フレッシュなプラモデルだった。PLAMAXの1/72 VF-1を組み立てた余韻を噛み締めていた。今までに経験したことの無かった組み味なのである。接着剤でパキッとツラが合う快感と、細かいパーツが少なくてすぐカタチになる快感が混淆している様は、スケールモデルとキャラクターモデルのハイブリッドのようでもあり、1982年のアニメ「超時空要塞マクロス」が変形ロボット・SF・恋愛ドラマをMIXした上でスピード感のあるメカニカルな作画を要所要所でやってのけたようなチャレンジングさと軽快さも感じられる。常識に囚われないエネルギッシュなこだわりと工夫、それ故のクセもある。そんなマクロスのようなプラモデルだったのだ。いやマクロスのプラモデルなのだけれど。そう思わせた要素を振り返っていきたい。
展開したハッチと一体成形されている格納庫。その内部の、繊細な配管の彫刻。そしてニッパー跡や分割線が目立つところに出ない機首の構成。別パーツになっているキャノピー周りのフレーム。誰がどうやっても見栄えするように出来てしまうナイスアイデアで溢れている。
全体的にハキハキとしたパネルラインは濃い味付けで存在感があり、良い意味でアニメチックな印象を受ける。逆に、フラップが薄い別パーツになっているあたりなどは、実際にありそうな飛行機らしさも垣間見える。そんなミクスチャー感が、独特の雰囲気を出している。
流し込み接着剤で組み立てられるプラモデルのいいところは、面と面を付き合わせた線がスキマなくビタビタに仕上げられること。流し込み接着剤のしずくを瓶の口で払い落としたら、線をなぞる様に接着剤の筆を走らせるとムニュッとならず、キレイに仕上がる。もちろんパーツの精度が良いことが条件だが、本キットはバツグンの精度だった。気持ちよさの核はそこだと感じた。
しかしかえってパーツの精度が良すぎるせいで、少し接着がズレてしまうと上手くハマってくれない部分も若干見受けられる。ノリシロは大きく取ってあり組み立てやすいが、噛み合わせる部分の遊びが無いのだ。
もうひとつは、インテークからジェットエンジンにあたる部分。バルキリーで言うと脚部だ。グレーのパーツを少しでもハミ出して接着してしまうと、フタをした時に干渉してしまい、インテークがキレイに閉じないので注意が必要だ。このあたりは精度の良さとトレードオフなので、接着プラモの楽しくも難しい部分だ。しかし、上手く慎重にやれば、かっちりとした仕上がりになるのは間違いないので、簡単なだけが楽しさでは無いと思わせてくれたのだった。
今回はVF-1Sフォッカー機のサンプルを組んでいるが、既発売のVF-1A/Sとの違いは、付属している頭部形状がS型のみである点、フォッカー機用のシールとデカール(!)が全く同じパターンで付属している点だ。多くのプラモでは片方しか付いていないものを、サービス満点の対応と言えるだろう。
シールとデカールはそれぞれに一長一短がある。シールは手数が少なくてスピード感のあるモデリングが楽しめるし、デカールは時間的にも道具的にも手間がかかるが上手く貼れればしっかり凹凸に追従する。どちらも試せる良い機会だと素直に思う。
ただ、尾翼とベントラルフィンだけは大判のシールとデカール、どちらも貼るのがかなり難しかった。塗装を見越したマーキングも用意されているので、マスキングして黒い部分を筆塗りし、ドクロのマークだけを使用した方がずっと簡単だ。
バルキリーがミサイルをかいくぐって、縦横無尽に駆け抜けていくような爽快感があるモデリングだった。もちろん当たればダメージはある。そしてシールもデカールも両方付属したVF-1Sのキットは、キャラクターモデルとスケールモデルの高次元な融合感を味わえて満足度が高い。いや、そもそもそんなジャンル分け自体が野暮だとプラモが訴えてくるような、とにかくVF-1のカタチに辿り着くための最短ルート(直線距離ではない)を気持ちよく駆け抜けさせてやりたいという力強さを秘めた超音速のプラモデルだったのだ。