「海洋堂」カテゴリーアーカイブ

この世に「プラモデルツーリズム」があったなら/四万十海洋堂ホビー館

 高知といえばはりまや橋。橋といえば……沈下橋というのをいちどは見てみたいな。子連れで高知、大自然……なんもわからん。そこで海洋堂の宮脇センムに連絡を入れて、オススメの沈下橋はどこですかと尋ねると「上宮沈下橋なんかがいいでしょうね」と返事があり、つまりそれは四万十海洋堂ホビー館からほど近いところにあるのだった。罠である。

 やっとこたどり着いた川の流れは例えばテレビで見るような絶景ではなく、「ふうん、まあキレイだな」という印象だったが、幅員いっぱいのレンタカーでハンドル操作を誤れば即落下のスリルを味わうのには充分だった。あと、四万十、めちゃくちゃ遠い。インターネットは北海道の大きさばかりでなく、高知もめちゃくちゃ横に長いというのを画像でコスったほうがいい。

 そこから10分ほど山道を登ったところに海洋堂ホビー館がある。四万十の山の中にホビーというのもだいぶ似合わないと思ったが、廃校をリノベーションした建物はだいぶ豪勢でまず驚く。館内には海洋堂の歴史とセンムの私物がごった煮になって、しかしうまいこと編集された状態で展示されている。

 おもちゃ収集にハマる経営者が勢い余ってミュージアムを作ってしまう……というのはこれまでにいくつか見たことがあり、「集めること買うこと自体がおもしろくて、一個一個の価値とか関連性には全然興味がないんだろうな」というパターンに陥ることもしばしばだ。しかし、海洋堂の館長(センムのお父さん)とセンムはやはりホビー狂である。ひとつひとつの収蔵品から「ドヤ!」が滲み出している。

 完成品フィギュアとか食玩のイメージが色濃い海洋堂だけど、そもそもホビーショップに端を発しているから、彼らはどうすればプラモデルが売れるかを考え、ありとあらゆる方法を試した。ニッパーなどという専用工具がひょいひょい手に入らなかった頃にニッパーを売って「これで模型がうまいこと作れまっせ」、エアブラシがひょいひょい手に入らなかった頃にスプレエースという手押しの噴霧器を開発して「これで帆船模型でもなんでもまるっと金属色に塗っちゃいましょう」とやっていたのだ。いまから50年前に、商材としてプラモデルを売るだけでなく、「どう作るか」「作ったあとどう遊ぶか」まで、ツールやマテリアルや自費出版の冊子でフォローしていたのだ。

 広い体育館に収められたフィギュアの数々はまあ、その歴史を知っている人にとってだいぶノスタルジックに映るものだろうし(かく言う私も子供を抱きながら「おお、この完成品は初めて見たぞ」などとやっていたし、海洋堂の歴史を微塵も知らない妻も「わあ、こんなものがあったのか」とバシャバシャ写真を撮っていた)、古き良き時代のプラモデルが展示されているのも、たとえばセンムが中古模型店で買ってきた値札がそのまま貼り付いているものまで含めて興味深くはある。しかし、館内をウロウロしていて「そう来たか!」と思ったのはちょっと違うポイントにあった。

 タミヤの1/48 F-35Aが、無塗装で裏返しになってガラスケースに入っている。世の中の常識的には組み上がってきれいに塗装したものをババンと置いて「こんなによくできた模型なんですよ」とか「こんなに上手に作れましたよ」みたいなことをプレゼンテーションするのが”模型の展示”だけど、これは「着陸脚の収納庫とか爆弾槽の中の彫刻がヤバいんで見ていってくださいね」というセンムのメッセージである。

 ボーダーモデルの1/32ランカスターの主翼だって、ランナーからパーツを切り離しもせず、しかし表面の凸凹がよく見える照明の位置で縦に飾ってある。パーツの陰影の向こう側からセンムの「どうや〜このボコボコが〜すごいやろ〜お前さんも作りたいやろ〜」という声が聞こえてくる。

 この他にも海洋堂製品のランナーとか、中古で買ってきた古今東西の飛行機模型のランナーがもう壁一面にガーッと貼り付けてあって、だいぶ盛り上がる。誰かが作ったプラモデルは「誰かのもの」だが、組まれていないプラモデルは「自分のものでもあり得る」ということがビシバシと伝わってくるのであり、これはつまり私が常々完成品の写真よりもランナーの写真でもってプラモデルの魅力を伝えようとしているのと同じなのだなぁと勝手にシンパシーを抱く次第である。

 結局のところウチの息子はフィギュアやプラモが充満したガチャガチャした空間に怯えっぱなしで、そのへんの草や木の手触りや、あとオマケでお土産にもらったカラのカプセルに夢中。当然四万十の記憶だって残らないだろう。でも、いつかいきなりその手でニッパーを握り、私のよく知らないプラモデルを勝手に組んだりするのだろうと無責任に期待をかける。そのときに「キミ、まだ物心がついてないときに日本でいちばんオモロいプラモデルの展示空間を見に行ったんだぜ」という話をしたい。旅行の先に、プラモデルはさまざまなカタチをして潜んでいる。四万十に行った際には、ぜひ海洋堂ホビー館へ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

仏像プラモデルを牛久大仏の様に組み立てる話/海洋堂ARTPLA「広目天」

 牛久大仏の売店で『牛久大仏忽然の貌』という建立工事中の写真集を買った。カーテンウォール工法で鋼板が貼られていくインダストリアルな大仏建立の過程が面白い。ガチガチの鉄骨トラスが徐々に神秘的で滑らかな大仏のフォルムとなり天に昇り詰めていく様はとても印象的で、バベルの塔ではないが、まさに神を作ろうとする人間の業と、それさえ浄土に導かんとする大仏の穏やかな表情のコントラストがなんとも鮮やかなモノクロームの写真集だった。そんな過程の姿に昂ぶったのはたぶん、プラモデル趣味のせいだ。プラモデルは作る過程こそ楽しく、鮮やかだ。

 実物、写真、アニメ、媒体問わず巨大なものを見て感動するとそのプラモデルを作ってみたくなってしまうサガなので牛久大仏のプラモデルを作ろうと思ったのだが、しかし現世にはまだ存在しない商品であるがため、代わりに四天王像「広目天」のプラモデルを組み立てることにした。悪人を罰する神らしい。キェー!

 製作過程の写真は一瞬の煌めき。完成してしまうとわからなくなってしまうが、プラモデルのパーツ分割には個性がある。味がある。豪快なもの。繊細なもの。広目天はどちらの要素も含んでいた。特に頭部は作り易く且つ精密に再現する為に、顔面、耳、後頭部とパーツがサンドイッチ的に分割されている。耳パーツは接着シロが大きく独特だ。流し込み接着剤の筆で合わせ目をなぞるように接着すると、彫りの深い彫刻が忽然と現れる。

 プラスチックで表現される「鉄の鎧の彫刻」の彫刻。あからさまにプラスチックだったものが、自分の技量と持ち合わせた人生の時間を超越し、みるみると緻密な彫刻に変身していく。その過程からは目が離せないのだ。

 そしてプラモデルはどう料理しても美味しい。説明書にざっと目を通すと、頭→両腕→胴体→両足→台座と、上からそれぞれの部位ごとに完成させた後、最後にまとめて接着する工程になっていた。しかし今回は牛久大仏の工事工程に倣って、下からパーツを積み上げながら接着してみることにした。直感的で分かり易い説明書だったからこそ、逆に説明書通りの順番で組まなくても完成する確信が持てたのだ。腕や足が卓上に散乱しなくて済むとも思った。

 3DCGの様にぬらぬらとした岩のパーツをテトリスの様に積み上げていく。そこに足を接着すると力強い角度がカチッと決まった。さらに浮遊感のある腰帯を接着し、華美な胴体パーツを積み上げていく。実在する四天王像はお寺に会いに行かなければ見られないけれども、大量生産品であるプラモデルはそれぞれの家庭に会いに来てくれるだけでなく、建立工事にまで立ち会えるのだから面白いよなあ。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

余ったパーツは隠された道/ARTPLAのグローサーフント

 学校で数学のテストの答え合わせ、「正解はこれだけど、こういう解き方をすると式がシンプルになる」とちょっと頭をひねった解法を解説されることがあった。そのあとに「こうやって解いたのは○○だけ」と呼ばれる名前を聞いて、同じ点数だろうが多少勝っていようが、馬鹿正直に答えを導き出した自分としては負けた気になるのが悔しかった。

 グローサーフントには「このパーツは使いません」と書かれたパーツが二個ある。これは説明書の通りだ。ただ、完成すると余るパーツはそれよりも多く、説明書を何度見返しても使いどころがない。しばらく考えたが余ったパーツのD3、4、9、10、41、42はひじの関節を、D30は上半身と下半身の接続部のもので、どちらも角度を自由に決められそうな作りをしている。

 無論、説明書にそういったことは書かれていない。特に上半身と下半身をつなぐパーツは、単純にパーツを入れ替えればいいわけではなく、組み立て順も少し工夫を要する。しかも、これらは推測でしかない。とはいうものの、「あれ、もしかして!?」という気づきとともに自分で進んでいく様は、送り手側から用意された改造であって、それを使うことにひらめくことができさえすればチャレンジできる作業だ。

 グローサーフントは1つの箱の中に3個入っているので、こういった隠された正解に気づいたあとに、すぐにチャレンジができる。隠された道に気づかなかった自分をすぐに取り返すことが出来るのだ。

 ひとつ目は説明書通り、ふたつ目は余ったパーツが何に使われるものかを考えて作る。三つ目はそれらを踏まえて自分なりの完成を目指す。同じものが3個入ったプラモデルではあるが1つ1つがそれぞれ異なる組み立て体験を味わえる良いプラモだと思った。同じ作業を三周するものだと思っていたが、そんなことはなく残りの一体も楽しめそうだ。もしかして、海洋堂のマシーネンはみんなこんな感じで「隠された道」が潜んでいるのかもしれない。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

This is 古賀学マジック/グローサーフントのプラモデルを3体作らせる魔法の説明書。

 海洋堂のARTPLA「1/35 ヒューマノイド型無人邀撃機グローサーフント」は一箱で3体セットのプラモデルです。箱の中には3色のプラスチックで作られたパーツが入っています。なので、色が違う3体のグローサーフントを作れます。

 同じプラモデルを3個作るということは、同じ作業を繰り返すということになるので、そこで最後まで楽しめる工夫としてプラスチックの色が3色に分かれているのでしょうか。そのパッと見でわかる仕掛けよりも巧妙な魔法が仕込まれているのが説明書です。

 説明書には「これを2個作ります」といった記載は一切なし。両手両足があるロボットなのに珍しいと思いました。それに右足と左足の組立図が左右反転するという処理ではなく、全く違うアングルで描かれています。こういった工夫によって「繰り返し作業をやっている感」をまるっきり隠してしまっています。

 プラモデルという遊びはそもそも「説明書とにらめっこ」なんて言われるような、じーっと説明書を見る時間が結構あります。それに組み立て工程ごとに、「説明書を見ては作る」という作業を繰り返します。説明書を見る時間がそれなりにあるのです。なので、そこに視覚的工夫を盛り込むと組み立て体験も変わるということは充分ありそうで、現にこの1/35 グローサーフントはまるで説明書に引っ張られるように「次!次!」と楽しく作ることができました。

 3色のプラスチックに、繰り返し作業を感じさせない説明書。一体作るだけでも満足度はかなり高いですが、次はどの色を作ろうかという気持ちがすぐに浮かびます。作り終わった後すぐに「ここが良かったな」と私が思ったのは肩に両腕を接着するパート。腕から伸びたケーブルの先端が基部に集約されていくのはとっても気持ちが良かったです。紙面のフレームから右腕がはみ出るようにレイアウトされているので、説明書の中でも思わず目がいきます。

 「誰だこの説明書を作ったのは!」と思ったら組み立ての最終工程の端に「パッケージ+インストデザイン 古賀学」ということで、作った人の名前が書いてあります。古賀さんの説明書の魔法を味わえますし、プラモデルって色々な工夫がなされて製品になっているんだなと思えるよい経験ができました。私が購入したのは海洋堂直営店限定のものでプラスチックの色が通常盤とは違いますが、どちらのものでも同じ体験ができます。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
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伝説的造形のデジタルリマスターとプラモデル化がもたらすもの/海洋堂のARTPLA エヴァ初号機

 海洋堂の傑作ガレージキット、松村しのぶ版のエヴァンゲリオン初号機がプラモデルで手に入るってめっちゃスゴいことなんですよね。松村しのぶと言えば恐竜とか動物を手掛けたら右に出るものはおりませんという原型師で、2000年前後に社会現象にまでなった『チョコエッグ』は松村しのぶの動物チョイスと原型がなければ成立しなかったし、そもそも「中国でハイクオリティな彩色済みの完成品フィギュアを大量に生産する」という方法論も存在し得なかった。つまるところ現代の我々が食玩や美少女フィギュアをはじめとする高品質なホビー商材で遊べているのはほかならぬ松村しのぶのおかげといっても過言ではないのですわかりますか(超早口)。

 その松村しのぶが『新世紀エヴァンゲリオン』放送当時に作り上げた造形が上の写真で示したエヴァンゲリオン初号機です。「さすがにこれは超傑作すぎるので私も所有しているし組み立てたし筆一本で全部塗りました」という信仰告白でございます。模型界隈では「レジン」の呼び名で通っている無発泡ウレタンで複製され、ガレージキットという商品形態で頒布されました(そのあとも同じ原型をひな形にさまざまな仕様の商品が売られています)。これがデジタルの力でスキャンされてリマスターされてプラスチックモデルになるとどうなるか。答えはハコを開けるとわかるんですが、パーツがめっちゃバラバラになります。

 ガレージキットって柔らかい素材(シリコーン)で作った型に液体状のウレタンを流し込んで硬化させてから取り出すので、とんでもなくデカい塊でもとんでもなく複雑な造形でも、型さえ壊れなければ複製できちゃいます。たしか松村版初号機は胴体がイッパツ抜きでゴローン、両腕両足がそれぞれワンパーツでゴローン、あとは細かいパーツ(頭部とか左手に持ってるサキエルの腕とか)がちまちまっと入っているくらいで、じつは組み立てが超簡単&スピーディ。あとは塗装のセンスで勝負じゃ!というキットでした。

 しかし硬い金属でできた金型で複製するプラスチックモデルとなると、全体の彫刻が複雑すぎる上に金型からパーツがちゃんと外れる形状じゃないと成形できません。するとランナーが5枚、パーツ数はおよそ200点くらいに膨れ上がります。しかもオリジナルが全高350mmだったのに対してこのプラスチックキットは全高230mmと2/3程度の大きさに凝縮されています。

▲手に持っているのがプラモデル版、色が塗ってあるのがガレージキット版
▲サイズ差、これくらいある

 組み立てると確かにあの傑作造形がみるみる蘇るのですが、とにかくパーツが細かい&多い!ここまで発売されてきたARTPLAの製品が持っていた「ドカンバコンと形が組み上がっていくダイナミズム」は鳴りを潜め、とにかくひとつひとつの面を実直に貼り合わせていくという体験が待っています(これは決して「難しい」とかではなく、各工程は極めて単純なのですが物量に圧倒されます)。

 さらにプラスチックの感触がやたら硬質で、パーツを切断するときにパキーンという手応えがあるのに加え、切断した跡がだいぶ頑固に出っ張るので丁寧に処理しないとうまく組み上がらないのが短所といえば短所だと思いました。

 もちろんプラスチックモデルならではのサービスも見て取れます。例えば胸部は装甲を取り付けた状態とハリのある繊維と微細な血管の走る筋肉が露出した状態を選べるとか、エヴァとサキエルそれぞれのコアを本体と同じ色かクリアーパーツかで選べるといったボーナスパーツはプラスチックモデル化にあたって考えられた仕様。

 それから、ただカタチを再現するためにむやみやたらとパーツ分割をしているわけではなく、ほぼ設定の色分けラインに分割ラインが来るようになっているため、「各パーツを単色で塗ってから組み上げる」というプラモデル的な仕上げかたも可能です(個人的には塗る前に胴体と四肢と台座と頭部くらいに組み上げてからそれぞれをガレージキット的に筆塗りでモリモリ彩色して最後に合体するという、「ガレージキットの疑似体験」をしてほしいなという思いもあり……)。

 「オリジナルアレンジがガッツリ入ったエヴァンゲリオンの造形」としても、「アナログ時代の傑作ガレージキットをデジタルリマスターした彫刻」としても大きな意義のあるARTPLAの初号機。ガレージキットではペライチのザラ紙だった組み立て説明書も、今回は4ページ(解説や塗装指示も含むと8ページ!)に及びます。ほとんど無駄のないギッチギチのレイアウト(by古賀 学)は、これだけスゴい造形が「ガレージキット」という特別な手法で世に広まっていたこと、「こうまでしないとプラスチックモデルにできない造形」をみんなが手に取っていた時代が確かにあったことを逆説的に示しています。

 これを組めば「どんな超絶造形でもプラスチックモデルに置き換えられるテクノロジーが育ったのだなぁ」という感慨が湧き上がってくるはずです。みなさんも、手にとって眺め、ぜひ筆を取って下さい。導かれるように塗れば、恐るべき造形作品が眼の前に出現するはずです。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

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伝説の造形がデジタルツールで蘇るプラモデル/巨大なガンバスターを最強のふたりと飾る冬!

