小さくたって精密だ。「隠れバイク模型」で軽率に走り出せ!

▲バイク!小さい!

 バイクのプラモってパーツのひとつひとつがむき出しの機能のかたまり!というわかりやすさと、細いのとか小さいのとかキラキラ光るメッキといった繊細さも兼ね備えていたりして、作ってるだけで構造がドドドドっと脳内に押し寄せてくるので最高に楽しい。それ故にちょっと難しそうだな、と外からモジモジ眺めている人というのも多いのではないでしょうか。わかる。わかるぞ。オレも「なんかイケそう」と思えるバイク以外は買ってもそっと棚にしまったままにしてありますもん。

 どっこい、世の中には「隠れバイク模型」というのがあり、これは小さくてパーツ数が少なくてビシバシビシ!と作れば「お〜、バイクじゃん!」という気分になれるアイテム。今日は家に潜んでいた「隠れバイク模型」のひみつを教えます。

▲バンダイスピリッツ メカコレクションの新サイクロン号。仮面ライダー新1号付きです

 いやサイクロンってバイクじゃないじゃん!仮面ライダーじゃん!って思ったあなた!仮面ライダーが乗っているのはバイクだ!大丈夫!(大丈夫?)ベースとなっているバイクはスズキ ハスラーTS-250IIIという車種なので、中身がちゃんと入ってるこのプラモはキャラクターモデルとスケールモデルの中間にあるというか、あなたはスズキ ハスラーTS-250IIIにガワをかぶせて新サイクロンを作るということになる。わかるだろうか。オレも書いていて混乱してきた。

 ちなみにメカコレシリーズは箱の上蓋のウラに説明書が印刷されているという環境に優しい設計なのですが、優しすぎてかなり見えにくいので、メーカーがちゃんとPDFの説明書を配布しています。PCの画面とかタブレットで見れば快適だZE!

▲この状態だとスズキ ハスラーTS-250IIIなんですよ
▲新1号も付いてるぞ。真っ黒だから気になる人は塗ろう
▲こっちはタミヤの1/35MMシリーズより「陸上自衛隊 オートバイ偵察セット」

 タミヤは1/6や1/12といったスケールを中心にすごく高品質なバイクモデルをいっぱい発売していますが、1/35のミリタリーミニチュアシリーズにもバイクが入っているアイテムがたくさんあります。この陸上自衛隊の偵察部隊が使っているバイクはホンダのXLR250Rという車種で、まあ自衛隊用にいろいろカスタマイズされているのですが、「これは市販車モデル!」と信じ込んで銀と黒と赤と青で塗り分けたら絶対かっこいいはずだと思い、棚の中で熟成させています。

▲すっげえディテールがしっかりしていて、パーツも少ないのでサクーンと組んでも立体感バリバリのバイクがゲットできます
▲こっちは新1号ではなくイケメン偵察ライダーと、指示を出す戦車長が付属

 「落書きの……教科書と……」と鼻歌を歌いながらふたりのライダーを見比べていたら、気づいたんですよ。

 なんかこの人たち、同じくらいの大きさじゃない?

▲このふたつ、何気なく選んだんですけど……
▲バチピタ(股下の造形がちょっと合わないけど、埋めるか横から見ればわからんちん)
▲仲良くやろうぜ。

 ……ということで、バンダイメカコレの仮面ライダーシリーズがだいたい1/35スケールで、MMシリーズのバイク同様「ババっと組んでちょいちょいと塗って、おーバイクができたぞ!」という感触を速攻で味わえるアイテムなんだよね〜というお話でした。みなさんも、精密なバイク模型を組むのはちょっとおっっかねえな……と思った場合は、小さくてもリアルなバイクを自分の好きなようにカスタマイズして遊んでみませんか。ちょっと色を足すだけでも「オレのバイク!」という気持ちになれますので、ぜひともやってください。ではでは。

タミヤ 1/35 陸上自衛隊 オートバイ偵察セット(税込み1100円)

BANDAI SPIRITS メカコレクション 仮面ライダーシリーズ 新サイクロン号(税込770円)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

兵士は「緑」が最高!!/AIRFIX VINTAGE CLASSICS「1/76 USAAF人員」

▲B-17が飛び立つ飛行場とアメリカ空軍の兵士たちが描かれた「1/76 USAAF人員」。現在のエアフィックス赤パッケージで登場です

 模型の故郷・英国を代表する模型メーカー「エアフィックス」が、発売当時(このキットは1974年!)のイラストを使用しながら、現行アイテムの特徴である赤を貴重としたパッケージデザインでリニューアルしているシリーズ「VINTAGE CLASSICS」。模型店に行ったらちょっとしたコーナーになっていたので、その中から気になった「1/76 USAAF人員」(人員!?)を1つ買ってみたよ。それは愉快な仲間たちによるエアフィックス劇団でした。

▲箱を開けるとグリーンアーミーメン。赤い箱から緑の兵士が生えたランナーがずいずいと出てきて大興奮ですよ!
▲4本のグリーンアーミーメンツリーがでてきました
▲スパナメン!?レンチメン?!今日も元気に整備整備♪
▲ちょっと静かなベテランワークメン。“行こうみんなでフンフフン♪”
▲ファイヤーメン?飛行場で火はやべ~ぞ!!ダッシュよ
▲“ちょっと待てメン”にパイロットメン。給弾ベルトメン。弾重そうですね~
▲警備メンの目を盗んで駆け抜けるメン。あとはこれ機銃メンですかね? 物騒なの持ってます
▲俺たちがパイロットの目!! 機体を誘導するマーシャラーメン。らっしゃい! 張り切ってます! カバンを持った下の乗り組みメンもいい感じ

 成型色が緑になるだけで兵隊さんが愛おしくなる人類の発明「グリーンアーミーメン」。歩兵じゃなくてももちろんバッチリはまるかわいらしさ。軟質プラなのもヴィンテージ感を味わえて楽しいプラモです。エアフィックスVINTAGE CLASSICS。楽しさは決して古びないですね。

■エアフィックス VINTAGE CLASSICS 1/76 USAAF人員 本体価格800円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

黒と銀と、あなたの好きな色。/「ビビリのカーモデル」を作る。

 クルマのボディをツルツルに仕上げてみたい。ただそれだけでプレコーの光沢を吹くという記事を書いたのですが、ボディだけあってもしょうがないのでクルマのカタチにしてみようという思い。

 プラスチックの色はベージュ。ボディは赤く塗ったけど、シャーシやタイヤがベージュじゃ締まらない。とりあえず黒く塗っておこう。ライトやバンパーがベージュじゃ締まらない。とりあえず銀に塗っておこう。このふたつの塗料は、だいたいのクルマの模型をどうにか「クルマだな」と認識させてくれる便利な色です。セミグロスブラックとシルバーと、あなたの好きなボディの色。これはその日の気分で大丈夫です。赤じゃなくても、緑でも、青でも、微妙な茶色や、つや消しのグレーでも、あなたが塗料の棚の中で「あっ」と思った色でいい。

 このタミヤ1/48MMシリーズのビートルを見ていてすごいなぁと思ったのが、Aの枠とBの枠(この枠のことをプラモ好きは「ランナー」と呼びます)が区切られていて、「Bを銀に塗るとかっこいいよ」と言葉少なに僕たちに語りかけてくるところ。ミリタリーテイストにも、民間の乗用車テイストにも組めるよう、パーツがなんとなく分かれているんです。説明書には明言されていないけど「かわいいビートルが欲しいな」と思ったときに、ユーザーに小さな驚きを与えてくれる。こういうところがタミヤのプラモのすごいところです。

 シートの色はベージュでいいでしょう。プラスチックのまま。ホイールキャップとバンパーは銀。あとは黒く塗って、注意深く窓ガラスをはめます。プラモはやろうと思ったらやることがいくらでも増えていきます。やることが増えると、失敗する確率も少しずつ増えていきます。リカバーできればいいけど、失敗したら悲しいし、悔しい。だから、今回は「できることだけやろう」と決めて、失敗しそうな塗り分けや、時間のかかる塗り分けはしません。逃げ腰に見えるかもしれませんが、こうやって決めればひとつの「新しいチャレンジ」と、たくさんの「自信が持てる作業」を組み合わせて、昨日の自分より少しだけ前に進むことができます。

 プラモの経験値は、「完成した」と思ったときにチャリンと音を立てて自分に足されます。完成というのは、自分にとってのゴールライン。昨日の自分ができかったことをひとつプラスして、プラモの箱に入っているワクワクをしっかり味わえたなと思えれば、それは完成です。誰かにとっての完成と、自分にとっての完成は違っても大丈夫。今日、僕はツルツルのボディのクルマをひとつ手に入れました。次はどんなことを覚えて、新しい模型を作ろうかな。そんなことを考えながら、グラスを傾けるのが楽しいのですから。

■タミヤ 1/48 MMシリーズ

からぱた/nippper.com 編集長

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世界一有名な城を築城せよ!/童友社 姫路城

▲国宝のプラモ。あなたのお家にも国宝を

 現代日本人のDNAレベルまでに「城」と言ったらこのイメージが刷り込まれている暴れん坊キャッスル&世界遺産「姫路城」。世界に誇るJAPANアイコン。そして模型屋さんのVIP席である棚の上に堂々と置かれているそのお姿。当時のフミテシ少年は中をみたくても届かない……模型屋さんのおじさんに取ってくださいと言って見せてもらって、すっと無言で返す勇気もないから声をかけられない……。結局どんなプラモなんだ?とモヤついておりました。大人になったオイラには、もう恥ずかしさも店のおじさんの心をチクリと刺すこともありません。「童友社 1/380 日本の名城DX01 姫路城」無血開城!!!!

▲開門!
▲情景や石垣がドン。僕らは大工さんになったり庭師になったりするみたいですよ
▲本丸がパイルダーオン!する構造でござるよ。殿
▲城主の瓦紋? なんだウルトラクイズか? 全部同じ紋じゃないか?
▲正面が変わった? 裏と表があっていい。それがプラモデルなのさ
▲ぷにょぷにょした木!木を植えるのだ
▲新緑! 目にも鮮やか。整えろ!!
▲袋に粉が!毒見だ!毒見を呼べ。殿お下がりください!! 緑のういろうか?
▲奇妙なグリーンパウダーは芝生でござったか
▲ういろうではなくウレタンというものであるか。緑豊かな城は平和の象徴ですな。殿
▲白鷺城の名に恥じぬ白さ。白すぎて青(ホワイトバランス~)
▲屋根のランナーはまるで町のよう。姫路城の豊かさ~
▲え!?鯱鉾って「金」じゃないの?お好みで金! 金で行きたいですよね~

 芝生を生やしたり、木を植えたり、築城したりとひとつのキットでそれらを楽しむ要素がギュッと詰まったプラモ。それが「童友社 1/380 日本の名城DX01 姫路城」。私もですが、城郭模型の箱って目には入っていたもののこれまでほとんど開けたことが無く、今回やっと開けることができました。地面がドカンと入ってたのにはまさに衝撃でした。今年の夏はどこかの城主になってみようと思います。目指せ一国一城の主!!

■童友社 1/380 日本の名城DX01 姫路城 本体価格4500円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

【PR】タダでもらえるロボットを強化する!グッスマ製「エグゾフレーム」の可能性!

 現在YouTubeでタダで見られるアニメなんですが、『OBSOLETE』(オブソリート)というものがあります。突然地球の近所に現れた宇宙人が「石灰岩1tと交換でめちゃくちゃ便利な2.5mくらいの大きさの汎用ロボット”エグゾフレーム”をくれる」という交換条件を持ちかけてきて、それによって人類がどう変わっていくのか、というのを描いたアニメです。

 地面を掘ることさえできれば誰でも簡単に軍事転用可能な夢のマシンが手に入ってしまうわけで、貧乏国家だろうが超大国だろうがそこは平等。それを利用して世界に対して喧嘩を売っている武装組織アウトキャスト・ブリゲードと、それを追うアメリカ海兵隊の話が縦軸になってるんですが、その背後の事情(宇宙人の目的とか)はまだ謎。今年の冬に後半が配信されるそうです。面白いしタダなので、全員見ましょう。

 このOBSOLETE、聞けばそもそもがプラモデルありきの企画だったそうなんですが、そのキットを広く知ってもらう方法が奮っております。エグゾフレームのプラモが一番最初に世に出たのは、雑誌『月刊ホビージャパン』のオマケとしてだったんですね。ランナー1枚で完結する単純なプラモなんですが、組んでみるとこれがよく動くし、組み立ての単純さも程よい。おもしれーなー、といじっていてハッと気がつくわけです。これ、謎の機械をほとんどタダでばらまいてるOBSOLETEの宇宙人と同じ行為じゃないかという事実に……!

 その後もWebキャンペーンで3000人にタダでプラモを配ったり、3Dデータを無料配布したりと、とにかく「エグゾフレームを無料で配る」という行為に発売元のグッドスマイルカンパニーは邁進。「フレームはタダ。あとはキミたちの創意工夫でガワを着せれば、アウトキャスト・ブリゲードみたいに世の中をひっくり返せるかもしれないよ」という、本編同様のメッセージを暗に送ってきているのです。目を覚ませ、僕らの世界が何者かに侵略されてるぞ!

▲自宅が暗すぎるので、エアコンの室外機の上から失礼します。左から素エグゾ、海兵隊エグゾ、アウトキャスト・ブリゲードのエグゾです

 で、ここまでやったところでようやく、ちゃんと金を取って普通に売るエグゾのプラモデルが登場しました。「MODEROID 1/35 アメリカ海兵隊 エグゾフレーム」と、「MODEROID 1/35 アウトキャスト・ブリゲード エグゾフレーム」だそうです。でも税込で2300円。安いな。で、早速組んでみたんですけど、プラモで見ると、劇中で動いているだけだとよくわかんないエグゾのモダンウォーフェア性をビンビンに感じられるんですね。

▲細い手すりやデコボコなフックが目に嬉しい海兵隊エグゾ上半身。全体をシナイグレーで塗り、シャックルのとこだけ赤く塗装すればイスラエル仕様だと言い張ることもできましょう

 例えば海兵隊エグゾの上半身、ここにはモダンウォーフェアみがパンパンに詰まっています。全体の形はストライカー装甲車のようなカクカクした楔形(最近の装甲車両がやたら角ばってるのは、素材の金属が固すぎて曲げたりひねったりできないからだそうです)にまとめられ、シャックルやらフックやらでデコボコ。胸にくっついてるシャックルの形も、ドイツ戦車みたいな「U」の形ではなく「Ω」みたいな形のやつで、これ一発でかなりのモダンウォーフェアみを感じます。あと、背中上面にくっついてるキューポラがただの丸いハッチではなく八角形になってて周囲に細い手すりがついてるのも、「し、市街戦用にゴテゴテした銃座がついてるハンヴィーとかで見たことある~」というムード。いや~おじさん嬉しくなっちゃうよ。

<06/04追記>デザイナーの石渡さんによると、胴体前面〜上面の棒状の部品はワイヤーガイド(トラップとして張られたワイヤーを切るためにワイヤーをカッターに誘導するガイド)だということです。で、「乗員用の手すりでもあります」と教えていただきました。インタラクティブ!

▲目玉の周りのカバーとか、「ここは薄い鉄板でできてまっせ!」という目配せがすごい。そのメッセージ、しかと受け取った……!

 対するアウトキャスト・ブリゲードのエグゾ。一見すると丸っこいんで、「はは~ん、なんかソ連の戦車みたいな鋳造っぽいデザインってことなのかな」と思ってたんですが、どうも組んで見てみると様子が違う。パネルの縁の処理とかに「ここはあんまり分厚い板でできてませんよ」というポーズが見えるのですね。つまりこっちの機体は「最新の複合装甲とかをイジるだけの予算も技術もないから、加工が容易な薄い鋼板をプレス機とかで曲げてガワを作ってるよ」というジェスチャーが仕込まれているわけです。カ~ッ! よくできてんな!!

▲横から見ると一目瞭然、上半身の厚みが全然違う! 海兵隊エグゾは前方に向けて尖った楔形だから、銃弾とかは斜めに跳ね返しそうだな~

 あと、2体を並べて上や横から見てみると、パイロットの上半身(つまりダメージを負うとすぐ死ぬ部分)に対する防御が、圧倒的に海兵隊の機体の方が手厚いことがわかります。海兵隊エグゾの方が、上半身のフレームに被っている装甲が前方に分厚いんですね。エグゾフレームはパイロットがおんぶされるような形で機体の背中側にのっかるので、上半身前方の装甲はそのまま生存性に関わってくる部分。つまり同じフレームを使っていながら、どっちかというとアウトキャスト・ブリゲードの方がすぐ死ぬわけです。切ないな~。このへんも、プラモで見てみないとよくわかんなかったとこですね。

▲武器のグリップが全部丸棒! これは大英断! 断固支持!!

