プラモデルが贈ってくれた、旅の解像度と心の余裕。

 突如として、義母が写真趣味にハマった。カメラとレンズを矢継ぎ早に買っては日常を撮影し、SNSでシェアして見知らぬ人とコミュニケーションを取っているらしい。巧拙問わず、いろんな人の写真がいろんな言葉とともに流れてくるSNSで、情報の洪水を浴びながら「次はあんなレンズを試してみたい」とか「こういう写真を撮ってみたい」といった欲に従ってアクティブになるのはきっといいことだろうと思う。

 還暦祝いをしに義母のもとを訪れるというのを口実に、自分はSIGMAの18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryというレンズを買った。コンパクトで明るいズームレンズは家で模型撮影をしているとつくづく縁がない。散歩や旅のために買ったカメラと相性が良く、切れ味鋭いこのレンズは強制的に小湊鉄道を撮影する旅へと駆り出されることになった。

 6年前に友達と訪れた上総中野駅に、家族一同で再訪。小湊鉄道のキハ200形は変わらずガラガラと音を立てていたが、自分の心境は大きく違っていた。当時は「古びたディーゼルカーがこんなところにあるもんなんだな」くらいの感想しか出てこなかったのだが、いまでは二両編成で運用される前後の車輌でほんの少しだけ違うディテールが目に飛び込んでくる。

 車体に入れられた番号を見るより早く、窓枠のカタチ、ドアのプレスラインの有無が勝手に認識されて、口にこそ出さないが「コイツは窓枠が非ユニットサッシでドアが非プレスなので1970年製造」なんつー話がスルスルと引き出しから出てくるようになっているではないか。

 それもこれも、自分がこの車輌のプラモデルを組んで、説明書をしこたま読んで、ひとつひとつのパーツを吟味しながら組み付けたおかげである。ついでに、「こんなふうに塗装が剥げるのか」とか「下回りはこんな色で汚れるんだな」みたいなことがカメラに冷静さをもって収められていく。

 いやはや、プラモデルというのはやっぱりカタチを覚えるのにもっとも効果的な手段なのかもしれない……などと思っていると、義母はさっさとお目当ての写真(おそらく「こういうのが撮りたい」というのが大雑把にあるのだろう)を撮影するとすぐにクルマに乗り込み、次の目的地へと急ごうとしている。

 ただ乗るだけだった小湊鐵道も、いざクルマでそれを追いかけながらの撮影行となれば見え方もまったく変わる。無人の駅舎、使われなくなった待避線、木々の洞窟から飛び出てくると待ち受ける遮断器のない小さな踏切……。鉄道模型単体として見ていたPLUMのキハ200形も、しかるべき景色のなかに置けばさぞイキイキとした表情を魅せるだろうな……と感じるとともに、それがかなり狭い範囲で切り取られた情景でも成立しそうだぞ、なんて皮算用もむくむくと盛り上がってくる。

 忙しない撮影行だったが、被写体や景色と優しい気持ちで向き合うことができた。友達との記憶の隣に、新たな家族との記憶がそっと足された。そして小湊鐵道は確実に自分のなかでひとつ大きな存在となって、家に帰った私は完成したまましまい込んでいたキハ200形のプラモを自宅の片隅にちょこんと飾ることにしたのだった。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

DJマシーネンのビートに乗って最強の世界を塗ってみないか?

 HIP HOPのフリースタイルバトルが好きでよく見るのだけど、出ている人たちはその場でいろいろな言葉を並べて対戦相手よりもいかに自分が優れているのかを示そうとする。ターン制で3ターンだったり2ターンだったりするのだけど、面白いのは始まりの一言はきっかけに過ぎない。

 韻やフロウという自身が繰り出す技術的な面と、相手や後ろで流れるビートがもたらす外的要因が混ざり合って思わぬ言葉の羅列が発生し、抱えているバッググラウンドも様々なので同じことをやっているのにまるで違う個性がぶつかり合う。違う者同士が彩りを華やかにしあう世界だとも思う。

 マシーネンクリーガーの塗装は自分にとってまさにそんな感じで、思いもよらぬ方向に進む。前日の深夜から明け方に作っていた1/35ファイアボールSGの全体を黄緑で綺麗に塗ったので、そのまま野菜みたいに仕上げようと思いつく。自分で自分にいたずらをしたくなって一番出っ張っているところから淡い緑をぼとり。「そういえば最近はフィギュア塗装の目を描く調子が悪いんだよな……」と思いながらぐるぐると縁を描いて丸を作る。思ったよりも描けている。

 そのあとは繊細に塗り込んで行こうと思っていたのだけど、円を描いていた太めの丸筆の描き心地とスピード感が心地よくて、そのままリズムに合わせて塗り進めてしまった。しかも綺麗な緑色という気持ちだったのに反対色のナスみたいな紫を組み合わせて和菓子みたいな色合いのものを生み出す。

 勢い重視かと思いきや、紫にはほんのりベースとなった黄緑を混ぜたりして調和を図っているのが「いつのまにか身についた技術!」という感じ。ただの早口じゃなくてリズムに乗れているし、韻も踏めてる。そろそろ終わりが見えてきたような気がするのでデカールを眺めると、スカル柄のデカールが最高にかっこいい。これに着地できるように進んでいくぞと、まとめにかかる。というか偶然にも紫部分の色が近くてラッキーだ。

 マシーネンクリーガーは自由な塗装で無限に広がる世界観が持ち味だなと思うのだけど、それにタップリ甘えられるのは塗りやすかったり筆で撫でたくなる曲面を持ったマシンデザインの影響が大きいように感じる。それでいてとびきりかっこいいデカールで最後に仕上げれば、間違いなく形になる。

 ノリやすく、上がりやすいビートの上で自分が描いたものはフリースタイルバトルとはまた違う、形に残るというよさがある。始まりの黄緑は、この完成形のきっかけにしか過ぎなかった。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

世界で一番愛されているミリタリーウェア・チノパン。その傑作モデルの香りを「ユニクロU」で楽しめます。

▲多くの人の日常着として大活躍しているチノパン。このパンツもとってもプラモに近い存在。そのことを知ってからチノパンがさらに好きになりました

ユニクロU レギュラーフィットチノ

世界で最も愛されているミリタリーウェアと言えば「チノパン」でしょう! チノ・クロスと呼ばれる生地で仕立てたパンツ(ズボン)を指し、19世紀中ごろに英国・フランスの軍隊の制服に使用されました。採用当時は白が多かったそうなのですが、汚れも目立つし敵からも目立つので、カーキ(日本ではベージュっていう人が多いかもしれない色)に染められたようです。

▲俺たちの着こなし! 痺れるだろう。チノパンのかっこよさがビンビンだぜ!!! マッカーサーは強烈なアイコンですね!!

このチノパンを傑作パンツに仕上げたのが、アメリカ軍でした。主に1941〜45年までのチノパンは特に傑作で「41カーキ」「43カーキ」「45カーキ」と呼ばれ、現在のファッション世界の中でも超リスペクトされています(それぞれの数字が年代を表しています)。その中のおそらく「45カーキ」を丁寧にリスペクトしたであろうモデルがなんとユニクロに!!しかもセール中で2990円(元は5000円くらい)。このモデル、生地も丈夫だから模型作ってる時に着用するのもオススメです。

▲ベージュやブラウンなどの他に黒や緑、グレーなど現代には様々な色のチノパンがありますね。右のブラウンのものが今回紹介するユニクロUのレギュラーフィットチノです

日常着やビジネスカジュアルまで幅広く愛されているチノパン。戦いの中で生まれるミリタリーウェアが戦いから解き放たれた時、その機能性は私たちを快適にしてくれたりするんですね。タミヤのミリタリーミニチュアのプラモでもチノパンを履いている人がいるのかな〜なんて見ていると、超絶ファッションアイコンなアニキ「ダグラス・マッカーサー」がおりました。彼=チノパンですね。

▲タック入りのガシッとしたチノパンにパイプ姿でプラモ化されていますね
▲平気でジャブジャブマッカーサー。マッカーサーとチノパンの関係は、彼のために作られたなんて話もある“マッカーサー アーミー クロス”という生地もあったほど

「41カーキ」「43カーキ」「45カーキ」は上記写真のマッカーサーが着用しているモデルとは異なりますが、同時期に存在した傑作チノパン。それぞれ微妙な差異があり、時にはそれぞれの特徴が混ざった過渡期なパンツも見つかったりしてすごく楽しいです。私たちが楽しんでいるミリタリーモデルの時代のど真ん中で、プラモの側にいてくれる洋服です。この傑作モデルをユニクロの中でもクリストフルメール(過去にラコステやエルメスのレディースのアーティスティックディレクターを務めていた。現在は自身のブランド・ルメールを立ち上げている)が手がけるコレクションライン「ユニクロU」が再構築して発売しました。こういった伝統的なミリタリーの匂いがするアイテムがサクッと買えるのは嬉しいです。

▲懐中時計を入れていたウォッチポケットに斜めポケットがこのモデル共通の特徴。後ろのNAUTICAのチノパンはストレートポケットで、こちらは60年代以降に見られる特徴です。ユニクロUのモデルはちょっと古臭い感じがカッコいですね。

ウォッチポケットやバックポケットの縁が片方だけについています。これを「片玉縁」と言って、45カーキによく見られる特徴です。上下に縁があるものを「両玉縁」と言って41カーキによく見られます。

▲ベルトループがセンターではなくオフセットされている特徴も再現。ベルトループの長さも45カーキのように長めになっています
▲サイドのアウトシーム、インシームともにダブルステッチ。現在のパンツでは、強度が必要なデニムやワークウェアに見られる仕様です
▲元の45カーキはボタンフライですが、現代の生活ではジップの方が何かと便利。現代の生活にあったスタイルにフロントは適合されています

ミリタリープラモのアニキたちが纏うウェアは、結構身近な存在が多いし、逆に自分から近づいていけばかっこいいものや機能的なものが多くて楽しいですよ。全身ミリタリーになると1人最前線になっちゃって周囲をざわつかせてしまうかもしれませんが、パンツだけとか上着だけとか着てシャツやデニムと合わせるとミリタリーウェアならではの存在感がでて良い感じになると思います。

▲ボタンダウンシャツにチノパン、ニューバランスと全身アメリカ生まれのアイコンで

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

筆文字でプラモをカッコよくドレスアップ/『漢デカール04』、出来!!

 古くからの戦友(「とも」と読みましょう)である芦別のモデラー、POOH熊谷アニキがドロップしている漢デカール。力強い筆文字で書かれた漢字がギッチリ印刷された水転写デカールのシリーズ第4弾が発売されました。フォントじゃなくてディレクションの入った手書き文字であります。

▲使いたい文字をハサミやカッターでおおまかに切り出して……
▲塗れたスポンジの上にON(水に浸してからティッシュの上に置いとくでも可)
▲貼りたいものの上にずらして……
▲平筆で撫でつければバシッと定着します!

 水転写デカールは扱いが一種独特(プラモデル作り以外でほとんど経験しないもんね)なので苦手とする人が多いのですが、最近はこれもキレイに貼るためのツールやケミカルが大量に発売されています。手懐けることができれば塗装や工作では絶対に出せない精度のデザインや彩りを模型に与えられますから、私にとってデカールは「最大のディテールアップ」と言っても過言ではありません。デカール貼るの好きだし。うまくなりたい人は以下リンクを参考にして頑張ってみましょう。

 さて、このデカールの特徴は字のかっちょ良さもさることながら、ニス(透明なフィルム部分)のキワが攻め攻めであること!デカールを貼ったところと模型表面のツヤの差は案外目立つもので、そこに空気が入ったりすると「シルバリング」と呼ばれる白浮きなどが発生して見た目がよろしくありません。しかし漢デカール04は文字と文字の間を詰めることで一枚一枚のサイズを大きくレイアウトしたい!というPOOHアニキの想いから、ニス版と文字版の大きさを極限まで近づけることにより、透明なはみ出し部が目立たないようになっているのです。

▲模型に筆文字、目立ちますね……。
▲2枚貼るときは縦書きがオススメ!

 また、今回の文字デザインはとにかく左右に力強いストロークが目立ちます。ゆえに、横に並べてレイアウトするよりも縦に並べて貼っていくほうがバランスを取りやすく、お互いの距離感もツメやすいとのこと!サイズの大小、色の違いをうまく使えば斜め配置やあっと驚く組み合わせでオリジナリティを出せること間違いなしです。漢デカールシリーズを使ってプラモに和のスタイリッシュさを追加してください。そんじゃまた!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

今日は使ったことのないマテリアルを積極的に使う日/ハセガワのコルセアIIを塗るあれこれ!

 箱絵が最高にカッコよくて買ったハセガワのコルセア2です。買ってからずーっと何色で塗るか悩んでいたんですが、紆余曲折の初志貫徹で、白とグレーを基調とした箱絵と同じカラーリングで塗ることにしました。

 ランナー3枚だけだから組み立ても余裕でしょ~とタカをくくっていたんですが、ミサイルや開いたハッチがかなり多くて、しかもその接着が「面」では無く「線や点」なのでなかなかに苦戦しました。大食いチャレンジのラストスパートで苦しいフードファイターの気持ちが今ならわかる。マンネリな作業に味変を取り入れたい……。

 そこで、失敗してもよいから、今まで使ったことの無いマテリアルを使って「経験値を増やす」というモチベーションを足掛かりに製作を続行することとしました。

 時に飛行機のキャノピーの塗り分けですが、超絶便利な専用のマスキングテープが売られていたりするのでそれを買えば楽ちんです。しかし、敢えて、今までやったことのないマスキングゾルを使ったマスキングにチャレンジする事としました。使用したのはGSIクレオス Mr.マスキングゾル改です。

▲色が綺麗!!

 乾くとこんな色になるんですね。粘度が高くて表面張力が効くので、ゾルがフチで止まり、はみ出さずに塗るのが思ったより簡単でした。やってみるもんですね。あと、マスキングテープをデザインナイフでカットする方法に比べれば、パーツを傷つけるリスクが無いのもよろしいです。デメリットといえば、乾燥前の塗ったパーツを落とすとベチャッとなって大変ということぐらいでしょうか(2回やりました)。塗装後の仕上がりが楽しみです。

 楽しくなってきましたよ。今度は使ったことのなかった、ガイアノーツのサーフェイサーEVO「スカイブルー」を下地塗装として使ってみることにしました。

▲色が綺麗!!

 思ったより真っ青。しかし眼福です。ゾルだろうがサフだろうが、やっぱり色が着くと楽しいですね。制作途中でいろんな色に変化していくというのもオツなものです。そしていよいよ、サフの上からラッカーのMr.カラーをエアブラシで本塗装してみます。

▲青色が透ける……それが、逆に綺麗だと思いました。

 これは最初から薄々分かっていたんですが、案の定、青色はホワイトで隠蔽しきれませんでした。(グレーはそこそこ隠蔽してます。)しかし、エアブラシで届きにくい入り組んだところ(私を苦しめたミサイル密集地帯)にブルーが残って、なんとも儚げな色になっているではありませんか。昨日の敵は今日の友です。

 さて、これから細部の塗装とデカールの貼り付けに入っていきますが、あとは最後までハイ・テンションで駆け抜けられそうです。手癖でやっつけるのではなく、また新しい未体験メソッドを取り入れながら作ってもいいですね。その道程でも、新たな発見があるかもしれませんから。

▲そうそう、新たな発見といえば、クレオスのMr.マスキングゾル改にはもともとハケが付属していますが、同社より発売の、接着剤用筆に交換すると筆が小さくなって塗り分けが容易になりました。
▲それに乾燥後はとても綺麗なクリアブルーになるので、キャノピーの塗装に採用することにしました。これはこれでいいでしょう。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

トイのギミックとプラモのシャープさが絶妙にミックスされた新ロボットプラモ「ハンドレッドエッジ」で中国新興メーカー・橘猫工業の今を体感!!

▲オリジナルメカプラモシリーズの新ブランドが爆誕!! ウェーブから届いた最新ショットでご紹介するぜ!!

アマゾンのリンクはこちらからどうぞ→ウェーブ 橘猫工業 CODE BEAST ハンドレッドエッジ 1/100スケール

国内の老舗メーカー・ウェーブが現在取扱している中国の模型メーカー「橘猫工業(ORANGE CAT INDUSTRY)」(以下オレンジキャット)。最近では「テッカマンブレード」のプラモで知名度を上げたメーカーでもあります。そのオレンジキャットが手がける最新のプラモ「ハンドレッドエッジ」が12月に発売となります。こちらはメカデザイナー・倉持キョーリュー氏がデザインしたオリジナルロボットで、人型から獣型への完全変形と7色の成型色により組んだだけでもカラーリングを楽しめるプレイバリューの高いプラモになっています。今回はウェーブから届いた最新のテストショットでハンドレッドエッジの魅力に迫ってみようと思います

▲エッジがしっかりと出た気持ち良いパーツ。シールはセンサーのみで、それ以外は成型色による執念とも言える色分け
▲変形は差し替えなし!(ただし足とか腕を外して作業すると、格段に変形させやすいです)。人から獣になる!!!