 とにかくひとつひとつのパーツがデカくてド迫力。当然組みて立てれば前高27cmという巨大なガンバスターが手に入ります。とくにこのランナーが最高ですね。左右に位置する肩アーマーはスライド金型というテクニックでパーツ数を減らしながら表面のディテールも再現しています。肩アーマー下に伸びる薄い羽根も2枚が一体になった状態でパーツ化されているので接着回数が少なくなり、それぞれの角度もビシッと決まるという気配りが良い!

 ガンバスターは全体のシルエットで魅せるロボなので、緻密なディテールとか複雑な外装の分割といった現代的なロボットプラモの情報量付加に頼れません。しかし関節のある部位には柔らか素材によるシーリングの表現が入っていて、その質感がまた良い。関節がシーリングで覆われたロボットはたくさんありますが、可動プラモにすると「実際に動く関節を軟質素材で包む」とか「軟質素材を模した形状の関節ブロックをぶった切って動かす」という方法を取るほかありません。本作はポーズ固定のプラモデルだからこそ、造形の旨味をストレートに味わえるのです。

 本アイテムは1991年に伝説の造形師である佐藤“ロボ師”拓氏による原型で発売されたソフビキットを3Dスキャンしてからデジタル造形でリファインしたもの。単純に見える腕や足の円筒部は3D造形ソフトを使えば簡単に作れそうなもんですが、プラスチックパーツでも佐藤氏の遺した微妙なニュアンスが感じられるよう注意深く”リマスター”したものになっています。デジタルツールが介在するから味気ないとか、温もりがない……なんていう感覚は時代遅れなのであります。

 近年では模型メーカー各社がデジタルツールで飛躍的にプラモデル造形の表現力を増していますが、海洋堂が過去のレガシーをいかにしてそのままの味わいでプラモデル化しているのかについては『CG WORLD』の最新号に詳しいのでぜひ読みましょう。CGの知識ゼロでもだいぶ読めます。そして海洋堂以外のメーカーがどんなことをしているかを想像するヒントにもなるので、ぜひ。

 ”ARTPLA SCULPTURE WORKS ガンバスター・タカヤノリコ・アマノカズミ「太陽系絶対防衛戦」”というタイトルのとおり、パッケージにはノリコとカズミ(だいたい1/24スケールくらいかな?)も入っています。肌色のパーツは巧みに分割されており、フェイスパーツには目があらかじめ印刷されているのでデカール貼りが苦手な人も安心。

 相変わらずギチギチに情報の詰め込まれた説明書には懇切丁寧な塗装図も収録。ガンプラのように「パーツごとに塗ってから組み合わせる」という分割ではないのですが、比較的かんたんに塗り分けられるよう配慮されたディテールやパーツ分けになっています。

 ’90年代初期の傑作造形(でもガレージキットという形態ゆえに誰もが気軽に手に入れられ、簡単に組めるものではなかった……)がビッグサイズで手に入り、ニッパーと接着剤さえあれば組み立てられる。なんと民主的なことでしょうか。冬はビッグサイズプラモの季節。ぜひとも軽率に貼り、豊かな気持ちで塗りましょう。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

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真剣に、命がけで遊べ/太陽の塔のプラモが教えてくれた岡本太郎のスゴさ。

 人工衛星のようだ、と思った。金のパラボラとアンテナ。ブルーのディスクはさながらソーラーパネル。『太陽の塔』がショートケーキならば、この部分は最後に食べるイチゴのようなパートだ。その威容の頂部にあって万博の喧騒を見届け、いまは記念公園の近くを通る人達を睥睨する黄金の顔。

 太陽の塔には全部で4つの顔があった。金色に輝き未来を象徴する「黄金の顔」、現在を象徴する正面の「太陽の顔」、過去を象徴する背面の「黒い太陽」、そして万博当時に存在した”幻の顔”である。地下空間にディスプレイされた「地底の太陽」は黄金色で顔の直径は3メートル、左右に伸びるコロナは最大で13メートルという巨大な物体だったが、万博終了後に所在不明に。2018年の再公開に向けて海洋堂が当時の資料をもとにひな形を作り、現在はそれをもとに復元されたものが展示されている。

 その表面に自分でなにか痕跡を残したい、と思う模型だった。プラスチックモデルで堪能できるのは「地底の太陽」を除く3つの顔。模様の再現にはデカールも用意されているが、パーツの表面の彫刻にしたがってアクリル塗料を筆塗りしたいという気持ちがむくむくと湧き上がってきた。両脇がほんの少しめくれ上がった凹みに赤い塗料を走らせると、波打つ模様が傷口のようにも見えてくる。ただ瓶からすくっただけのプラモ用塗料に、内側から吹き出す血や溶岩のエネルギーを感じたのは初めてだった。

 完成後も前後の外装を分離して内部を見られるようになっているから、正面と背面の顔を同時に眺められるのも模型ならではの楽しみ方だ。立体的な「太陽の顔」と、タイルの陰影と緑のコロナが不気味な「黒い太陽」はわかりやすく対照的。コンクリートの微妙な凹凸も意図的に彫刻されていて、白いプラスチックのままでも案外豊かな質感があるのに驚かされる。

 万博と塔の間には、密接な関係がある。パリ万博で建てられたエッフェル塔と、大阪万博で建てられた太陽の塔。どちらも造形的な美があり、万博のテーマを象徴するメッセージがあり、そして何よりも建造物として(あるいは上昇する装置として)当時の技術の粋を凝らしたものだった。

 完成してみれば、誰もが知っている太陽の塔がそこにある。しかし、プラスチックモデルを作る過程で太陽の塔が内包する意味をさまざまな角度から感じ、読んで知り、ああホンモノを改めて眺めたいなと思わされた。そしてなにより、岡本太郎という世紀の芸術家が遺した巨大なオブジェの忠実な模型が家にあるということがひたすらに面白い。全高360mmに縮んだとて、その存在感は決して小さくなっていないことに、改めて驚かされるのだ。

からぱた/nippper.com 編集長

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万博における上昇装置/プラモデルで読み解く『太陽の塔』の本質的機能とアートの衝突。

 エッフェル塔は、現象学的体験としての「三百メートルの高さ」を、エレヴェーターによって、というよりむしろ、エレヴェーターとして、現実化したのであり、今日エッフェル塔見物に訪れる人々にとって、この<塔>のもっとも「関与性」の高い構成要素とは、その「高さ」である以上に、「高さ」を体験させてくれるこのエレヴェーターという建築学的装置それ自体なのではないだろうか。もっと言えば、エッフェル塔の本質はエレヴェーターにある、とさえ暴力的に断言してしまいたい気持に駆られないでもないのだ。
(松浦寿輝『エッフェル塔試論』より引用)

 大阪万博のことを知らないなりにさまざまな文献を読み進めていくと、『太陽の塔』は地上、地下、空中の3層にわたるテーマ館を貫く建造物であり、すなわち空中に設けられたパビリオン(現在は解体済み)へ来訪者を運ぶための設備であったことがわかる。塔として建てられ、あとから内部にエスカレーターを設けたのではなく、「人類の進歩と調和」というテーマを見に訪れた人々を垂直に輸送するための装置だったのだ。

 岡本太郎は「人類の進歩と調和」というテーマに真っ向から反対し、不気味な地底空間を人類の昔の記憶で飾り立て、塔の内部に太古から繋がる生命そのものの進化を彫刻し、壁を真っ赤に塗り、上昇する来訪者たちに痛烈なメッセージを投げかけた。精緻に組み上げられた鋼管フレームが左右の腕を支えていて、右腕の内部は大屋根の空中展示に人を運ぶエスカレーターがあり、左腕の内部には緊急時に使われる非常階段があったのだという。

 海洋堂の『太陽の塔』はこの円錐形に組まれた鋼管フレームをこれでもかと再現しており、円錐の底部にあたる端面から内部を覗けば当時の人々が畏怖した未来への階段とそれを取り巻く景色をを想像できる。上昇というのは単に物理的な運動のことだけを指すのではなく、進歩とか調和……つまり、「未来」を見に行くための導線であり、それと絡み合うように人類を含む生命の辿ってきた歴史を配置したことに太陽の塔の凄みがある。

 ちなみに、長い期間をかけて万博終了後に埋め戻された地下空間や塔内部のレストアが行われ、2018年にふたたび公開された太陽の塔は各部の補強と軽量化に伴い、下層部のエスカレーターは階段へと架け替えられ、右腕部のエスカレーターは撤去された。

 このプラスチックモデルでは左腕部の階段を立体化し、右腕の内部は現状と同じエスカレーターがない状態、そして下層部は現状の階段ではなくエスカレーターが「復元」された状態でパーツ化されている。いわばひとつの模型の中に異なる時空が封じ込められていると言い換えてもいいだろう。

 中央に建てられた「生命の樹」と干渉しないようにエスカレーターを互い違いに取り付けていく工程は緊張するが、この塔の本来的な機能を体感する上で欠かせない工程とも言える。アートであり、建造物であり、装置である太陽の塔の様々な顔が、組立工程のなかで行きつ戻りつしながら我々を驚かせる。

  現存する外観からは決してうかがい知ることのできない、「人が上昇するための装置」としての太陽の塔。しかし、内部を組み立て、上昇に必要な設備を取り付けると岡本太郎の訴えはほとんど見えなくなってしまう。なるほど、このエスカレーターを昇りながら眺める驚異的な景色こそが本質であり、模型化されたものを外部から鑑賞するという行為ははあくまで客観的な体験にすぎないことがよく分かる。

 幸い、これはプラスチックモデルだ。前後に分かれた外装はいつでも分割でき、エスカレーターは完成後も取り外せる。悲しいかな我々は1/200スケールの人間ではないが、この塔が持つメッセージをどのように見せるかを選ぶことはできるのである。

からぱた/nippper.com 編集長

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躍動する小さく多様な生命/「太陽の塔」のプラモデルは海洋堂の動物セットなのか!?


 太陽の塔の内部には高さ約41メートルの「生命の樹」がおっ建てられており、そこにはアメーバからクロマニヨン人に至るまで、292体の生物模型がくっついている。これは大阪万博の「人類の進歩と調和」というスローガンに対して「進歩と調和が人類だけのものだなんて傲慢なこと言ってんじゃねーぞ!」という岡本太郎の主張がカタチになったものであり、つまり我々も海洋堂のプラモデルを組むことで岡本太郎の熱き創作を追体験できるというわけだ。ヤバいプラモだな……(このへんの詳しい解説も説明書に記載があり、めちゃくちゃ面白いので必読である)。

 流石に292体はいないっぽいが、めちゃくちゃな量の動物(指先サイズ)をしこたま接着する指示が説明書には描き込まれている。動物の名前も描いてあるのだが、半分くらいは知らん。キミは誰なんだ……と問いかけながらピンセットで貼る。人間中心主義が崩壊し、生命の大いなる歴史を指先でビシバシと感じることになる。

 プラモデルはランナーと呼ばれるパーツの付いたワク自体が商品であるからして、芸術的なレイアウトはそれだけで作る人の心を打つ。このプラモデルではあえて生命の樹を構成するパーツをランナー1枚に収まるように配置することによってその全体がすべて視界に収まるよう設計されている。開発担当氏曰く、「これから何が起きるのかがなんとなくわかるのが楽しく、それでいて組み始めると『なんだこれは!』と驚くワンダーがあるのがさらに楽しいのだ」ということで、私もまったく同意見である。パッと見で何をさせられるのか分からず、組んでいる間も何をしているのかよくわからないプラモデルは組んでいても作業になりがちだ。

 前言撤回スレスレのビーンボールが初手から飛んでくる。生命の樹が建つ土台にはじつに30パーツほどの原生生物を植え込む必要がある。小さな穴に不気味なウミユリのようなものをブシブシと差し込み、接着剤で留めていく工程はまるで暗い海の底にいるような気分になるが、しかしその先には輝かしい進化の歴史が待っている。息子が寝ている隙に黙ってクリアしよう。

 生命の樹の幹からは枝が伸び、そこには大小様々な生物がしがみついている。ぶら下がっているものもあれば、上に乗っかっているものもあり、2〜3パーツに分割されている生き物があれば、ワンパーツで見事に特徴を捉えて立体化されている生き物もいる。海洋堂は動物園のプラスチックモデルをさかんに発売しているが、このプラモデルは「ひとつの箱に入っている生き物の種類」のギネス記録に登録可能だろう。

 幹に設けられた凹みと枝の付け根は巧みに形状が一致するよう設計されていて、一見不安定な印象でもカッチリと角度が決まる。得体のしれない動物がワサワサと群生する根っこのほうから、徐々に具体性を帯びる梢のほうへ。ゴリラがいて、ネアンデルタール人がいて、いちばん上にはクロマニヨン人がいて、それを眺めるのが我々人類である。こんなにストーリーのあるひとかたまりの立体はそうそうない。このプラモデルすごいな、の前に、岡本太郎がすごすぎる。

 組んだ生命の樹はおよそ20cmほどの長さになり、きわめて繊細。古賀学氏によってデザインされた説明書には超詳細な塗装指示が描き込まれているので完成見本のように仕上げたければ大量の塗料を買ってきて調色して面相筆でシコシコ塗ると望みのものが得られるだろう。それはあくまでも「太陽の塔の実物を模す」という行為であるからして、岡本太郎のことばをここで反芻しよう。でたらめをやってごらん。自分の歌を歌えばいいんだよ。

 べらぼうな夢はあるか。生命の樹をゴールドに塗り、私は私のストーリーを手に入れた。説明書を読めば塔の内部の色や構造にもめちゃくちゃ意味があることがわかるのだが、しかしその造形自体もまたすばらしい。白い内壁の凹凸と金色の生命の樹がコントラストを生み、なんだかとても清潔で高貴な空間がそこにある。GINZA SIXの大きな吹き抜けをエスカレーターで上昇しているときのような……。そう、このプラモデルにはまだ、「鑑賞者が上昇する装置」としての側面が残されている。その話はまた次回。

からぱた/nippper.com 編集長

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このプラモデル、透けてんねん。/海洋堂の限定アイテム、キュスター シャンパンクリアーVer.

