出ない!」ということです。少量の塗料をシュッと小刻みに吹き付けられるのです。ですので厚塗りにもなりにくく、狙ったところに的確に塗料を吹き付けやすいのです。塗料が少量ずつ出るので、簡易ブースさえあれば周囲に塗料を撒き散らすことも防げます。缶スプレーと同じなんでしょと思っていた方、ぜひ使って確かめてください。すごく良いですよ。

 ハセガワ ザブングルの4連ハンドキャノンにメカサフを塗りました。塗膜も厚くなることなく、全体にきれいに塗装ができました。筆塗りにおいてきれいな下地はとても大事なんだということを清水さんの実演を生で見て思いました。やって見たいけど、エアブラシが無くて……と諦めていたそこのあなた。ぜひメカサフとイージーペインターをゲットしてチャレンジしてください。そうすれば今日からあなたの筆塗りがとても楽しくなりますよ! それでは〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデルと布服の組み合わせで高まる/30MMのアチェルビー

  あまりの腰の細さにびっくりです。太ももより細い腰の表現は、ヒト型でありながら人間とはまったく別の存在である証なのでしょう。これはバンダイスピリッツの「30MM 1/144 EXM-H15B アチェルビー (TYPE-B)」です。ポニーテールに見たてた頭のパーツがとてもキュートです。

 説明書は大部分がカラーで見やすさ・組み立てやすさを考えて作られていました。とても作りやすくて感謝……。私は30MMシリーズを初めて買ったので知らなかったのですが、一度にたくさん組み立てたい人のために、ギュッと1ページにまとめられた作り方も載っている所に驚きました。めくる手間もいらない親切仕様ですね。

 ふと思い付いて、アゾンの1/12ピコニーモ用のドール衣装を着せてみました。ナース服っ!セーラー服っ!

 これは…これはヤバいのでは…?
 「すまんがそのプラモをしまってくれんか。わしにはヘキが強すぎる……」とポムじいさんが言ったとか言ってないとか。言ってないです。思った以上にかわいくってちょっと驚いてしまいました。

 ロボットに布服。人間とはまた別の存在を、再び人間的に引き戻してしまうことで、何かまたとんでもなくフェティッシュな魅力が発生してしまったのでした。ああ、アチェルビーちゃんかわいいなぁ……。ではまた!

森砂季

模型の挫折を繰り返したのち、ウォーハンマーとの出会いでアクリル筆塗りの手軽さと楽しさに目覚めたペインター。
サイズが小さめなプラモとガレージキットが好き。

マンガとリアルの境界線!/サンドランドのプラモデルが1/35スケールを謳う理由。

 サンドランドの戦車のプラモの縮尺表記は1/35。戦車プラモにおける最もポピュラーな縮尺で、その数字を謳うだけで”ムード”が作れると言っても過言ではない。ただこの戦車には「全長全幅全高何メートル、重量何トン」といった寸法設定は存在せず、人物だってデフォルメが効いているし、「どこが何センチだから1/35なのだ」というわけではない。

 フィギュアの背丈を既存の1/35戦車プラモのフィギュアと並べられるサイズ感にすることをもって1/35スケールとする「イメージスケール」というやつだ。要は本格戦車モデルの「テイスト」を匂わせるにあたっての1/35スケール表記の採用であって、手すりやハンドルも同じ縮尺の人間が握るべき太さで繊細であるとか35倍にした時に本物であるといった実感を持つ類の表現ではない。

 それでも鳥山明のイラストが「ポップにデフォルメされていてもリアリティを感じる」ように、このプラモはその表面的なルックス以上に「リアルな戦車模型」たらんとするギミックに溢れている。例えば説明書は要所要所で「組み立て」以外の「こうするといいぞ」を提案してくる有能なガイドになっている。に組み立てとは別に紹介されるワンポイントアドバイスも「ポールをしならせて加速時の疾走感を表現してみよう!」といった極めて演出的なアプローチの紹介をしつつ……。

 「戦車模型らしさ」を醸すためだけ(しかも決してソレが必須要素といえる訳ではない)に、わざわざオプションとして「金属線を使った旗竿」も用意。「まっすぐな丸棒はランナーに成形された細い丸棒なんかより、”本物”を使って質感も強度も全部アップグレードしようぜ!」というディティールアップのいろはを披露してくれる。

 しかも、ただ旗ポールが「金属になってウレシイ」で終わらせることなく、旗そのものを巻き閉じるようにして作るシールも用意されていて、これ以上ないくらいに「1/35の旗の薄さ」を表現してくれる。


 こうすることでプラ肉厚にシールを貼って表現された旗にはない「布でできた旗が1/35の厚みになった」写実的なリアリティも見せてくれる。ひとつのキットの中で、ひとつの戦車を作る中で、模型が取れるアプローチの豊かさを示してくれる。


 タミヤの1/35MMシリーズはもちろん、DBメカコレクションにも並べて違和感のないサイズのメカがある。元になるデザインやイラストが上手すぎるのでBANDAI SPIRITSくらいの技術のある大手メーカーなら普通に取り組めば100点以上が約束されると言われても納得してしまう鳥山明のメカニック。そこに同社が最近はリアルロボットアイテムでもあえて伏せることすら選択してきたスケール表記を「必要な要素」として採用し、なおかつそれ自体を「雰囲気づくりのアリバイ」として済ますことなく、パーツ構成から説明書に至るまで真摯に「サンドランドの戦車の(そして実在する戦車に通じる)プラモデル」として取り組んだ意欲作に仕上がっている。


 スケールモデルが取り組んできた「本物を限界まで正確に表現するリアリティ」とも、ガンプラが取り組んできた「設定解釈から劇中以上に立体に施すべき情報を引き出すリアリティ」とも違う。「稀代の漫画家によって描かれたデフォルメをそのままに立体化することで浮き立つリアリティ」がここにある。絵が巧いということはどういうことなのか?プラモデルが巧いというのはどういうことなのか?もし、このプラモデルを鳥山先生本人が作ったらどんな風に仕上げていただろう……

と考えずにはいられない。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

これぞプラモデルのサスティナブル補修!パーツカットのミスは机の上に転がっているアレで直しちゃおう。

 毎日30分手を動かしてきた「ハセガワ 1/72スケール 戦闘メカザブングル ザブングル重武装バージョン」が遂に組み上がりました!! このボリューム、堪りません。接着できるところはバンバン接着しているので、ポロポロパーツも落ちません。接着剤を使わなくても組めるプラモでも、接着剤を使うとさらに組みやすくなるよ!