パーツの成型と成型色のレベルは非常に高いです。パーツ表面も荒れてなく、各部のエッジはビシッと立っています。成型色も赤(キットはオレンジより)や薄緑など難しい色が透けなく、塗装なしでも多くのユーザーがカッコイイ色を楽しめるレベルに仕上がっています。

▲マジで透けなし! 成型色の良さは抜群です
▲このような複雑な形状のパーツもとても綺麗に成型されています。パーツとランナーを繋いでいるゲートも細いです

本キットのコンセプトが「遊べるプラスチックモデルキット」っということで、「ガシガシ遊んでも色が剥がれない」=「成型色による色分け」の追求がなされています。成型色の色分けにチャレンジしているプラモは断面が面白いんですよね。このような断面を、組んでいる時に自身の目で見て楽しめるのも、こういったプラモの良いところです。

▲ギミックを受け止めるフレームや、口内部パーツなど様々な要素が閉じ込められています
▲目の黒フチパーツの内側からツインアイをはめ込むことで、目の色分けもOK!
▲胸像みたいな状態でもかっこいいですね〜。成型色だけでこの雰囲気を味わえます

本キットは内部フレーム的なものはなく、関節ブロック内にスライドギミックや可動軸を内蔵しています。引き出したり押し込んだりと、トイ的な面白さがあります。

▲胸部は中央の部が引き出せたり、胸部ブロック全体が上下に動いたりして、人から獣への変形を実現します
▲太モモの付け根には円形の関節が入り、これが太モモ内部のレールをスライドすることで、獣状態の時の脚部になります

可動範囲は無理のない範囲で、現代のよく動くモデルよりは少々抑えめ。これは変形時の剛性も重視されているからだと思います。また各部には3mm径の穴があり、ジョイントや武器を装着することが可能です。お好みでガンガンカスタマイズできますよ。

▲こちらが腕や足にある3mm径の穴
▲武装は銃(剣モードと銃モードどちらにもなります)、剣、シールドをセット。銃を背中に接続できるジョイントも付属します

そしてこのプラモのもう一つの魅力が「サイズ」です。全高約22cm!! とキャラクターロボットプラモの中でも大きな部類に入ります。これだけのサイズのものを差し替え無しの変形で遊べるんです!

▲iPhone12と比較するとこれだけ差があります。手のひらに収まらないですね!

昨今の流行でもあるイラストレーターさんにより描かれたイラストを元に立体化されるオリジナルプラモ。美少女とメカがそのメインストリームであり、アニメ作品からの立体化ではありえなかったようなデザインのものがプラモとして普通に楽しめる世の中になっています。今回ご紹介したハンドレッドエッジもデザインを形にするだけでなく、ギミックや色分けなどかなり本気のプラモになっており、きちんとカロリーをかけた仕事を味わえる楽しいプラモになっています。合金トイのようなギミックと、プラモのだからこそのシャープな造形を兼ね備えたハンドレッドエッジ。今後もシリーズ展開予定ということなので、これからのアイテムも楽しみです。

アマゾンのリンクはこちらからどうぞ→ウェーブ 橘猫工業 CODE BEAST ハンドレッドエッジ 1/100スケール

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモデル撮影を劇的に飛躍させたければ、コンパクト&超安なモノブロックストロボを導入すべし!/Godox MS300

 一眼レフやミラーレスカメラを使って模型撮影(に限らずブツ撮り)をしている皆さん、モノブロック買いましょう。上の写真はこのたび新調したGodox製モノブロック、MS300イッパツで撮影したもの。モノブロックというのは電源をコンセントから引っ張ってくるストロボだと思ってください。昔はン十万払って買うようなものだったのですが、いまは13500円とかで買えてしまいます。カメラメーカーの純正ストロボよりもうんと安く、家の中での撮影が革命的に変わります。ほんとに。

 モノブロックのいいところは「三脚無しで手ブレしない写真が撮れる(←これが一番大きい)」「カメラの上にくっつけなくていいのでライティングの向きが自在に変えられる」「電池交換しなくてもいいし、電池式よりもチャージがかなり速い」「上向きに転がしておけば家の天井が太陽になる」というのが大きなポイントでしょう。

 ……とはいえ、今まで使っていたGodox DE300というのは冷却用のファンがうるさいしデッカいし配線面倒だし光量は手動でダイヤルをグルグル回さなければいけないというシロモノで(それでも昔クリップオンストロボや小さな光源をいじりまわして撮影してたときよりも100倍ラクに撮影できていました)、そろそろもうちょっとハイテクな機材に乗り換えてもいいんじゃないかなと思い、同価格帯の小型モデルを試してみたんです。

▲奥が従来のDE300、手前が新規に導入したMS300。光量そのままでめちゃくちゃ小さくなったな!?

 容積は体感で2/3、スタンド取付部の質感がややプラスチッキーな印象になったことと、チャージがDE300よりもほんの少しだけ遅くなりましたがどちらも模型撮影をする上では障害になりません。とにかく小さく軽く、さらにファンの音がぜんぜん聞こえない!技術の進歩は素晴らしいですね……。

▲フード付けてこのサイズ!取り回しや狭い撮影スペースで壁とのクリアランスを気にしなくてもいいのが最高。

 カメラとの接続はシンクロコードというもので行います。カメラ側にシンクロ端子が付いていない場合はストロボくっつけるシューのところをシンクロ端子に変換するアダプタが売られているのでそれを手に入れましょう。めっちゃ安いので。

 ただ、カメラとケーブルが繋がっているのも煩わしいし、モノブロックの光量調整をいちいち手を伸ばしてダイヤルくるくる回してやるのもイヤ!という人のために、MS300はなんと無線トリガーに対応している……すげえ。

※ちなみに模型撮影は基本的にピントが全体に合っていてほしいのでかなり絞り込んで撮影することが多いはずです。そうすると、モノブロックを常に最大光度にしておいてもあんまり困ったことにはなりません。2灯以上導入して背景とブツの照度バランスを整えるなど、将来の拡張性を考えている人、模型部屋でもリビングでもフットワーク軽く撮影したいという奇特な人(オレだ)は無線トリガーの導入を考えてもいいかも知れません。

▲本体背面の操作部。これが遠いといちいち触りに行くのがめんどくさいのだ……。
▲で、これがワイヤレスフラッシュトリガー。カメラ側に取り付ければ光量の調整や発光が無線でOKに!

 中華製の無線機器は技適の取得有無とか説明書がよくわからんとかそもそもどのストロボにどのトリガーが対応しているのかよくわからん、みたいなのが数年前の状況だったのですが、現在はGodoxブランドもグローバルに受け入れられるようになり、随分とわかりやすくなりました。ホントにいい時代です。

 そうは言っても、正面からストロボをバカーっと当てたら模型の立体感が失われてよろしくないですよね。というわけで、一番簡単に家の撮影環境を楽ちんにしたければ、モノブロックを天井に向けて立てておきましょう。モノブロックそのものが小型軽量なので、比較的安価なスタンドでも問題ありません!

▲天井が白いことが前提になりますが、モノブロックをこんな感じで上に向けておきます。

 手持ちでスパッとシャッター切るだけでこれくらいの写真はなんの工夫もなしにいきなり撮影できます。もちろん背景にも光が当たるようにするとか、もっと光源の位置を考慮したり上からフカンで撮影するなど工夫すれば見え方にたくさんの変化を与えることができますよ!

 模型撮影に、メルカリで不用品を売るときに、テーブルフォトをキレイに残したいときに……モノブロックは家の中での撮影体験を本当に劇的に変化させてくれるすばらしい機材で、レンズや三脚やカメラそのものの性能をあれこれ考えるよりも安く簡単に「良い写真」を手に入れられるチートツールです。安い、小さい、家の中に太陽が爆誕する!と三拍子揃った最強の撮影機材。みなさんもMS300、手に入れてください。いきなり写真のランクが数段よくなりますよ!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

全弾装填。発射管開け! /UVレジンで作るプラモ用発射エフェクト

▲100均で購入。100均だけどライトは330円ナリ。

 最近お気に入りのマテリアルは「UVレジン」。

 よく100均の手芸コーナーなどで★や♥等の型と一緒に売られており、あーゆー型に流し込んでしか使えないのかなぁ…と思っていたが、試しに買ってみたら思ったより粘度が高く、表面張力でレンズっぽい表現に使えることが判明。これは…使えるぞ!

▲「紫外線照射装置ィィィィ!」キットに直接塗布し、UVライトで硬化すれば、瞳やカメラレンズがいい感じに表現できる。

 というわけで、ここ最近いろんなプラモにちょこちょこ使用しているのだが、レンズ以外にも何か使えないかな……この”ぬちょっ”とした感触で作れそうなもの……うーん……あ、アレいけるかな?

 ということで、今回は前にレビューしたノーチラス号の飛行爆雷の発射のエフェクトをUVレジンで作れるか挑戦。

▲ノーチラス号は海上航行時カラーで塗装。
▲まずは芯となる透明ランナーを立てる。

 これだけでもういい感じになったので、完成でよくね?という気分になるが、頑張る。

▲ちょんちょんと芯にレジンをくっつけライトで硬化させる。

 固まったら、またちょんちょんと塗布し形を整えるだけ。楽勝よ。

 一見、不定形な煙を形にするのは難しそうだが、「均等にくっつけず、間隔や大きさをランダムにする」「色んな方向から見て確認」を意識すれば思ったより簡単にいい感じになる。なった。

▲完成!弾頭はランナーの切れ端を使用。

 あとは白+クリアー塗料でうっすら色をつけて完成!

 ノーチラス号の上に乗っければ、気分はもう「飛行爆雷装填及び誘導弾、全弾装填。発射管開け!」「了解。発射管開きます」「飛行爆雷を右舷へ射出後、10秒後に第二目標群へ誘導弾を発射だ」「了解」「飛行爆雷装填完了」「左舷発射管区準備よし」「測敵完了、誤差修正よし」「撃て!」 ♪チャチャチャ チャ~ララ~ である。

 というわけでUVレジンを使ったエフェクト作成、思った以上にうまくいったので気分良くこの文章を締められる……と思ったのだが、改めてふしぎの海のナディア21話「さよなら…ノーチラス号」の冒頭の戦闘シーンを確認したところ”飛行爆雷の発射順番”が違うという痛恨のミスに気づく。ぬぁぁぁぁぁ……ラストの「愚か者の辿る末路だ」というガーゴイルのセリフが突き刺さる…。

コピルアク

1981年生まれのプラモエンジョイ勢。本業はゲームとかつくる人。

1977年生まれのニチモの怪鳥! 「1/48 隼」プラモで感じた中古プラモと古着の同一性。

▲1977年に誕生したニチモの伝説キット。高荷義之氏による迫力ある箱絵も衝撃。こんなキットに出会えるのがプラモ中古ショップの魅力

古着屋さんが大好きだ。ダック生地のごっついジャケットがすでにパッカリングやダメージが出ているものを手に入れることができたり、ミリタリーウェアの傑作に出会えたり、どっかの企業がオーダーした謎ロゴ入りコーチジャケットに出会えたり、クタクタになったラルフローレンのシャツと会話できたりと、古着屋さんだからこそ手にとれるものがある。プラモ屋にも中古ショップがあり、その中には古いだけのレジェンドだけじゃなく、今の時代に時放っても素晴らしい輝きを放つ本当のレジェンドプラモが棚で待っていてくれる。今回俺が出会えた「ニチモ 1/48 日本陸軍 中島 キ43-1 一式戦闘機 隼」がまさにそれだった。2021年、一番夢中になった飛行機が「隼」だったからこそ出会えたのかもしれない。

▲Nichimoの文字が輝く赤タグで封がされたパーツ袋。今はこういうのあまりないですよね

1977年生まれのニチモ 1/48 隼。店頭で手に取ったきっかけ高荷義之氏によるあまりにもカッコよずぎる隼のイラストだった。戦う隼の勇ましさ。こんなかっこいい箱の中にはどんなプラモが入っているんだろう……。絶対カッコイイに違いない。そんな俺の期待をニチモの隼は裏切らなかった。そして、俺はまだまだプラモのをこと知らないんだと痛感させられた。こんなに素晴らしい飛行機模型に出会えたことに感謝。また一つ自分のプラモメモリーに名作がインプットされた。

▲衝撃の胴体
▲衝撃の翼

このキットを手に取った人はきっと口を揃えて「1977年に刻まれたリベット」のことを言うだろう。プラモにおけるオーバーなディテールは時に人の心を奪っていく。

▲当時のキットの接着剤が残されていた。色々な思いが巡るね
▲全体のパーツ数は、今の1/48スケールの飛行機とたいして変わらない。でも当時の人はどう思ったんだろうか?
▲そしてかわいいアニキたち。彼らこそ1977年の証人。俺には輝いて見える

いつものように組み立てに入る。パーツのディテールが良くても、組めない模型は世の中にたくさん存在するので、組み立てるまで油断はできない。安心感はまだなかった。パーツにエキサイティングしてた自分の心を一先ず落ち着かせる。そして組み立て説明書を見ると……。

▲パーツの番号だけじゃない! それぞれのパーツの名称が記載されている……隼を作っている人が何を組み立てているのかを体感できる

説明書とは模型が組み上がっていく順番を示すだけじゃないとパーツ番号の脇にある名称が教えてくれる。そう、この時点で感じたのはニチモの隼は仕事が丁寧なのだ。カッコイイ箱絵、美しいパーツ、組み立てる人へのメッセージが自然に収まっている。素晴らしいプラモだ。

▲収まるべきところに加工なしで収まるパーツたち

エンジン〜コクピットまでの繋がりをプラモを組むことで知ることができる。ここは細かいパーツのオンパレードなのだが、パーツ精度がしっかりしており、全くと言って良いほど問題がなかった。隼の心臓が机上に降臨する。

▲心臓は胴体へ。エンジンとコクピットが組み上がると、本キットは完成へと一気に加速する。またカウルを接着しなければ、エンジンもディテールも楽しむことができる
▲あれだけ複雑なエンジン&コクピットパーツを挟み込んでもズレがない胴体の貼り合わせ。この精度と今の高性能な流し込み接着剤があれば全く問題なし
▲士の字という飛行機模型におけるハイライトの一つの状態。シルエットも美しい

心臓部のパーツの細かさと、本体のシンプルなパーツ構成というメリハリが最高だ。主翼のフラップには羽布張りと思える表現が彫刻でなされており、本体内での異素材の共存もプラモで体感できる。

▲あまりの美しさに、塗装も楽しみたくなってきた。クリアーパーツの接着はまた後にしよう

名作は2時間ほどで俺の目の前に翼を広げた。あまりに美しいリベットが刻まれた胴体が光を反射した様子に興奮を覚える。傑作と出会えた喜びと、組み立てることができた喜び。このような出会いが楽しめるような場所として存在するのが中古ショップであり、その楽しみ方を僕たちがしていけば傑作のプラモも泣くことはない。俺が好きな古着屋さんでも珍しくて高いものや流行によって高騰しているものはあるけれど、決してそれだけじゃなく時代を通して傑作として楽しめるものが普通に置いてある。プラモも同じ。そんな傑作を手に取り組んでみると、また自分の中のプラモ感がいっそう豊かになると思う。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

V8エンジンの咆哮が水面に轟く/アメリカンカープラモ 「1/25 レベル ホットロッド・ハイドロ」

 軟質タイヤとギラギラのメッキパーツ。白いボディのパーツがギチっと入った厚みのあるハコ。その佇まいは紛うことなきアメリカンカープラモ。とはいえ、これを組み立ててもクルマができるわけではないというのがすごく気に入ってしまい、思わず模型店の棚からレジへ直行。

 ハコのサイドを見れば分かるとおり、これはボートとボートトレーラーのセットだ。お気に入りのクルマにコイツをくっつければあっという間にホリデーの到来。ガンダムMk-IIにフライングアーマーを装備すれば大気圏に突入できるようになるのと同じで、このキットを手に入れれば家に飾ってあるクルマの持ち主は水上にその行動半径を広げることができるようになるというわけだ。

 「ならばこれはカープラモではないじゃないか」と言うなかれ。クルマと同等のボリュームを持つこのアイテムは単体でもボートの模型たりえると同時に、アメリカのホットロッドカルチャーの概念が我々の想像を上回る範囲に広がっていることを教えてくれる。どんなときもむき出しのHEMIがオレたちの相棒であってほしい、というアメリカ人の信仰に近い気持ちをより強固に表現したければ、カーモデルにもうひとつのV8を添えることでそれを叶えるべし、というレベル社のメッセージではあるまいか。

 大胆にもシャーシは巨大な一体成型のパーツで用意されている。各所でレビューを読むと「全体がひどく歪んでいて大変だった」というものも散見されるが、私が手に入れた個体はそこまで極端な歪みもなかったし、そもそも一軸(タイヤはふたつだけ)のトレーラーなので接地させるのもそこまで苦労はしないはず。

 シャーシのパーツと韻を踏んだカタチで囲まれたメッキパーツのランナーに遊び心を感じる。シリンダーヘッドとエキマニを見ると「あ、カーモデルだ!」と早合点しそうになるが、彼らはそれをボートに移植し、キレイに磨き上げて高貴な獰猛さをメカの外観の一部として楽しむ。ボートはカーモデルのコアを取り出して祀る祭壇でもあるというわけだ。

 船体は豪快な竹割りだが、広くシンプルな面が塗装の喜びを予見させてくれる。牽引するクルマと同じ色で塗ればこだわりの強いオーナーになるし、ちぐはぐな色で塗れば「突如ボート遊びに目覚めた気忙しいやんちゃ坊主」を表現できるだろう。ラメの入った船体をソロリと水面に滑らせる情景を作っても良いだろうし、遊び疲れた夕暮れ時にトレーラーの傍らでBBQに興じるのも楽しいに違いない。

 デカールはイタリア製とあるから、おそらくカルトグラフ社製のものだろう。カラーリングは3種類が提案されていて、どれもド派手なフィニッシュがお似合いだ。軟質素材のタイヤと金属製の車軸はプラスチックバッグに中国製と印字されている。

 このボートとトレーラーをどんな色で仕上げるか、どのクルマに牽かせるか……という妄想は尽きない。もちろん単体としてもすごく見栄えのするモデルだが、願わくば良きフィギュアを添えることができれば文句なしだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

使ってみたらセメダインと全く異なっていた「タミヤ多用途接着剤(クリヤー)」。3日で作る飛行機プラモ「タミヤ 1/48 フォッケウルフ Fw190 D-9」完成!