 というわけで「ふ~ん、モダンウォーフェアじゃん……」とか言ってたわけですが、実はこのプラモはオモチャっぽい割り切りもしっかりしてます。というのも、鉄砲のグリップが全部丸棒なんですね。特にアウトキャスト・ブリゲードのエグゾが持ってる重機関銃はグリップから銃を支えるフレームが伸びてるデザインなんですが、その辺全部割り切ってただの棒を持たせる形になってます。つまりこのキットは「劇中の再現」と「遊びやすさ」だったら、ギリギリのところで遊びやすさの方に舵を切ってるんですね。

 つっても海兵隊のエグゾが持ってるライフルは劇中でもグリップが丸棒そのまんまだったりして、「オッ、ここはオモチャの都合を考えてるのかな」とか思ってたりしたわけですけども。ただとにかく最近の「ライフルを持っている手/握り手/開き手/開き手パート2……」みたいな感じで手首ばっかり無限に増えていくオモチャには辟易していたところ。こういう「いんだよ鉄砲なんか丸棒突っ込んで持たせとけば!」というストロングな姿勢は断固支持でございます。

▲手元にあるミリタリー・オモチャと組み合わせれば遊びがワイドだ! みなさんは別にエアコンの室外機の上に並べなくてもいいです

 というわけで、「複雑現代兵器的なリアル感の演出と、割り切った遊びやすさは両立できる」というのが、このキットの教えてくれた一番重要なことでありましょう。願わくばこれを両立したオモチャがたくさん増えてくれるとおれが楽しいんですけども。つーわけで、みんなもこれ買って机の上をモダンウォーフェアにするといいと思います。あと繰り返すけど、OBSOLETE本編も見ろよな!

グッドスマイルカンパニー MODEROID 1/35 アメリカ海兵隊 エグゾフレーム

グッドスマイルカンパニー MODEROID 1/35 アウトキャスト・ブリゲード エグゾフレーム

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

超簡単に誰でもアスファルトの地面が作れる!情景テクスチャーペイントを塗りたくれ!!!

 そこのあなたも、そこの君も! 誰でも簡単にアスファルトの地面が作れちゃう、塗るだけ簡単の魔法の塗料があるんです! それがこのタミヤ 情景テクスチャーペイント 路面 ダークグレイ。だって商品名に路面って入ってますからね。この安心感!!

▲中の塗料を筆で塗り塗り。粒子のざらざらした塗料なのが特徴です
▲できました。本当に塗って乾かすだけ。それだけで完成です。凄くないですか?
▲地面があると人も映えますね〜
▲ミニカーをちょんと置いてみても楽しい!

 で、塗るだけ簡単で地面ができちゃうこの情景テクスチャーペイントですが、砂漠や雪、泥のような地面などいろいろあります。なんか地面作るの難しそう〜って思っているあなた。100円ショップに売っている木の台や、本サイトでも紹介した珪藻土コースターに試しに塗ってください。いきなり地面が完成しますよ。あなたの模型をいろんなシチュエーションに連れて行ってあげてください。

■タミヤ 情景テクスチャーペイント(路面 ダークグレイ)本体価格800円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

軍艦プラモの小さすぎるパーツを超拡大してくれる「魔法のパンフレット」、あります。

 戦車プラモは1/35、飛行機プラモは1/72、みたいな「ちょうどいいスケール」というのがあります(個人差アリ)。手のひらよりもちょっと大きくて、フォルムとディテールがそこそこ再現できるサイズ。これが艦船の世界だと1/700ということになるのでしょう。フネはだいたい細長いのでコレクションするのにもこのスケールがイイ感じだとされていて、模型屋さんに行くと1/700の艦船模型がいっぱいあります。

 1/700というのは人間がざっくり2.5mmくらいのサイズになってしまうので、他のジャンルの模型よりも小さいパーツが多いです。ピンセットでつまんでそ~っと貼らないといけないのもいっぱいあって、「カタチを作っている」というよりも、パーツのひとつひとつがすでに構造物になってて、船体という土台にバンバン植えていくような感覚になります。この感覚はなにか一つのモチーフを小さくしたミニチュアと言うよりも、博物館で見る都市計画模型とかのほうに近いんですよね。

 最近では「ゲームで知ってる!」という人も多いような気がしますが、こういうこまかいパーツのひとつひとつが何なのかを知っているかそうでないかが、艦船模型を作る楽しさを理解できるかどうかの違いに直結するよなぁ、と思うんです。例えて言うなら地図の上に超小さい家を建てていくとき(どんな時!?)「ああ、2階建てだなぁ」「木造だわ」くらいの解像度で理解しているか、「ここ、いつも挨拶する田中さん家だ」「これは山田さん家で、二世帯住宅なんだよ」というのを理解しているかくらいの違いがあります。

 で、そんな理解を爆発的にブーストしてくれるパンフレットがあるのでこれを買うとすごいよ、という話。艦船模型の世界でも絶大な存在感を放つタミヤが販売している『軍艦雑記帳 上巻/下巻』です。軍艦のことを知りたいけど分厚い資料を読みたいわけじゃない人も、薄くて特濃なこのパンフレットには絶対に興奮すること間違いなし。そもそも模型メーカーが作っている資料なので、「模型を作るときに知っておきたいこと」が分類され、バッチリ記載されています。豊富なイラストとめっちゃ親切なテキストで、のっぺらぼうだったプラモのパーツがいきなり4KのプラズマTVレベルの解像度に見えてきます。

 上巻には「艦橋」、「煙突」、「前檣(しょう)」、「後檣(しょう)」、「航空兵装」、「火器」、「魚雷」、「爆雷」の8章を収録。ひとつひとつの軍艦をピックアップしてその詳細にどんどん入っていくミクロな構成ではなく、「まずフネっていうもんはだいたいこういう構造物の寄せ集めで出来ているんだよ〜」というのを俯瞰して見せながら、それぞれのパーツの特徴を説明してくれます。そう、軍艦は大きくカタチが違うものにも共通の兵装や構造物が乗っけられているので、この軍艦雑記帳を見ると「あ、あのフネに付いていたこの兵装、こっちのフネのここにも付いてるやん」ということに気付けるようになります。

 下巻には「船体」、「艦首」、「艦尾」、「船体と装着品」、「甲板」、「甲板の装着品」、「上部構造の装着品」、「艦載艇」、「特殊艦艇」の9章を収録。この2冊を手元に置いておけば「なんでこんなに小さいキノコみたいなパーツを貼らなければならないんだ……」となりそうなときでも「これは空気を入れ替えるための出っ張りなんじゃよ〜」と訳知り顔で対処することが出来ます。まさに山田さんと田中さんの人となりを知ることのできる艦船模型界のタウンページ。

 とにかく、「艦船模型はなんだか難しそう」「超絶テクニックの作例を見てると、オレには作れなさそう!」という人もこの軍艦雑記帳があれば「フネってちゃんと整理して見ていくとそれぞれに意味のあるパーツの寄せ集めなんだな!」ということが直感的に理解できるようになりますし、ひとつひとつのパーツに愛着を持って接することができるようになります(少なくともオレはこれがなかったら「なんかグレーの細かい突起がいっぱいあってすごい」くらいの理解力のまま生きていくことになっていた……)。ちょっと慣れてきて、ディテールアップパーツを買うとか他のキットから好みのディテールのものを移植しようとか、そんな贅沢をしたくなったときにも最適の水先案内人になってくれます。

 一家に上下巻、本棚の隅っこに軍艦雑記帳を忍ばせておいて「艦船模型、もう作れるもんね!」というお守りがわりにしてみてはいかがでしょうか。

軍艦雑記帳《上巻》(税込792円)《下巻》(税込み660円)

からぱた/nippper.com 編集長

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ツルテカ塗装は怖くない!「異次元性能のスプレー」で全員ツヤあり時代に突入です。

 プラモにもいろいろありますけど、SNSを見ているとなかなかにハードルが高くてみんな困ってるな〜と思うことが多いのが、クルマのプラモ。乗用車はキレイに洗車されてツヤツヤに輝いているのを作りたくなるんですが、どうすればツヤツヤになるかというのは昔からいろいろな参考書が売れるくらい難しい課題です。どっこい、最近は強力無比なスプレーがあるんですよ……という話を友達から聞いたので、苦手意識というか食わず嫌いでいちども成功したことのなかった「ツルンツルンのクルマを作る」というのにチャレンジしてみようと思ったのです。

 失敗したら嫌なのはみんなもオレも同じ。まずは安くて小さいのでチャレンジ。で、小さくて安くて速攻完成する可愛いクルマのプラモを探します。このnippperでも何度も紹介しているタミヤの1/48MMシリーズにはフォルクスワーゲン TYPE 82Eというのがラインナップされていまして、要はみんなが知ってるビートルですよビートル。ちっこい!パーツ少ない!これなら勝てる!

 ボデーのパーツがゴロンと入ってますので、これにツヤ有りの赤を吹きます。赤はエアブラシでもスプレーでもいいし、乾燥をじっくり待てる人ならば筆でちまちま塗っても大丈夫ですが、筆できれいな面を作るのはとっても難しい。家の外でパッと吹けるならば、缶スプレーでドシュッと行くのがイイでしょう。吹きすぎて塗料が垂れると厄介なので、様子を見ながら。こういう塩梅は文字だとなかなか伝わらないので、こんど動画でも撮りましょうか。

 上の写真を見れば分かるとおり、これでも結構つるつるした表面になります。とはいえ、ツヤのエッジが微細なギザギザになっていて、景色が映り込むほど平滑ではありません。

 GSIクレオスの秘密兵器、「水性プレミアムトップコート 光沢」です。「私、失敗しないので。」と自分に言い聞かせましょう。これまた缶スプレーなので、さっきの赤みたいに注意深く吹きましょう……と書きたいところなのですが、このスプレーを紹介してくれた友人曰く、これまで私が失敗してきたのは「様子を見ながらちょっとずつ吹く」というのをやっていたからだそうなのです。なんということ……。

 このスプレーできれいなツヤありの表面を作る秘訣はただひとつ。とにかく全体がバッチリ濡れた状態までビビらずに吹きまくること!パーツをぐるぐる回しながら、テロンテロンになるまで吹きます。

 ほら見ろ!なんか凹んだところにクリアーがめっちゃ溜まってるし、溜まりすぎたところ(ドアノブとかリアフェンダーの前の逆エッジ)が真っ白になっとるやないかい!湿度が高い日だったし、このプラモはもう終わりじゃ……おれのツルンツルンライフは一生訪れないのじゃ……。そう嘆きながら浴室乾燥にぶち込みます。浴室は家の中で最もホコリが少なく、乾燥機能が付いていれば無敵の模型乾燥ブースとして活躍してくれますのでバンバン使っていきましょう。

 そして翌日……。

 うおー!白いところは完璧に透明さを取り戻し、各エッジもビシッと出ているじゃありませんか……。そしてルーフに映り込むPREMIUMの文字が見えるでしょうか。YAZAWA、クリアーコート完全に理解したね。研ぎ出し? オレはしないね。

 ということで今日はボデーを真っ赤にし、テカテカにするところまでたどり着きました。これを適当に塗ったシャシーと合体したらさぞかし可愛いビートルが完成してしまうぞ……ということで、その話はまた後日。

 これを読んだ人は、クルマやロボット、旅客機などなど「なんとなく敬遠していたジャンル」にももうチャレンジできます。水性プレミアムトップコート 光沢、略して「プレコーの光沢」を信じてテカテカの世界に飛び込んでみて下さい。「いやー、クリアーコートって難しいじゃん」って思っている人ほどビビると思います。コツは「こんなに吹いちゃって大丈夫なのかよ!」という気持ちになるまで吹くことですよ。

 みなさんも、ぜひ。

■Mr.プレミアムトップコート<光沢>(スプレータイプ)

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からぱた/nippper.com 編集長

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超絶のタイトルに偽りなし!艦船模型のテクニックをしゃぶり尽くせ!!

 「スケールモデル ファン」(新紀元社)を始め、「艦船模型スペシャル」(モデルアート)、「ネイビーヤード」(大日本絵画)などで1/700超絶艦船モデル作品を発表している大渕克(おおぶち・まさる)氏のさまざまな製作テクニックを、余すところなく紹介する本書。艦船模型のすごいモデラーさんは、模型をどのように調べ、どのようなポイントを改修していくのか。その過程も見ることができます。

▲バーラム、赤城、ビスマルクをメインに、大渕氏の丁寧な解説と豊富な製作途中写真で艦船模型のテクニックを余すところなくご紹介

 「日本航空母艦 赤城」「ドイツ戦艦 ビスマルク」「イギリス戦艦 バーラム」で、すべて本書のために作り起こされたもの。この3作品を通して艦船模型のテクニックを見ていくことになります。

▲大渕氏による模型製作文は非常に丁寧で大ボリューム。作品のポイントをしっかりと知ることができます
▲このように、各艦とも製作の過程や独自のテクニック、実感を高めるための考証などを、豊富な写真を用いて解説。途中写真が大きく掲載されとても見やすいです
▲模型とともに実艦の解説と写真も掲載

 雑誌未発表作品も含めた作品ギャラリーも収録。濃密なHow to記事を読んだ後の清涼剤となるような美しい作品が誌面を飾っています。How to本であり、大渕氏の艦船模型に対するスタイルも楽しめ、まさにその人の生き様を読めるような艦船模型本です。

■ホビージャパン 艦船モデル 超絶製作テクニック 本体価格3300円(税抜き)

2001年 自宅で宇宙の旅

 ニッパーを握りたくない日もあるわけですよ人間。それでもなんかこう、小さいものを眺めてうふふとなりたいのがプラモ好きのゼータクなところで、まあそういう気持ちにバチーっと応えてくれる塗装済み完成品というのが世の中にあるんだから嬉しいじゃないですか。こんなに小さい模型なのに、うまいことできてるなぁ……これだって、工場で誰かが塗ってるわけでしょ。すごいや、と。

▲これがどーんと家に届いたのよ。マジで嬉しいよね。

 『2001年宇宙の旅』はもう何度見たかよくわからんのですが、一昨年の夏に大阪のエキスポシティでレーザーIMAX上映がありまして、たまたま出張のタイミングが合ったので巨大すぎるスクリーンと巨大すぎる音響で鑑賞することにしたわけですよ。そしたらなんかもう、全然いままで観ていた2001とは違う体験で、全身筋肉痛になって「うわー、人生変わっちゃったよ」みたいなことを考えましてですね。終わったあと居酒屋で一人ビール飲みながら「うーん、これは結婚しないとダメだな」とかよくわからない結論に至ったんですよ。なんなんだよ、すげえよキューブリック。

 EVA PODは最近メビウスモデルから1/8というめちゃくちゃにデカいプラモが発売されましたが、こちらは直径45mmくらい。すげえシャッキリしてますが、腕を畳んだ状態なのがちょっとなぁ〜とか思いつつ、もう一個欲しい。改造したい。あとライトを光らせたいねこれは。最高です。

 アリエス号は見た瞬間に青く美しきドナウが脳内で鳴り響きますわよ。記憶する限りマスプロの立体物はなかったと思うので、これが模型になると知ったときは狂喜乱舞しました。脚がビョーンって出てくるあのシーン!そんで花びらみたいなハッチがドワーって開いて、下からのカットにバーンって変わってノズルがビターっと綺麗に並んでるのが見えてくる!そう、この模型の正面は真下だぜ。買った人にしか見えないんだから、こりゃもうアナタも買うしかない。

 ムーンバスの中でまずそうなサンドイッチを食べたいと思いますよね。これまた「下ってこうなってんのか〜」という模型。こちらも往年のプラモがあるんですが、手のひらサイズでシャキシャキしているのも凝縮感があってよろしい。

 オリオン号は惜しくもパンナムのマークが入ってないんですが、まあオトナの事情がたくさんあるので自力でなんとかしましょう。こちらは全長145mmとちょっと大ぶり。1/400の旅客機とかと並べてそのサイズ感を味わいたいですな。

 そんでもってディスカバリー号!こちらも最近メビウスモデルからめちゃくちゃにデカいプラモが発売されまして、これはガバーっと完成させて友達の家に押しかけ、勝手に天井から吊っておきました。このディスカバリー号は全長250mmとコンパクトなので、家が狭いマンでも飾れます。吊ってもいいかな……と思ったんですがこちらは全体が樹脂でできていてけっこうしなりますので、付属の台座で飾るのが吉でしょう。

 でも、やっぱビシッと真っ直ぐになって木星に向かうところを見たいじゃないですか。下に月面というのもなんか違うし。こう、漆黒の宇宙にボカーンと浮いているのがディスカバリーじゃん。

 ▲からぱた秘伝のスーパー撮影(大汗をかく)によってディスカバリーが飛びました。

 いや〜、正直『2001年宇宙の旅』って昔は正規版権を取得したグッズが新規で出せないというなかなかエグいコンテンツだったのですが、ここ数年で状況が変わってきたのかグッズ出まくり、プラモ出まくりの確率変動ハイパーボーナスラッシュという様相を呈しており、フィギュアとかプラモとか全部買っていると破滅しそうです。でもいいの。楽しいから……。

 そうそう、HAL9000のプラモがあるんですよ。一人で寂しそうに光っている彼のところに、たくさん仲間が来てよかったね、ということで、こうした完成品の類というのは一度生産されて在庫がなくなるとなかなか再販しない(もしくは二度とお目にかかれない)ことがほとんど。あるうちに買っておく、不安だったら予約する、というのは鉄則ですので、お見逃しのないように。じゃあね!!