 組み上げてみたら、超目立つ額のパーツを豪快に抉っていました。目立たない箇所を抉ってしまった時は、強引にやすりがけをして現場合わせしちゃっても良いのですが……。この額は、抉った箇所に合わせてヤスリをかけると、明らかに形状が変わってしまいますね。そんな時、あなたを助けてくれるアイテムは、机の上に転がっているのです!!

 見てください! パーツをカットした時に出るプラスチックの欠片です。まさに机の上に転がるブルーストーン!(ザブングル観てね。面白いよ)これを、抉ってしまった箇所に接着剤で貼って、削るだけで良いのです! 超サスティナブル補修でございます。

 いきなりプラスチックの欠片を貼るのはやめましょう。貼りやすくするために、抉ってしまった箇所を少しだけデザインナイフであえて広げます。こうすることでプラの欠片の接着面積が増えて安定し、より綺麗に補修できます。

 小さなパーツを貼る時に便利なのが、粘度の高い白蓋のタミヤセメント。蓋についているハケ部分にパーツを持っていくようにして接着剤を塗ると、小さなパーツにも接着剤が塗りやすいです。

 抉ってしまった箇所に欠片を貼ります。溝にしっかりとはまるようにグッと押し込みましょう。

 位置決めが終わったら、GSIクレオスのMr.セメントSPを流し込んで、より強固に欠片を接着。SPはプラを溶かす力がすごく強いので、欠片とパーツが接着面で溶け合ってしっかりと融合します。

 この状態でしっかりと乾かします。僕はここまでやったら寝て、翌日にこの欠片の形状を整えました。

 あとはパーツの形状に合わせて、ヤスリで欠片を削り整えていきます。

 見事修正完了! 同じ成型色のパーツで補修しているので、補修箇所も目立ちません。いつもはすぐに捨てちゃうプラスチックの欠片も、このように有効活用できます。もしパーツをカットした際に、大きく抉ってしまったら……ぜひあなたの机の上をじっくり見てください。そこには役に立つプラスチックの欠片が転がっているはずです! それでは!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

舞台は戦車の中と外!/サンドランドのプラモデルが見せる「キャラクターとその居場所」

 床下の機器にアクセスする大小のハッチと、バッテン模様がいっぱい並んだ独特な滑り止めのパターン(ちなみにこれは鳥山明先生が実際に『サンドランド』で描写したパターンなのでこれが「正解」!)。戦車の外に広がる世界があるなら、戦車のなかには乗組員の躍動する世界があります。映画『FURY』しかり、アニメ『ガールズ&パンツァー』しかり、戦車戦に「わかり」をもたらすのは戦車のなかで繰り広げられるドラマ……。

 戦車の大きさを示し、誰がどんな役割を果たしているのかを教えてくれるのは、いつだってフィギュアです。サンドランド国王軍戦車隊104号車のプラモデルには3体のキャラクターが付属……もとい、主役は誰がなんと言おうと彼らです。なかでもベルゼブブのお目付け役、シーフのパーツ分割は特筆もの。四肢の造形をひとつのパーツにまとめながら、胴体部分は緑色の被服を取り付けるためのフレーム的な構造になっています。

 四肢の生えたコアのパーツに前後分割された被服を組み付け、2パーツ構成の頭部をつければシーフの出来上がり。もっと劇中の印象に近づけたければ、手袋や靴、そしてヒゲや頭髪をちょいちょいと塗装するといいよ……という魅惑の3色です。ベルゼブブとラオのフィギュアもだいぶ楽しい分割で、それぞれのパーツの色をどんなふうにシェアしているのかを観察しながら組むと「なるほど、うまいこと振り分けてあるな〜!」と腕組みしながら独り言が出てきます。

 車内のパーツを組み付け、キャラクターを所定の位置に配置すれば「戦車の中の世界」が見えてきます。どれも固定するのにはちょっと心細い設計だと感じたので、ここはすなおに接着剤を使って貼ってしまうほうがいいかも。もっと踏み込んで言えば、ベルゼブブのパーツはとても小さいのにギザギザしていて力を入れると破損しそうなので(あとシンプルに指が痛い)、合わせ目に少量の流し込み接着剤を置けばすんなりと奥までハマり、数秒でガッチリ固定されます。

 バンダイスピリッツのプラモデルは「接着剤を使わずに組めること」を強く志向していますけど、だからといって”接着剤を使っちゃいけない”というわけじゃありません。やたらと指の力が要求されるところ、ただ差し込んだだけでは奥までビシッと入りにくいところ、ハメ合わせたけどなんだか剛性が不足しているところなんかは、むしろ積極的に流し込み接着剤を使うのが「素早くキレイに設計の意図通り組む方法」だと私は思っています。

 3人のキャラクターが躍動するフロアにぐるりと装甲を取り付けていくと、やがてそこは閉じられた空間になります。装甲を一部取り付けなければカットモデルのように見せることもできますが、鳥山明先生の偉大なところは「めちゃくちゃ大きいハッチを付けて、外側からでも存分にキャラクターの表情を楽しめるデザイン」を描いていること。

