

エアフィックスの箱はプラモデル屋さんですごく目立つ。思い返してみれば、インターネットショッピングでエアフィックス製品を買ったことはほとんどない。なんとはなしにお店に行って、Tシャツやパーカーをピラピラとつまみながら「この色いいね」なんて言いながらウッとなってパッと買ってしまうアレと同じ種類の魔力が、エアフィックスの赤い箱にはあるということだ。
ましてやそれが自分でも知っているような有名な戦闘機ではなかったりしたらなおさらだ。コクピットの後ろにR2-D2が収まった『スター・ウォーズ』のXウイングよろしく、パイロットの後ろに鍋をひっくり返したような旋回銃座が乗っかったボールトンポール デファイアントなんて、まあプラモでもなければおそらく知らないまま暮らしていてもおかしくないような飛行機だと思う。

ハコを開けて嬉しくなるのが、そんなパッとしない(でもすごく魅惑的なカタチの)飛行機にも、イギリスのアニキたちは綺羅星のような戦闘機たちと同じだけの情熱と愛情を注いでプラモを作っているということがバリバリ伝わってくることだ。水色の主翼の裏っかわに入れられたシャキシャキのパネルラインや動翼のふわっとした布の表現を見ているだけで、「ああ、イイもの買ったな」なんて思うわけである。オレはこの飛行機のことを1mmも知らないのに、だ。

知らないで食べるのもどうかと思い、一応この飛行機のことを調べることにする。書いてあることは概してひどく、足が遅くて前方に向いた機銃がないから使い物にならなかった云々……。戦果といえば、「ホーカーハリケーンに似てる飛行機がいるぞ」と後ろから近づいてきた敵戦闘機に後ろ向きの機銃がヒットした、みたいなものばかりらしく、人違いでたまたま成果を上げてしまった営業マンのような、ちょっとかわいそうな奴だ。

黒く塗ってこっそり爆撃機の腹に近づけば機銃を当てられるだろうという理由で夜間戦闘機にされ、これが案外活躍した、というのもまた面白い。イギリス機らしい迷彩は忘れ去られ、闇夜にまぎれる真っ黒のデファイアント。塗装するなら缶スプレー1本で済んでしまう。少し調べる範囲を広げると、たんなる駄作ではなくてわりと見るべきところもあった飛行機みたいで、やはり知らないよりは知ってるほうがいろいろおもしろい。

とはいえ、だ。飛行機に罪はないしプラモにも罪はない。ほがらかなアニキふたりもランナーに収まって今か今かと出撃を待ち遠しそうにしている。誘蛾灯のようにモデラーを誘う赤いハコは、知らなければスルーしていた飛行機のパイロットを無理やり紹介してくれる。そして、「どんくさくも愛らしい飛行機と一緒に空を飛ぼう」と僕らに声をかけてくるのだ。