■ベルファイン ディスカバリー号(6800円+税)

■ベルファイン アリエス号&スペースポッド(6800円+税)

■ベルファイン オリオン号&ムーンバス(6800円+税)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

再会。僕の大事な模型/タミヤ 響

▲1972年に発売。タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズの中でもベテランキット「日本駆逐艦 響」

 また模型を作れるようになった、あの時の自分に会いたくて。

 数度の大損傷にも関わらず太平洋戦争を生き抜いた日本海軍の武勲艦「響」。戦後も復員艦として多くの日本人を運びました。そして僕自身もこの「響」のプラモと友人のおかげで、またプラモ趣味に戻って来ることができました。このプラモを手に取らなかったら、きっと違う人生になっていたと思います。それだけ僕の中では大事な模型。

 そして初めて作ったスケールモデルでもありました。25才の時だったと思います。

▲パッケージを裏返すとカラー図があります

 単純に仕事のプレッシャーで大好きな模型が嫌いになってしまい、それを心配した友人がヨドバシ新宿ホビー館に僕を引っ張って行きました。しかもほとんど覗いたことがない「スケールコーナー」。なんもわかりません。そして、もうプラモ無理や……と会社も辞めようと本気で思っていました。そこで差し出されたのがこの「響」でした。

 「駆逐艦って言って小さいから組むだけなら1日で終わっちゃうよ。値段もお手軽だしね」と。その時、正直「買ったら組むしかないよね〜……」と思いましたが、信頼している友人の言うことだしなーと、全く知らない艦船模型をレジに持って行ったのでした。

 これが後に月刊ホビージャパンから発売されたHow to本「艦船模型製作の教科書」へと繋がるのですが、それはまた別のお話。そして僕はこの響をなんと買った日に完成させてしまったのです。2年ほど模型が作れなかった自分が1日で。あの体験は本当にヘレン・ケラーの「ウォーター」のように、僕をプラモの海へと連れ出してくれました。

▲家に帰り、とにかく箱を開けました。確かに小さいしパーツは少ない
▲説明書にこんなにも解説が入るんだとびっくり。この辺りから目に光が宿ってきました。プラモ買いまくって作れば詳しくなれるのでは……そんな単純なことにここで気がつくのでした
▲イラストから来るベテランキットの風格! ちょいゆるいイラストに、やってみるか!と変に気合いが入ったもんです
▲キットの中によくわからないパーツが集まった小袋があったんですよ。全くわからないし、なんか八九式なんちゃらかんちゃらとかいっぱい書いてあって、当時は怖くなってそっと箱に戻しました
▲そして今、あの時の自分を思い出しながら「響」と遊んでみよう。少し太ったし、結婚もして子供もいるぞ
▲バラストのパーツを初めて手にした時、金属の棒を中に入れて一体何が起こるんだ?って本当に思いました。でもあの時、今まで知らなかった模型に触れているんだという感動はこのバラストが一番重く感じさせてくれたかな
▲あの時には無い「速乾タイプの流し込み接着剤」が今はある!当時よりも君をカッコ良く綺麗に貼れる自信が僕にはあるよ
▲どうだい?船体と船底があっという間にくっついただろ。それにしても俺よりも君は年上なのに背筋もピンとして、綺麗にパーツが合うなんてすごいね。俺も頑張るね
▲当時は怖くて使えなかった、同梱されているウォーターラインシリーズ用のパーツセットの意味も今はわかる。ランナー同士を見比べて、該当パーツを探していくんだ
▲左がキット当時のパーツで、右が追加されたディテールアップパーツのもの。そう、こちらは昔のキットをよりディテールアップできるようにと後から追加されて、キットと一緒に同梱されるようになったものだったのです。その善意をわからず、僕は閉まったんですね。ぜひ使ってください!
▲流し込み接着剤でパーツを貼っていく楽しみを教えてくれたのも響でした
▲小さなパーツがひとつの塊になっていく……俺が形にしたんだ…とワクワクとドキドキでいっぱいになりました
▲これまでデカール貼りとかでしか使わなかったピンセットのありがたみに触れた瞬間。怖いけど、やれるぞ!と全集中したもんです
▲青年からおじさんになった私は、使い終わった流し込み接着剤の蓋に付いている細い筆が欲しくて、白蓋接着剤とマッスルドッキング
▲煙突、艦橋と軍艦のアイコンがグレーの塊の中に現れて軍艦になった時、俺は今なんかすごいものが組めたんじゃないか!模型ってこんなに面白いのか!と感情が爆発しました
▲プラモの撮影が大嫌いでした。自分が思える写真が全く撮影出来なくて、何度もスタジオで泣いてました。それも響が変えてくれました
▲プラモの楽しさを再認識した僕は、ポジティブの塊に変身。怖かった撮影にも立ち向かえるようになりました。カメラマンさんや先輩に食らいつきまくり
▲だから、あの時より君を綺麗に撮影できると思う。今見ても本当にかっこいいね
▲約10年ぶりの再会。当時嬉しすぎて、そのまま梱包して会社にも持って行きました。紹介してくれた友人のマジで?って顔と、完成した模型見ながら話した楽しさは忘れることはないと思います

 触ったことが無く、自分の視界に入ってなかった物と出会い世界が広がる。当時プラモの世界の広さを知る旅へと僕を連れて行ってくれたタミヤの響。僕にとっての大事なプラモ……。そして今また、nippperというメディアでプラモの海へと航海にでました。『あなたが再出発し、あの時感じたプラモの楽しさを多くの人と共有できる航海にしましょうね』と響からメッセージをもらった気がします。楽しい航海をしていきましょう。

■タミヤ 1/700 日本駆逐艦 響(ひびき)本体価格1200円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

その感覚が消えないうちに/「ブルーインパルスの思い出」を作る。

 金曜の昼間、家の上をブルーインパルスが飛んだ。それがどんな意味を持っているのかを論じているヒマはない。オレたちはプラモが好きだ。見たものはプラモで作らないと気がすまない。T-4のプラモを速攻で買って、ババっと作ってあの鮮烈な記憶を自分の手で再現したい。

 でも、だ。いままで何度かブルーインパルスの飛行展示を見て、一度としてその模型を作ったことがない。なぜなら、ブルーインパルスは6機でひとつの画として機能するし、白く伸びたスモークが3次元的にその機動を束の間描き出し、やがて空に薄く消えていくあの光景こそが本体だからだ。自分の家の机の上にチョンと1機のT-4が置いてあっても、それは”ブルーインパルス”ではなく、それを構成する要素のひとつでしかない。たとえ6機作っても、それを青い空間に立体的に配置する術はない。なんて難しいモチーフなんだろう。

 多くの人がSNSでつぶやいていたとおり、今回の飛行展示にはスモークを引かないグレーの機体が随伴していた。美しい編隊から少しだけ距離をおき、6機をときにエスコートするように、ときに後ろから応援するように機動するあの機体は、フライトの全てを記録し、安全を確保するのに不可欠だった。全ては決まりだ。アイツを作れば、フライトの記憶が蘇るだろう。

▲「Mr.セメント SP」を使えば超能力者のようにプラモを早組みできます。

 ブルーインパルス仕様ではなく、グレーのT-4を買ってきて、一気呵成に組み立てる。説明書の順番を追っていたら、記憶は薄れ、パッションは萎み、この週末は終わってしまう。どうすればいいか。

▲箱開けてから1時間くらい経過。

 コクピットは組まない。思い出の中の機体は飛んでいなければいけないので、脚は出さない。飛行機模型は、このふたつをスルーすることで、とんでもないスピードで「士の字」になる。パーツをもいで、ひたすら貼る。合わせ目も、ゲートの処理も置き去りにして、ただ速く。速く。

▲色とりどりの部隊マークがかっこいい!

 グレーのT-4に入っているデカールは豪勢だ。およそ実在するマーキングがすべて再現できるのではないかと思うほどの量で、コーションデータ(こまかな注意書き)の類も十全に印刷されている。これを全て貼っていても、やはり感動はどこかに行ってしまう。あの機体に不可欠と思われる派手な要素だけをピックアップして、ただ速く。速く。

 機体をまるっとグレーに塗りつぶしたら、キャノピーの裏側に6つの機影を描き、伸びるスモークを描く。背景となる空の色をエアブラシで吹いて、随伴機は、飛んだ。

▲土曜に組んで、日曜に塗る。プラモの最短スプリントレース。

 プラモを作るのは楽しい。楽しいが、あらゆることに気を配っていたら時間がかかりすぎることもある。人生は有限で、人間のモチベーションは儚い。もっともっとたくさんのプラモを作るために。少しの満足感を何回も何回も得るために。僕はいつでも「このプラモを通して何を見たかったのか」を考えるようにしようと思う。

■ハセガワ 1/48 川崎 T-4 “航空自衛隊” (2,200円+税)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

サーフェイサー・ラブ/「単色こそカッコいい」の心。

 一定数のモデラーはサーフェイサー(以下サフ)を吹いた状態のプラモデルが大好きなものです。特にグレーは単色のつや消しになることで、光の反射が抑えられ、素組みの状態よりも造形の美しさがよくわかる嬉しみ。

▲タミヤ 1/48ミリタリーミニチュア10式戦車にサフを吹いたもの。このプラモ、私的にはこのままの状態で完成ということになっています。

 素組みが気になる異性との「出会い」であれば、サーフェイサーを吹いた状態は交際(塗装)する前の「デート」であり、一番ドキドキして楽しい瞬間。異性とデートしたことがない少年少女の為にドラゴンボールで例えると、精神と時の部屋で悟空親子とベジータ親子が修行して、いざセルゲームへ!という段階です。オラ、ワクワクすっぞ!そんじゃあ、いっちょサフ吹いてみっか!

▲模型用の缶サフがオススメ。

 よく使われるのは、グレー、黒、白。実際の錆止め下地色や、赤色の下地に使うピンクのサフもござれ。シタデルカラースプレーには金や青といったカラフルなサフも存在する。

 ここで豆知識。サーフェイサーとは下地塗料の事で、一番重要な役割が表面を細か〜い凹凸の状態≒つや消しの状態にして、本塗装の食いつきを良くすること。表面がツルツルなものに塗装をするより、格段に失敗する可能性が減るんです!私はこれで何度も命を救われました。
 また、プラとは違う色で塗装したい!という時にも効果を発揮します。明るい色(白、黄色、赤など)の塗料は暗い色(緑、青、黒など)の下地が透けてしまい、うまく発色しません。こういう時は上塗りする塗料の明るさに近い、ホワイト等のサフを吹いてから上塗りをするとキレイに発色します。あと、細かい傷を埋めるとも言われますが、それは都市伝説です。

 閑話休題(?)。今回は「塗装下地としてのサフ」ではなく、「サフを吹いた状態で完成」とする目的でサフを吹いてみましょう。サフの色が好きだから。

▲タミヤ ファインサーフェイサーL ピンクを使います。蛍光ピンクのような抜群に発色の良いサーフェイサーで、大好きな色です。
▲今回サフを吹くのはファインモールドの1/35アヒルさんチームという4人でバレーをしようとする謎の女の子4人組。
▲そしてビームライフル。そこにビームライフルがあったから。

 持ち手を付けて、塗装ステーションに挿しておこう。最近は100均のセリアでも売ってるぞ。クリップで挟めないほど小さいものはランナーを切り飛ばして接着、塗装後に切り飛ばそう。死刑!ウルトラ5兄弟!みたいになったよ(わかるかな?)。

▲聞くんだ、エース。ホコリの巻き込み事故を防ぐのだ。ブラシでさっと払おう。
▲ここでモデラーの貴重な運動不足解消タイム!!

 缶スプレーを吹く前に、必ず2分間ぐらいシェイクして中の塗料を攪拌しまくろう。16ビートで。同時に手で缶を温めよう。こうすることで塗料が均一に出やすくなるのです。(2分間がわからない人は時計を買え!!

 さて、今日は天気が良いので絶好のサフ日和!(風の強い日と雨の日はやめておこう。特に雨の日はスプレー中に空気中の水分が入ってしまい大事故を起こす。)まずは飛散防止用のダンボールを一緒に持って外に出ましょう。服は忘れずに着よう!

▲ビッグバンアタック!!(31歳既婚男性)

 プラモから30cmぐらい離して、ビャーっと満遍なく吹きかけよう。吹きかけすぎないのが1番大事!吹きかけすぎないのが1番大事!(2回目)少しずつ様子を見て吹こう。

▲置いたままでは吹きにくい箇所は手で取って1個1個吹こう。

 そうそう、手がピンク色になるとマクベスなので、使い捨てのビニール手袋があるといいね。スプレーが届かない箇所≒よく見えない場所なので少しぐらい塗り残しがあってもOK、OK。下地の色が目立たなくなればヨシ!

▲サフ吹き完了。

 サーフェイサーを吹いて、ドライヤーで粗く乾かせば10分後ぐらいにはもう触っても大丈夫だぞ。ガチでドライヤーの熱風を当てるとプラモが溶けたりサーフェイサーの中に溶けているガスや空気が膨張して泡が出てきたりするので要注意!慎重な人はホコリが付かないところに1時間ぐらい置いておこう。もう服を脱いでも大丈夫だ(要出典)。

▲パチリ。どうですか!?ビームライフルのグレーも白い女の子も鮮やかなピンク色に!これで完成でいいんです。色がいいから。
▲~陸上自衛隊員はアヒルさんチームの夢を見るか?~「あぁ~仕事終わらしてはやくガルパンみてぇ~」という心の声が聞こえてきそうだ。

 このまま塗装してもよし、気が向いたときに塗装してもよし、この状態で飾ってもよしのサーフェイサー塗装でした。筆塗とはまた一味違った、まっさらな曲線と直線の質感が手に入りますよ。塗装の1歩目、2歩目を踏み出したい方に是非。まずはサフだけで、優勝です。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

令和2年5月31日。プラモに恋をしました。

 好きです。

▲ICM「US WASP(1943-1945)」。後方支援などで活躍したアメリカ陸軍航空隊の女性部隊「WASP」。背景のボーイング・ステアマンのカラーが、彼女たちの地味なカーキの色をより明確に際立たせます。素敵なパッケージです

 女性のオーバーサイズの着こなしは、何故こんなにも「可愛さと格好良さ」が共存してしまうのでしょうか? シャツとトラウザーズのまくり方なんて本当に素敵です。男性サイズのものを現地で合わせているのかと思わせる雰囲気も、想像力をかき立ててくれます。だらし無さではなく、勇ましさを感じます。模型店で一目惚れしてしまいました。

 今回はそんな夏季/熱帯のスタイルと思われるカーキスタイルに身を包んだ3人の女神のお話です。

▲思いを寄せる彼が飛び立つ。本当はしっかりと顔を見つめて見送りたい。でも……。
▲この中にはどんな書類が入っているのだろう。辛いこと、素敵なこと様々なことを彼女は記録しているのかもしれない
▲今日はどうだった? 帰還したあいつとのこんなやりとりが今日もできた
▲男勝りな私はついついこのドロップしたポケットに手を入れてしまう。裾もアンクルブーツに被るくらいブカブカだ
▲愛機から降りる。今日も無事にミッションをこなした
▲パラシュートとハーネスをグッと肩から担いで、勇ましく。大きめの服も性に合ってきた
▲3人でいると戦場の不安も和らぐ
▲時には調子の良い奴もやってくる。少し小柄だと思うけど、顔はイケてるはね。
隣に乗ろうかしら?

 ウクライナのメーカー、ICMは様々なスケールのフィギュアをプラキットで送り出しています(輸入・発売元/ハセガワ)。どれもドラマ性を重視した内容とデッサン力のあるキットが多く、ひとつの模型に様々な物語を付加することができます。その魅力により僕は、ハセガワの1/32の「P-40」まで一緒に組みたくなってしまったほどです。組み合わせた景色を見たい!どんな絵になるのか?店頭で手に取り、お家で完成させて眺めるまでの時間は、本当に至福な体験でした。

 ちょっと男勝りで勝気な3人の女性たち。あなたのプラモにはどんなストーリーをもたらしてくれるのでしょうか? 

⬛︎ICM US 女性パイロット WASP(1943-1945)本体価格2500円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

兵隊タワーバトル! 〜欲望のままに接着したい〜

 このタミヤ 1/48 「WWⅡドイツ国防歩兵チーム」の箱の中には15体の兵士フィギュアが入っている。私のは使いかけだ。パッケージアートを眺めていた私は、「この人形達、後ろの方で全部接着したらパッケージの絵のとおりに作れるんじゃないか?」とか、そんなことを考えてしまった。つまり、頭と袖を接着したりとか、膝と背中を接着したりとかだ。現代のパワフルなマテリアルならそれが可能かもしれない。しかし見たところ描かれている一人一人の大きさが違うし、そんなに上手くいかないだろうなあ。

 でも、小スケールならできるはず!一度閃いてしまったからには、今は兵士同士を接着したくてたまらない。ミハイルはもう、遊びたくてたまらなかった!このキットには、体勢が不安定な兵士のために、直径2センチほどの台座が用意されている。これを使わない手はない。

作品No.1「突撃、偵察、かくれんぼ」
 本来、塀を乗り越えようとしている小銃手の体勢が、他の兵士の肩に手を置いたのが運の尽き。ビビって前に出られない兵士になってしまった。「無理無理、超無理っす、先輩お願いします」。こんな変なポーズでも、手前の兵士に密着させて流し込み接着剤をスッと入れれば固定される。人形遊びの可能性を確かに感じてしまった!これは楽しい!