 実物の戦車は生存性を優先してハッチはなるべく小さくするものですが、サンドランドの戦車はハッチを開け放つことで丸っこいフォルムから翼を広げたペンギンのシルエット(そう、ペンギンなのよ!)を作り、魅力的な「戦車の内部」へと誘ってくれます。戦車らしさを演出するディテールのリアリティを足がかりにしながらも大胆なデザインを施すことで「内部と外部」の隔絶を取り払い、マンガとしても映像作品としても見栄えのするカメラワークを実現してしまう。この圧倒的なセンスをプラモデルで改めて感じ取れる幸せたるや……。

 居住空間を囲む3枚の大きな装甲パーツは接着するとバラせなくなってしまうのですが、どうも上部がフガフガと遊んでいて微妙にスキマができてしまう……どうしたものかと悩んでいたら、最後に砲塔(これも少ないパーツ数で戦車砲らしさを表現しつつ、ちゃんと砲身が俯仰するギミックを実現しています)を被せることで全体がガチっと固定され、簡単にバラけないようになる設計もお見事。徹頭徹尾、この戦車のデザインとその解体/再構築に一貫した気持ちよさを味わえる、爽快で風通しの良いプラモデルだと感じました。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

春が来る!お外で作ろう、お弁当箱入りプラモデル

 パルプを押し固めたような素材感のある厚紙でできたこの箱、「Lunch BOX」と型押しされ、まるでちょっといいテイクアウトのお弁当のようですが実はプラモデルです。「Wave 熊丸 Racoon」はいつものプラモと一味違うパッケージ。いつも通り自分の部屋で作るのは少しもったいない気分です。春の足音聞こえる今日この頃、このお弁当を片手に公園へ行ってきます!

 松林の公園に来ました。ちょうどいい机がなかったので切り株で代用。ランチクロスを広げ、温かいお茶入り水筒とニッパーで準備OK。箱の中身がとてもカラフルで嬉しくなります。色味のきれいなお弁当を開けたとき、おいしそう!となるあの気持ちです。天気が良く気分も晴れやかです。

 ランナーはところどころに設けられた凹凸で3段に連結されています。このおかげでランナーがコンパクトにびしっと箱の中に収まります。お弁当箱の中でおかずが暴れないように固定する工夫と同じ発想でしょう。

 これはあとから気づいたのですが、特にカラフルなBランナーは多色成型ではなく、小さなランナーの集まりでできています。断面が半円状の外枠に凹凸が設けられているので、これまた連結できるようになっていて、カラフル・コンパクトのための工夫に驚きました。

 3枚のランナーをつなげて1枚の巨大ランナーに変形合体できることにも気づきました。パーツ探しの視認性が上がって、手狭な(切り株が机なのでなおさら狭い)作業スペースでも取りまわしやすくなります。

 パーツの紛失や切りくずなどのゴミの心配があるので、作業は全て箱の中で行いました。組立は小一時間ほど。ちょうどランチを食べるくらいです。

 屋外でプラモを作るといいのは最高の撮影スポットと照明に囲まれていること。完成の喜びから本当にノータイムで撮影できます。熊丸はアライグマがモチーフ。まるまるとしてかわいらしく、草花がマッチしています。

 反面、細かな作業の多いプラモには不向きなことも。キットにはかっこいいデカールが付属しますが、貼るのは帰ってからにします。「キットを組むだけ」「道具はニッパーだけ」と少しだけやってみると、ピクニック気分でプラモが楽しめました。
これから春。お外プラモに熊丸がおすすめです。

シンガジ

90年代生まれ。父の影響でガンダムが好きになる。
最近はガンプラ以外にも興味あり。

戦車模型のナウな手法「部分分割履帯」がサンドランドを本気で駆け抜ける!

 バンダイスピリッツの最新戦車模型こと「サンドランド国王軍戦車隊104号車」は、架空のキャラクターモデルでありながら実在する戦車模型の手法を取り入れているので、上の写真のようなナウいパーツ分割を観察できます。これがめっちゃいいという話です。

 履帯(=キャタピラ)といえば柔らかい素材でベルト状に作られたものをぐるりと巻くか、一枚一枚分割された履板(「りばん」と読みます)をピンなどで繋ぐか……というのがかつての戦車模型における「あたりまえ」だったのですが、最近では高度な設計手法と成形精度の向上によって「部分ごとに一体でつながった状態の履板を貼っていくとすごくリアルな履帯ができる」という方法がトレンドです。

 その前に転輪(履板の上を走る車輪だと思ってください)ですが、こんなかんじで9つの丸いパーツが一体になってパーツ化されています。ひとつひとつを取り付けていくのもそんなに苦ではないかもしれませんが、ゲート(ランナーとパーツを繋いでいるところ)を4箇所切って、車体にブスッと差し込めば足回りの準備が完了する、というのは嬉しい配慮。実在する戦車の模型でもこうした試みは散見されます。

 履板は地面に接するところがまっすぐ、それ以外のところは重力を感じさせるカーブを描いて1〜4枚単位で造形されていて、これも転輪に設けられた細長いスキマにはめ込むことで接着剤を使わずとも所定の位置にバシーっと固定されます。

 接着剤を使わないからエラいとか、リアルだからすごい、みたいな話をするつもりはありません。「ああ、この模型を開発したチームは戦車模型のことを知っている(あるいはよく勉強している)」ということが伝わってくることに、胸がいっぱいになるのです。ワクワクする組み立てと、履帯のリアルな振る舞いを両立させる方法をキャラクターモデルに輸入して、ちゃんと咀嚼して「バンダイスピリッツならでは」の模型に昇華していることにニヤニヤしちゃうのです。

 履帯を一周組み付けた状態で眺めると、地面から前後の車輪(どちらかが起動輪で、どちらかがアイドラーホイールなのでしょう)に向かって履帯が自分の重みでたるみながら立ち上がっていく様子がゆるやかなカーブで演出されています。上部の履板がうねうねと波打って見えるのは、リターンローラーと呼ばれる小さな転輪で支えられている部分を起点にこれまた重量が履板をたるませている様子を表現しているから。

