8つのタイヤとなにやらフレームが組み合わさったメカ。これを一発でベビーカーだと見抜けたら大したもんです。タイヤの組み付けにはほんの少しだけ神経を使いましたが(そして左右に別れたベビーカーにタイヤを取り付けるだけなのに)小さな小さなベビーカーが出来上がって目の前にあるというのが不思議で楽しい体験でした。
とてもいいな、と思ったのがベビーカーには子供が乗るわけではなく、自分の足で歩く子供とその手を引こうとするお母さんが一緒にプラモデルになっていることです。ベビーカーを右上で掴んだまま、左手でまだまだ小さな子どもに目を向けるお母さん。なんとも言えない重心の移動がジャンパースカートのシワからめっちゃ伝わってきて、「確かに人間ってこうなるよな!」という感動があるんですよね。1/35スケールでは普段ゴワッとした服装の兵隊さんをいっぱい見ているので、なんてことない日常のひとこまがすごく新鮮。
お目当ての動物を見つけ、それを左手で指差しながらいまにも走り出しそうな子供に向けるお母さんの眼差し。小指の先もないほどのサイズでも、すごく優しそうな表情であることがわかります。なんてことない日常を切り取ったようで、すごくドラマチックなんです。組んでてなんだか感動しちゃった。
子供の視線の先には、何を置いてもいいはず。恐竜なのか、動物なのか、クルマでも飛行機でも大丈夫。笑顔で興味の行く先に全力で向かおうとする子供と、ふたつのことに気を取られているお母さんの組み合わせがプラモデルになっている。これってとても当たり前のようで、新しいことだと感じませんか?
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。