作品No.2「せんぱぁ~い、仕事終わりました?マッハで飲み行きましょうよ。」 
 定時上がりの浮ついた空気に、一人残業の上司。「うるせえ!俺は残業なんだよ!肘を置くな肘を!」金曜仕事終わりの開放感でテンションが高い様子。右のヤツの陽キャ感がやばい。後ろで雄たけびを上げているのは、元々は地に伏せた状態で機関銃を構える真面目なソルジャーだ。

作品No.3「早く帰りましょうよ。ここ、何か出るって噂があるんです。」
 何かの存在に怯える3人。左の人は左手で戦車長の肩を叩いています。彼の左頬には戦地で捨て駒に利用され散った怨霊の手が、みたいな。デス・ストランディング的な。最終的に余った人形をひとまとめにしたら、完全に精神を病んでいる人の世界になってしまった。
 「縦に積んでみる」というのは今回一番やりたかった事でした。でもまさか本当に掌の面積でここまで接着できるなんて! 1/48は小さいから、重さも軽い、という事もあってギリギリ成立しました!

 3作品を並べてみました。密度がすごい。当たり前ですが、ある程度の人数をまとめてみるとひとつひとつにボリューム感が生まれてかなり満足です。造形の細かさといい、最近のミニチュアの駒みたいですね。こういうものだと思って塗るとしたらどんな感じになるかな……。

 「しかしこんな強力な接着剤… 一体どんな接着剤なんだ…。」って、見切れてる! 見切れてる!

 今回は歩兵を接着して遊んでみました。この遊びはめちゃお手軽にできるので、もし兵士セットが半端に余っていたらやってみよう!(マジで?)このほかにも豊富なアクセサリーが用意されているので、水筒をひたすら高く積み上げたり、機関銃を複数地面に突き刺してマミさんを思い出してみたり、アイデア次第で楽しみ方は無限大だ!じゃあな!!

■タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ No.12 ドイツ陸軍 国防軍 歩兵チーム プラモデル 32512

ミハイル

福島県出身 1990年生まれ 模型を楽しんでいます マスキングが苦手 下のリンクの『火星深青』でブログを執筆していますので、模型に興味がある方は是非見に来てください。

新色とプラモの幸せな関係

▲45年間、返事を待っている彼の前に2020年突如新たなアフリカのカラーが届けられた

 2020年、ドイツ アフリカ軍団を新たな色で楽しむことができチャンスがきました! これまで作ったことがある車両でもまたお代わりできる! これからの人は今回発売された色でも、昔の色でも両方楽しむことができます!

▲ドイツアフリカ軍団の1941年以降に使用された車両の塗装に向いた「XF-92 イエローブラウン」、1942年以降に使用された車両の塗装に最適な「XF-93 ライトブラウン」。色味はリンクのタミヤさんのツイッターを見てください

 新色が出ることって模型を作るきっかけにもなると思うんです。そして混色しなくてもかっこいい色に仕上がるならより快適に塗装を楽しめます。あと何で今ここにきて新色が出るのか? ドイツアフリカ軍団なんてもう散々やってきているでしょ? と思うかもしれません。そこがまた面白いところで、今でも当時の色は多くの研究者があーでもないこーでもない言っているんです。そして近年発売された『第2次大戦 AFVリアルカラー 日本語版 REAL COLORS OF WW2』という本の登場で、また「色」が注目を集めることになりました。どんな本かはこちら、からぱたの超音速備忘録の

「あなたは模型を見て模型を塗っていませんか?」をご覧ください。

▲タミヤ1/35MMの名作「キューベルワーゲン」。これを塗るにもぴったり。僕も昔作ったダークイエローのものと、どんな違いになるのかな〜と今から楽しみで仕方がありません

新色が出て、再び模型屋さんの棚にある定番商品が輝く。模型とマテリアルの幸せな関係です。新たなアフリカの色は僕らにどんな楽しみをもたらしてくれるのでしょうか? スケールモデルもキャラクターモデルも、この夏みんなでアフリカ色に染めてみませんか?

▲僕はお家にストックしてあったドイツIII号戦車L型ロンメル野戦指揮セットをこの機会に塗ってみようと思います! ザクとかドムとか塗ったらかっこいいだろうな〜。ラッカー、アクリル、両方発売中です

⬛︎LP-77 ライトブラウン (DAK 1942~) 本体価格160円(税抜き)

⬛︎LP-76 イエローブラウン (DAK 1941~) 本体価格160円(税抜き)

⬛︎アクリルミニ XF-93 ライトブラウン (DAK 1942~) 本体価格150円(税抜き)

⬛︎アクリルミニ XF-92 イエローブラウン (DAK 1941~) 本体価格150円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモに深みとコクを出す超便利テク、「スミ入れ」をしてみませんか。

 プラモに深みとコクを与えたい、そんなときにやりたいのがスミ入れでございます。スミ入れというのはプラモの凹んだところに暗い色を入れることで陰影をバキッとさせるテクのことで、塗るというより流し込む感じで行います。なので正直スキルは全然必要なくて、やればできる。やればできるので、やってみませんか? という記事です。

▲プラモをよく見るとパネルが分かれているんだろうな〜というところに細いスジがありますね。
▲我らがタミヤからは「スミ入れ塗料」というものが売られています。便利すぎる……。
▲フタには先が尖った筆が付いていて、いたれりつくせり。めちゃくちゃ良く振ってから使おうね。
▲凹んだところを狙って、えい〜と流します。はみ出ても大丈夫です。人生はいつもはみ出がち。
▲どわ〜っとスミを流しまくり、ああもうダメだ、私のプラモは終わりよ!という様相になりますが……
▲生乾きのうちに綿棒で拭きましょう。進行方向(この場合は前後?)にゴシゴシするとコクが出ます。
▲上がスミ入れ前。下がスミ入れ後。コクとありえん深みの良さ。

 このスミ入れ塗料、俗にエナメル系と呼ばれる塗料でして、溶剤はたぶん鉱物系の油です。これがスジのなかをサーッと流れる秘密でもあるのですが、なにぶんプラスチックに浸透して脆くする性質があります(これはプラスチックの質や乾燥までの時間などいろいろな要因があるので一概には言えませんが、ABS樹脂とかスナップフィットですごいテンションのかかるプラモとかだと割れちゃうことがあります)。

 で、割れるかどうかは不要なパーツとかで試してみるほかないのですが、匂いが苦手〜とか絶対割りたくない〜という人にはこういうソリューションもあります。

▲出た!シタデルカラー!!

 シタデルカラーというのは水性塗料で、無臭かつ筆を水で洗えるのが魅力。このSHADEというシャバシャバの塗料はちょっとお値段が張りますが、NULN OIL(ナルンオイル)というカラーは経験値高めのモデラーにも重宝されている絶妙な配合が魅力。黒というか茶色というかなんというか……とにかく微妙に汚い!という感じの色です。乾燥まで少し時間をとる必要がありますが、リビングでビシバシプラモを汚したいだけ、みたいな日にも使えるのが最高ですよ。

▲細い筆ですくって、先程と同じようにドワーっと流していきます。水たまりが出来ないように伸ばしましょう。
▲先程と同様、余分なところは綿棒で吹いてフィニッシュ。上がシタデル、下がタミヤです。
▲バチバチバチーっと組んで、完成!ツヤツヤのプラスチックとは違う重量感。ラインがしゃきっとして見えますね。

 プラモをカッコよくしたい!と思うと必ずオススメされるテクがこのスミ入れ。これをやらなきゃいけないわけではありませんし、ただ組むだけでもプラモは相当に面白いのですが、たった数分の手間をかけるだけで表面のツヤが消えてピリッとした印象になるので、本当に楽しいのです。世の中には片っ端からスミ入れするのがカイカン!という人もいるぞ。

 ……ということで、休みの日や夕飯のあとに「なんかやってやったぞ!」的な達成感を味わいたい瞬間、「そうだ!あのプラモにスミ入れしてみよう」という遊びに興じてみるのはいかがでしょうか。思ったよりも難しくないし、その効果は絶大です。みなさんも、ぜひ。

■タミヤ スミ入れ塗料(ブラック)

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世界一愛溢れるプラモ箱

 そこはまさに2人だけの世界。誰もがひと目見て幸せな瞬間だと感じる。プラモのパッケージアートの力。
 僕らはそんな力に引き寄せられて模型を手にしてしまう。

▲愛、希望、解放。
キスには人間を揺さぶる力がある

 戦車の模型だから戦車をメインに。そんな硬い事は言わずに、切り取った世界でも良いじゃないか。それこそ模型の切り取り方を素敵な景色として提示してくれている。心がつかまれる。

 模型の中の話も楽しいけど、パッケージアートを見た感想をみんなでお話しするのもありだよね。早くそんな話をしたい。その日は必ずやってくる。2人もそんな時間をきっと過ごして、キスをしたんだろうからね。

▲箱の中身は?2人の幸せな時間を僕には邪魔できないよ。ごめんね

■モンモデル 1/35 アメリカ軍中戦車 M4A3 (76)W 勝利のキス 参考価格15000円

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

オレの選ぶ「瞬間接着剤のMVP」はドイツ生まれで曇りなし!

 プラモ作りを加速してくれるツールの代表格、それが瞬間接着剤でございます。コンビニで売られているものから模型店で売られているもの、工業用や医療用などさまざまな種類があって、それぞれ特性が違います。「瞬間接着剤と言えばアロンアルファでしょ!」という人も多いとは思うのですが、自分の使い方やクセにピタリとハマる瞬間接着剤を探す旅というのはなかなかに奥が深いものです。

 ということで、本日紹介するのは私からぱたが辿り着いた一本。とにかくもう「これがないとプラモ作れません」というレベルで家に備蓄され、プラモ作りのあらゆるシチュエーションで活躍してくれる逸材となっております。

▲LOCTITE 460

 ロックタイトというのはドイツのヘンケル社が発売する瞬間接着剤、多用途接着剤、パテ、はがし、クリーナー、革ケア、防水スプレー、ホームケアなどに関連する製品のブランド。業務用のカタログを見ると「瞬間接着剤そんなに種類があるんか!?」と驚くほど。粘度や硬化時間、硬化後の粘り、接着する素材の種類や温度などあらゆるパラメーターに合わせて展開されており、なかでもこの「460」は私のプラモ作りにおいてなくてはならない存在です。

LOCTITE460のここが好き!
■量が多い。ドバドバ使うことに躊躇しなくなる!
■臭わない。瞬間接着剤特有の匂いや目に染みる成分が抑えられています。
■サラサラでもドロドロでもない適度な粘度。
■まず白化しない。パーツが曇ることはほとんどない!
■硬化は言うほど瞬間でもないので、ビミョーな位置修正に数秒は対応できる。

 値段はそこそこしますが(買うお店によってすごく違いますのでよく調べて下さい!)、これは一般的なパーツの接着にも使えますし、合わせ目の強度を確保するために裏側にドバドバ流して硬化させたり、急いで傷や凹みを修復したいときにパテ代わりにしたり……と、多目的に使えます。

▲日本ではこういうPKGに入って売られています。
▲透明のランナーを合体させてみましょう。
▲15秒くらいで硬化しました。そして貼ったところの周りが白くならない!

 私、先端ノズルが細すぎる瞬間接着剤があまり得意ではなく、力加減によって吐出量がコントロールしにくかったり、先端が細すぎて柔らかく、狙ったところにぴしっと出せないというのも苦手。このLOCTITE460にも細ノズルが付いているのですが、私はこれを使わずにセメダイン社から発売されている「瞬間細ノズルN-10」を差し込んで使っています。たまたま460にピタッとハマる形状なのに加え、適度に太さと硬度があるので狙ったところに出しやすく、通販でも買いやすいのが最高。

 樹脂パイプを引き伸ばして製造される一般的な瞬間接着剤用ノズルと異なり、こちらは成形品なので個体差もありません。若干詰まりやすい気もしますが、これはカッターで先端をビシバシ切りながら使い、本格的に扱いにくい長さになったら交換しちゃいます(10本入りの細ノズルをまとめ買いして、いつでも手の届くところに置いた小さめのタッパーにザラザラザラーっと50本位入れておくと、これまた躊躇なく交換する気になるのでオススメですよ)。

 瞬間接着剤を使う上で超大事なのは硬化スプレー。プラモを大量に作る人、せっかちだからバンバン固めたい人、あと無理のある接着シーンに出会ったときに一撃でくっつけたい人は必携です。とくにアルテコのスプレープライマーはものすごい大量に入っており、一本買えば製作中になくなる可能性がぐんと減ります。ちなみに上の写真を見れば分かる通り、ノズルをぶった切って短くするとハンドリングしやすくなり、ノズルに腕を引っ掛けてプライマーごとぶっ倒す確率が下がるのでオススメのカスタマイズだと言えましょう。

 プラモを作っていて一番困るのが「いまいいところなのに、マテリアルが底をついたので製作を中断しなければいけない!」というシチュエーション。モチベーションは下がるし、買い物行くまで作業はストップです。そういう意味で、一回に払うコストが少々UPしたとしても、”お徳用”を手元に置き(とくに接着というのはプラモでも基本的な動作ですから、接着剤は切らしたくないですよね)、いつでもガンガン作れるようにしておくというのがプラモをたくさん楽しむコツだと言えます。

 もちろん、「オレはシャバシャバの瞬間接着剤を巧みに操るぜ!」とか、「ゼリー状瞬間接着剤がないと生きていけないぜ!」という人もいますし、ここで示したのはあくまで私の模型製作に合わせたチョイスです。みなさんは瞬間接着剤にどんなこだわりを持っているでしょうか。もし「こんなブランドが気に入っている!」とか「こんなケミカルが欠かせない!」みたいなリコメンドがあれば、これまたみなさんからも発信してみてほしいのです。ぜひ!

■LOCTITE(ロックタイト) 高機能瞬間接着剤 460 低臭・低白化 20g LIC-460

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

何度でも作れるという幸せ。タミヤ 1/48 シトロエン 11CV スタッフカー

 プラモはその気になれば何度でも同じものを作れる。
 同じ幸せを何度もかみしめることができるのが一見楽しそうなのだけど、そこは人間。メインカラーが変わったり、どこをどう塗るのかがそのときの気分で変化する。ここにわざわざプラモを作ることの面白さがあったりする。

 タミヤの1/48ミリタリーミニチュアの中でも屈指の名キットが「シトロエン 11CV スタッフカー」。私はこれを教えてもらって、作ることにしたのだけど、最高だった。ミリタリーミニチュアシリーズはこういう「隠れカーモデル」みたいなものがいくつかあって、これもそのひとつだ。公式写真のマイナスネジみたいなライトカバーの他にクリアパーツもついていて、そのおかげでミリタリー感の無い、小さくてよくできたカーモデルが出来上がる。

 作るのはかなり簡単。見た目は最高。色も何色に塗っても最高。つまりどこをとっても文句がない。雰囲気が良さも手伝ってか、塗らなくても最高だと思う。出来上がるまでの時間は、なんというかコーヒーを入れて、お菓子を食べてと、しばしのティータイムを味わうような感じで、手間をかけるのが楽しい時間が続く。そして、それを何度でも味わう。

 サイズ感が手頃なのでどこでも作れる。塗るのも、さほど難しくない。朝塗ったり、仕事から帰ってきて夜に塗ったり。いつでも塗れる程よい大きさ。筆で撫でる曲面もつるんとしていて気持ち良い。

 その日の気分で色を混ぜてチャレンジ。いつもは塗らないパステルカラーなんかも遠慮なくGO。好きな色が見つかったりするし、そうでなくても好きな色の11CVを引き立ててくれる渋い一台が出来上がる。それくらいにこのキットはいろいろなことを受け止めてくれる。守備範囲が異様に広いのだ。

 最終的に6台作った。確かひと月半くらいで作ったと思う。
 とにかく楽しい。いろんな色を塗ったが、どうやってもエレガントなカーモデルが程よいサイズ感でノーストレスで出来上がる。これはすごい。
 たくさん作ることの最大のメリットは作業工程の最適化のように思えるが、冒頭にも書いたとおり、同じものを何度も作っているのにそのときの気分で何をどう塗るのかはかなり場当たり的になったりすることが可視化される面白さとも思う。そして、それが決まった形になって部屋に並ぶことが気分が良い。

 うっとりするようなブラックの実車を見たときに「わ、模型の通りのエレガントさ!」と思ったりもした。それほどまでに雰囲気の良いキットを自分の思いのままに塗る遊び、最高だと思いませんか? 

■タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ No.17 シトロエン 11CV スタッフカー プラモデル 32517

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

放送から10年以上経った仮面ライダーを中心線で割って飲む!

 こんばんは、向井秀徳です(違)。冷凍都市ならぬ風都からお届けいたします。

▲サイクロン!!!!!!!!
▲ジョーカー!!!!!!!!!!