 ここまで組んで「転輪をすべて一体のパーツにするためにつながっているところが丸見えなのはどうもなぁ」と一瞬思ったのですが、次の工程を見て納得。サイドスカートを装着すると、転輪をひとつなぎにしている「リアルじゃないところ」はまったく見えなくなるのです。

 戦車模型を組んだことがない人も手にする可能性があるサンドランドの戦車。鳥山明先生が描いた可愛くともリアリティを感じさせるディテールへの目配せに、きちんと実在戦車の模型におけるコードを持ち込むことで応じたバンダイスピリッツ。ああ、なんという幸せな関係を見ているんだろう……と、ただ足回りを組んだだけでも感動してしまう、そんなプラモデルなのです。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

プラモデルに大事なのは「台座」なんだぜ、ということを教えてくれるサンドランドの戦車模型

 サンドランドに出てきた戦車のプラモデルを組むぞ!と意気込んで説明書を開いてビビったねオレは。初手が台座ですよ。履帯(キャタピラ)の轍がついたサンドベージュの板はわかる。その下の黒いのは何に使うんだ?と思ったら2枚重ねにして厚みを出し、戦車を1段……いや2段高いところにディスプレイするというおもてなし。そう、模型を飾るところは高ければ高いほどいいのだ。

 台座前面にくっつくタイトルロゴのプレートパーツがこちら。鳥山明先生の書き文字が立体になってプラスチックのパーツとなりこちらをじっと見ている!なんということでしょう。うれしすぎる。でも完成見本だと水色のロゴに黒フチなんだよな。水色のところはどうするの? 塗るの? それとも水色のパーツが用意されててそれがビタッとハマるバンダイスピリッツお得意の方法で解決するの?

 うほほほほ、シールですよ。厚みのある透明なプラスチックのシール裏面に文字の水色を印刷し、さらにその上から透け止めの金属を蒸着した超贅沢仕様で光沢感と透明シートならではの奥行き感を演出。しかも台紙から剥がしやすいようにシールの中心線に切れ目が入っています。カットラインはパーフェクトで、黒いフチの内側にストンと落とすように貼れば位置もバチバチに決まります。貼るときは先の尖ったピンセットを用意するといいぞ!

 台座の厚みと舞い上がる土埃のエフェクトパーツ。そして「SAND LAND」の文字には半ツヤ黒と光沢&奥行き感のある水色のコントラスト。台座だけでこんなに盛り上がっちゃうプラモデル、そうそう見られるもんじゃありません。こうなりゃ当然本体も最高の組み立て体験が待っているはず。そんじゃ続きはまた!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

機動歩兵のバリエーション/ウェーブのプラモデルなら、ひとつで2種の「宇宙の戦士」が楽しめます!

 ひと箱のパーツでザクとザク強行偵察型が作れちゃうようなプラモ! それが「ウェーブ 機動歩兵 戦略通信型」です。商品のメインである「戦略通信型」の他に、小説『宇宙の戦士』でもメインビジュアルをはっている「通常型」のパーツまでセットされちゃっています。選択式だけど、キットは接着剤を使用しなくても作れるスナップフィット方式なので、お好きな時に取り外して組み替えられます。

 下のランナー(パーツが繋がっている枠の事)が通常型。特徴的なキャノンが入ってます。上が戦略通信型のランナー。大きな違いはこれだけなのですが、しっかりと違うキャラクターに見えるのがデザイナーのなせる技。プラモを組むとさらにその良さを手から体感できます。

 本体がストライクガンダムとするなら、ストライカーパックがふたつ付いてくる感じ。だからパーツも結構ボリュームがあって作りごたえ抜群なのです。そしてこの成型色。コーラルブルーのような青が最高にかっこいいでしょ! 通常型のオリーブドラブとはまた違った魅力を、組むだけで楽しめます。

 パワードスーツなんだぞってことが一撃でわかる「アニキヘッド」パーツ。左右の胴体を繋ぐフレームにボスっと刺します。アニキヘッドが差し込まれるだけで、このデザインの意味がより強力にわかる……やっぱり人のパーツって大事。マスターグレードのガンプラも、コクピットに小さい人がいるからこそ巨大兵器なんだって分かりますもんね。

 スケールは1/20。ちょうど手のひらに収まる感じのサイズです。本当に最高のデザインだよな〜って、手の上でぐるぐると回して堪能してしまいます。そしてお待ちかねの装備チェンジを楽しみます。

 戦略通信型。背中のアンテナは展開時と収納時を選択できます。

 そしてキャノンがかっこいい通常型。簡単な差し替えでどっちも楽しめちゃう、ナイスプラモです。俺は「通常型」が欲しいけど売ってないよ〜って思っていたあなた。迷わず戦略通信型をゲットしてください(実は指揮官型も局地戦型も通常型のパーツが入っている。ウェーブはすごい)。ひとつでふたつの遊びが楽しめる本キットで、君も「宇宙の戦士」になるのです!! ではまた。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

親子で筆塗りトライブ。サイズ感がジャストすぎたミニジオラマのプラモデル/minimum factory スコープドッグ

 ウチの6歳児が組んで塗って楽しんだminimum factoryのスコープドックです。子供のおぼつかない筆さばきでは塗りムラや塗り残しはあたりまえ。それゆえボトムズOP「炎のさだめ」がモチーフの成型色が随所にあらわとなり、市街地が戦火に染まる空気感をまとってしまっている……。 「ヤダー、ウチの子天才!?」と親バカになりつつも、このヴィネットと呼ばれるミニジオラマのサイズ感、用いた水性ホビーカラーのパフォーマンスあっての結果であると分解して語りたいのです。

 『minimum factory スコープドッグ 炎のさだめ/いつもあなたが』の特筆すべき点はその絶妙なサイズ感でしょう。このなんとも言えない大きさが「組み立ててみよう」「塗ってみよう」というリビドーにつながっており、私も息子も疾走感をもってプラモをエンジョイできたのです。数点のパーツをニッパーで切り出し、流し込み接着剤で貼り付けしていけば間違いのないフォルムのスコープドックが速攻で建立される。息子は小さな手でほぼ自分でやりきり、なおかつ塗りたい欲を爆発させる余力を残していました。