▲速乾流し込み接着剤とともに、模型接着剤の中で新たな地位を獲得した多用途接着剤。タミヤの多用途接着剤はとてもマッチョだぜ!

 タミヤ 1/48 フォッケウルフ Fw190 D-9の完成までの道のりをオススメマテリアルとともにご紹介してきた本記事も最終回。飛行機模型完成の儀式「クリアーキャノピーの接着」で締めましょう。セメダインが発売した、メッキパーツの接着やクリアーパーツを曇らせることなく接着できるという「ハイグレード模型用」が多くのモデラーから評価を得たことで「多用途接着剤」というグループが確立されました。今まで接着作業時にナーバスになっていたことから解放されるので、ぜひとも1本持っておいて欲しい接着剤です。

 そしてタミヤからも「多用途接着剤 クリヤー」という商品が発売されています。タミヤの車模型「フェアレディ 240ZG」の説明書にもクリアーパーツやメッキパーツの接着に使おう! とたくさん登場していました。正直「ハイグレード模型用持ってるしな〜」って思って使っていませんでした。でも気にはなっていたので、今回のD-9で実験してみようと思い購入してみました。違いがあるのかな……

▲頑張って塗装した部分にプラ用接着剤でキャノピーを貼る……塗料が溶け出したり、キャノピーがずれたりしたら塗料も一緒にさようなら。飛行機模型で一番ナーバスになる瞬間ですが、多用途接着剤は塗料を溶かさないのでそんな心配からもさようならです
▲梅皿に移した瞬間「あ、ハイグレード模型用とすでに違う!」ってなりました。粘度が高いのです。ちょっとだけ糸を引きましたが、全然気にならないほどです
▲ツマヨウジでぐるぐるしてみると、本当にトロンとしています
▲所定の位置にチョンチョンと点付けしていきます
▲粘度があるので、パーツを保持している力も強いです。また、この接着剤のポイントは塗ったらすぐに貼ることです。それはなぜかというと……
▲3〜5分でパーツが仮固定されるくらいに硬化するからです! 完全硬化は1日かかりますが、これだけの速さでパーツを仮止め状態にできるのはすごいです!!!
▲ストレスなくキャノピーの接着が完了!!!

 タミヤの多用途接着剤は、粘度が高めで硬化スピードが速いのが特徴だと感じました。粘度の高さにより「点付け」や塗り込みが適していると思います。流し込みにしたい場合はセメダインのハイグレード模型用の方が快適に使えるでしょう。タミヤもセメダインの多用途接着剤も塗膜を犯さないので、最後の接着に本当に強い味方になってくれます。ぜひ多用途接着剤であなたのフィナーレを美しく迎えてください。

完成体験を得ると、次の模型の声が聞こえてきます。プラモを作るスタンスは人ぞれぞれ。どの取り組み方も間違いなんてないし、あなたが楽しめていることが一番大事。模型の話をみんなと楽しむことは最高です。でも誰かの言ったことを気にして自分の楽しみ方に迷ってしまった時(自分もよくありました)、そんな時は「3日」くらい目の前の模型の声にだけ集中してください。3日くらい向き合っていると完成したり形が見えてきたり「自分と模型との対話」が具現化して来ると思います。そしてあなたが楽しみたい方法が掴めるかもしれません。今の俺の楽しみは、3日目に完成させてプラモと朝焼けを見る、写真を撮る。それが俺のプラモ趣味の最高に幸せな瞬間です。

▲さぁ、次はスピットファイアに行こうか!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

塗り上げて楽しむF.S.S.造形の新スタンダード/ボークス製IMS最新作、オージェ・アルスキュルを深堀りレビュー!

 ボークスが贈る1/100スケールのプラスチックモデル最新作、オージェ・アルスキュルの予約は済ませましたか!?

 ということで、今回はテストショットを組み上げながら感じた興奮と最低限の塗装Tipsを交えながら、上に示したオージェ・バインダーを装備した姿にたどり着く旅路に皆さんをご招待します。それにしてもこのでっかいユニットがプラスチックで手に入るというのは本当にそれだけで楽しい&嬉しい大事件ですねぇ……。

 本作(通常版)のランナーは全部で4色。ソリッドカラーはそのままでも設定に近い仕上がりとなりますが、シルバーのプラスチックだけはそのままで金属光沢を演出することができません。ここがメッキ処理された「限定版」も同時発売となりますが、今回のテストショットには自分で塗装を施すことにします。

▲GSIクレオスのスーパーファインシルバー2の上から同社のガンクロームでオーバーペイントしています。

 ゲートはパーツの形状をしっかりと出すために、全体的にやや太めの印象。ニッパーでしっかりと切り取ってから、耐水性サンドペーパーやスポンジヤスリを駆使して追い込んでいくのがいいでしょう。今回はゴッドハンドの「神ヤス!」を各種使い分けてカット痕を極力平らに均しています。

 ボークスが推奨するファレホ(水性塗料)にも高輝度のシルバーは各種存在しますし、現代は光沢感のあるシルバー塗料が各社から群雄割拠といった趣で、みなさんも好きな色味、好きな輝きのシルバーを探し求めて見ましょう。オージェ・アルスキュルの高貴な輝きのために……。

 もうひとつ、プラスチックの成型色で再現されていないのが両肩を中心に配された赤です。目を惹くアクセントとなるのでぜひとも塗り分けたいところですが、下地がアイボリーのプラスチックであれば直接塗装してもしっかり発色します。簡単にツヤを出したければパーツの滑らかな表面をそのまま活かして塗ってしまうのも近道ですよ!

 組んでいて「ここはどうしようかな……」と少し悩んだのがオージェ・バインダーの内側に位置する「肩部側面内側装甲」です。三本爪のようなこのデザインは基部のメカ色とアイボリー、そしてフチの部分に赤が配されたデザインですが、とても巧妙な設計でみごとに一体成型になっています(このカタマリ感と深い彫刻はプラスチックモデル離れしたド迫力なのでぜひとも現物を見てもらいたい!)。

 この部分は完成後もかなりよく見えるので、ちょっとだけ時間をかけて塗り分け。とはいえ、マスキングラインはそこまで複雑ではありません。メカ色の部分はディテールを利用して面相筆の直塗りでクリア。赤い部分は細かく切ったマスキングテープを形状に合わせて貼り込んでからエアブラシ(もしくはスプレーでも可)で塗装するのが良いでしょう。

 ちなみに面が複雑に入り組んだ上部はオージェ・バインダーに挟まれてほとんど見えなくなりますから、マスキングが得意ではない、という人も焦らず恐れず、トライしてみましょう。少ない手間のわりには見栄えのするパーツなので、「ここはオレが塗ったんだ!」という満足感もひとしおです。

 このほか、腰部側面装甲と腰部背面装甲にも赤いラインが入ります。こちらもオージェ・アルスキュルの重要なアクセントになる場所ですが、基本的に直線的な塗り分けなので「難しい」というよりは「少しだけ忍耐力が必要」というタイプの塗装箇所になります。自分のスキルや完成後にどう眺めるかとじっくり相談しながら、自分のできる範囲で楽しんでみましょう!

 さあさあ、必要な塗り分けを終わらせたら組み立てです。主要な部位については前回の記事でお見せしましたが、ここからはお待ちかねの最終盤、オージェ・バインダーの取り付けです。この有機的な骨格と繊細な配管、シリンダーの彫刻がドカッとワンパーツなのも「美しい立ち姿とスピーディーな組み味」を象徴するナイスパーツですねぇ。

 自分で塗ったシルバーのパーツとメカ色のパーツが組み合わさり、とても広がりのある(かつ繊細なメカメカしさを湛えた)ユニットへと姿を変えていくさまは圧巻。まさにこのキットの大トロ、クライマックスの部分と言えます。

 大きく一体で成形された翼のようなバインダーを前後に取り付けると、かなり巨大なシルエットになります。プラスチックとはいえ厚みもそこそこあるため、結構な重量。これを取り付けるその前に、唯一このキットで過去製品と共通のパーツを紹介させてください……。

 そう、L.E.D.ミラージュ(及びK.O.G.)と共通のハンドパーツです。完成写真をなんとなく見ているだけでは気づかなかったのですが、この造形と分割はかなりグッと来たので改めてご紹介。各指の長さと上品な曲げ具合、そしてそれぞれに入れられたディテールを極力彫刻できるよう配置されたこのランナーからは、かなりの気迫を感じます。

 組み上がったハンドパーツ。この開き手は片手で6パーツから構成されておりますが、とくに親指の接着角度がパシッと決まったときに「うわっ!」と声が出てしまいました。接着式だからこそなせるジャストフィットな面同士のマリアージュをぜひとも味わってみてください。

 すべてのユニットを胴体に組み付けて、ついにオージェ・アルスキュルが完成!マスクはチンガードを装備したものも選択可となっており、武装も実剣と光剣の選択式。スタビライザーは収納状態と展開状態で差し替え可能です。展示スペースに合わせてどう仕上げるかいまから考えておきましょうね。

 美しい立ち姿のために剛性感あるパーツの一体化を大胆に推し進めながら、関節を可動/固定のどちらでも組めるようにしたことで巨大なオージェ・バインダーを装着した状態でもふらつくことなくディスプレイできます。さらに驚くべきは、バインダーの展開状態でもその設計思想がしっかりと機能することっ……!

 肩部の複数の装甲や内部フレームが複雑に絡み合い、それらが正しい位置関係でお互いをロックすることによってオージェ・バインダーが展開された姿勢をキープできます(ポリパーツの渋みのみによって保持されているわけではないことに注意!)。体幹をガッチリと接着して仕上げたおかげで、この状態でも撮影はなんら不安はありません。

 恐るべきボリュームでありながら、その本来の機能までをもしっかりと魅せるディスプレイができるよう配慮されたボークスのIMS オージェ・アルスキュル。ハンドパーツ以外はすべて完全新規金型で立体化された新時代のモーターヘッド立体物として、モデラーならばいちどは挑みたい内容であることは間違いありません。

 本アイテムはただいま好評予約受付中。少しでも気になった人は、以下リンクから確実にゲットしてください。みなさんも、ぜひ!

>ボークス IMS 1/100 オージェ・アルスキュル 商品サイト
ボークスホビー天国オンラインストア

■『ファイブスター物語』 オージェ・アルスキュル(通常版)
1/100 scale
4色成型インジェクションプラキット(ベージュ、ネイビー、パープル、シルバー)
全高252mm、全幅276mm、全長247mm、パーツ総数:367
原型制作:造形村F.S.S.プロジェクトチーム
価格 ¥9,680(税込)
10月30日~11月28日予約受付、12月25日お渡し予定 12月5日ホビーラウンド25先行発売
※完売となった場合、限定版と同スケジュールで第2次生産分の予約に切り替わります

※一部ランナーがシルバーメッキ仕様の「限定版」同時予約受付(ボークスGL/VS/VIP会員限定品)
価格 ¥12,110(税込)
※初回生産分は完売。第2次生産分を2022年1月10日まで予約受付、2022年2月19日お渡し予定

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

沢田研二と国立科学博物館/ハセガワ 1/24 マツダ サバンナ RX-7(SA22C)

 航空ジャンク市に行くのが趣味の友達がいて、ある日「お土産があるから上野に出てこい」と言われてモツ焼き屋で飲んだ。手渡されたのは何某かの航空機から引っこ抜いた高度計だったのだが、レロレロに酔っ払って駅に向かう途中でその土産を店のテーブルに置き忘れたことに気づき、踵を返して店の暖簾をくぐると店内は大騒ぎになっていた。

 置き忘れた高度計は知識のない人からすれば「得体の知れないメーターの付いた金属製の筒」であり、それを発見した店員は「爆弾を置いていった客がいる」と勘違いしたらしい。謝り倒してブツを取り戻し、ひやりと冷たい高度計を握りしめてまた雑踏の中を歩く。周りの人たちは誰も気づかないだろうけど、その瞬間だけ、自分は沢田研二の気持ちになっていた。

 上野といえば、国立科学博物館に「X605の原寸手書き図面」が展示されている。X605というのはRX-7(SA22C)の開発名称であり、CADのない時代には職人の手作りであるクレイモデルを工業製品として量産するために図面に置き換える作業が必要だったということを伝える資料だ。無数に重なった曲線は息を呑むほど美しく、その線から我々一般人が読み取れることなどほとんどないにも関わらず、そこで足がピタリと止まってしまってずっと動けずにいたことを思い出す。

 中学教師が自作の原子爆弾で日本政府を脅迫するというとんでもない映画、『太陽を盗んだ男』のクライマックスは、おそらくこの初代サバンナ RX-7のリトラクタブルライトがパカッと開いて首都高でのカーチェイスへと向かうシーンだろう。真正面から撮られたカットで見えるボディのアウトラインは科学博物館で見たそれだし、「爆弾のお兄さん」と逃避行を遂げようとする池上季実子の危うげなキュートさとこのクルマのヨレヨレした挙動がマッチするさまは筆舌に尽くしがたい。

 ハセガワのNEWアイテム、1/24のサバンナ RX-7(SA22C)は自分にとってこれらの記憶の断片がそのまま結晶になって箱詰めされたようなプラモだ。正直、自分はこのクルマそのもののスタイリングを文句なしにかっこいいと言える世代ではないのだが、これが日本の自動車史にとって特別なメカであることはすごくよく分かるし、だからこそ手に取って眺め回すことで新しい魅力に気付くこともあるはずだ。

 ボディーカラーは科学博物館の図面の前に置かれた模型と同じマッハグリーンなのが最高だ。部分塗装でもセブンらしさを味わうことができる。とはいえ、ジュリーが盗んで乗り回していたのはシルバーだったし、シャーシ裏面はいっそ真っ黒で塗りつぶしてしまうのもいいな、と思いながらハコを開ける。美しいシボ加工とツルッとした鋼板のコントラスト、ダッシュボードのいかにも’70sなディテールが現れて、これまた丁寧に塗り分けたい気もしてくる。

 特徴的なシートの模様を再現するデカールや、リアウインドウを塗り分けるためのカット済みのマスキングシートも用意されていて、ハセガワの質実剛健なカーモデルの作りにも少しずつ時代の潮流にマッチした空気感が出てきているのかもしれない。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

その銀色が深夜に光る。ハセガワ 1/35 ファイアボールSG

 金曜日の夜は早く寝ようと思うが、あまりうまく眠れないことが多い。でも「どうせ明日は休みだからプラモデル作っちゃおう」と大胆な動きをとることがある。俺のウィークエンドシャッフルはこれからスタート。いくぞ。

 ずっと本棚の上に積んであるプラモデルはどれも豪華キャスト。ずっと作ろうかどうか悩んでいたハセガワ製マシーネンクリーガーの「1/35 ファイアボールSG」を手に取る。あ、これは中にプラウラーという異なるタイプも入ってるので二個セット。箱を開けてみると、どのランナーも2セットずつ。つまりダブルファイアボールで組むのもダブルプラウラーで組むのもありというわけだが、今回はとりあえずファイアボールで行くことに。

 滅多に見られない銀色のプラスチックにテンションが上がる。マシーネンクリーガーのシリーズはガチャーネンを作ったことがあるけど、そのときも紫やオレンジなど楽しい色が嬉しかったのを覚えている。そのまま作ってくとスルスルと形になる。

 それに、アイデア満点なのは足。すり鉢状に凹んだ足首の上に部分に全体を乗せるように組み立てる設計になっているので、前傾姿勢はもちろん足の角度を微調整して演出することも可能。わずかな足の向きや腕の上げ方などが全体に大きな影響を及ぼすのは、タミヤのミリタリーミニチュアをはじめとする1/35の兵士たちが実証済み。今の気分に合わせて重心を整える。

 組み立て終えて思ったのだけど、銀色のプラスチックをニッパーで切り取ったゲート跡が溶接痕のような雰囲気を放っていて非常にかっこいい。作り始めの目が覚めていくような感じをピークに、終盤にかけて眠気が増していったせいもあって「あ、これは〇〇みたいに見えるな」という感性がブーストされている感じ。この叩くとカキーンと音がしそうな無塗装仕上げもかっこいいですね。今回は塗りますが、もう一体はこのままでいいな……。

 夜が明けて青くなっていく空に晴天を感じたあとは、目が覚めたら塗装ができるように下地がわりにプレミアムトップコートのつや消しを吹いて、そのまま寝ることに。「起きたら塗装ができるぞ」と思うとデートの前の日みたいに眠れなくなりそうだったけど、ちゃんと眠れました。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。1/48MMの新章開幕!! 「ニューアニキ」は伊達じゃない!!!!