 腹を割って話す。腹に一物、などとも言いますが、古来日本において大事なことは腹にある、と考えられていたという事が伝わります。英語でいうとhave a heart-to-heart。心か腹か。違いが面白いですね。

 さて、本音も透けない関係性が多い昨今、せめてプラモは透けさせたい。腹の内を透けさせてほしい。全日本模型ホビーショーにて限定発売され、買えなかった私が腹を立てた、海洋堂さんの「ARTPLA すけてんねん キュスター シャンパンクリアー」が無事オンラインでも販売されたのですぐに注文しました。限定品をこうしてネットでも販売してくれる。助かる。腹立てるより義理立てよとはまさにこのことですね。

ARTPLA すけてんねん キュスター シャンパンクリアーVer.[限定品]

 外箱がかっこいい。なんとなくかすてらでも入っていそうな雰囲気を感じる良い箱です。ひとしきり堪能したら開けてみましょう。目に飛び込んでくる美しいクリア。シャンパンクリアーとは言いえて妙ですね。腹に落ちる。シャンパンという飲み物がそれまでの歴史上において他の葡萄の発泡酒と大きく異なる点は澱(おり)を取り除くことによる透明度の高さでしょう。透明度を売りにしたプラモデルに透明度が売りのシャンパンの名前を刻む。素晴らしい覚悟ですね。

 その覚悟に向き合って組んで行きたい。クリアのプラモを綺麗に組むやり方として一番丁寧なのは、ニッパーでランナーから切り取って、白くなった部分は、600番くらいから2000番くらいまでやすりをかけて最後にコンパウンドで磨いてピカピカって感じでしょうか。うーんどう考えてめんどくさい。150字くらい前の覚悟とかそういうの忘れてもう少し手軽に行きたい。大丈夫。腹案があります。キレイに切れてるでしょ下の写真。

 というわけで取り出しましたるはタミヤさんの精密ノコギリ、いわゆるエッチングソー。これでランナーから切り落としてやれば、負荷がかからず、白く濁ったりもしないって寸法ですよ。ではゴリゴリと。どうですか。コンパウンドで磨くのには敵いませんがぱっと見ではわからないくらい綺麗です。ゲート部分が太いところもあるのでニッパーだと白くなりがち。こっちのやり方は切るときにパーツを傷付けないよう気を付けてやらねばなりませんが、サクサク進んでいきますよ。曲線部分はえぐりやすいから気を付けていきましょう。

 さて、サクサク進めようと思いましたが、このキットの素材はABS。ABS用の接着剤あったかしらと棚を探そうとしたときに飛び込んでくる驚愕の情報。

 なぜかMr.セメントSPで接着が可能だと。なぜか!?……あ、ほんとにくっついた。

 溶解力が強いからABSも溶かすんですかね。というわけで慣れ親しんだ接着剤を手に今度こそサクサクやっていきましょう。ディテールが細かく、それがクリアで見えにくくなっているのでパーツの前後裏表に少し悩んだりもしますが、一個一個じっくり見ていけば大丈夫。組みあがったら海洋堂さんおすすめの光沢のトップコートをたっぷり吹き付けてやって完成。うひょーかっこいい。美しい。シャンパンのような高級感と日焼けしたセロテープのようなノスタルジー。絶妙なカラーですね。クリアを吹くことで透明感がさらに増しています。


 クリアのプラモはちょこちょこあれど、単色のクリアなプラモは実はあんまりない気がします。光の反射のみで細かいディテールと形を味わう。なんというか侘びを感じるプラモデルですね。

 見渡せば 花も紅葉もなかりけり すけてんねんの 秋の夕暮

 不完全なものを美しいと思うことが侘び。クリアの塗料吹いて迷彩みたいにしても面白いかなとか思ってましたが、ここは腹八分目に抑えて、味わい尽くすことに致します。

いち

16の頃に別れたプラモデルと36で再会した82年生まれ。

縦にデカいプラモの正義/海洋堂の「太陽の塔」を組んで飾れ!

 1/200、全高36cmの巨大モケイです。本物は大阪モノレールから2度ほど遠巻きに眺めただけですが、その存在感が家にやってきたら大変だということは容易に想像できます。表面のコンクリートの質感までバッチリなのは、海洋堂がこれまで1/144スケールや1/350スケールでソフトビニール製完成品を発売してきたことも寄与しているでしょう。とにかくその質感は「巨大であるからこそ嬉しい」というほかありません。ハコ開けてこれが出てきたら笑っちゃうでしょう。

 背面に彫られた「黒い太陽」の顔の彫刻(実物は信楽焼のタイルが貼られているそうです)もおみごと。とにかくあらゆるところのテクスチャが実物っぽさを醸し出しているし、何より重たい。重たいプラモデルはそれだけで強烈です。

 そして太陽の塔をみなさんにおすすめしたい理由は「縦に長い」ということ。これが飛行機模型だったり戦車模型だったりフネの模型だったりしたら置き場所をとって大変ですが、底面の直径は10cmほど。置き場所がないなんて言わせません。ガンプラがこれほど流行ったのは「縦に長いから一定の面積に置ける数が多い」という理由ではないかと私は睨んでいますが、同じ論法で行けば塔の模型は流行るはずです。縦に長いので。

 ただ単に外側から見える塔のルックだけを再現しているのならば、前後をパカッと合わせておしまいでしょう。しかしこのプラモは内部も徹底的に再現しています。なぜならこの塔は4つの顔と内部の展示空間からなる巨大な美術作品だからです。

 大阪万博開催当時、人々は地下空間から太陽の塔内部を「生命の樹」に沿うように上昇し、空中展示へと導かれていたと言います(地下空間もテーマ館も当時のものは現存せず、いまは太陽の塔のみが残されています)。果たしてそれがどんな体験だったのか……というのが、じつはこのプラモデルで再現されています。その全容はまた今度。ぜひ買ってきて、一緒に眺めながら驚きましょう。本当に、すごいプラモデルです。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

全日本模型ホビーショー会場で模型の達人に教わった「極太ランナー」の活用法!あなたも今日から瓦礫名人。

▲海外生産のプラモでよく見られる四角い断面の極太ランナー。これ、めっちゃお宝です

 2023年9月30日、10月1日と東京ビッグサイトで開催された「全日本模型ホビーショー2023」の会場で、マシーネンクリーガーの原作者である横山宏氏(以下横山さん)からとっても楽しいテクニックを伝授してもらいました。それは「ランナーから瓦礫」を秒速で生み出す方法です。これであなたの地面も今日からさらにカッコよくなっちゃいますよ。

▲全日本模型ホビーショーの海洋堂ブースにて展示された、横山さん製作のキュスターのディオラマ。無造作にばら撒かれた瓦礫がめちゃくちゃかっこいいのです

 会場で横山さんのディオラマを見ていると、まさかのご本人登場! 「フミテシくんさぁ、この瓦礫めっちゃええでしょ。これ、誰でも簡単に作れるから、フミテシくんもやってみて。画像今あげるから」。と速攻でiPhoneのAirdrop機能で画像を送ってもらいました。それを見ると、マジで簡単な上に、すごく楽しそう……。そしてプラモアニキすぎる大胆さも最高な技でした。

▲極太ランナーをザクザクと切り刻むだけ!!

 海洋堂のキュスターのように、海外生産のプラモの中には、金型にしっかりとプラスチックが流れるよう極太のランナーが採用されたりします。じはこのランナーがお宝。プラ棒とかを買ってこなくても、これを好きな大きさにカットしてばら撒くだけで、瓦礫が完成するのです。太いランナーを見つけたらぜひ真似してください!

▲カットしたランナーをばら撒きます。横山さんは瓦礫がランダムに配置されるように、豆を撒くみたいに本当にばら撒くそうです。考えて配置するよりも自然になって最高とのこと
▲ばら撒いた瓦礫をプラ板の床に固定するために、注射器にツールクリーナーを入れて、直接ぶっかけます。そうするとプラスチックが溶けて勝手に固定されるとのこと。大胆すぎる!

 上の方法で、ディオラマのアクセントになっている瓦礫ができるなんて……。こんなの見せられたら模型好きのハートが疼くってもんです。早速僕もキュスターの極太ランナーで同じようにやってみます。

▲ランナーをザクザク。大きいものから小さいものまでランダムにカットし、流し込み接着剤をドシドシと瓦礫の間に流して固定!
▲グレーで塗装。破壊されている瓦礫ですから、筆ムラなんて気にしない。むしろムラがあった方がらしくなります
▲足元に情報量が増えました!! 15分でこんなふうにできちゃいます
▲兵隊さんを立たせれば、さらにそれらしくなりますね! 超楽しい

 模型のパーツが収まっているランナーを活用するテクニックはさまざまあります。いつもならポイと捨ててしまうものも、こうやって瓦礫に変身! 身近なものを活用するアイディア、着眼点というものは模型を楽しんでいる分だけ養われるのだと改めて知りました。まだまだプラモ製作には楽しいアイディアがありますね! このようなアイディアがありましたら、ぜひnippperで発表してください。みんなのアイディアでどんどん模型を楽しんでいきましょう!! それでは〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

象に化かされる/ARTPLA「アフリカゾウと観光客セット」

 これは何ですか?……ってことはないな。アフリカゾウのプラモのランナーだね。箱にゾウが描かれてるのを見て買ってるし。その箱のフタを開けたから今、目の前にこの景色があるわけだし。クーラーつけてるし、水分とってるし、体調万全プラモライフを心がけてるし……。

 それだけの自覚がありながら部品を切り取ると突然不安が訪れる。……君はなんだ?バラバラになったゾウの一部分。なんかこういうイルカの仲間いない?君はホントにゾウなのかい?

 これは砂浜にいるユムシの部品……ではないな……。落ち着け自分。そんなモノが店頭に陳列されているわけがないだろう?今日行って来たのはプラモ屋さんだろう?

 ほらごらん、この大きな翼。これが伝説の怪鳥、アフリカンツインウィングの姿……ではない。落ち着け自分。お前は何を買ってきたのか思い出してみろ。

 こっちは立派な象牙だろう?そう、象牙。ゾウ?そう、これはゾウのプラモだった……自分がゾウのプラモを用意したのだということをウッカリ忘れてしまうところだった。「円柱を斜めに切った面の輪郭から楕円が得られる」みたいな話は授業で聞いたことがあったけれど、ゾウをバラバラにしたらどんなカタチになるかなんて学校では教えてくれない……。

 動物のプラモデルなんて真ん中で左右に割られているモノなんだと思っていた。だからゾウのプラモは動物ビスケットみたいなゾウを横から見たシルエットが左右に割られた部品になっているのかと思っていた。首から下は概ねそんなカンジなのだけれども、特徴的な頭のほうが想像もしないようなカタチに分割されていた。

 乗り物のプラモならタイヤだとか、ハンドルだとかはバラバラの状態でも「分かる」部品として見ていられる。なんだかわからない部品はそもそもそういうカタチのモノがそこについていることを知らない「組み立てを通して知る」存在だ。

 でもこのアフリカゾウのプラモはちょっと違ったね。アフリカゾウに長い鼻があることも大きな耳があることも知っていた。知っていたのに、その知ってるハズのモノが部品の状態だと別の何かに見えてしまう。こういうの、ゾウにばかされるって言うのかもしれないな。パヲーン!

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

名前でみるか?色でみるか?だからプラモの塗料選びは楽しいのです「タミヤ エアーモデルスプレー AS-19 インターミディエイトブルー」

▲「あなた、ダークシーグレーにスカイだなんてイギリス軍の飛行機みたいな色してるのね」。「そんなあなたはどちら様?」

 タミヤの「1/72 モスキート」は好きな飛行機模型のひとつで、年に1個は買います。今年はこの色で塗ってみようかな〜と思っていた色がありまして、それが「PRUブルー」。くすんだような青が特徴で、この色1色で塗られているモスキートがとてもかっこいいのです。PRUブルーは、その名のままファレホなどでも販売されています。

▲こちらがタミヤの完成見本の写真

 早速タミヤのモスキートの箱を開けてみると、そのブルーには「AS-19 インターミディエイトブルー」という色が指定されていました。この色は、ワイルドキャットやコルセアに塗装された色です。「へ〜、それで代用できるんだ〜」という知識を得たのと同時に、「本当に?」って疑問が湧いたので、近くにあったキャラクラーモデルとスケールモデルの架け橋であるマシーネンクリーガーのプラモデルに塗ってみることにしました。使用キットは、海洋堂直営店・海洋堂オンラインストアで販売されたスペシャルカラー版の「ARTPLA 1/35スケール キュスター2機セット」です。

▲アメリカ空軍博物館に展示されていた、アメリカ空軍のマーキングがされたモスキート。そうそう、こんなブルーです。もしかしてこれって「インターミディエイトブルー」だったのか? 当時の僕の中ではモスキート=イギリス=PRUブルーって見ていました。見返すと思考が巡って面白い
▲タミヤのエアモデルスプレーの蓋には、どんな色なのか解説が書いてあります。文字の情報もありがたいですよね

 タミヤのスプレーには、自社の飛行機模型に合わせたカラースプレー「エアモデルスプレー」というシリーズがあります。缶に飛行機が描かれているので判別しやすいです。こちらは塗膜も強固になっていて、ウェザリング塗料などに対する耐性も通常スプレーよりも上がっています。塗装後もお好きなように上からガシガシと汚しを追加できますよ。

 缶スプレーの説明ではアメリカ海軍の指定色になってますが、モスキートの説明書ではイギリス機にも塗っていいぜとなっている「インターミディエイトブルー」。早速塗ってみます。

▲ビフォ〜〜〜〜
▲アフター! 家に余っていたイギリス軍のデカールを貼ったら、もうPRUブルーにしか見えない。全く問題なし!!

 塗ったらとてつもなくかっこいい「青」が出てきました。確かにアメリカの「インターミディエイトブルー」になるし、イギリスの「PRUブルー」にもなります。近似色というのはとっても便利なもので、色で迷った時に、なんとかしてくれる存在。今回「インターミディエイトブルー」を使ってみて、タミヤに「大丈夫だから、使ってごらんよ。イギリスにもなるぜ」って肩を押してもらえた気がします。なんとかしてくれる便利色。今回の色の冒険は、そう言った便利色の引き出しをもっと増やしてみようと思わせてくれました。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

俺たちが「恐竜学最前線」だ!/海洋堂謹製 ティラノサウルスのプラモデル。

▲むかしむかし、あるところに『恐竜学最前線』という雑誌がありました。とっくの昔に廃刊になりましたが、今も変わらず恐竜はおもしろいのです。「松村恐竜」が表紙を飾って31年、ついにプラモデルになりました。

 プラノサウルスのラインナップ第二波がバンダイスピリッツから高らかに発表され、タミヤが新旧恐竜シリーズの再生産を大々的にアナウンス。さらにジュラシック・パーク版ティラノサウルスまで発売された現在、恐竜プラモを取り巻く状況は最高潮に達しようとしているようです。そんな中、満を持して海洋堂からティラノサウルスのプラモデルが発売されました。

 海洋堂といえば、松村しのぶさんをはじめとする強力な原型師たちを推し立て、恐竜のガレージキットで世界を席巻した過去があります。本キットのお座りティラノサウルスはそんな時代に松村しのぶさんによって制作された粘土模型をデジタル化・プラモデル化したもののように見えますが、皮膚の表現や頭部のシルエットをはじめ徹底的に手が加えられており、別物と言って差し支えないものとなっています。それでいてゆったりした佇まいは30年近く前の造形からまったく変わっておらず、海洋堂の恐竜造形のなんたるかを今に伝えているようです。

▲デカい恐竜のパーツとちいさい人間のパーツが同居しています。極太のランナーに思わず身構えますが、ほどよい柔らかさで成形されており、そう心配はいりません。

 箱を開けると馬鹿でかいティラノサウルスの胴体が視界に飛び込んできます。この感覚は、タミヤの恐竜世界シリーズのティラノサウルスの時と同じです。デカいパーツはそれだけでむやみに興奮するものです。 ティラノサウルスは肉食恐竜の中では最大級の体格の持ち主ということで、1/35とはいえ胴体だけでも相当なサイズ感。リラックスし、体重を完全に地面に預けていることが伝わってくる造形はさすがのひとことに尽きます。

▲パーティングラインや合わせ目は組み立て後に目立ちにくい場所・処理しやすい場所に集約されています。深い傷の刻まれた頭や、体重がかかって大きく広がった足のパーツは、それだけでえもいわれぬパワーに溢れています。

