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舞台は戦車の中と外!/サンドランドのプラモデルが見せる「キャラクターとその居場所」

 床下の機器にアクセスする大小のハッチと、バッテン模様がいっぱい並んだ独特な滑り止めのパターン(ちなみにこれは鳥山明先生が実際に『サンドランド』で描写したパターンなのでこれが「正解」!)。戦車の外に広がる世界があるなら、戦車のなかには乗組員の躍動する世界があります。映画『FURY』しかり、アニメ『ガールズ&パンツァー』しかり、戦車戦に「わかり」をもたらすのは戦車のなかで繰り広げられるドラマ……。

 戦車の大きさを示し、誰がどんな役割を果たしているのかを教えてくれるのは、いつだってフィギュアです。サンドランド国王軍戦車隊104号車のプラモデルには3体のキャラクターが付属……もとい、主役は誰がなんと言おうと彼らです。なかでもベルゼブブのお目付け役、シーフのパーツ分割は特筆もの。四肢の造形をひとつのパーツにまとめながら、胴体部分は緑色の被服を取り付けるためのフレーム的な構造になっています。

 四肢の生えたコアのパーツに前後分割された被服を組み付け、2パーツ構成の頭部をつければシーフの出来上がり。もっと劇中の印象に近づけたければ、手袋や靴、そしてヒゲや頭髪をちょいちょいと塗装するといいよ……という魅惑の3色です。ベルゼブブとラオのフィギュアもだいぶ楽しい分割で、それぞれのパーツの色をどんなふうにシェアしているのかを観察しながら組むと「なるほど、うまいこと振り分けてあるな〜!」と腕組みしながら独り言が出てきます。

 車内のパーツを組み付け、キャラクターを所定の位置に配置すれば「戦車の中の世界」が見えてきます。どれも固定するのにはちょっと心細い設計だと感じたので、ここはすなおに接着剤を使って貼ってしまうほうがいいかも。もっと踏み込んで言えば、ベルゼブブのパーツはとても小さいのにギザギザしていて力を入れると破損しそうなので(あとシンプルに指が痛い)、合わせ目に少量の流し込み接着剤を置けばすんなりと奥までハマり、数秒でガッチリ固定されます。

 バンダイスピリッツのプラモデルは「接着剤を使わずに組めること」を強く志向していますけど、だからといって”接着剤を使っちゃいけない”というわけじゃありません。やたらと指の力が要求されるところ、ただ差し込んだだけでは奥までビシッと入りにくいところ、ハメ合わせたけどなんだか剛性が不足しているところなんかは、むしろ積極的に流し込み接着剤を使うのが「素早くキレイに設計の意図通り組む方法」だと私は思っています。

 3人のキャラクターが躍動するフロアにぐるりと装甲を取り付けていくと、やがてそこは閉じられた空間になります。装甲を一部取り付けなければカットモデルのように見せることもできますが、鳥山明先生の偉大なところは「めちゃくちゃ大きいハッチを付けて、外側からでも存分にキャラクターの表情を楽しめるデザイン」を描いていること。

 実物の戦車は生存性を優先してハッチはなるべく小さくするものですが、サンドランドの戦車はハッチを開け放つことで丸っこいフォルムから翼を広げたペンギンのシルエット(そう、ペンギンなのよ!)を作り、魅力的な「戦車の内部」へと誘ってくれます。戦車らしさを演出するディテールのリアリティを足がかりにしながらも大胆なデザインを施すことで「内部と外部」の隔絶を取り払い、マンガとしても映像作品としても見栄えのするカメラワークを実現してしまう。この圧倒的なセンスをプラモデルで改めて感じ取れる幸せたるや……。

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 居住空間を囲む3枚の大きな装甲パーツは接着するとバラせなくなってしまうのですが、どうも上部がフガフガと遊んでいて微妙にスキマができてしまう……どうしたものかと悩んでいたら、最後に砲塔(これも少ないパーツ数で戦車砲らしさを表現しつつ、ちゃんと砲身が俯仰するギミックを実現しています)を被せることで全体がガチっと固定され、簡単にバラけないようになる設計もお見事。徹頭徹尾、この戦車のデザインとその解体/再構築に一貫した気持ちよさを味わえる、爽快で風通しの良いプラモデルだと感じました。

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からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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