 事の発端であるホビージャパン連載「筆塗りトライブ」が書籍化した『凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル』です。息子がこのキットのページを見るなり「このロボ、すごくカッコいい!」とブチ上がったのがきっかけで、このヴィネットを親子で手にすることに。

 本書の冒頭、横山宏氏へのインタビュー記事はもはや聖典。「筆ムラは(色のムラではなく)ツヤのムラでしかなく、仕上げでツヤ消しか半光沢のスプレーでトップコートすれば全然気にならなくてOK」というひとことは啓示でしかなく「ムラなく塗り重ねるべき」とか「ハミ出さず塗り分けるべき」などの固定観念からの解放でしかありませんでした。ゆえに息子に対して「それぐらい塗れればOK。後のトップコートで何とでもなるから」というリラックスしたスタンスで向き合えました。

 塗装は手持ちのシタデルカラーで。5分程度で乾くのでどしどし塗り進められるうえ、有機溶剤不使用のため体に優しく無臭。希釈と筆洗いも水道水で間にあうという、子供が取り扱うには絶好調すぎるホビーカラーです。大まかに塗り分けたあと、フィルタリングとツヤ消しトップコートも兼ねるシタデルのシェイドを全体に塗りたくります。スコープドッグ本体には「ナルンオイル」を 、地面には「アグラックス・アースシェイド」をそれぞれバシャバシャとまぶすとみるみるリアル感が増し「本物みたい!」と、息子は存分にライジングしてました。

 筆塗りトライブを読んだ息子が「組みたい!塗りたい!」と躍起になったこのスコープドッグ。組み立て20分、筆塗り90分、子をヒザに乗せてフォローしながらの親子モデリングを楽しめました。繰り返しになりますがサイズ感が本当に素晴らしいボトムズプラモです。キットがこれ以上大きいと6歳児の集中力はもたないし、小さいと子供が塗り分けるのが難しくなるでしょう。

 ヴィネットという固定ポーズのキットはなにか模型の上手な人達が嗜む上等な趣味だと勝手に思い込んでいたところがあります。速乾の流し込み接着剤や水性ホビーカラーの進化もあり、実のところ適度なサイズならば組んで塗ってをカジュアルに楽しめるものだと知った今回でした。ヴィネットのプラモ、親子でしばらくハマりそうです!

ダテツヨシ

「つくる」をテーマに、世間話をしています。

何もかもを忘れられるひとときをくれる驚き/サンドランド国王軍戦車隊104号車

 バンダイが久しぶりに戦車プラモを発売しましたが、コレがもう作りながらひたすら「すげぇ……」と見惚れながら作ったんですね。手を付けた全員に「組み立てる」という娯楽をノーストレスで提供するためにあらゆる工夫がなされていたんですよ。

 例えば履帯に横からつながるゲート。履帯側のディテールをニッパーで誤って切り落とさない工夫として、ガンプラのエントリーグレードで見られる「手でちぎり取る設計」を取り入れてます。ニッパーが入らなければ誤ることも無い。

 細くて折れそうなアンテナパーツ?柔らかい樹脂で作ればいい……。問題解決の発想がストロングスタイルすぎます。ユーザー側の負担を減らすというのは、他の企業でも取り組まれているテーマなのに、バンダイがやるとこうなるのだから面白い。そして金属製の支柱も同時に用意し、ユーザーの選択に任せる柔軟さもあって、攻守がどちらも振り切っています。パない。

 普通に組み立てたのでは絶対に見えない部分にも、配線やスイッチをデザイン。カットモデル風に組み立てた場合のことを意識したような仕事で興奮しました。サービスが良い。そしてコレはガンプラにもフィードバックされて欲しい。例えそれが機能しない飾りだろうと、何もないよりかは「そこに何かがある」のほうが、心を豊かにしてくれます。

 ハッチオープン状態。太ったペンギンに見えてかわいい。一般的な戦車模型は下から徐々に積み上げて完成していくけれど、これはバンダイなので各パーツごとに完成し、最後は一気に組み上がって完成。「うわー!!!バンダイのプラモデル作ってるぞーー!!!」という快感が脳に流れ込みます。醍醐味。が、しかしコレで完成ではない。本キットはここからがすごいのです。

 このキットの最大の特徴は、「分解ができる」という点かもしれません。バンダイのスナップフィットといえば、パーツ同士が「パチッ!」と音を鳴らして気持ちよくハマるのが特徴ですが、本キットではパチっとなりません、ヌルッとハマります。バンダイのプラモデルなのに「パチッ!」が無いことが不思議でしたが、ハマったあとでも工具なしでダボの場所を意識しながら引っ張れば分解できることに気づいた時は一番の「うわすげ~~~」というため息が漏れました。

 スナップフィットは普通に組むだけでガッチリと固定されてしまうため、塗装や改造前提の仮組みをするときは、ダボを斜めにカットしたりマスキングテープを使用するなどの工夫をすることがありました。しかしこのキットでは一切工夫なしで、慎重さだけでバラすことができます。一度刺し身で完成させ、バラすことで内部まで塗装でき、再び組み上げる時には「作中通り」か「カットモデル風」か、それとも「ジオラマ」か?なんて贅沢なキットなのか。至れり尽くせりですよ。

 モチーフは戦車ですが、味わった感想としては初めてエントリーグレードのガンダムや30MMを組んだ時のような一気に組み上げられる全能感で脳が痺れるので、一瞬でもいいから何もかも忘れたいという方に猛烈にオススメします。効きます。

優しい人間

1988年生まれ。ニッパーを読み始めてからガンプラだけでなくミリタリーにも手を出し始めた。普段のお仕事は重機オペレーター。

鳥山明メカの最新プラモデルが心の底から最高すぎる話/サンドランド国王軍戦車隊104号車、インボックスレビュー!