 パーツの合いも上々で、たっぷりの接着剤(通常タイプと流し込みタイプの2種類があればなおよし)さえ用意しておけば何も恐れることはありません。レジンキットやソフビキットではパーツの変形があったりして接地面を揃えるのが大変ですが、本キットはなんの調整も必要ないのです。パーツを貼り合わせていくだけで、地面にべったりと座り込んだティラノサウルスのおとなが姿を現します。手の上に乗せられるサイズではありますが、肉厚のパーツに重力を感じさせる造形も相まって、かなりの重量が伝わってきます。

▲恐竜に表情筋はありませんが、我が子を慈しむ親の表情がここにあります。これほど豊かな表情の恐竜を描き出せる人は、世界でもわずかしかいません。恐竜の化石という実在するモチーフを確かに内包し、なおかつ化石化しない軟組織に宿るキャラクター性さえ表現したプラモデルがこれです。

 令和の恐竜プラモデルということで、こどものティラノサウルスには羽毛が生えています。とはいえ、20年前には羽毛の生えた恐竜フィギュアを量産してスーパーのお菓子売り場に並べていたのが海洋堂です。海洋堂のフィギュアが世界で一番ラディカルな恐竜復元だった時代がかつてありましたが、それから30年が過ぎ、世界最高峰の恐竜造形としての落ち着きが感じられるプラモデルとなっています

▲1枚のランナーの中に、こどものティラノサウルスと牛の枝肉、飼育員や研究員のパーツがぎっしりと詰め込まれています。牛の枝肉や飼育員・研究員はオマケではなく、このキットを構成する重要な要素だという意思が伝わってきます。

 タミヤの恐竜世界シリーズには双眼鏡を携えた髭のおじさん(伝・ヒサクニヒコ先生=キットの監修/解説担当)がおまけとして付属していましたが、本キットでは老若男女5人の飼育員・研究員が大きな要素をなしています。鉤棒を持った飼育員のおじさんは松村しのぶさんらしき風体で、だとすると他の人々も実在の誰かしらなのかもしれません。モチーフになった人物についてはさておき、会話はおろか互いの関係性さえ伝わってくるような造形です。 飼育員・研究員で突然パーツ分割が細かくなってうろたえますが、丁寧に切り取ってさえやれば大丈夫。汗でメガネのズレたにいちゃんが必死で運んでいるバケツの中身が本キット最難関の組み立て工程ですが、別にうまく接着できなくても何の問題もありません。バケツの中に収まっていればいいのです。

▲並べるだけで机の上がジュラシック・パークです。施設の安全管理は割とうまくいっているように見えます。

 今日恐竜の研究といえば、汗や泥や砂にまみれながら化石を探し歩き、必死で論文をかき集めて博物館を渡り歩き、あるいは片っ端からエミューの足を解剖したり、数理モデルと格闘したり、だいたいそんな感じです。本キットは「突如現れた恐竜の観測をする研究員と、食事のお世話をする飼育員」(説明書より引用)のセットということで、我々の世界とはずいぶん違った様相ですが、そこに含まれているのはやはり恐竜の研究をしている人々に違いありません。

 かつて学研から出版されていた『恐竜学最前線』という雑誌の第1号の表紙を飾ったのは、松村しのぶさんがアメリカ自然史博物館のために制作した恐竜の模型でした。この雑誌から巣立っていった人々は30年後の今日でも業界に居残っており、たびたび紙面に登場していた海洋堂も、今またプラモデルで恐竜模型の最前線に戻ってきたことになります。

 生きたティラノサウルスを飼育し、観察する。古生物学者の見果てぬ夢を立体化したこのプラモデルの人々は、恐竜学の最前線を戦っている瞬間の姿で射出成形されています。荒木一成さんの登場以来、40年以上にわたって名だたる恐竜模型を生み出し続けてきた海洋堂も、そしてその最新恐竜プラモデルを組んでいる我々も、同じ場所に並び立っていると言えるでしょう。  今こそキットを組み立て、高らかに叫ぶ時です。みなさまご唱和ください。 「俺が、俺たちが恐竜学最前線だ!」

G.Masukawa a.k.a.らえらぷす

1994年生まれ。恐竜の化石から骨格図を描き起こしてごはんを食べています。著書に「ディノペディア Dinopedia: 恐竜好きのためのイラスト大百科」、「新・恐竜骨格図集」、イラスト展示制作に「恐竜博2023」、「ポケモン化石博物館」ほか多数。

2個入で色違いのプラモデル/海洋堂 ARTPLA キュスターを組もう。

 箱の側面に入れられた「2 COLORS 2 KITS」のタイポグラフィ。これはイギリスのメーカー、マッチボックス(昔プラモデルを作っていて、いまはミニカーの製造販売ブランドとして生き残っています)という会社の製品に対するオマージュです。キュスターという2足歩行のメカがふたつ入っているのですが、片方はダークイエロー、片方はダークグリーンというミリタリーモデルでよく見る色のプラスチックですね。楽しい〜。

 最新プラモなのでパーツは当然ながらシャッキリしています。パーツと枠をつなぐゲート部分がやや太い印象なので、よく切れるニッパーを準備しましょう。もともと1/20スケールでプラモデル化されていたメカなのですが、こちらは1/35なのでふた周りほど小さくなっています。そのまま小さくすると細くなりすぎるところなどは大きさに合わせてアレンジされているので、少々ガッシリして見えます。そのぶん組み立て時の安心感はばっちり!

 注意書きや元気な色のナンバー、可愛いパーソナルマークなどデカールもたっぷり入っていてお得です。ふたつ入りなのでちょっと多く感じるけど、好きなの貼っていいんですよ。下に塗る色とデカールの色の組み合わせを考えるのも楽しいね。

 合わせ目消そうとするとちょっと大変かもしれませんが、バリバリ組んでもOK。とにかくパーツを取り付ける位置とか向きがはっきりしているのでマゴマゴするところはありません。可動は脚部と頭部をつなぐ回転軸以外ありませんので、ドシドシ貼ったら好きな色に塗ろうね!というメッセージだなこれは。


 できてから気づいたんだけど、マッチボックスオマージュなんだから2色を混ぜて組めば楽しかったな(当たり前ながら原作者の横山宏さんは2色混ぜて組んで「楽しい〜」とやっていました)。でもこの統一感のあるブラウンの仕上がりもまたヨシ。2個入プラモは友達や恋人や職場の仲間と分け合って作れるのが良い。パピコが2本入りなのと同じだ。仲良しをもたらすプラモデル。

 同じ1/35の戦車と並べるとなかなか背が高いのがわかります。スケールが揃っていると比べっこして遊べるのがイイね。戦車とおそろいの色で塗っても楽しいし、飛行機から色を借りてきてもいいし、お気に入りのスニーカーと合わせて塗ってもいいのよ。筆でメロメロ、塗ってください。

 じつはこれ、海洋堂直営店限定で特別カラーVer.が売られていたんですね(いまはもう在庫がない!)。こっちは色の違いをあえて箱側面にベタッと貼ったシールで主張。ちょっと曲がっているのはたぶんワザとで、ラフな楽しみ方を提案しているような雰囲気がとってもいいなと思います。みんなもシールは積極的に斜めに貼るといいよ。

 こちらはイギリス海軍を彷彿とさせるガルグレーとダークシーグレーの2色入り。混ぜて組めばもっともっと色とりどりのキュスターが手に入るってワケ。海洋堂のARTPLAでマシーネンクリーガーシリーズはまだ続くかもしれないし、そのときはこんなふうにマルチカラーのアイテム(と、限定色)が発売されるに違いないので、「今回の限定色が手に入らなかった〜!」というそこのアナタ、次回は予約を欠かさないようにしましょう。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

丸いランナーが世界の入口/プラモデルに偶然出会う場所。

 いまプラモデルを買うとしたら、どこで買いますか。ネット通販か家電量販店が思い浮かぶはずです。模型店で買うなんて場合は、かなりプラモデルが好きな人ではないでしょうか。でもこれって、そもそも「プラモデルを買おう」と思っている場合の選択肢ですよね。なんていうか「買うつもりは無かったのに偶然プラモデル買っちゃった」って体験ができる場所ってあまりないんですよね。家電量販店くらいですかね。
 ところが、プラモに偶然出会える場所があったんですよ。ガチャポン売り場なんですよ。

 「ガシャポン(GASHAPON)」は、バンダイが製造販売しているカプセルトイの一種であり、同社の商標および商品名なんです。 で、海洋堂がカプセル用にプラモデルのランナー(パーツがくっついてる枠)を丸くした。たったこれだけのことなのに、プラモに出会える場所が爆発的に増えたんですよね。プラモデルをカプセルベンダーのフォーマットで売り出してくれたのがすばらしい試みで、模型屋や家電量販店ってそんなたくさん無いけど、ガチャコーナーってスーパーの店先にもあるから出会いの偶発性が高まったんです。

 フランスの学者、ロジェ・カイヨワは著書『遊びと人間』の中で人間の遊びを4つの要素に分類していまして。その4つは「アゴン(競争)」「アレア(偶然)」「ミミクリ(模倣)」「イリンクス(眩暈)」となっております。模型・プラモデルはミミクリ遊びに含まれるんでしょうけど、ガチャでプラモを手に入れるとなるとアレア(偶然)の要素も入ってきます。

▲丸いランナーのスタンド名は『サークル・オブ・ライフ』!!!!!!

 飼育員の落ち着き払った表情まで見える本気の造形にビビったよね。 海洋堂のアートプラ。なにしろフルスペックのプラモなので、パーツはニッパーなどで切り離さないときれいに仕上がらないし、接着剤でくっつけないと形にならない。この媚びない姿勢が良いのです。

 「敷居が高いやろ? これがプラモや。せやけど部品も少なくしといたから、ホレ、ちょっとやってみ?」

 チャレンジ魂を煽ってくる少なめなパーツ点数でありながら、完成したらすごく精巧なミニチュアになる予感がしちゃう生々しい造形。ゲートウェイとして絶妙な商品だと思うんだよね。

▲動物園、アニメキャラやパワードスーツ。豊穣なジャンル。再販モトム。 駅ビルやショッピングモールのガチャポンのコーナーって「なんかおもしろいものないかしら?」って気分で、偶然の出会いを期待して行くとこじゃないですか。

 完成品のコレクションも楽しいけど、偶然ゲットした小さいプラモデルをウワーって組み立てて、ちょっと真剣な顔して色を塗ると、なんかイイモノができあがっちゃいました……。自分にできるかどうか難しいわっていう細かい塗り分けも、やってみたらできたっていうか、はみ出したりムラになったりしてもそれはそれで満足。見逃すことができる範囲のミスならば、自分はそれを楽しむことができる。ていうか真剣な顔して色塗ってたのにこんなにヘタな自分、ちょっとおもろい。次はもっとうまくやる。

 偶然見つけたおもしろそうなガチャを回し、数種類あるアイテムの中のひとつが偶然出てくる。偶然がふたつ重なったら、もう運命を感じちゃってもいいんじゃない? あなたはこのプラモに出会う運命だったんじゃない? プラモがそう囁いてくるようじゃないですか。「初めて組み立てたプラモデルは動物園のゾウガメでした」っていうキッズが、次はティラノサウルスのプラモデルとかに挑戦してくれたらいいなって思います。人間、新しいことを始めるのは偶然の出会いからなんですよね。

鷲谷憲樹

食事やホビーなどの快楽にまつわるコンテンツで暗躍するホビーおじさん。団塊ジュニア世代。

プラモデルで組み上げるザ・ビースト/海洋堂のエヴァ2号機がスゴいんです。

 海洋堂からテストショットを頂いたので組んだぞ、「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態ザ・ビースト『ジオフロント血戦』」を(キット名が長い!)。プラモデルでこんなに肉肉しい2号機が、ど迫力のポーズとビキビキのディテールで手に入るということがもう最高です。こんな造形、ひと昔前ならガレージキットでしか手に入らなかったもんね。動かない、色分けされてない、なら難しそうだからオレには関係ないや……と思った?塗りたければ塗ればいいし塗りたくなければそのまま置いといても大丈夫なのがプラモデルなんだぜ。

 見えづらいクリアーパーツを含め、ランナー6枚のショータイム。1枚がB5くらいのサイズでなかなかボリューミーですが、開けた瞬間に「うぇっ、パーツがいっぱいある!」という圧はほとんど感じません。なぜならそこに「カタチになる予感」が充満しているから。

 これはどこのパーツなんだ?というワクワク感と、これはきっと腕になるんだろう!という確かな予感がとってもバランスよく目に飛び込んできます。「パーツ状態でも残されている”カタマリ感”を大事にしてるんですよ。ただただカタチを再現するために粉々に分割するとこの感触は失われちゃいますからね」と海洋堂のスタッフが静岡ホビーショーの会場で語っていたのが思い出されます。

 腹の横のお肉がとっても気持ち悪いですね。馴染みのエヴァの姿から大きく変貌したいかにも生き物という質感の弐号機が、硬いプラスチックで表現されているのがいいんです。これを可動モデルにしたら色んなところをブロック状に割って、中に可動ギミックを仕込まなければいけません。でも固定ポーズなら造形を損なうことなく大胆にパーツ分けできます。

 大胆なパーツ分けは、ユーザーに造形をストレートで渡すことに寄与すると同時に、組むときのスピード感も向上させてくれます。芯になるブロックに外装(というか肉的な皮膚的なパーツ)をバコンバコン被せていくと、少ない手数で猛烈に複雑な情報量の多い造形が現れます。しかもね、パーツの合わせ目はビッタリ合うんですよ。ビバ、デジタル技術の進歩。

 組み立てにオススメなのは流し込みタイプかつ速乾のプラモデル用接着剤です。「接着剤を塗ってパーツを合わせて乾かす……」というのは昔のスタイル。いまは「パーツを合わせたところに少量流し込めば数秒で固定される」という魔法のような接着剤が売られています。プラモデルからしばらく離れていた人、初めてプラモデルを作る人、ぜひとも速乾の流し込みタイプを一緒に買ってください。タミヤもしくはGSIクレオスのものが手に入りやすいのでオススメです。

 「モード反転、裏コード……ザ・ビースト!」と叫びながら背中の装甲に食らいつきます。10個の丸い穴からはリミッターがガチョーンと出て来ます。プラモデル的には背中のパーツを重ねて組んでから、リミッターを一本ずつ刺していくことになります。

 ちなみに一般的なロボットプラモよりも大きなパーツが多く、金型的にも深さ方向に厚みのあるパーツが目立ちます。そのためゲート(ランナーとパーツを繋いでいる部分)もランナーから立ち上がっていてニッパーを入れづらいのがARTPLAの特徴のひとつ。ということで、上の写真のようにニッパーを入れ、ゲートの手前でまずはざっくりと切断しましょう。

 それからパーツのギリギリでゲートを切り落とします。複雑な形状をした合わせ目の部分にゲートが残っていると組み立てるときに邪魔をして隙間ができてしまうため、パーツにゲートが残らないようしっかりと処理しましょう。ちょっと残ってるな〜というときはニッパーで攻めずにデザインナイフでキレイに取り除くと吉です。

 外装の内側にリミッターの基部となるタコの吸盤みたいなパーツをいっぱい仕込む工程を経て、外からちくちくとリミッターを差し込んでいきます。スライド金型を使って表面の編み込みホースみたいなディテールと先端の二重丸みたいなディテールが両立した表現になっているのが偉い。そして接着シロも深く取られているので、なにも考えなくても角度がビシッと決まるのがさらに偉い。ユーザーが接着のときに「こうかな? いや、こうかも」と試行錯誤しなくてもいいって、凄いことなんです。

 劇中ではいきなり形態変化してロングショットか超広角のクローズショットでめちゃくちゃ機敏に動いていた弐号機。リミッターがどこから生えていて、どこの筋肉がどんなふうに膨張していたのかなんて、なかなか把握できませんでした。しかしこうやって立体になって自分で組み上げると「なるほど、そこがそうなってザ・ビーストになってたんですね〜」というのが一目瞭然。特に両肩のリミッターの生え方(そして頭部や装甲に対する避け方)とかは立体だからこその納得感がすごい。

 固定モデルの美点は手の表情にアリ!と言ってもいいでしょう。手の甲、親指、力の入った指の演技、そして腕とつながる自然なアウトライン。ちなみにディテールはどこもかしこも深く、固定モデルとは言え塗装の手順もしっかりと考えた分割になっています。マスキング+エアブラシでは大変だと思いますが、筆塗りでイラストチックに仕上げるのが超おすすめ。楽しいんだぞ。筆塗り。