▲タミヤ 1/48ミリタリーミニチュアシリーズの新章・開幕ゥゥゥゥッ!!!あれ? でもNo.102?

週末が楽しくなるプラモをフミテシの独断と偏見でご紹介する「花金プラモ」。今週はついにナースホルンでNo.100を迎えた「1/48 タミヤ ミリタリーミニチュアシリーズ」(以下1/48MM)の最新作「No.102 WWII ドイツ歩兵セット」です。No.100のナースホルンと同時期発売なのですが、No.101がいませんね!? こちらはいったい何が来るのか!? という期待も込めながら1/48MMで久しぶりに発売されたフィギュアセットを組んでいきましょう!!

▲令和に爆誕したドイツ歩兵のニュースタンダード。勇ましいアニキやリラックスしたアニキなどナイスなセレクトになっていますよ〜

3D造形を本格的に取り入れてからは初の「1/48MMフィギュアセット」となる本キット。最近の車両のキットにはすでにこの技術が取り入れられたフィギュアが入っており、「このクオリティのアニキセットが欲しいな〜」と流れ星にお祈りしていたら本当に爆誕したのでびっくり! しかも直球のドイツ歩兵です。服の皺や顔の造形などバキバキに進化したアニキたちにうっとりです。

タミヤの戦車模型「ミリタリーミニチュア」はアニキたちがいてこそのシリーズです。今回の完全新規キットはまさに新たな1/48MMの開幕を告げるファンファーレ。1/35スケールとはまた違った魅力がたくさんある1/48MMを始めるには絶好の機会と言えると思います。

▲装備品のランナーが2枚とフィギュア関係が2枚の計4枚。非常に充実した内容です

タミヤの3D造形フィギュアは、実際に軍装した状態でポーズを取ったモデルや装備品をスキャンしたデータを、原型師がプラモとしてさらに魅力あるものに造形した珠玉の逸品です。そんなすごいアニキたちがなんと10人も入ります! 後1人いればサッカーチームの完成で、チャンピオンズリーグが机上で開幕してしまいます。そのうちの7人は、1/35スケールでも立体化されたモデルをベースに、1/48MMの組みやすさなどを盛り込んだアニキになっています。座っているアニキたちが今回の1/48MMで初登場となったモデルです。

▲装備品も超シャープ!!! かなり多めに入っているので、アニキたちに装備させてもあまります。フィギュアセットでもあり装備品セットも兼ねたプレイバリューの高いプラモになっていますよ! やったぜ!!!
▲サイズはこの通り。4cmくらいのフィギュアにこの造形。最高すぎます

やはり注目は「お座りアニキ」でしょう。彼らのパーツ構成がこれまでのフィギュアキットにはない組み味!

▲「遠征、疲れるね〜〜。」「木、いいっすね!」「 尻ぬれないよ。」
▲パッと見ると、下半身が宇宙! どんな風に合わさるのかな? ワクワク
▲お座りアニキを作っているんだな〜と思うのがこのカバン。お尻と一緒に造形されていて、座った時に鞄がずれている様子を表現しています
▲地面と接する部分はまっ平! これで地面と密着だ
▲あぐらがバッチリ決まる秘密!! 右足のふくらはぎの裏あたりに穴があり、左足のくるぶしに軸があります。これがガシッと合わさることでガタつきなく綺麗にあぐらをかくことができます

お座りアニキたちの下半身の工夫が組んでて本当に楽しいです。断崖絶壁のような足の裏側や、複雑な皺同士がぴた〜〜〜って合わさる瞬間とか常にエキサイティングな場面に出くわします。

▲木の台! こういう汎用性のある台がついているの最高です。アニキを座らせるだけでなく、戦車に乗せるアクセサリーにも使えます。台は何個あっても困りません
▲地面だけでなく、車両の上でもくつろげる。車両の時を止めることができるザ・ワールド的な能力もありますね〜。すごいぜ!アニキ

1/35スケールのデータをベースに生まれているアニキたちも、そのまま出しているなんてことはしていません! 1/48スケールだからこその組みやすさを求めたパーツ分割や、精密さのコントロールが行なわれております。分割を変えるって言葉では簡単ですが、分割を変えたことでディテールのデータもそれに合わせて繋がりや方向を整理する必要があるので、「1/35のアニキの魅力を1/48でも体感してもらえるように」という原型師の思いを手で感じることができます。

▲1/48スケールの車両と並べたりした時にしっくり来るディテールの塩梅ってものを見せてくれるアニキたち。組み立ても慣れていればひとり5分、初めての人でも10分あれば組めます
▲これだけ大胆な分割でこの精密な造形。精度もバチピタよ

2003年の「1/48 Pkw.K1 キューベルワーゲン82型」からスタートした1/48MM。飛行機模型と戦車模型が繋がるスケールでもありますが、昨今はこの手のひらサイズだからこそ楽しめる戦車模型の世界の構築に力が注がれているような感じがします。今回のフィギュアセットはそれを象徴しているなと感じました。これだけ最高なアニキたちがいれば、ドイツ軍のコレクションがさらに楽しくなること間違いなし!!! タミヤ1/48MMのニュースタンダードの先導役の爆誕を祝って、今週はアニキたちでぜひ乾杯してください!!!

▲今後のnippperでもきっといろんな遊び方が提案されると思うので、そちらもお楽しみに!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

速習!イギリス人パイロット/飛行機プラモに人を乗せて飛んでみよう。

 ワシら、ちいせえのお……。なんせ1/72スケールじゃ。身長で2.5cmくらい。座った姿勢だからもう指先くらいのサイズでしかないのよ。とはいえこうやって見るとけっこう彫刻がしっかりしとるじゃろ。ちゃんとお化粧して飛行機に乗りたいっちゅうわけで、白い下地塗料をファーっと吹かれて、出撃を待っとるのよ。

 まず顔じゃ。レイクランドフレッシュシェイドっちゅう茶色のシャバシャバ塗料じゃ。これはもう、白の上から筆でサッと塗って、なんとなく染めるだけでええ。窪んだところに塗料が溜まるじゃろ。これで勝手に顔みたいに見えるんだから便利じゃわい。

 次はライフジャケットじゃ。シタデルカラーの黄色はこのアヴァーランドサンセットっちゅうのがいちばん発色する。ちょっと赤みがあるのがいいわな。なんかはみ出しまくってるように見えるけど、こんなもんあとからどうにでもなるから、だいたいでええ。

 イギリスのパイロットが着てる服、紺とか黒が多いみたいだけど、今回は紺の雰囲気で行こか。シタデルのインキュビダークネスっちゅう色があってな、これがちょうど良さそうだからなんとなく塗っといた。このときにライフジャケットの輪郭を整えるとええ。シタデルカラーは一回乾燥したら上から重ね塗りしても溶けて混ざらんし、隠蔽力が高いからビシッと塗り分けたように見える。ラクじゃな〜。

 こんどは革の手袋と飛行帽じゃ。顔にだけは塗らんでくれよ。拡大鏡と面相筆があればわりとなんとかなる。塗り分けラインにちょっとだけ下地の白が残っても気にしなさんな。境目は最後になじませるからのぉ。あとこんなにホイホイ塗って乾くんか?と思うかもしれんけど、ドライヤーかヒートガン片手に塗ってりゃ数秒でカピッと乾くからどんどん塗り重ねられるっちゅうわけよ。時短じゃ。

 次はシートベルトじゃ。ラカルスフレッシュちゅうのが生成りの布っぽくてオシャレかのう。金具を銀で塗るとちょっとわざとらしくなるし、小さい彫刻じゃからかえって汚い雰囲気になって悲しくなることも多いから、金具は塗らんでもええんじゃないかな。

 そんでもって黒いブーツじゃ。アバドンブラックでビシッと塗り分けといたらええ。キマっとるじゃろ。

 最後にな、全体にアグラックスアースシェイドっちゅう濃いめの茶色いシャバシャバ塗料を全体にドバーッと塗りつけて乾かすんじゃ。境目も馴染むし、全体の色調がアンバー系に統一されてなんかちょっとだけうまく見えるんじゃ。

 写真撮りながらワシら2体を筆塗りして、ここまで30分じゃ。晩飯のあとでもイギリス人はできるっちゅう話。

 「えー、そうは言っても塗り分け雑じゃない?」とか思っとるじゃろ!飛行機に乗せてみい、これしか見えないし、そんなにパイロットを凝視することもないっちゅうのがわかるじゃろ。たまに引いて眺めてな、「ああ、この大きさだったわ」って我に返るのを忘れたらあかん。しかもこの上から窓がくっついてもっと見えなくなるのが飛行機模型じゃ。でもパイロットが乗ってるのとそうじゃないのとでは大違いじゃろ。ちゅうこって、出撃じゃ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

名前で塗る色、見て塗る色。/艦船模型の甲板色が教えてくれる「プラモの塗料の不思議」

 最近Twitterを眺めていてちょっとおもしろかったのが、「カーキ」と「オリーブ」という色の話。どちらも色の名前であるはずだけど、その名前が指し示す色は人によって(属性やシーンや文脈によって)まちまち。カーキは黄土色から緑色までかなり幅が広く、男性ファッションにおける「オリーブ」と女性ファッションにおける「オリーブ」も画像検索をかけてみるとかなり違います。

 その要因はあえてここには書きませんが、つまるところ色の名前は色をひとつに決めるものではないし、逆に言えばある特定の色からひとつの名前を導き出すのもまた難しい。

 上の写真だと「バフ」とか「タン」なんてのがあります。プラモ作る人は瓶のキャップの色とその名前が強く結びついているからなんとなくイメージできるだけで、そもそもバフってどういう意味?タンってどういう意味?というのは案外考えたことがなかったりするのではないでしょうか……。

 なぜいきなりこんな話をし始めたのかと言うと、『艦船模型スペシャル』の最新号がめちゃくちゃおもしろかったから。特集タイトルは『艦船の塗装にまつわる雑学と表現方法』という書き方ですが、開いてみるとひたすら木材の写真がずらずら出てきます。

 艦船の甲板には木張りであることが多いわけですが、木と言ったって世界にはいろんな種類の木があるし、それぞれ色も違えば表面処理のしかたも違うし、まっさらな木材と雨風に晒した木材は異なる風合いになります。どっこい、プラモ用の塗料で「甲板を塗るための色とされているもの」は数種類しかありません。

 そこで本書では「そもそも木の色ってなんだっけ」というところから話をスタートさせ、いろいろな艦船に使われた材料が何だったのか……みたいなことを考察しています。もちろんプラモの説明書に書いてあるとおりに色を塗ってもいいわけですが、それが記号的に「木のような色」であればいいのか、実際に木材の色を眺めて導き出した色を塗るのかは大きな違いがあります(そこにはスケール感も加わってくるのでけっこう難しいのですが……)。

 木の色に限らず、プラモに色を塗るというのはとても楽しく奥深い遊びです。リノリウムって本当はどういう色?夕暮れのときに見えるフネは本当にグレーなのか?といったことに気が向くと、「じゃあ選び取るべき色はどれなんでしょうか……」という考え方にシフトしていくはずです。これは「本物の色に近ければ近いほどエライ」みたいな単純な話ではないし、模型の優劣を決めるものでもありません。そして、塗料の瓶に書いてある名前の真偽を問うものでもありません。何を見て、どう伝えたいから、何色を塗るのか。艦船模型だけでなく、あらゆる表現に通じる色のお話。ぜひとも手にとって、読んでください。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

「プラモの隣にいる歴史」が収録された、僕らの歴史教科書/地図と解説でよくわかる 第二次世界大戦戦況図解

歴史の教科書では数ページしかない「第二次世界大戦」は、人類史上最大の戦いであり、僕たちが生きている世界の今の形を作った大きな要素でもあります。そして今、パンデミックにより、戦争ではない何かで世界の形が変わろうとしています。世界が変わる・変わった出来事のあらましを読むことは、それがたとえ多くの人がネガティブな印象を持つ戦争のようなことであっても、大切なことなのではないかと思います。「でもどんな本を読めばいいんだろうう?」ってなると思います。そんな人にぴったりの1冊が翻訳本として発売されました。「地図と解説でよくわかる 第二次世界大戦戦況図解 WWII Illustrated Atlas」です。

▲250ページで読む人類史上最大の戦い

自分は「第二次世界大戦」に興味を持ったのはスケールモデルを好きになった20代中頃から。歴史学をやっていたから教科書レベルでは知っていたけど、どこで、どの国が、どんな兵器で、どんな目的で戦っていたのかを詳細にまではわかりませんでした。プラモを作ったり、戦記を読んだり、入門書みたいなものを読んだりして少しづつ理解していきました。そんなあの時の自分が本書を読んだらさぞ喜ぶことでしょう。この戦争の前後、地図入りで詳細に解説された各戦いの様子が淡々とまとめられています。ドラマ性も盛り込まれていないので、事実を淡々と吸収していく読書感覚……まさに歴史本読書の醍醐味。「俺は今歴史を脳内で見ているんだ」となる本です。

▲物事の全てにはじまりがあります。この導入を読まずして、戦争の姿の明瞭度は上がりません

ポーランド侵攻の前の世界。世界情勢は一体どんなものだったのか? グレートウォーと呼ばれる第一次世界大戦以降のヨーロッパ、そして極東で台頭し世界に存在感を示し出した日本、中国情勢……全てが点ではなく線となっていく様子が導入で読むことができます。すごく歴史の教科書に近いパートで、もしかしたら一番読みやすい章かもしれません。「学校で聞いたことあるな〜」ってフレーズに、より様々な要素が肉付けされます。そしてこの章の後から「プラモの隣にいる歴史」の世界が記述されます。

▲タミヤ ミリタリーミニチュアモデルの開幕です。緊張と興奮でページを捲る手が震えます。写真がすごくいい
▲とにかく地図がでかいし、カラーなのが最高。戦記物とか読んでいる時の「うお〜地図小さくてなんだかわからんぞい!」ってことはないです
▲第二次世界大戦のハイライトとなるいくつかの戦いもボリュームは多いけど、事実を淡々とまとめており、そのまとめ方もスマート

地図がでかい。そして改めてこの戦争は広い……よくもこんな広大な範囲で戦ったなと恐ろしくなります。先日車で200キロメートル、しかも舗装された道路を走っただけでも疲れたのに、敵に襲われる緊張を抱え凸凹道を進んでいたなんて信じられない……今の世界の価値観と当時の出来事や当時の認識のすり合わせがページを捲るたびに僕の中で繰り返されました。戦争を知るだけでなくそのような思考の回転が歴史を学ぶ楽しさだと思っています。

▲あまりにもクレイジーな戦争です。人間が生きていくのに過酷なジャングルや、陸に住む人間がそもそも海上で激しい戦いをやるんです。太平洋戦争は小さい頃からヨーロッパでの戦いとはなんか次元の違うところにあると個人的に思っていました

「太平洋戦争」の本というと、自分は日本人視点の本ばかり読んできたんだなと、はっとしました。冒頭の「日本の勢力拡大はミッドウェイ海戦によって阻止され、比較的短期間で終わったが、天皇陛下の軍隊が敗北を受け入れるまでには長い時間が必要だった……」。色々考えてしまうひと文です。

▲終章となる戦後のお話。冒頭と終章をまず読むという読み方もオススメ

地図だけでなく、当時の様子がわかる写真のセレクトも良いので目にも楽しい本書。プラモ作りの休憩に読むもよし、各戦いの記事を読んで新たなプラモを手に取るもよし。まさにプラモ製作の隣にいてくれる歴史の教科書です。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

「ガイアノーツのフィニッシュ師匠」に弟子入りだ!!3日で作る飛行機プラモ「タミヤ 1/48 フォッケウルフ Fw190 D-9」

▲最後の仕上げに超絶威力を発揮するガイアノーツのフィニッシュマスターはマストバイですよ!!! 通常タイプと極細タイプがラインナップされています

ガイアノーツの定番商品で、手元に置いておくともう手放せなくなるくらい便利なのが「フィニッシュマスター」です。俺があまりの使いやすさに敬意を表して「フィニッシュ師匠」と呼んでいます。これは綿ホコリが出ない、新しい発想の綿棒ということで、柔軟性と吸収性が高い白いプニプにした材質の物を軸に取り付けて使用するものです。

スミ入れの細部までの拭き取りや、汚しの表現、デカール貼りなど大活躍。先端部分は溶剤で洗うことで繰り返し使用することが可能です。飛行機模型では、デカール貼り、スミ入れの拭き取りに威力を発揮します。

▲ドイツ機のスピナーに見ることが渦巻き。こちらの密着やデカール位置調整時に、フィニッシュマスターを使用すれば、綿棒の毛も着きませんし、フィニッシュマスターの平な面によってデカールがくっつきにくいので作業しやすいです
▲あっという間に位置を調整できました。一部まだ浮いている部分はデカールを密着させるマークフィットを上から塗って、フィニッシュマスターで押し付けるようにして密着させました
▲平面はフィニッシュマスターの独壇場です。デカールを所定の位置に乗せて、中の水分を押し出すようにデカールを密着させます
▲こんな感じで密着できました。続きまして、モールドにエナメル塗料でスミイレしています。飛行機模型では「リベット」などの細かいディテールがありますね。綿棒だど毛羽だった部分が悪さをしてモールドに食い込み、余計に消しすぎてしまったりしてしまいます
▲フィニッシュマスターにエナメル溶剤を含ませて、スイ〜っとモールドをなぞります。翼端のリベット部分も拭いてみましょう
▲丁寧にスミイレを拭き取ることができました。リベットもひとつひとつにスミが残って、しっかりとメリハリが出ています。この調子で他の部分も拭き取っていきます
▲デカール貼りとスミイレが完了しました!!! 次回、最後の締めを助けてくれるタミヤのマテリアルでフィニッシュするぞ!

