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仏像プラモデルを牛久大仏の様に組み立てる話/海洋堂ARTPLA「広目天」

 牛久大仏の売店で『牛久大仏忽然の貌』という建立工事中の写真集を買った。カーテンウォール工法で鋼板が貼られていくインダストリアルな大仏建立の過程が面白い。ガチガチの鉄骨トラスが徐々に神秘的で滑らかな大仏のフォルムとなり天に昇り詰めていく様はとても印象的で、バベルの塔ではないが、まさに神を作ろうとする人間の業と、それさえ浄土に導かんとする大仏の穏やかな表情のコントラストがなんとも鮮やかなモノクロームの写真集だった。そんな過程の姿に昂ぶったのはたぶん、プラモデル趣味のせいだ。プラモデルは作る過程こそ楽しく、鮮やかだ。

 実物、写真、アニメ、媒体問わず巨大なものを見て感動するとそのプラモデルを作ってみたくなってしまうサガなので牛久大仏のプラモデルを作ろうと思ったのだが、しかし現世にはまだ存在しない商品であるがため、代わりに四天王像「広目天」のプラモデルを組み立てることにした。悪人を罰する神らしい。キェー!

 製作過程の写真は一瞬の煌めき。完成してしまうとわからなくなってしまうが、プラモデルのパーツ分割には個性がある。味がある。豪快なもの。繊細なもの。広目天はどちらの要素も含んでいた。特に頭部は作り易く且つ精密に再現する為に、顔面、耳、後頭部とパーツがサンドイッチ的に分割されている。耳パーツは接着シロが大きく独特だ。流し込み接着剤の筆で合わせ目をなぞるように接着すると、彫りの深い彫刻が忽然と現れる。

 プラスチックで表現される「鉄の鎧の彫刻」の彫刻。あからさまにプラスチックだったものが、自分の技量と持ち合わせた人生の時間を超越し、みるみると緻密な彫刻に変身していく。その過程からは目が離せないのだ。

 そしてプラモデルはどう料理しても美味しい。説明書にざっと目を通すと、頭→両腕→胴体→両足→台座と、上からそれぞれの部位ごとに完成させた後、最後にまとめて接着する工程になっていた。しかし今回は牛久大仏の工事工程に倣って、下からパーツを積み上げながら接着してみることにした。直感的で分かり易い説明書だったからこそ、逆に説明書通りの順番で組まなくても完成する確信が持てたのだ。腕や足が卓上に散乱しなくて済むとも思った。

 3DCGの様にぬらぬらとした岩のパーツをテトリスの様に積み上げていく。そこに足を接着すると力強い角度がカチッと決まった。さらに浮遊感のある腰帯を接着し、華美な胴体パーツを積み上げていく。実在する四天王像はお寺に会いに行かなければ見られないけれども、大量生産品であるプラモデルはそれぞれの家庭に会いに来てくれるだけでなく、建立工事にまで立ち会えるのだから面白いよなあ。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

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