 頭部のサイド〜特徴的な4つの眼はクリアーパーツとソリッドカラー(ボディと同色)の両方が用意されているので好きなほうを選択しましょう。頭部〜首はかなり凝縮感があり、柔らかいところ、硬いところ、機械的に塗りたくなるところと生物的に塗りたくなるところが入り混じった最高の造形。ハイコントラストに仕上げるのなら、組み上げてから(暗色はほっといて)出っ張ったところだけガシガシ塗るのもOKなほど陰影がくっきりした彫刻です。

 使徒を踏みつけて野性的な攻撃を繰り弐号機がそれなりの手応えと思ったより短い時間で完成。「そのまま置いといても見栄えするし、単色のスプレーで石像みたいに仕上げても彫刻作品として優れているし、バリバリに塗って模型的に仕上げても最高」という、パイロット次第で好きに乗りこなせるアイテムです。本当に組んでいて楽しいし、ここからどんなふうに手を入れようかと案ずるのもまた楽しい至高のプラモデル、あなたもぜひ手に入れてください。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

海洋堂の造形とミリタリーモデルへの愛が炸裂!/ARTPLA 研究員とティラノサウルスセット

 箱を開けた瞬間にこれからどんな体験が待っているのかがスッと目に飛び込んでくる。パーツのデカいプラモにしかない栄養があるんです。どうですかこのティラノサウルスの半身。巨大じゃありませんか。魚で言うと頭と尾が落とされた状態ですが、これだけで全長20cmくらいあります。スケールは1/35。タミヤの戦車や恐竜と同じ縮尺です。今月発売予定ですが、テストショットをいただいたので味見しています。ぐふふ。

 頭蓋の上半分はワンパーツ。鼻の穴や目、葉が一体になっています。上下に分かれる金型では不可能な造形ですが、これは左右方向にも動くスライド金型というのを使って再現されています。赤茶色のプラスチックは上から塗り重ねていくときにも「生き物感」が出る良い下地になってくれますし、そのまま飾っても恐竜の模型としてどんな背景にも馴染む良いカラーです。

 脚は上下に幅のある太ももとパツンと張った脹脛が曲がった状態でパーツ化されています。「おすわり」のポーズのティラノサウルスの模型、珍しいよな〜。そしてこれだけ大きいと焼き鳥屋さんで見る手羽先と大差ありません。なるほど、鳥は恐竜から進化したんだな……ということをまさかのプラモデルのパーツで納得させられる不思議体験(アンビリバボー)。

 ところで子供のティラノサウルス(体表は羽毛で覆われている)も2体付属します。てっきり5月の静岡ホビーショーにて配布された子ティラノは「後に発売される親ティラノセットの一部」だと思いこんでいたのですが、2体ともまるっと新規で作られていました。ということで、静岡ホビーショーで子ティラノをゲットした人はポーズ違いの3体を並べて遊べるんだな。なんという太っ腹!

 ティラノサウルスは白亜紀の生物ですが、このプラモには現代人が付いてきます。この瞬間、SFになります。ティラノサウルスを研究し、飼育する人々……というめちゃくちゃな非日常が、なんとも日常的な衣服とポーズで表現されています。ティラノ単体もしくは人間単体ならなんということはないのですが、それが組み合わさると「ありえない景色」になるというプラモデルの面白さをうまく使った製品と言えましょう(昔から映画の世界では「古生物と人間が同居する景色」は夢として描かれ続けてきたわけですが、それらもまた模型を活用した映像表現であったし、現代のCGにつながる思想でござんすね)。

 ぺたんこ座りや白衣、長靴といったバラエティ豊かな人間のパーツが整然と並ぶDランナー。1/35スケールはもっぱら兵士が戦場を駆け回る世界でしたが、海洋堂は動物や非戦闘員を同じスケールで展開しまくることによって模型の世界にも和平をもたらそうとしています。そのうち中華料理をつくるおじさんとかダンボールを運ぶお兄さんとか、交差点でハンカチをパタパタしているお姉さんなんかも作ってくれるかもしれません。作ってほしいよね!?

 ショートカットメガネ、ぺたんこ座りノートPCアネキの上半身です。アニメでよく見る「美女だけど凄腕ハッカーの才能を持ち、人付き合いがあまりうまくないキャラ」というベタな意匠がそのまま立体化したようなすごいパーツです。恐竜と切り離して飾ればTwitter中毒の床インターネットお姉さんとしても活用できます。あったよね昔、路上インターネットブームが(ごく一部のクラスタで……)。

 こちらはバケツで餌の残滓(ホネとか)を運ぶアニキ!体重たっぷり、右に傾いた体幹、汗をかいていそうな不快そうな顔。カッコよくてシュッとしていて躍動感のある人だけじゃなく、人間にはいろいろな姿態があり、これらが全てプラモデルになることこそ真の民主主義的な社会と言えるのではないでしょうか。私はそう思います。

 さて、このプラモの個人的な大トロは牛肉(ティラノの餌)であります。この半身になった動物の肉を見ると、凄腕ジオラマビルダー金子辰也氏が作ったフィールドキッチンのジオラマ(『ホビージャパン』1978年3月号の表紙)を思い出すモデラーも多いでしょう……っていうかこれは海洋堂が狙ってやっている「金子辰也リスペクトパーツ」ないし「1/35世界のメモリアルアクション」に違いない!絶対そうだね。そうじゃないって言われてもオレはそういうことにしたいね。もうパテを捏ねて盛ったり削ったりしなくても我々は肉を手に入れられる!最高。

 技術的な話をすると、成形時に金型からパーツがキレイに離れるのを助けるために金型のコア面(オス型の側/ガンプラで言えばダボがついているパーツの内側)に脊柱と肋骨が刻み込まれているのがミソなんですが、さらに言うと右下には先程の体重たっぷりアニキの腕がバケツを握った状態でパーツ化されています。死んだ肉と生きた肉が隣り合わせで同居し、同じくバラバラにされていながらも「ティラノサウルスの餌として分割された状態」と「我々が組み立てるために分割された状態」という異なる相を見せている。プラモデルってマジで面白いですね。そんじゃ組みましょうか。みなさんも組みましょう。またね。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

女の子プラモのアイペイント、極細コピックで参る!/ARTPLA ゆるキャン△犬山あおい

▲発売当初はあんなに必死で探したのに…積んでてスマヌ。

 若葉が初夏の日差しに輝く季節となりましたが、皆様お健やかにお過ごしのことと存じます。って……おいおいいつの間にか夏だよ。

 ソロキャンに適した冬も終わり、グルキャンに最適なGWも終わり、こちとらゆるキャン△をアマプラでヘビーローテーションで見るだけですべて終わったよ。まぁボクは年中なにかの花粉症にかかってるんで、キャンプなんて腐海にノーマスクで行くようなモンなんすけどね。

 というわけで今回は1年前に買ってそのまんまになってた海洋堂ARTPLA ゆるキャン△を作ってみる。さっそく組み立て……といってもそんなにパーツ数ないので爆速で組み上がる。

▲肩と足、スカート内側のダボを削っておくと、塗装後に組み立てしやすい。

 が、サーフェイサー(下地塗料)まで吹いたところでふと手が止まる。この子、適度におしゃれでなんかちょうどいい感じだぞ……スケールは1/24か。

▲マスキングテープを貼って目を描いてみた。

 ワイは車のプラモの横に人間のフィギュアを置きたい派なのだが、世間の1/24スケールのフィギュアってなんでこう……セーラー服とかバニーガールとか……クセ強な感じのやつしかないのか。その車に乗ってる姿というか、車との生活つーかドラマ? そういうのが想像できる感じのちょうどいいやつが欲しいんだよぉぉぉ!と常々思ってた所に、キミ、いいねぇ。うーん、『ゆるキャン△の犬山さん』ではなく、オリジナルで仕上げたい気持ちがムクムクっと!

▲犬山さんは頭部が二種あり、それぞれに予備パーツアリ。3コンテニュー可。

 ヘッドパーツは塗装済み&無地があり、デカールも予備がある。保険として最低1個は犬山さんとして組むが……やれる!よーしチャレンジしてみるぞー。

▲肌を塗装後、白目を筆塗り

 最難関は白目部分の筆塗り。だが目尻は髪パーツで隠れるので、両目の高ささえ合っていればなんとかなる!

▲右利きなら左側を描いて、それを見ながら右側を描くとおんなじ感じにしやすい。

 さて、世間の超絶モデラー様達は瞳、瞳孔、果てはまつ毛まで筆で描くというが、激高難易度すぎる……。今回はリアル系ではなく、アニメ調のキャラということもあり、コピックマルチライナー0.05(セピア)/コピックモデラー0.02(ブラック)を使用して描く。紙に同サイズの目が描けるなら、おんなじ様な感覚で描けるのでグッと楽!

▲完成!胴体にパイルダーオン!

 というわけで、かんせーい!
 完成したのだが、そういえばウチに1/24の車のプラモって廃車仕様のやつしかなかったわ……。車との生活……ドラマ……そういうのが作れる日は未だ遠い。

コピルアク

1981年生まれのプラモエンジョイ勢。本業はゲームとかつくる人。

ひと塗りで「新鮮な草」になる塗料で、動物たちのご飯を作ろう!!

▲ひと塗りで爽やかな新緑!!! 今日は動物たちに新鮮なご飯を作るよ

 かわいい動物と飼育員をプラモで楽しめる僕の大好物プラモ、「海洋堂 ARTPLA」の動物園シリーズ。このシリーズは水性塗料の筆塗り、特に多くの人が成功体験を得ることができる“染め塗り”という技法と相性が超良いのです!!! 今回は飼育員が持つ草をフレッシュに塗装してみましょう(完成後に飼育員が持つ草は干し草だと知ったのは内緒だぞ)。

▲動物たちにおいしいご飯を届けるエサアニキ降臨!! 後ろにも干し草を隠して、おいでおいでしていますね

 使用する塗料は、水だけで塗れてほぼ無臭の超便利塗料「シタデルカラー コントラスト」。こちらを使って草を塗っていきます。マジで一撃で緑になりますよ。コントラストは塗るところを白や明るいグレーに塗った上から塗装すると綺麗に染まります。

▲今回の主役は草です。今回の塗り方は草や葉っぱを塗るときにとっても便利ですよ
▲白いスプレーを吹いて、準備OK

 使用する色は「ワープ・ライトニング」。とっても鮮やかな緑なんです。これを白く塗った草の上から塗ると……

▲採れたてのようなみずみずしさだぜ!

 一撃でバキバキ発色!! マジで新鮮な草になりました。シタデルカラー コントラストは容器に入っている状態からシャバシャバな塗料なので、草のディテールの奥まで自然に塗料が流れ込み、このように綺麗に塗装できます。奥まった部分に塗料がしっかりと残るので、濃淡のグラデーションが勝手に生まれる特性もあります。

▲鮮やかな草や葉っぱの塗装は「ワープ・ライトニング」にお任せだぜ!

 ワープ・ライトニングをゲットした僕には、草や葉っぱの塗装は怖くありません!! 染めるだけでこんなに素敵になっちゃうので、どんどんネイチャーな模型を塗りたくなります。染めた後に、ドライブラシなどをしてさらに立体感を高めるのも超楽しそう! 動物たちのご飯だけじゃない広がりもある「ワープ・ライトニング」、超オススメですよ!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

おしゃれは足元から!土台もこだわるコレ大事!/ARTPLA ゆるキャン△のプラモケイ

 「ソロでもグループでも冬にキャンプをしても楽しいよ」とアニメ『ゆるキャン△』は教えてくれました。そんなゆるキャンの登場人物たちがプラモデルになっています。

 季節によっては厚着をする必要はありませんが、モコモコしている女の子はいつ見てもかわいい。キャンプグッズを揃えるためにアルバイトを頑張る彼女たちを応援する気持ちで、キレイにかわいく作ってあげましょう。誰にとってもおしゃれは大切ですから。

▲なでしこちゃん本体はランナー3枚

 プラスチックの成形色は薄いオレンジ色で肌の色を表現しているので髪と服を塗ってあげれば良いでしょう。色を塗る面積は小さく、サッと筆塗りするのにちょうどいいサイズです。見本どおりのカラーリングでも良し、流行りのコーデを取り入れてみても良し。想像は膨らむばかりです。

▲キャンプには道具がたくさん必要なのです

 このキットのナイスなポイントはあらかじめ瞳が印刷されたパーツが同梱されているところです。完成までのハードルがグッと下がります。もちろん印刷の無い顔パーツと瞳のデカールも付属していますから、ご自分でお好みの表情に微調整することも可能です。デカールは余分に入っていますので恐れずに挑戦しましょう。

▲組み立てたなでしこちゃんの大きさは塗料のビンと同じくらい

 だ円の中央を少しつぶした形状の土台が付属します。土台はすなわち地面なので、土の色をイメージしたブラウン系の色や芝生のグリーン、主張の控えめなグレーで塗っても良いはずです。ジオラマ用の草を添えても雰囲気が出そうです。今回はキャラクターのイメージカラーで塗ります。

▲カップラーメンを作るだけでも十分にキャンプご飯なのです

 土台の色がカラフルなおかげでとってもポップな印象になりました。なにより「やったー!今からキャンプだ!!」という嬉しそうな感情を演出できました。アニメの世界から飛び出た彼女たちには、やはりカラフルな色合いが似合います。リアリティのある人物をフィギュア化した場合には難しく思えるカラーリングですが、モチーフ次第では選択肢が増えるのでイメージを膨らませながら塗装を楽しんでください!

ねこやなぎ

1990年生まれの会社員。休日はプラモデルとイラスト制作に明け暮れる。

史上初!?「全身に羽毛が生えたティラノサウルスのプラモデル」を無料で手に入れる方法!

