名前で塗る色、見て塗る色。/艦船模型の甲板色が教えてくれる「プラモの塗料の不思議」

 最近Twitterを眺めていてちょっとおもしろかったのが、「カーキ」と「オリーブ」という色の話。どちらも色の名前であるはずだけど、その名前が指し示す色は人によって(属性やシーンや文脈によって)まちまち。カーキは黄土色から緑色までかなり幅が広く、男性ファッションにおける「オリーブ」と女性ファッションにおける「オリーブ」も画像検索をかけてみるとかなり違います。

 その要因はあえてここには書きませんが、つまるところ色の名前は色をひとつに決めるものではないし、逆に言えばある特定の色からひとつの名前を導き出すのもまた難しい。

 上の写真だと「バフ」とか「タン」なんてのがあります。プラモ作る人は瓶のキャップの色とその名前が強く結びついているからなんとなくイメージできるだけで、そもそもバフってどういう意味?タンってどういう意味?というのは案外考えたことがなかったりするのではないでしょうか……。

 なぜいきなりこんな話をし始めたのかと言うと、『艦船模型スペシャル』の最新号がめちゃくちゃおもしろかったから。特集タイトルは『艦船の塗装にまつわる雑学と表現方法』という書き方ですが、開いてみるとひたすら木材の写真がずらずら出てきます。

 艦船の甲板には木張りであることが多いわけですが、木と言ったって世界にはいろんな種類の木があるし、それぞれ色も違えば表面処理のしかたも違うし、まっさらな木材と雨風に晒した木材は異なる風合いになります。どっこい、プラモ用の塗料で「甲板を塗るための色とされているもの」は数種類しかありません。

 そこで本書では「そもそも木の色ってなんだっけ」というところから話をスタートさせ、いろいろな艦船に使われた材料が何だったのか……みたいなことを考察しています。もちろんプラモの説明書に書いてあるとおりに色を塗ってもいいわけですが、それが記号的に「木のような色」であればいいのか、実際に木材の色を眺めて導き出した色を塗るのかは大きな違いがあります(そこにはスケール感も加わってくるのでけっこう難しいのですが……)。

 木の色に限らず、プラモに色を塗るというのはとても楽しく奥深い遊びです。リノリウムって本当はどういう色?夕暮れのときに見えるフネは本当にグレーなのか?といったことに気が向くと、「じゃあ選び取るべき色はどれなんでしょうか……」という考え方にシフトしていくはずです。これは「本物の色に近ければ近いほどエライ」みたいな単純な話ではないし、模型の優劣を決めるものでもありません。そして、塗料の瓶に書いてある名前の真偽を問うものでもありません。何を見て、どう伝えたいから、何色を塗るのか。艦船模型だけでなく、あらゆる表現に通じる色のお話。ぜひとも手にとって、読んでみてください。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。