「コラム」タグアーカイブ

プラモデルと直接関係ないように思えることも、プラモデルを作っていればピンとくる。そんなエピソードが集まっています。

「解像度とスピード」。プラモを作るときに役立つマインドセットの話。

 安くてパーツ数の少ない飛行機模型は、サクッとカタチになってよろしい。そうめんを啜るように、サッと作りたい。とくにハセガワの「安い方のファントム」なんて、どシンプルだ。いつでも手に入って、あっという間に組み上がる。

 飛行機模型の最初の工程は、コクピットであることが多い。こまごましたディテールが集中して、塗り分けもいっぱいある。作業に没頭すれば楽しいが、やることが多くて面倒だとも感じる。決してカンタンだとは言えないこの作業、これが億劫でなかなか製作のスタートを切れないとか、ここで息切れしてしまう人、多いのではないだろうか。

 どーんとクローズアップする。作業しているときの視界はこんなもんだろう。とにかく、「ディテールがあるからこれを全部塗らなきゃいけない」とか、「操縦桿やフットペダルがパーツ化されていないから作らなきゃいけないのかな」とか、この解像度だと考えてしまうのだ。

 戦闘機のパイロットも夏の暑さで溶け気味だ。あなたはこんなとき、どうする。

 「塗ったところでうまく見えない」とか、「これじゃあディテールがさっぱりわからないからサードパーティーのイケてるパイロットをスカウトしてこよう」とか、なんなら「彼らはなかったことにして、無人の戦闘機を作ろう」とか。

 もったいないぜ。考えている時間がもったいない。いまはインターネットの時代。展示会だっておいそれできないんだから、顔を近づけてこのパイロットを見る人はいない。このボヨンとしたプラスチックがパイロットらしく見えれば、それでいいんだ。

 ぺろりとオレンジを塗る。この時代の自衛隊のパイロットはオレンジのフライトスーツを着ていた。顔も「このへんが顔かな?」というところを薄めた茶色でサッと撫でておけばいい。

 説明書に書いてある塗り分けは、シートベルトと手袋と、酸素マスクとホース……。「こんなもんだろ」という色を適当に選んで、それっぽく。

▲科特隊みたいになった

 「うわ、きったねえ!全然ヌルくて見られたもんじゃない!」と悲鳴が聴こえてきそうだ。靴だって塗ってないし、適当すぎるんじゃないのか。

 ……しかしそれは、こんな巨大な写真で見ているからだ。落ち着いて、思い出してほしい。

 ほら、そこには確かに、オレンジのフライトジャケットに白いヘルメットをかぶったパイロットが乗っている。さっき見たコクピットのサイドコンソールなど、微塵も見えない。「だから塗るな」とは言わない。この写真を見て、塗るか塗らないか、どれくらい塗ればいいのかをちょっと考えてほしいのだ。

 精緻なコクピットにリアルな人間が座っている様子をグーンとクローズアップして見せたいのではない限り、飛行機模型の写真というのはこんな感じで撮影されるものである。

 世はまさにインターネット時代。写真を撮るのはあなた。あらゆる写真はスマホで消費されて、全体の雰囲気が良さそうであれば「いいね」のボタンが押される。安心しよう。あなたが見せたいのは、雰囲気良く作られた飛行機模型だ。あなたが欲しいのは、「おー、カッコいいっすね!」の称賛だ(そうじゃない日は、ガッチリ作り込めばいいだけの話)。

 大事なのは、「いま手を付けているところが全体に対してどれくらいの大きさなのか」「完成したあと、ここってどれくらい見えるもんなのか」を考えること。限られた人生、ひとつでも多くのプラモを作りたいと願うなら、このことをたまに思い出すと、きっといいことがあるはずだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

ドキッとする「透け」は飛行機模型にもあり!「透け」を無くして「隙」を無くす夏。

▲飛行機模型のキャノピーの枠!模型お悩み相談室の電話がよく鳴る案件ですね

 「透け止め」とか、「黒止め」とか、みなさんは聞いたことありますか?(←え?なんすか?byフミテシ)。検索するとこの季節に見られるエアリーでシアーなおしゃれ服ばかりが表示され、透けを活かした涼しげな着こなしがたくさん出てきます。逆に「透けない着こなし」なども表示されますね。模型とは関係ない言葉のように聞こえますが、そんなことはないのです!!

 ズバリその正体は、主に飛行機のクリアーパーツに使われるテクニックです。飛行機のコクピットの窓であるキャノピーはだいたいクリアーパーツになっています。そしておおむねフレームも一体になっているので、透明な部分をマスキングしてから塗装するわけです。

▲もはやお前もキャノピーなのでは?と思えてくるスケスケマスキングテープ。今日もよろしく

 クリアーパーツは外側を塗っても、クリアーだから外の塗料の色を内側から見ることができます。これが結構やっかいで、たとえば「外側が白だから」というのでそのまま白を塗ると、白が透けて見えちゃうわけです。逆光だとさらに透けます。ですので、逆光でも塗装が透けていないようにすることがポイント。これはマシーネンクリーガーの生みの親・模型番長の横山宏さんも言っています。都合のいいことに実機も内側を黒く塗っていることが多いので黒をキャノピーの外側に先に塗ってしまうのですね。

▲この画像、左半分がなんだか白っぽい。右が黒ですね~。そんなのどうでもいいじゃんと思うかもしれませんが、これが大事

 こうした内側の色をうまく見せないために、先に黒などの色を塗るのが透け止めです。まず黒を塗って、その上から外装の色を塗る。

▲マスキングしてキャノピーの外側を黒で塗る!

 そうすると内側に見える色は黒にすることができ、同時に透け防止になります。ものによっては飛行機の機内色で塗ってあげてもいいと思いますが、自分は黒子の部分だと思って基本は黒で塗ってしまいます。

▲飛行機模型のキャノピーの塗装を先に済ませておくと、のちの自分から、ひとりスタンディングオーベーションが贈られることでしょう。パチパチパチ
▲黒の上に本体色を塗ってマスキングテープを剥がせば完成~。奥の内側を見てください。黒によって透けてないですね

 こうした塗装はめんどうなキャノピーのマスキングとあわせて、自分はそれなりの数をまとめてこなしてしまういます。「今日はキャノピーをまとめて処理する日!」という感じでやってしまいます。明日の自分のために!黒くしたキャノピーは外皮の塗装のときに一緒にまた塗りましょう。あと。でかいキャノピーがある模型には超効果絶大ですよ!!

 この透け止めというテクニックは、さらっと解説されることも多いのですが、外から覗いてみると地味に効いてくると言うか、やらないとなんとなく気になってしまうような、満足度に直結する作業です。重箱の隅をつつくような地味テクって自己満足の局地みたいなところですが、それも模型の楽しいところ。作った模型を手にとって眺めて「ここやったのよね~」なんて思うのって楽しい時間ですよね。

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

タミヤ工作セットが「ステイホームの夏」を熱くする!!!みんなでニッパー握ろうぜ。

▲ステイホームを熱くする!!!「タミヤの工作セット」で夏をさらに熱くしようぜ!!

 今年は短い夏休みだけど、それでも夏休みはやっぱり特別!!中々外で遊べない甥っ子達とふりつくは、タミヤの工作キットを一緒に組み立てて遊んだよ。甥っ子たちとワイワイ作っていると、小さい頃に友人と自由研究ではしゃいだのを思い出し、夏休みって感じ!甥っ子たちも同じ気持ちかな?
 リモコン操作で対戦して遊べる昆虫対戦セット、一番小さい子用にかわいい壁伝いメカのてんとう虫も。折角なのでそれぞれ一つずつエントリーニッパーもプレゼントしちゃったよ!マイニッパーでテンションアップ!!!さぁタミヤの工作セット製作のはじまりはじまり~。

▲中身はクリアランナーがびっしり。内部構造が見えるクリアパーツってわくわくしますよね。ギアパーツもあるぞ~
▲手を切らないよう慎重に。「一度に切り離さず二度切りすると断面もきれいにカットできるぞ!」とおじちゃんらしくアドバイスだぜ!!
▲コントローラーだって自作するんだ!配線とかもあるぞ~。実はレバーの向きを組み間違えてる……けど大丈夫!動けば結果オーライなのだ!!!
▲組み立てがちょっと難しいギアボックス。でもこれは「完成済み」なのだ!!モーターをセットするだけでオッケーだから小学生でもサクサク~
▲トラブル発生!!!!駆動シャフトのパーツが折れちゃいました……ここはおじちゃんに任せろ!!!

▲近所のコンビニへダッシュして瞬間接着剤をゲット!!。ツマヨウジでチョンチョンきれいに。子供たちからも拍手!!
▲小さい子は一心不乱にシールを貼りますよね!感性の赴くままペタペタとカスタマイズ
▲いっやっほ~~~!!完成!!!みんなで記念撮影!!!!早く遊びたくてウズウズしてますね~
▲夏の昆虫バトル開催!!自分で作ったキットで超夢中の甥っ子。最高のバトルを演出する切り株土俵シートがさらにバトルを盛り上げる!!!左右のレバー上下で前進、旋回、後退ができる本格的な動きでおじちゃんもついつい熱が入るのでした

 模型店の中でもクリーンなパッケージで想像力を掻き立てる「楽しい工作シリーズ」。作ることで、物が動く仕組みも知ることができ、しかも作ったもので思う存分遊ぶことができるので、自ずとテンションはMAX。パーツ単位でも売っているので、組み合わせは無限大!!!想像力のインファイト!!!!今年の夏は楽しい工作シリーズを作ってお家で遊ぼうぜ!!!

ふりつく

1989年生まれ。模型ホビーを愛してやまない雑食ライター。ステイホーム期間をきっかけにラジコンカーにはまり気味。

伝説のRCオフローダー、「アバンテ」が可愛くなって帰ってきた!

 もはや知らない人はいないでしょう。アバンテ4WD。タミヤのRCオフローダーとして究極の美しさと究極の走りを追求したバブル絶頂期の伝説マシン。ミニ四駆はその模型として爆発的なヒットとなり、世代を超えた人気を誇っています。

 とはいえ、アバンテというのは完璧なマシンではありませんでした。このへんの経緯はWikipediaがめちゃくちゃに面白いので絶対に読んでください。寝られなくなるし、どうやってもアバンテを手に入れたいという欲求から逃れられなくなるはずです。

アバンテ – Wikipedia

 安易な再販や復刻をしない、タミヤのレーシングバギーのなかでも特別すぎる存在として君臨するアバンテ。しかし、いまから9年前、弱点をすべて克服した状態で復刻されました。アバンテ(2011)と呼ばれるこのマシンもまた、恐ろしい人気を誇りました。

▲アバンテ(2011)は現在でも恐るべきプレミアム価格が付く超マシン!

 話は変わって、タミヤが一昨年から展開している「コミカルシリーズ」。80年代に発売されたRCバギーをデフォルメし、WR-02CBという寸詰まりで車高の高いシャーシに乗せたアラフォー〜アラフィフ感涙のマシンたち。乗っているフィギュアもすごくカワイイし、走りもキビキビコロコロと楽しいったらありゃしないのです。

 グラスホッパー、ホーネット、マイティフロッグと続いたこのシリーズの新作が発表されて、誰もが腰を抜かしました。ビッグウィッグでもホットショットでもなく、アバンテだったのですから!

 今作、コミカルアバンテはこれまでのWR-02CB(後輪駆動)ではなくGF-01CBシャーシ(4WD)を採用。このへんもアバンテはスペシャルな感じがして嬉しいぞ……。

▲一も二もなく、買いました。本当に最高。

 タミヤのRCカーは自分で組み立てることでその機能を身体で感じることができるのが美点なのですが、今回は組む時間も惜しかったのでXB(エキスパートビルド、タミヤの工員さんが気合を入れて組み立てと塗装を終わらせてくれている上にすげー安いという神仕様)を購入。ハコから出せばすぐ走る、レディトゥランな状態なのがすっばらしい。

 「なんだよ、nippperって手を動かす人のためのメディアじゃないの?吊るしのラジコン買ってきて終わり?」と思う人もいるかもしれませんが、タミヤのRCは自分でカスタマイズできるからいいんだぜ……。

▲まずは走りを変えるセッティング。もちろんオプションパーツで改造もできちゃう。
▲お、なんかランナーが入ってますね。
▲さらに別売りのLEDによる電飾もバッチリサポート。ナイトランもできちゃう。

 買ったあとでもバラしたりパーツ変えたりデコレーションしたりと楽しい要素が満載で、説明書を眺めながら(完成したモデルを買ったのに!)ニヤニヤが止まりません。助けて!

▲ウイリーしてもOKなスキッドが後ろに突き出していますね。ホイールの色も元祖の韻を踏んでいて泣ける!

 ということで、コミカルな姿になって、誰もが買って即座に楽しめるマシンと化したアバンテがめっちゃいいぞ!という話でした。複数人で買えばイコールコンディションで戦えますから、どしどし仲間を増やすこととします。

 みなさんも、ぜひ!

モデル/後藤あゆみ

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

ガンプラを時短で楽しく全塗装!/【塗装済みパーツを切り出すぞ!!の段】

 メカトロウィーゴの生みの親、モデリズムの小林和史氏によるガンプラの「#時短プラモ」の方法でフミテシ が実際にガンプラを完成させる本企画。第3回目は遂にランナー塗装したパーツを切り出します。カットしたパーツはどのように見えるのでしょうか?

■前回の#時短プラモを振り返ろう!

 1/匂いが少なく、さらにリニューアルされて性能が格段にアップした水性ホビーカラーを使用してランナー塗装

 2/ランナーにパーツが付いたまま塗装することで、塗装する際にパーツを固定する持ち手が少なくてかなりの時短になる

▲フミテシ が作っているキットは「HGAC ウイングガンダム」
▲パーツひとつひとつに持ち手をつけるのって、結構時間がかかります。ランナー塗装ならこのように持ち手は数本で終了。時短効果がとても高いです

 ■ランナーからパーツをカット!綺麗にカットできれば、さらに時短に!!

 塗装を終えたランナーからパーツを切り出します。ゲートを綺麗にカットするにはやはり定番の「2度切り」がオススメ。よく切れるニッパーで、2回に分けてカットしてみましょう。

▲カットの際に塗面を傷つけないように。ゲートを残し気味でカットします。ゲートは1箇所だけ残して予めカットしているので、作業はサクサク進みます
▲このようにニッパーの刃を、残りのゲートに密着させてしっかりカット。ニッパーの刃は、先端よりも、やや中央部分の方が力が安定して伝わり綺麗にカット出来ます
▲2度切りでカットすると、このくらいしか目立ちません!!僕が使用しているニッパーは、二ゴッドハンドの「ブレードワンニッパー」。こちら同社のアルティメットニッパーよりも切れ味は劣りますが、それに追従するほどの切れ味はあります。そして「丈夫」。刃こぼれや折れを気にせず使用できます
▲各パーツ切り出し終了。ここから組み立てに行きたいところですが、僕はいったん我慢します。ここは小林さんの方法とはちょっと違う部分になります。その続きは次回。お楽しみに

 正直ゲート跡がもっとバリバリに残って、リタッチ作業(ここではゲート跡部分に再度塗料を塗る作業)をガンガンやらないといけないのでは……とパーツを切る前は思っていました。しかし最近の良いニッパーの切れ味のおかげでパーツカットは安心!これなら組んだ後に「目立つところだけ」筆で同じ塗料をチョンチョン塗ってあげれば全く問題なさそうです。またバンダイはゲートを、完成した後にあまり目立たない場所に配置しているという気づきもありました。新鮮なガンプラほどそれはよく考えられており、組んで楽しむ人・塗装をして楽しむ人両方への配慮がされているからこそこのようなランナー塗装も軽快に楽しむことができるんですね。

 次回はまだ組み立てず、ガンプラの「スミ入れ」へ!。マテリアルや色についても考えていこうと思います!お楽しみに〜。

■今回の小林さんの #時短プラモ 紹介「HGUC ガンダムMk-II (ティターンズ仕様) 」

▲HGUC No.194 ガンダムMk-II (ティターンズ仕様) 。こちらはトータル16時間で完成です!
▲Mk-II製作では、予めゲートを数カ所切る以外に、ランナー状態で片面だけ切り離して、奥までピンをはめずに軽くはめ合わせた状態で塗装にもチャレンジ。よりゲート処理する箇所が少なくなり、パーツも一気に塗装できます
▲小林さんのお気に入りのキャラクター、カミーユ・ビダンの最初の乗機で、黒いガンダムことMk-II(ティターンズ仕様)の3号機を人生初完成!時にはお気楽に。時にはガッチリと。そんなメリハリが持てるとあなたもきっと完成品が増えますよ!