 海洋堂から1/35スケールで「研究員とティラノサウルスセット」というプラモが発売されます。おすわりポーズのティラノサウルス成体と、立ったポーズの幼体が2匹。そして現代の人間(=研究員)のフィギュアが5体。わたしたちが「恐竜と人間が同じ空間にいる」という状況も納得できてしまうのは、映画のおかげかもしれません。

 さて、そのなかから立ちポーズの幼体だけが静岡ホビーショーで無料配布されるということなのでnippperにもサンプルをひとつもらいました。プラスチックは赤茶色。恐竜には毛が生えていたんだぜ〜(しかもティラノサウルスの幼体は全身モフモフだったのがほぼ確定らしいぜ〜)という最近の学説を下敷きに、おそらく世界初なんじゃないかと思われる「全身に毛が生えた恐竜のプラモデル」が爆誕です。

▲見て、モッフモフ。

 総パーツ数は土台込みで9個だから、ちょんちょん切って接着剤で貼っていけばすぐにカタチになります。完成時全長は10cm程度ですが、松村しのぶ氏(諸君がチョコエッグで散々見たあの造形の多くを手掛けた動物激ウマ原型師です)による精緻で躍動感溢れる彫刻がいいっすね。

 とくに変わった分割をやっているわけではありませんが、無可動/ナマモノ/要接着のプラモが着々と牙城を築き上げている昨今のプラモシーンにこうして恐竜が新規造形で現れてくれたのは最高。同社の動物園シリーズとスケールも揃ってますし、タミヤの恐竜はもちろん、戦車と並べても楽しいはずです。

▲「はい。ティラノサウルスですね。ティラノサウルスがいるんですよ。」

 塗装しなくても楽しいけど塗装するともっと楽しいのがプラモ。しかしティラノサウルスの色なんて絶対に誰もわからん。ということで昔ながらの「茶色い系塗装例」と最近の学説を下敷きにイマジネーションを膨らませてた「鳥っぽい塗装例」が用意されています。まあもっとポップに塗ってもいいし好きなロボの色とかにしてもいいんだぜ。

 7月まで待っていれば成体も含めたフルキットが手に入りますが、静岡ホビーショーでは無料配布があるっちゅうことなので、入手方法は下のツイートを参照してください。ということで、そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

“サイケデリックなサイ”と「3色の筆塗り」で仲良くなった話。シタデルコントラスト スペースウルフ・グレイ

▲海洋堂ARTPLAのサイは、成型色がパープルでまさにサイケデリック! この色を活かしながら楽しんじゃうぞ

 海洋堂ARTPLAで発売されているかっこいい動物たちを、シタデルカラーの染め塗り塗料「コントラスト」をメインに使用して塗装を楽しんでいるフミテシ。今回は「シロサイ」を塗ってみようと思います。使用する色は、「スペースウルフ・グレイ」という青みの強いグレーをセレクト。サイをウルフで攻めますよ。

▲使用したのはスペースウルフ・グレイ、アグラックスアース・シェイド、ホワイト・スカーの3色です。全て水だけで薄めたり、筆を洗ったりできる手軽さが最高。海洋堂のARTPLAとの相性抜群です

 コントラストは、下地を白または明るいグレーに塗ったものの上から使用します。そこでサイに白スプレーを塗るのですが、あえて上面だけにしてみました。というのも、成型色の紫が影色に活かせるのでは!! っと思ったんですね。薄い紫と白い部分でコントラストの染まり具合にも差ができて、より表情が出るとイメージしたのです。レッツチャレンジ。

▲スプレーを上から吹き付けて、影になる部分には成型色の紫がうっすら残るようにしました
▲スペースウルフ・グレイで染めます!! 染めたら、なんか成型色の紫がかなり主張してきたぞ

 スペースウルフ・グレイの青みあるグレーと紫が反応して、独特の雰囲気に……。しっかりと下地の白が乗っているところは、青みあるグレーになっていますし、成型色が残っているところはディープパープルになり、ぐっと陰影がつきました。下地の乗せ具合で、各所にこうも差が出るのには驚きました。

▲影部分はより紫に。すごいメリハリがつきました
▲体表のディテール部分を、明るい白「ホワイト・スカー」でドライブラシしてみます

 動物の体表は、よく擦れる部分が白っぽく明るく見えたりします。ここはドライブラシ(ドライブラシの解説は下のリンク記事から読んでね)で表現してみましょう。シタデルカラーで最も明るい白「ホワイト・スカー」が便利です。

▲ささっと筆を擦り付けるだけ。白が入ることで。各部のメリハリが強いグラデーションも落ち着いていきます。そして体表のディテールもよりくっきりします

 最後にシタデルカラーのスミ入れ塗料的役割の「シェイド」から、茶系の「アグラックスアース・シェイド」をセレクト。シャバシャバの塗料で、全体にさっとひと塗りすれば完成です!

▲40分でサイが完成!! 

 成型色をすべて隠蔽せずに、影部分だけ成型色の紫を活かしてみたことで、メリハリある独特な雰囲気の「サイ」が完成しました。実際のサイはもっとグレーだったり茶な感じかもしれませんが、僕的には大満足。

 水と筆だけ用意すれば塗装が楽しめるシタデルカラーと、手軽にかっこいい動物プラモを作れる海洋堂のARTPLAは最高の組み合わせだと思います。とっても楽しくて、短時間で成功体験を味わえること間違いなしなので、ぜひ楽しんでください!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

そのプラモデルを三越に飾りたい/金属色に輝くスレイプニール

 海洋堂のアートプラ、スレイプニールを組んだ。けっこう大振りなパーツが多くて、パーツ同士は速乾タイプの接着剤を使えばノンストップで組み上げられる。ロボットとは違うし、ミリタリーフィギュアに見られるような人間の肉体や衣服とも違う、有機的な曲面が存分に味わえるのが良い。そんでもってパーツの組付けは絶対に迷わないようにすべてのダボ(ハメ合わせ箇所)の形状が考えられているのもすごく良い。ただ組んでいるだけで、めっちゃ楽しい。

 ん〜かっこいい。大ボリュームかつ繊細な造形が一気に手に入るプラモというのは、緻密さ繊細さをパーツ数でカウントするのがトレンドになっている現代ではなかなか少ない。可動部がないのも高速道路のような快適な組み味に寄与していると思う。んでもって、完成見本……というか設定ではかなりこまかい塗り分けの多いキャラクターなのだけど、これをマスキングや筆塗りで仕上げようとしたらかなりの手数がかかりそうだ。一応各ユニットをバラして塗れるように仮組みしたけど、他にも作りたいプラモは山盛り。そういうときは、プラモを彫刻として楽しんだっていい。

 プラスチックの色はほんの少しパール感のある淡いブルーグレー(とてもこだわって調色されたもの)なのだけど、彫刻の陰影がバキッと見えるのはやはり金属色。透けをなくして金属光沢を強く出したければ、下地に黒を吹くと効果的だ。ツヤのあるブラックをスプレーしてから、GSIクレオスの「Mr.カラー スーパーメタリック2」から、スーパーカッパーという塗料をチョイスして吹き付けた。筆塗りだとキレイな金属光沢にはならないので、エアブラシを持っていない人はイージーペインターを使うのがオススメ。

 台座はGSIクレオスのGXレッドゴールドで塗装。これでもかというくらいゴージャスな見た目になって、まるで百貨店の最上階にいるような気分になってきた。もしこれがプラモデルだって知らない人が見たら、きっと驚くはずだ。最初は銅が酸化して青錆をまとった状態にするのもいいかな……と思ったけど、この神々しい見た目に大満足。これなら特別塗り分けるテクニックやツールがなくても彫刻が存分に楽しめる。プラモの造形を味わうにはもってこいの、民主主義的塗装法だとあらためて確信した次第。みなさんも、ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

「プラモが木になる塗料」で、憧れのウッドデッキをゲットだぜ!!/シタデルカラー コントラスト ワイルドウッド

▲ウッドデッキ! 自宅に欲しいな〜って憧れたもんです。プラモで作っちゃおうぜ!!

 海洋堂のプラモブランド「ARTPLA」で楽しめる、最高にカッコかわいい動物たち。フミテシ動物園開演を目指して、毎週ひとつずつ、このシリーズのプラモを作って塗っています。今回は動物たちを眺めるスペースとしてキット化されている「ウッドデッキ」を作ってみました。「観光客とアフリカゾウセット」にウッドデッキは入っています。

▲ナースホルン(ドイツ語でサイ)にエレファントです!!! 救援を求む!!

 ウッドデッキがあることで、動物たちの場所に「ヒト」が登場するスペースを確保できます。より動物園らしくなりますね。ウッドデッキが無いと、まじ野生まっしぐらでサバイバルな展開確定です。ウッドデッキという名前でも、こちらはプラモですので、サクッと木にしちゃいましょう。今は塗るだけで「木」になる便利な塗料があるんですよ。

▲その名もワイルドウッド!! シタデルカラー コントラストにラインナップされている直球すぎる名前の塗料です。

 白や明るいグレーの下地にさっと塗るだけで自然なグラデーションに染まっていく便利な塗料「シタデルカラー コントラスト」。多数の色がラインナップされていますが、その中でも私のおすすめベスト3の1色がこの「ワイルドウッド」です。このウッドデッキも、10分で完全に「木」になります。

▲何色やねん? って感じの色。樹液みたい

 シタデルカラー コントラストはシャバシャバの塗料。筆で塗っても厚塗りになることは無く、薄い塗膜で模型を染め上げます。暗い色の上からは染まりにくいので、必ず白や明るいグレーの上から塗ってくださいね。

▲ウッドデッキの成型色は白なので、この色を活かします。水性プレミアムトップコートのつや消しを塗ると、よりしっかりとコントラストが定着します。プラに塗料が弾かれることが無くなります
▲全体に塗り広げるだけでこの通り!!! ちょっと濃いめな「木」が爆誕します!!
▲完成!! 飴色な木になりましたよ。色が濃いなと感じたら、この上から明るい茶色をドライブラシするとさらに良い感じになりますよ

 動物たちに馴染む「ウッドデッキ」。いいですね〜。さっとひと塗りするだけで、こんなに「木」の雰囲気を味わえるワイルドウッド。一度使ったらまじで病みつきになりますよ。1本あれば木の塗装に困ることはなくなるので、まじでオススメです。ぜひゲットしてください!!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

最高の造形のアフリカゾウを最高の塗料でお出迎えした話。

▲海洋堂のARTPLAの動物シリーズは、造形もパーツ分割も最高! かっこかわいい動物を気軽にプラモで楽しめるのでみんなも作ろう!

 週1個、海洋堂のARTPLAの動物を組んだり塗ったりするのが僕の楽しみ。いつかフミテシ動物園を我が家に開園するのが目標です。現在はハシビロコウ1匹。まだまだ先は長いですが、やっていきます。今回はいきなりの大物「アフリカゾウ」を我が家にお出迎え! パオーンと聞こえてきそうな最高にかっこいい造形にもうメロメロです。そして成型色をホワイトにした海洋堂さんに、マジでスタンディングオーベーション。僕の大好きな水性塗料「シタデルコントラスト」で、すぐ塗れます。動物を塗るのにもマジで最強の塗料です。

▲象は2色使って塗ろうと思います。左が「シタデルコントラスト バシリカヌム・グレイ」、右が「シタデルカラー シェイド セラフィム・セピア」です

 動物をお手軽にカッコよく筆塗りできる技法が「染め塗り」。白や明るいグレーのものに、シャバシャバの塗料を薄く塗って染め上げる技法です。その染め塗り専用の塗料が「シタデルコントラスト」。造形の細かい凹凸に勝手に流れ込んでいくので、自然なグラデーション塗装が可能となります。象のプラモは最初から白なので、この色を活かせるんですね! コントラストのバシリカヌム・グレイで染めた後に、シェイドのセラフィム・セピアを重ね塗りしようと思います。

▲バシリカヌム・グレイはこげ茶寄りのグレー。チャコールグレーのような雰囲気です

 アフリカゾウと調べると、グレーの強いもの、ほぼ茶色のもの、グレーと茶が入り混ざったようなものとさまざまな写真が出てきます。「まじで生きる戦車じゃん」とか思いながら、色のイメージを膨らませていきます。動物の色って意外と知らないもんで、調べるとさまざまな発見があって楽しいです。プラモを作りながらちょっとだけ頭が良くなれます。

▲プラスチックにそのまま塗るよりも「つや消し」スプレーを吹くと、より塗料が定着します

 コントラスト、シェイドはとても薄い塗料なので、ツルツルのプラスチックにそのまま塗ると、塗料が弾かれてしまうことがあります。そこで「水性プレミアムトップコート つや消し」を吹きましょう。水性で匂いもマイルドなので、ベランダや窓際でさっと吹けます。スプレーすることで表面に細かな凹凸ができてツヤが消えます。こうすることで塗料がしっかりと定着し、綺麗に染まります。

▲後は難しいことは考えずに全体にバシリカヌム・グレイを塗るだけ。塗料が溜まりすぎた場合は、筆で伸ばすか、筆先で余分な塗料を吸ってあげましょう
▲15分でいい感じのアフリカゾウに!! 牙は染めないようにしました

 この状態でもめっちゃ良いのですが、僕は牙を黄ばませたいのと、全体に赤みを追加したいので「シタデルカラー シェイド セラフィム・セピア」を塗ります。シェイドというのは、コントラストよりも染まる力がマイルドで、スミ入れしたり、表面に陰影を追加したりするのに使う塗料です。この塗料も白い物の上から塗るとうっすら染まる特性があります。

▲さっとひと塗りするだけで、牙が黄ばみました! めちゃくちゃそれっぽくなりましたね!
▲赤みを足したいな〜って部分にペタペタと塗っていきます
▲アフリカゾウ爆誕!! ドライヤーを使って乾燥させながらやれば、30分で塗り上がります

 ARTPLAの動物たちは造形が最高すぎるので、シタデルコントラストやシェイドで染めるだけで大満足な完成品をゲットできます。カッコよく塗れたぞ! って思えるものを週1のペースで棚に飾れるので、めっちゃ楽しい&嬉しい気分になれます。そしてプラモが大好きになれます。派手な動物ならまだしも、たいていの動物は少ない色数で塗れますので、用意する塗料もコンパクトで済みますよ。シタデルカラーを揃えながら動物を塗っていくのもオススメです。最高の造形と最高の塗料が生み出す楽しいプラモ体験を、あなたもぜひ楽しんでください!!

▲ハシビロコウもバシリカヌム・グレイで塗っているよ!! フミテシ動物園に次は何が来るのか!? お楽しみに

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

動物プラモを最速でいい感じに塗装できる塗料は「シタデルカラー コントラスト」です!/「バシリカム・グレイ」

▲海洋堂ARTPLAの動物たちは、筆塗りがめちゃくちゃ楽しめるプラモだよ! ハシビロコウ、かわいい〜〜

 海洋堂のARTPLAの動物たちと、ゲームズワークショップが発売する“染め塗り塗料”、「シタデルカラー コントラスト」は、相性抜群でした。誰でもひと塗りで、いい感じに動物を塗れと断言します!! 楽しすぎて他の動物もガンガン塗りたくなること間違いなし!! 今回はハシビロコウを「バシリカヌム・グレイ」という色で塗ってみました!

▲オレンジのプラスチックを、このバシリカム・グレイでハシビロコウに染め上げる!!
▲コントラストを塗るときは、下地を白か明るいグレーにします。缶スプレー以外に、もちろん筆塗りで白を塗ってもOKだよ!

 シタデルカラー コントラストは無臭で、水と筆があればすぐに塗装を楽しめる水性塗料。白い下地や明るいグレーの下地を塗った上から塗ることで、模型の凹凸に沿って自然に塗料が流れていき、グラデーションのように染め上がります。バシャバシャと染めるだけなので、塗装が苦手な人でも筆とコントラストがあれば、楽しく塗装デビューできちゃうんです。

▲蓋を開けるとシャバシャバの塗料が入っています。

 コントラストの難点は、容器の中の色と染めた時の色のギャップが結構あること。そのため実際に塗ってみないとどんな色になるのかわからないこともあります。それもあったので、nippperでは様々な模型に塗って、こうやって記事にしています。特に黒やグレー系のコントラストは、蓋を開けるとどれもが墨汁のようで、塗料だけではマジで判断できません。

 また色によって染まる力も異なります。さっと塗っただけでバキバキに発色するもの、下地を透過して淡いグラデーションになるもの、ほんのりと薄いレイヤーを被せたくらいの色変化をもたらすものなど様々なのです。

▲下地の白がいい感じに透過して明るいグレーになります! これはいいですね

 バシリカヌム・グレイを塗ってみると、色味はその名の通りグレイで、下地を完全に隠蔽せずに透過させてくれました。ハシビロコウの羽の線部分に濃い塗料が残り、表面はうっすらと染まる感じがとっても良い感じです。

▲5分で間も無くハシビロコウ! コントラストは乾燥するとツヤ消しになり、色味もよりしっかりと出てきます

 これがシタデルカラー コントラストの実力です。筆で各部をひと塗りしていくだけで、勝手にいい感じのグラデーションが生まれます。この「楽しくいい感じに塗れた!」という成功体験を、短時間で味わえる塗料はそうそうありません。

▲嘴はインペリアル・フィスト、地面はガラガック・シューワーというコントラストで染め塗り。合計15分でハシビロコウが爆誕しました

 動物のように皮膚や筋肉、羽毛といったディテールが細かいものをなんとなくいい感じに、しかも短時間で楽しめるのが「シタデルカラー コントラスト」の良いところ! 難しいことは一切なく、その動物らしい色をさっと筆で塗るだけで、塗料が勝手に流れていき、染まります。ぜひ海洋堂の動物プラモと、コントラスト1本を用意して楽しい筆塗りタイムをお過ごしください!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

天才の造形がプラモデルで誰でも味わえる時代を喜びたい/海洋堂 スレイプニール

 そのシャープネス、凶暴につき。

 出渕裕によるコミック作品『機神幻想ルーンマスカー』より、「機械神〈ルーンマスカー〉スレイプニール」が海洋堂よりプラスチックキットとして今月発売されます。プラモデルを触ったことがある人なら、上の写真からパーツの尖り具合がわかるはず。ツノに入った螺旋状のディテール、艶めかしい曲面とエッジに目を奪われます。このプラモ、完成後は動かないし全体はわずかに青みがかったグレー単色のプラスチックです。しかしそれがいい。そうである理由をみんなに味わってほしい!