 パピコ、雪見だいふく、キットカット。共通する特徴はなんでしょう〜カチカチカチカチはい時間切れ!!正解はふたりでパッキリ分けられるお菓子でした〜。いいですよね分けられるお菓子。そんなお菓子のように、パートナーと、お子さんと、職場の仲間と。ふたりで分けて作ってハイパー楽しいプラモがあるので皆さんに見せます。

 オレ?一人で組みました……。

 嫁さんの鏡を拝借して撮影したので上の写真は完全にウソなのですが、このプラモは仮面ライダーの半身がふたつ入っていて、合体させると仮面ライダーサイクロンジョーカーになるという構成になっています。実際はこう。

 菅田将暉と桐山漣、ふたりが好きな方を組んで最後に合体するという遊びかたができるというエクストリームなプラモとなっており、ランナー構成も色がパカーっと分かれているのでとにかく組んでシール貼ると良い景色が生まれます。

 で、半身ではなく一体のアクションフィギュアとして組むこともできるしそれはそれでめっちゃポーズとか取って遊べる(というかまあそっちが普通の遊び方としてまず説明書では書かれています)のですが、下の写真のパーツを見たら「え、普通に組むよりまずこっちで遊びたい!」と思いませんか。オレは思いましたね。

頭〜胴体のパーツを固定する板状のパーツからいろいろな形のダボが突き出ています。一度ふつうのアクションフィギュアとして組み立てたあとにバラバラに分解し、外装パーツをポチポチとこの板にくっつけていくことで、ふたつの半身が出現します。

(腕と足は動きますが、当然胴体はこのカタチに固定されます。この固定というのがいい。ポーズがビシッと決まって、モノとしての剛性感も出て、本来的な意味での「模型!」という感じがするので。)

▲サイクロン!!!!!(2度目)
▲ジョーカー!!!!!!!(2度目)
▲「もしかして……」「わたしたち……」
▲「「ジョーカーエクストリーム!!!!!!」」

 いわゆるロボットプラモってだいたいが左右対称で右腕組んだら左腕組まなきゃいけないし、右脚組んだら左脚組まなきゃいけないし、ああもうめんどいな〜と思うことがあるんですが、この仮面ライダーは左右で色の違うやつが合体するというとんでもない設定を取り入れることで菅田将暉と桐山漣を文字通りダブル主役にしたとう恐ろしい番組。オレはアホなので緑色の右腕を組んだあとにまったく同じ構成の黒い左腕を組んでいたら「お、なんか新鮮!」と思ってしまった。ガンダムも左右で色が違うともうすこしモチベーションが維持しやすくなるのではないだろうか(暴論です)。

▲どうですか、組みたくなってきたしヒートメタルと混ぜて遊びたいでしょ。

 半割れじゃなくてちゃんと可動フィギュアとして組んだらどうなるんだよ!というのはまあいっぱいレビューとかあるだろうしバンダイホビーサイトに行って確認してもらえばそれで済むので、今回はこのプラモの最大のバリューである「半固定の半身ライダーをそれぞれ作って最後に合体させてたのしい!」という遊びを紹介しました。オレはエターナルが好きです(左右同色やないかい!)。

 ……ということで、現在はヒートメタルとルナトリガーも同じシリーズで発売されていますので、好きなフォームを選んでパートナーやお子さんや会社の同僚と遊んでみて下さい。ぜひ。

■BANDAI SPIRITS Figure-rise Standard 仮面ライダーW サイクロンジョーカー (税込3,520円)

からぱた/nippper.com 編集長

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これがあればプラモが一気にうまくなる!? 「せっかちモデラー」にオススメしたい最高の相棒

 皆さんは、せっかちでしょうか。それとものんびりおおらかなタイプでしょうか。
 なんて質問をする、私は超せっかち。
 買い物だって洋服だったら着て帰るし、靴だったら履いて帰る、時計だったら着けて帰る。模型だって、買ったらすぐ作りたいし、すぐに完成させたい。
とにかく早く早く早く。一体何を急いでいるのか……。

 週末の限られた時間、模型以外の趣味もあるし、楽しいことはできるだけたくさん味わいたい!と思っているけど、そうはいかないのが模型作り。
 接着剤でしっかり固定、塗料はよくかき混ぜて。塗装が終わったらよく乾かして……。デカールは水につけた後はしばらく放置。

 しっかり!よく!しばらく!この時間を我慢できずに何度遠回りしたことか。そして、これ時間をかけることに越したことがなかったりすることがほとんどなのも、困った話。

 そんな私を救ってくれたものは時計。デスクトップタイプの素朴なやつ。おすすめはデジタルタイプで秒数表示のあるものです。

 どう救われたかを書くまでもないような気がしますが、接着剤をつけたパーツを指で固定するときに、ふと目をやります。10秒……。
 ハイグレード模型用セメダインは2、3分放置してから取り付け。なるほど、今は33分だから35分まで放っておくか。塗料をかき混ぜながら30秒、デカールを水につけながら数秒。
 時計を見ては、数える。待つ。それの繰り返し。

 そういうことをしているとですね、これは便利だと思います。もちろん現代風にスマホを使って測ってもいいんですけどね、チラッと目をやれば

「見てますよ……あなたの模型製作」と言わんばかりに時を刻んでこちらを見守ってくれています。

 こうして見守ってもらうとよくわかります。私、スピード出し過ぎだったんだなって。こういう作業工程における待ち時間って、信号みたいなもので信号が変わる前に次、次、と進んでしまうと、うまくいっている間は良いんですけどいつか事故ります。接着剤が糸引いたり、塗装面に指紋がついたり、デカールが裂けたり。

 そう思うと模型作りにおける時計、本当に最高の相棒です。
 待つことで減るミスの数、そしてたどり着くは最高の完成。
 模型の安全運転に時計を一つ、作業スペースの手元に置くととても良いと思います。

 ちなみに私、先日塗料を混ぜている間、頭の中で30秒数えていましたが、チラッと時計を見たらまだ10秒しか経っていませんでした(塗料は本当によく混ぜた方がムラなく、綺麗に塗れます……)。

 プラモ作りに時計。一見関係ないようですが、作業の速度を定量的に計測することで、プラモ作りの精度は一気に向上すると思うのです。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
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ジープに火炎放射器!? やべーじゃん。

特殊装備はいつだって僕たちの心をがっちりキャッチ!! しかもジープのような超メジャーな車両ががらりと姿を変えているとなおさら心惹かれます。今回の記事の前にこちらも合わせて読んでいただけるとさらに楽しめると思います。

▲タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ(以下MMシリーズ)No.219 U.S.ジープ・ウイリスMBの魅力をご紹介した記事です
▲本サイト内のNAOKIさんにより記事を参考に、iPhoneXで撮影した写真

 ご紹介するのがこちら!!!ジープに火炎放射を搭載しちゃったやばいやつ、「モンモデル 1/35 イギリス軍 小型軍用車両 ワスプ 火炎放射器装備」 です!!

▲パッケージからすでに感じるやる気。だって後ろめっちゃ燃えてますもん

 イギリス軍にはプラモが作りたくなるかっちょいい特殊部隊がおります。この車両もそんな特殊部隊仕様。『ガンダムUC』でいえばエコーズ隊みたいなやつですかね。3つご紹介しますので、名前だけでも覚えて言ってください。

▲イギリス軍が敵戦線後方の偵察や攪乱攻撃を目的として編成した特殊部隊「LRDG」。Long Range Desert Group(長距離砂漠挺身隊)の略。
タミヤ 1/35 イギリス LRDGコマンドカー 北アフリカ戦線(人形7体付き)本体価格3,000
▲第二次大戦中の北アフリカ戦線で、ドイツ・アフリカ軍団を苦しめたイギリス軍特殊部隊SAS。Special Air Serviceの略。模型も超絶カッコイイのでぜひ!!!
タミヤ 1/35 イギリス S.A.S.ジープ 本体価格1,200円

 そして今回の火炎放射ジープは……LRDG、SASに次いで設立された3つ目の部隊「ポプスキー私兵団」の仕様でキット化されています。上記2つの部隊よりはマイナーですよね。でも車両はイキってますよ!!

▲超カッコイイ。フロントガラスなんて邪魔! 燃やしちまうぞ!!と元気いっぱい。SASジープともにこちらもジェリカンが多すぎて笑えてきます
▲車体系のパーツとワスプ火炎放射器のパーツでランナーが分かれています
▲ボンベとかパイプとかなんだかおもしろいパーツがいっぱい! 特殊部隊仕様を作るんだぜ~ってワクワクしてきます
▲おじさんはもっと足周りはシンプルでいいと思うの。でも特殊部隊だからきっと細かいの(←大嘘です。)。そういって自分を慰める
▲手のひらに収まるボディにすんごいパーツもりもりしていきますよ~。あと穴開ける箇所多いのでピンバイスも準備してね!
▲ピンバイス用意してね!!1度買えば、あなたの模型の世界が広がりますです青函トンネル
▲エンジン。ジープのキットってとにかくエンジン!ってのが多いですが、見せたくなければボンネット閉じてす~っと次の工程に行ってもいいと思います
▲ドライブシャフトとかリーフスプリングとか細分化っす。前輪はステアリングも切れますよ。俺? 切れてないっすよ(パーツも小さければ、俺の器も小さい)
▲このパーツ分割はもうジープのお約束みたいな感じですね~
▲で、ちょっと気が付いたんです。パーツが細かいのにまぁサクサク行くなと。そしてたらこの段階までは、このAランナーとクリアーパーツのランナーしか触らないんですね。ランナーを行ったり来たりしません
▲もうほとんどジープの形が見えてきたところで、ランナーの往来が開始します。安全に渡れますね。ここからあなたもポプスキー私兵団の仲間入りですよ
▲装備をセレクトしてください。とゲーム画面なら出そうなもんの物量。セレクトしなくていいんです。全部搭載可能ですから!!
▲ヒャッハ~~~~!!! 行くぜ行くぜ!!! 出撃だ!!!! 全パーツ取り付けたらブンドドしたくなること間違いなし。テンションMAX
▲このごちゃごちゃ感。SASジープとはまた違った魅力があります。やんちゃジープです
▲ちょっと、おじさんも乗りたいけど、他社さんだしな~という声が聞こえてきますね
▲シンプルイズベスト VS GOTEMORI!!
▲ジープは楽しい! 左の空間もジープで埋めたい! たくさん揃えたくなるモチーフです
▲次はどんなジープと出会えるかな

 通常の仕様と特殊部隊の仕様を行ったり来たりすると、そのモチーフの可能性が分かって、さらに模型を作る時の想像力が増すかもしれません。ファインダーには捉えられていないものだって数多くいたはずです。そのような発想で楽しむのも模型の醍醐味!! 指から得た知識と感性で、あなたの「自由」のイメージをより誰かに話せるものにしてみるのはいかがでしょうか?

■モンモデル 1/35 イギリス軍 小型軍用車両 ワスプ 火炎放射器装備 参考価格6,050円

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

RETURNING HUMAN SPACEFLIGHT TO THE UNITED STATES.

 スペースシャトルが退役したのは2011年。それからロシアの宇宙船に頼ってきたアメリカの有人宇宙飛行の歴史があと数時間で大きく変わる。
 PayPalとテスラを生み出した実業家、イーロン・マスクの経営するスペースX社によって、今日、NASAの宇宙飛行士2人が、同社のカプセル型宇宙船”クルードラゴン”に乗って国際宇宙ステーションに向かうのである。
 クルードラゴンを搭載したロケットの打ち上げは米東部時間5月27日午後4時33分、日本時間5月28日午前5時33分に行なわれる。アメリカ合衆国の発射台から有人宇宙船が打ち上げられるのは9年ぶりとなり、民間企業が設計したロケットと宇宙船が国際宇宙ステーションに向かうのは史上初めてのこととなる。

 今から寝て早起きするか、すぐに起きるか。どちらでも人類の宇宙開発史に残る事件を目撃することになるし、おそらくこれは「プラモデルになる事件」に間違いないと思われる。

 アメリカが再び、自前のフネで宇宙に行く。この瞬間を見られる人は幸運だ。そして、日本のHTV(最後のミッションとなった)が先日ISSに無事到着したことも祝福しつつ、今日は家にある宇宙開発モノのプラモを掘り返し、愛でてみてはいかがだろうか。

 まずは、クルードラゴンの打ち上げ成功を祈って。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

海外モデラーの戦車模型技法てんこ盛り!!AFVモデリングのための教科書

▲欧州トップモデラーヨアキン・ガルシア・ガスケス氏による”Step by Step”

 模型雑誌の定番「月刊ホビージャパン」を発行している株式会社ホビージャパンより発売された「AFVモデリングのための教科書」。そのままずばりのタイトルなので、戦車模型の作り方が載っているのね~と想像がつくと思います。こちらは欧州のトップモデラー「ヨアキン・ガルシア・ガスケス」をフィーチャーしたもので、海外のモデラーの製作工程はどんなものなのかも見ることができます。この本のように、最近は国内のモデラーだけでなく、海外モデラーの作品に焦点を当てた翻訳物が増えてきましたね。嬉しい限りです。

▲基本的な工具は僕らと変わらないし、製作の初手も変わらない。プラモの初手は世界共通なのか~と思えると安心してこの後の記事についていきたくなります
▲この本の良いところは、テクニックで各コーナーを区切っているところ。1両を作りながら様々な工作を見せていくのではなく、テクニックで区切っているので検索がしやすいです。もちろん前者の方法もショーを見ながらテクを学べるので大好きです
▲フィルタリングって何だべさ? 油彩はこれさえ買っておけばよいのかな? リコメンドはうれしいね~
▲みんな大好きチッピング! トップモデラーはどんなことをしてるのでしょうか?

 と、模型を作ったり塗ったりしている時にちょっと不安になった時にもすぐ調べられるので便利! 途中写真もきれいなので、とても見やすくやる気がアップしていきます。本書を読んで、あなたの戦車模型に新たなエッセンスを加えてください。

※本の中面は許可をいただき掲載しております。

■ホビージャパン AFVモデリングのための教科書 本体価格2700円(税別)

ハセガワのプラモの説明書にQRコードが付いている件

 そういえばこないだビックリしたことがありまして、nippper用にハセガワのゼロ戦をサクッと作るぞ〜という記事があったんですよ。

 こちらに一応リンク貼っておきますね。

 で、「ハセガワのいつでも売ってる定番アイテムの説明書を見るのひさびさだなぁ、図版がレトロで味があるなぁ」なんて思いながら眺めていたら、見慣れないものがあったんですよ。なんと”QRコード”ですよ。30年くらい前のプラモの説明書にQRコードが印刷されているって、ストレンジですよね(版下をすこしいじって新しい情報を付け足したんだろうな、と思います)。

 まあその説明書はすでに処分してしまったのでここに画像を掲載することはあえなく断念したのですが(ダメすぎる)、何のリンクだったかというと、「デカールの貼り方」の動画なんですよ。あの水でうるかしてから(「うるかす」というのは北海道方言なんですが、デカールを水に浸してウヨウヨ動くまで待つ行為を指す動詞って「うるかす」以外なくないですか!?)貼る、めっちゃむずいアイツ。アレを貼る方法が動画になっている。もちろん説明書にも説明用の図版はあるのですが、やっぱり動画だと「切る」「水に浸す」「ウヨウヨするまで待つ」みたいな呼吸、間合いみたいなもんが動きで分かるので良い。

 スケールモデルとか高めのガンプラ作っていると絶対にぶちあたり、そして「うわーむずい!」ってなるデカールの貼り方。メーカーがこうして動画にして学べるようにしているというのはなんかいいなぁ、と思ったのでした。

 先日nippperでも紹介した、「タミヤの最近の模型に入っているプラモの基礎が書かれた紙」もそうなんですが、メーカーさんもせっかく買たプラモを失敗しないように、いろいろなメディアを使ってフォローアップする動きが出てきたのかな、と思います。

 みなさんも、説明書の隅々まで見てみると「え、こんなとこにこんなこと書いてあるのかよ!」という発見があるはずです。もし見つけたら、SNSでシェアしてみると、幸せになる人が増えるかもしれませんよ!

からぱた/nippper.com 編集長

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すべてのモノに命が宿る魔法のプラモ「ヨシおじさん」を手に入れるべし。

 ▲ニッパー、ヨシ。
▲サイドミラー、ヨシ。
▲コンテナ施錠、ヨシ。
▲シド・ミード、ヨシ。
▲本来の使い方、ヨシ!