 バンダイスピリッツがロボット以外のジャンルでゼロからモチーフに向き合うプラモデルが好きです。こちらは発売されたばっかりのプラモデル。マンガ、映画、ゲーム、ディズニープラスのアニメでも展開される作品『サンドランド』から、サンドランド国王軍戦車隊104号車です。1/35スケールですよ。戦車模型のデファクトスタンダードであるこの縮尺で「鳥山明メカ」が手に取れる嬉しさはもちろん、あのバンダイスピリッツが真っ向から「戦車模型」に挑戦しているんです。美味いに決まってるでしょ!

 組んでいるのを横で見ていた妻が「あ、バンダイのプラモデルだ」と声を出すのも納得。色とりどりのパーツがハコの中からこんにちは。戦車模型はシックなミリタリーカラー単色であることがほとんどですが、このプラモデルは「組み立てるだけで設定に近い配色が楽しめます」というタイプのヤツ。しかもね、ガンプラではだいたい1枚しか入っていない多色成形(ひとつのワクに複数の色のプラスチックが混在している製造法)のランナーが2枚も入っています。ゴージャス極まりなし!

 黄色く丸っこい車体は大きなパーツに分割されていて、豪快にバコンバコンと組み上がっていく様子が想像できます。コア側(パーツの裏面)には配線やそれを壁面に固定する留め具も彫刻されていますが、その曲がり方や交錯具合も一本調子ではなく、とっても自然で立体感あるものになっているのに注目!

 車体外側の鋳造装甲に走る太くてゴツいビードが「溶接して作ったメカなんだよ」ということをアピールしてきます。こちらもあくまで小さな凹凸がランダムになっていて、この戦車が手仕事で作られているのを感じさせる彫刻になっているのが最高です。ミリタリーに深く通じた鳥山明先生がこうしたディテールをめちゃくちゃ魅力的に描けることはつとに有名ですが、バンダイスピリッツの開発者がそれを再現しようとがっぷり四つになっているのが嬉しいんだよな〜。「絶対にサンドランドのメカの魅力をそのまま伝えるぞ!」という意気込みが金型に刻み込まれているのよ。

 主人公であるベルゼブブ、そしてラオとシーフも色付きのプラスチックで再現されています。1/35世界で大柄な兵隊フィギュアを見慣れていると、サンドランドのキャラクターたちはけっこうこぢんまりとした可愛らしい造形なんだな、ということもわかるはず。濃いグレーのパーツに目を移してみると、ミリタリーモデルでは複雑な形状の砲尾に多くのパーツを費やして細密に表現されるのが普通ですが、本キットではこうしたメカニカルな部分もなるべく一体のパーツにまとめ、うまいこと立体感を味わえるよう設計している……というのも大きな特徴です。

 キットを眺め回していていちばんびっくりしたのが車体内部の物入れとジェリカン(予備燃料の携行缶)が収まったラック!なんとこれでワンパーツですよ!これだけバキバキに陰影のある造形だと、まるでひとつひとつがバラバラに動かせるよう。なにより横倒しのジェリカンと縦に3つ並んだジェリカンの「別パーツ感」と、ラックから落ちてこないように張られたベルトの自然なたるみ、さらにそれを留める三角環の表現が絶品!グレーのままにしておくのはもったいないと思ってしまうほど、「今すぐ塗りたくなる造形」だよね。

 そしてほら、組み上がっても最高のルック。ちょっと広角で見上げるように撮ったときのフォルム、うまく配置されたハッチの位置、随所に散りばめられたディテールの密度感。ああ、なんと巧みなメカデザインなんだ。そして、可愛さと疾走感をプラモデルでも演出できていることがまた素敵!

 「塗らずに組んでもいいんですよ」というメッセージを全身から発しているサンドランドのプラモデルですが、見ているともう作りたいし塗りたいし汚したくて我慢ならない!そのための仕掛けもこのキットにはたくさん用意されています。さあ、これからいっしょに組みながら、このプラモデルの楽しいところをみんなで見つけ、騒ぎ、「いいプラモだ〜!」と声を上げましょう。そのためにはホラ、手に入れてくださいよ。絶対に、損はさせません。みなさんもぜひ!

追記/本稿を書き終え、このすばらしいキットのレビューを続けて何本も書き連ねていたなかで、鳥山明先生の突然の訃報に接しました。本当に悲しく、つらく、自分でも信じられないほど呆然としています。氏がプラモデルをこよなく愛し、プラモデルの世界にも多大なる影響を及ぼし、たくさんの楽しさを分け与えてくれたことに心から感謝しながら、この記事は予定通りUPいたします。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

これから『宇宙の戦士』になる君へ。ウェーブがプラモデルに付けてくれたビッグプレゼント。

 「スタジオぬえ「宇宙の戦士」初期イラスト集」。ウェーブが同社の「機動歩兵 戦略通信型」のプラモの初回特典として封入してくれたビッグプレゼントです。このプラモを買えば、あなたは今からでも『宇宙の戦士』になれます。

 ロバート・A・ハインラインの名作SF小説である『宇宙の戦士』。どんな内容なのかは上のリンク記事を読んでください。小説の内容とともに、1977年に出版された早川書房の『宇宙の戦士』のために、スタジオぬえの宮武一貴氏と加藤直之氏によって描かれた挿絵やカバーイラストは、今でも世界中のSFファンを魅了し続けており、こうやって現代の成型技術でプラモになっているのです。

 しかし……今から『宇宙の戦士』になろうという最高のフレンズが手に取りやすい「新訳版」には、偉大な二人が手がけた挿絵が掲載されておらず、本書のカバーイラスト、1977年版のカバーイラスト、2010年版のカバーイラストなどが掲載されているのみ……。1977年版に描かれていた挿絵の中でも、「ゴリゴリのメカなスーツでも卵を拾える繊細さ」を表現してるイラスト(マニュアル図の構成が痺れる)は衝撃的で、パワードスーツの概念を教えてくれたものでした。文章とともにワクワクを与えてくれた挿絵はとても重要だったのです。