 それでは次回もお楽しみに〜。

小林 和史/モデリズム

模型誌で活躍後、3DCG製作の仕事を開始。オリジナル企画「メカトロ中部」を展開し、デザインとその立体化を手がける。「メカトロウィーゴ」は複数のメーカーから製品化されるほど愛されるキャラクターに!玩具の商品原型やアニメ用3DCGモデリングも製作。ご依頼お待ちしております。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

何もかもが発見のときに見ておきたい、接着剤が流れる様子。

 流し込み接着剤という便利なものを知ったときに「あ、これなら模型が作れそうだ」と思いました。

 それはなんだか今まで想像していた接着と違う感じで、とても魅力的に映ったし、失敗しなさそうなものだと感じられたからです。

 実際には百発百中で成功するという風にはその頃も、今もなれていませんが、それでもテレビ通販で驚くほど切れる包丁や汚れを浮かしながら取る蒸気式のクリーナーを見たときのような感動があったのは今も忘れられません。

 最近、その流し込み接着剤を使うのがまた楽しくなりました。私の楽しみ方はこうです。

 通常なら、貼り合わせたいパーツをピタッと合わせてその上から極細の刷毛で撫でたり、裏から撫でたりすると思いますが、そうではなく、合わせたパーツの端を1ミリくらい開けて、そこに刷毛の先端を置くような感覚で付けます。

 そうすると、穂先についた接着剤がスッと、本当に流し込まれるようにパーツの端を進み、パーツ同士の合わせ目にすきこむように入っていく姿を確認することができます。これを、じーっと見るのがとても楽しいです。

 ただ、これは楽しいからというだけでやっているわけではありません。実際に確認したいことがあって、それは接着剤の量。

 量というのは、目分量という言葉がある通りに量らなくても目で判断することができます。料理でもそうですね。

 その、量を判断する目が欲しくてこの作業をじっーと見ています。多いと貼り合わせたい面から溢れてしまいますし、その流れ込む先に川の支流のようにモールドがあるとそこに流れてしまいます。もちろん、少ないと十分に貼り合わせることができません。

 ただ見ているだけですが、このように色々な当たり前のことが起きる理由がわかります。

 それは言葉で記憶されて頭に格納されるのではなく、目が覚えてくれているような気がします。このおかげか、だいぶ失敗も減りました。

 とくに面白いのは穂先についた接着剤の量の調整です。

 ある日、量が多すぎる場合は私はキャップを持っていない手の甲に少し撫でつけて、調整するようになりました。そこで、ごく少量を塗る感覚をつかんだのです。それはまだ、うまく言葉にできませんが、目が覚えています。

 それがどう貢献するのかというと、クリアパーツを曇らせずにスッと貼れるようになったということです。飛行機のキャノピーなどをしっかり固定させたいときに出番がありますが、今のところ曇らせた経験は無し。ピタッと直ぐに固定されるのでとても気持ちがいいです。

 模型を作る最中にはいろいろな発見があって、それこそnippperではとても丁寧に言葉になっています。そうした次のステップのきっかけを基に、皆さんも自身の目で何かを発見してください。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

花金だ!仕事帰りに買うプラモ/ハセガワ 1/72 アメリカ陸軍 P-40N ウォーホーク

 フミテシが週末に向けてオススメ模型をご紹介する本コーナー。今回は1/72スケールでさくっと飛行機を組めて、しかもお値段もお手軽のハセガワ定番のシリーズからひとつオススメします。「アメリカ陸軍 P-40N ウォーホーク」です

 P-40シリーズは、アメリカ陸軍航空隊のみならず連合軍の主力戦闘機として第二次世界大戦のあらゆる戦場で活躍。量産性にすぐれ、取り扱いやすく、かつ頑丈な飛行機でした。

▲価格は880円。ランチ気分で買えますね。凹モールドも綺麗で、一昔前のきっととは思えません。キット構造は至ってシンプル。コクピットは胴体の下から接着するタイプです
▲キットは飛行状態と駐機状態を選択出来ます

 飛行機模型でちょっとやってみて欲しいのが「飛行状態で製作してみる」ということです。脚を作らないだけでめちゃくちゃ早く完成させることができます。それこそ仕事帰りにキットを買って、その日にぺたぺたと貼り、その日の夜に手に持ってブンドドまで行くのも不可能ではありません。飛んでいる状態を手に持ちながら妄想するのは飛行機模型の楽しみでもあると思っています。

▲表面も綺麗。羽布張りの表現も模型らしいモールドで強調しており、翼にアクセントを与えています

 1000円でお釣りがくるハセガワの1/72のP-40N ウォーホークは今夜あなたを素敵なフライトに連れて行ってくれる模型だと思います。脚を閉じ、「あなたの頭の中の空の旅」をぜひお楽しみください。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)


プラモの塗装図はでっかい画面でカラーが吉。ファインモールドがいい仕事してます!

 TOP GUNの続編は残念ながら再び公開延期になってしまいましたが、模型業界では需要を見込んで展開されているF-14トムキャットのプラモが元気だぜ。選択肢としてはハセガワとかタミヤとかがメジャーですが、ファインモールドからも1/72のモデルが発売されています。

▲公式の完成見本写真。かっこいー!

 で、いま同社のピチピチの新製品なのが「1/72 F-14Aトムキャット“トップガン”」という仕様で、アメリカ海軍戦闘機隊の戦技向上を目的として編成された戦技教育部隊(トップガン)に所属する機体のカラーリング2種から自分で選んで塗装しよう、というもの。

 MiGっぽいスプリッターパターンの迷彩か、グレーのツートン(タッチアップ痕と迷彩が混在しているように見える)が選べるのですが、説明書はモノクロ印刷。ファインモールドの製品ページに行ったら……なんと高解像度のフルカラー塗装図が用意されてるじゃありませんか!実際にリンク先で見てください。

▲こちらも同社ウェブサイトより。

 先日紹介したBANDAI SPIRITSのメカコレ/ビークルコレクションしかり、組み立てや塗装の指示は大きければ大きいほど見やすいですし、とくにカラーリングについてはカラーで見たほうが間違えない&イメージをつかみやすいのがいいのです。

 昨今ではカラーの説明書も増えてきましたが、各メーカーがこうして「PCやタブレットのでかい画面で見られること」のアドバンテージを理解して、いろいろなデータを提供しているという流れは歓迎すべきことだと思います。みなさんも「オンラインにあるプラモ資源」を発見したらタレコミをしてくださいね!

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

ガンプラを時短で楽しく全塗装!/【実践!!水性ホビーカラーでランナー塗装の段】

▲HGUC No.200の1/144 百式。こちらも今回ご紹介するランナー塗装。製作者の小林氏のメタリック塗装がとても素敵

 

 メカトロウィーゴの生みの親、モデリズムの小林和史氏によるガンプラの「#時短プラモ」。第2回目はこの製作方法の大きなポイント「ランナー塗装」にいきます。

 フミテシ 小林さん、今回もよろしくお願いします。遂にランナー塗装に突入です!

 小林 こんにちは。自分の好みの色に塗れる楽しい時間の始まりですね。

 ■前回の#時短プラモを振り返ろう!

 1/思い切って、一度ヤスリがけをやめる

 2/塗装後のゲート処理を少なくするために、予めランナーのゲートを数カ所カットしておく。

▲前回の記事のポイントがこちら。パーツを支えるゲートを1箇所残してカットしてしまい、塗装後のゲート処理箇所を予め少なくしておきます
▲こちらは今回の記事でご紹介する「ランナー塗装」の準備方法をご紹介

 ■早速ランナー塗装にチャレンジ!塗料は水性ホビーカラーを使うよ

▲GSIクレオスの新水性ホビーカラー。エアブラシでの塗り心地はラッカー塗料とほとんど変わりません。専用のうすめ液で薄めないと本来の性能を発揮できません。水は筆などを洗う時のみにしてください。この写真の色を使っていきます
▲塗るガンプラはこちらHGAC ウイングガンダム

 「匂いがすくなく塗りやすい」「日本の模型シーンにあったカラーセレクト」。この2点を満たしている塗料を待っていましたが、リニューアルした水性ホビーカラーがまさにそれを実現してくれました!ランナー塗装も水性ホビーカラーでバッチリ!塗膜も十分強く、アクリル塗料ならではの隠蔽力の強さも魅力です。お部屋に強烈な匂いが残らず、ガンプラの塗装を楽しめますよ。

▲こんなスターターセットもあるのでこちらから始めるのもありです
▲ブルーはインディブルーで。水性ホビーカラーは元々そのまま筆塗りができる濃度で、少し薄め。希釈は1:1よりも、少し濃いめで塗料1に対して、うすめ液0.5くらいだと塗料が弾かれることも少ないと思います
▲このような入り組んだ部分は、様々な方向から塗料を当ててしっかりと色を乗せます。周りのランナーによってパーツが隠れてしまう部分は、邪魔な部分のランナーをカットしてより塗料が当たるようにします
▲ランナー塗装の良いところは、持ち手を大量に準備しなくて良いこと。かなりの時短になります
▲ランナーが塗り終わりました。白のランナーが無いですが、グランプリホワイトで塗っています。約2時間で塗装終わり。仕事から帰宅し、夜10時からスタート。ビール飲みながら楽しく作業できました。次の日の仕事に支障が出ないように睡眠はしっかりととりましょう

 ランナーの写真を見ても分かる通り、水性ホビーカラーがしっかりと発色しています。乾きにくい、色がいつまでも発色しない。そんな思い出は、もう過去のもの。もちろん全てにおいて、これまでの塗料を上回っているわけでは無いですが、確実に弱点であった部分は改善されています。アクリジョンはこちらとは別物なので、今回は頭から切り離してください。これでランナー塗装は終了です。

■今回の小林さんの #時短プラモ 紹介「HGUC 百式」

 フミテシ 今回お貸しいただいた「HGUC 百式」なのですが、オリジンガンダムを経て、ランナー塗装で変更した点とかはあるんでしょうか?

 小林 同じ方法で塗装していますが、オリジンガンダムを作った際にヒジ関節のパーティングライン(成型する際に、金型と金型の間の部分に発生する薄いプラスチックの凸ライン)が意外と目立つと気づいたので、一部のパーツは切り離してヤスリがけしました。あと背中やヒザ裏のパーティングラインも。傷が目立たないように丁寧に。でも全面にはかけてないです

 フミテシ 切り離すパーツも少ないから製作時間に大幅に食い込むこともなさそうですね。そして全面にヤスリを当ててないので、傷の無い綺麗なプラ面にゴールドが乗っているからすごく綺麗ですね。

▲使用した塗料はGSIクレオスの「GXブルーゴールド」。金のランナー塗装は1時間10分ほどで終わったとのこと

小林 百式は色数が少ないのと、今回デカールを貼ってないので、今のところ僕が作ったガンプラでも最短で完成してます。

▲最近は赤系、青系と金のバリエーションも豊富。性能も非常に上がっており輝度も高い物が多いです。お好みの金を見つけてみよう!
▲ゲートを数カ所カットしているので、ランナーからパーツが外れてしまうこともあります。そんな時は個別で持ち手に固定。大きな目玉クリップはランナーを安定して固定できるのでオススメ
▲小林氏はこの百式を毎日ちょこちょこ製作して6日間、計13時間半で完成。まとまった時間が取れればワンデイモデリングも夢じゃ無いですが、小林氏のようにワンウィークモデリングの方が現実的ですね

次回は多分多くの人が気になっている「パーツのカット」をピックアップ。ゲート部分にはもちろん塗料が乗っていません。カット跡はどのように見えるのか?次回もお楽しみに。

小林 和史/モデリズム

模型誌で活躍後、3DCG製作の仕事を開始。オリジナル企画「メカトロ中部」を展開し、デザインとその立体化を手がける。「メカトロウィーゴ」は複数のメーカーから製品化されるほど愛されるキャラクターに!玩具の商品原型やアニメ用3DCGモデリングも製作。ご依頼お待ちしております。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

マシーナリーとも子、「プラモができるまで」のTV番組を見て考える。

 みんな『ザ・メイキング』って知ってる? サイエンスチャンネルが過去放送してたいろんな「モノができるまで」を14分くらいで追うテレビ番組なんだけど、サイエンスチャンネル公式YouTubeにものすごい数がアップロードされてて無限に見れるんだよ。

 その数、300超。300超!? 多すぎるだろ。

 この動画群がめちゃめちゃおもしろくて本当に永久に見れるんですね。だんだんカマボコとかまんじゅうがベルトコンベアで無抵抗に運ばれてる様子がかわいく見えてくるほど。「全自動皮むき機」とか単機能を極められたマシーンの数々にキュンキュン来てしまいますのよ。プラモデル製作のお供に垂れ流しておくのにも最適なのでみなさんもあらゆる商品が作られていくのを眺めながらプラモデル製作に勤しんでみてはいかがでしょうか。さ~てじゃあ今日はどれを見ようかな……。

 「ボウリングの球ができるまで」、前に一度見たことあるけどめちゃめちゃおもしろいんだよな……。もう一度見ちゃおうかな……。「しょう油ができるまで」も捨てがたいな。これにしようかな……。……ん?

 え!? あるじゃん!!! 「プラモデルができるまで」あるじゃん!? マジか!!! 全然気づかなかったいままで……。

 ウワーッ! わかる!! いままで「ポテトチップができるまで」とか見ても「どこのメーカーだろう……全然わからないな……」ってなってたのにプラモデルは普段から作ってるから動画開始2秒で「ハセガワやんけ!!!!」ってわかる!! ハセガワじゃん。

 おもしろいのはほかの動画だといきなり「まずは冷凍された肉を切るよ」とか「鉄板をプレスするよ」から入るのにプラモデルだと「プラモデルの企画」から始まるんだよね。別に「スナック菓子」だって製品化されるときの企画がいろいろ練られてるはずなのに。

 で、金型製作についても結構時間を割くんだよ! へぇ~! 

 いやおもしろい。だってほかの動画にだって金型っていくらでも出てくるんだよ。カマボコの金型だって出てくるし車とかバイクのプレス用の型だって出てくる。でもそれらの動画だと「ここにあらかじめ作っておいた金型がありまして……」って感じで出てくるの。「金型はどうやって作られるのか」ってやらないのよ。

 で、肝心の「パーツの成形」については結構あっさりめに「ほら、プラモデルのパーツができたでしょう?」って感じでさらっと触れて終わるの! 食べ物とかの動画だといちばんネットリと執拗にやるところをパパッと終わらせちゃうのよ。「プラモができるまで」のどこにスポットライトを当てるのか、って考えるとおもしろくない?

 カマボコにとってはあくまで魚のすりみがどう作られてるのかが大事であって、金型とかマジでそんなに重要じゃないんだけどプラモデルだと逆! プラスチックがどう成形されるかはそこまで大事じゃなくて、むしろどんなふうに金型を作るのかが大事! ってのが動画の尺で伝わってくるんだよなぁ~。おもしろい。改めてプラモデルってちょっと変わった製品だよなぁ~。不思議だよなぁ~って思ったよ。

 ほかにもデカールや説明書をIllustratorでチマチマ作ってるシーンとか印刷機から箱がぽこぽこ折られて出てくるシーンとか見どころたっぷりなので見てみるといいですよ。見ましょう。

マシーナリーとも子

殺人サイボーグVTuber。池袋晶葉ちゃんを世に広めることと人類を滅亡させることを目標に日々動画投稿やコラム執筆などを手がける。お仕事募集中。

時代が作るプラモの風景は。/フィギュアが繋ぐ虚構と現実

 RGという1/144サイズのガンプラには同スケールのフィギュアがついているんです。このフィギュアすごい精密に作られていて、塗り分ける気も起きないくらい小さいです。私は諦めてそのままにしています。ごめんなさい。

 プラモデルにおいて、人のフィギュアは情景を作り出したり、リアルさを増したりさせるという機能があります。それに加えて、人のフィギュアには一緒に並ぶモノのサイズ感をわかりやすくするという機能があります。ガンプラの横に人のフィギュアを置くことで実際にガンダムがそのスケールで存在した時の巨大さが伝わってくるっていうことなんですね。ただガンダムは巨大すぎるので足元に人のフィギュアを置いても、サイズ感がわかりにくいんですよねー。

▲写真はRGストライクガンダムです

 他に1/144のプラモデルはないかなと思って探したら、以前作ったsweetの零戦があったので一緒に並べてみました。小さいなーと思いながらも塗装したりして結構頑張って作ったやつです。零戦はガンダムと違ってそんなに巨大でもないですし、ガラス張りのコクピットがあります。なので、近くに置くとなんとなく人が乗り込む様子が想像できますね。その後ろにガンダムを置いてみると、人から零戦へ、そしてガンダムへと目線が移動するのでさっきよりはサイズ感が分かりやすくなります。

 人って自分も含めて身近にいっぱいいるので、人のフィギュアがあったらどんなものでもサイズ感がわかるようになるかと思ってたんですが、そうでもないんですね。あまりにもデカイものだと人間を置いてもサイズ感がわかるようにはならない。クッションとして間に何かを挟むことでようやくサイズ感がわかりやすくなる。海からゴジラがやってきて人が逃げ惑う姿が出てきても大きさが掴みづらいですが街中に出てくるとビルや家との対比で巨大な怪獣なんだということが伝わってくる。そんな感じですかね。

 こうやって同じスケールで並べてみると、ガンダムと零戦と人が生み出す光景というのは「アミューズメントパークに来たら零戦とガンダムが飾ってあった」というストーリーとしても見ることができませんか?