 「ヨシおじさん」というのは、タミヤの1/24 スポーツカーシリーズ No.266 ラリーメカニック セットに入っているドライバーを指す。恐ろしいスピードで悪路を走るラリーカーは、短い時間で修理や整備をしなければいけない。セットには4人のメカマンと1人のドライバー。ドライバーはおそらく「ここのセッティングが微妙だ。もっとハードにしてくれ」みたいなことを指示しているのだろう。この指差しポーズは、ありとあらゆるミニチュアにフィットする。

 メカニックの4名はパーツを選んで組み立てることによりそれぞれ異なるポーズ(寝そべっているのが2体、膝をついているのが2体)に仕上がる。工具を持たせたり、タイヤをもたせたりすればそれだけでドラマが生まれる。

 指差しポーズのドライバーは1体のみ入っている。組み立てはカンタン。切って貼ればOKだ。

 シルバーのランナーは同じパーツのくっついたものが2枚入っており、こちらには豊富な工具類が用意されている。ジャッキ、ツールボックス、ブレーキディスク、インパクトレンチ、オイルジャグ、ノートパソコンetc.……。

▲レンチやドライバーの立体感にうっとりし
▲ノートパソコンのキーボードに盛り上がり
▲PCの画面を再現したデカールもまた良い。

 ミリタリーモデルならまだしも、1/24スケールでこんなに想像力をかきたてられるフィギュアセットというのは他にあまり類を見ない。なんなら、このセットさえあればラリーカーを作らなくても「ここにはラリーカーがあるな!」と知覚できてしまうほど、このプラモは具体的な景色をカタチにしているのだ。

 大きさもまた良い。小さすぎず、大きすぎず、プラモに限らず身の回りのあらゆる小さいものにちょうどいいサイズで、指差すポーズというのは、人とモノの間に何かしらの関係性があることを一発で理解できる不思議な魔力がある。もうひとりの片膝をついたメカマンがいれば、なおさらだ。物騒な鉄砲を持ったり、叫んだりヘルメットをかぶっていたりしないのも、ユーティリティープレイヤーとしての素質に溢れている。

 「人間」というのはあらゆる人が知っているモチーフであり、それがだいたいどんなふうに振る舞い、どんな気持ちのときにどのような表情になるのか想像できる。だから、人間が置かれた景色を見ると、対象の大きさや置かれた状況が突然自分のことのように理解できるようになる。これがフィギュアの持つ最大の効能と言ってもいいかもしれない。

 キットではスバルチームかプジョーチームを選択して塗装し、各チームのロゴを再現したデカールも用意されているのだが、これはスバルのクルマやプジョーのクルマと合わせて展示するときに最大の威力を発揮するわけで、なにか写真を撮るときに、ふとそこに「指を指している人がいるといいな」と思って召喚するならば、黒子のようにアノニマスな、単色のほうが引き立て役として優秀である。

 「顔を塗るのが難しいから、フィギュアは作りません!」というのはもったいない。人間はもっとも身近な造形物であり、万物の尺度であり、そのポーズが想像力をブーストする存在だ(建築模型に決まって白い人間のフィギュアが添えられるのは、こうした理由による)。そこにただ人の形があることで、SNSや展示会におけるあなたのプラモへの注目度は10倍も20倍もアップすることを約束する。

 すべてのモノに命を吹き込む魔法のプラモを、あなたもぜひ。

■タミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ No.266 ラリーメカニック セット 1600円(+税)

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あなたのボイレに「瞳」はあるか? 僕のインストの着眼点

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! できてんだよ。すでにBf109 G-6がよ。

▲ランナーが3枚しかないんだぜ。しかもうち2枚は小さなランナー。実質1枚じゃないか

 キットレビューしようと思って組んでたらあまりに気持ちよくて全部組んじまったんだよ。ライターとして取り返しのつかない途中写真撮影し忘れ問題。時を止めるスタープラチナ、ザ・ワールドもどうしようもない(あいつら器用なんでもう一回きれいにバラバラにできるかもしれないけど。俺には無理)……

▲タミヤ 1/72スケール ウォーバードコレクション メッサーシュミット Bf109 G-6。2019年4月に発売された現代フォーマットのG-6だ

 ジョジョネタはこれぐらいにして、タミヤが発売している1/72スケールの飛行機模型「ウォーバードコレクション」。このシリーズはイタリアの模型メーカーのイタレリ製のキットの物と、タミヤ製のキットの物で構成され、イタレリ製の物にはイタレリですよと箱に書いてあります。今回ご紹介するのはタミヤ製でシリーズの中でも新キットになる「メッサーシュミット Bf109 G-6」であります。ドイツ軍、いや人類が生み出してきた戦闘機の中でも超傑作機のひとつで、飛行機模型を知っていくと一度は作ってみたくなるモチーフです。

▲機首側面の「ボイレ」と呼ばれるふくらみに「瞳」が! 実際にあったものがこんなおしゃれなマーキングしてるんです。センスの良い模型を触ったり、知ったりすると、そりゃその人のセンスがあがるってもんです
▲Bf109は様々なタイプが存在します。その中のBf109 G-6というのはシリーズ最多の13000機以上が量産された代表的なものです。ていねいに解説された冊子も付きますので、かっこいい!と思ったら買っちゃってしまって大丈夫ですよ! 

 ちょっと今回は僕が飛行機模型を作る時に、説明書の何を作る前にチェックしているのかというのをご紹介します(途中写真わすれちゃって~)。特にこのキットは非常に優秀な構成で(特に主脚が最高)、道に迷わず形になります。そうやって自然と経験値を積んでいけるキットがタミヤには多いですよね。

▲コクピットの取り付け方! 飛行機模型は本体でコクピットを挟み込むか、それともBf109 G-6のように本体の下から入れられるのかを僕は良く見ます。前者であればコクピットをまず塗って。後者であれば、本体を組んでみたりしてある程度形にしてみたりします
▲水平尾翼はその名の通り水平にしたいですよね…。このキットのすごいのは、水平尾翼の両翼が1パーツになっていて、それを垂直尾翼で抑え込むようにして取り付けることで、ガタつかずに水平尾翼の水平を出せるところです
▲そしてよくチェックするのは合わせ目です。消すものなのか?ディテールなのか? これまでの説明書は「読み取れ! 感じろ!」というニュータイプの稲妻みたいなのが多かったのですが、最近は実機ではこうですよと優しい一文が入っていたりします。ありがたや
▲絶対にチェックするのはパーツ番号や塗料番号とは違う「数字」が出現した時。その多くはパーツの取り付け順です。これを見忘れてけっこう痛い目を見たりしたので、しっかりチェックするようにしています
▲このキットの一番素晴らしい点は、主脚の位置が誰でもバシッと決められることです。飛行機の脚って接着が難しいものが多いです。上にかぶせるパーツで隠れる部分に取付用の軸が設けられ、これでがっちりと固定されます。最高です
▲キャノピーは開閉選択式。コクピットも1/72スケールとは思えないほど精密です。パーツ精度がばちピタなので、接着しなくてもパーツがきれいに乗るので、気分で差し替えて良いと思います

  おそらくこのキットは、最も作りやすくそして美しい1/72スケールのBf-109 G-6であると思います。スタイル、パーツ精度も言うことなし。そして説明書もすごく丁寧に作られています。丁寧すぎて読むところが多いくらいです。じっくり読んでみると、あなただけの製作イメージが沸いてくると思います。あなたの描いたイメージがうまくいって形になった時、絶対にその行為は楽しい!と思えるはずです。タミヤの1/72 メッサーシュミット Bf109 G-6。今週のあなたの模型スケジュールに入れてみてはいかがでしょうか?

■タミヤ 1/72スケール ウォーバードコレクションNo.90 メッサ―シュミット Bf109 G-6

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

コンペ&誌上静岡ホビーショーでわっくわく。月刊ホビージャパン2020年7月号

『月刊ホビージャパン2020年7月号』が絶賛発売中!! 特集は「月刊ホビージャパンプラモデルコンペティション 第1回ゲームキャラクターフェスティバル」の結果発表。さらに付録として「誌上開催! 静岡ホビーショー2020」が付属します。ゲームキャラクターフェスティバルの最優秀賞が表紙を飾ってます。

 他のキットを改造して自分の愛するゲームキャラクターを作ったり、ゲーム画面を再現したり、ゲームのあのエフェクトやチェンジシークエンスは立体で表現するとこんな感じなのではないか? という様々なアイディアにあふれた作品をみることができます。ベースやエフェクトまで作り込んで入り物は自然と目に入ってきますね。投稿作品の写真も凝ったものが多く、目を楽しませてくれます。コンペの結果はぜひ本誌を購入してご確認ください!

 付録は、今年中止となってしまった静岡ホビーショーで各メーカーが発表する予定だった商品を集約したものとなっています。各メーカーの今夏以降の新作を一気にチェックできる良いチャンスです。

 他にもお家にいる時間が必然的に多くなっている今、模型を楽しんじゃいましょうという提案とかおすすめのマテリアルをご紹介した「豊かに育む在宅モデリング」という特別企画もあります。毎号の通りガンダム・ロボット盛りだくさん、かわいい女の子もいっぱい掲載されて読み応え抜群ですよ。フミテシ的には清水圭さんの「ランドローバー シリーズIII」、ヨンケイさんの「ブラックバーン バッカニア S.2C」、松田竜さんの「鉄斗羅頑駄無」の作例がグッときました!!

■ホビージャパン、Kindle Unlimitedでバックナンバー読み放題なんですよ!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

究極のソーシャルディスタンスプラモ・テントセット

▲外の空気はうまいもんだ

 ここはアフリカ。とにかく広い。俺にあるのはこの無線機と木の箱とジェリカン。そして最高の夜を約束するテントだけだ。

▲アフリカだ。贅沢は言っちゃあならねぇ。無線機があるだけ俺は幸せだ

 どこに敵が潜んでるかも分からない。そして仲間もいつ来てくれるんだろう。世界との距離感を感じる。その距離を少しでも埋めたくて今日も俺は無線機にしがみつく。

▲故郷のパブのあの子は元気かな? この無線機であの子と繋がれたらな。そんな妄想がアフリカの楽しみ。でも今は我慢。きっと明るい明日が待っている
▲テントのメンテナンスは必要だ。壊れたらそれこそ命がやばい
▲入り口を開けておくと涼しい風が入る。日中は開けておきたい。開けるためには加工が必要なんだ。カッターで印部分を切る
▲くるくるとテントの入り口を巻き上げたパーツをカットした部分に貼り合わせるんだ。そうすると風通しの良いテントになるんだぜ
▲もちろん内側には支柱をつけないとな。テントが支えられない
▲大詰めだ。あとはパーツを合わせていくだけ。これで野営ができるってもんだぜ
▲完成だ。まぁいろいろ大変だけど、これで俺のアフリカンライフは大分快適になるってもんさ
▲ジェリカンは椅子にもなる。早くふかふかの椅子で一杯飲みたいが、もう少しの辛抱さ
▲明日? いいね! さっさと砂嵐のない国でパーっと飲みたいぜ!! あそこのビールは最高だからな!! ガハハハ

 俺の他には誰もいない。無線機から来る声が俺の安らぎであり、自身の声を届けることも俺の安らぎになる。仲間と笑って会えるのはいつの日か? たくさん話したいことがいっぱいある。テントの組み立て方とか、ジェリカンに座り続けてお尻がカチカチとか。そんなたわいもない話をはやくしたいなと思いながら、アフリカの星を見て夜を過ごすのさ(そういやそんなあだ名のエースパイロットがいるみたいだな~)。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

見る人の脳に雪景色を描き出す「筆使いのマインドセット」。

 プラモの筆塗りについて少し考えてみると「特定の面を塗料で敷き詰める」みたいなことをしていることがわかる。あえて「敷き詰める」と書いたが、実際には塗っている。しかし、これが「絵具やペンキのように塗っている」と頭の中で考えるのか、「鉛筆やペンで行うように描いていく」と思うのかで随分と様子が変わってくる。

 と、いうわけで「ペンで描く」という本の話。美術技法の専門書を多くラインナップしているマール社の発行するペン画の名著で、本書を読んでその通りに練習するとかなり上手くなる。私も、私なりに上手くなった。この本の中で私が重要だと思ったのは、「ペンのタッチはさまざまであり、大事なのはそれをどう使うか」ということだ。一つの面を埋めるのにも横線を並べるのか、縦線を並べるのか、あるいは曲がりくねった線で埋めるのかでずいぶんと見え方が違う。これを活かした作品はペン画ならではだ。この考え方を少し、筆塗りに拝借する。

 ついつい筆塗りも、「塗装」という語感のとおりに、つなぎを着た塗装工の気持ちで塗ってしまうが、ここはひとつ、ペン画の大家になったつもりでやってみるというのはどうだろうか。筆塗りの筆跡は、ペン画で言うところのタッチだと考える。表現するものはなんでも良い、私は今回はタミヤのクォードガントラクターが雪の中を突っ走る様子を表現した。ナイロン筆の規則正しい刷毛目をリズムよく、一定方向に(そう、まるでペン画のタッチのように)与えて様子を見る。果たして風景は、雪になっただろうか?

  実際には雪になったかどうかは、製作者が「これは雪を表している」と言った時点で世界観が固定される面もあるのだけれど、見ている人が直感的に「雪であるな」と思ったのならば大成功だと思う。今は情景の表現としては雪も含む、砂や草木などを再現したマテリアルもたくさんあるので、本当に雪のような物を乗せることは比較的容易いし、見た目もかなり綺麗だ。しかし、この写真のなかには「雪そのもの」は存在していない。

 一方で、こういった少し危険な遊びは、少し挑戦的だし、どうなるかはわからないし、場当たり的な面もある。「俺は雪を描いている」と思いながらも、目の前に現れるのは積もった雪ではない……という、不思議な行為だ。

 そこをなんとか安定させ、天秤がグラグラ揺れながらも釣り合っている世界観を作り出すには冒頭で紹介した『ペンで描く』のようなガイドが必要だ。結果として、クルマの屋根に雪を載せるよりも雪を、デコボコと濡れたぬかるみを作るよりもを雪山を感じさせる世界が生まれる可能性があるかもしれない。

 プラモを作るとき、いったい何を再現したくて、何を塗り、置き、つけるのか。『ペンで描く』に収められたさまざまな作例や図版のように、そうした思考をすべて筆のタッチに乗せてしまう。そんな日があってもいいと思うのだ。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

FAZZが好きならマストバイ。月刊モデルグラフィックス2020年7月号

 『月刊モデルグラフィックス』最新号(2020年7月号)の巻頭特集は『MG FAZZ Ver.Ka 完全読本』と題して、BANDAI SPIRITSのマスターグレード FAZZ Ver.Kaにズームイン。単なる作例集ではなく、FAZZという複雑怪奇な生い立ちのモビルスーツがいかにして成立していったのか、『機動戦士ガンダムZZ』と『ガンダム・センチネル』の間にあったさまざまなできごとをひとつずつ紐解いていくさまはエキサイティングであります。

 もちろん読み応えのある開発者インタビューや切り口の異なる作例、歴代ダブルゼータガンダムの立体物についての網羅的な考察などなど、見どころは満載。なにより、伝説の1/100作例を作った牛久保考一氏が回想する当時の混乱ぶりは「’80年代後半におけるガンプラやガンダムを取り巻く環境」がいかにムチャクチャだったのかを示しており、これは他の本ではなかなか読めない内容になっています。

 そしてサプライズすぎるのは上の写真が掲載された見開き。これは完全に『別冊センチネル』の副読本として永久保存版になるべき第一級の資料です。開いた時本当に「えー!!!!」ってデカい声が出ました。すごい。

 特集以外だとマックスファクトリーから発売されているクラブガンナーの作例がめちゃめちゃ素晴らしく、「戦地で応急処置しながら運用される多脚兵器」というのが見た瞬間にズビーっと理解できるハードな仕上がりになっています。これもまた、ダグラム・センチネルじゃん……。

 もちろん女の子プラモやスケールモデルの作例も満載ですので、みなさまお買い上げの上、ムフムフしながら読んでください。いやあ、FAZZだけでもすごいボリュームで、まさに「完全読本」です。ぜひ!

■月刊モデルグラフィックス2020年7月号 大日本絵画刊 850円(税抜773円)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

戦車模型界イチのスター!? みんなジープって聞いたことありますよね?

 戦車模型には、戦車以外の軍用車両も数多くラインナップされています。「ジープ」というもはや軍用・民生用を問わず同種の四輪駆動車を指すものとして広く使われているこの言葉の源流となった小型万能車、アメリカ軍のMB/GPWも多数のメーカーからキット化されています。主役にもなれるし、周囲の引き立て役にもなれる戦車模型界No.1のユーティリティプレイヤーとして君臨しています。

 もっとも手に入れやすく、何より作りやすいのが「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ(以下MMシリーズ)No.219 U.S.ジープ・ウイリスMB」です。超ド定番の模型として広く販売されています。でも実際に中身を見たことはありますでしょうか?

