

バンダイスピリッツがロボット以外のジャンルでゼロからモチーフに向き合うプラモデルが好きです。こちらは発売されたばっかりのプラモデル。マンガ、映画、ゲーム、ディズニープラスのアニメでも展開される作品『サンドランド』から、サンドランド国王軍戦車隊104号車です。1/35スケールですよ。戦車模型のデファクトスタンダードであるこの縮尺で「鳥山明メカ」が手に取れる嬉しさはもちろん、あのバンダイスピリッツが真っ向から「戦車模型」に挑戦しているんです。美味いに決まってるでしょ!

組んでいるのを横で見ていた妻が「あ、バンダイのプラモデルだ」と声を出すのも納得。色とりどりのパーツがハコの中からこんにちは。戦車模型はシックなミリタリーカラー単色であることがほとんどですが、このプラモデルは「組み立てるだけで設定に近い配色が楽しめます」というタイプのヤツ。しかもね、ガンプラではだいたい1枚しか入っていない多色成形(ひとつのワクに複数の色のプラスチックが混在している製造法)のランナーが2枚も入っています。ゴージャス極まりなし!

黄色く丸っこい車体は大きなパーツに分割されていて、豪快にバコンバコンと組み上がっていく様子が想像できます。コア側(パーツの裏面)には配線やそれを壁面に固定する留め具も彫刻されていますが、その曲がり方や交錯具合も一本調子ではなく、とっても自然で立体感あるものになっているのに注目!

車体外側の鋳造装甲に走る太くてゴツいビードが「溶接して作ったメカなんだよ」ということをアピールしてきます。こちらもあくまで小さな凹凸がランダムになっていて、この戦車が手仕事で作られているのを感じさせる彫刻になっているのが最高です。ミリタリーに深く通じた鳥山明先生がこうしたディテールをめちゃくちゃ魅力的に描けることはつとに有名ですが、バンダイスピリッツの開発者がそれを再現しようとがっぷり四つになっているのが嬉しいんだよな〜。「絶対にサンドランドのメカの魅力をそのまま伝えるぞ!」という意気込みが金型に刻み込まれているのよ。

主人公であるベルゼブブ、そしてラオとシーフも色付きのプラスチックで再現されています。1/35世界で大柄な兵隊フィギュアを見慣れていると、サンドランドのキャラクターたちはけっこうこぢんまりとした可愛らしい造形なんだな、ということもわかるはず。濃いグレーのパーツに目を移してみると、ミリタリーモデルでは複雑な形状の砲尾に多くのパーツを費やして細密に表現されるのが普通ですが、本キットではこうしたメカニカルな部分もなるべく一体のパーツにまとめ、うまいこと立体感を味わえるよう設計している……というのも大きな特徴です。

キットを眺め回していていちばんびっくりしたのが車体内部の物入れとジェリカン(予備燃料の携行缶)が収まったラック!なんとこれでワンパーツですよ!これだけバキバキに陰影のある造形だと、まるでひとつひとつがバラバラに動かせるよう。なにより横倒しのジェリカンと縦に3つ並んだジェリカンの「別パーツ感」と、ラックから落ちてこないように張られたベルトの自然なたるみ、さらにそれを留める三角環の表現が絶品!グレーのままにしておくのはもったいないと思ってしまうほど、「今すぐ塗りたくなる造形」だよね。
そしてほら、組み上がっても最高のルック。ちょっと広角で見上げるように撮ったときのフォルム、うまく配置されたハッチの位置、随所に散りばめられたディテールの密度感。ああ、なんと巧みなメカデザインなんだ。そして、可愛さと疾走感をプラモデルでも演出できていることがまた素敵!

「塗らずに組んでもいいんですよ」というメッセージを全身から発しているサンドランドのプラモデルですが、見ているともう作りたいし塗りたいし汚したくて我慢ならない!そのための仕掛けもこのキットにはたくさん用意されています。さあ、これからいっしょに組みながら、このプラモデルの楽しいところをみんなで見つけ、騒ぎ、「いいプラモだ〜!」と声を上げましょう。そのためにはホラ、手に入れてくださいよ。絶対に、損はさせません。みなさんもぜひ!
追記/本稿を書き終え、このすばらしいキットのレビューを続けて何本も書き連ねていたなかで、鳥山明先生の突然の訃報に接しました。本当に悲しく、つらく、自分でも信じられないほど呆然としています。氏がプラモデルをこよなく愛し、プラモデルの世界にも多大なる影響を及ぼし、たくさんの楽しさを分け与えてくれたことに心から感謝しながら、この記事は予定通りUPいたします。