 もちろんガンダムは創作上の兵器、零戦も当時は実際の兵器ですから、汚しを加えたり、ジオラマを作って人のフィギュアと並べれば、戦場の情景を作り出すことができます。しかし、お台場に実寸大のガンダムが出現し、国立科学博物館に零戦が展示されるようになった今では、それ以外に展示物としてのガンダム、展示物としての零戦という見方が生まれました。実際にそれらを合わせた展示はないかもしれませんが、そういうものがあっても不思議ではないという時代の雰囲気が、戦争の情景とはまた違うリアルな光景を見せてくれるのです。

 時代が、プラモデルの新たな情景を作り出してくれました。これから色々なことが起こり時代が移り変わっていけば、私たちのモノの見方も変わっていくと思います。その度に今まで作ったプラモデルやこれから作るプラモデルに新たな情景が生まれる。それは別に頑張ってジオラマを作り込まなくても見えてくるものかもしれません。そう思うと、いろんな種類のプラモデルを作ってみたくなりませんか?

もとぴ

東京在住。世界を理解するための糸口としてプラモデルを制作中。趣味の記録や思索のためにnoteも書いています。

タミヤの成型色とティータイム。プラモの下に一枚敷けば、世界が変わる。

 成型色っていろんな色がありますが、私が作るたびにうちの妻が「美味しそう」というのがこの色。モナカ色です。

 そう言われてしまうとそう見えてしまうこの成型色。砂漠の雰囲気を存分に感じさせますが、人によっては食べ物に見えるということで、フィンガーチョコの金色の包み紙をきれいに剥いて、それを広げて兵士の下に滑らせると……。

 おじさんのお菓子爆誕。金色の魔法の絨毯にも見えなくもない。東京は下町住まいなら浅草の人形焼きを思い浮かべる方もいるような世界観。

 そのまま行きましょう。

 紙の表情をコントロールしてみると生まれるのは躍動感。ていうかこの包み紙、程よく固定されるのと光を反射してくれるので模型がかなりきれいに撮れます。

 ベストマッチはこれですね。この前作ったドイツ軍のサイドカー 。黄金色の荒地を突っ走るヴィネットが誕生しました。

 モナカ色の成型色ってグレーやオリーブグリーンと違って、かっこよさよりも柔らかさが際立つなーと思ってましたが、こうやって遊んでみると一番戦いから遠い優しい色なのかもしれないです。

 お菓子の包み紙や包装紙、いつも行くお店からのダイレクトメール、映画のチラシなど、日常私たちの周りには綺麗な紙、面白い紙がたくさん溢れていますのでスッと模型の下に滑らせるだけでいつもと違う姿を見ることができるかもしれません。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

1/35鉄筋コンクリートを作ろう! /リアリティの在り処とは

 この世で一番相性の良い組み合わせとは何か?カレーとライス?サイモン&ガーファンクル?エリみほ?いいえ、それは鉄筋とコンクリートです。鉄筋は引っ張りに強く、圧縮に弱い材料。逆にコンクリートは引っ張りに弱く、圧縮に強い材料。そんな2つの材料の長所と短所が補い合って1つの強固な材料、鉄筋コンクリートとなります。1+1で200だ!10倍だぞ10倍!…ってプラモの話はどうしたって?ご心配なく、今回は本職が建築関係のハイパーアジアが丁寧丁寧丁寧に1/35ミニチュア鉄筋コンクリートを作成してジオラマのダシにしようという魂胆です。では構えてください、ご安全に!!

 ▲ダイソーで買ってきた速硬セメントとステンの針金0.28mm納品状況

 今回は、この2つの材料を使ってRC造(鉄筋コンクリート造りの建物)の壁やスラブ(床&天井)をイメージして平板を作っていくことにします。1/1のコンクリ厚さとしては250mmを想定して、それを1/35にすると、250/35=83.33…約9mm。大体1cmぐらいでコンクリ平板のミニチュアを作ってやればそれっぽくなるはず!(今回私も初挑戦)

 まず鉄筋についてですが、壁やスラブで使う鉄筋はだいたい10,13,16mm径のものを組み合わせて使用しますので、1/35換算で0.28,0.37,0.46mmの針金が適当なサイズです。今回仕入れた0.28mmの針金は1/35スケールとすると10mmの鉄筋相当になるのでちょうど良さそう。余談ですが、よくよく調べると、建築ミニチュア用で1/24の本物の鉄筋が(有)金吾製作所さんで売られているぞ。すごい。

▲まず、針金をペンチなどで適当な長さに切って束ねて、指でしごきます。

 しごいたところで完全にまっすぐにはなりませんが、クセがある程度取れてまっすぐになります。

 配筋ですが、実際には縦横の格子状に200mm程度のピッチで鉄筋を配置することが多いので、1/35スケールとすると5.7mmのピッチで針金を置いておけば結構それっぽくなるはず。まず、ラップを敷いてその上に針金を配置しましょう。本当はピンコロ(コンクリートで出来た小さな立方体)等で鉄筋を浮かせてカブリ(鉄筋とコンクリートの外面までの空間)を取ったり、さらにスペーサーをかまして2重にしないといけないのですが、サイズ的に厳しいのでなかったことにします。

▲う~ん。歪んだ針金で5.7mmピッチは無理。まぁ、仕事じゃないのでこれでよし!!

 次に、コンクリート打設です。コンクリートとは実際には水、セメント、砂(細骨材)、砕石(粗骨材)で構成された混合物なのですが、ミニチュアなので、とりあえず水とセメントだけあればOK~。

▲「少しずつ水を入れたら、かき混ぜる」を繰り返して、水っぽくならないように練りましょう。

 お好み焼きの生地ぐらいの硬さがベスト。ちょっとでも水が多いとすぐもんじゃ焼きのようにトロトロになってしまうので注意!

▲生コン打設していきます。スランプ(コンクリの硬さ・流動性)、ヨシ!
▲竹串などで平たく伸ばしていきます。私が左官職人こね太郎です。
▲本職の私としたことが、工事看板を忘れていましたよ。なお、実際の工事現場ではアプリを使った看板のデジタル化がだいぶ進んでいますね。
▲適当に割っていきましょう。セイッ!

 コンクリートは本来2~3週間程度養生することで充分な強度を得ますが、24時間であればかなり柔らかいです。手ですぐパキっと折れます。

▲山折りにした方を下にして、鉄用のニッパーで適当に針金を切っていきます。

 ちょっと失敗。裏返した方はやっぱり針金が露出してしまいました。1度、コンクリを5mm程度に薄く伸ばしてから針金を置いて、また5mmコンクリを被せてやったほうが良かったかもしれません。

▲何回かコンクリを折り曲げて、針金を切断しまくったものがこちら。

 コンクリートなどの1部を破壊することを斫り(ハツリ)工事といいます。おや?意外といい感じ?

▲コンクリを置くベースを、タミヤの情景テクスチャーペイント(砂 ライトサンド)で作ります。
▲テクスチャーペイントが硬化したら、木工用ボンドをたっぷり置いてやります。ちなみに私は白子とエイヒレが大好きです。
▲コンクリガラ(ガラ:工事現場のゴミの事)をむにゅっと置く!ボンドがはみ出しても気にしない!
▲はみだしたボンドは周りにうすーく伸ばして……
▲作成中に出たコンクリのカスをぶちかます!
▲鉄筋コンクリートの鉄筋の表面はある程度サビています。GSIクレオスのウェザリングカラー、ステインブラウンで針金を塗りましょう。
▲1/35のミリタリーミニチュアを置いて完成!!
▲スケール感はバッチリじゃないですか!?

 余談ですが、実は以前作ったアメリカ歩兵機関銃チームセットのうち1人だけは踊らせるポーズがつけられず、グレてしまったのでした。イカツイ表情なんだけど、スマホを持たせると半笑いに見えるので怖いよ。人間の笑顔とは動物における威嚇だという仮説は有名な話。

 ホントはコンクリの中間から鉄筋が出ていれば更に本物っぽいのですが、ある程度の「リアリティ」が醸し出されているので満足しました。実際の鉄筋コンクリートはこのような壊れ方をしないでしょうし、鉄筋の形状、破砕されたコンクリートの粒度も本物とは全然違います。

 ただ、「模型」はそれそのものが「うそ」でありますので、どこまで再現してもいたちごっこです。超~リアルに軍服を塗装したところで、生地を構成する繊維の1本1本が塗装できるわけではありません。模型が本物とまったく同じという意味での「リアル」になることはないのです。ただ、リアルがどうなっているかを知っていることで、リアリティを高めていくことはできます。

 もっと言えば、リアルを知っているからこそ、どこまで作り込めばリアリティが付与されるのか、あえてリアリティをつけないのか等の選択肢が広がります。知っておいて損なことというのは一つもないと断言します。いや、マンガとアニメのネタバレだけは勘弁してください。

 ちょっと話がそれてしまいましたが、100均でセメントと針金を買ってくれば鉄筋コンクリートのジオラマが作れるよという今回の記事。最近の100均はすごいですね。いろんなものが揃います。針金を入れるとそれなりに手間がかかることが判明しましたので、セメントだけなら超簡単です。効果抜群のジオラマになりますよ。是非お試しあれ。

 また、私は建築関係者なので思い付きでこのようなことが出来ましたが、服飾関係者や飲食関係者など色々な業種のモデラーさんが、本職のアイデアを模型に落とし込んだものを作って紹介して頂ける世の中になれば、模型の世界はもっと豊かになると思います。ただの趣味人の私が言うのもアレですが、模型の世界を豊かにするのはプロモデラーだけではありません。ツイッターでもブログでも何でもいい、モデラーはいいアイデアを欲しています。お待ちしてます!

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

ガンプラを時短で楽しく全塗装!/【準備の段】

▲今回はモデリズムの小林和史氏(@kobax27)をゲストにお出迎えし、彼が楽しんでいる#時短プラモのスタイルをご紹介していきます。週末や仕事終わりの時間に組みこめて、かつ全塗装まで楽しめます


■僕にも楽しめそう!!ワクワクするガンプラ製作スタイル

 モデリズム名義で代表作「メカトロウィーゴ」の生みの親として知られている小林和史氏。小林氏はかつてホビージャパン誌上で『機動警察パトレイバー』などの素晴らしい作例を作り、そしてホビージャパンのモデラー卒業後は3DCG製作の仕事に就き『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』などに携わるなどしてホビーの中心で活動してきました。

 その彼がTwitter上で「#時短プラモ」「#モデリズムのガンプラ」と題し、誰もが「これは楽しそうだ!」と思えるガンプラ製作法を発表。私・フミテシも「おお……この方法でガンプラ作ってみたい!」となり、早速DMを送ってみた!小林氏にこのガンプラ製作方法を聞きながらサラリーマン・フミテシも仕事終わりの帰宅後の時間で自分が満足できるガンプラ製作にチャレンジしてみます!!

▲「HG 1/144 RX-78-02 ガンダム(GUNDAM THE ORIGIN版)」。全塗装でガンプラをいかに効率よく楽しむかを小林さんが考えて製作した物。この方法を見て本当にガンプラが塗りたくなりました

フミテシ いつもお世話になっております。突然のご連絡申し訳ございません。小林さんのガンプラ製作方法がすごく楽しそうで、ぜひnippperでご紹介させてください!

小林 こんにちは~。怒涛の更新お疲れさまです!なんと!!オリジンガンダムのことですか?

フミテシ はい。製作方法がとてもすてきで、ぜひnippperでもご紹介させていただきながら、僕もガンプラを塗りたいです!

小林 承知しました!この方法なのですが「とにかく新鮮なガンプラ」がいいです。HGUC初期と今では全然キット構成が違ってます。最新のものの方がこの方法を受け入れてくれる印象です。

▲小林氏のアイディアが盛り込まれたガンプラ。この完成度のガンプラが4日くらいでできちゃうんです。ドキドキしますね!製作法を見ながら、私も実際にやってみようと思います

■この製作スタイルにたどり着いた理由

小林 これまで模型誌などでもガンプラに真剣に取り組んできたこともあり、どうしても「塗装した物」が欲しくなる時があります。

フミテシ 僕もそういう時があります。そして色々考えていると楽しくなってくるのですが、その分この工程面倒いな~なんて思ったりして、手が止まってしまうことがよくあるんです……。

▲パーツ精度をあげる方法としてガンプラでよく行われるヤスリがけ。ほぼ全パーツにやすりを当て、パーツがひけているところやカドを尖らせたいところをしっかりと磨きます。小林氏は一度これをやめてみることにしました

小林 そこで私は、一度ヤスリがけをやめてみよう!と思ったんです。パーツ全面を磨いてぴんぴんにしたものはもちろん見映えもグッと良くなるのですが、今のガンプラはそのまま組むだけでもとてもカッコいい。だったらランナーのまま好みの色で塗装して、パーツを切り離して組み上げるだけでもかなり満足出来るのではと思ったんです。それなら相当早く作れるぞ!と。

▲ヤスリがけをほとんどせずに全塗装してもここまでシャープ!フミテシ はこのガンダムを見て、ほっとしました。パーツに身を委ね、またガンプラが楽しめると!

フミテシ 定番工作とまで言われている整面(ヤスリなどでパーツ形状を整える)。そういう感じに言われるとやらなきゃいけないのか……なんて思ってしまいます。やっただけの効果もやっぱり脳内にありますので。

小林 でも実際に小学生のころとかはランナーのまま塗って組み上げてガンプラを楽しんでいました。最近のキットを未塗装で組んだ際、パーティングライン(成型時に金型と金型の合わさるとこにうっすらはみ出すプラスチックによりできる凸ライン)やゲート位置がなるべく目立たない様に配慮されている物も少なくないと感じていたので、とにかく一回このまま塗ってみよう!と。

■ランナーは持ち手になる。そしてガンプラは成型色でしっかりと分かれている!

小林 ヤスリがけの他に塗装の時にたくさんの持ち手(塗装時にパーツをしっかり保持するもの。専用の商品も多数発売されている)にパーツを固定したりしますよね。これが増えるほど当然塗装にかかる時間も増える訳で。

▲串や棒、またはこのように棒にクリップがついた専用工具として売っている持ち手を使ってガンプラを塗装します。1パーツずつ固定していくとすごい数になります

フミテシ 全パーツ固定し終わったとき時計をみると「もうこんな時間!今日は塗装できないな〜。明日やろう」ってことがよくありました……

小林 でもランナーのまま塗ると大幅に時短可能でした!ガンプラは成型色で設定のカラーがほぼ再現されています。これを活かすんですね。青や黄色、赤など多色成型の1枚ランナーはそれぞれの色毎にカットして小分けにします

▲小林:こんな風にパーツがランナーに着いたまま、お気に入りの色で塗装します。白はガイアノーツの「バーチャロンカラー ウォームホワイト」、ガイアノーツの「メカトロウィーゴカラー」も使用して塗りました

■実践!ランナー塗装に適した準備をしよう

フミテシ 僕は今回この「HGAC ウイングガンダム」でやってみようと思います。サンドロックも発売中だし10月にはヘビーアームズも出るので、この方法で『ガンダムW』のガンダム5機を揃えたいですね。ひとりオペレーションメテオっす!!

小林 おおー、ウイングガンダム!これはこの方法に良さそうですね。

▲色ごとにこのようにパーツが分かれています。この構成をそのまま使わない手はない!

小林 ランナー塗装をしていて気が付いたことがありました。予めランナーのゲートを最小限にカットしておく事です。そうすると塗装後パーツをカットした際に必要になるゲート跡のリタッチ箇所が減らせます。

▲3箇所のゲートでパーツが支えられているので2箇所カットしてしまいましょう
▲こんな感じでゲートを1箇所だけ残しました

フミテシ パチパチっと。細いゲートだけで支えられているパーツは、ゲートを切りすぎるとランナーから外れちゃいそうなので、そのままで行きます。パチパチと。お家に帰宅して約1時間で準備が終わりました。この状態からいきなり塗装に行けるんですね!楽しみ〜。

小林 自分好みの色にするのはやっぱり楽しいですからね。どんどん塗っていきましょう!