▲1945年8月までにフォード、ウィリス社であわせて64万台が生産され、第二次世界大戦における連合軍の勝利の立役者ともいえるほど連合軍の足として活躍しました
▲戦争映画でも必ずと言ってよいほど登場しますし、現在でも多くの愛好家によりレストアされ楽しまれている歴史的名車です。なんか見たことあるぞ~ってなる方多いんじゃないでしょうか?
▲公認!!! スケールモデルのキットには様々なメーカーのライセンスマークを見ることができるので、探してみてね
▲タミヤMMシリーズの商品の面白さを底上げするのが、説明書の解説文です。わかりやすいものからドラマ性に富んだものまで。自分が買ったプラモに、より愛着を持つことができます
▲こんなにコンパクト!お昼から組んだら夕飯前には組み上がって、プラモ見ながら晩酌もできちゃいます
▲本体。こんな手のひらサイズの本体に様々なパーツを取り付けていきます。小さい中に様々な要素が盛り込まれるので凝縮感が半端ないです
▲記事序盤から主張の激しいドライバーアニキのパーツ。なんともアメリカ兵!って感じるポーズが魅力的です
▲ひねりのある胴体、車体に肘をかけている腕など小パーツで絶妙に再現されています。腕部の下面は、ハンドルや車体に添えられるような形状になっています
▲表情もにこやかなのが良いですよね。戦場の緊張感を感じない雰囲気があって僕はこのミニチュアがMMシリーズの中でも大好きです
▲ジープの足周りを担うドライブシャフトやリーフスプリングは、細かいパーツ分割をせずに、組みやすさを優先。足周りがすぐ完成して次に行けるのはうれしい限りです
▲エンジンも再現できるキットなんですが、そのパーツ数は4!!
▲ドイツ軍が仕掛けたピアノ線の罠を切断するためのワイヤーカッターや、牽引するための装備品・トウバーを装着したタイプ、前線部隊の強行偵察などの任務に就いたM1919A4軽機関銃を装備した仕様なども選択して製作できます
▲基本的な構成はボディ、シャシー、内装(椅子など)の3要素
▲タイヤは前輪・後輪共に2パーツ構成。貼り合わせるだけ~
▲3要素をくっつけて、ボンネットやウィンドウフレーム、装備品をつけるればジープの完成! 手のひらサイズに凝縮された要素とディテールが目に楽しいプラモです
▲軍用車両ってリアにそれらしい装備がついてるのがかっこいいですよね! ジェリカンとスペアタイヤは鉄板。後も絵になりますね~
▲ボンネットを開けると中も御覧の通り。エンジンの他の要素も含めると内部は全部で6パーツ。少ないパーツ数でも密度感を演出しています。ボンネットが開くだけで整備しているシーンなども作れたりできるので、製作の幅が広がります

 戦車模型というとどうしても戦車に目が行くと思います。でも、実は僕たちがよく目にしたり、何となく見たことあるようなミリタリーな物ってこのジープに代表されるような軍用車両に詰まっているのかもしれません。

 一度作ったことがある人も何度でも楽しめる内容ですし、初めて作る人ならきっと戦車模型・ミリタリーミニチュアの面白さを体感できると思います。机の上のインテリアにもお勧めですよ。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

その合わせ目をあぶり出せ ハセガワ 1/72ライトニング F Mk.6

 プラモを作っていると必ず発生する、合わせ目。
 消したり、消さないで済むように設計が工夫されたりする。
 まるでそれは、プラモがプラモであることを隠すための作業のようだ。

 プラモはプラモデルというプロダクトとして成立するものなのか、それともやっぱり本物に寄せたいという気持ちを受け止めた存在としてそこに完成するのかが、難しい。上手くなったり、たくさん作ったりしているとそういうことがわからなくなって、気づいたら決まったような動きで慣れきったゴールまで進む。いつも走るジョギングコースみたなもので、約束された大変さと、達成感を楽しむスポーツの中の1種目になっていく。

 そこを、思い切って裏切ってみる。合わせ目は境目だ。つまり、消さなければそこは右と左や前と後ろの境界線。そのラインからあっちとこっちは違う世界だと、決めてみる。そうすると、いつもと説明書の見え方が変わってくる。

 ふだんと違う頭の使い方をして塗ったパーツ達は思いのほか、綺麗だ。調和があって、リズム感もある。ピアノの黒鍵と白鍵のバランスのような感じ。それを、どうなる?どうなる?と貼り合わせる。

 結果的に生まれたのはリズムであり、プラモがプラモであるという痕跡の合わせ目は隠されるべきものであると同時に、たまには日の目を見ても良いという事実だ。このハセガワ 1/72ライトニング F Mk.6がどのように分割され、それが組み合わさって立体になるのかがよくわかる。この飛行機の特徴である、直線的でありながら丸みのあるフォルムや増槽の配置は、前から後ろへ気持ちよく伸びる茶色とグレーのストライプのためのキャンバスとなった。こんな風に規則的にパーツが分割されていたなんて、という秘密があぶり出されるかのように。

 片方から見れば茶色が濃く重厚感のある感じ。当然であるが、もう片方から見ればグレーの面積が増えるので軽さが出てくる。

 やはり、合わせ目は合わせ目であるが、それと同時に境目である。

 その境目が織りなすリズムは今回はたまたまストライプであったわけだが、他の飛行機は、車は、戦車は、どんな模様を隠してしれっと私たちの前に存在しているのだろう。夜の帰り道、レンガ敷きの歩道が引き剥がされ、複雑な工事跡があらわになっているときの、思わず見てしまう「あの感じ」。それを私たちはいつでも見ることができる。

■ハセガワ 1/72スケール 飛行機 Bシリーズ

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
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デフォルメとパロディ。鳥山明とプラモ。

▲ファインモールド 1/12? ワールドファイターコレクション ドイツ陸軍歩兵・マイヤー

 オタクとは何か。それは2次元と3次元にボーダーを持たない人種。そしてプラモデルは時として、2次元と3次元が絡み合って誕生する奇妙な存在だ。相性が悪いわけがない。「何言ってんだお前」と思ったそこのあなた!まずはコイツを見てくれ。

 THE・こだわりの国産メーカー、ファインモールド社が鳥山明氏とタッグを組んで発売したそこそこ古いプラモデルです。かっくいー! スケール表記を「1/12?」としているのは、装備がしっかり考証された1/12スケールなのに対し、人間は鳥山先生のデフォルメキャラクターとしてノンスケールで造形されているから。キャラクターモデルとスケールモデルが完全に融合しているなんともユニークな模型なんですね。んちゃ!(雑)

▲説明書にも鳥山先生の爽やかイラストが。いいね。
▲箱の側面には実際の装備の写真を載せてあり、塗装の参考にもなる。

 こうしたイラストを元に製作されたプラモデルの成り立ちについて考えてみるとなかなか面白い。デフォルメキャラのイラスト(平面)を元に原型(立体)を作成する。またそれを金型に落とし込み、樹脂を流し込み、ランナーについたパーツとして「半立体・半平面的な存在」として販売。購入者はそれを再構築すれば「立体」として手元に置くことが出来るのだ。なんとまぁ、プラスチックな存在なんでしょうね。

 さっそく組み立てよう。スナップフィットのキットではなく、接着箇所もけっこう雰囲気。こういう時は流し込み接着剤でなく白いタミヤセメントを使ってアバウトに対抗する。「うーん、ここらへんかな……?まぁいいか。ヨシ!」と、現場猫の精神でやっつけていきましょう。スキマが出来てもパーティングライン(プラモを成形するときにできる金型と金型の合わせ目のライン。たまにちょっとズレたりしているものもあるよ)が残っても多少は気にしない方が吉。ほんとに気になるところだけは削ったりパテ埋めで処理しよう。

▲本人も大変そう
▲合わせ目とPL(「パーティングライン」をこう略すとカッコいい)にこそプラモデル性が宿るのだ……。

 などと訳の分からない呪文をつぶやけば大体は解決する。なんたるポエット!プラモの作り方、楽しみ方は人の個性がよく出るところ。

▲素組終了。とっても雰囲気が良い。服のシワや装備の量感が見事に彫刻されている。モールドがファイン。まさしく「ファインモールド」だ。

 気分がアガってきたところで次のステップに移行だ。私はどちらかというとプラモ塗りたい派なので、説明書を見ながら塗装してみることにしよう。

▲う〜ん、丁寧すぎる。『新宝島』かな?

 調色や塗り分けが結構大変そうね…私でも手に負えるかしら?少し冷静になってしまった。今の私は、プーアルがシェンロンに向かって「ギャルのパ……(いや、ちょっとまてよ……そんなこと頼むより……)スレンダーでしれっとした目つきで何だかこの世界の秘密を知っているけど教えられない風な陰のある雰囲気を持ち合わせていて『フフッ……先輩ってホントにただの豚……私がいないと何も出来ないんですね……』とか結構キツイことを言う割に何だかんだ俺のことが好きな2個下の後輩キャラをおくれーーーー!!!」とか言ってしまうぐらい冷静だ(冷静か?)。シェンロン「わかる……」。

 正直に言うと私はただの2次元オタのプラモ衝動買いおじさん(ほとんどビョーキ)なのでAFVや軍隊等に関してはあまり知識を持ち合わせていないし、特にドイツ軍の装備にもこだわりは無い。方向転換か?素組で飾っても味わい深いしな……。

 しかし、オタクには得意技がある。それが”パロディ”だ。冒頭で申し上げた通り、オタクとは2次元と3次元にボーダーを持たない人種。つまり、アニメ、ゲーム、マンガ、模型、フィギュア、写真、音楽、車などなど様々な趣向の中で、好きなものをミックスしたり、複数のジャンルをクロスオーヴァーさせることが得意な人達なのである。同人誌文化がこの最たる例で、まさにパロディの一大ムーブメントとも言える。そしてオタク君はすぐ「これ、〇〇みたいっすね。デュフフ☆」と言って自分の脳内で勝手にリンケージしてしまう。それはクソリプだからやめろ! だが、その脳内リンクをパロディに昇華して楽しむことが出来るのはオタク君のいいところ。私にいい考えがある。

▲グレーと黒の缶サフ(サーフェイサー。下地塗料のことだ)を吹く。

 グレーの本体はシタデルコントラストという水性塗料をバァーッと筆塗り。一回ベタ塗りするだけでこれです。勝手に陰影が出来るスグレモノ。メットはサーフェイサーのまま。ポーズがまさに「今日、一杯やってく?」的な。

 メットと肩に赤でリボンを描く。ファレホ(発色がよく、とっても使いやすい水性塗料!)の筆塗り。こういうマークは少し小さめに書き始めて、修正しながらサイズ感を見て大きくしていくのがコツ。かわいい。

 サンコーマーク工業から販売されているナンバーデカールを用意。さまざまなサイズが1枚に揃っており便利すぎる。デカールの説明書が何故かペンギンでこれまたかわいい。

▲デカール、貼る。鳥山明、軍隊といえば……。
▲そう、ドラゴンボールでお馴染みのレッドリボン軍ですね!マークがビシッと入るだけで全然カッコいいなおい!

 安易なパロディなら考証もいらないでしょう。純粋なホンモノではないにしても自分のアイデア、エッセンスを加えたそれは非常に愛しい存在となり得る。史実や原作に忠実に作るのもいいけど、それを完全に無視するのも創作活動の醍醐味のひとつであると私は思うのだ。

 オタク同士諸君、オタクなら軽率にパロディしようじゃないか。そして、自分はオタクじゃないと思ってるあなた。プラモデルでパロディ、してみませんか?

▲「こちら側へようこそ…」

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

自宅で遊べる「スマホで外撮り」。プラモのミラクル撮影法をNAOKIに教わる!!

 ロボットプラモを中心に、いろんなメディアで作品をドバドバ発表しているプロモデラー、NAOKIさん。彼が最近TwitterやFacebookでUPしまくっているのが、空をバックにしたプラモの写真である。これがやたらめったらカッコよく、”リアルな雰囲気”に仕上がっているので、「いったいこれはどうやって撮っているのか!?」というのを、私からぱたが遠隔テレビ会議アプリ「zoom」を使ってインタビューしてみたぞい。

からぱた 最近Twitterとかfbに携帯で撮ったプラモをいっぱいUPしてますやん。すごくカッコいいんですけど、やっぱCOVID-19的な事情で生まれたアイディアなんですか?

NAOKI じつは2年前の正月から半年くらい、似たようなことをやってたんだよね。あの頃使っていたのはiPhone 6とかで、作例をスタジオで撮影する前にアングルのアイディアを出すための仮撮影をしていたのよ。そしたら、雑誌の作例写真よりも強いパースが付いて「あれ、こっちのほうがカッコよく見えるな」という写真がたまに撮れるんだよね。

からぱた 標準〜中望遠のレンズ(焦点距離が長く、あんまり歪まないレンズ)を使うのが伝統ですもんね。モノのカタチとか、一枚に入れられる情報量が多くなるとか、メリットもいっぱいあるんですけど、たしかに広角でバーンと遠近感のある写真のほうが雰囲気が出るのは分かります。

NAOKI で、これを外で撮影したら空とかビルが入ってもっとカッコよくなっちゃうのでは?というのがきっかけ。もともとプロモデラーはあんまり外に出なくてもいい職業なんだけど(苦笑)、COVID-19の自粛期間はマジで外に出ないようにしてたから、たまには外の空気を吸おうと思って自宅の屋上で撮影したのをSNSにアップしてる感じ。

からぱた これ、画像にも書いてあるけどiPhone 11 Pro MAXで撮影してるんですよね。3つカメラが付いてるスマホですけど、超広角を使うんですか?

NAOKI いや、真ん中の×1倍のカメラ(ほかのふたつは×0.5の超広角と×2の望遠レンズが付いている)。超広角はパースが付きすぎて、歪みが強いしあまり画質も良くないんで、いろいろ試した結果いちばんスマホっぽい画角で撮るのがいいな、っていうことに落ち着いた。イングラムはあんまり大きくないメカだから、なおさらパースを抑え気味にして巨大に見えないようにしているけどね。

からぱた このイングラム、塗装とか汚しもしてあるわけですよね。

NAOKI これは全部ビシッと塗装した完成品。でも、「外撮り」ってモノをしっかり見せて「ドヤッ!」ってするのが目的じゃなくて、背景込みでなんか実在感のある一枚の画になるのがおもしろいと思うんだよね。だから、ディテールとかカタチをしっかり見せるための説明的な写真じゃないのよ。だから、たとえばこのウォーグレイモンとかは組んだだけで塗ってもいないしシールすら貼ってない、いわゆる「パチ組み」なんだよね。

からぱた え、ホントに!? たしかに組んで屋上とかベランダに行ってこれ撮影するだけなら全然ハードル高くないですわ。「逆光は被写体の七難隠す」って言うくらいだし、手前が暗くなるようにスマホカメラの明るさ調整すればいいんですもんね。

NAOKI これがドピーカンの青空だとあまりおもしろくなくて、雲が出ていて、隙間から陽が差しているときを狙ったのよ。曇りのほうが手前も真っ暗にならないし、画としても全体にテクスチャ(質感)があって、「合成写真でいいじゃん」みたいな写真にならない。

からぱた なるほどね。俺がいちばん「すご!」って思ったのはこのエルガイム Mk-IIなんですけど、もうめっちゃくちゃ下から撮ってるわけですよねコレ。

NAOKI これは俺も気に入ってて、ほんとにヘビーメタルが実在して足元から見たらこんな感じかもな、っていう雰囲気が出ている気がする。一眼レフの広角レンズって大きいからここまで近寄れないし、ピントも全体に合わせるのは難しい。スマホだから撮れる写真だよね。

からぱた スマホのほうがピントが手前から背景まで全部合う、というのは間違いないっすね。あと、これ家で撮ったらいくら背景の紙があっても、その外にある天井とかタンスとか写って生活感バリバリ出ちゃうし、外で撮るのが最高。あと、なんか飛んでるエールストライクガンダムがいるじゃないですか。これはさすがに撮影したあとにPhotoshopとかでいじってますよね?

NAOKI これ? これはね、撮る瞬間にピュッって動かしてるだけ(笑)。

からぱた マジで!? こんなうまくいきます?

NAOKI 一発では無理だから、結構な枚数を撮ってイイ感じのやつをピックアップした。

からぱた っていうか、これそもそもどうやって飛ばしてるんすか? 投げてる?

NAOKI 全部片足か靴底を片手で持って、もう片方の手でスマホ構えてプルプルしながら撮ってる。

からぱた しんど!! っていうか、原始的!!

NAOKI このやりかただとどうしても持っているところを写真の外に追い出さなきゃいけないから、被写体のどこかが絶対に見切れちゃうんだけどね。でも、なんの道具も用意しなくていいし、地面だと水平に置かなきゃいけないけど、手で持ってれば角度が好きに変えられる。ウチの屋上も案外撮影できるアングルが限られるから、ちょっとした調整が大事なのよ。

からぱた なるほどね。じゃあさっきのエールストライクガンダムは左足のつま先を持って、撮影するたびにピュって進行方向に動かしてるってこと?

NAOKI そう。で、そのたびに膝が「グニャ」ってなるから、写真見て、ポーズ直して、またピュってやって……。

からぱた そういえば全部の画像にタイトルとかスマホの機種とか、そういう文字列をかぶせてますよね。これでスタイリッシュに見えるみたいなところはやっぱりあるんですか。

NAOKI このシリーズって、「ブツをちゃんと見せる」が目的じゃないから、空まで含めて一枚の画にしたいわけですよ。プラモに寄り過ぎるとプラモの出来が気になっちゃうし、空の表情もいっぱい見せたい。そうすると間が空いた印象もあるっちゃあるので、字だけはPhotoshopで入れてますね。Photoshop持ってない人も、スマホで写真に字を乗せられるアプリもあると思うから、それは試してみてもいいんじゃなかな。

からぱた しかしこうやって見ると同じ場所なのにいろんな空の表情があっておもろいですね。

NAOKI スタジオ撮影って、背景が決まっていて、ライティングが決まっていて、いつでもビシッと撮れることが大事じゃない? でも空をバックにして撮ると、雲のカタチとか太陽の向きとか、偶然の要素が作用することがけっこうあるんで、「おっ!太陽出てきた!」って慌てて屋上に行って撮ったりすると、けっこう楽しいもんなんですよ。

NAOKI

各種デザイン/企画、プロデュース/原型製作業/模型誌モデラー等。KADOKAWA発行のガンダムオンリー模型誌「ガンダムホビーライフ(GHL)」スーパーバイザー。ツールブランド『NAZCA』展開中。自身が総合プロデュースからデザインまで手掛ける模型オリジナル企画「TITANOMACHIA(ティタノマキア)」進行中。
最近YouTubeやbilibili動画などで国内外に向けて動画配信をはじめる。

クリアーパーツもメッキパーツも失敗せずに貼れる魔法のセメダイン、あります。

▲「つくることはつけること」のキャッチコピーを掲げるセメダインの「ハイグレード模型用」

 「クリアーパーツが曇った!!!」「塗装後の接着で塗面が溶けて汚くなった!!!」。あまりにも恐ろしい体験で、模型恐怖体験のトップ10に必ずと言っていいほど上がってくる案件です。
 しかし! 凍えるほど怖いこの案件に終止符を打つ接着剤が登場しました。その名は……
「ハイグレード模型用」!! 接着剤の生みの親であるセメダイン社が送り出した救世主様です。

▲ハイグレード模型用はほとんど糸も引きません。このように雫状にポタンと落ちます。接着剤が糸を引いて、全く意図しないところに乗るという悲劇……僕は何度苦しめられたことか……

 一般的に溶剤系のプラ用接着剤は、接着剤が樹脂表面を溶解させ、2つの部材を一体化させるように接着します。それに対してこの「ハイグレード模型用」は水性クリアタイプといい、接着面を溶かすことなく接着剤の水分が蒸発しながら硬化して接着されます。それにより接着によるパーツの変色、濁り、塗料を溶かすといったことが無く、1本あればクリアーパーツや塗装後のパーツの接着という、とってもナーバスになる局面でも安心して接着ができるのです。

▲飛行機のキャノピーのクリアーパーツで検証です。まずは通常のプラ用接着剤を使ってみます
▲これですよ、これ! この曇り。分かりやすいように大げさにやってみましたが、接着面からはみ出した接着剤でモヤモヤしているのが分かります
▲ではでは、反対側にはハイグレード模型用を試してみます。ハイグレード模型用はツマヨウジなどにとって添付すると狙ったところに塗りやすいです。クリアーパーツに塗っていきます
▲接着面にパーツを押し込む。この時点でパーツにダメージは一切見られません。むぎゅっと余分な接着剤が出てきましたね
▲接着剤が乾く前に水を含ませた綿棒で拭くだけ!!! つるんときれいに元通りになります!
▲上がハイグレード模型用。下がプラ用接着剤。透明度の違いは一目瞭然ですね!
▲次は、「本当に塗料溶かさないの~?」と思っているあなたに。
こちら塗装したスピットファイアです。これに~……
▲ドボ~っとハイグレード模型用を垂らしてみます。普通の接着剤ならゲームオーバーです
▲さっきのクリアーパーツのように、水で濡らした綿棒でふきふき
▲全くと言っていいほどダメージ無し!!! デカールもやられてません。これなら塗装後の接着でぐにぐに位置調整しても問題なしです
▲この接着剤のもうひとつの力。メッキパーツの接着です。こちらスープラのシートを例に。赤い部分は塗装してあるパーツ。つまり「メッキ+塗装パーツ」という難関に立ち向かいます
▲これまでメッキパーツは、接着面のメッキを落としてプラ用接着剤で接着していましたが、ハイグレード模型用は直塗りでOK!