フィニッシュマスターは先端の白いものを、溶剤で洗って使用することができます。洗った後は中の溶剤がしっかりと乾いてから使用してくださいね。また勝負を決めるぞ! っていう作業の時はけちらず、先端を新品のものに変更しましょう。先端は12個入っているので、一度買うと結構長い期間使用することができます。自分も半年くらいでローテーションしています。ガンプラ、戦車模型、車模型とどんなジャンルでも強い味方になってくれるフィニッシュマスターを、ぜひともあなたのツールボックスにお迎えしてください!!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

プラモで出会った小さな丸い窓にはジャストフィットな円形マスキングシートが超オススメ!

 マスキングの話は無限にできる。なぜならマスクしなければいけないものが無限にあるから。オレです(ヨシおじさん)。さて、今日はルン級エクラノプランの胴体側面の窓……に限らずけっこういろんな局面で遭遇する丸窓の話だ。飛行艇とか宇宙船とかに多いね丸窓は。そしてだいたいガラスを裏側からはめ込んで胴体を接着することになるので「塗装してから窓をハメるのは無理なんかな〜」みたいなことを考えて手が止まりがち。しかしオレはもうオトナなので止めない。課金で解決していく。と言ってもたったの200円足らず。驚安であります。

 ハイキューパーツの円形マスキングシールは直径0.2mm刻みの円形に切られたマスキングシールがいっぱいセットされたもの。カットラインが無数に入っていますが見た目がただの真っ黄色なシートなので裏面を撮影したYO。これだけ刻んであればだいたいのサイズのものがマスキングできてしまう。ありがたい。自分でポンチを買い揃えたらすごい値段になってしまいますが、あらかじめ切ってあってこの価格なら安いもんです。

 ノギスで測って丸窓がだいたい直径2.6mmだということがわかりましたので、そのサイズのシールを鋭利なピンセットで剥がしてぺたり。わずか数秒でコトが済みます。嬉しすぎる……。

 ちなみに円形シールの周囲は正方形のカットラインも入っているので、なにかを丸く塗りたいときにも使えます。小さなバーニアを赤くしたいとか、そんな用途にもジャストフィットで一粒で二度美味しいというわけ。

 今回使用したのはSサイズ(φ1.0mm〜2.8mm)ですが、M/L/XL(最大φ7.6mmまで)も用意されていますので、丸いものを塗りたいな(あるいは塗り残したいな)と思った時はコイツのことを思い出してください。ノギスも持ってると何でもかんでもらくらくマスキングできちゃいますよ!みなさんも、ぜひ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

やればできる! 「手を動かした今日の経験」があなたの次のプラモライフの力になる!!

▲砲身の可動を取るか、改造してキャンバスカバーを作るか……迷いますね。あと上手くできるか不安ですね

戦車模型の砲身のキャンバスカバーを可動優先のためにオミットしているキットは多数あります。昨今では可動ではなく造形を優先しているキットの方がよく見かけるかもしれません。布がウネウネとしている様子は鉄の塊の中にナイスなアクセントが生まれてかっこいいんですよね。でもいざパテでやってみようと思うと……なかなか重い腰が上がりません。できるかな〜って。今作っているタミヤのM48 パットンも可動が優先されキャンパスカバーの一部が表現されていません。

▲砲身のキャンバスカバーはパッケージイラストのような感じなんですよ。かっこいいな〜〜

「やるのかい? やらないのかい? どっちなんだい!」、「やればできる!!!」……俺も、やればできる!!! アフターパーツがあるかもしれないけど、なんだか自分でやってみたい。エポキシパテで行ってみよう。失敗するかもしれないけど、なんかやってみたいと思ったらやってみる! それもプラモの楽しみであり自分に素敵な経験値がたくわるもんっすよね! 何度滑っても、最後は笑いをさらっていくアニキたちの力を借りていざ出陣!

▲手元にあったのがセメダインのエポキシパテ プラ用。これを使用します
▲棒の中に主剤と硬化剤がすでに入っているので、使いたい分だけカットしてネリネリすれば準備完了です
▲砲身をお好みの角度にして、その間にエポキシパテをモリモリ入れていきます

とりあえず、砲身を好きな角度にして、エポキシパテを突っ込みました。これで大丈夫なのかな……。そしてパテの形状を整えるものは「スパチュラ」というものを使います。自分はウォーハンマーの地面の土を盛るのに買ったシタデルのスパチュラセットがあったのでそれを使用します。

▲3本入っているのですが、真ん中の樹脂製のスパチュラしか使ったことはありません。両サイドのスパチュラなんてまるで歯医者さんじゃん

フック船長の腕見たいなスパチュラを選択。タミヤのパッケージイラストを見ながら、カバーの起伏をスパチュラで形作っていきます。ところが……。

▲むにょ〜〜ん。へにょ〜〜ん。全然思ったような形にならない!!! やっぱりやらなきゃよかった!!!

自分のセンスのなさと、パテでフィギュアとか作っている人たちの凄さ。俺はこんな形もうまくできないのか…。スパチュラがパテに食い込んだり、引っ付いたりして思ったような形になりません。うーん。そんな時こそHow to本とかを読んでみます。まだ諦めない!!! ヒントがあった!

▲エポキシパテの形状や表面を滑らかにするのにタミヤアクリル溶剤が効きまっせ!

エポキシパテに タミヤアクリル溶剤を筆で塗ると表面が柔らかく、形状出しや仕上げに良いと書いてある記事を見つけました。ものは試し! 表面にさ〜っと塗ると……すごい作業しやすい!!! スパチュラにパテがくっつかない。これならいける気がしてきた! やればできる!!!!

▲なんかそれっぽくなってきたんじゃない! めっちゃ楽しいんですけど。パテ工作
▲パテが硬化したら、デザインナイフやヤスリで形状を整えました! 粗いかもしれないけれど、自分で作ったパーツが砲身にある喜び!!! 乾杯待った無しです!

プラモの工作ってやっぱりエキサイティング!!!! 肉抜き穴を埋めたり、初めてパーツの延長ができた時のような感動を久しぶりに味わいました。途中で「なんで上手くいかないんだー!!」って心が折れそうになったけど、調べたり考えたりしてなんとか突破。精度はまだまだだと思うけど、多分次に同じ工作したらさらに上手くできると思います。こんな毎日が次のプラモに繋がる。やればできる。「どうなるのかな〜〜」「あれは使えますか?」の前に、手を動かしてみようぜ。プラモって本当に楽しいね!!! あばよ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

レギンレイヴのプラモが楽しい理由は、送り手も感じる新しいモチーフのフレッシュさにある。

 勝ちパターンというか、試合を有利にすすめるための「定石」というのは物事をうまく進めるときに有効なもの。得意な味付けに持ち込めばどんな素材も自分の好きな味で食べられる、みたいに言い換えてもいいかもしれませんが、バンダイスピリッツの場合はいちばんたくさん向き合ってピッチのどの角度からでもゴールを決められるのがガンプラなのかもしれません。

 もっと言えば、よく動いて色分けされた人型のロボットならばどんなモチーフでもだいたいガンプラに似た組み味とすることで「毎度お馴染みのプラモ」という雰囲気にできる(逆に言えば、エントリーグレードのガンダムみたいなのは「組み味」の方にメスを入れているからエキサイティングなんだと思います)。

 ところが、このレギンレイヴという多脚機甲兵器(作品中では「フェルドレス」と呼ばれているみたいです)は昆虫のように平べったい胴体から同じ形をした4本の脚と2本の武装アームがにょきにょきと生えたフォルムをしています。とても人型とは呼べないカタチだし、普通のロボットプラモとは全く違う文法のパーツがたくさん出てきて新鮮な感覚に襲われます。

 スケールも1/144とか1/100みたいな「とりあえずでかいロボットですよ」という数字ではなく、1/48というミリタリーの世界では飛行機や戦車でおなじみのものを採用。人間を彫刻してそれを乗っけることで大きさの感覚や戦場での緊迫感を演出することに成功しています。もちろん、塗るときにも「飛行機のそれ」や「戦車のそれ」を引用したスケール感や汚しの風合いなんかも盛り込むことができます。かつてバンダイは1/48機甲師団シリーズと銘打って戦車のプラモデルをたくさん売っていましたが、奇しくもアニメ作品でもって「機甲兵器」を同じスケールで模型にすることになったわけですから、そういうところもおもしろい。

 組んでいると、これまで見たこともないようなパーツが見たこともない角度で組み合わさって、あれよあれよと言う間に知らないメカができあがっていきます。もとのデザインが良いということもあるのでしょうが、艶めかしい曲線とぶっきらぼうな内部メカのディテールが表裏でせめぎあい、情報量もギュッと凝縮されていて「ちょっと多いかな」と思ったパーツの数も苦になりません。新しいことをしているときって、「次はどうなるんだろう?」という期待感が手をドライブしてくれます。

 脚の機構もあっぱれのひとこと。ポリパーツを使わずに、複雑なディテールを持つ関節が動いく上に先端からパイルドライバという鋭利な武器が飛び出してくるギミックまでをコンパクトにまとめています。組んでいる時はわからなかった仕組みも、完成すると「わお!」と驚く収まり具合になりますし、関節可動に合わせて連動するシリンダのギミックも手慣れたものではありますが、極力簡単に見応えのある動きを演出できるよう考え抜かれたものになっています。

 言ってみれば、勝手知ったるロボットモデルをいつもの定石で分解し、再構築するという方法ではないのがこのプラモの美点だと感じました。新しいシルエットに新しいギミック。さあ、これを「バンダイスピリッツのプラモデル」として誰もが確実に組めて動かして遊べるようにするにはどうしたらいいだろうか?というのをゼロベースで考えているのが伝わってきます。

 今回は組む手も止まらず、さらには「これが汚れていたらどんな雰囲気だろうか」というのも気になってしまい、一気呵成に汚し塗装まで楽しんでしまいました。『境界戦機』ともども、シルエットで見せるか、ギミックで楽しませるか、それをどう組みやすくするかというフレッシュな思考と努力の跡は、やはりいつだって新しいコンテンツとまっさらな状態から組み合うときに感じられる稀有なものです。「バンダイスピリッツの技術力!」というのをより具体的に味わうならば、店頭にいっぱい並んでいる新番組のプラモを組むことをオススメします。このプラモ、本当におもしろいですよ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

日本再発見。100式司偵がイチオシ飛行機プラモにノミネート

 友達に時計好きがいて、オリエントのM-FORCEダイバーがかっこいいという話をしていて、調べてみると確かにかっこいい。オリエントといえば国産時計3兄弟の末っ子で、上の2人、セイコーとシチズンに比べると少し毛色が違う印象があったけど、気づいたら独自路線を進みに進んでもはや2人の兄貴と同じ土俵に立つつもりなんてハナから無し、というところまで到達していてびっくりした。しかもベゼルを方位計に変えればフィールドウォッチに早変わりというバリエーション展開のさせ方、デザインの工夫にグッとくる。

 ついつい国内の時計も見逃してしまうな、なんて思っていたけど、よく考えたら私は国内の飛行機はまるっきり見ていないことに気づいた。二式水戦を一度だけ作ったけど、あれは日本の事情に合った独自の進化を遂げたということで、ちょっとオリエントっぽいんだよな……、と思うと零戦なんかもそうか?と日本固有のアイデアや設計の面白さに関心が向くようになってきた。そこで見つけたのが100式司偵だ。

 双発機は飛行機の中では好きだけど完成させたことがほとんどないジャンル。なんでだろうと考えると、大きさとか、形の好みとに漠然と拒否感があったと思う。唯一好きだなと思ってる双発機は細身ですらっとしたボディが美しいホワールウインド、それに近しい?いや、それよりも美しいピンっとした形に関心が行った。

 マイクロエースのキットはパーツ点数も少なくすぐに形になる。バリは多いので、そこはちょっと頑張らないとだけど。でも100式司偵のスマートさを指で触り目の中に収めるには十分なキット。二つのエンジンがプロペラをパワフルに回して飛び立つ飛行機というよりは形のスマートさで飛ぶ飛行機な気がする。非常に美しい。

 そういえばオリエントの販売員の人が「うちは海外の方が圧倒的に売れる」と話していたが、100式司偵はどうだろうか。海外から見た日本の飛行機観みたいなのも気になりますね。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

この柔軟性がクセになる! セメダイン エポキシパテ プラ用が「プラ用」な理由。

▲プラ用のエポキシパテってなんだ!? アニキたちも興味津々でパテをこね出したぞ!
▲青いパッケージが目印!!


セメダインは接着剤だけでなく、パテも充実しています。接着と同じように、目的や素材に合わせていろいろな種類が発売されています。模型でもおなじみエポキシパテですら、コンクリ用とか、水中用とか、リアルロボットアニメのバリエーションのような種類がいます。そのなかから今回紹介するのは青いカラーが印象的なパッケージ、こちらがセメダインエポキシパテ プラ用です。

パッケージを開けると、筒状のケースとビニール製の手袋1組みが入っています。エポキシパテは素手でさわると手がかぶれる場合があります。だから手袋が必要になるんですね。そしてこのビニール手袋はほぼ使い捨てになるので、ぜひ予備の使い捨て手袋も買っておくと便利です。

▲使用する分だけカットするのじゃ〜〜!


端の保護シートを外し、パテがくっついてもいいカッターで切りましょう。エポキシパテは原則粘土状の主剤と硬化剤のふたつを混ぜ合わせることで硬化しますが、このパテは2剤が内外で2層構造になっているので、切るだけで適切な比率に揃うという親切仕様です。

▲濃い青と白の2色のパテをよ〜く混ぜ合わせて使用します


最初は濃い青と白の2色がはっきりわかれているので、色が混ざり合って濃淡がなくなるまでこねます。手袋に水をつけておくと手袋にパテがつきづらくなります。

▲水よりもワセリンをつけると、手袋にパテがつかないぞ!

よりオススメなのはワセリンの類です。白色ワセリンを手袋につけてよくなじませて、薄くバリアをつくるとかなり快適にパテをこねることができます。オススメっす。

▲このように濃淡がなくなるまでしっかりと混ぜます

しっかり混ぜ合わせると、薄く水色がかった白色の状態になります。パテが硬化するまでの作業可能時間は30分ほどあるので、まずはしっかりと混ぜ合わせるようにしましょう。

▲硬化してくると〜〜……

固まるとこんな感じに、ワセリンを使うと表面がツヤっとしますが、おおむね他のパテと同じようにやや表面がサラッとした、乾いたような表情に変化します。ベタつきもなくなるぐらいまで完全に固まるには1日ほどを要しますが、数時間経てばいわゆる生乾きの状態になり、ある程度ナイフで切りやすい状態になります。

完全にカチカチになったら、あとはヤスリでもガリガリ削れます。削った表面がなめらかでキレイですね。密度が高いことを感じさせます。

▲ちょっと「への字」に練ったパテで、このパテの最大の特徴を見てみましょう〜


なんといってもこのプラ用の特徴は、柔軟性が高いことです。まずこのようなへの字に練ったものを見てください。

▲硬化後もこの柔軟性!!!

それがここまで! 曲がります。しかもまた元に戻ります。薄く作れば柔軟性高く、厚くすればしっかり硬く、という盛り方で特性の変わる素材になっています。

▲布のようなものを作るのにも適しています

混ぜ合わさった段階で結構薄くできるので、布のような柔らかいものの表現もできます。柔軟性も合わさってまさにスケール感のある布といった感じになりますね。

▲パーツなどに盛り付ける例を見ていきましょう

盛り付ける時は金属などパテがくっつきづらいものを使います。空気が入らないように、しっかり薄く広く盛っていきましょう。

▲生乾きのうちにある程度カタチを出します。ナイフでガンガン削っていきましょう。

ベタつきが完全になくなったらヤスリの出番です。ガンガン削って、表面をキレイにしていきましょう。絶妙なふくらみを表現するのが得意なのがパテです。こんな感じで足し盛りしてくださいね。

▲パーツ内部にオモリや磁石を固定するのにも良いですよ〜


オモリを抑えるときに使ってもよいですね。接着的な要素にもバッチリ力を発揮してくれるので、オモリをこっそり埋め込む力もあります。異素材なら磁石の固定なども考えられますね。

エポキシパテプラ用の柔軟性により、やわらかい布表現や、曲面にしっかりとした密着などを実現してくれます。さらに、少し厚めに盛ればしっかりと角を出すこともできます。プラモのような複雑な面構成を持ったものにより対応できるこの「プラ用エポキシパテ」を練ってどんどんカタチを作り出してください。

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

塗り分けが厳しいプラモの窓に出会ったら、マスキングは和紙でキメる!

