手数少なく、仕上がりコッテリ。最上級の色と形で味わうドイツ幻のジェット戦闘機、飛翔!

 「うわーこのカタチすっげえかっこいい!」という動機だけでムンズとハコを手に掴んでしまい、ハイお手つきですねお会計ですよ毎度あり〜ってなもんで、アミュージングホビーの「Me262 HGIII」というハジメマシテの出会いが突如転がり込んできた。
 知らない人に説明しておくとアミュージングホビーというのはゴリゴリに細かく分割された戦車模型を謎の廉価でリリースしまくっている新進気鋭のメーカーで、岡山県に本社があると書いてあるんだけどプラモ自体はメイドイン中国。プラスチックの質感や説明書の雰囲気から察するに、いまとっても元気な中国の設計製造で製品を作っているんじゃないかなとは思うんですが、詳しいところは何もわからない……。

 で、「新興メーカーの飛行機プラモって、なんとなく味気ないグレーのパーツが入ってて、ディテールは超細かいんだけどパーツがめっちゃ多くて組むのが大変なタイプでしょ……最近はそういうのがめっちゃ多いんですよホントに……」なんて思ってたんですよ。はい、いまから箱開けますね。ジワ〜。

▲薄暗き闇の底から見えてきたのはなんと黄土色のグラマラスな……

 で、できてる〜〜!もう飛行機にならんとしている、チョウチョで言えば蛹が割れ始めているくらい羽化寸前の間もなく感ですよ。ランナー2枚がバコッと合わさればもうドイツの秘密兵器(のめちゃくちゃ強化された計画機)が出現しちゃうじゃないですか。パッケージイラストはビリっと渋いグレー基調の迷彩なのに、この暖かなベージュをプラスチックの色に選んだ開発者!あ、アナタですか? 1杯おごりますよ!ハイファイブ!

 こんなおおらかなパーツ分割なんだからディテールもおおらかなんでしょう……って、なんですかこのバギボギのディテール!リベットがごっそり、パネルラインはクッキリ、凹凸をうまく使い分けつつ、胴体と翼の艶めかしい輪郭はしっかりと量感豊かに表現してくれているじゃないですか。
 なんでしょうね。暖かな色のプラスチックにギシッとディテールが入っていると、とにかくすぐに手を付けたくなる。貼りたくなる。出来たカタチを撫で回したくなる。これは人間の本能に訴えかける効果としてそろそろ命名したほうがいいと思いますがどうでしょうか。

 コクピットだってバスタブにシートと操縦桿と計器盤を放り込むだけのシンプルな構成なんだけどさ(最近の飛行機模型ってここをすっごくたくさんのパーツで実物そっくりに「再現」するのがトレンドなのよ)、ちゃんと彫りが深くてコクピットにしっかり見えるから、「これでいいよね!?」って話しかけたくなっちゃうわけ。
 さらにさ、パーツの合いは悲鳴が出るほど精緻で、流し込み接着剤を丁寧にツツーっと置いていくだけでものすごくきれいに組める。6パーツがズドンと合わさりほとんど飛行機のカタチ。だからといってもう終わりではなくて、ちゃんとエンジンや着陸脚みたいなピリッとしたパーツを組み込んでいく過程は適度に待ってくれている。ああ、本当にいい時代を生きてるなオレ、ってしみじみしちゃいましたよホントに。

 昔のプラモってどうしても「彫刻はヌルいし実物と比べるとなんだかあっさりしてますね」みたいなことが多かったから、プラモ愛好家がそれをどんどん細密に表現する方向(=パーツを増やして細かくして実機の構造をひたすらに再現する指向)にプロダクトの側を動かした部分があるとは思うんだけど、いまは資料も豊富だし彫刻もデジタルでガンガンできるから「少ないパーツ数だけど実感あるディテールが楽しめるぜ」という方向性のプラモも絶対作れるはずなんだよな。しかしそういう製品はホントに少ない。
 アミュージングホビーのこのプラモは、「シンプルでかっこいいのがみんなのライフスタイルにマッチしてるっしょ?」っていう気分をブレることなく設計に落とし込み、高度なデジタル技術でめちゃめちゃ精度高く作り上げる……っていう、いまだからこそ成立する製品になってるんですよね。問題はこれが「実在しない飛行機」というところなんだけど、たぶん実在する飛行機だって、そういうスタンスでプラモにすることはできるはずなんですよ。
 ああ、すべての飛行機模型がこんな様相であったなら、すごくすごく幸せな毎日が送れるような気がする。そんな傑作プラモデルであります。みなさんも、ぜひ。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。