 「#モデリズムのガンプラ」の登場でフミテシの心を再び動かしたガンプラ。仕事帰りの疲れた体を作業机へと向かわせてくれるワクワク感。それは本当にフミテシの意思なのか?そして次は塗料を片手にランナーと対峙する……
 次回「水性塗料でランナー塗装!」。ご期待ください。

小林 和史/モデリズム

模型誌で活躍後、3DCG製作の仕事を開始。オリジナル企画「メカトロ中部」を展開し、デザインとその立体化を手がける。「メカトロウィーゴ」は複数のメーカーから製品化されるほど愛されるキャラクターに!玩具の商品原型やアニメ用3DCGモデリングも製作。ご依頼お待ちしております。

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

ふたつの戦闘機プラモで楽しむ「ユニフォーム交換」の儀式。

 nippperを読んでいるとアメリカの艦上戦闘機も作ってみたくなったので仕事帰りに模型屋さんに駆け込みました。たまたま在庫があったF6Fヘルキャットを買い、ついでに久しぶりにゼロ戦も作るか~という気分になったので同じ棚にあったゼロ戦も買い、F6Fヘルキャットとゼロ戦を同時に作ってみることにしました。どちらもハセガワの1/72キットです。

 言うまでもありませんが、かつて日本とアメリカは戦争をしました。日本は広大な地域をカバーする長い航続力と優れた格闘戦能力をもつゼロ戦を開発し、他国の戦闘機を圧倒しました。アメリカも負けてはおらず、ヘルキャットなどゼロ戦に対抗しうる戦闘機を次々と開発し、戦闘機個々の能力ではなく集団戦で勝つ方法を模索しました。しだいに日本は劣勢になり、結果は誰もが知るところです。今回は、そんなかつての敵同士を同時に作っていくことになります。

▲左がゼロ戦、右がヘルキャット

 戦闘機プラモのセオリー通り、まずコックピットから組み立てる手順になっていますが、早くもここで両機の違いを目の当たりにすることになりました。ヘルキャットのコックピット、めちゃくちゃデカい。

▲上がヘルキャット、下がゼロ戦

 胴体もヘルキャットの胴体がゼロ戦の倍以上くらいの太さで、「同じスケールだよな…?」と思いました。こんなデカい胴体の戦闘機が飛ぶのか…?!

▲エンジン。左がゼロ戦、右がヘルキャット。

 エンジンを組み立てていても気筒の数と直径の違いを目の当たりにします。頑丈で重量感のある機体をデカいエンジンで飛ばすヘルキャットと、華奢で軽量な機体を繊細なエンジンで飛ばすゼロ戦。設計思想や工業力の違いを、たった数パーツのパーツから感じることができます。

 ハセガワの1/72プラモデルはサクサクと組み立てることができるので、2日程度で二機の組み立てが終わりました。こう並べてみても、両機の違いは一目瞭然です。「自分が乗るとしたらどっちだろう」と考えてしまいました。

 組み立てたプラモデルで模擬空中戦をして遊んでいると、そう遠くない昔にこのような死闘が繰り広げられ、多くのパイロットや機体が帰ってこなかったことが思い起こされて、このまま完成させてもただの戦争の再現になってしまうな、と思いました。

 そこで、塗装とデカールを入れ替えてみました。

 スポーツにおけるユニフォーム交換のように塗装とデカールを入れ替えることで、プラモデルくらいはノーサイドにしたいな、と思ったのです。


 史実でも墜落したり不時着したりした機体を鹵獲(ろかく)して、自軍のペイントを施した上で解析したり戦力に算入したりした例はありますが、今回はそんな物々しい理由ではなく、単純な思い付きです。

 かつて死闘を繰り広げられた戦闘機同士がユニフォーム交換のように塗装を交換し、翼を並べて飛ぶ姿を眺められるのも、自分で組み立てて塗装してデカールを貼れるプラモデルならではです。敵同士だったプラモデルを同時に組み立てることで両者の違いや歴史に思いを馳せることができました。最後まで史実に忠実に作るもよし、塗装を変えてノーサイドにするもよし。

 二つ以上のプラモデルを同時に組み立てることで、色々と見えてくるものがありました。プラモデルが同じスケールでラインナップされている意味はこんなところにもあるのかもしれません。

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

バンダイのメカコレ/ビークルモデルの説明書が小さくて読めないオレたちは……。

 小さくて早くて安くて旨い。BANDAI SPIRITSのビークルモデルシリーズ(スター・ウォーズに登場するメカを手のひらサイズで立体化したもの)メカコレシリーズ(ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマト、ドラゴンボール、仮面ライダー、マクロスなどのメカを手のひらサイズで立体化したもの)は最高です。

 ほとんどのアイテムが数百円で手に入るうえ、ぎゅぎゅっと凝縮されたメカをワンダーな分割で楽しめますし、ちょっとだけ色を入れたり、スミ入れしたり、シールを貼ったりと楽しみ方も自由自在。夕食のあとにサラッと組んでよし、気合を入れて土日にじっくり取り組むも良しの名作揃い。

 で、今日買ってきたのはYウイング。スター・ウォーズに出てくる超かっこいい戦闘機ですが、発売当初はあまりの人気で品薄続きだったため手に入れられませんでした。4年越しに買ったぜ。ゲヘヘ。

▲ウォウウォウ。小さいランナーとシールがお出ましだ。
▲パーツ数は多くないけど、ディテールがすごいんだ。
▲塗ろうかな、シール貼ろうかな、スミ入れも楽しそうだな!
▲こんなにディテール細かいんだもん、参っちゃうねこりゃ。

 で、このプラモの説明書はどうなっとるのかと言いますと、低価格を実現するためにパッケージの蓋の裏に印刷されてるんですよね。箱開けて、裏返して、それを見ながらプラモを作る。シンプルイズベストだぜ……。

▲箱の中の字は小さすぎて読めない!!!!!!!!

 突然心のなかの渡辺謙が発動してしまいましたが、このギチギチぶり、ビビりませんか。デスクライトでバキバキに明るい状態ならまあなんとかなるけど、ダイニングテーブルだと老眼来てなくてもけっこう厳しいよこれ。

▲紙の繊維が見えるくらいのマクロ撮影でコレよ。
▲シールの貼り指示は箱の外!印刷の網点が見える!!!
▲同シリーズのミレニアム・ファルコン。どこが何なのか。

 ここで菊川怜がさっそうとハズキルーペとかヘッドルーペとかを持ってきてくれれば言うことなしなのですが、俺はまだ老眼じゃない!眼鏡屋さんに「まだ早い」って言われたもん!

……じつはですね、BANDAI SPIRITSさんもそこんところは分かってるんです。なんとビークルモデルとメカコレについては、同社のウェブサイトの商品情報のところに行くと、ちゃんと説明書のPDFが置いてあります。これ、けっこう知らない人がいるのでマジでコレ読んだらみんなに教えてあげてください。RTですよRT。

https://bandai-hobby.net/sw/jp/products/vm.html

▲右下に「シールの貼りかたと組立説明書をダウンロード」って書いてあるリンクがあります。
▲iPadにでっかいPDFを表示しながら組み立て。見える!私にも敵が見えるぞ!(違

 ということで、安くて早くて小さくて旨いプラモの説明書は、ちゃんとネットにでかいやつがあるから安心してくれ、という話でした。みなさんもITを駆使して楽チンしていきましょう。ではでは。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

カスタマイズ・ユア・塗料ビン!カッコイイ自慢の帽子を見せてくれ。

 結論から申し上げますと、タミヤアクリルミニのブラックに金が優勝。同じくタミヤアクリルミニからオリーブドラブに銀を使ったものが準優勝となります。いやー、まるで蒸気機関車をイメージさせるような黒地に金はお見事です。側面にも金を擦り付けているアイデアが高得点に繋がったのかもしれません。優勝おめでとうございます。

 本記事も、プラモ作らず、すんません。何の話だ。ミハイルです。宜しくお願い致します。今日はnippper記事でお馴染みのアイテム、『マッキーペイントマーカー』の金と銀の2本を使って遊んでみましょう。ペイントマーカーは皆持っているかな?最近は文房具売り場だけではなく、おもちゃ売り場にも進出しているそうですね。あと何か、キッチンペーパー的なものもあるといいかもしれません。

 まずマッキーペイントマーカーをガガガッとよく振って、キッチンペーパーにコンコンと出して

 彫刻の入ったタミヤアクリルミニの蓋に軽く擦り付けてみましょう。

 ギラリとタミヤカラーのロゴが光を反射して浮かび上がります。

 えっ、これは何が面白いんですか、ですって?いやいや、結論を出すのはまだ早過ぎる。確かに俺があなたなら、そう感じるかもしれません。でも実際やってみたらコレが結構楽しかったんですよ。

 とりあえず金や銀が似合いそうだなって色を選んで遊んでみましょう。写真のダークイエローに銀は、うーんまぁそれなりかなと感じました。お勧めはダークトーンのミリタリー系の蓋です。

 皆さんご存じの通り、塗料瓶の蓋にはメーカーごとにロゴが彫刻されていたりします。

 お馴染みのタミヤアクリルミニです。ロゴマークのツインスターがカッコイイ。

 こちらはGSIクレオスからミスターカラー、水性ホビーカラーです。こちらもタミヤ同様、彫刻が施されているので用意してみました。タミヤと同じく、蓋の側面にはグリップを利かせるための溝がビッシリ。ありがとうございます。

 左からファレホ、ガイアノーツ、シタデルカラーさんです。これらの蓋には彫刻が無かったので今回は見学してもらいました。ガイアノーツの蓋は若干膨らんでいて指で触ると気持ちいい。

 先程のタミヤアクリルミニにペイントマーカーの銀を擦り付けてみました。どれどれ、すまないがそのカッコイイ帽子を見せておくれ。こうして見ると、今まで何気なく使っていた道具のディティールの良さに気づかされます。真ん中にタミヤのロゴマークと、SUPERB(= 素敵な、素晴らしい、見事な)の文字があり、囲むようにTAMIYA COLOR と FOR PROFESSIONAL FINISH との表記もあります。プロ用の仕上げ材って事なのかな。

 ちなみにGSIクレオスはこのようなシンプルなデザイン。真ん中にロゴが入り、その下にカタカナ文字でミスターホビーと、中々にシンプルにまとまっています。ミスターホビーを塗るときには、はみ出さないように綺麗に塗ってあげた方が良さそう。白やクリアーの蓋にも試してみましたが、やはりミリタリー系の塗料瓶が一番映えます。途中で気付いたのですが、どの蓋にも真ん中に小さな突起がプチっと付いていたのですが、何か理由があるんでしょうかね。

 タミヤのスカイブルー。ちょっと丁寧にペン先で直接塗り分けてみたりしても楽しいですよ。

 写真で全てをお伝えするのは難しいですが、実際にやってみるとギラリと反射するロゴが角度を変える度に表情を変えるので、短時間でプラモツールと戯れる方法としてはかなり満足感が高いです。蓋は基本的に単色ですので、今まで気付けなかった蓋の魅力に気付けるチャンスです。是非試してくださいね。きっと皆さん、塗料も模型と同じくらい好きだと思うので!では今回はここまで、バイバイ!

ミハイル

福島県出身 1990年生まれ 模型を楽しんでいます マスキングが苦手 下のリンクの『火星深青』でブログを執筆していますので、模型に興味がある方は是非見に来てください。

炭酸水で割って飲む!?「飲みプラ」で心と模型が大満足。

 言っちゃおう。飲みプラは最高だ。

▲模型を楽しむお供。あなたにもあると思います

 心地よい読書スタイルが「模型誌」と「あなた」をマリアージュ-続編。先日、最高の模型誌の読み方を紹介しましたが、今回は最高の模型の作り方の話です。

▲mat氏が大好きな模型誌を心地よく楽しむ過ごし方をご紹介です

 多くの方はその話の流れから想像できてしまうかもしれませんが、僕はお酒を飲みながら作る模型、「飲みプラ」と勝手に呼んでいますが、それが最高だと声を大にして言いたいです!!

▲パーツや工具の中心に鎮座する「お酒」。確かに真ん中の方がグラスを倒す危険はすく無いかも……

 ……と言いますか、飲まずに作った模型ってあったかな?というくらい、お酒と模型は切っても切れない関係にあります。

 月刊ホビージャパンのオラザク選手権という、国内最大の模型コンテストに応募して大賞をもらった「The GUNDAM」もそう、今製作しているGBWC(バンダイスピリッツが主催しているガンプラの世界大会)向けの作品もそう。(あれ?飲みプラはレギュレーション違反じゃないよね?)

▲オラザク選手権大賞「The GUNDAM」。気持ちよく模型に取り組める相棒(お酒)がこのガンダムを作り上げたと言っても過言では無いかもしれません

 僕のオススメは断然白ワインの炭酸水割です。海外生活中に覚えた飲み方です。安い白ワインを冷やして、ワイングラスに注いで、炭酸水で割る、それだけです。ワインと炭酸水の割合は5:5くらいですが、ワインそのままの時もあれば、ほとんど炭酸水の時もあります。

▲今日のワインはセブンイレブンで買った白ワイン。炭酸水はなるべく炭酸がきついものがオススメ

 冷えてないときは氷を使うときもあります。土曜で半分、日曜で残りの半分、もしくはその日の夕食に……って感じです。ワイングラスは前に作業中に割りそうになったので、キャンプ用の強化プラのグラスを使います。

 そんなんでちゃんと製作できるのか?できるんじゃない?(←テキトー)。パーツをよく床に落とすのは、歳のせい。アマゾンプライムのビデオに夢中になってしまい手が動かない、というのは面白すぎるビデオのせい。

 そんなこんなで、2時間かけて1パーツしか加工できないのは、それはトータルで飲みプラなんかやってるからかも。あ、しょっちゅうスジボリがよれてるのはウデのせいです。

▲でもね、ほんっと楽しいのよ

 週末の昼下がり、今日の家の仕事も、勉強も終えて、運動もすませて、今の季節(7月)なら少し風が涼しくなってきたころに、夕食までの数時間、好きなビデオを流して、冷えたおいしいワインを飲みながら、大好きな模型をゆっくりと自分のペースで作る。たまにTwitterなんかで仲間に話しかける。

 こんなにリラックスして楽しすぎる時間の過ごし方ってある?

 しかも物を作ったせいか、手を動かしたせいか、一日ちゃんとやり切ったと感じるよ、後悔なしだよ、ジョブス。どんなに忙しくっても、不安なことがあっても、この週末の数時間があれば全然やってけるよー。(←酔ってんの?)

▲もっと言っちゃうと、作ってなくても、飲みながら、組んだプラモを置いて、インストやボックスを見てるだけで楽しい

 あ、そうそう、一回ストロング系(凶悪ALC.9%)で飲みプラやったんですが、あれはきびしい、、

 のどごしが良く、ごくごく飲めちゃうので、するっと500mlを2本、どこで製作をやめたのか定かではなく、翌朝見たら作った覚えのないパーツがそこそこいい感じで仕上がっていました。これは本気でやばいと思いましたです。

▲赤ワインの炭酸水割りもありかもね。あなた自身の気持ちが良くなる飲み物で、模型の時間をさらに楽しいものにしてみて下さい

mat

1969年生まれ。模型ライフを綴ったブログmat modeling service運営 。製作から撮影まで、模型誌には載っていない80を超える独自How toを配信中。ホビージャパン誌 第22回オラザク選手権大賞ホルダー。

外に出よ!「散歩」があなたの模型をスマートにする!!

▲お外には模型のヒントが沢山!外に出ようぜ

 テレワーク時の軽めの運動として習慣になったお散歩。散歩は散歩脳と言う言葉があるくらい、ひらめきや考え事の整理が進むみたいです。そんな脳に良い散歩時に、いろんなところに目を向けてみると、模型へのたくさんのヒントに気がつくかもしれません!模型を見て模型を作るほかに、模型のヒントを見つけて模型を作るのもすごく楽しいです!

▲道端に謎の目標として、空き缶刺さってる時ありますよね。あれなんでしょね?最高のサビを見ることができます
▲長年愛用されているであろう、ちりとり。塗料ハゲ、サビ、傷。これ戦車ですね
▲農地は模型の教科書なのか!?ってくらい豊かさがあるので超たのしいです。
▲工事現場は夢の通り道。ウェザリングの出汁がダダ漏れなので、飲みに行きましょう
▲トラックのサビ。超かっこいい。塗装業をやってる義父のトラックにはペンキも跳ねてて、超イカス!そういう塗装で車作りたい!
▲ゴムパッドの色あせた感じなど、なるほど感満載!塗りたい!

……と、僕たち模型大好き人間にとっては、まさに散歩がフィールドワークになるんです!普通にあるものすべてが模型製作のタネ。健康にもなって模型も楽しくなっちゃう、プラ散歩。仕事の休憩時間など、自分の生活の取り入れやすいところに入れるとたのしいですよ!雨の多い今は、雨のヒントが盛り沢山!スマホと、あなたの目が捉えたもので、模型をさらにカッコ良くしちゃいましょう!

