アーマードバルキリーはハセガワ20年の歴史が折り重なったプラモデルだ!

 このプラモにパッケージされているのは20年の歴史。
 「飛行機プラモが主戦場」と認識されていたハセガワが2000年に『超時空要塞マクロス』に登場するVF-1バルキリーのファイターモード(ま、これも飛行機模型に近い見た目なのですが……)でキャラクターモデルに進出した驚きも醒めやらぬなか、バトロイドで人型ロボットの模型をリリースしたのが2002年。
 いまも売られている当時のバトロイドを見ると、スケールモデルの長い歴史で培われた生真面目さが随所に盛り込まれていて、それがどこか不器用な雰囲気にも感じられます。そんなハセガワ製バトロイドに「20年越しの追加パーツ」が新規に設計/製造されて「アーマードバルキリー」がここに誕生。
 戦闘機が変形することでシュッとしたシルエットのロボットになるというのが魅力のバルキリーに、ミサイルてんこもりのアーマードパーツというカクカクした装備を着せてカラーリングもシルエットもガラリと変える……というコンセプトこそこのメカの特徴であります。

 追加パーツ……と言いながら、正面から見えるパーツのほとんどが新規パーツに当たります。デッカい胸肉がバルキー!胸にミサイル入れてんのかい!と言いたくなるこの厚みには当然10発ものミサイルが収まります。右のコマンドーが構えてそうな4連ランチャーはふくらはぎの左右に増設されるミサイルポッドの基部。

 21世紀に入って飛行機以外のジャンル……とくに『バーチャロン』や『メカトロウィーゴ』、『クリエイターワークス』を始めとしたシリーズで培ったキャラクターモデルの経験値がふんだんに活かされた分割や彫刻。でもガンプラとはまた違う薄味な感じ(褒め言葉を使うならスケールモデルライクな繊細さ)が組む人に普通のロボットモデルとは違う印象を与えてくれます。

 大量のミサイルを見せるか、ハッチを閉じて隠すか……。これもハッチを可動式にせず、開閉どちらかの状態を再現するヒンジパーツの選択によってユーザーに「決断」を迫ってきます。ごっついロボットのヒロイックな立ち姿を見せるか、全弾発射のオラついたアーマードバルキリーを仕立てるかはあなた次第!

▲新規パーツのなかでも注目なのがこちらのハンドパーツ。丸い断面の指がハセガワから立体化される驚き!

 普通に考えたら「VF-1バトロイドの全身を作ってからアーマーを着せる」というのが努力型の回答。しかし、「スネブロックの上端と下端は造形するけど、アーマードパーツで隠れる部分はただの桁が入っているという構造」というのは天才型の回答。こういうトンチのような「見えるところにパワー全振り」というアイディアは、ハセガワというメーカーの設計理念がこの20年ですごく柔軟でバラエティに富んだものになった証拠に思えます。だってもとのバトロイドは「そこまでやらんでもええやろ!」というくらい、手探りかつ必死で「スケールモデル的正しさを持ったロボット模型」を設計していた雰囲気が漂っていましたからね……。

 この眺めに、「飛行機のハセガワ」から「総合模型メーカーになりつつあるハセガワ」への跳躍が凝縮されています。この脚一本とっても、昔のパーツといまのパーツが混在するおかげで「スナップフィットの感触も今と昔では大きく違うし、決して悪かったわけではないパーツの合わせもこの20年で随分良くなった」ということがビシバシ伝わってくるんですよ。
 正直言ってパーツ数は多いし関節も頑丈な雰囲気ではないので、ガンプラを組んでいる人からすればちょっと奇異な感じがするかもしれません。しかし、そこには「いままでなかった味わいのプラモがまたひとつ増えた」という興奮があります。基本的な色分けはプラスチックパーツでもできているから、ガシガシ組んだ後から塗装のことを考えることにしましょう。みんなの家にも配備して、20年のタイムトラベルを楽しんでください!

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。