 飛行機模型の窓、マスキングが楽にならんかな〜って思いますよね。最近はわりと色んなメーカー、スケール、機種に合わせてレーザーカット済のマスキングシートが売られていますけど、専用マスクシートが売られていない飛行機はどうすればいいか。作らない!という吉高由里子的解決策もありますが、作りたい場合は向き合わなければいけない。人生とはつねにその2択……すなわち銀行に行けるか行けないかなのだ。さて、迷える子羊となった私はMr.マスキングテープを買ったよという話である。安いからビビらなくても大丈夫です。

 今回は仮組みで「やっべえ怪物だこれは……」となってしまいそのままDJブースの上にドカーっとおいてあったルン級エクラノプランをどうしても塗りたいので塗ることにします。このまま放置していると家にカスピ海が生まれてしまいますからね。みなさんもエイヤでマスキングして前に進みましょう。

 Mr.マスキングテープのいいところは「薄い」「めっちゃ曲面に追従する」という2点です。これは極薄の和紙を使っているからで、貼ったあとでパーツ表面の彫刻がスケスケなのもよろしい。さて、これを乱雑に窓の上にベターッと貼ります。そして窓枠のキワを爪楊枝の先端でしごくべし。窓枠の彫刻がヌルヌルでどうにもしごけない模型もあるかもしれませんが、そういう場合は諦めて筆で塗るなり見なかったことにするなりといった自由があることも知られています。

 ここで超重要テク。テクと言うほどでもない。デザインナイフの刃を新鮮なものにチェンジします。これは切れたつもりで切れてないとか、何度もなぞってパーツに傷をつけるとかの悲劇を防ぐためです。模型をラクにうまく作りたいなら常に新鮮な替刃で臨む。これはお兄さんとの約束だ!

 さて、先程爪楊枝でしごいた窓枠のキワをデザインナイフの先端でカキーっとなぞっていきます。直線部分は意外と難なく切れるはず。角のアールのところは直角でも気にしないor根性でグイッとナイフをコーナリングさせて切ります。エラそうに言ってますが、このダイレクトカット法でいままで成功した試しはなく、今回なぜやる気になったかと言うと「Mr.マスキングテープでやれば失敗しないよ」というパイセンの教えがあったからです。

 手を動かすことたった5分くらいで、あらできた。決めては薄いマスキングテープと替刃を新鮮なものにすることだけ!みなさんも「飛行機の窓をうまく塗り分けるコツ」みたいなので検索してここにたどり着いたらぜひとも真似してください。案外、できます。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

メッキ輝くスティングレイに釣られて。/アメリカンカープラモ amt 132 ’63 STINGRAY

 新しい街に引っ越してきた時のような、知らなかった銘柄のお酒がとてもおいしかった時のような、そんな高揚感をプラモデルに感じることがあります。私にとって、アメリカの模型メーカー『amt』のプラモデル、1/32 ’63 STINGRAYがそうでした。

 ”SCALE STARS”と謳った、1/32スケールのこのシリーズ。初めて手に取りましたが、パーツ数がかなり抑えられていて、シンプルな構成でとても組み立て易かったのです。その代わり、サイドミラーやバックミラーなどが大胆に省略されています。ところが、様々な部分が省略されているからといって、模型としてダルな雰囲気は一切無く、むしろキリっとした印象です。美味しい部分だけを掬い上げた、とても巧妙な割り切り方に思えます。

▲初めて「スティングレイ」の名を冠した63年式の2代目シボレー・コルベット(C2)。なだらかで扁平なフォルムは、角度によって様々な表情を見せてくれます。

 ドアハンドルやエンブレム、ワイパーまで一体成型になっていますが、ちゃんとエッジが立っていて存在感があります。比較的小さい1/32スケールでの組み立てやすさと見栄えのバランスを考えると、これが最適解のようにさえ思います。

▲特にシャシー裏の彫刻は見事。エキゾーストパイプの力強いライン、バンドで止めた配線まで繊細に造形してあって、素晴らしいです。
▲そして嬉しくなるのがメッキパーツの煌びやかさ。

 これも手のうちで角度を変えると、キラッとした光に目を奪われます。魚釣りで、ルアーの反射光に反応してしまう魚と一緒ですね。スティングレイに釣られる人間なのです。

 組立てに関しては、バリ取りなども含めて、デザインナイフによる調整が必須です。ほとんどのパーツがハメ込み式なのですが、メッキパーツの方が若干大きくてそのままではハマりません。しかし、受けの白いプラスチック側をデザインナイフで削ってやると面白いようにハマります。中にはテールライトとマフラーが一体のパーツになっていたりと、かなり面白いパーツ構成の部分もあり、組み立ての楽しさも味わえます。

▲塗装するパーツもこれだけ!

 ボディーにはタミヤスプレーのダークブルー、内装とタイヤにクレオスのフィニッシングサーフェイサー1500を吹きました。あとは細かな部分をタミヤのペイントマーカー、マッキーを使って仕上げます。しかし、マーカーで塗るには難しい小ささなので、芯先を削ったり、場所によってはインクを出して筆塗りをします。

 最後に、塗装したパーツ群にメッキパーツをはめ込んでいって完成です。

▲amtの外箱はデザインがおしゃれ。箱絵の上に乗せて撮影すると、とても楽しいです。

 ホイールのメッキも、光り方によっては走っている様にさえ見えます。車内をのぞき込むと、かなり大きめに造形されたメッキのハンドルが抜群の存在感を放っています。大幅にデフォルメされているわけではないのですが、写実的というよりも、そのカッコよくて印象的なイメージそのものを具現化したようなプラモデルなのでした。

 輝くメッキのフロント・リアバンパーを目線に持ってきて、手でクルクル回してみて、その造形をプラモデルならではの角度で味わうのがオススメです。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

戦車プラモの一番簡単な改造「アニキチェンジ」であなたの戦車が一気にカッコよくなる!!!

▲パイセン!これからは俺たちに任せてくれよな!!

タミヤの1/35 ミリタリーミニチュアシリーズは50年以上の歴史があるので、お気に入りの車両が結構昔のキットなんてことがよくあります。特にパーツの中で時代を感じるのは「フィギュア」です。そんなアニキたちの世代交代をしてみると、一気にプラモ全体がかっこよくなりますよ!!! 膨大なラインナップを誇るタミヤミリタリーミニチュアシリーズだからこそできるアップデートをぜひ楽しんでみましょう!!

▲俺ももう40歳。そろそろヤングメンたちにこの席を譲りたいもんです。膝に水も溜まって痛いのよ
▲ん? あれは俺たちと一緒に戦っているシェリダン!(こちらはホビーショーで買ったイベント販売商品のためパッケージと成型色が異なります)
▲パイセン! パットンは俺たちに任せてくれよ!!
▲ガシーン!! 衣服の皺やポーズが決まるトリッキーな分割も俺たちの特徴だぜ!
▲びふぉ〜〜〜〜
▲あふた〜〜〜!!!! バチピタで決まるんだぜ!!! アニキの完成度の高さで自然とそこに目が行くので、全体もよく見えてきます
▲シェリダンのドライバーもパットンにぴったりなんだ!!!

タミヤの原型師はすごい! シェリダンのアニキもきちんとパットンに合うように作られています。「良いフィギュアが乗るだけで戦車模型は何倍もかっこよくなる」と多くの戦車模型を楽しむアニキたちから教えられてきましたが、実際にやってみて改めて実感しました。シェリダンとパットンだけでなく、MMシリーズ全体でこの遊びはできると思います。作っている車両のアニキがお気に召さなかったら、他のキットの中にあなた好みのアニキが潜んでいるかもしれません。戦車模型をマッハでカッコよくできて、誰でも簡単にできる改造「アニキチェンジ」でさらに戦車模型を楽しんでください!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

好きな色を引っ張り出して、気楽に作る日曜のゴリラ。

 ハセガワから発売されている1/12の自動販売機。たぶん「スケールの近い可動フィギュアと遊んでね」というメッセージがそこに込められているのだけど、せっかくなのでプラモでも1/12スケールでいっぱいラインナップされているオートバイを組みたい。なるべくパーツ数が少なくて、スパッと形になりそうな日常使いのバイク。

 値段もこなれていて、パッケージも小さいゴリラなら「ちょっと散歩がてら温かいソバをすすりに来た」という情景にも似合う。難しいことはいっさいなしで、とにかく完成させることが日曜日に残された時間のイカした使い方だ。

 箱を開けると黒、クロームメッキ、白のパーツが入っていた。白いパーツだけ塗れば、立派に3色に色分けされたプラモデルだ。……っていうか、ハコに描かれたゴリラがほしければ塗らないのが正解の色である。やはりバイクモデルってガンプラに近いものがある。まあ組むのはちょっとだけ骨が折れるんだけど。

 バキッと発色するNAZCAのフレイムレッドは「塗っていることそのものが楽しい塗料」だ。白下地ならそのままエアブラシでブーッと吹いているだけでみるみる朱色に染まっていく。塗らなきゃいけないパーツもこれしかないとなれば、「ああ、オレは今日もプラモを塗装して作っているぞ!」という気持ちが簡単に手に入る。

 もちろん缶スプレーでもマーカーでもなんでもいい。色を塗るためのものなら何でも使っていい。この白いパーツを自分の色に染めれば、それだけでプラモは世界にひとつだけのあなたの宝ものになる。塗り終わったら上からプレミアムトップコートの「光沢」を表面がポッテリするまで吹き付けて、そのままランチを食べたりTVを観たりして過ごす。

 忘れた頃にツルツルの光沢仕上げになったパーツを眺めて、ちゃんと表面が乾いたことを確認してからフレームやらエンジンやらを組み立てていく。メッキパーツを接着するのに接着剤を選ぶとか、接着面だけメッキを削り落とすなんてのも、このパーツ数ならたいしたことじゃない。適所に適材を選べぶだけで、巧拙の問題じゃない。

 チェーンがシルバーじゃないことだけがちょっと気になったので、マッキーペイントマーカーの銀でツーっと塗っておく。あとからベタベタ触るものじゃないので、塗膜の強さなんて気にしない。メッキパーツにも劣らない輝きが嬉しいでしょ。

 細いパーツや小さいパーツはちょっと古い設計で位置合わせが難しいところもある。でも速乾の接着剤がやたらめったらある時代なので、ちょっと力を入れてピタッと押さえておけばどこも10秒でかっちり固定される。かくしてゴリラがちょこんと完成して、「日曜に模型を作ったな」という手応えはしっかり残った。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

旬のプラモをいただく秋の夜長/バンダイスピリッツHG1/72ビッグトニー

 新しいロボットアニメタイトルが始まる!しかも放送が始まって間もなくプラモデルが出る!なおかつデザインが重機っぽくて自分好み!というわけで予約していたアニメ「サクガン」の主役ロボット「ビックトニー」を受け取り。予想以上に大きな箱にビックリさせられます。

 ギラつくライトにシンプルなカウル、彫りの深いキャタピラ脚にビビットな黄色とメカ色が交互に合わさる手先のメリハリ。重機としてのライトブルーに警戒シマシマ、設定を読まなくてもなんとなく想像がつく装備「アンカーワイヤー」はリード線で射出再現…と刺さる人には刺さりすぎるデザイン。


 このキット、シールのテクスチャーが豊富。立体的なジュエルシールと通常カラーに加えて金銀2色のメタリック印刷を奢った薄いテトロンシール。

 ヘッドライトにジュエルシールを貼るだけでいきなり質感表現がランクアップする!


 色再現のためのシールは複雑な形状に面白いほどピタリと決まる。「シールの合いがいい」っていうんだろうなこういうの。

 大面積に貼りこむ腕部のシマシマ。適度に伸びてこれ以上ないくらいピタリと貼れる。入り込んだ気泡もデカールと同じように外に押しだして密着させられる。特にこの腕部は面の端から端までシールで覆ってしまうので段差も見えず貼ってしまうとシールだと分からないくらい。

 このシール、ソリッドカラー印刷部分のカットラインが太い。台紙に残す不要部分との間に完全に隙間が開いている(!)。

 周りのシートから完全に独立しているので写真みたいな折れカーブの箇所で引っかかって割けてしまう事故が起きづらくなっている。おかげでつまんで端まで剥がすのにドキドキしなくて済む。

 この白い帯は脚のカバー上の「塗り分け」を再現したライン。シワもなく本当にマスキングして塗り分けたみたいにキレイになじむ。

 シールによるツヤピカとソリッドな塗り分けの後に現れる第3の質感「布リュック」!この巨大なロボがリュックを背負う「そういう世界観」なのだよ!と声高に主張してくる。

 これも見どころ、斜め配置のボックス状部品。ランナーに斜めに配置して直交する2面にモールドを彫っている。

 これらが組み合わさった姿の拝める背面。リュックの横にロケットがついてて、脚はキャタピラだし、重機らしいシマシマもついてる!好きなもの大体盛られているお子様ランチ状態。

 怪獣と戦うとき(※このロボットは怪獣と戦う)に降ろすアイシャッター。丸目がシャキっと精悍な表情になって0系新幹線が300系新幹線に変身するみたいな感じが面白い。

▲脚を降ろして腕を畳んだ走行形態に変形する。

 今は配信サービスのおかげでスマホやタブレットを通して作業机の上でアニメ本編を視聴できる。その恩恵を存分に浴びて今回のビックトニーもアニメ本編を視聴しながら組んでみた。このロボットがどんな存在であるか、なぜ「ビッグ」トニーなのか?とかが分かってくる。漠然と新しいデザインのロボットプラモだと思って組むよりも味わいが増してくる。

 本編を見ると当然にように搭乗するガガンバー/メメンプー親子も横に並べたくなってくる……。このキットにガガンバー/メメンプーは入ってません…ので箱の側面から切り抜きました。

▲と、いうわけで主役メカと主役キャラクターの並ぶ絵面に到達しました。ありがとうございます。

 秋の新アニメと秋の新プラモ。旬のアニメを観ながら旬のプラモをいただく秋の夜長。今年は他にもいっぱいありますね。

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。


格安の0.2mmハンドピースは塗装ツールのジョーカー!3日で作る飛行機プラモ「タミヤ 1/48 フォッケウルフ Fw190 D-9」

▲胴体や垂直尾翼になる細かい斑点「モットリング迷彩」! なんでこんな迷彩してくれたんや!!!

メインでは0.3mm口径のハンドピースを使用しています。ほとんどの模型はこれ1本でいけるのですが、ドイツ機のモットリング迷彩に直面した時「まじで……」てなりました。「もっと細い口径のハンドピースがあれば! でも0.2mmって高いよね……」と思いながらamazonを検索。するとお安い0.2mmハンドピースがわんさか出てきました。「ピンポイントで使用するもんだし、サブ機として試しに買ってみるか」という気持ちになり、激安0.2mmのハンドピースを物色……ここのハンドピースの説明がすんごくうるさい感じでビンビンきたので購入!(今は品切れみたいです) 次の日には届きました。そして……。

▲値札シールに「0.2」って手書きで書いてある!!! 絶対やばいの買っちまったよ感が半端ない箱で届きました。メダルとかちょっと良いペンが入っている感じの箱です
▲開けたら鮮やかなブルーハワイ! スポイト入ってんのかい! 見た目は良さげですよ。ダブルアクションです
▲後ろにはニードルアジャスターのダイヤルがあり、これで塗料が出る量を一定にすることができます。が、そこまで精度は高くなかったので、俺は全開のまま使っています
▲キャップの中も、ノズルやニードルもまぁ普通です。ここからが本番ですよ!
▲GO!!!! 全然行けます。小さなミストが飛んでいますが、これは塗料が濃かったため。迷彩塗装の2周目でリタッチすれば問題なしです

普通に問題なく吹き付けることができます。ただし、手に取った感じのチープ感はやっぱりありますので、それだけでもメイン機にはしたくないと思ってしまいます。今回のモットリング迷彩のような限られた使用で力を発揮するようなジョーカー的ツールとして揃えておくととても役に立つと思います。細部を塗る時の時短効果も抜群です。価格も安いので、壊れたりしたらお別れという覚悟で使っていきましょう。俺のはまだまだ力になってくれそうです。

▲塗装したらプレミアムトップコートの光沢でしっかりと塗膜を保護しようね

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

カラーリングとカタチの妙で買うプラモ/レギンレイヴ(クレナ/アンジュ搭乗機)

 アニメメカのデザインに一目惚れしたのはひさびさ。メガネを新調しに行ったついでに買ったプラモはTVアニメ『86―エイティシックス―』に登場するレギンレイヴ……のなかでも、ひときわ目を惹くミサイルポッド装備のアンジュ・エマ搭乗機だ。クレナすまん(選択して組み立てられるが、こっちはめちゃくちゃ巨大な大砲が付いていて既存アイテムとそこまで設計思想が違わないのだ)。

 四脚のマシンにめちゃくちゃ反動の大きそうな大砲を詰むのはどうなんだ、みたいなSF思考も脳内に渦巻くエイティシックスのメカだが、ボディそのものを隠してしまうほど巨大なミサイルポッドを装備しているスペシャルな機体となると話は別だ。セクシーな曲率の白い箱に黒と赤のアクセント。ツルッとした外装とメカニカルな臓物のコントラストも本当にイカす。『シドニアの騎士』がすきならこのカラーリングも大好物でしょう。

 意気揚々と帰宅して「さて、ミサイルポッドの色分けをいつものバンダイスピリッツ流パーツ分割で楽しませていただきましょうか」と舌なめずりしていたのだが……。

 シールの面積がめちゃくちゃすごい。赤いプラスチックで色分けされているのはミサイルポッドの先端部だけで、機体そのもののアクセントとなる色はほとんどシールに頼る仕様だ。正直バンダイスピリッツのプラモに付いてくるシールというのはカットラインの精度と色味合わせの技量にいつも驚かされるから、これもシールで仕上げればちゃんと「見られる完成品」が手に入るだろう。

 とはいえ、説明書を読むと「塗装する人はこのパーツを使ってね」みたいな部分もあって、1/48というスケールやメカデザインが引用している実在兵器のテイストなんかがオールドスクールなプラモユーザー……つまり、「塗装派」と括られる人たちにこそマッチするだろうという思惑(と、それをわかった上での目配せ)がされている。

 そこにまんまと乗っかった自分にちょっと苦笑してしまうが、組んでいるうちに「これはおかわりもアリだな」と思える素晴らしいパーツ構成に惚れ込んでしまい、次に組むならどこをシールにしようかな、塗ったほうが楽そうなところ(あるいは自分の機嫌が良くなりそうなところ)はどこかな……なんて考え始めることになった。

 左の赤い部分はシタデルカラーの筆塗り。ちょいちょいやって10分。右の赤い部分は付属のシールを貼ったもの。発色は当然シールに軍配が上がるけど、パーツの繊細なディテールに追従しないのでややもっさりした仕上がりになるのが悩ましい。とはいえ、自分が手を下すことで一目惚れしたカラーリングデザインが「完成」するというのはなかなか嬉しいことだ。色分けが完璧に近い最近のキャラクターモデルとはひと味違うハードボイルドな香りがどこかにあって、私はこのプラモをすごく気に入っている。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

水性塗料で爆誕したガンプラオフィシャル塗料「水性ガンダムカラー」で筆塗りを楽しんでみよう!!