▲看板の文字のひび割れやちょっと変わった看板なども写メっとくとよいですよー

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。ブログ/フミテシログ(http://sidelovenext.jp/)

うまいモデラーが持っている「模型売り場に無いもの」の話。

 私もスケールモデルを作り出してそろそろ2年経つので最近はしれっと「モデラー」というときが増えましたが、モデラー本当に天才の集まりというか、しれっとやってることに上達の秘密や失敗しない仕掛けを持っています。しかも、当たり前に使っているツールが模型売り場に置かれていなかったりするからこれがまた本当に感心します。「ああ、この人たちは作ることに慣れているんだな」なんて。

 そんな「うまい人」がこぞって使っていることに気づいた道具。まず手に入れて欲しいと思うのは「木材」です。これをどういうわけか持っている人がチラホラ。しかもその人たちは軒並みプラモが上手い。使い方はこんな感じ。 

 作っているときに飛行機がいい感じに固定されます。ベタッと置けない模型の平らなところだけをサッと支えてくれる。

 さらに、はい。

 そうです。「なんとなく置く」のにも使える。これは地味に大きいですね。作業台に直置きだと指でそれに触れないといけませんが、この場合は木を持って動かしたり回転したりさせられます。塗装済みのものなどはこうしておくとうっかり乾燥前に触って指紋がつかなくなるというわけ。

 さらにここからはとっておき。複葉機の翼を重ねるときに最高にちょうど良い治具になります。これで複葉機は怖くない。

 そして最終形態はこちら。複葉機の張り線を貼る作業。複葉機を木材でリフトアップ。張り線を通しやすくするだけでなく、写真のように先端にクリップをつけてあげると重みで勝手にテンションがかかります。こうして見ると木材の持つ可能性の高さに驚きませんか? 私なんてわりと真剣に、模型売り場に木材が売られていないのはもったいないことだと思っています。

 他にもコロッと転がって無くしそうなパーツを置くのにも使えます。コックピットやキャノピーなどを置いてあげるといいでしょう。

 私がチラッと目で盗んで覚えた隠れ模型道具、これを使って私のような新米モデラーの方も一緒に「ああ、便利だ!」と驚いていきましょう!

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

プラモのパッケージ、上から見るか?横から見るか?

 プラモデルを買うとき、箱絵(天面)はもちろん見ますよね。かっこいい絵が乗ってて額に飾りたくなります。じゃあ、箱の横(側面)ってよく見ますか? プラモデルの説明とか写真とか、ミリタリーモデルなら歴史とかが書いてありますね。私は歴史についてはちょっと苦手意識があります。自慢じゃないですが世界史は赤点でした。だから、何年に配備とか、何年のなんちゃらの戦いとか言われてもピンときません(あんまりこんなこと書くと怒られそう)。なので模型の説明とか歴史とかあんまり読まずに箱絵の印象で買ったりします。ジャケ買いってやつですね。

 そんな私が「双発のプロペラ機ってかっこいいな~」と思って買った、タミヤのブリストルボーファイターMk.4夜間戦闘機。

 家に帰って、ふと”箱の横”を見てみると《模型要目》という説明書きがあります。よく読んでみるとこんな一文が書いてあるんです。

 ★成形色は黒、ボーファイターの精悍な姿を引き締める全面つや消し黒の塗装仕上げを手軽にお楽しみいただけます。

 箱の横が言っています。「パーツは黒で作っておいたから、そのままつや消しスプレー吹けばいいよ。黒いパーツを黒で塗装するような不毛な営みはしなくていいよ」
 そっか~しょうがないな~。箱の横がそこまで言うなら言われたとおりにするしかないな~。ホントはバリバリ全塗装しようと思ったけど…意地張ってもしょうがないしな~。
 なんだかだらしない奴だなと言われたくないので、機体色は箱の横に言われた通りにする代わりにそれ以外の部分はなるべく頑張ろうと思います。
 機体色以外はシタデルカラーで筆塗りしました。窓枠もマスキングテープを切り貼りして塗り分けます。デカールを貼ったらつや消しスプレーを吹いて完成です。

▲つまり、この黒はプラスチックの色そのままなのだ。

 私、これくらいの大きさのプラモデルは大体途中で飽きて投げ出すことが多いのですが、機体を塗らないと思うとすごく気が楽です。ランディングギア(着陸脚)やプロペラまわり、搭乗者やコクピットの部分塗装は筆塗りなら忙しくても少しづつ進められますし、このキットはデカールも少ないのでサクサク作れます。意外といい感じになってませんか?私は大満足です。

 作り終わってから、家にあるプラモデルの箱横をあらためて見てみると、箱横にはそれぞれのメーカーのプラモデルに対するアプローチが現れているような気がします。

 バンダイスピリットの箱横には「こんなふうに可動しますよ」「こんなギミックがありますよ」と完成したモノの魅力を教えてくれます。ハセガワは多くを語りません。必要な情報を淡々と語る姿は硬派な感じがして魅力的です。タミヤの箱横は塗装図と歴史、そしてプラモデルの説明。完成写真が無いその箱横は組み立てる楽しみと、どういう風に作ってもいいんだよという自由さを教えてくれている気がします。

 別にどのメーカーの箱横がいいとか悪いとかそういうことではないんです。押しの強いチャラ男も寡黙な紳士も、おとなしい文学女子も派手なギャルもみんな魅力的です。今回は年上で真面目そうなお姉さんが思いがけず優しくしてくれたので、それに思い切り甘えてしまっただけの話なのです。

もとぴ

東京在住。世界を理解するための糸口としてプラモデルを制作中。趣味の記録や思索のためにnoteも書いています。

踊れ!! ミリタリーミニチュア!「人形改造の第一歩」を踏みだした男の話。

▲タミヤ1/35ミリタリーミニチュア。なかなか自立しないものもあって困っちゃうのよね。

 1/48のミニチュアのように台座があればいいんだけれど……そうだ、無ければ作ろう鎌倉幕府!

▲以前作ったアメリカ歩兵機関銃チームセットをもう一度作りたくなったのでまた買ってきました。
▲戦争という極限状態にある彼らは血気迫る豊かな表情。今回はその表情がよく見えるようにヘルメットを被らせずに作ってみたかったのでした。
▲ランナーにはまるまる武器が残る。いいか?これが平和だ。
▲武器が無ければ組立てはあっという間。踊ってる風に接着してみる。
▲これはストックしていた楽しい工作シリーズNo.3プラバン。厚み1.2mm、0.5mm、0.3mmの3種類のプラバンが少しずつ入っている。
▲ベースを作るのにカットしやすそうな0.5mmのプラバンをチョイス。

 普通に丸とか四角でベースを作っても面白くないな……私にいい考えがある。ミニチュアとプラバンを先に接着するのだ。

▲上からライトで照らすのだ。
▲影をマジックでなぞるのだ。
▲デザインナイフで切り出すのだ。
▲再接着なのだ。
▲黒サフを吹くと影のスタンドに!ちゃんと自立する!躍動感!
▲簡単に塗装もしてみよう。ここで私の大好きなシタデルドライの登場。うす紫色のルシウスライラックで全体的にドライブラシ。
▲今度は光の当たる方向を意識して明るいブルーグリーンのスキンクブルーでドライブラシ。
▲露出した頭をガイアカラーの蛍光ピンクで塗れば……
▲アメリカ兵ダンスチームの完成だ!!Let’s Groooooove!!
▲デヴィッド・ボウイ!!ヒップホップ・ボウイ!!
▲モンキーダンス!!ファンキーチキン!!
▲正座出来てない人!!ブレイクダンス!!
▲ゴーゴーダンス!?コンテンポラリーダンス!?
▲つい最近買った秘密道具、どっちもクリップにブラックライトを挟み込んで……
▲ターンテーブルを回しながら写真を撮って遊ぶのさ!!よくなくなくなくなくなくない!?
▲ダンスは精神の解放だ!!俺たち生きてる!!Stayin’ Alive!!いやっほぅぅぅう!!

 DJやバンドやったことのある人はわかると思うのですが、人を踊らせるのって最高に楽しいもんなんですよね。

▲私が世界一好きなアルバム、マーヴィンゲイのI WANT YOU。今回、このジャケットに着想を得てミニチュアを小改造、ダンスさせた次第です。

 ちょっと脱線しますが、マーヴィン・ゲイという人はスティーヴィー・ワンダーやジャクソン5が在籍したアメリカはモータウンレーベルのミュージシャン。弟のベトナム戦争帰還をきっかけに、戦争や差別問題などへのアンチテーゼとして71年、『What’s Going on』というソウルミュージックの歴史的名盤を発表します。断固反戦!というよりはある種の祈りのような、甘美(メロウ)な演奏が素晴らしいのですが、彼は後年この音楽性はそのままに、性愛について歌うことが多くなります。そしてこのセックス&メロウ路線が頂点に達して爆発するのが76年発表のこのアルバム、I WANT YOUです。

 音楽の技術や知識って模型には全然生かせないよな~としばらく思っていたのですが、どんな経験でもアウトプットのどこかしらに反映されるものだなという気づきが得られました。実際、私のやっていることは人マネの詰め合わせみたいなものですが、模型にしても音楽にしても別の人の作品による着想なしには新しいモノを作り出すことは出来ませんからね。

▲奇しくもアンクルサムの有名な入隊募集コピーと同じタイトル。アメリカ歩兵はダンサーのプラモデルとして生まれ変わりました。良かったね。

 現在でもプラモデルミニチュアは兵隊さんがメインストリームのようです。極限状態の中、必死で生きようとする人間には確かに魅力的な造形になりがち。しかし人が極限状態であるのは戦争だけでは無いハズ。格闘技や雪山登山などの過酷なスポーツ、激しいダンスなども精神と肉体を消耗し、命を削って輝く瞬間があるものだと思います。そういった人間の文化活動主体のプラモデルもたくさん販売されたらいいのにな〜と夢想しつつ、フィギュアを改造するのも中々楽しいことが判明いたしました。

 年に1回、タミヤの人形改造コンテストというものがあります。作品の数だけ違う考え方の人がいると思うとわくわくしてきます。私も人形改造コンテスト、今度はちゃんと作り込んで応募してみようかしら。これを作っていた時にひらめいたアイデアが何個かあるんですよ。こうしてモデラーは数珠つなぎ的にプラモを作り続けていくんでしょうかね。

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

それはまるで「エンドロール」を目で追うような。

 先月,モノクロ写真における光と影について考えている際に,谷崎潤一郎著の『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』という書籍に出会いました。

 この中で,「われらは何処までも、見るからにおぼつかなげな外光が、黄昏色の壁の面に取り着いて辛くも余命を保っている、あの繊細な明るさを楽しむ。」と日本家屋の和室に用いられる土壁や砂壁についている箇所があります。

 前置きとしてこの一節を引用したのは,土や砂といった天然素材の持つ質感や色の性質をプラモデルに上手く取り入れることで,プラモデルが「落ち着きを与えてくれる室内装飾品」といった新たな側面を持つことになるのではないか,と考えたためです。

 そこで土や砂といった素材と模型が繋がっている物を考えた所,「クレイモデル」というものを思い出しました。

 「クレイモデル」とは,自動車や家電が市販化に至るまでにデザイナーが描いたスケッチやCAD(コンピュータを用いて描いた設計図)を元に,工業用粘土を用いて製作される実物大またはミニチュアの模型のことです。

 しかしなぜ,デジタル化の進む最中に手作業があるのでしょうか?

 その答えはこちらの記事にて解き明かされています。
 デジタル全盛時代でも車の設計に粘土を使う理由 どうして、手間のかかる工程を踏むのか?
 (日経トレンディ 2017年12月2日)

▲マツダブランドスペース大阪にて展示されている「クレイモデル」

 こうして「クレイモデル」が形作られるまでの過程を見ていると,プラモデルをベースに「クレイモデル」として自分の思い描く理想の形に製作したらどうなるだろうか?という疑問が浮かび,実行してみることにしました。

 そこで選んだキットは,タミヤ1/24 フォードGTに教わる「組まなきゃわからんカタチの秘密」(超音速備忘録)にて衝撃を受けたキット「タミヤ 1/24スポーツカーシリーズ No.346フォードGT」です。

 空気力学の賜物である複雑な車体形状があっという間に立ち現れる様は,ルービックキューブの6面に散りばめられた色が揃った時の喜びに似ており,まさにこのキットの醍醐味と言えるでしょう。

 そうして出来上がったボディをタミヤ瓶ラッカー 「ライトサンド(LP-30)」を用いて塗装すると,先程までプラスチックであったそれは24分の1の「クレイモデル」と化しました。

 ここまで来れば,車として機能するために必要なハンドルやタイヤ,エンジンを添えると,このボディの空気力学が本領発揮されるのです。

 ですが,この車両はモックアップ。せっかくなので左ドアを切り取り,車内を見やすくしてみました。するとどうでしょう。

 左右対称が崩れることによって,陰影に深みが増しました。

 まさに冒頭に引用した「陰翳礼讃」。

 こうして意図的に生まれた影によって,この車のボディの端麗さが際立ったのではないでしょうか?

 このように実際に「クレイモデル」と捉えてプラモデルを製作してみると,表面的な排気量や最高速度,乗車人数といったデータだけでなく,どのような過程を辿って市販化されたのかなど背景を見ることでより深く理解することが出来たと実感しました。

 こうして表面的な情報だけでなく,背景を知ろうという姿勢は先入観や思い込みを取り外す上でも重要な姿勢ではないでしょうか?

 最後に,この姿勢にピッタリのフォード社の創業者ヘンリー·フォードの格言がありましたので,添えさせて頂きます。

If there is any one secret of success, it lies in the ability to get the other person’s point of view and see things from that person’s angle as well as from your own.

『成功の秘訣というものがあるとしたら、それは他人の立場を理解し、自分の立場と同時に他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。』

空韻

フィルムとデジタルを往還する日々を通して,写真表現を模索しています。生活の中でプラモデルを床の間に飾る生け花のような彩りや四季を感じる存在として据えるのが目標。

クレイモデル風塗装でクルマのデザインを味わう

 そろそろクルマ欲しいな~と思いながら自動車メーカーのホームページを眺めていると、クルマの造形にうっとりしつつも手が届きそうな価格の車がなかったので一瞬で諦めて代わりにプラモデルを買ってきました。アリイの1/32オーナーズクラブ。1000円でお釣りがきました。

 買ってみたものの年季の入ったプラモデルらしく、バリやパーツの合いもダイナミックです。普通に綺麗に仕上げるのは難しそうです。

 そこでふと小学生のときに修学旅行で自動車工場の見学に行き、クルマのクレイモデルを見たことを思い出しました。自動車の設計やデザインをおこなうときに、粘土で実際に造形したものです。クレイモデルは美しく、ずっしりとした重みを感じるものでした。プラモデルをクレイモデルっぽく塗装したら一色で済むし、純粋にクルマの造形を味わうのに最適なのではないか、と閃きました。

 早速クレイモデルっぽい色としてタミヤの缶スプレーのタンを吹いてみました。

 一瞬でクレイモデルっぽくなりました。やや荒れた表面やヤスリがけの跡でさえ粘土の質感に見えてきました。

 クレイモデルは人の手で丁寧に削り、造形するそうです。そこで手元にあるフィギュアをそばに置いて遊んでみました。

▲ほぼ同スケールの1/35のフィギュアを置いてみました。まさにクレイモデルを造形している場面に見えてワクワクします。
▲もっと大きなフィギュアを置くと、1/3スケールくらいのクレイモデルに見えてきます。

 美しい車が世に出るまでにどんな工程を経ているかに思いを巡らせながら、クルマのデザインを純粋に味わうクレイモデル風塗装。内装もクリアパーツも気にせずに一色ブワーっと吹くだけで秒速で完成するので楽しいですよ!

