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南国の掩体に導かれ、紫電改のプラモデルが持つコク深いディテールに慄く!

 コッテリとした、しかしちゃんと繊細さの宿るディテールにハッとした。初めて出会う飛行機模型、ハセガワの1/48紫電改だ。零戦のカッコよさはわかるし飛燕や雷電といった飛行機の持つ個性はひと目でわかるけど、正直言って紫電改は「ここが紫電改だ!」という強烈な特徴がないように思えて、いままであまり魅力を感じたことがなかった。

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 1歳になったばかりの息子を連れて高知に出かけるにあたり、モデルコースを考えるのはたぶん無意味だというのはなんとなくわかっていた。車に乗ればすぐに寝るし、腹が減ったらグズるし、そこがどんな場所であろうが生理現象は止まらない。それなら息子のペースに合わせて車を停め、そこで親は食べられるものを食べたり眺められるものを眺め、息子が好き放題に歩いたり砂利と戯れたりするのをそっと見守るくらいしかない。

 いよいよ東京へのフライトに向けてなんとなく意識を空港に向けていたら、寝るもんだと思っていた子供が寝ない。フライトまでの中途半端な時間を眠気で暴れる子供と過ごすのは気が重いから、レンタカーの返却予定時刻まで空港の周りをゆっくり流す。

 高知龍馬空港の北側を走る国道沿いは走り飽きてきたから、滑走路の東端をぐるりと回り込んで南側の田園地帯を走る。いまにも寝そうな子供をルームミラー越しにチラと眺め、外にかまぼこ型のコンクリート塊がポツポツと建っていることに気がつく。掩体だ。田んぼのあちこちに、戦時中に作られ飛行機を格納しておいた掩体が残っている。

 子供は滑走路東端をもう一度回り込む前に寝息を立てはじめ、親は田んぼのまんなかに建つファミリーマートの駐車場で昼食休憩。サンドイッチを右手で頬張りながら、左手のスマホでササッと調べると、高知海軍航空隊のあった土地に41基作られた掩体のうち、現存する7基が市の史跡に指定されているらしい。息子が寝るか寝ないかで走行ルートが不随意に変更され、偶然こんな戦争遺産に導かれる……というのはコスパ/タイパ重視の旅行の対極にあると感じた。

 水田のなかに不規則に点在する掩体を間近で眺める拠点のように建つのが前浜防災コミュニティーセンターだ。高知の海沿いを走ると大量の津波避難タワーが立ち並んでいるが、近所の防災設備や備品を格納すると同時に駐車場としての役割も果たしている。

 浅い眠りから覚めた子供を抱きかかえて屋上から眺めれば、静かな水田にコンクリの肌を晒す掩体もあれば、いまにも草木に呑まれて自然と一体化しそうな掩体もあることに気づく。それぞれに番号が振られていて、向きや大きさもまちまち。高知海軍航空隊は白菊という練習機を使ってパイロットを養成していた(そしてほどなくパイロットも機体も特攻を命ぜられた)はずだが、解説板を読んでいると、「6号掩体には紫電改が格納されているのを見たと語る住人もいる」と書いてある。

 紫電改の姿を魅力的だと思ったことはなかった。でも、いま紫電改とはどんな飛行機だったのかを知りたくなった。自分の知っていることをコンパスの軸にしても、決まった半径の円しか描けない。子供ができて、旅行に行って、まったく制御できない偶発的なナビゲーションが私を掩体に導き、そして新しい知識の軸足をもって新しいプラモデルに手を伸ばすきっかけをくれた。

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からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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