V8エンジンの咆哮が水面に轟く/アメリカンカープラモ 「1/25 レベル ホットロッド・ハイドロ」

 軟質タイヤとギラギラのメッキパーツ。白いボディのパーツがギチっと入った厚みのあるハコ。その佇まいは紛うことなきアメリカンカープラモ。とはいえ、これを組み立ててもクルマができるわけではないというのがすごく気に入ってしまい、思わず模型店の棚からレジへ直行。

 ハコのサイドを見れば分かるとおり、これはボートとボートトレーラーのセットだ。お気に入りのクルマにコイツをくっつければあっという間にホリデーの到来。ガンダムMk-IIにフライングアーマーを装備すれば大気圏に突入できるようになるのと同じで、このキットを手に入れれば家に飾ってあるクルマの持ち主は水上にその行動半径を広げることができるようになるというわけだ。

 「ならばこれはカープラモではないじゃないか」と言うなかれ。クルマと同等のボリュームを持つこのアイテムは単体でもボートの模型たりえると同時に、アメリカのホットロッドカルチャーの概念が我々の想像を上回る範囲に広がっていることを教えてくれる。どんなときもむき出しのHEMIがオレたちの相棒であってほしい、というアメリカ人の信仰に近い気持ちをより強固に表現したければ、カーモデルにもうひとつのV8を添えることでそれを叶えるべし、というレベル社のメッセージではあるまいか。

 大胆にもシャーシは巨大な一体成型のパーツで用意されている。各所でレビューを読むと「全体がひどく歪んでいて大変だった」というものも散見されるが、私が手に入れた個体はそこまで極端な歪みもなかったし、そもそも一軸(タイヤはふたつだけ)のトレーラーなので接地させるのもそこまで苦労はしないはず。

 シャーシのパーツと韻を踏んだカタチで囲まれたメッキパーツのランナーに遊び心を感じる。シリンダーヘッドとエキマニを見ると「あ、カーモデルだ!」と早合点しそうになるが、彼らはそれをボートに移植し、キレイに磨き上げて高貴な獰猛さをメカの外観の一部として楽しむ。ボートはカーモデルのコアを取り出して祀る祭壇でもあるというわけだ。

 船体は豪快な竹割りだが、広くシンプルな面が塗装の喜びを予見させてくれる。牽引するクルマと同じ色で塗ればこだわりの強いオーナーになるし、ちぐはぐな色で塗れば「突如ボート遊びに目覚めた気忙しいやんちゃ坊主」を表現できるだろう。ラメの入った船体をソロリと水面に滑らせる情景を作っても良いだろうし、遊び疲れた夕暮れ時にトレーラーの傍らでBBQに興じるのも楽しいに違いない。

 デカールはイタリア製とあるから、おそらくカルトグラフ社製のものだろう。カラーリングは3種類が提案されていて、どれもド派手なフィニッシュがお似合いだ。軟質素材のタイヤと金属製の車軸はプラスチックバッグに中国製と印字されている。

 このボートとトレーラーをどんな色で仕上げるか、どのクルマに牽かせるか……という妄想は尽きない。もちろん単体としてもすごく見栄えのするモデルだが、願わくば良きフィギュアを添えることができれば文句なしだ。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。