▲塗面も侵さないので、塗料がはみ出すことなくメッキパーツときれいに接着されました。
このような局面で本当に大活躍してくれます

 ハイグレード模型用は、プラ用接着剤の苦手な部分をフォローしてくれる素敵な接着剤です。とはいえ、注意すべき点もあります。

・硬化時間が長い。
・接着力はプラ用接着剤より劣るので、接着面積の少ないパーツは苦手

 この2点は特に頭に入れておいて欲しいポイントです。接着したらテープなどで固定したり、あるいは触らないで放置して、きちんと硬化したら次の作業に移るというのを心掛けると良いと思います。あなたの嫌な思い出を払しょくするセメダイン ハイグレード模型用。あなたの机に1本いかがでしょうか?

■セメダイン ハイグレード模型用 本体価格550円(税抜き)

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

オトナSFな黄色い箱、「Mk.44 Ausf.H ホワイトナイト」を組んでハードにビビる!!

 昔、美容室の店員にこう質問されたことがあります。「へえ、プラモやるんですね!ロボット系って事は、ガンプラですか?」と。

 で、私は「そうです」と応えてしまった。実際その時好きだったのは『マシーネンクリーガー』だったのですが。

▲箱のデザインが渋いんじゃ。

 だってだって、「Ma.K.」なんて言っても絶対伝わらないでしょう店員さん。記事を読んでいるあなたもプラモがお好きだろうか。この黄色い箱を手に取って、レジまで運んだことはあるだろうか。おそらく少数だろう。ということで、今回はこの『ホワイトナイト』を組んでみたので、紹介していきます!それからマシーネンクリーガーとは、ドイツ語で機械化された兵士って意味らしいですよ。(ほへぇ~) 

※編注/このホワイトナイトというメカはマシーネンクリーガーを生んだ横山 宏氏の作品集『ロボットバトルV』が原典となっているパワードスーツで厳密にはMa.K.そのものとは区別されますがハセガワからはこちらも「マシーネンクリーガーシリーズ」と銘打って発売されており、今回はそうした事情を理解した上であまり肩肘張らずに横山デザインを組んでびっくりしよう!という趣旨の記事としてお届けいたします(早口)

 組んでみました。プラスチックのホワイトが美しいです。クリアーパーツには、タミヤアクリル(水で薄めたり筆を洗ったりできるアクリル系のプラモ用塗料)のクリヤーブルーを塗装してあります。全体的に丸みを帯びたフォルムですが、このキットの魅力は凝縮されたディティールにあると思います。

 このキットは説明書の順番通りに組むと、まず最初に脚から組み始めることになります。キャラクターモデル好きの皆様は、この時点で「ん?少し何かがおかしいぞ」と気付くと思います。……この解像度は一体なに? メカメカしいパーツが集合してランディングギアを形成しています。組み立てには接着剤が必要なので、パーツ同士がどうくっつくのか予想しにくいところがあります。しかし、これがまた面白いところなのです。「このパーツは何? 俺は今何を作っているの?」と思いながら説明書通りに貼っていけば、答えに辿り着く筈です。フォルムから感じ取れるカッコ良さと、ちゃんとカタチになる納得感、二つの快感が同時に押し寄せます。 

▲皆さんに一番お伝えしたいポイントはここ。これは上半身の前面です。つるんとしていてシンプルですよね。この裏側はコクピットとなるワケですが、 
▲裏から見るとこうなってます。は?バケモンか?

 いやいやいやいや、なんですかこの密度。このあたりですかね、私が何を作っているのか分からなくて、全容が見えた頃にはテンションがブチ上ったのは。奥に見えるのがモニターで、その周りには謎の配線。手前の2つの大きな丸は、手を突っ込むための穴です。戦闘装甲服ですからね。模型を作っていたはずなのに、油断すると一気にオトナのSFの世界へ引き込まれます。本当にひと味違います、Ma.K. 最高! 

▲更に嬉しい情報があります。なんと先ほど見えていたモニター部分が、前面の装甲と一緒に持ち上がるのです。
▲つまり、「ハッチオープン!」なんです。

 こういう遊び心が各所に隠されており、本当に楽しく作る事が出来ます。渋カッコイイ男性のパイロットフィギュアが付属しているのも嬉しい。 

 ほかにも謎の動力や燃料タンクらしきもの、見えなくなってしまうのにとんでもなくカッコいいコクピットのシートの後ろなど、演出的内部構造が盛り沢山です。手に入れる機会があれば、是非あなたもこの感動を味わっていただきたいです。

 また、こちらの商品にはMa.K.恒例のお洒落なマーキングシールと塗装ガイドが付属しています。今回はほぼ塗装せずにお送りしてきたマシーネンクリーガーの紹介記事でしたが、お楽しみいただけたでしょうか。これを機に、この黄色い箱のプラモデルにも興味を持っていただけたら嬉しい限りでございます。美容室の兄ちゃんも、このブログを見てくれ!! ではまた!

■ハセガワ 1/20 ロボットバトルV 月面用重装甲戦闘服 MK44H型 ホワイトナイト 4200円(+消費税)

ミハイル

福島県出身 1990年生まれ 模型を楽しんでいます マスキングが苦手 下のリンクの『火星深青』でブログを執筆していますので、模型に興味がある方は是非見に来てください。

忘れた頃にやってくる「でっかい穴を開けたい時」にオススメの最高ツール。

 穴を開けるというアクションは、スケールモデルを作っているとよく遭遇します。最初から開けといてくれ!と思うかもしれませんが、そのへんはこう、オトナの事情があるんだ。察してほしい。

 で、昔ミニ四駆のボディを肉抜きするのに使ったピンバイスという道具をもう一度買うことになるわけですね。このピンバイスっていうのはドリルの直径をいろいろ差し替えて使う道具なのですが、模型用として売られているものはだいたい3mmが最大です。

 しかーし、それより大きい穴を開けたくなったこと、ありませんか?

 「わりと頑丈そうなネジでプラモを台座に固定したい」「ガンプラを改造していたら、デカい面に穴を開けて丸いものを突っ込みたくなった」「位置決めをしようと3mm穴を開けたら位置が微妙だったので直径をデカくして調整したい」などなど……。そこで4mmとか5mmとかのドリルを買い足すと家がドリルで埋まってしまいますし、まずピンバイスの柄では扱えないので電動ドライバーでも使うか、みたいな話になって大変です。

 そーこーで!これ!!

▲wave HT-531 HGステップドリル

 「すでにある穴をデカくするツール」としては、リーマーと呼ばれる道具があるのですが、これは断面がギザギザしていて先端の尖ったドリルの親戚みたいなもので、最初に開けた穴に突っ込んでグリグリやると徐々に穴の直径がデカくなるというもの。これは無段階に穴がデカくなっていくので、穴の始点と終点で直径が違う(要はすり鉢状の穴が形成される)という弱点があります。また、開けた穴がどれくらいの直径なのかは自分で計測しなければいけません。

 どっこい、このHGステップドリルは先端がこんな感じで加工されています。

▲先端から1mm刻みで、2mm〜10mmに段差が付いていて、カドのところが刃になっているのがミソ。
▲まず2mm以上のピンバイスで穴を開けます。正直、最初からステップドリルでも開けられます。
▲直径3mmの穴を開けたので、ステップドリルを突っ込むと、当然「3mm」の段で止まります。
▲グーリグーリと力をかけながら回すと、穴の直径が4mm、5mm……と段階的に大きくなります。
▲今回は6mmの穴としました。

 じわーっと穴が大きくなるのではなく、カクン!カクン!と1mm刻みで大きくなっていくのが快感!できた穴の写真を見ると側面の傾斜もそう大きくありません。輪郭が少々毛羽立っていますが、これは裏側に出来たプラスチックのめくれですので、デザインナイフやヤスリでサッと綺麗にしてあげればOKです。

 3mmよりデカい穴が欲しい!というシーンに遭遇したことがある人がどれくらいいるかわからないのですが、私は「年に3回くらい遭遇するな」という感じがあり、そのたびにこのツールを模型部屋のどこにあるかと探しています。そう、この記事を書いたのは、このツールを探しに探して、やっと出てきたからなのです……。工具は定位置にしまう、というのもプラモをたくさん楽しむための大事なポイントなのかもしれませんな。ガハハ。

■ウェーブ HGステップドリル 本体価格:¥2,480(税別)

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

「プラモを作りのための義体化」はピンセットで始めよう!!

 プラモは指でパーツをつまんでくっつけていくもの……だったらいいんだけどすげえ小さいパーツとかがあり、これを指でくっつけると指なのかパーツなのか接着剤なのかわからなくなり、最終的に万物がグダグダになっていやになることもあります。そこで「小さいパーツはピンセットを使おう」と思うワケですよ。これは指の先端を極限まで細くし、プラモに対応した肉体を獲得するというアイディアなのです。言ってみりゃ義体化の最初の一歩。サイボーグのなりはじめ。これがピンセットの持つ意義であります。どうですか、重要だと思いませんか、ピンセット。どうせ義体化するなら、高性能でカッコいいのがいいです。

 ということで、ここでは私からぱたが常用しているピンセット四天王を紹介し、それらがどのように使い分けられているかを解説することにより、ピンセットがあればいきなりプラモが10倍カンタンに、高速に作れるようになるということを皆さんにご理解いただこうと思うわけです。

 こちらがからぱたの常用するピンセット4本(使い込んでいるのでちょっと汚れもありますが、そこは「おお、マジで使ってるんだな」と好意的に解釈していただきたいです)。左から、Fontax/No.5C(小さくて先端が鋭い)、IDEAL-TEK/36A-SA フラット(先端が平べったく、持つところがギザギザしている)、ブランド不明/ステンレス製ピンセット(いちばんながく、先端が鶴首になっている)、タミヤ/74080 クラフトピンセット(先端がゆるやかに曲がり、全体的に平べったい)であります。こんなにピンセットあってどうすんだよ、つまめればいいだろ……と思うかもしれません。

▲Fontax/No.5C

 まずはFontax/No.5C。”勝負ピンセット”です。現在は廃番らしいのですが、ググると同等品が出てきます。目玉が飛び出そうな値段するだけあって、先端の精度は(プラモを作るという用途においては)最高〜という感じです。
(ちなみにピンセットの世界は本当に青天井で、超高級品は本当にすごい値段ですごい精度になっており、蒐集してその使い心地に快感を覚えるマニアもいらっしゃいます)

 なぜ高いピンセットを使うか。それは「安いピンセットはピンセットのカタチをしているだけで、物を掴む性能がないから」です。しかし、5000円以上のピンセットを持つとビビります。力の入れ方にさして気を使わず米粒を掴んだとしても、落ちない、飛んでいかない。

 みなさんも、ピンセットで摘んだパーツが飛んでいって探し、江戸時代にタイムスリップし、ペニシリンを発明するなどしているうちにプラモが完成しなくなって号泣したことはないでしょうか。掴む性能がないピンセットは、プラモが早く完成するどころか、ピンセットのカタチをしたカタパルトとなってパーツを射出し、プラモの完成を妨げてしまう。そういうことを繰り返していると人生が辛くなってしまいますので、とにかく小さなパーツを扱う人は先端が鋭く、精度の高いピンセットにきっちりお金を出しましょう。スケールモデル数個買うのを我慢すると、二度とパーツが飛んでいかない模型ライフを送ることができます。

 先が尖っていて精密なピンセットは、シールやマスキングテープの端を狙ったとおりにつまみ、めくることができます。デザインナイフの先でピロッと起こしてから何かしらの道具でつまむという手もありますが、鋭いカドをビシッとつまんでガッと剥がせるピンセットは、プラモ作りにおいても一二を争う瞬間である「マスキングを剥がす」という快感をより増幅してくれるのであります。

▲IDEAL-TEK/36A-SA フラット

 続いてはIDEAL-TEK/36A-SA フラット。これは先端が角度のついたヘラのようになっていて、合わせ面が平行を保ったまま作動するのが特徴です。つまむ力はほとんどなく、薄いものを優しく掴むのに特化した形状だと言えるでしょう。これは主にデカールを扱うときに重宝しています。

 このように先端が片方に折れ曲がって平べったく伸びているため、デカールの台紙をパーツの上に差し出すと、面にスッと沿わせてデカールを滑らせることができます。シールは静電気を帯びてパーツにくっつこうとすることが多く、狙ったところに貼れない場合があるので気をつけて下さいね。

▲ブランド不明/ステンレス製ピンセット

 次はブランド不明のステンレス製ピンセット。先端は尖っていますが、小さなパーツを掴むには先が丸く、合わせの精度もありません。こうしたピンセットは「指では入らないパーツ」や「狭い空間で何かをガッチリ組み合わせる」といった小さな力仕事に使います。先端が細すぎるとどうしてもピンセット自体の剛性が低くてたわんでしまったり、ピンセットが変形してしまうことがあります(また、鋭い先端がパーツの表面に小さなキズをつけてしまうこともあります)。

 太いボディに適度に反発力のある握り感、ツル首になっていることで作業の自由度が高く、その角度や長さも気に入っています。こうした力仕事につかうピンセットは作業のしやすさ、少々手荒に扱ってもいい頑丈さが必要ですし、個人の好みで味付けを選ぶのが吉でしょう。そんなに高いものを選ばなくてもいいと思うので、いい感じの反発力、いい感じの握り心地、そしていい感じの曲がり具合と先端の形状が得られるまで、いろいろとお付き合いしてみるのがいいのではないでしょうか。

▲タミヤ/74080 クラフトピンセット

 最後はタミヤ/74080 クラフトピンセット。ブルドーザーのような信頼感と剛性に満ち溢れた一本です。

 まず先端が平べったく、全体にかなり厚みがあります。こちらは小さなパーツをつまむのではなく、先端の幅を利用してそこそこ力を入れた作業ができるので気に入っています。上の写真のように、指で掴むにはやや小さく、のりしろに安定感がないパーツを接着するときに、「面」で押さえつけるシーンで活躍します。

 点ではなく面で掴むメリットはもうひとつあり、指で貼るには難しい、ちょっと奥まったところや角度のついたところにマスキングテープやシールを持っていくときにも幅広ピンセットは役に立ちます。点で掴むとシールやマスキングテープがクルクル回ってしまうことがありますが、面で掴んでいれば方向をビシッと保ったまま、狙った位置に貼ることができますね。

 さらに先端の背は30mmほどストレートに加工されており、この部分は全体がピッタリと合わさるように設計されています。

 「30mm、ストレート、ピッタリ合う設計」はこうした曲げ加工に威力を発揮します。スケールモデルでたまに出現するエッチングパーツの加工はもちろん、ペーパークラフトを作るときにも活躍してくれるのがいいですね。

 ……ということで、からぱたが使っているピンセット4本の紹介でした。この世にはさまざまなメーカーから無数のピンセットが発売されています。値段も本当に安いものから恐ろしく高いものまでありますが、「つまむ」という基本的な性能はもちろん、あえて力が入らないようにしたもの、握ると開いて離すと閉じる逆作動タイプなどなど、それぞれに目的が設定されています。

 「それなりにつまめればOK」でピンセットをなんとなく買い、パーツを飛ばしたりデカールを破ったりしてイライラするとプラモを作る気もしぼんでしまいます。「素早く、気持ちよくプラモを作るために自分を手軽にサイボーグ化する」というのはけっこうなエンターテイメントのひとつですので、ピンセットにお金をかけてみてはいかがでしょうか。

 みなさんも、ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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