ハセガワから発売されている1/12の自動販売機。たぶん「スケールの近い可動フィギュアと遊んでね」というメッセージがそこに込められているのだけど、せっかくなのでプラモでも1/12スケールでいっぱいラインナップされているオートバイを組みたい。なるべくパーツ数が少なくて、スパッと形になりそうな日常使いのバイク。
値段もこなれていて、パッケージも小さいゴリラなら「ちょっと散歩がてら温かいソバをすすりに来た」という情景にも似合う。難しいことはいっさいなしで、とにかく完成させることが日曜日に残された時間のイカした使い方だ。
箱を開けると黒、クロームメッキ、白のパーツが入っていた。白いパーツだけ塗れば、立派に3色に色分けされたプラモデルだ。……っていうか、ハコに描かれたゴリラがほしければ塗らないのが正解の色である。やはりバイクモデルってガンプラに近いものがある。まあ組むのはちょっとだけ骨が折れるんだけど。
バキッと発色するNAZCAのフレイムレッドは「塗っていることそのものが楽しい塗料」だ。白下地ならそのままエアブラシでブーッと吹いているだけでみるみる朱色に染まっていく。塗らなきゃいけないパーツもこれしかないとなれば、「ああ、オレは今日もプラモを塗装して作っているぞ!」という気持ちが簡単に手に入る。
もちろん缶スプレーでもマーカーでもなんでもいい。色を塗るためのものなら何でも使っていい。この白いパーツを自分の色に染めれば、それだけでプラモは世界にひとつだけのあなたの宝ものになる。塗り終わったら上からプレミアムトップコートの「光沢」を表面がポッテリするまで吹き付けて、そのままランチを食べたりTVを観たりして過ごす。
忘れた頃にツルツルの光沢仕上げになったパーツを眺めて、ちゃんと表面が乾いたことを確認してからフレームやらエンジンやらを組み立てていく。メッキパーツを接着するのに接着剤を選ぶとか、接着面だけメッキを削り落とすなんてのも、このパーツ数ならたいしたことじゃない。適所に適材を選べぶだけで、巧拙の問題じゃない。
チェーンがシルバーじゃないことだけがちょっと気になったので、マッキーペイントマーカーの銀でツーっと塗っておく。あとからベタベタ触るものじゃないので、塗膜の強さなんて気にしない。メッキパーツにも劣らない輝きが嬉しいでしょ。
細いパーツや小さいパーツはちょっと古い設計で位置合わせが難しいところもある。でも速乾の接着剤がやたらめったらある時代なので、ちょっと力を入れてピタッと押さえておけばどこも10秒でかっちり固定される。かくしてゴリラがちょこんと完成して、「日曜に模型を作ったな」という手応えはしっかり残った。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。