▲遂に水性ホビーカラーでも登場となった「ガンダムカラー」。MSの色を瓶生でいい感じに塗ることができるぞ!!

水性ホビーカラーがリニューアルされ、超パワーアップしてからガンガン愛用しているフミテシです。

この塗料にラッカー塗料でもお馴染みの「ガンダムカラー」が遂にラインナップされましたね! 個人的に超嬉しい。混色も楽しいけど、いい感じの色が瓶に収まっていてくれればサクサク塗れるし、調色のブレで色味が変わるなんてこともありません。「RX-78-2 ガンダムホワイト」とかもう機体名入りの強気な色名も痺れます!! かっこいいぜ。そんな水性ガンダムカラー、匂いもほぼないのでリビングでも塗装が楽しめます。リビングでの塗装といえば「筆塗り」でしょう。ガンプラは成型色がしっかりしているから部分塗装で十分カッコよくなります。そんな塗装にこの水性ホビーカラーは適しているのでしょうか? 早速塗ってみるよ! RX-78-2用って書いてあるけど、ガンダム系には広く対応してそうなので、ストライクフリーダムガンダム塗ります。

▲筆塗りをするよ! 筆は以下のリンクのようなものがおすすめ。良い筆はあなたを助けてくれます!

筆塗りをする前に、透明サーフェイサーとも言える活躍をしてくれる「水性プレミアムトップコート つや消し」を吹きましょう。これを吹き付けておくだけで、塗料が弾かれたりせずにしっかりと食い付いてくれます。成型色のツヤもマットになってくれて、まるでカラー塗料で塗装したみたいになります。

▲水性プレミアムトップコートは、水性ホビーカラーの女房役。石破ラブラブ天驚拳クラスなので、ぜひ一緒に揃えて欲しいです
▲よ〜〜〜く缶を振って中の塗料を攪拌したら、ランナーに一気に吹き付けます。これで塗装準備OKです

水性ホビーカラーと聞くと「お水で薄められるんでしょ」と思うじゃないですか。こちらは溶剤系の水性塗料なので「水にもある程度溶ける」というもの。塗料が乾いていない筆などを水で洗えますというレベルです。水性ホビーカラーには専用のうすめ液が用意されていますので、これを使うことで性能をフルに発揮できます。

▲塗料の希釈や筆を洗うときに「水性ホビーカラーうすめ液」があるととても便利!!!
▲塗料メーカーさんの誰もが口を揃えていうことが「塗料は本当によく混ぜてください!!!」って言葉。何回混ぜたかわからなくなるくらい、攪拌棒で塗料をぐるぐる〜〜〜
▲塗料を梅皿などに使用する分だけ移します。水性ホビーカラーは瓶生の状態で筆塗りに適している濃度になっていますので、そのまま筆につけて塗れるのですが、塗料を筆につける前に、水性ホビーカラーうすめ液をチョンと筆に吸わせるのがポイントです

筆塗りするときに、カラカラの筆にそのまま塗料をつけてないでしょうか? そうしてしまうと、筆からしっかりと塗料が出ていかず、綺麗に塗れません。塗料にあった専用の溶剤を筆に染み込ませることで、この溶剤が塗料を筆から押し出す役割をします。筆を溶剤につけてビシャビシャのまま筆を塗料にもっていくのではなく、筆先を軽くペーパータオルなどにチョンと押し付けて溶剤の量を調整してから塗料を筆につけましょう。

▲溶剤を筆に含ませてから、塗料を筆につけるよ
▲筆を洗う時も水性ホビーカラー専用うすめ液でOK
▲いきなりパーツに塗るのではなく、ランナーとかランナータグに塗って塗料の感触をチェック。イメトレです
▲GO!!! ストライクフリーダムのドラグーンを塗り分けます。ちまちま塗るのではなく、塗り絵みたいに縁取ってから中を塗りつぶします。直線を迷わず一気に塗り切ります。塗料の伸びが良くてビシ〜っと塗れました。めっちゃ塗りやすい
▲ミッドナイトブルーみたいな暗い成型色に青が発色するのかとドキドキでしたが、1回塗りでこれだけ染まります。これはもう1回塗れば、きちんと塗り分けできそうです
▲やった!!! 完全乾燥後にもう一度塗ったらこれだけしっかり青になりました。塗料は半光沢なのでツヤ感がでてきますね〜

お次は「赤」にトライ!!!! この成型色の上にそのまま赤塗ってもいけるのでしょうか?

▲青と同じように、1回目は下地が透ける感じになります。この状態で完全乾燥させます
▲2回目でしっかり赤に!!! 青同様、1回塗りでは完全に発色しませんが2度塗りでしっかり発色するということを頭に入れて塗ると、いい感じに筆塗りがうまく行きそうです。1回目は全体が染まるくらいの濃さで、2回目で勝負を決めるという風に塗ってみました
▲水性ホビーカラーのゴールドをディテールに塗って、塗り分け完了! 次はスミ入れをしてみます。スミ入れで塗料が剥がれたりしないでしょうか?
▲同社のウェザリングカラーでスミ入れ。全く問題なく流れ、塗っただけでは塗膜にダメージもなさそうです
▲ウェザリングカラーうすめ液を含ませた綿棒で拭き取り。問題なしであります!

ガンダムといえば「白」!! 瓶の蓋を見る限り、少しグレー寄りの白で「RX-78-2」以外にも様々なガンダムに似合いそうなニュートラルな白です。

▲白の筆塗りってちょっと苦手。下地の色の隠蔽が難しいからです
▲一回塗り! びびってちょっと厚めに塗ってしまいました。塗料を多めにしてしまうとエッジ部分などから垂れて流れたりして、透けやムラが目立ってしまいます。こういう時はいじらずにぐっと我慢。完全乾燥してから重ね塗りしましょう
▲しっかりと塗料の量をコントロールして、2回目!
▲2回塗りでこのような感じです。少しまだ透けてます。青や赤よりもコントロールは難しかったです。この後にもう一度薄めの白を塗ればいい感じになりそうですね
▲はみ出したら、デザインナイフの先でコリコリやって削っちゃいましょう。青に塗ったつや消しも削れる箇所が出るかと思いますが、全部塗り終わってから再度スプレーすれば問題なしです

ラスボスは「黄色」!!! 黄色はとてもコントロールが難しい色。下地を隠蔽してくれなくてグチャグチャになってしまった!!! という経験をお持ちの人も多いと思います。筆塗りでガンダムイエロー……緊張してきました。

▲塗料の中でも鬼門のひとつ「黄色」。行ってみよう!!! 発色しやすそうな「白パーツ」の黄色部分を塗ってみます
▲まさかの一撃!!! 白いパーツにすごく綺麗に発色したので思わず「え?」って声が出ちゃいました。塗料の伸びもすごくよくて、すい〜って筆が進みます
▲一度塗りでこれだけ発色しました。このままでも良いのでは……

白の成型色以外にはどうでしょうか?

▲厳しかったです!!!

黄色を暗めの成型色の上に塗る時は、正攻法の「明るい下地色をまず塗る」が良いですね。ビン入りの水性ホワイトサーフェイサーなどがおすすめです。それを塗った上からイエローを塗れば問題なく発色するでしょう。

水性ホビーカラーの膨大なラインナップから選んでガンプラを塗ることはもちろん可能です。でもこのようにガンダムカラーとして専用のラインナップになっていると選択もしやすいし、使用する時も安心感があります。オフィシャルカラーの商品ならではの力です。ぜひ新たな水性ガンダムカラーでの塗装をお楽しみください!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

購入前にパーツが見える期待感/チョイプラ モータースーツ・アモデウス

▲透明パッケージ。キットの中身が丸見えなのはメーカーの自信の表れと見た。

 なんかいい感じのプラモを作りたいなぁ…。とプラモ屋をウロウロするも、最近のプラモデルの箱って大体シールで封印されているので、開けて見られず中身がわからない。完成見本がパッケに写っていればまだしも、イメージイラストだけだと果たして……と不安になる。

 実際、開けてみたところで”モールドが甘いじゃん”とか”このパーツ割りはイケてない”などと専門的なことがワイに判るわけではないのだが、購入前にランナーをみると、「お!こんな感じかー。こう組み立てこんな感じに……」といろいろ想像してグッと購買意欲が高まり、レジへGO!その高揚感が家に帰るまで持続する……というあのワクワク感はすでに過去のものになってしまった。

 と思ってたら、おっ!となる商品を見つける。

 まずはパッケージのメカ絵に目が行く。ナイスデザイン!そして見えるぞ……私にもランナーが見える!!なるほどこんな感じねオッケイ!GO!

▲ジャケを展開すると、ペライチのシンプルな説明書が登場。ふむふむ。
▲このパーツ構成、組立感……『ガンダムチョコスナック』のオマケに近いかも。なつい。

 さっそく開封し組み立てみる。小さなランナーが4枚とそこまでパーツが多いわけでもなく、構成もそこまで複雑ではない。パチパチと組んで20分ほどで完成。

▲大きさは全高7cm程、可動は上腕と太ももが多少動くかな?程度でほぼ固定。
▲肉抜きも多少あるが、ディテールとエッジがバッキバキに効いていているので、小さいながら精密感あふれる出来!

▲素組でもその精密感がなかなか映えて、いい感じ。

 どんなキットか判らないけど買っちゃえGO!みたいな、開けてみるまで判らないドキドキプラモ体験も悪くは無いんだけど、期待したものが期待したとおりに出来上がる安心感ってやっぱりいいよね。

 さてこのアモデウス、「期待したものが期待した通りに組み上がった」と締められたら文章的にはバッチグーだったんですが、完成させてみたら思った以上の精密感とケレン味あふれるシルエットで期待以上の完成度でした。花まるグーです!

コピルアク

1981年生まれのプラモエンジョイ勢。本業はゲームとかつくる人。

超推薦の一本!/スポンジチッピングにバチピタの塗料でプラモをリアルに魅せる

 塗装はキマったけど汚しの表現がなんだかしっくりこなかったバンイップ・ブーメランを練習台に苦節10秒。いきなり「スポンジチッピングの万能調味料、これで決まっちゃったのでは?」と思ったので皆さんにもシェアしてしまう。チッピングというのは装甲の塗装がハゲた状態を表現するものだが、なかでも細かな模様をランダムに描ける素材としてスポンジを使った方法を「スポンジチッピング」と呼ぶ。詳細は以下!

 「スポンジを使うのはわかった!じゃあ塗料は何を使えばええの?」というのはワタシも悶々としており、黒でもなんか違うし茶色すぎてもなんか違う。焦げ茶色の錆を感じさせるイカした色が重要。あとシャバシャバなのかドロドロなのかも悩ましい。シャバシャバすぎるとスポンジに浸透しまくり、模型表面に押し付けると出汁を吸ったガンモドキよろしくジュワ~っと塗料が染み出してしまうため、スポンジ特有のジラジラした模様が転写されない。ドロドロだとスポンジ側に塗料が食いついてなかなか模型に飛び移ってくれない。丁度いい粘度も超重要。

 かくしてワタシはエナメル系塗料の黒と茶を混ぜて溶剤を揮発させたり、ラッカー系だアクリル系だといろいろ試してきたのだが、しっくり来ることがあんまりなかったし、その都度混ぜて使うから色も再現性がない。もっとこう、バーンと使える最高の焦げ茶色はないのか。

▲出会った。

 もうなにも言うことはない。ファレホの「#150 ジャーマンカムフラージュ ブラックブラウン」を買おう。まず色が凄い。焦げ茶としか言いようがない。黒すぎず、茶色すぎず、サラサラ過ぎずドロドロすぎない。

 準備も簡便至極。ボトルを振ってからキャップをくるくると開け、適当な皿や紙の上に数滴垂らせば良い。やれ薄め液だなんだと言わなくていいし、水性なので臭いも皆無。ダイニングテーブルの上でいきなりチッピングを開始しても誰も文句を言うことはないだろう。

▲ちぎったスポンジに塗料を付着させ、ティッシュの上で数回ポンポン叩いて塗料がカスカスになるようにする。
▲レディ……
▲フィニッシュ!角を重点的に攻めながら15秒ほどポンポンしただけである。

 エッジの利いた塗装ハゲと錆表現がランダムかつ自然に施せるスポンジチッピング。そこに使う塗料にはずっと悩んできたが、ワタシ的にはファレホの150番こそが「ついに出会った最高の相棒」だと確信した次第である。あとファレホは乾くとガッスガスのつや消しになるのも錆っぽくてよろしい。

 こういう塗装は楽しいのでやりすぎになりがち。古い自動販売機の接地面近くはだいたいジメジメしていてこんなふうにジワジワとハゲたり錆びたりしている。しかし、これはちょっとやりすぎて粗密に乏しい。もっと自然な感じに、こう……。

▲濡らした綿棒でスルッとOFF!

 まさに「臭いも汚れもこれ一本」というファレホの#150。みなさんも見かけたら絶対に手に入れてほしい。スポンジとこの塗料さえあれば、どんなメカもあっという間にイカした錆を纏って僕らにリアルな景色を見せてくれるはずだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

PLAMAX minimum factory 内藤哲也、強力タッグは「君に決めた!」

 子供のころ、何度も世界を救った。

 世界を救う事を使命として旅先で出会う仲間と剣と魔法を使い諸悪の根源を倒すこともあったけど、まるで自分のようなただの少年が気づいたら悪の組織と対峙することになって世界の危機を救うこともあった。手にはボールと図鑑、出会うモンスターを捕まえて育てて戦う。最初は図鑑を完成させることが目的だったのに。

 旅先で出会うのは悪者だけではなくて、ポケモンリーグのチャンピオンになるための壁として存在するジムリーダーや、短パン小僧、虫取り少年をはじめとしたポケモントレーナーたち。草むらで見たことのないポケモンが対戦相手から繰り出される……なんてこともザラ。

 終盤になれば2進化ポケモンの最終進化形と対峙することもあり、強力なわざに苦しめられたり、一体一体ではなくパーティとしての強さに目の前が真っ暗になったりもした。ガブリアスは強力なポケモンではあるが、野生のものを見かけることはなさそうなのでオーナーがきっちりと育て上げたポケモンだということがわかる。つまり、単体でいることよりもトレーナーがいることが普通というわけ。

 今、私は世界を救うことはできないけど、その鍛え上げられた肉体と技を駆使してリングの上で輝く内藤哲也さんはファン一人一人が持っている世界を救っていると思う。辛いことを忘れさせてくれたり、元気を与えてくれたり。だから、きっとポケモンの世界でも、計り知れないほどの尊敬とカリスマ性を用いて絶大な影響力で、勇気と希望を与えてくれるはずだ。もちろん、ガブリアスのような屈強なポケモンを使って。

 博士「では はじめに きみの なまえを おしえてもらおう!」

 博士「ふむ…… テツヤ というの だな!」

プラマックスの表情豊かなパーツたちが個性を形作るフィギュアとポケモンの相性、とても良いです。異なるポーズで二体セットなのは次回作で身なりが変わり、主人公の最後の越えるべき壁として立ちはだかる様子を再現するため……かもしれない。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ。イタリアワインをドイツソーセージで楽しむようなプラモ!「タミヤ セモベンテ M42 da75/34 ドイツ軍仕様」