 そしてそのようなモヤモヤを払拭してくれたのがウェーブでした。「機動歩兵 戦略通信型」のプラモデルの中に、新訳版では見ることができない機動歩兵の数々のシーンを付録小冊子という形で再録してくれたのです。これから『宇宙の戦士』になる仲間への熱いプレゼント。「知っているでしょ?」じゃない、「ここから俺たちの仲間になってくれ」というポジティブさがギュッと凝縮されています。

 初回特典として入るこの冊子。当時の文庫を持っている人にとっても保存用として良いでしょう。そして小説を読んでない人も、SF好きなアニキたちがたまに口にする『宇宙の戦士』ってどんなものなの? ってのもこのプラモを買うことでイメージが湧くでしょう。新訳版の副読本とも言える「プラモデル」。これからの『宇宙の戦士』にとって必須のマニュアルは、この中に入っているのです。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデルのランナーを探すときに考えていること。

 RGガンダムエピオンです。大量のランナー。パーツをパチパチピタピタ組み立てると、立体がみるみる出来上がっていく最高オリジナル・ラブな時間、それがプラモデル。そしてそれと引き換えに、ランナーを行ったり来たり取っ替え引っ替えパーツをどこじゃどこじゃと探す時間の浪費こそがプラモデル者に与えられたオリジナル・シン(原罪)です。

 なんのこっちゃですが、色分け&関節機構モリモリのプラモデルは当然パーツが多くなるので、ガンダムの足一本でさえ何枚ものランナーからパーツを切り出すことになります。ABCDEFGHIJK……とランナー記号が増えるほど激しくなる反復横跳び。アルファベットのE以降があんまり頭に入って来ない私。どうにかならないものかなと思いながらプラモデルを作っているうちに、私はいつからかパーツを目印にしたり、ランナーに愛称を付けたりして手繰り寄せるようになっていました。

 まずは語呂合わせ。 たとえば、このDランナーはデカい羽がイイすね!DはデカいのD!説明書にDが出てきたら「あのデカい羽のランナーか!」と、瞬時に判別できること請け合い。ちなみにこのランナー、記号がBであった場合は「BIGな羽のBランナー」と呼びます。

 Gランナーには造形がいい感じの「ゲンコツ」のパーツが入っていました。ゲンコツのGランナーです。分割されまくりなら精密なモノが組み上がるのはある意味必然です。しかしそんな中、ワンパーツで緻密な造形があると嬉しい気持ちが高まりますので、その嬉しさ位置エネルギーを利用してランナーを見つけます。

 えんじ色のDランナーよりもずっと濃い血の様な赤が美しEランナー。微妙なニュアンスの色が成形色になっている時もなんだか嬉しいですね。しかしガンダムエピオンにもともとこんな差し色は無かったハズなんで、もしかしてライバル機体ということでサザビー(サーモンピンクと赤で構成されているMS)のカラーリングにインスパイアされたオリジナルアレンジかもしれませんね。どうかな。「EXレッド・ランナー」と命名。

 Fランナーにはもうまんま”F”っぽい形状のカッコいいパーツを発見。Fです。わかりますか。Fっぽいパーツのランナーと覚えました。

 説明書を見る前にひと通りのランナーを観察して、特徴的なパーツ、よく出来ているパーツを発見してみる。すると、ランナーを探すのが体感的に速い気がします。ホントは速くないかもしれません。しかし、何だか楽しいです。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

余ったパーツは隠された道/ARTPLAのグローサーフント

 学校で数学のテストの答え合わせ、「正解はこれだけど、こういう解き方をすると式がシンプルになる」とちょっと頭をひねった解法を解説されることがあった。そのあとに「こうやって解いたのは○○だけ」と呼ばれる名前を聞いて、同じ点数だろうが多少勝っていようが、馬鹿正直に答えを導き出した自分としては負けた気になるのが悔しかった。

 グローサーフントには「このパーツは使いません」と書かれたパーツが二個ある。これは説明書の通りだ。ただ、完成すると余るパーツはそれよりも多く、説明書を何度見返しても使いどころがない。しばらく考えたが余ったパーツのD3、4、9、10、41、42はひじの関節を、D30は上半身と下半身の接続部のもので、どちらも角度を自由に決められそうな作りをしている。

 無論、説明書にそういったことは書かれていない。特に上半身と下半身をつなぐパーツは、単純にパーツを入れ替えればいいわけではなく、組み立て順も少し工夫を要する。しかも、これらは推測でしかない。とはいうものの、「あれ、もしかして!?」という気づきとともに自分で進んでいく様は、送り手側から用意された改造であって、それを使うことにひらめくことができさえすればチャレンジできる作業だ。

 グローサーフントは1つの箱の中に3個入っているので、こういった隠された正解に気づいたあとに、すぐにチャレンジができる。隠された道に気づかなかった自分をすぐに取り返すことが出来るのだ。

 ひとつ目は説明書通り、ふたつ目は余ったパーツが何に使われるものかを考えて作る。三つ目はそれらを踏まえて自分なりの完成を目指す。同じものが3個入ったプラモデルではあるが1つ1つがそれぞれ異なる組み立て体験を味わえる良いプラモだと思った。同じ作業を三周するものだと思っていたが、そんなことはなく残りの一体も楽しめそうだ。もしかして、海洋堂のマシーネンはみんなこんな感じで「隠された道」が潜んでいるのかもしれない。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

早けりゃいいってもんじゃない!小さな目標を一つずつクリアして行く達成感の連続を楽しむプラモライフ。

 走れ! と言われても簡単に走りきれないこともある。趣味の限られた時間の中で「俺はこんなにもパーツのあるプラモを組むのか……買った時のテンションよカムバック!!」って脳が発するハッスル。確かに僕も早く形が見えて、すぐに達成感が味わえるプラモが大好きで主食となっている。でも、世の中のプラモはみんながみんなそうじゃない。けどね、プラモは一気に作らなきゃいけないなんてもんでもない。プラモに三日限りの掟は無いのだ。

