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プラモデルで組み上げるザ・ビースト/海洋堂のエヴァ2号機がスゴいんです。

 海洋堂からテストショットを頂いたので組んだぞ、「ARTPLA エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態ザ・ビースト『ジオフロント血戦』」を(キット名が長い!)。プラモデルでこんなに肉肉しい2号機が、ど迫力のポーズとビキビキのディテールで手に入るということがもう最高です。こんな造形、ひと昔前ならガレージキットでしか手に入らなかったもんね。動かない、色分けされてない、なら難しそうだからオレには関係ないや……と思った?塗りたければ塗ればいいし塗りたくなければそのまま置いといても大丈夫なのがプラモデルなんだぜ。

 見えづらいクリアーパーツを含め、ランナー6枚のショータイム。1枚がB5くらいのサイズでなかなかボリューミーですが、開けた瞬間に「うぇっ、パーツがいっぱいある!」という圧はほとんど感じません。なぜならそこに「カタチになる予感」が充満しているから。

 これはどこのパーツなんだ?というワクワク感と、これはきっと腕になるんだろう!という確かな予感がとってもバランスよく目に飛び込んできます。「パーツ状態でも残されている”カタマリ感”を大事にしてるんですよ。ただただカタチを再現するために粉々に分割するとこの感触は失われちゃいますからね」と海洋堂のスタッフが静岡ホビーショーの会場で語っていたのが思い出されます。

 腹の横のお肉がとっても気持ち悪いですね。馴染みのエヴァの姿から大きく変貌したいかにも生き物という質感の弐号機が、硬いプラスチックで表現されているのがいいんです。これを可動モデルにしたら色んなところをブロック状に割って、中に可動ギミックを仕込まなければいけません。でも固定ポーズなら造形を損なうことなく大胆にパーツ分けできます。

 大胆なパーツ分けは、ユーザーに造形をストレートで渡すことに寄与すると同時に、組むときのスピード感も向上させてくれます。芯になるブロックに外装(というか肉的な皮膚的なパーツ)をバコンバコン被せていくと、少ない手数で猛烈に複雑な情報量の多い造形が現れます。しかもね、パーツの合わせ目はビッタリ合うんですよ。ビバ、デジタル技術の進歩。

 組み立てにオススメなのは流し込みタイプかつ速乾のプラモデル用接着剤です。「接着剤を塗ってパーツを合わせて乾かす……」というのは昔のスタイル。いまは「パーツを合わせたところに少量流し込めば数秒で固定される」という魔法のような接着剤が売られています。プラモデルからしばらく離れていた人、初めてプラモデルを作る人、ぜひとも速乾の流し込みタイプを一緒に買ってください。タミヤもしくはGSIクレオスのものが手に入りやすいのでオススメです。

 「モード反転、裏コード……ザ・ビースト!」と叫びながら背中の装甲に食らいつきます。10個の丸い穴からはリミッターがガチョーンと出て来ます。プラモデル的には背中のパーツを重ねて組んでから、リミッターを一本ずつ刺していくことになります。

 ちなみに一般的なロボットプラモよりも大きなパーツが多く、金型的にも深さ方向に厚みのあるパーツが目立ちます。そのためゲート(ランナーとパーツを繋いでいる部分)もランナーから立ち上がっていてニッパーを入れづらいのがARTPLAの特徴のひとつ。ということで、上の写真のようにニッパーを入れ、ゲートの手前でまずはざっくりと切断しましょう。

 それからパーツのギリギリでゲートを切り落とします。複雑な形状をした合わせ目の部分にゲートが残っていると組み立てるときに邪魔をして隙間ができてしまうため、パーツにゲートが残らないようしっかりと処理しましょう。ちょっと残ってるな〜というときはニッパーで攻めずにデザインナイフでキレイに取り除くと吉です。

 外装の内側にリミッターの基部となるタコの吸盤みたいなパーツをいっぱい仕込む工程を経て、外からちくちくとリミッターを差し込んでいきます。スライド金型を使って表面の編み込みホースみたいなディテールと先端の二重丸みたいなディテールが両立した表現になっているのが偉い。そして接着シロも深く取られているので、なにも考えなくても角度がビシッと決まるのがさらに偉い。ユーザーが接着のときに「こうかな? いや、こうかも」と試行錯誤しなくてもいいって、凄いことなんです。

 劇中ではいきなり形態変化してロングショットか超広角のクローズショットでめちゃくちゃ機敏に動いていた弐号機。リミッターがどこから生えていて、どこの筋肉がどんなふうに膨張していたのかなんて、なかなか把握できませんでした。しかしこうやって立体になって自分で組み上げると「なるほど、そこがそうなってザ・ビーストになってたんですね〜」というのが一目瞭然。特に両肩のリミッターの生え方(そして頭部や装甲に対する避け方)とかは立体だからこその納得感がすごい。

 固定モデルの美点は手の表情にアリ!と言ってもいいでしょう。手の甲、親指、力の入った指の演技、そして腕とつながる自然なアウトライン。ちなみにディテールはどこもかしこも深く、固定モデルとは言え塗装の手順もしっかりと考えた分割になっています。マスキング+エアブラシでは大変だと思いますが、筆塗りでイラストチックに仕上げるのが超おすすめ。楽しいんだぞ。筆塗り。

 頭部のサイド〜特徴的な4つの眼はクリアーパーツとソリッドカラー(ボディと同色)の両方が用意されているので好きなほうを選択しましょう。頭部〜首はかなり凝縮感があり、柔らかいところ、硬いところ、機械的に塗りたくなるところと生物的に塗りたくなるところが入り混じった最高の造形。ハイコントラストに仕上げるのなら、組み上げてから(暗色はほっといて)出っ張ったところだけガシガシ塗るのもOKなほど陰影がくっきりした彫刻です。

 使徒を踏みつけて野性的な攻撃を繰り弐号機がそれなりの手応えと思ったより短い時間で完成。「そのまま置いといても見栄えするし、単色のスプレーで石像みたいに仕上げても彫刻作品として優れているし、バリバリに塗って模型的に仕上げても最高」という、パイロット次第で好きに乗りこなせるアイテムです。本当に組んでいて楽しいし、ここからどんなふうに手を入れようかと案ずるのもまた楽しい至高のプラモデル、あなたもぜひ手に入れてください。そんじゃまた。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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