▲え〜〜、なんか俺の戦車乗られてるし、ハイレゾアニキが握手求めてきてる〜〜……ぐ〜てんもるげん

週末が楽しくなるプラモをフミテシの独断と偏見でお届けする「花金プラモ」。今週はボンジョルノであり、グーテンモルゲンなプラモ「タミヤ 1/35 イタレリシリーズ No.29 セモベンテ M42 da75/34 ドイツ軍仕様」をご紹介します!!! こちらはイタリアのメーカー・イタレリが1973年に発売したキットを2021年にアップデートしたイタリア車両「セモベンテ M42 da75/18」をベースに、より強力となった長砲身仕様という文脈モリモリプラモです。それにまたタミヤのドイツ兵のパーツを足してドイツ軍仕様にしたもんだから、いろんな要素が大渋滞! ワンパッケージで様々な発見があるプラモです。

▲内藤あんもアニキによる超ナイスなこちらの記事を読むと、ベースキットの「セモベンテ M42 da75/18」のことが丸わかりっす
▲タミヤ仕様の説明書に、カラー塗装図がセット。複雑な迷彩だけに嬉しいですね〜
▲タミヤの塗装図の下にあるこのコラム、みなさん読んでますか? オイラは地味に好きで、いつも塗装前のイメトレに活用しています。アメーバ迷彩なんて呼ばれているんですね
▲こんなに使わないパーツが出てくるのよ!! パーツが余っても不安にならないでね
▲イタレリのパーツだ〜ってなるのがこの袋の注意書き。海外キットに触れる瞬間です
▲1973年のパーツはフィギュアが入っているランナーで、残りのほとんどは新規のパーツになるので、大半がシャキッとしています
▲この3と4が長砲身のパーツ。本キットのアイデンティティの一つです
▲インテリアのパーツ。このプラモはちょうど良い感じの密度感のインテリアを楽しむことができます
▲ボンジョルアニキ。お髭がチャーミングです。このランナーがレジェンドパーツを収めた昔のパーツです
▲そしてタミヤのドイツ兵フィギュア。こちら3D造形バリバリ。マーダーIIIM(ノルマンディ戦線)のキットでセットされたアニキたちをコンバートしています
▲履帯は瞬間接着剤で接着可能なベルト履帯。プラ用接着剤だとくっつかないので注意してね

イタレリの新旧パーツや、タミヤの最近の3D造形アニキたちが箱を開けると混在しています。フレッシュな果実があったり、濃厚なチーズがあったりとまるで戦車模型のオードブルです。

▲一番槍アニキ!!! 蓋を閉めるとほとんど見えなくなっちゃうけど、セモベンテの魂としてぜひとも搭乗させてあげてね

インテリアを良い感じの密度感で楽しめます。ドライバーアニキもこの時点でセット。多数のアニキが入る本キットの先陣を切ります!!! インテリアの一部となるアニキは、ぜひともセモベンテに乗せてあげてね。

▲このセットだけで情景が完成!!! セモベンテの小ささによって、より世界観が凝縮されますね〜
▲アニキたちの後ろ姿。待ち伏せ攻撃全集中な雰囲気がぷんぷんであります

イタリア降伏後にドイツ軍はイタリア軍の兵器から優秀な兵器を選別し運用しました。本キットもその類で、75mm砲と低いシルエットを活かした待ち伏せ攻撃で連合軍を苦しめたそうです。車両的には一見地味なのですが、プラモとしては「海外メーカーの新旧パーツに触れることができる」、「タミヤの超精密なフィギュアプラモに触れることができる」と一箱で一気にプラモ体験の経験値を得ることができるメタルスライムのようなプラモです。組み上がった後の満足感も小サイズなのにすごいので、ぜひこのプラモを組んで、ぐいっとうまいイタリアワインとドイツのソーセージなんかで週末を過ごしてください。最高ですよ〜。

▲今夜は俺たちとイタリアワインで乾杯だぜ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ひと目惚れしてお付き合いしたら、デートのたびに「好き」が増えまくるプラモの話。

 エアフィックスのボールトンポール デファイアントを組んでいたら、飛行機のカタチが出来ていく過程だけで2度絶叫してしまった。ただでさえ健気なそのフォルムがなんだか愛おしいのに、ふとした仕草がめちゃくちゃ魅力的なのだ。「なんか気になる」が「推し」に変化していく過程だよこれは。

 まずびっくりしたのが主翼と胴体の接着ね。飛行機模型の主翼というのは「左右一体になった下面のパーツに左右別々になった上面パーツを貼り、真ん中にできたミゾのなかに胴体を落とし込む」のがふつうだ。しかし、このデファイアントは主翼のミゾに橋をかけるように、胴体が上からポンと乗っかる構造になっている。

 カーブがピタリと合っているので、接着剤を流せばピタリと隙間なく固定される。普段は主翼と胴体の間にスキマができやすいことにヒヤヒヤしながら作っているのに、この構造ならスキマができる心配はほとんどない。

 「飛行機模型、全部こうなってりゃ最高なのに!」と思ったけど、このプラモ的合わせ目がそのまま実機のパネルの継ぎ目になっているデファイアントだからできること。試しに手元のゼロ戦なんかを見てみればわかると思うけど、諸国のイケてる戦闘機においては複雑な形状の板を曲げて組み合わせることでここ(フィレットという)をスーッとつないでいるので本作のように豪快な分割をすると実物と違うラインが誕生してしまうことになる。

 この飛行機だから、この分割。この分割に接着剤を流す興奮は、この飛行機だからこそ味わえるものなのだ。ほら、デファイアント作りたくなってきたでしょ。

 ……なんて偉そうなことを書いているが、これもやっぱりプラモを組んでみないと気づかなかったことだ。ボールトンポールという会社の設計/製造レベルが他のスター戦闘機を作っている会社に及ばなかったのかもしれないし、そもそもそこまで考えていなくて「加工が簡単な構造で効率的に行こう!」と決めたのかもしれない。こういうことはサラッとググっても出てくる話じゃないので、その先に図書館探検とかディープな洋書にのめりこんでいくこともできるわけだ。

 さて、せっかくパイロットと機銃座に座ったアニキがふたり付属しているモデルだから、空を飛んでいる状態で作ろう。決して着陸脚をこまかく塗り分けて組み付けるのが面倒だからじゃないぞ。いや、もし脚収納庫の扉がバラバラだったら諦めて地上姿勢で作りますが……。

▲扉が収納庫の中に落ちないように下駄の刃のような板が2枚立っている!

 そう思いながら脚収納庫扉のパーツを切り出して椅子から転げ落ちた。普通脚収納庫の扉は「開いた状態で作るのがあたりまえ」という設計で、閉じてラクをしようという人にはあんまり優しくない。フタを仮に合わせてみたらそのままストーンと収納庫内に落ちてしまうのが常であるのに、このキットはわざわざ閉じた状態の扉のパーツが用意されている上、落ちないように(所定の位置でパーツが止まるように)ちゃんと下駄の刃を履かせてあるではないか。

 接着剤もなしにギュッと押し込んでみたら、これまたきれいに主翼下面と脚収納庫扉がほぼツライチの図。うーむ、イギリスではバチピタと言っていいでしょうし、何より脚収納庫を閉めて作る人のために手間暇かかったこのパーツがあること自体が奇跡的優しさ。いやはや、飛行機模型全部こうなってりゃ最高なのに……。と思いつつタイトルに書いたことを思い出す。やっぱりこういう「いいところ」はお付き合いしてみないと見つからないし、みんながみんな完璧超人じゃないからデートはドキドキするのです。ほら、デファイアント作りたくなってきたでしょ。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

めんどいの壁を壊して一気塗り。3日で作る飛行機プラモ「タミヤ 1/48 フォッケウルフ Fw190 D-9」

▲ドイツ機は専用カラーが豊富! 瓶生でどんどん塗っていけるのありがたい! 水性ホビーカラーのチームドイツを一気に購入だぜ

タミヤの1/48スケールの飛行機模型からドイツ軍の傑作戦闘機「フォッケウルフ Fw190 D-9」を題材に、飛行機プラモを時短で完成させちゃおうという企画。ドイツ機といえば迷彩がめちゃくちゃかっこいいですね! ドイツ機を1機塗り上げたら、飛行機模型塗装に自信もついて、あれも塗ってみたいな〜って自分のハートも強くなると思います。ここでは私フミテシのお気楽迷彩塗装をご紹介します。

▲こちらは組み上げる前にやっておくとめっちゃ製作が楽になる方法などをご紹介しています
▲水性ホビーカラーのドイツ機カラーゾーンからこの3色をセレクトします

第二次世界大戦の各軍のカラーは、各メーカー瓶生状態で良いものが多数ラインナップされています。なので悩むことも少なくなります。RLMって書いてあるカラーはドイツ機の各カラーです。迷わず初手で全部買っておくことをお勧めします。そうすれば様々なドイツ機があなたのテリトリーの中に入ったも同然です。塗料選びで迷わないことって結構時短に繋がります。

▲タミヤのD-9は塗装しやすいように細部のパーツが分割されています。本体だけになるように組み立てて置けば、塗り分けも楽になります

キットによっては、パイロットを後から搭乗させることが難しくなるものがあります。D-9も後乗せが少々厳しい……せっかく塗り分けたアニキに、本体色がかかってしまうよ〜〜〜。あ〜手が止まる……マスキングめんどい。

▲このままだど、塗料はかかるし、さらに空でオープンはきっと寒い
▲寒くない! 塗料かからない! 2秒でマスキングが終わったよ!。クッキングペーパーマスキング!!!

マスキングというときっちりテープでやるイメージですが、エアブラシで各部を塗り分けていく塗装方法なら、どば〜っと全体に吹き付けることもほとんどないので、アニキをクッキングペーパーの毛布で包んでやるだけでOKです。アニキも暖かいし、こちらもマスキングめんどいな〜って気持ちから解放されてほっこりです。

▲まずは裏面から塗ってしまいましょう。一番塗る面積が広いので、これを基準に各部の迷彩を塗っていきます。明るい色なので、上塗りするグレーバイオレットやダークグリーンの色味がくすんだりすることはありません。ひっくり返したらアニキのペーパーマスキングが落ちました
▲次にグレーバイオレット! グレーが先かグリーンが先かは、どちらでも良いと思います。主翼はグリーンの迷彩になるところも気にせず、グレーで全部塗りつぶします
▲お分かりでしょうか……グレーとダークグリーンの迷彩を逆に塗ってしまいました。そんなミスするの?って思うかもしれません……が、モノクロのカラー図の編みかけって結構頭の中で混乱することがあるので、塗料番号の脇に自分で「ダークグリーン」とか書いておくことをお勧めします!

迷彩塗装ですが、ボケ味を活かした塗りにするなら「フリーハンド」で全く問題ないです! エアブラシの細吹きで各迷彩色をまず塗ってしまいます。そこで終わりにせずに、はみ出しや迷彩の形を整える「迷彩塗装の2周目」をすれば大体それらしく見えるようになります。

▲各迷彩を2周したもの。それらしくなっていると思います。40分で塗り分けが完了しました

迷彩塗装の他に飛行機模型塗装の鬼門は「キャノピー枠」のマスキングです。でももう皆さんに迷いはないはずです! からぱたが紹介した別売りのマスキングシートを活用しましょう! アマゾンで買えちゃうんだから本当にやばい。時間を超お手頃価格で買えるのです。

▲必読!!!!!
▲400円でマスキングが数秒先に終わっている未来が見える、飛行機模型マテリアル界のキング・クリムゾンッ!!! エピタフーーーーーッ!!!!!!
▲1分。未来のお前自身だ

さぁ、かなり塗り分けが終わったのですが、ドイツ機には最強のハードル「モットリング迷彩」というものがあります。これをクリアーすればもはや完成したも同然。その秘密兵器を次回お届けします!!! それでは、あばよ!!

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

たしかにクウガはそこにいた/Figure-rise Standard トライチェイサー2000

 人語を解さず、ゲームと称して人を襲う怪人グロンギ。それに立ち向かう戦士クウガ。

 仮面ライダークウガは画面に都度表示される時刻表示やグロンギによる生々しい被害などリアルなサスペンスドラマの趣を持った作品だった。私にとっては初めての仮面ライダー作品であり、幼い私は「クウガ」が本当にいて、グロンギと戦っているんだと信じていた。

 あれから時が流れ、大人になった私は仮面ライダーが創作であると分かっているし、本当にクウガやグロンギがいるわけでもないとわかっている。だが、それでも感動は薄れなかった。寧ろ本当にバイクに乗り、激しく戦っているスーツアクターというものを知り、監督や脚本家の工夫や演出の苦労を知り、感動した。そしてこれも「本物」なのだと感じたのだった。

 フィギュアライズスタンダード、トライチェイサー2000はそんな仮面ライダークウガに出てくるバイクのプラモデル。少し落ち着いた金メッキがとても綺麗。


 ゴム製のタイヤパーツ、サスペンションのためのスプリング。リード線や細かなチェーンのパーツなどは以前作ったことのある他のメーカーのバイクプラモを思い起こさせる。

▲外装を取り付ける前の状態で一度写真を撮りたくなるのもバイクプラモの楽しさだと思う。

 フィギュアライズスタンダードのクウガを作った時、今作っているのはキャラクタープラモなのか、それともスーツアクターが着たスーツのプラモなのかと考えたことがある。だって、アニメのキャラクターと違って仮面ライダーのスーツは実際にあるものなのだ。

 そしてこのトライチェイサー2000のプラモにはより強くそうしたことを考えさせられる。それはプラモデルというのが「現実のモチーフをプラスチックに置き換えるというスケールモデルが原点にある」ということを知っているからだろう。実際バイクのプラモというのは、スケールモデルの中でも車や戦車と並ぶ一大ジャンルとして色々なメーカーから発売されている。


 このトライチェイサー2000のプラモデル、どこにもスケールは書いていない。しかし、この仮面ライダーとバイクという組み合わせが作り出す情景がキャラクタープラモでもありながら兵士と戦車の組み合わせのようなスケールモデル的な見方もさせてくれるのが面白い。

 仮面ライダーのバイクプラモがクウガを信じる子供の僕とスーツアクターに感動する今の私を繋いでくれる。虚構の世界を実写で作り出す特撮。現実の世界をプラスチックで表現するプラモデル。フィクションとリアルを行ったり来たりする魅力を特撮とプラモデルが教えてくれたのだ。

もとぴ

東京在住。世界を理解するための糸口としてプラモデルを制作中。趣味の記録や思索のためにnoteも書いています。

プラモのシルバーラインを駆け抜けろ!秘技『真空塗り』。

 ハセガワといえば飛行機モデル!という時代が長く続いたために「飛行機のハセガワ」なんて二つ名が模型誌の誌面を賑わしていましたが、ここ最近は自販機の製品化がアツい!と言ってもバイクや自動車もたくさん新規開発していますから、「自販機のハセガワ」みたいに言われることはたぶんないね。ということで今回は新作のハセガワ 1/12 フィギュアアクセサリーシリーズ レトロ自販機(トーストサンド)じゃ!

 まあその、自販機ですから基本的にハコなんで板を組んでいくことになるわけですが、このアイテムを作る上でもっとも重要なのが前面のパネルね。とくにアルミっぽいシルバーの細いモールやボタンとかコイン投入口とかが光ってると一気に「らしく」なります。とはいえ細かったり小さかったりしてなかなか難しそうじゃないっすか。

 まず左右のモールのど真ん中に黒い線が入っているのが「正解」のようなので、そのように塗ります。と言っても塗るのはめんどいのでMr.ウェザリングカラーの「マルチブラック」をゴッドハンドの神筆(スミ入れ用)で溝に流し込んでいきます。これはめちゃくちゃ楽しい作業なのでみなさんも溝を見つけたらどんどん神筆でウェザリングカラーを流し込んでほしい。砂場に川作って水をドバーッと流したときの興奮がおとなになっても味わえる。すごい。

 で、黒くなった溝の両サイドをシルバーで塗るわけですが、こんな細いもんをキレイに塗れる気がしないわけですよ。筆だとヨレヨレするし、エアブラシで吹こうもんならマスキング地獄。そこでアレです。タミヤのペイントマーカー。このフエルトのペン先が最高なんだわ。最近はペンがマイブームですね。適材適所。

 一部界隈で「真空塗り」と最近呼ばれているこの塗り方。簡単に言うと息を止めて気合でスーッと引く、というものです。気合です。息止めましたか?

 プハーッ!おもったより均一にキレイなシルバーのラインが書けるでしょ?タミヤペイントマーカーのクロームシルバーは乾燥にむちゃくちゃ時間かかるのでうっかり触ると手にインクがくっついて、そのまま気づかずに作業していると模型がベッタベタに銀色になってしまうのが要注意ポイント。組み立てが終わってからやって、最後に乾燥時間を取るほうがいいかもしんないね。

 さすがにマーカーではきついわ!というところはマーカーをシールの台紙の上で何度かプッシュするとめっちゃキレイな銀塗料がにじみ出てくるので、これを面相筆で掬って穂先ではなく腹で撫でるように塗ってみましょう。出っ張ったディテールならまず問題なく塗れます。もしはみ出したらフレッシュな爪楊枝で親の仇のようにこすればだいたいのことはなんとかなりますから安心しよう。

 前に作ったうどんそばの自販機とツーショット。うーん、やっぱりこれいっぱい並べるとロードサイドのパーキングエリアっぽい風情になっていいですね……。このままいろんな自販機が登場するよう祈りながら、みんなも自宅の空きスペースにどんどん自販機を生やしていきましょう。そんじゃまた。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

ニッパーを握るすべての人と、モケイの楽しさをシェアするサイト

モバイルバージョンを終了
%%footer%%