 原型を作ったのは谷明(たに あきら)という人。模型にちょっと詳しい人は「天才」の名をほしいままにするすごい原型師であることは知っているはずです。でもそうじゃない人は名前も知らないかもしれません。なぜならひと昔前まで、天才の造形は原型をそのまま複製して頒布する「ガレージキット」という形態でしか、その造形の真髄を味わうことができなかったから……(もちろん、食玩や一部の完成品フィギュア、プラスチックモデルなどでも「原型/谷明」を楽しめましたが、これほど体積が大きなものは皆無だったと言っていいでしょう)。

▲左が海洋堂のスレイプニール、右がマックスファクトリーのサーバイン。どちらも出渕裕デザインのキャラです

 しかし、最近はマックスファクトリー製のサーバインなど、「プラモのことなんも考えてなかった造形(たとえばガレージキットや昔のソフトビニールキット)をプラモデルにする」という機運が生まれつつあります。これは手で作られた原型(あるいは製品)を3Dスキャンしてポリゴンデータにしてから金型を作るためのCADデータを作る……というデジタルなプロセスの進化により、ここ数年で急速にクオリティが上がった分野です。

 今回のスレイプニールがどんなプロセスで立体化されたかはわかりませんが、「原型師の作った造形がそのまま無可動単色の彫刻としてプラスチックモデルになっている」ということがめっちゃ大事だし、それを誰もが普通の模型店で買って、普通にプラモデルに使える道具で組めるというのがものすごいことなんですよ。天才と呼ばれる人間の造形が、ニッパーと接着剤さえあれば目の間に現れるということの素晴らしさ。

 しかもね、指先に刺さったら怪我するかもしれないとか、そういう気配りなしの、問答無用の激シャープな造形。尻尾の先の毛の流麗な流れと、その先端のトキントキンに尖った彫刻から「原型師が思った通りの彫刻をそのまま受け取っている」ということがダイレクトに伝わってくるわけです。安全基準とか製造上の都合でサキッチョを丸めたりしない。尖ってるもんは、バキバキに尖った状態でお届けします。産地直送、味そのまんま。危険で、甘い。

 プラスチックモデルだから薄いパーツを恐る恐る合わせる……なんてこともなく、どういう原理なのかひたすら分厚いパーツがあったりして、案外組み味はドシン&バシンとダイナミックな感じなんです。「きれいな造形は組むのも難しいんでしょ〜?」とか言わずに、ニッパーと接着剤だけ用意してください。塗らなくてもわかります。ただ切って貼るだけで目の前にすごい彫刻が出現するの、けっこうすごい体験です。それはウォーハンマー的でもあり、サーバイン的でもあるんですが……。

 機械と有機体が合体したような馬の首。異なる曲面をもった装甲板が4枚重なっているところに、左右二枚合わせで作ったたてがみを取り付けます。こんな組み合わせ、正直20世紀のプラモデルだったら絶望的に合わないのが当たり前だったのです。21世紀になっても、10年前を振り返ればイギリスのゲームズワークショップ以外にちゃーんと実現できている会社なんて、なかったんです。いやいや、本当に合うの?

 なんら問題なく、しっかりと隙間なくくっつきます。接合ラインに流し込みタイプの接着剤を流せば、天才が思った造形が誰の目の前にも、確実に現れる。工作の民主化。造形の民主化。プラスチックという、切るのも貼るのも塗るのも容易な素材で、どんな人でも素晴らしい彫刻が組み立てられていくさまを楽しめる。じつはみなさん、いま大革命のさなかに生きているんです。動かないこと、でもそこに強烈な意思のこもった造形があること。これを応援すれば、いつかすべての「かっこいいもの」が、プラモデルになるかもしれません。その一歩を、まずはこの品で。みなさんも、ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

「フィギュアにデニムを穿かせたい」ならこれを塗れ!! シタデルコントラスト ウルトラマリーンブルー

▲ミニチュアゲーム『ウォーハンマー』の最強アニキ集団・スペースマリーンのウルトラマリーンの青! これがデニムになる!

 兵隊さんやお侍さんと言ったものだけでなく、普通の人の人形プラモも増えてきました。そういうのを見ると、僕はデニムが好きだから、ズボンのパーツにデニムのような青を塗装して、大好きな日常着を纏わせたいと思ってしまいます。しかし……デニムって色落ちとかのグラデーションがかっこいいじゃないですか……一瞬筆が止まります。あの雰囲気をなんとかいい感じに塗装できないかな〜って考えていたら、良い塗料が見つかりました。「シタデルカラーコントラスト ウルトラマリンブルー」です。

▲蓋を開けるとインディゴっぽいブルーとご対面。これはいけそうですね!

 「コントラスト」は、白い下地や明るいグレーの下地を塗った上から塗ることで、模型の凹凸に沿って自然に塗料が流れていき、グラデーションのように染め上がります。バシャバシャと染めるだけなので、塗装が苦手な人でも筆とコントラストがあれば、「なんか良くね?」って思える塗装ができちゃうんです。早速白いスプレーを拭いたフィギュアにウルトラマリンブルーを塗ってみましょう。

▲さっと塗るだけでシワのところに濃淡が現れた!! 自然に塗料が流れて、いい感じのグラデーションになってます
▲お気に入りはフィギュアの右モモ〜ヒザにかけて。ブルーのグラデーションがなんともデニムっぽい

 このお姉さんは、動物園の飼育員さんのプラモ(1/35スケール)。塗装したパンツの色を見ると、作業後に太モモで手を拭いたり、よく右ヒザをついて作業してるのかな〜ってのがイメージできるデニムの色になったと思います。ウルトラマリンブルーがあれば、1/35スケールくらいの小さなフィギュアのスボンに、経年変化したデニムの青が塗れるんです! そしてデニムは日常着の代表。一気に普通な人のプラモになって、さまざまな模型と合わせられるようになります。ぜひウルトラマリンブルーで、プラモに日常を纏わせてください! またね〜〜〜。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。今夜は赤ちゃんゴリラと乾杯です。「ARTPLA 飼育員と仔ゴリラセット」

▲乾杯! ウホ!!

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でご紹介する「花金プラモ」。今週は動物園の人気者たちと触れ合えるプラモ「ARTPLA 飼育員と仔ゴリラセット」をご紹介します。飼育員と仔ゴリラといってもこの商品は他に仔キリン、ハイエナ、仔サイ、ツチブタもラインナップされています。ひと箱ずつ摘めますが、BOXで買って一気にコンプリートしちゃうのがオススメです。

▲こちらA〜Cの3セットがラインナップされていて、それぞれ成型色が2色あります
▲BOXを開けると、クローズド仕様(中を開けるまで何が入っているのかわからない仕様)で梱包されています。店頭ではこの単品版でも売られています

 箱を開けると小さなランナーに、かわいい動物たちがみっちり。しかもそれぞれのセットは、成型色がとっても鮮やかなブルーとピンクで、さらに可愛さ倍増なのです。実際の動物は、それぞれ色が異なるので、このようにキャッチーでかわいい色を成型色として選択しているのは大正解だと思います。

▲各セット、ブルーとピンクの2種の成型色でラインナップ。二つのパーツを混ぜて組んでも楽しそうですね!

 組み立ては、糊代や軸が大きく取られているのでとってもスムーズに楽しめます。ニッパーと流し込み接着剤1本あればOKです。

▲動物の体を接着していくということ自体が、すでに楽しい! パーツ分割も考えられているので、組み上がった後にどこで分割されているのか分かりにくいようになっています
▲武器ではなくエサ。草食動物に与える草を持った飼育員さんのプラモなんて、これまでなかったでしょ!
▲どでかい哺乳瓶を仔ゴリラに渡すミューズ。ブロックと柵のパーツを置けば、情景が爆誕します

 週末に動物園に行くのも楽しいけど、動物園のプラモを作るってのもまた楽しいことでしょう! ここまで完成度の高い仔ゴリラや他の動物、そして飼育員さんたちを短時間で楽しめるプラモはARTPLAしか存在しません。しかも人と動物を一緒に置くだけで景色ができるようなキット構成になっています。動物園の中でありそうな素敵でワクワクな景色をぜひ、あなたの手で組んで楽しんでくださいね。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

 

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。仏像界のビートルズ「四天王像」が遂にプラモでやって来た!/「ARTPLA 四天王像 広目天」

▲先頃発売された広目天(右から2番目)で、海洋堂ARTPLA 四天王像がコンプリートしましたよ!! 全部成型色が違うの最高です!

 週末の模型ライフが楽しくなっちゃうプラモを、フミテシの独断と偏見でご紹介する「花金プラモ」。今週はあなたのお家の守り神になる!? 海洋堂ARTPLAの「四天王像 広目天」をご紹介します。この広目天が四天王像シリーズ最後の一体として発売され、めでたく4体揃うことになりました!! 「4」という数字は絶妙なバランスですよね。ビートルズ、ブラジル代表の黄金のカルテット(ジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョセレーゾ)などなど心ときめく塊感を演出できる数字。

 そんな「4」という塊のかっこよさを、人類史において圧倒的に先取りしていると言っても過言ではない四天王像を、プラモであなたのお家にお出迎えしちゃいましょうぜ。マジでかっこいい〜〜。

▲プラモだったら接写し放題。これであなたも土門拳!!!(マジでかっこいい仏像の写真を多数撮っているすごい写真家です)

 本シリーズは4体とも成型色が異なっているので、組み立てるだけで最高の景色が爆誕します。ちょいメタリックな感じが俺のハートをガッチリキャッチ。間も無く立派なメタルアニキです。異なる成型色は、それぞれが何なのか見分けるのにも役に立ちますね。

 甲冑に施されたシボ加工や衣服の重なり、迫力ある表情など見どころ満載。さらに各パーツがピタ〜っと合う精度も素晴らしいので組んでいて非常に楽しいプラモとなっています。40分あれば、初めてでも完成しますよ。

▲ランナーは全部で3枚。台座もセットされます。小さなパーツもないので、ピンセットを使用しなくても組めました
▲甲冑の細かな凹凸を表現したシボ加工。く〜〜、めっちゃかっこいいです
▲僕たちが見る「木から掘り出された仏像の布感」がプラモで表現されています。柔らかすぎない、絶妙にエッジが立っている感じがまさにそれです
▲僕の1番のお気に入りが「耳」。どでかい羽付き耳になっていて、この羽根部分を頭部の中にすこっと収める瞬間がめっちゃ気持ちよかったです。そしてとても取り付けやすかったです

 このキットは流し込み接着剤があればスイスイ組めます。各パーツ分割も複雑ではないので、パーツの取り回しもしやすいです。

▲どでかい足の合わせ目に、流し込み接着剤を流すだけ! これで一気に形になります
▲台座は原木から削り出したような荒々しいものとなっています
▲合体!! 各軸は、取り付け位置がきっちり決まるように大きい&ベストポジションになる専用の軸形状となっているので、ガッチリ組み上がります
▲この目力こそ「広目天」!! 爆誕であります!!!

 たった40分で1体完成です!! 160分あれば4体作れる!! こんなにもハイクオリティが四天王像が令和の世にあるなんて素晴らしいですね。パーツ分割も面白くて、まさにこれこそ現代の寄木造であります。作れば徳も上がること間違いなし!! 花金の向こう側(土曜日)が平和に迎えられることでしょう。「海洋堂ARTPLA 四天王像」、最高に面白いプラモなのでぜひ作ってください!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

平筆一本で百獣の王を手懐ける/ライオンのプラモデル、何色に塗る?

 忙しいわけではないんだけも暇でもないときってあるじゃないですか。ちょくちょく用事が発生するのでまとまった時間が取れるわけでもない。そんな微妙なコンディションでも遊べることを期待して玩具屋のレジ横から一つのキットを買いました。海洋堂の「アートプラ 1/35飼育員とライオンセット」です。 

▲ライオンと飼育員……と書き出して気づく。逆だ。zooをzooたらしめるのは誰か。

 飼育員のミニチュアで森羅万象を飼いならすぞ! なんて意気込んで買ったんですが、ブラインドパッケージなので何が入っているかはわからない。

▲うわぁ、ネコだ!ネケチェンだ!!

 箱から出てきたのは毛でフッサフサの造形。あー、飼育員じゃなかったか……と落胆するのも束の間。生物と認識し難いぺったんこなパーツがあります。なんだこれ?と考えること一秒、地面と接するお腹の裏側部分の造形と気づきます。twitterで回ってくるネコ画像(ガラス天板の上に居座る猫を下から撮った写真な!)にこんなのあった。大当たりじゃねぇかこれ!

▲ニャーン

 スナップフィットじゃないので接着剤をちょろっと使いますが、そんなちょっとの手間に「組んだ感」があって気持ちいい。パーツ数も最低限でツルっと平らげられます。

 ポップな成型色も組み上がると何故か自然というか、野生を感じてよろしい。もう満足したし終わりかな〜なんて思っていたら通話中の友人が一言。「金色にしたら面白くない?百貨店の入口みたいで。」

 いいね。やりましょう。

▲塗り分けもないので秒で完成です。

 シタデルカラーを平筆でペロペロと塗っていくと、さっきまで見えてなかった細かな造形が見えてきます。こりゃあ塗ったのは正解だったな!とテンション上がると同時に不思議な事が起きていることに気づきます。

 「リアル」なんです。金。

 メタリック色が周りと同化する迷彩的な効果を持つからなのか、それとも毛という物自体が有するツヤ感を擬似的に表現しているからなのか。まぁ長渕剛も金色だって言ってましたしね。ライオン。

▲背中から尻にかけて箸がシンデレラフィットします。

 ……というわけですっかり気に入ってしまったこちらのライオン。みなさんもぜひ組んで塗ってください。お陰で私は一週間くらい機嫌よく過ごせましたよ!

マニアーーー

ミサイルとasimoとチャットbotは全部同じロボットに見える1996年生まれのサラリーマン研究者(工学)

ヴァイシュラヴァナに似合う色を探して/海洋堂 ARTPLA 多聞天

 仏像のプラモ、組むのは面白いし出来上がるとカッコいい。プラスチックの色は濃紺なので組んでそのまま置いといてもまあ嫌な感じはしない。とはいえ、なにか自分なりに手を入れたものになっていてほしいという贅沢な気持ちもある。寺にあるような古色蒼然としたものや、本来そうであっただろう極彩色でもいいだろうけど、それはあまりにも模型的で、仏像を自分で組み立てるというどことなく畏れ多い体験とはちょっとマッチしないなと思ったりする。

 同じシリーズの持国天が深緑のプラスチックだったので、多聞天がなんともいえないネイビーで成形されているのには正直面食らった。四天王像なので、同じ色で並ぶだろうと思っていたのだ。このまま行くと、たぶん4つとも色違いで発売されるのだろう。

 さて、このプラモをどうしたもんかな……と脳の片隅で考えながら、クリスマスに金沢へと旅行に出かけた。目的はあまりなかったのだけど、ホテルにチェックインするなりベタに金沢21世紀美術館へと向かい、そこで後頭部を鈍器で殴られるような衝撃を受けた。調べもせずに行った企画展、『時を超えるイヴ・クラインの想像力―不確かさと非物質的なるもの』が圧倒的に良かったのだ。

 モノクロニスムの旗手として活躍し、夭折したフランスの画家、イヴ・クライン。彼は青を「宇宙の神秘的なエネルギーに通じる最も非物質的で抽象的な色」と位置づけ、わざわざ「インターナショナル・クライン・ブルー」という顔料を開発させ、それでカンバスや樹脂製のヒトガタを塗りつぶしたりした。挙げ句「顔料そのものが純粋に存在しているのがいちばんアツい」と考え、床に顔料を敷き詰めた状態を至高の美とした。そしてそれらは確かに美しかった。

 帰宅して、多聞天の説明書の裏側に印刷された「組み上がった状態」が真っ青であったことに、なんか運命的なものを感じる。クラインは青と同じように金の持つ不思議な性質(精神性や象徴性)に興味を惹かれていた。どちらも仏教的だと感じるし、日本の文化にも通暁していたクラインならこのプラモをたぶん金と青に塗っただろう。

 手持ちの青系の塗料にシアンとツヤ消し剤をたっぷり混ぜて、これでもかと厚塗りする。台座と持物(じもつ)はスーパーリッチゴールドでキラッキラに輝かせる。パーツを組み合わせて立たせ、ああこれは確かに宇宙的だなと感じ入る。金沢で買わなかったのに、金沢土産がそこに立ち現れたようで、思い出深いプラモデルになった。

からぱた/nippper.com 編集長

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プラモになっちゃいけないものなんて、ない。/海洋堂 観光客とアフリカゾウセット

 もう今年の干支はゾウでいいよ、ゾウで。それくらい心の中がゾウに占拠されてしまった。正確に言うと「ゾウを取り巻く環境」がプラモデルになっているんですよね。ゾウがプラモになるのはギリギリ誰でも理解できると思う。デカいし、人気あるし。でもさ、デカくて人気のあるものだけがプラモになる権利を持っていたんだっけ?