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

クルマのプラモをマルっと塗ると、そのシェイプが明らかになる。

 私は『CONTINUE』という雑誌に連載を持っていて、ここでは「プラモをただ組み立てて、ふたつを並べるだけで楽しくなれる」というテーマを設けている。これは編集の人と決めたことで、作り方かたや塗りかたではなくて、「もけい」の持つカタチとか質感とか色の面白さをただ刺し身のように、パッと生で見せるのがいいんじゃないかという試みだ。

 ベルリンの壁の前にフォルクスワーゲンが停まっているというパッケージアートに惹かれて買ったドイツレベルのゴルフと、ベルリンの壁のプラモを並べたのが今売られているCONTINUEに掲載したネタ。ただ、どちらもグレーのプラスチックなのでどうしてもページの色気に乏しくなる。編集部に「なんとか色を付けたい」泣きを入れたが、「それは話が違うだろう」という返答。当たり前だ。

 「ベルリンの壁のプラモ」という妙な物体にはグラフィティデカールがふんだんに入っていて、これが異常に楽しい。世間一般に「落書き」とされることをやっても、プラモなら怒られない。そうだ、ウチには「プラモにも使えないかな」と思って買ったグラフィティ用のスプレーがあるじゃないか。

参考1/グラフィティカルチャーと鉄道模型の話(グラフィティデカールの楽しさ)
参考2/グラフィティ用のスプレー缶を買ってみる(グラフィティ用に開発されたスプレーの性能の話)

 編集部に「グラフィティつながりで、まるっと一色に塗るならどうか」と尋ねると、「それならストーリーが生まれるね」と同意を得られたので、じゃあボディだけでも塗ろうか……と考える。しかし、そこにもなんだか望まれていない「技巧(=それを持たない人からすれば、面倒なことに思える)」というものが忍び込む余地がある。ええい、窓もタイヤもすべて接着された状態でスプレーを吹いてしまおう。

 自分でも予測していなかったのだが、これは本当に驚くべき背徳感と爽快感に満ちた作法だった。現れたのは、クルマのフォルムだけがそこに確固として存在するという景色であり、すなわち「形を模す」という意味においてもっともプリミティブで、純粋なルックがそこにあった(もっと言えば、クレイモデルの如く、本来不可視に近い存在である「窓」も同じ色に塗り込められたことにより、クルマのシェイプというのは透明なガラスの面もボディのダイナミズムと接続しているのだということに、私は感動した)。

 クルマの模型をリアルに作るのはけっこうたいへんだ。しかし、こうして気ままにパーツを全部接着してしまい、ツヤのないスプレーでまるまる覆ってしまうと(サーフェイサーを吹かれた模型になんだかワクワクさせられるのと似た)そこにはミッチリとしたシェイプが存在したことに改めて気付かされる。

 見る距離、写真のパースの付きかた、表面の質感や透過率、魅惑的な細部のディテールに目を取られ、クルマのシェイプを塊として把握するというのは案外難しいことである(同じ車種のプラモでも、メーカーや時代によってカタチが大きく違うことがあるのは、そうした理由によるものだ)。

 組んで、まるっと塗装してしまう。もったいないように感じるかもしれないが、これは技巧的なものに左右されず、たくさんのクルマのプラモの形と戯れることができるひとつの方法として、みなさんにもぜひ一度体験してもらいたいと強く思うのだ。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

モデラーの特権! 「居酒屋のプラモ」を眺めながら自宅で晩酌。

 なかなか外にお酒を飲みに行けない日々が続き、家で飲む機会が増えました。なんとかして家飲みを楽しくできないかと居酒屋っぽいメニューを作ったり、自宅のテーブルを居酒屋っぽい雰囲気にしてみたりと試行錯誤の日々です。

 ある日、仕事帰りに行きつけのおもちゃ屋さんに行くと懐かしいプラモデルが入荷されていました。かつて河合商会という模型メーカーが販売していた「風物詩シリーズ」というプラモデルで、現在はマイクロエースが引き継ぎ、再販されています。

 その中のマイクロエース 1/60 風物詩シリーズ居酒屋を衝動買いしてしまいました。

 兵器が主流のプラモ界で、弾もミサイルも撃てず装甲もない、ただ酒と肴が出てくるお店のプラモデルもあるんです。レジに持っていくと店員さんも「癒されますよね、これ」と言っていました。

 パッケージの側面には居酒屋の文化史が書かれています。戦艦や戦闘機のパッケージに兵器の来歴や性能が書かれていることはありますが、こんなところで歴史の教科書には乗らないようなタメになる話に触れることができ、それだけでも嬉しくなっちゃいます。

 中身はランナーが3枚と、シールなどのアクセサリー、そして小袋に入った柳の木です。もしこの小袋を持って歩いているときに職務質問に会い、「いや、これは居酒屋のプラモデルの付属パーツでして…」とお巡りさんに説明しても分かってもらえるだろうか…といらぬ心配をしてしまいました。このあたりは鉄道模型の情景アクセサリーも販売していた河合商会のスピリットを感じられます。

 木材色のランナーが2枚に、黒色のランナーが1枚です。外壁には木目も彫刻されていて、シャープな造形です。

 14番のパーツは一本ずつに分割された箸です。全体的に大らかなパーツ構成で細かいパーツも少ないのですが、このパーツだけは異常に細かく分割されており説明書で見たときに目を疑いました。並々ならぬこだわりを感じます。

 黒いランナーにはタヌキの置物もしっかりしっかり再現されています。大事な部分も立派に再現されており、これは繁盛しそうです。

 組み立てていくと軽めに再現された調理場とテーブルが室内に現れます。先ほどの箸も箸立てに収まりました。組んでみると建物は思ったよりも薄く、舞台の書き割りのような大胆なアレンジになっています。

 塗装も進めていき、タヌキの置物も塗りました(カワイイ!)。ピンセットでつままなければいけない大きさのタヌキの置物を筆で塗る経験を一生のうちに何度できるでしょうか。ありがたい経験です。

 そして建物や付属パーツも缶スプレーでビャッと塗装したあとにウォッシング(希釈した塗料を全体になじませ陰影をはっきりさせる技法)やドライブラシ(ほとんど乾いた塗料を筆でこすりつけエッジを目立たせる技法)でひなびた雰囲気を醸し出してやり、完成です。

 完成した嬉しさからプラモデルと一緒に晩酌をしてみました。かまぼこ(私の地元の特産です!)を肴にしつつプラデルを眺め、日本酒を一杯いただきます。青々とした柳と日本酒のパッケージの雰囲気がマッチし、非常に良い気分です。

 箱の側面には「風物詩シリーズ」の他製品の紹介もあります。そのまま組んでも改造しても、はたまた情景に組み込んでも楽しそうなラインナップにワクワクします。

 今回は仕事が休みの日に昼間から製作を開始して、組み立てて塗装まで済ませても晩酌までに完成することができました。パーツ数も多くなく、そこはかとない大らかさを感じるシリーズです。いろんな風物詩シリーズを並べて飲んだり、蕎麦を食べたりうなぎを食べたりしたいなあ、とほろ酔いの頭で考えながらワクワクしているところです。

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

箱に書いてある模型のサイズ、ヨシ!

 新しい模型を買うときに、完成した時の大きさで悩むことがあります。大き過ぎると飾るスペースが無く、無理して飾っても結局長く部屋に飾っておけることが無いからです。

 あと、単純にサイズ感が気になるというのもあります。新たに家具を買うときに「どれくらいの大きさかなー?」と思うのと一緒。つまり、完成サイズが知りたい。

 その答えはこの箱の横。mm表記の数字……。実は今回紹介したハセガワの飛行機模型は箱の側面に英語で縦横の寸法とパーツ点数が書いてあります。これで飛行機の大きさをわざわざ検索して、72とか48で割る手間も省けます。特に優秀なのはパーツ点数も書いてあるところ。模型誌やいろんな方がブログで書いている「サクッと組み上がる」というのは実はこのパーツ点数と関連があるのです。少ない方が作る手順は減りますが、反対に多い方が精密な再現がされていたり、武装が満載なんてことがほとんどですので、ここは悩みどころですね。欲しいものが複数あって一つしか買えない!とかそういうときに参考にしています。

 ちなみに、海外のプラモですが、ドイツレベルは寸法もパーツ点数も大きく表記してあり親切。エアフィックスはハセガワと同じで側面に表記。という形。どちらにしてもサイズがわかるようになっています。これで、出来上がったら大きかった、買ってみたら細かすぎて大変だったなんてこともかなり少なくなると思います。
 
 模型のサイズ、なかなか検索しても出てこなかったりして、私のように実機÷縮尺の計算をする人もいるかもしれませんが、これからは箱の横をぐるりと見回して、自分の部屋に飾るベストサイズを探すガイドにしてください。書いてないときもありますが、そのときは私と一緒に計算しましょう。
 機種にこだわりすぎず、部屋に飾るちょうど良いサイズの模型を探すのも楽しいですよ!

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

あなたのゴーストが囁く。「頬を床にくっつけてプラモを見るのよ」と。

▲小さな子供の「あの目線」。模型にとっての特等席の目線かも?

 これは僕の息子が1歳の時、お義母さんからもらった機関車のおもちゃで遊んでいる写真です。頬を床に押し当てて、視線を思いっきり下げて、おもちゃを前後に動かして遊んでいます。誰にも教わらずともやるようになるからびっくりです。僕もそうやって遊んだ覚えがありますし、あなたも覚えがあるのではないでしょうか?視線を下げることで、そのおもちゃのスケールにおける人の大きさまで自分を疑似的に縮小することができます。

 そうやって、おもちゃを見てみると、自分があたかもそのおもちゃの世界に入り込んだような感覚になるんですね(まさにVR)。大抵そんな時の子供は「しゅーーーっ!」とか「ガタンゴトン……」とか口走ってるので、没入感はさらに5割増しくらいになっているのではないでしょうか?

 実は僕も、そのころの没入体験が全然抜けてないようで、未だに模型を撮影するときは下から見たアングル(あおり)で撮影することが多いです。撮影中「ごおん」とか口走ってるかもしれないですね。

▲零戦。その視点はパイロットか整備士か?
▲そのスケールの人の目線になってみる。プラモ没入体験

 そこでふと。そう言えば、レンズ越しにはあおりで模型を見て、撮りまくってるけど、実際に頬を床やテーブルにくっつけて見てないぞ!……と書きながら、大人になって頬を床やテーブルにくっつけることはそうないなと気が付いたのでした。

 大人がテーブルに頬をつける時は、試験勉強でうっかり寝てしまったとき、仕事で大失敗して落ち込んだとき。そして床は……ちょっと考えたくないような非常事態……でも幼少期のあの体験をもう一度……そういうことならいっそ思い切ってやってみよう。やってみました。おうちで。

 あ、これは絵的にはなかなか……もう良い大人がこんな。散々悩みまして、くまのぬいぐるみに代行してもらいました。

▲くまのぬいぐるみが僕だと思ってください。(実際ぬいぐるみと同じ体勢でやっています)
▲こんな感じで床側の目で見ると、ちょうどこの1/48のフィギュアの目線の高さになります。
▲ぬいぐるみ、もとい、僕の頭越しに見るとこんな感じ。
▲実際はこんな感じに見えています。うーん……頬に木目の後がつくまでくっつけて見てるんだけど、なんか違うな〜〜。あっ!
▲手で動かさないと!戦車は走るんだ!
▲「ごおん」とか口走らせないと!
▲楽しくなってきた!目の前を戦車が通り過ぎていく感じ、最高!でも何やってるのかわかんなくなってきた。僕はまさにぬいぐるみのくま?いやこれ、よく見たら、いぬだろ……
▲知らず知らずのうちに刷り込まれ、それが自分の大好きなアングルになる

 このような体験、多くの人がしたことあると思います。その物に自分の目線を合わせて下がってみる。テーブルの上に模型を置いて撮影している時なんかも、知らず知らずのうちにやっているんですよね。これ模型の世界だけじゃなく、物を見る時にやっても全然違く物が見えてきてとても楽しい行為です。いろんな高さの視点で物を見た後にあなたの模型を撮影すると、これまでと違った絵が出てくるかもしれませんね。早速近くにある模型を床やテーブルに置いて没入開始です!

mat

1969年生まれ。模型ライフを綴ったブログmat modeling service運営 。製作から撮影まで、模型誌には載っていない80を超える独自How toを配信中。ホビージャパン誌 第22回オラザク選手権大賞ホルダー。

練習巡洋艦「香取」と、はじめてのすべり台。

唐突に仕事と仕事の隙間が空いた。夕食を食べたあと、2時間くらい時間があることに気づいたのだ。最近では珍しいことだった。
そんなときにふと、久々に船のプラモでも作ってみようかと思いついた。手に取ったのはアオシマの香取。とくに理由はない。なんとなく部屋の片隅に積まれていた箱が目に入ったからだ。

私は冒険心に引っ張られるようにランナーごと色を塗る。楽しい。たまにはいいじゃないか。どうせスキマ時間の気分転換だ。適当にやろう。真面目にやると完成が遠のく。

……ランナーごと塗ったのは失敗だった。ガンダムとかだったら問題なかっただろう。だがお船の模型は折れたソーメンのような細い棒を接着しなければならない状況が多発する。狭い接着面積と塗装面の相性は最悪で、組み立ては困難を極めた。あと流し込み接着剤しか家になかった。

だがどうにかこうにか香取は形になった。おぉ、このたくましい姿はどうか。パーツはたくさんなくしたし舷窓パーツはまっぷたつに割れた。最初から小さすぎて接着を諦めたパーツもあるし曲がったまま固定されてしまった部分もある。でも気にしない。遠くから見たら気にならないから。

さあ、あとはこのカッコイイ巡洋艦をオモチャ棚に飾るだけだぞ……って無ぇじゃん! 飾る場所がねえ! 棚はオモチャがいっぱいで飾る場所が無ぇ!!!
私はロボットや女の子やおっさんのフィギュアをたくさん集めている。それらは、縦長である。2本の足で大地を踏みしめて、縦長になって立っている。だが、船は横長だった。それはあまりにも、オモチャ棚に飾るには不向きなフォルムをしていた。

途方に暮れて私は香取を持ったまま部屋をさまよう。う~~んどうしよう。もう箱も捨てちゃったし、しまっておく場所もない。どこか、この香取を安全な場所に置いておかねば次の朝日を見るまでに粉砕されてしまうだろう。どこかにいい場所はないか……。
私は視線を巡らせる。すると壁に貼ってあるホワイトボードが目に入った。
牛乳……。そうだ、明日は牛乳を買いにいかなきゃ……。そんなことをぼんやり考えながら、私はホワイトボードに近づく。

牛乳……を……。

ス……。

パチン……!
香取は、まるで滝を登って龍へと变化する鯉のようにホワイトボードに貼り付いた!

香取が……艦船模型が「縦になって」いるッッッ!!!!

秘密はこれさ。タララ~! ネオジム磁石~!(わさび)

船の底に入れる金属の板の代わりにネオジム磁石を瞬間接着剤でくっつけたのサ……。

磁力を手に入れた香取は本棚にくっつくことも……

冷蔵庫にくっつくこともできる。その展示法の可能性は無限大だ。いま、船が海に浮く時代は終わった。これからは壁面にくっつく船が世界を制する。

ん……? 香取、お前滑り台を見るのははじめてか? ハハハ、それはそうか。いままでずっと海の上にいたもんなあ……。あれは遊具だよ。子供用の遊具さ。

遊んでみるか? ほら、怖がらずに触ってみて……。

パチン、と音を立てて香取はすべり台にくっついた。

マシーナリーとも子

殺人サイボーグVTuber。池袋晶葉ちゃんを世に広めることと人類を滅亡させることを目標に日々動画投稿やコラム執筆などを手がける。お仕事募集中。

「自撮り工事写真棒」でプラモライフを記録していこうヨシ!

 近所のホームセンターをウロウロしていたら工事写真用の伸縮式ホワイトボードが目に入り、衝動買いしていました。工事の内容を記録する写真を撮るときに写り込ませる看板で、自撮り棒のように伸ばせば一人で工事写真が撮れるという便利グッズです。

早速模型に使ってみましょう!

▲まずは現状の把握から。未組立のプラモが1、2、3、4…ヨシ!
▲プラモを開封して内容を確認!欠品パーツなし!ヨシ!
▲何事にも現場の詰所が必要です。プレハブ詰所設置ヨシ!
▲初めてニッパーを入れる瞬間。ここがすべてのスタートです。「初ニッパ入れ」、ヨシ!
▲塗装に使った塗料も記録しておけば後でなにかと便利です。金ピカ仕上げ塗装、ヨシ!
▲フルスクラッチ模型が完成した瞬間も記録しましょう。竣工ヨシ!
▲完成したプラモが破損しても修理すればいいのです。施工前写真ヨシ!
▲プラモ製作中に梅雨入り宣言が出て塗装も洗濯物の外干しができなくなってもヨシ!

 プラモ製作中は写真を撮ることが多いと思いますが、この自撮り工事写真棒を使えばいつ何をしたか、どんな道具を使ったか、何色の塗料を使ったか簡単に記録でき、工程が進んでいくワクワクも実感できるので非常に便利で楽しいです。

 早速ホームセンターに行く準備はよいか!
 プラモ製作はご安全に!
 楽しんでいこうヨシ!

■土牛 伸縮式ホワイトボード D-1(実売価格1749円、安っ!!)