 今僕は毎日「30分」、ハセガワの1/72スケール ザブングルを組んでいる。パーツのボリュームもあるので「これはまとまった時間があっても、すぐには組み上がらなさそうだな」と思った。そこで、僕は箱根駅伝のように区間を分けて走ってみようと決めたのだ。目標を細かく設定し、1日の中の限られた「30分」と言う中で作る。実際に僕の今の仕事や育児では、好き勝手にプラモを組む時間は「30分」が限界でもある。だからこそ目標を甘くマイルドに設定して楽しむのだ。そのための道具の準備と、慌てない心の準備。これができればどんなプラモも楽しくなるって、今回ザブングルが教えてくれた。しっかりと歯応えのあるプラモだからこそだね。ありがとう、ザブングル。

 僕の第一目標は、「1週間で腕2本を組む」だ。それくらいでいい。俺のペースなのだから。世界中にある似たような諺で「ゆっくり行くものは安全に遠くまで行く」なんてものがある。本当に良い言葉だ。今はどんな物事も早い。早さに乗ってばかりでは疲れるし、自分を見失う。そこに何か残るのか……。実際に僕の部屋に残っているものは、俺のペースで楽しんだものたちばかり。好きな本、好きな靴、好きなCD。プラモだけじゃなく、俺が俺のペースで歩んだ人生そのものだ。

 今週は腕、来週は足のようなやり方で行くと、パーツの整形なんかもついでにやっちゃおうと言う気持ちにもなる。ゆっくりでいいし、「30分」と言う時間はやすりがけにもちょうど良い。1時間以上やってると指も疲れる。30分やって、手についた細かなプラ粉をジーパンでぱんぱんと払って終了。ジーパンも成長する(??)。そんな日常も良いのだ。

 30分をスマホで測るのはやめている。通知が来たりして邪魔だ。俺の30分の集中を阻害しないためには「時計」が一番。G-SHOCKなら耐久性もあるし、塗料や粉がついても俺は気にならない。併用しているTIMEXにはグレーサフがついていて、それはそれでかっこよく「俺の時計」になっている。

 そしてもう一つ。小さな目標を納めていく「箱」が必要だ。腕だけが机の上にゴロンとしていると、寂しいし、机の上に置いたままだと他の作業中に破損したり紛失したりする可能性もあるからだ。僕は100円ショップで買える持ち手付きのプラケースに作りかけのものを収納している。このサイズ、1/144や、ものによっては1/100のガンプラも1体綺麗に入るサイズで超便利なのだ。

 細かな目標設定を立てて作っていったパーツたちが、少しずつ箱を埋めて行く。そんな様子も気持ちが良い。自分のペースで歩こう。30分集中すれば、何かしら形や結果が出て、「その日プラモを楽しんだな〜」って満足感が絶対に得られるはずだ。

 腕と武器ができた。次はどの部位に行こうか。説明書通りに進む気はない。僕が作りたい箇所から、僕のペースでやって行く。ジロンに会えるのはいつの日か、エルチのように度々ヒステリーを起こしてしまうのか。僕のペース、僕だけの航路でハセガワのザブングルを作っていく。その結果は……さて。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「武器が主役のプラモ」は武器から作る!!僕のフルウェポンセットの楽しみ方。ハセガワ ザブングル重武装バージョン

 「フルアーマー」「重武装」「フルウェポンセット」……ぜ〜〜〜〜〜んぶ心がワクワクするプラモワードです。プラモの世界においては、武装全部盛りとも言える商品形態で、夏休み前や年末年始の時期によく発売されます。本体に華を添える武器やオプションパーツが「主役」になるという、逆転的見方ができて、追加されるパーツの全てが大トロ(物量によってはもはやマグロ本体)なのです。

 ハセガワから発売された「ハセガワ クリエイターワークス 戦闘メカザブングル ザブングル重武装バージョン」は、まさにそんなプラモデル。1/72スケールで、完成すると25cmオーバーという大きなプラモに、さらに大迫力の武器がセット!! 商品の主役となるパーツたちなのです。そして、武器が主役だと思うと先に作りたくなってきます。そして、こういう武器セットを先に作ると後々すごく気持ち良いんですよ!! 

 武器好きの人には申し訳ないのですが、メカ本体を組み終えてから、すごいボリュームの武器が来ると「大変だな〜」って僕は思っちゃいます。だから、武器が「商品最大のプレイバリュー」となっているプラモは、本体からではなく武器から行くのです。この商品のために用意されたスペシャルパーツたちをテンションアチアチのうちに楽しむ。箱根駅伝の1区から走るのではなく、いきなり箱根を登るのです!! 元気なうちに、走れ!!

 4連バズーカの黄色いカバーパーツを「す〜」っと嵌めるのが僕のハイライトでした。各パーツの合わせにちょっと癖があるプラモなのですが、ここはピタッと入った上に、本体の青いパーツや砲身をまとめ上げる「襷」のような役割をします。ここに惑星ゾラの襷があったのです。

 こちらは通常のザブングルにも入っているライフル。とってもでかいので、このパーツで子供とガンマンごっこをしました。でかいプラモにはでかいプラモからしか得られない栄養素みたいなのがあります。ザブングルの重武装バージョンはまさに栄養たっぷりなのです。

 メカ本体を輝かせる「商品最大のプレイバリュー」なパーツたちは、説明書でも後ろの方で控えています。しかし、僕たちには彼らから手に取る権利と自由があります! それこそプラモデルを作る自由のひとつ。箱を開けてフレッシュな状態で飛び込めば、フルウェポンセットのプラモがさらに楽しくなること間違いなし。この武器を装備させるザブングル本体を作るのが、今から楽しみでしょうがないフミテシなのでした。おしまい。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)