 ゾウは大きい、そして人気がある。これはゾウと対比できる建造物やそれを眺めて嬌声を上げる観客がいてこそ表現できるんだよな。ゾウがただそこにいるだけでは、ただの縮尺模型だ。情景というのは、ゾウの持つ特性をブーストしてくれる。

 動物園の門とゾウを眺めるためのウッドデッキ。凱旋門とかブランデンブルク門ならデカくて知名度があるけど、想像上の動物園のプラモデル、ヤバくないっすか。石垣とか牛骨の飾り物とか、茅葺きの屋根とか。ウッドデッキに至っては、動物の説明パネルが並んでいなかったらもうログハウスかもしれないし滝を眺める展望台かもしれない。でもこれらはゾウを盛り上げるために絶対に必要だった。だから海洋堂はこれらをプラモにしたのだ。

 もし「動物園の門のプラモデルです」って言われたら誰も買わないだろうけど、ゾウとセットで売られると「うわ〜、動物園のゾウだ!」という認識が生まれる。ここはサバンナじゃない。動物園なのだ。

 パーツが分厚い。ひたすら重たい。金型というのはとんでもなく金のかかるものだが、それで動物園の建造物を作るというのはかなり勇気のいることだろう。頑強で美しい彫刻の門と、ウッドデッキがみるみる組み上がっていくのは本当に不思議な体験だ。さっきまで欲しいかどうかもわからなかったモチーフが、「いやいやいや、こんなものをプラモデルにしてくれてありがとう。しかもなんか、めっちゃ出来いいじゃん」とコペルニクス的転回を遂げる。組んだらわかる。すごいんだから。

 ゾウだって当たり前じゃない。ゾウのプラモ、組んだことないし。そうか、口があってその上に鼻があって、牙は上顎から鼻の両脇に伸びる。言われてみりゃ当たり前なんだけど、こうやってバラバラにされると「ゾウの構造」といういままで考えもしなかったことが自分のなかに手応えとして残る。プラモって、可笑しいね。

 ゾウを眺める人たちは1/35に縮んでいる。双眼鏡を覗く人、柵にもたれかかる人、柵の下段に手をついて身をちょっと乗り出すようにしている人、そして自撮り女子。4者4様、ゾウの楽しみ方はまちまちだ。もちろん柵の外にいるのはゾウじゃなくてもいい。キリンでも、戦車でも、驚くような宇宙船でも。観客がいて、見られる対象物がある。その関係性がプラモデルになっているのが面白いのだ。

 ゾウ単体のプラモは必要だろうか?門やウッドデッキのプラモは?自分の食指が動かないものを捕まえて「誰得www」と笑うのは簡単だ。しかし、それらが合わさることで意味が変わることを忘れちゃいけない。いまこうしてゾウを取り巻く景色を眺めながら心の底から思う。「このプラモは、ほしかったやつだ」と。すべてはイマジネーションであり、順列と組み合わせだ。ただの縮小模型がお互いに情報を補強しあい、いままでありそうでなかった景色を作り出す。この世にプラモデルになっちゃいけないものなんて、ないのだ。

からぱた/nippper.com 編集長

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誰でもジオラマの地面をかっこよく塗装できる「4色」お教えします!/海洋堂 ARTPLA 飼育員とシロサイセット

▲この4色さえ持っていれば荒野は完璧!! いつでもカッコよく地面を塗ることができます
▲前回シロサイの地面のレイアウトが完成しましたので、さっそく塗っていきます! 1時間くらいで塗り上がっちゃうよ!!

 誰でも地面がかっこよく塗装できる4色。それはシタデルカラーの……
 ■メカニカス・スタンダード・グレイ
 ■カラク・ストーン
 ■スクリーミング・スカル
 ■アグラックス・アースシェイド
 です。この4色さえあれば、めちゃくちゃいい感じで地面を塗れます!!

▲シタデルカラー全色のカラーチップも掲載!! 日本語表記&英語表記で塗料名も掲載されているのでもう迷わない!!
▲とっても便利なマットメディウム。これを地面に塗って、上から吹きかける土や砂を固定します。1本持っていると地面表現の幅がグーッと広くなります

 地面の粘土がしっかりと乾燥していることを確認してから、地面にふりかける砂を固定するためにマットメディウムを全体に塗ります。粘土のつるつるした地面よりも、砂で粒感があった方かっこよくなります。ヨドバシカメラの鉄道模型コーナーに売っている砂でOKです。

▲これだけでもかなりいい感じですね!!

 こちらもしっかり乾燥させたらひっくり返して余分な砂を落とします。さらに、砂をしっかり定着させるために黒と白のサーフェイサー(下地塗料)を二重掛けしました。スプレーができない場合はそのまま塗装しても大丈夫です。

▲サーフェイサーを吹いた状態。乾いたらシタデルカラーで塗っていきます
▲土部分にはカラク・ストーン、園芸用のウッドチップで表現した「岩」にはメカニカス・スタンダード・グレーを塗装
▲塗料が乾いたら、アグラックス・アースシェイドを全体に塗ります。この塗料はシャバシャバに薄いのが特徴で、全体に塗ることで色のトーンが落ち着くのと、ディテールの立体感が強調されます
▲最後にスクリーミングスカルでドライブラシ!!! 明るい色軽くドライブラシすると、色の情報量が増えてより地面に見えますよ
▲ドライブラシって何? という方はこちらの記事をチェックしてね

 上記で紹介した4色を、この順番通りに塗るだけで、だれでもかっこいい地面を完成させられます!!「さらに情報量を足してみたい!」という人には最後の1手、「草を生やす」がオススメです。

▲ジオラマ用に、このような草が売っています。物によってはテープ付きのもあります。草の固定にもマットメディウムが使えますよ
▲こんな風に完成している草が、シートにたくさん貼り付けられています。これを使いたいぶんだけピックアップして地面に貼ります
▲やった~~!! 俺のシロサイちゃん(プラスチックの色はかわいいピンク)が荒野に立った!! 自然に帰ったぞ

 粘土の乾燥時間も含めると2日(実作業自体は2時間程度で、ほとんどが乾燥時間)でサクッとカワイイベースが爆誕しました。ご紹介した手順やマテリアルで手を動かすだけで、カッコイイジオラマを楽しむことができます。ロボット、戦車、飛行機、車などなど様々な地面に応用できると思います! ぜひチャレンジしてください。

ふりつく

1989年生まれ。模型ホビーを愛してやまない雑食ライター。ステイホーム期間をきっかけにラジコンカーにはまり気味。

ダイソーの100円コースターで、サイのプラモを荒野へ解き放て!!「海洋堂 ARTPLA 飼育員とシロサイセット」

▲100円ショップの木製コースター……これはジオラマベースにぴったり!! 

 100円ショップにちょうど良い感じの木製コースターを発見!!! これを使えば俺のシロサイちゃんを荒野へ送り出せると思い、さっそく「海洋堂ARTPLA 飼育員とシロサイセット」のシロサイ用の地面を作ってみました!

▲くぼみに粘土を詰めるだけ~~。これで8割の作業がおしまいです!!

 100円ショップには紙粘土や造形粘土も売っていますので、一緒にゲットしましょう。あとはこの粘土をコースターの窪みにギュウギュウ(サイ用だけどな!)と押し込むだけ。もう地面ができましたよ。やったね。少し凸凹させるとさらにgood。

▲ウッドチップが「岩」になる!!

 次にこちらも100円ショップの観葉植物コーナーにある「ウッドチップ」を使います。これを粘土に埋めていきます。スキマも爪楊枝などで埋めてしっかり地面に埋まってる感を出してあげましょう。そうすると……木が「岩」に変身!!! 仕上げに岩の色で塗装してあげるとさらに良くなります。

▲地面にシロサイちゃんの足跡を付けると、さらに臨場感アップ!!!

 粘土が乾く前にラップを敷いてからしっかりとサイを接地させる為にむにゅっとして足跡をつけてあげましょう。またサイが歩いてきたのがわかる足跡を、サイの後方につけたりすると、さらにカッコイイ!! 地面の中に時間の流れを作ることができます。

▲あとは1日乾燥させればOK!!! 地面ができた!!!

 丸一日ほど乾燥させたら少し縮んでコースターとの間に隙間ができました。これはこれで良い感じ。あとはお好きな塗料で、地面を塗れば完成です!!
 地面ってなんだか難しそうと思っている人こそ、ぜひこの方法を一度真似してください。粘土を詰めて、岩っぽいものを置く……それだけの工程で得た成功体験が、さらに大きなディオラマを作ることができるベースになると思います!! 気軽に地面を楽しんで、かっこよくあなたのプラモを飾ってください!!

ふりつく

1989年生まれ。模型ホビーを愛してやまない雑食ライター。ステイホーム期間をきっかけにラジコンカーにはまり気味。


「君の大きさはこの女の子ぐらいだよ」/我が家のメートル原器となった小学生のプラモデル。

 海洋堂のARTPLA「キリンと観光客セット」のプラモデルが最高だ。同じシリーズの「ライオンと飼育員セット」と組み合わせると、動物や飼育員、観光客、小道具といったこれまであまり見かけなかったモチーフのプラモデルを手に入れられるが、私が一番良いと思ったのは小学生の女の子と男の子がいるところ。

 屈んでいる女の子は大きさ3.2cmで男の子は3.9cmなので、現実の大きさにするとそれぞれ112cmと136cmの子供。隣に並べた成人男性の飼育員と比べると、大人と子供の大きさの差がきちんと現れているのがよくわかる。この大人よりもずっと小さい1/35に縮尺された大きさの子供が、我が家にとってはとても大切だ。

 保育園に通う5歳の娘が、キリンのブラモデルと聞いて珍しく興味を持ったので隣で作ってあげることにした。「お母さんのプラモデル作って。」「次はお姉さん。」と私に指示を出しながら、完成したキリンやハシビロコウ、飼育員で一生懸命遊ぶ娘に、娘と同じツインテール姿の女の子のプラモデルを渡す。

 「動物さん達と比べると、君の大きさはこの女の子ぐらい。お父さんはこの飼育員さんぐらいだよ。」と教え一緒に並べて見せると、「キリンさんって大きいね。」とその大きさをしっかりと感じ取った様子。身近にいない動物のサイズは大人でもイメージしにくい。世界が広がる途中にある子供にとって、動物の大きさを想像することは尚更難しく、自分に置き換えやすい人形があった方が動物の大きさがわかりやすいようだ。図鑑やテレビでは少しわかりにくい動物の大きさや形といった要素が、プラモデルを手に取ることで補完される。

 手にすることで知識を深められることは、プラモデルを作る面白さのひとつだと思う。そんなプラモデルの面白さが娘の世界を広げる手助けになるのは、親としてとても嬉しいことだ。1/35スケールのプラモデルは他にも色々とある。

 プラモデルとしてはとても珍しい普通の小学生の女の子は、娘がもう少し大きくなるまでは我が家のメートル原器として活躍してくれるだろう。「今度はサイさんやゾウさんも発売されるよ」と娘に話をすると楽しみにしているみたいなので、そちらも買い続けることにしたい。

いたふ

1984年生まれのエンジニア。プラモデルは家族が寝てから製作開始の社会人モデラー。

どんなプラモも「ボクとママのスケール」になる。今日はピカチュウと遊ぶよ。

▲ママ、ママ!!

 ママと子供とベビーカーは、どんな物でも親子と同じスケールの世界に引き込むことができる魔法のプラモデルです。

▲最強のマリアージュ!! これがプラモが魅せる楽しい景色!!!

 一見すればピカチュウは小さなノンスケールプラモデル。そこに小さな見物客が加われば……。ここはポケモンのイベント会場でしょうか? 皆を迎える大きなピカチュウに早変わり!! 

▲手のひらのピカチュウが、僕の脳内で子供を迎える大きなピカチュウに変化したんですね

 プラモデルを組み合わせて見て、リアクションする人形が加われば立派な情景モデルになる。まさにリアクション芸人とも言える凄さが海洋堂の「アートプラ 観光客とキリンセット」中に入っている親子にはあります。キットの中のスマホ女子も良いのですが、より豊かな景色を生み出す装置としては親子にはかないません。どんなものにも物語を与えてくれる最高のプラモデルです。

ふりつく

1989年生まれ。模型ホビーを愛してやまない雑食ライター。ステイホーム期間をきっかけにラジコンカーにはまり気味。

海洋堂 志摩リンとバイクセット レビュー!

 フォトコンテストが開催されます。いまからどんな感じに作るのか妄想しときましょう。そしてアイテムゲットの予約はもう始まっている!……ということで、海洋堂の『志摩リンとバイクセット』です。スケールは1/24。世の中的には「カーモデルでよく見る縮尺」だけど、まあこういうのは好きに作って好きに並べるのがいいよホント。

ARTPLA ゆるキャン△ 志摩リンとバイクセット(22年11月発売)

 透明な袋に説明書やデカールと一緒に入っているランナーは1枚。肌色のパーツがズラッと並んでいて、これを組み立てると志摩リンとバイクと荷物が出来上がるよ、というプラモです。

 バイクはどう見てもヤマハのビーノをモチーフにしたもの。劇中の色を再現できるようにパーツは塗ってから組み立てられるように分割されています。ちなみに同スケールの『タミヤ キャンパスフレンズセット2』に入っていたスクーターと比べるとちょっと小さいらしい。アニメ体型の女の子にちょこっと腰掛けたポーズを取らせると、コレくらいがちょうどイイんじゃ〜と海洋堂スタッフが言っていました。なるほどデフォルメ。

 1/24となると人間の身長はだいたい7cm前後でしょうかね。そうなると顔は小指の先よりなお小さい。ここに目や口を描くのは結構難しい。塗れちゃう人は拡大鏡でも顕微鏡でも使って描いてしまうのですが、キットにはデカールが入っているのでそれを貼ればOKっぽい……。

 と思ったら、デカールの袋の横にプリント済みフェイスパーツが入ってるじゃないっすか!これはありがたいね…….。マクロレンズでめっちゃ拡大していますが、これ小指の先より小さい顔なんですよ(大事なことなので2回言いました)。

 塗装はお好み。劇中のとおりに塗りたければこのカラーレシピで塗ろうね……という指示が入ってますが、これはおそらく説明書のデザイナー古賀学氏のグラフィカルなお遊びだと思うんだよな!だって茶色作るのに赤と黄色と黒混ぜなくない!?これは色んなカラーの四角と番号が並んでいるとおもろい、という感覚をハックするためのデザインですよね絶対。挑発的だなぁもう。

 みなさんは模型店でこの紙を見ながら「そのまま使えそうじゃん!」という塗料を探すといいですね。茶色にもいろいろあるんだなとか、ビーノの青緑ってこのキャラクターの色に似てるな……とか、色についてのいろんな気付きがあるはずです。もちろん、自分の好きな色にしてもいいんです。なぜならこれはあなたのプラモデルだから!

ARTPLA ゆるキャン△ 志摩リンとバイクセット(22年11月発売)

からぱた/nippper.com 編集長

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