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

オレの愛したミニ四駆が「ラジコンのプラモ」であると気づいた日。/スコーチャー・ラヴ

 生まれて初めて親に買ってもらったミニ四駆は、なぜか「スコーチャーJr.」だった。自分でこれが欲しいと言ったのか、たまたまそこにあったのか、そもそも親じゃなくて祖父に買ってもらったのかすら思い出せない。タミヤのウェブサイトによれば、スコーチャーJr.は1989年11月発売とある。

 小学校に入りたてのオレは、スコーチャーという名前に濁点がいっさい付かないこと、見た目にも『ダッシュ四駆郎』に登場するマシンのようなわかりやすいカッコよさがないことが少し不満だった。しかし、濃紺のプラスチックにシールを貼って丹念に組み上げ、サスペンション(当時はそれが何を意味している造形なのかわからなかった)を銀色のマーカーで塗って、友達とレースをするでもなく「シュワー」と音を立ててタイヤが回るのを見ているうちに、そのマシンは間違いなく愛着のある存在へと変化していった。

 ニッパーを使ったのも、肉抜きをしたのも、ヤスリでボディのカタチを少し変えたのも、プラスチックに色を塗ると驚くべき変化があることも、あのミニ四駆が初体験だった。

 大人になってプラモに関わる仕事をしているうちに、ミニ四駆の箱がちらりと視界に入り、そこに「1/32スケール」と縮尺が書かれていることに気づいた。「そうか、これは実車があったとしたら、それを1/32に縮めたものなのか」と思い至るが、当然実車は存在しないから、これはガンダムのように「架空のクルマだけどリアルな雰囲気」を演出するための記号なのだとやり過ごしていた。

 大学時代、先輩とタミヤのRCカーで散々遊んだことを思い出す。ランサーエボリューションIVやコルベットがとんでもない速さで(しかし思うままにステアリングを切りながら)走る興奮は、RCカーを走らせた者にしかわからない。

▲こちらはTT-01Eシャーシに少々カスタマイズを加えたもの。パーツのひとつひとつが、美しい。

 焼け木杭に火が付いたのは、去年の暮れにクルマを手放した瞬間だ。自分の思うままに走らせられるクルマが欲しい。フォルクスワーゲンのシロッコはもし次にクルマを買う機会があれば手に入れたいとも思っていた。

 15年以上ぶりに組むタミヤのRCは、相変わらず最高にエキサイティングだった。巨大なモーターを組み込み、数々のギアが複雑に噛み合い、タイヤが路面の凹凸を拾いながらも操舵できる仕組みをシャフトやネジで組み上げていく。実物のクルマと根本原理を同じくする「動く模型」として、あまりにも学ぶことが多い。

 そうして、模型店でラジコンコーナーを眺めることが増えていった。バブルの絶頂期に発売されたバギーが復刻され、完成品となって売られている。折しも、スマホでは『ミニ四駆 超速グランプリ』がリリースされ、ホットショットJr.やホーネットJr.の姿をそのまま大きくしたRCカーたちが眩しく見える。

▲こちらも同様。普段はフォルクスワーゲン シロッコのボディが載った状態で飾っています。

 そう、往時のタミヤはRCカーとミニ四駆の二正面で同じデザインのバギーカーを売っていたのだ。ミニ四駆ではただの彫刻に過ぎなかった横一文字のサスペンションやスタビライザーは「3倍の大きさで実際に動作する機構」である。これはRCとミニ四駆をリアルタイムで同時に嗜んでいた人からすればあまりにも当然の事実なのかもしれないが、「ミニ四駆はRCカーの模型である」と認識して眺めると、それが恐ろしく精巧であることに驚かされるのだった。

 2月、ドイツで行われる世界最大のホビーの見本市、シュピールヴァーレンメッセにて1/10RCカー「テラスコーチャー」の復刻が報ぜられたとき、オレは出張帰りの新幹線の中で思わず声を上げてしまった。ついに、本物が手に入る。オレの初めての相棒の、”実車”が。

▲オイルダンパーを自分で組む!このワクワク感です。

 そしてようやく手にしたスコーチャーの箱の大きさ、天面に描かれたイラストの精緻さ。パッケージを開けたときにまばゆく輝くパーツたち……。巨大な巨大な感動がそこにはあった。

 当時銀色に塗ったコクピット後方の奇妙な彫刻は、当時のRCカーの機械式スピードコントローラーに必要なセラミックの抵抗をカバーするシールドだったのだということに気づく。同時にサイドポンツーンの膨らみはバッテリーを横置きに収める幅を意味しているのだとわかる(当然、ESCがスタンダードとなったいまは抵抗を露出させるための穴が埋められており、ところどころパーツの色も変更されているのだが、パッケージのイラストも当時のもののタッチをスポイルしないように修正されている)。

 このスコーチャーは、できる限り美しく組み上げて、いつまでも愛でたい。当時一緒にRCカーを走らせて遊んだ先輩も、息子と狂ったようにミニ四駆やRCカーを買いながら「やっぱり楽しいな!」とLINEを送ってくる。縦の糸と横の糸が絡み合って、みんなの人生を駆け抜けていく。

 30年以上の時を経て、初恋の人の本当の姿を知った日。オレは初めてのミニ四駆がスコーチャーJr.で良かったと思うし、いまここに大きなスコーチャーを手に入れて、誇らしい気持ちでいっぱいなのだ。

■タミヤ RC特別企画商品 No.142 1/10 電動RCカー スコーチャー (2020) 47442

■タミヤ 1/32 レーサーミニ四駆シリーズ No.64 テラスコーチャー RS (スーパーIIシャーシ) 18064

モデル/後藤あゆみ twitter Instagram

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

この1色を足す ~ キャノピーは、本当に透明なのか。

 模型好きの皆さん、ミニカーは好きだろうか。私はある日突然ミニカーにハマり、あれよあれよと100台超え。増えすぎてしまったのでリアルで会う人、模型を贈り物に頂いた人などにプレゼントしている。

 主に渡すのはHot Wheels。最近ではコンビニでも見かける手軽なミニカーだが、アメリカンなノリが持ち味の独自のカラーリング、カスタムが特徴で見ていて飽きない集めれば癖になるというとても面白いアイテム。

 これは私のお気に入り。64 CHEVY NOVA WAGON GASSER。ガラスに相当するクリアパーツが青いのが特徴。Hot Wheelsのクリアパーツはこういう色付きなものをちらほら見られ、いくつか眺めていると爽やかに見せたいのなら青、とか何か決まっているような気がする。そのメソッドをそのまま先日組んだF-16へドッキング。キャノピーをクリアブルーで塗ってしまおう。

 両者の色味が近いこともあってけっこう自然。よくよく考えずとも、ガラスって目に映る限りは透明じゃなことが殆ど。中が写っていたり写り込んでいたり。子供の頃に絵を描いたりしたときも車の窓ガラス、水色に塗ったりしませんでした?そういう原始的な面白さというか、「透明」であることがどういう意味を持つのかを考えさせられる。

 あとは、「トンボのめがねは水色めがね」というのも青い空を見ていたからってことで、そう言う点からも「クリアなものってクリアな状態であることって稀なんだな」って思う。

 他にも夕日を浴びればオレンジになるし、

 サーチライトか何かのを浴びれば黄色くなるかもしれない。

 色はそういう意味だと「何をどんな光源で見るのか?」ということになるのだけど、そこに想いを馳せるとクリアパーツはとっておきのキャンバスになる。ここを塗るだけで、模型がどの場所にあるのかを容易に演出できる。あるいは、アイシャドウを塗るようにジワっと全体の印象を強める感じで、作った模型を手軽にメイクアップできる重要ポイントだと思う。

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

「金属製艦船模型」を半日で手に入れる方法

 nippperの記事を読んでいたら自分もプラモデルが作りたくなり、久しぶりにウォーターラインシリーズのプラモデルを買いました。巡洋艦を作ったことがないのでタミヤの最上を買ってみました。

 休日の午後、夕飯までの時間でササッと組み立て、サァ塗装だという段階になりましたが、塗装のことを何も考えず組み立ててしまったので、今から塗り分けるのも厄介です。

 そこで、「金属っぽい色をブワーっと塗ったら金属製の艦船模型っぽくならないかなぁ」と思いました。ウォーターラインシリーズが生まれたのは、タミヤの会長が海外で高価な金属製の艦船模型を見て、これが気軽に手に入らないかと思ったのがきっかけだった、というエピソードを「田宮模型の仕事」で読んだことがある気がします。

 タミヤの缶スプレーのチタンゴールドを吹いてみました。

チタンゴールド一色を吹いただけで意外としっとりした金属の質感になり、金属製の艦船模型っぽくなってめちゃくちゃカッコよくなりました。

金属製の模型に着想を得たウォーターラインシリーズの模型を、金属製の模型に似せるという倒錯したことを試してみましたが、昼下がりの半日で完結する楽しみ方としては非常にアリなんじゃないかと思いました。

▲ちなみにチタンゴールドのスプレーを吹く前に一応下地として黒を塗りました

 黒いテーブルマットに置いて写真を撮って遊んでいたら夜戦でレーダーが欲しくなる理由が分かりました。灯火管制されたらなんも見えん!

■タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズ No.341 日本海軍 航空巡洋艦 最上 プラモデル 31341

■タミヤ スプレー TS-87 チタンゴールド 85087

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

プラモがなければ自分で作る。/タミヤが教えてくれる「楽しい工作」の極意

 いろいろなプラモデルを楽しんでいると、ふとプラモデルとして製品化されていないものが欲しくなることがあります。世界中のプラモメーカーが多彩なラインナップを世に放っておりますが、それでも抜け落ちているラインナップがあるものです。そうなると、プラモデル化されるのをじっと待つか、既存の製品を改造するか、ゼロから自作するほかありません。

 今回は、ゼロから自作する方法の話です。

 プラモデルのような模型を自作するには適した素材が必要です。プラモデル大手のタミヤからは「楽しい工作シリーズ」という名前でプラスチック素材が販売されており、模型店やおもちゃ店で手に入れることができます。厚さや太さや形状など多くの種類があり、作りたいものに合わせて選ぶことができます。

▲板状のものが「プラバン」、棒状のものが「プラ材」とよばれています。

 また、パテという自由に盛り付けたり造形したりすることができ、乾燥・硬化すればプラスチック同様に硬くなり削り出すこともできる樹脂のペーストが各種販売されています。

▲乾燥によって固くなるスチロール樹脂や、化学反応で固くなるポリエステルパテなど、様々な種類があります。

 この世のたいていのものは板や棒を組むか、柔らかいものを固めるか、塊から削り出すことでできていますので、理論上はこのような素材があればたいていのものの模型は作ることができるはずです。

 私も「現代の日本の貨物船」という、プラモ化されていない模型が欲しくなってしまったので、自作してみたことがあります。

 船体は厚紙とホームセンターで買える発泡断熱材で成形し、表面にパテを塗りたくります。乾燥したら粗目の紙やすりで表面を整え、デコボコしているところにまたパテを盛る、という工程を何度か繰り返します。賽の河原でパテを盛ると鬼がやってきて紙やすりをかけてくるので、またパテを盛ります。そうすると次第に滑らかな表面になってきます。

▲ポリエステルパテを盛ったところ。この世のたいていのことはパテを盛って削ればなんとかなります。
▲パテを紙やすりで磨くと、プラモデルのように滑らかな表面に仕上げることができます。

 船体ができると、いろいろな構造物を作っていきます。ここでプラバンの出番です。作りたいものの縮尺に合わせてプラバンの厚さやプラ材の太さを選び、欲しいパーツの形に切り抜いて組み立てていきます。

▲0.5㎜の厚さのプラバンや、0.3㎜の厚さのプラバンをパーツによって使い分けています。

 すると、やがて船の模型が完成します。この模型は、すべてこれまで書いたような厚紙や断熱材などの素材と、タミヤのプラ材やパテなどの組み合わせでできており、特別なパーツや既製品は使用していません。

▲1/150の1スケールの貨物船ができました。全長50cmです。

 さらに、岸壁や倉庫もプラ材で作ってみました。100円ショップで買った網戸補修シートを使ってフェンスも作ってみました。

▲あえて逆光にしたりフェンスが手前に写り込む構図にすることで逆にリアルに見えないかな~という目論見です。

 自作の模型はもはや「プラモデル」ではありません。しかし、タミヤの素材たちはプラモデルの箱からはみ出した世界も「楽しい工作」として、すくい上げているのです。自作は決して楽な道ではなく、心が折れそうになることもありますが、そんなときにプラバンのパッケージに書かれた「楽しい工作」の文字が目に入ると、「ああそうだ、模型は、工作は楽しいんだよなあ」と思い出します。

 一度自作の楽しさを知ると、プラモデルになっていないものが欲しくなっても「作ってみるか!」と前向きな気持ちになりますし、プラモデルを引き立てる情景や脇役も作ることができるようになります。そんな中でいつしか義務感で模型を作ったり、評価が気になったりと純粋ではない気持ちが混じることもありますが、それでもやっぱり原点は「楽しい工作」であるべきなのです。

 透き通るような真っ白なプラ材に向き合うたびに、「君は模型を、工作を楽しんでいるか?」と問われているような心地がします。

■タミヤ 楽しい工作シリーズ 各種

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

「旅客機プラモ」を作ったら、空港ができてしまった話、の話。

 こんにちは、からぱたです。週末のC重油さんの記事、すごかったですね。まだ見てない人はぜひ読んでください。

 旅客機模型っていうのはすごく難しいジャンルで、「パーツ数や色数が少ない(=ゴテゴテさせたり汚したりしてハッタリを効かせるのが難しい!)上に、本物に似せようとするとツルツルテロテロに作ることが求められる」というプラモなんですよね。
 だからどうしても「単体でビシッと美しく仕上げられた状態が解」というイメージがあったので、私はなんどか旅客機プラモを手にしたことがあっても、完成まで走りきったことがなかったんです。

 しかし、C重油さんの作ったエンブラエルをよく見ると、塗料の上からクリアーでピカピカにコートしたのではなく、半ツヤ仕上げくらいにとどまっています。プラモ単体の仕上がりとしては超絶作例というよりも、「おお、しっかり作ってありますね!」という雰囲気。絶対に誰も真似できない!という仕上がりではないように思います。
 ところが、記事では彼がどんどん周辺のものを作り込んでいくのが楽しめます。ボーディングブリッジや空港のビル、それを眺める女子高生や作業員の姿があることで、景色のリアリティレベルがどんどん上がっていく。プラモそのもののうまい下手、技巧のあるなしだけではなく、モノがリアルに見える理由を追い求めて「景色」を作っていっているのです。

 C重油さんのnoteも見てほしいのですが、貨物船のフルスクラッチビルド(どれも恐ろしく楽しそう!)をしても、彼はスーパーディテールを追って何かひとつのフネを再現しようと先鋭化していくのではなく、港や積荷、ちょっとした車両やフェンスを周りに配置していくことで「フネのある景色」を作っています。モチーフと前景との組み合わせで、騙し絵のごとく目の前の光景を”リアル”に作り変えていく手腕に本質があると私は思うのです。

▲C重油さん撮影。これ、模型なんですよ……。

 旅客機ひとつをめちゃくちゃキレイに作り込んで、机の上にポンと置いたとしましょう。それがうまく作られていたとしても、そこにあるのは「きれいな旅客機の模型」です。それは技巧的にすばらしいものですし、誰もが真似できることではないので、「わあ、すごいなぁ」と思えます。しかし、C重油さんの作品は「旅客機を単品でひたすら上手に作る」のではなく、「旅客機が旅客機らしく見える前景があれば、旅客機プラモそのものがめちゃくちゃツルツルピカピカじゃなくても圧倒的なリアリティを演出できる」という好例だと言えます。

 「プラモで人の目を引きたい!」と思ったとき、そのプラモをひたすらに精密に作り込むのと同じかそれ以上に、人や周辺物や前景を作ったり置いたりするのは効果的です。「ヨシおじさん」だけでなく、たとえば市販の完成品や鉄道模型のための建物、ミニカーなどなど……。こうした効果をC重油さんの記事はものすごい説得力で示してくれています。(たとえばこのnoteもプラモではないんですが、借景を作ることで場所の認知をバグらせることに成功しているので、ジオラマの一種と言っていいと思います。)

 最後にもうひとつ。旅客機のプラモ(に限らず、あらゆるプラモ)には、同スケールの仲間(空港でよく見る構造物や車両、働く人達)を増やしてあげると、プラモの楽しみ方は何倍にもなると思います。上手い、下手、器用、不器用といった評価を自分に下さなくても、あれやこれやを組み合わせて広がる景色にワクワクするのは人間の本能(鉄道模型のレイアウトがそうだよね)!
 精密さや正確さも追い求めるのは楽しいものですが、こうした「演出論としてのプラモ」がもっともっと広まるといいな、と思ったのでした。
 ハセガワさん、まずはボーディングブリッジ出してみませんか(結局それ!?)。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

「旅客機プラモ」を作ったら、空港ができてしまった話。

 人生で数えるほどしか飛行機に乗ったことがないのですが、久しぶりに飛行機に乗る機会がありました。搭乗したのは初めて乗るエンブラエル170型機で、均整な機体と滑らかな飛行が印象的だったので、一瞬で好きになってしまいすぐにプラモデル(ハセガワ1/144 エンブラエル170 J-AIR機)を買って組み立てました。

 初めて作る旅客機プラモデルに夢中になっているうちにあっという間に完成しました。

 手に持って眺めたり、地面に置いて眺めているうちに、「ボーディングブリッジ欲しいな」とふと思いました。空港で飛行機に乗り込むための搭乗橋です。

 空港でよく見る光景を作ってみたい一心で早速ネットで調べ、写真から大きさや構造を推測し、プラ板とプラ棒をメインに、ジャンクパーツ(ほかのプラモの使わなかった部品)も寄せ集めて作ってみることにしました。

 ボーディングブリッジができました。

 機体に密着する幌の感じなどがうまく出せたので、何度も機体に装着したり外したりして遊んでいるうちに「トーイングトラクタ―欲しいな」と思いました。自力では後退が難しい飛行機をプッシュバックする、空港でよく見かける車両です。

 完全に自作するのは難しそうだったので、1/150スケールのトレーラーヘッドのシャシーを拝借し、車体を自作してみました。車体の構造やホイールの形状は完全に雰囲気優先のデタラメ工作ですが、割といい雰囲気が出てきました。

 ボーディングブリッジやトーイングトラクタ―が揃うと、空港の情景が浮かんできてものすごくワクワクしてきました。ボーデイングブリッジ単体でも想像以上にカッコいいメカだったので作った甲斐がありました。

 で、ここまで来たら「もう空港の建物も作っちゃうか~」という気分になってきたので、作ることにしました。毒食わば皿まで精神でございます。

 プラ板とプラ棒でそれっぽく作っていきます。小学生のころにNゲージの鉄道模型レイアウトに憧れて厚紙で建物のペーパークラフトを自作しまくって欲望を昇華していた経験が活きてきました。

空港ができました。

 内側から見たときに額縁のように飛行機がカッコよく見える構図になるように窓の大きさを調整しました。屋上には展望デッキを設置し空港でこれから乗る飛行機を眺めている感覚を味わえるようにしてみました。

 一機の旅客機のプラモデルを作ったら連鎖的に色々なものが作りたくなり、プラモデルがカッコよく見える舞台がみるみる出来上がっていきました。最初は空港の建物まで作るつもりは全くありませんでしたが、気づいたら空港が出来ていました。

 中国の古典「老子」に「徳は孤ならず必ず隣あり」とあり、徳の高い人は孤立せずかならず共鳴する人が現れると説かれていますが、良いプラモデルも自然とそれに見合う情景を作らせる力があると感じます。

 飛行機によく乗る方なら見慣れた光景かもしれませんが、改めて自分の手で組み立ててみるとこれまで歩いて通過するだけだったボーディングブリッジがものすごくカッコいいメカに見えるようになりました。

 たまたま乗った飛行機のプラモデルを衝動買いして作ってみたら、プラモデルに突き動かされて自分の手で日常を再構築できた、そんな経験でした。

■ハセガワの旅客機シリーズはこちらから。

C重油

1991年生まれ。山口県の小さな漁港出身。大きな港に就職し大きな船を見ているうちに船の模型が作りたくなり、フルスクラッチも始めた普通の会社員。

プラモをプラモにしてしまう、「隠れデカール」を水につけよう

 先日、初めて艦船模型を作りました。nippperで紹介のあった、タミヤの「響」です。

 初めて作る模型を手にしたときに思うことはふたつあって、ひとつは「これからこのジャンルの模型をたくさん作るかもしれないぞ!」というワクワク感。残りは反対に「1個でお腹いっぱいになっちゃうかも」という気持ち。

 これ、どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、前者があるから少し失敗しても「また作ろう」って思えるし、後者があるから簡単に失敗をしないように集中するという効果があるので、いつも大事にしたい感覚です。

 作ってみるとけっこう細かくて、1/72スケールのジェット機の足まわりを組み立てているときのような、細かくて集中力を求められる作業のみで構成されているような感覚です。これをどう取るかはそのときのモチベーション次第で、「ハンバーガーを食べたいのか、ハンバーグを食べたいのか」みたいな感覚でとらえればいいことだと思います。プラモというのはジャンルそれぞれで要求される作業の濃度が微妙に異なるので、ジャンルを変えれば「好みの味」を食べることができるのも良いところです。人と機械の情景なら1/35の戦車だし、カタチのダイナミックさなら飛行機、華々しさならラリーカーやF1と、いろいろあります。

 その中で、「艦船模型は細かな作業を積み重ねる感じ」というのが個人的な感想で、むしろそれが楽しかったのです。

 ただですね、失敗しました。しかも目立つところ。船体の側面に流し込み接着剤がはみ出して指紋がつきました。プラモ作りでいちばん起こりやすい、同時にいちばんしんどいミスです。そこでこいつの出番です。

 付属のデカール。この中のタミヤマーク。じつはほかのデカール同様に、貼れるのです(タミヤ以外のメーカーのものも大概貼れます)。なので、切り取って失敗した箇所にていねいに接着。

 メーカーのロゴデカールをプラモに貼るときに、いつも思います。「プラモがプラモらしくなったなぁ」って。ついついプラモ製作って実物に迫ろう迫ろうとしてしまいますが、こうやってデカール1枚で一気にプラモの側に引き寄せられるんです。しかも艦船模型の場合、縮尺も相まって「なんだかタミヤがスポンサーになって復刻させたもの」に見えてきませんか?ラリーカーやF1のスポンサーロゴみたいで。

 今回は私のうっかりミスを隠すために貼られたタミヤマークですが、もちろん満足のいく仕上がりのものに敢えて貼るなんていうのもありです。プラモがプラモとして輝くための魔法のひとつ、「隠れデカール」を使って、さらなる模型の楽しみを増やしてみてもいいと思うのです。

■タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズ No.407 日本海軍 駆逐艦 響

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

飛行機模型を爆速で楽しむ方法。/「お楽しみ前のお楽しみ」

 ハセガワの飛行機を初めて購入しました、ミハイルです。飛行機模型ってなんだか難しそうだなと思っているあなた。私もです。今日はそんなみんなと一緒に、この「1/72スケール F-16A PLUS ファイティングファルコン」の中身を見ていこうと思う。さぁ、いくぞ!

▲斬空天翔剣!!(29歳未婚男性) ……急ぐあまり手を切らないように気を付けてね。
▲はいAランナー!ワンパーツ!
▲Bランナー!胴体下面と胴回りのパーツ!
▲Cランナー!翼関連のパーツが纏まっているようだ!
▲武装とタンクのDランナー!クリアパーツのEランナー!
▲凄い豪華なマーキングシールがセットだ、やばい。

 なるほど。どうやらランナーは全部で5枚。厳かなパッケージではあるが、中身は大分作り易そうだ。…おや?

▲突然お洒落空間(オレ調べ)が出現!!

 これは!?全てのランナーを箱から取り出しただけなのに、もう一つの作品のようではないか!私は開封してからまだ一度もニッパーを握っていないのだが……。

 というわけで、思い付きで100均のコルクボードにプッシュピンを指し、ランナーを掛けて飾ってみました。絵を飾っているようで、私はめちゃくちゃ楽しかったです。
 例え色を塗っていなくてもボックスアートも添えれば、これはもう誰が見たってハセガワのファイティングファルコンであることが分かります。

 キットとコルクボードとプッシュピンさえあれば、「模型に興味があって、どんなものか見てみたかった」「カッコイイ模型を買ったはいいものの、上手く組み立てる自信が無い」「買っても作らずに棚に置いておく可能性が大……」など、お悩みを抱える方でも直ぐにできるので、模型を楽しんでいる状態として完全に成立しちゃいます。なおかつ、満足度は激しく高いでのでオススメです。

 ※高いところに飾ると、落下の衝撃でパーツが破損する危険性がありますので、その辺りだけ注意していただければと思います!

 ちなみにこのハセガワのファイティングファルコンは1,000円以下で購入する事が出来る凄いキットだ。
 暫くこの状態を楽しんだら、しっかり作ってあげたいと思う!ではまた!

■ハセガワ 1/72 アメリカ空軍 F-16A プラス ファイティング ファルコン

ミハイル

福島県出身 1990年生まれ 模型を楽しんでいます マスキングが苦手 下のリンクの『火星深青』でブログを執筆していますので、模型に興味がある方は是非見に来てください。

たとえば夏バテにおけるそうめんのように。/ドライブラシで描く「光と形」

 素組みで遊んでもよし、塗装して遊んでもよし、プラモデルは寛大ですね。

▲箱を開けただけでも楽しい。nippperのジープ登場率は異常。フミテシさんの記事を見て即購入。
▲ランナーを見ているだけでも楽しい。さながら迷宮だ。

 特に素組み(ここでは「貼って完成!」のスタイルを指します)に関しては「癒やし」の効果が注目されつつあり、現代プラモ人の「塗装疲れ」「SNSでの作例疲れ」に対しての特効薬となり得る機運が高まっております。そして私はとにかく塗装するかどうかは素組の後の気分で決めるのであります。

▲これはライフハックなのですが、説明書を壁に貼るなどして吊るしておくとスペースが広く使えて作業効率がアップ!さらに横でアニメを垂れ流していると普通にアニメに集中してしまい、作業効率がダウン!!
▲「アニキ、これ全部つめるんか?」「いけるいける!」
▲完成!やればできるじゃん!(どこで手に入れたかわからない安物のピンセットを使ったので何個か部品すっ飛んで行方不明。nippperフリークはからぱたさんの記事を見て良いピンセットを買おう)

 素組みはいいね…リリンの生み(以下略)。美しい造形は人の脳内で色を補完させるのです。映画や小説などの、読者に考える余地を与えることで深みを増すテクニックと似ている。(TV版エヴァのラストを除く)
 しかし、趣味には”春”が来るのと同じように”飽き”も来る。塗装に飽きれば素組みを楽しむようになるし、素組みに飽きればまた塗装をしたくなるものです。ガンダムをしこたま素組みした少年は、ガンダムマーカーで色を塗ってスミ入れしてみたくなるのが世の常。私としては部分塗装を始めたこの子供の頃がプラモデルを作っていて一番楽しかったという記憶があります。自分の中で補完していた色彩を意図して色を乗せることもまた楽しいのです。 
 さて、私は塗装の中でも筆塗り、特にドライブラシという技法を多用します。

▲今年の1月にドライブラシでほぼ全塗装したMG∀ガンダム。私の現在のツイッターのアイコン。

 物体の形状はエッジの反射(ハイライト)と面のグラデーションによっておおまかに表現することが可能です。これに対してドライブラシは抜群の威力を発揮します。そもそも色とは物体が反射して見に入ってきた光なのです。先日のクリスチさんの書いた記事を見るとよくわかります。これに触発されて私も「光」を塗装をしてみたくなってチャレンジしました。その過程をご覧あれ。

▲まず素組したジープに黒のサーフェイサーをビッグバンアタックします。サフの吹き方がわからない人は前回の私の記事を見て!ドライブラシは表面がプラのままや、つや有りだとうまくいかないのです。
▲そしてドライブラシの強い味方、シタデルカラードライ!!

 あまり水分が含まれていないプニプニの水性塗料が入っていて、びっくりするほどドライブラシがうまくいきます。ニオイも無いし、筆は水で洗えるし、良いことしかありません!他社の塗料に比べてちょっとお高めですが、その分の性能は充分にあります。スタバの期間限定フラペチーノよりは安い!筆はドライブラシ専用の筆を買うか、いらなくなった筆や安い筆をカットして硬めのドライブラシ専用筆を作ってもよし!ではさっそくチャレンジ。

▲キッチンペーパーを塗る!わけではない!!

 そもそもドライブラシとはその名の通り、乾いた塗料をガサガサっとプラモにこすりつける技法です。まず、筆が完全に乾いた状態で、シタデルドライのプニプニした塗料をチョンチョンとブラシにつけ、キッチンペーパーで色がかすれるまで拭き取ろう。シタデル公式のHOW TO動画もYOUTUBEにあるので参考にしてみて下さい。

▲やさしく表面を撫でるように、サッサッと(今回は)上から下へ一定の方向で塗料を乗せていきます。
▲筆が小さすぎて終わらねえ…というときは模型の大きさに合わせた筆を使うと作業効率UP!シタデルからはドライ専用の筆S/M/Lが販売されているので私はこれを愛用しています。写真の筆はシタデルドライブラシL。
▲黒に直接塗ってもこの発色!どうですか!?

 「二十三夜月の夜。男たちは僅かな月の明かりだけを頼りにジープを駆る。闇に紛れる為、ヘッドライトは消灯していた。遂に夜間奇襲作戦を決行するのであった。」といったシチュエーションをイメージしたのですが、果たして皆さんにもそう見えますかね?見えますよね!?(威圧)


 ……そして今回はプラモ2本立て。

▲箱絵が映画みたいで超カッコイイ!タミヤ1/35MM アメリカ歩兵機関銃チームセットをしゃぶりつくします。
▲1976年発売でこの表現力!いやー酒が進む。
▲酒を飲みながらプラモ作ると複雑なトリップが楽しめるので成人の方は是非!
▲朝起きたら組立たプラモがランナーに戻されて接着されていた。これは明らかにミハイルさんの記事の影響
▲まぁいいや。こいつにオキサイドレッド(サビ止め色のサーフェイサー)をファイナルフラッシュ!
▲ここでちょっと冒険。忍法、スプレーを吹く角度を固定して一方向から吹くと勝手にグラデーションができるの術。
▲今度はシタデルドライのライザラストという色を使います。アカサビの色にも超使えるんで、1個は持っておきたい!パートナーへのプレゼントにもオススメ!
▲スプレーしたところを全部塗りつぶさないようにスゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓
▲作品タイトル「戦火に照らされる男たちの魂」が完成!!
▲「え!?何!?81mm追撃砲がうるさくて聞こえない!!……え!?別れたいって!!??電話で言うそれ!!??」シタデルカラーをプレゼントした男の末路だった。
▲個人的に1番好きなのがこいつ「ロケット弾を手で発射する男」(編注/右のおっさんのは迫撃砲の弾だと思う)

 ドライブラシは他にも色んなテクがあるので、それはまた別の機会に紹介しますね。とにかくサーフェイサーとドライブラシの組み合わせは簡単な上にアイデア次第で面白い効果が出せるので、皆さんも何かひらめいたらnippperのタグをつけて是非教えてください。
 そして、そろそろ夏ですが塗装とSNSの作例に疲れてプラモの冬が来ているアナタ!とりあえず素組して元気が出てきたらサフ&ドライブラシで(酔っ払いながら)塗装がオススメであります。ユルいけどそこまでユルくない、あなたにとってちょうどいい塩梅はこれかもしれません。お試しあれ。冬来たりなば春遠からじ!

タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.33 イギリス陸軍 SASジープ プラモデル 

タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.86 アメリカ歩兵 機関銃チームセット

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

この1色を足す 〜たとえば、コルセアの場合。

 塗装って面倒だなっていつも思ったりするのだけど、その割にただ切って貼るだけじゃつまらないなってわがままを言ったりもする。
 これは、つまるところ「耐えられる程度の苦労をして、結果を出したい」という話でもあって、ほどよい負荷の筋トレをするのと少しだけ似ている。

 プラモが楽しいところの一つに、この「負荷の設定を自分でできる」というのがあって、例えば色を塗るか塗らないかでそれは随分と違ったりして、どう目標を立てるのか? というのは作る前に楽しめる遊びの一つ。基本的にはガンガン負荷を上げていってボックスアートのようなものを作るのが楽しかったりするのだけど、最初からそんなことはできないし、でもやらないといつまでもできないし。というのは、プラモ趣味の苦しいところ。間を取ろうという選択肢は、あんまり聞かない。

 そこで今日は、ひとつの提案。数多ある(っぽい)選択肢の中から、ひとつを書くことにする。それは「1色を選び、ポイントにだけ塗る」というやり方。私はそれが結構好きで色々とやっていたのだけど、レシプロ機ではやったことがなかったから、それにチャレンジするのだ。

 こちらは1/48スケールのコルセア。ハセガワのものでパーツ点数が少なく、形になるまではかなり早め。模型のいいところはこうした定番キットが今も流通していて、しかも低価格なところ。加えて、古いからプロペラが小さいとか、タイヤが一つしかないとか、そういうこともない。昔から、当時の技術で最大限の努力をしているところが私は好き。そして今あげたプロペラとタイヤがレシプロ機のポイントだと思うので、それを黒く塗る。

 選んだ一色を今回は黒にしたけど、これは何色でもいいと思う。いま思いつく限りだとダークネイビーなんかはプラスチックのグレーとの相性が良さそう。黒も、今回はプロペラをタミヤアクリルのブラック。タイヤをラバーブラックと分けたけど、分けなくても良い。極論、プラスチックの色と違う色ならばそれで良いと思う。

 そのまま組み立てていくと、やはりポイントポイントで色が入っているのが良いのか、メリハリが生まれ、引き締まって見える。感覚的には塗った部分にだけカメラのピントが合っている感じであったり、ラフ画や設定画でしっかりと書き込まれている部分と、さらっとアウトラインを描くまでにとどめている部分のメリハリが生む一種の軽やかさがあって良い。大きいレシプロ機の存在感はボディを塗らずとも決して失われないという事実も見逃せない。

 作業と成果の割合を考えると、プロペラは筆で二、三度まっすぐ塗るだけ。タイヤはホイールのエッジに面相筆を合わせてじっくり塗っていくだけでこれだけの成果が出るのは、割がいい。

 塗装というのは、広い面積を塗ったり、反対に細かな箇所を塗ったりするのが難しい作業で、そこにひとつの壁がある。そこにいきなりぶつかりにいくよりは、まずはこのような、ポイントだけ塗る方法で、塗装が生む成果を手軽に体感するのは悪くない楽しみかただと思っているし、なんなら、これで得られるかっこよさで十分だとも私は思う。
 一色で塗る、というのは今回のようにプラスチックの色と合わさって「全体が二色になる」ということで、クリアーのパーツがある場合は、三色になる。これは思っているよりもずっと豊かで、部屋にぽんと置いたときも、かなり楽しい。「この1色を足す」という遊び。まずは大きめな安いレシプロ機で楽しんでみると良いかもしれない。

■ハセガワ 1/48 アメリカ海軍 Vought F4U-4 コルセア プラモデル JT25

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。